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特許7427484超速硬可塑性注入材、及び、超速硬可塑性注入材の注入方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】超速硬可塑性注入材、及び、超速硬可塑性注入材の注入方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/44 20060101AFI20240129BHJP
   C09K 17/10 20060101ALI20240129BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20240129BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20240129BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20240129BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20240129BHJP
   B28B 1/32 20060101ALI20240129BHJP
   E21D 11/00 20060101ALI20240129BHJP
【FI】
C09K17/44 P
C09K17/10 P
C04B28/02
C04B22/08 Z
C04B24/06 A
C04B14/10 B
B28B1/32 C
E21D11/00 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020049503
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147526
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391051049
【氏名又は名称】株式会社エステック
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】佐野 匠
(72)【発明者】
【氏名】小野 博文
(72)【発明者】
【氏名】吉原 正博
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-184344(JP,A)
【文献】特開2019-189507(JP,A)
【文献】特開2019-178024(JP,A)
【文献】特開2010-053023(JP,A)
【文献】特開2012-188296(JP,A)
【文献】特開2008-273775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/00 - 17/52
C04B 2/00 - 32/02
C04B 40/00 - 40/06
E21D 11/00 - 19/06
E21D 23/00 - 23/26
B28B 1/00 - 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超速硬セメントと凝結遅延剤と水とを含有するA液と、可塑剤と混和剤と水とを含有するB液とが混合されて形成される超速硬可塑性注入材であって、
前記超速硬セメントの鉱物組成が、CA:9.0質量%以上25.0質量%以下、CAS:3.0質量%以上20.0質量%以下であり、
前記凝結遅延剤の含有量が、前記超速硬セメントに対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である、超速硬可塑性注入材。
【請求項2】
前記凝結遅延剤がオキシカルボン酸又はその塩である、請求項1に記載の超速硬可塑性注入材。
【請求項3】
前記可塑剤がベントナイト又はアタパルジャイトである、請求項1又は2に記載の超速硬可塑性注入材。
【請求項4】
超速硬セメントと凝結遅延剤と水とを含有するA液と、可塑剤と混和剤と水とを含有するB液とを注入直前に混合して超速硬可塑性注入材を作製し、施工箇所に注入する超速硬可塑性注入材の注入方法であって、
前記超速硬セメントの鉱物組成が、CA:9.0質量%以上25.0質量%以下、CAS:3.0質量%以上20.0質量%以下であり、
前記凝結遅延剤の含有量が、前記超速硬セメントに対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である、超速硬可塑性注入材の注入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超速硬可塑性注入材、及び、該超速硬可塑性注入材の注入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル覆工背面等に発生した空洞には、可塑性注入材を充填することにより補修が行われている。従来、このような可塑性注入材としては、二液が混合されることで形成される二液性の可塑性注入材が知られている。二液性の可塑性注入材は、二液が混合される前の状態では、長距離圧送可能な程度の流動性を有するものである。このため、二液は、注入直前まで別々の経路で圧送され、注入直前に混合されて可塑性を発揮する。これにより、施工箇所までの圧送を容易に行うことが可能となる。
