(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-26
(45)【発行日】2024-02-05
(54)【発明の名称】組成物及び表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240129BHJP
C09K 19/02 20060101ALI20240129BHJP
C09K 19/38 20060101ALI20240129BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240129BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20240129BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240129BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20240129BHJP
【FI】
G02B5/30
C09K19/02
C09K19/38
G09F9/00 313
G09F9/00 366A
H05B33/02
H05B33/14 A
H10K59/00
(21)【出願番号】P 2021018515
(22)【出願日】2021-02-08
(62)【分割の表示】P 2019120436の分割
【原出願日】2016-07-25
【審査請求日】2021-03-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2015147139
(32)【優先日】2015-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127498
【氏名又は名称】長谷川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100146329
【氏名又は名称】鶴田 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】葛西 辰昌
(72)【発明者】
【氏名】幡中 伸行
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】井口 猶二
【審判官】宮澤 浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-21068(JP,A)
【文献】特開2011-207765(JP,A)
【文献】特開2009-75494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)及び式(2):
Re(450)/Re(550)≦1.00…(1)
1.00≦Re(650)/Re(550)…(2)
(式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。)
で示される光学特性を有する光学異方層を形成するための組成物であって、
少なくとも1種類の重合性液晶化合物と光重合開始剤組成物とを含み、
上記光重合開始剤組成物は、少なくとも1種類の分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤を含み、
上記分子内にオキシム構造を有する光重合開始剤は、波長300nm以上に2つ以上の極大吸収を有し、
上記光重合開始剤組成物の含有量は、上記重合性液晶化合物100質量部に対して、3~18質量部であり、
上記光重合開始剤組成物は、極大吸収波長λ(A)及び極大吸収波長λ(B)を有し、
少なくとも1種類の重合性液晶化合物の極大吸収波長をλ
max(LC)としたとき、
20nm<λ(B)-λ
max(LC)又は
20nm<λ
max(LC)-λ(A)
を満たす組成物。
【請求項2】
上記少なくとも1種類の重合性液晶化合物が、
300nm≦λ
max(LC)≦380nm
を満たす、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
上記少なくとも1種類の重合性液晶化合物が、
λ(A)<λ
max(LC)<λ(B)
を満たす、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
上記光重合開始剤組成物に含まれる少なくとも1種類の光重合開始剤が、波長290~330nmの範囲に極大吸収波長を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
上記光重合開始剤組成物に含まれる少なくとも1種類の光重合開始剤が、波長340~380nmの範囲に極大吸収波長を有する、請求項1~3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項6】
上記光重合開始剤組成物が、1種類のみの光重合開始剤を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
上記光重合開始剤組成物が、2種類のみの光重合開始剤を含む、請求項1~5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
上記光重合開始剤組成物に含まれる光重合開始剤のうちの、少なくとも一つの極大吸収波長λ
1が下記式(II)
20nm<|λ
1-λ
max(LC)| (II)
を満たす光重合開始剤の添加量が、重合性液晶化合物100質量部に対して、1質量部以上、
18質量部以下である、請求項1~7の何れか1項に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の組成物から形成された光学異方層。
【請求項10】
下記式(3)で示される光学特性を有する、請求項9に記載の光学異方層。
100nm<Re(550)<160nm …(3)