【0003】
二液性の可塑性注入材としては、セメント及び水から構成されるA液と、ベントナイト及び水から構成されるB液とが混合されて形成される可塑性注入材が知られている。例えば、特許文献1では、セメントミルク又はセメントミルクに気泡を混入したセメントエアミルク(A液)と、ベントナイトミルク(B液)とを攪拌混合して形成される可塑性注入材が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-310779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の可塑性注入材は、含有されるセメントミルクの固化性能に影響されるため、構造を維持するために充分な強度を発現するまで7日~28日程度を要するという問題がある。強度を発現するまでの期間が長いと、その間に流水や振動等の外力によって構造が破壊される可能性がある。このような問題を解決するため、セメントミルクの原料に超速硬セメントを用いて可塑性注入材の強度発現を早めることも考えられるが、セメントミルクを含むA液の流動性を保持する時間(以下、「可使時間」ともいう)を確保することが難しくなるため、施工性の観点から望ましくない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、A液が流動性を長く保持するとともに、A液とB液とを混合した後は瞬時に可塑性を発揮し、かつ、可使時間終了後は速やかに固結し、短期材齢で優れた強度を発現する超速硬可塑性注入材、及び、該超速硬可塑性注入材の注入方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る超速硬可塑性注入材は、超速硬セメントと凝結遅延剤と水とを含有するA液と、可塑剤と混和剤と水とを含有するB液とが混合されて形成される超速硬可塑性注入材であって、前記超速硬セメントの鉱物組成が、CA:9.0質量%以上25.0質量%以下、CAS:3.0質量%以上20.0質量%以下であり、前記凝結遅延剤の含有量が、前記超速硬セメントに対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0008】
斯かる構成により、前記超速硬可塑性注入材は、A液が流動性を長く保持するとともに、A液とB液とを混合した後は瞬時に可塑性を発揮し、かつ、可使時間終了後は速やかに固結し、短期材齢で優れた強度を発現する。
【0009】
本発明に係る超速硬可塑性注入材は、前記凝結遅延剤がオキシカルボン酸又はその塩であることが好ましい。
【0010】
前記超速硬可塑性注入材は、前記凝結遅延剤がオキシカルボン酸又はその塩であると、A液の流動性を安定して保持することができるとともに、含有量を調整して可使時間を容易に調整することができる。また、オキシカルボン酸又はその塩は、前記超速硬可塑性注入材の固結後の性能を阻害しない。
【0011】
本発明に係る超速硬可塑性注入材は、前記可塑剤がベントナイト又はアタパルジャイトであることが好ましい。
【0012】
前記超速硬可塑性注入材は、前記可塑剤がベントナイト又はアタパルジャイトであると、A液とB液とを混合した後の可塑性により優れ、また、限定注入や水と接触する箇所への施工を行うことが可能となる。
【0013】
本発明に係る超速硬可塑性注入材の注入方法は、超速硬セメントと凝結遅延剤と水とを含有するA液と、可塑剤と混和剤と水とを含有するB液とを注入直前に混合して超速硬可塑性注入材を作製し、施工箇所に注入する超速硬可塑性注入材の注入方法であって、前記超速硬セメントの鉱物組成が、CA:9.0質量%以上25.0質量%以下、CAS:3.0質量%以上20.0質量%以下であり、前記凝結遅延剤の含有量が、前記超速硬セメントに対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0014】
斯かる構成により、前記超速硬可塑性注入材の注入方法は、A液が流動性を長く保持し、かつ、A液とB液とが混合されて可塑性を発揮するとともに速やかに固結し、短期材齢で優れた強度を発現する超速硬可塑性注入材を施工箇所に注入することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、A液が流動性を長く保持し、かつ、A液とB液とが混合されて可塑性を発揮するとともに速やかに固結し、短期材齢で優れた強度を発現する超速硬可塑性注入材、及び、該超速硬可塑性注入材の注入方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本実施形態に係る超速硬可塑性注入材、及び、該超速硬可塑性注入材の注入方法について説明する。
【0017】
<超速硬可塑性注入材>
本実施形態に係る超速硬可塑性注入材は、超速硬セメントと凝結遅延剤と水とを含有するA液と、可塑剤と混和剤と水とを含有するB液とが混合されて形成される。
【0018】
(A液)
超速硬セメントとしては、11CaO・7Al・CaX(Xはハロゲン元素)、12CaO・7Al、CaO・Al、カルシウムサルフォアルミネート(アーウィン)等の結晶質又は非晶質のカルシウムアルミネートを含有するものが挙げられる。
【0019】
超速硬セメントの配合量は、超速硬可塑性注入材全体に対して、200kg/m以上800kg/m以下であることが好ましく、300kg/m以上600kg/m以下であることがより好ましい。
【0020】
超速硬セメントの鉱物組成は、CA(すなわち、CaO・Al)が9.0質量%以上25.0質量%以下であり、11.6質量%以上24.7質量%以下であることが好ましい。また、CAS(すなわち、2CaO・Al・SiO)が3.0質量%以上20.0質量%以下であり、4.0質量%以上18.6質量%以下であることが好ましい。他の鉱物組成については、特に限定されるものではなく、従来公知の組成範囲とすることができる。
【0021】
前記鉱物組成は、例えば、X線回折装置で試料のX線パターンを測定し、そのX線パターンをリートベルト法によって解析する方法(XRD-リートベルト法)により得ることができる。具体的には、XRDパターンの測定は、D8 ADVANCE(Bruker AXS社製)を使用し、測定条件は、ターゲットCuKα、管電圧40kV、管電流40mA、走査範囲2θ=5~70°、ステップ幅0.0246°、ステップ時間115.2秒とした。リートベルト解析のソフトには、TOPAS ver.4(Bruker AXS社製)を用いた。セメント鉱物及び石膏等の各結晶相の定量においては、CS(単斜相)、β-CS(単斜相)、二水石膏(Gypsum)、無水石膏(Anhydrite)、CA、CASを対象とした。なお、ポルトランドセメント由来のセメント鉱物(CS、CS)に関する結晶構造データ及びその初期値は、文献「セメント化学専門委員会報告 C-12 測定法の違いによるクリンカ鉱物量の差異の検討 第二部 第4章 粉末X線回折/Rietveld解析による定量に関する検討」の表4.6,付録を参考にした。二水石膏、無水石膏、カルシウムアルミネート(CA)、及び、その他の鉱物相に関しては、リートベルト解析ソフトTOPAS ver.4に付属する結晶DB中の結晶構造及び初期値を用いた。
【0022】
凝結遅延剤としては、オキシカルボン酸又はその塩、リグニンスルホン酸塩、糖類等が挙げられる。これらの中でも、凝結遅延剤は、オキシカルボン酸又はその塩であることが好ましい。なお、凝結遅延剤は、単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
オキシカルボン酸としては、1分子中にカルボキシル基(-COOH)と水酸基(-OH)とを有する公知のカルボン酸を用いることができ、例えば、グルコン酸、オキシマロン酸、グルコヘプトン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸等が挙げられ、クエン酸、リンゴ酸、又は、酒石酸であることが好ましい。オキシカルボン酸塩としては、各カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、バリウム塩等が挙げられ、酒石酸ナトリウム、又は、酒石酸カリウムナトリウムであることが好ましい。
【0024】
凝結遅延剤の含有量は、超速硬セメントに対して、0.1質量%以上1.0質量%以下であり、0.1質量%以上0.8質量%以下であることが好ましい。
【0025】
A液に含有される水としては、特に限定されるものではなく、例えば、水道水、工業用水、回収水、地下水、河川水、雨水等を使用することができる。これらの中でも、品質の安定した水道水又は工業用水であることが好ましい。
【0026】
A液における水の配合量は、超速硬可塑性注入材全体に対して、100kg/m以上400kg/m以下であることが好ましく、150kg/m以上300kg/m以下であることがより好ましい。
【0027】