(式中、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表す。)
【請求項11】
請求項9または10に記載の光学異方層を含む光学フィルム。
【請求項12】
請求項9または10に記載の光学異方層と、偏光板とを備える円偏光板。
【請求項13】
請求項12に記載の円偏光板を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
【請求項14】
請求項12に記載の円偏光板を備えるタッチパネル表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方層を形成することができる組成物、及び光学異方層を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットパネル表示装置(FPD)等のタッチパネル表示装置には、偏光板や位相差板等の、光学フィルムを含む部材が用いられている。このような光学フィルムとしては、重合性液晶化合物を含む組成物から形成される液晶硬化膜(光学異方層)を含む光学フィルムが知られている。特許文献1には、逆波長分散性を示す液晶硬化膜を含む光学フィルムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国公表特許公報「特表2010-537955号公報(公表日:2010年12月9日)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
タッチパネル表示装置には、重合性液晶化合物を重合してなる光学異方層が、表示装置に転写されて用いられている。ここで、転写とは、基材上に形成された光学異方層を、粘接着剤層等を介して被転写体に貼合した後、当該基材を剥離して取り除くことをいう。
【0005】
しかしながら、波長300~380nm付近に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物を重合してなる光学異方層は、基材上からの剥離が容易ではなく、転写するときにスジが入る、又は基材と共に光学異方層の一部が剥がれる等の転写欠陥が生じる場合がある。即ち、上記重合性液晶化合物を重合してなる光学異方層は、転写が容易でないという課題を有している。
【0006】
本発明は上記課題を考慮してなされた発明であり、その主たる目的は、転写時の転写欠陥が少ない光学異方層を形成することができる組成物、及び光学異方層を備える表示装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の発明を含む。
<1> 少なくとも1種類の重合性液晶化合物と光重合開始剤組成物とを含む組成物であって、
上記光重合開始剤組成物は、少なくとも1種類の光重合開始剤を含み、
上記光重合開始剤組成物は、極大吸収波長λ(A)及び極大吸収波長λ(B)を有し、
少なくとも1種類の重合性液晶化合物の極大吸収波長をλmax(LC)としたとき、
20nm<λ(B)-λmax(LC)又は
20nm<λmax(LC)-λ(A)
を満たす組成物。
<2> 上記少なくとも1種類の重合性液晶化合物が、
300nm≦λmax(LC)≦380nm
を満たす、<1>に記載の組成物。
<3> 上記少なくとも1種類の重合性液晶化合物が、
λ(A)<λmax(LC)<λ(B)
を満たす、<1>又は<2>に記載の組成物。
<4> 上記光重合開始剤組成物に含まれる少なくとも1種類の光重合開始剤が、波長290~330nmの範囲に極大吸収波長を有する、<1>~<3>の何れか1つに記載の組成物。
<5> 上記光重合開始剤組成物に含まれる少なくとも1種類の光重合開始剤が、波長340~380nmの範囲に極大吸収波長を有する、<1>~<3>の何れか1つに記載の組成物。
<6> 上記光重合開始剤組成物が、1種類のみの光重合開始剤を含む、<1>~<5>の何れか1つに記載の組成物。
<7> 上記光重合開始剤組成物が、2種類のみの光重合開始剤を含む、<1>~<5>の何れか1つに記載の組成物。
<8> 上記光重合開始剤組成物に含まれる光重合開始剤のうちの、少なくとも一つの極大吸収波長λ1が下記式(II)
20nm<|λ1-λmax(LC)| (II)
を満たす光重合開始剤の添加量が、重合性液晶化合物100質量部に対して、1質量部以上、20質量部以下である、<1>~<7>の何れか1つに記載の組成物。
<9> 上記光重合開始剤組成物に含まれる少なくとも1種類の光重合開始剤が、分子内にオキシム構造を有する、<1>~<6>の何れか1つに記載の組成物。
<10> <1>~<9>の何れか1つに記載の組成物から形成された光学異方層。
<11> 下記式(1)及び式(2)で示される光学特性を有する、<10>に記載の光学異方層。
【0008】
Re(450)/Re(550)≦1.00 …(1)
1.00≦Re(650)/Re(550) …(2)
(式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。)
<12> 下記式(3)で示される光学特性を有する、<10>又は<11>に記載の光学異方層。
【0009】
100nm<Re(550)<160nm …(3)
(式中、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表す。)
<13> <10>~<12>の何れか1つに記載の光学異方層を含む光学フィルム。
<14> <10>~<12>の何れか1つに記載の光学異方層と、偏光板とを備える円偏光板。
<15> <14>に記載の円偏光板を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置。<16> <14>に記載の円偏光板を備えるタッチパネル表示装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、転写時の転写欠陥が少ない光学異方層を形成することができる組成物、及び光学異方層を備える表示装置等を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施の形態に関して、詳細に説明する。尚、本出願において「A~B」とは、「A以上、B以下」であることを示している。
【0012】
<重合性液晶化合物>
本発明において組成物に含まれる重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物をいう。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、光重合性基であることが好ましい。ここで、光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。
【0013】
重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基、オキセタニル基等が挙げられる。このうち、ビニルオキシ基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。液晶性は、サーモトロピック液晶でもリオトロピック液晶でもよく、また、サーモトロピック液晶におけるネマチック液晶でもスメクチック液晶でもよい。液晶性は、製造の容易さという観点から、サーモトロピック液晶におけるネマチック液晶が好ましい。
【0014】
重合性液晶化合物としては、前述した逆波長分散性を発現する点で下記式(I)の構造を有するものが好ましい。
【0015】
L-G-D-Ar-D-G-L (I)
式(I)中、Arは置換又は無置換の二価の芳香族基を表す。この芳香族基とは、平面性を有する環構造の基であり、該環構造が有するπ電子数がヒュッケル則に従い[4n+2]個であるものをいう。ここでnは整数を表す。環構造が、-N=及び-S-等のヘテロ原子を含む場合、これらヘテロ原子上の非共有結合電子対および環構造が有するπ電子がヒュッケル則を満たし、芳香族性を有する場合も含まれる。二価の芳香族基中には、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1つの原子が含まれることが好ましい。
【0016】
2つのDは、それぞれ独立に、単結合または二価の連結基である。
【0017】
2つのGは、それぞれ独立に、2価の脂環式炭化水素基を表す。
【0018】
2つのLは、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、少なくとも1つが重合性基を有する。
【0019】
Arは置換基を有する又は無置換の芳香族炭化水素環、置換基を有する又は無置換の芳香族複素環、および電子吸引性基から選ばれる少なくとも一つを有することが好ましい。当該芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、ベンゼン環、ナフタレン環が好ましい。当該芳香族複素環としては、フラン環、ベンゾフラン環、ピロール環、インドール環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアゾール環、トリアジン環、ピロリン環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、チエノチアゾール環、オキサゾール環、ベンゾオキサゾール環、およびフェナンスロリン環等が挙げられる。なかでも、チアゾール環、ベンゾチアゾール環、またはベンゾフラン環を有することが好ましく、ベンゾチアゾール基を有することがさらに好ましい。また、Arに窒素原子が含まれる場合、当該窒素原子はπ電子を有することが好ましい。
【0020】
式(I)中、Arで表される2価の芳香族基に含まれるπ電子の合計数Nπは8以上が好ましく、より好ましくは10以上であり、さらに好ましくは14以上であり、特に好ましくは16以上である。また、好ましくは30以下であり、より好ましくは26以下であり、さらに好ましくは24以下である。
【0021】
Arで表される芳香族基としては、例えば以下の基が挙げられる。
【0022】
【0023】
式(Ar-1)~式(Ar-22)中、*印は連結部を表し、Z0、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルキルスルフィニル基、炭素数1~12のアルキルスルホニル基、カルボキシル基、炭素数1~12のフルオロアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数1~12のアルキルチオ基、炭素数1~12のN-アルキルアミノ基、炭素数2~12のN,N-ジアルキルアミノ基、炭素数1~12のN-アルキルスルファモイル基または炭素数2~12のN,N-ジアルキルスルファモイル基を表す。
【0024】
Q1、Q2およびQ3は、それぞれ独立に、-CR2’R3’-、-S-、-NH-、-NR2’-、-CO-または-O-を表し、R2’およびR3’は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1~4のアルキル基を表す。
【0025】
J1、およびJ2は、それぞれ独立に、炭素原子、または窒素原子を表す。
【0026】
Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、置換又は無置換の芳香族炭化水素基または芳香族複素環基を表す。
【0027】
W1およびW2は、それぞれ独立に、水素原子、シアノ基、メチル基またはハロゲン原子を表し、mは0~6の整数を表す。
【0028】