A液は、さらに、添加剤を含有していてもよい。A液に含有される添加剤としては、例えば、膨張材、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、AE剤、減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、防水剤、ポリマーディスパージョン等が挙げられる。なお、添加剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0028】
A液が発泡剤を含む場合、その配合量は、超速硬可塑性注入材全体に対して、0.1kg/m以上10kg/m以下であることが好ましい。また、A液が高性能減水剤を含む場合、その配合量は、超速硬可塑性注入材全体に対して、0.1kg/m以上4.0kg/m以下であることが好ましい。
【0029】
(B液)
可塑剤としては、ベントナイト、アタパルジャイト、カオリン、メタカオリン等が挙げられる。これらの中でも、可塑剤は、ベントナイト又はアタパルジャイトであることが好ましい。特に、可塑剤がベントナイトの場合、膨潤度は10ml/2g以上であることが好ましい。
【0030】
可塑剤の配合量は、超速硬可塑性注入材全体に対して、45kg/m以上150kg/m以下であることが好ましく、70kg/m以上110kg/m以下であることがより好ましい。
【0031】
B液に含有される混和剤としては、例えば、膨張剤、減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、分離低減剤、凝結促進剤(例えば、硫酸アルミニウム等)、急結剤、収縮低減剤、起泡剤、発泡剤、消泡剤、防水剤等が挙げられる。なお、混和剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
B液が分散剤を含む場合、その配合量は、超速硬可塑性注入材全体に対して、0.1kg/m以上4.0kg/m以下であることが好ましい。
【0033】
B液に含有される水としては、A液と同様のものを用いることができる。B液における水の配合量は、超速硬可塑性注入材全体に対して、300kg/m以上800kg/m以下であることが好ましく、450kg/m以上700kg/m以下であることがより好ましい。
【0034】
本実施形態に係る超速硬可塑性注入材は、超速硬セメントと凝結遅延剤と水とを含有するA液と、可塑剤と混和剤と水とを含有するB液とが混合されて形成される超速硬可塑性注入材であって、前記超速硬セメントの鉱物組成が、CA:9.0質量%以上25.0質量%以下、CAS:3.0質量%以上20.0質量%以下であり、前記凝結遅延剤の含有量が、前記超速硬セメントに対して、0.1質量%以上1.0質量%以下であることにより、A液が流動性を長く保持するとともに、A液とB液とを混合した後は瞬時に可塑性を発揮し、かつ、可使時間終了後は速やかに固結し、短期材齢で優れた強度を発現する。
【0035】
本実施形態に係る超速硬可塑性注入材は、凝結遅延剤がオキシカルボン酸又はその塩であることにより、A液の流動性を安定して保持することができるとともに、含有量を調整して可使時間を容易に調整することができる。また、オキシカルボン酸又はその塩は、前記超速硬可塑性注入材の固結後の性能を阻害しない。
【0036】
本実施形態に係る超速硬可塑性注入材は、可塑剤がベントナイト又はアタパルジャイトであることにより、A液とB液とを混合した後の可塑性により優れ、また、限定注入や水と接触する箇所への施工を行うことが可能となる。
【0037】
<超速硬可塑性注入材の注入方法>
本実施形態に係る超速硬可塑性注入材の注入方法は、超速硬セメントと凝結遅延剤と水とを含有するA液と、可塑剤と混和剤と水とを含有するB液とを注入直前に混合して超速硬可塑性注入材を作製し、施工箇所に注入する超速硬可塑性注入材の注入方法であって、前記超速硬セメントの鉱物組成が、CA:9.0質量%以上25.0質量%以下、CAS:3.0質量%以上20.0質量%以下であり、前記凝結遅延剤の含有量が、前記超速硬セメントに対して、0.1質量%以上1.0質量%以下である。
【0038】
A液及びB液は、それぞれ、グラウトミキサ、ハンドミキサ等の公知の混練り手段を用いて混練することができる。混練されたA液及びB液は、配管やポンプ等の圧送設備を用いて、別々の経路で施工箇所まで圧送される。圧送されたA液及びB液は、注入直前にスタティックミキサ、動力式ミキサ、ハンドミキサ等を用いて混合される。
【0039】
本実施形態に係る超速硬可塑性注入材の注入方法は、A液が流動性を長く保持し、かつ、A液とB液とが混合されて可塑性を発揮するとともに速やかに固結し、短期材齢で優れた強度を発現する超速硬可塑性注入材を施工箇所に注入することができる。
【実施例
【0040】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
<超速硬可塑性注入材の作製>
表1及び表3に示す成分及び配合量で、A液及びB液をそれぞれ作製した。具体的には、A液は、環境温度20℃において、ハンドミキサを用いて550rpmで3分間練り混ぜることにより作製した。B液は、練り混ぜ時間を10分間としたこと以外は、A液と同様に作製した。次に、B液の容器内にA液を投入し、ハンドミキサを用いて550rpmで20秒間練り混ぜることにより、各実施例及び比較例の超速硬可塑性注入材を作製した。
【0042】
各成分の詳細を以下に示す。
(セメント)
超速硬C1~C11:表2に示す鉱物組成を有する超速硬セメント
普通:普通ポルトランドセメント(住友大阪セメント社製)
(凝結遅延剤)
R1:クエン酸(住友商事ケミカル社製)
R2:リンゴ酸(昭和化工社製)
R3:酒石酸カリウムナトリウム(昭和化工社製)
(可塑剤)
P1:ベントナイト(市販品、膨潤度:20ml/2g以上)
P2:アタパルジャイト(市販品)
(発泡剤)
金属アルミニウム微粉末系発泡剤(市販品)
(高性能減水剤)
ポリカルボン酸系高性能減水剤(市販品)
(分散剤)
ポリアクリル酸塩系分散剤(市販品)
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
<A液流動性保持性能>
A液の流動性の保持性能は、A液の可使時間を測定することにより評価した。具体的には、Pロート試験(JSCE-F 521)に基づき、A液の練り上がり直後から10分毎に流下時間を測定した。練り上がり直後の流下時間の3倍以上の流下時間となった時点で測定を終了し、練り上がり直後から測定を終了するまでの時間を可使時間とした。可使時間、及び、下記基準に基づく評価を表4に示す。なお、比較例1のA液は、練り上がり直後から600分を経過しても練り上がり直後の流下時間の3倍の流下時間とならなかったため、その時点で測定を終了した。
○:50分以上
△:40分以上50分未満
×:40分未満
【0047】
<固結性能>
注入材の固結性能は、A液とB液とを混合した際の可使時間を測定することにより評価した。具体的には、JISフロー試験(JIS R 5201)に基づき、A液及びB液の練り上がり直後から10分毎にフロー値を測定した。フロー値が120mm未満となった時点又はフローコーンに混合した材料を充填できなくなった時点で測定を終了し、練り上がり直後から測定を終了するまでの時間を可使時間とした。可使時間、及び、下記基準に基づく評価を表4に示す。なお、比較例1の超速硬可塑性注入材は、練り上がり直後から400分を経過してもフロー値が120mm未満とならなかったため、その時点で測定を終了した。
○:A液可使時間の65%以下
△:A液可使時間の65%を超えて75%以下
×:A液可使時間の75%を超える、又は、算出不可
【0048】
<短期材齢強度>
短期材齢強度は、一軸圧縮強度試験(JIS A 1216)に基づき、材齢3時間の圧縮強度を測定することにより評価した。供試体の形状は、φ50mm×高さ100mmの円柱とした。圧縮強度、及び、下記基準に基づく評価を表4に示す。なお、比較例1~3の超速硬可塑性注入材は硬化しなかったため、測定を行わなかった。
○:0.10N/mmを超える
△:0.03N/mmを超えて0.10N/mm以下
×:0.03N/mm以下、又は、未硬化
【0049】
<可塑性能>
可塑性能は、A液とB液とを混合した際のフロー値を測定することにより評価した、具体的には、JHSフロー試験(JHS A 313)に基づき、円筒型のフローコーン(φ80mm×高さ80mm)を用いて練り上がり直後のフロー値を測定した。フロー値、及び、下記基準に基づく評価を表4に示す。
○:80mm以上120mm以下
△:120mmを超えて150mm以下
×:150mmを超える
【0050】
<判定>
上述の試験結果について、下記基準に基づき判定した。結果を表4に示す。
A:○が4つ
B:○が3つ、かつ、△が1つ
C:○が2つ、かつ、△が2つ
D:△が3つ以上、又は、×が1つ以上
【0051】
【表4】
【0052】
表4の結果から分かるように、本発明の構成要件をすべて満たす各実施例の超速硬可塑性注入材は、A又はB判定であることから、A液が流動性を長く保持するとともに、A液とB液とを混合した後は瞬時に可塑性を発揮し、かつ、可使時間終了後は速やかに固結し、短期材齢で優れた強度を発現する。また、超速硬セメントの鉱物組成がCA:11.6質量%以上24.7質量%以下、CAS:4.0質量%以上18.6質量%以下であり、凝結遅延剤の含有量が超速硬セメントに対して0.1質量%以上0.8質量%以下である実施例1~3,5,7,9,11の超速硬可塑性注入材は、A判定であることから、A液とB液とが混合されて短期材齢でより優れた強度を発現することが分かる。
【0053】
一方、本発明の構成要件を満たさない各比較例の超速硬可塑性注入材は、C又はD判定であることから、A液の流動性保持性能、並びに、A液とB液とを混合した際の固結性能、短期材齢強度、及び、可塑性能のすべてを満足するものではないことが分かる。