Y1、Y2およびY3における芳香族炭化水素基としては、フェニル基、ナフチル基、アンスリル基、フェナンスリル基、ビフェニル基等の炭素数6~20の芳香族炭化水素基が挙げられ、フェニル基、ナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。芳香族複素環基としては、フリル基、ピロリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基等の窒素原子、酸素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を少なくとも1つ含む炭素数4~20の芳香族複素環基が挙げられ、フリル基、チエニル基、ピリジニル基、チアゾリル基、ベンゾチアゾリル基が好ましい。
【0029】
Y1、Y2およびY3は、それぞれ独立に、置換又は無置換の多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。多環系芳香族炭化水素基は、縮合多環系芳香族炭化水素基、または芳香環集合に由来する基をいう。多環系芳香族複素環基は、縮合多環系芳香族複素環基、または芳香環集合に由来する基をいう。
【0030】
Z0、Z1およびZ2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、炭素数1~12のアルコキシ基であることが好ましく、Z0は、水素原子、炭素数1~12のアルキル基、シアノ基がさらに好ましく、Z1およびZ2は、水素原子、フッ素原子、塩素原子、メチル基、シアノ基がさらに好ましい。
【0031】
Q1、Q2およびQ3は、-NH-、-S-、-NR2’-、-O-が好ましく、R2’は水素原子が好ましい。中でも-S-、-O-、-NH-が特に好ましい。
【0032】
式(Ar-1)~(Ar-22)の中でも、式(Ar-6)および式(Ar-7)が分子の安定性の観点から好ましい。
【0033】
式(Ar-16)~(Ar-22)において、Y1は、これが結合する窒素原子およびZ0と共に、芳香族複素環基を形成していてもよい。芳香族複素環基としては、Arが有していてもよい芳香族複素環として前記したものが挙げられるが、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピロリン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、インドール環、キノリン環、イソキノリン環、プリン環、ピロリジン環等が挙げられる。この芳香族複素環基は、置換基を有していてもよい。また、Y1は、これが結合する窒素原子およびZ0と共に、前述した置換又は無置換の多環系芳香族炭化水素基または多環系芳香族複素環基であってもよい。例えば、ベンゾフラン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が挙げられる。
【0034】
組成物を硬化してなる液晶硬化膜である光学異方層が上記式(1)及び式(2)で示される光学特性を満たす場合、重合性液晶化合物としては、下記式(A)で表される化合物(以下、化合物(A)と称することがある)が好ましい。重合性液晶化合物は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよいが、2種類以上を組み合わせて用いる場合には、少なくとも1種類が化合物(A)であることが好ましい。
【0035】
【0036】
(式(A)中、X1は、酸素原子、硫黄原子又は-NR1-を表す。R1は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Y1は、置換基を有する又は無置換の炭素数6~12の1価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有する又は無置換の炭素数3~12の1価の芳香族複素環基を表す。Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有する又は無置換の炭素数1~20の1価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~20の1価の脂環式炭化水素基、置換基を有する又は無置換の炭素数6~20の1価の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、-NR2R3又は-SR2を表すか、或いは、Q3とQ4とが互いに結合して、これらが結合する炭素原子と共に芳香環又は芳香族複素環を形成する。R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。D1及びD2は、それぞれ独立に、単結合、-C(=O)-O-、-C(=S)-O-、-CR4R5-、-CR4R5-CR6R7-、-O-CR4R5-、-CR4R5-O-CR6R7-、-C(=O)-O-CR4R5-、-O-C(=O)-CR4R5-、-CR4R5-O-C(=O)-CR6R7-、-CR4R5-C(=O)-O-CR6R7-、-NR4-CR5R6-又は-C(=O)-NR4-を表す。R4、R5、R6及びR7は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。G1及びG2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基を表し、当該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は-NH-に置き換っていてもよく、当該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。L1及びL2は、それぞれ独立に、1価の有機基を表し、L1及びL2のうちの少なくとも1つは、重合性基を有する。ここで、重合性基とは、上で説明したとおりである。)
化合物(A)におけるL1は、下記式(A1)で表される基であることが好ましく、化合物(A)におけるL2は、下記式(A2)で表される基であることが好ましい。
【0037】
P1-F1-(B1-A1)k-E1- …(A1)
P2-F2-(B2-A2)l-E2- …(A2)
(式中、B1、B2、E1及びE2は、それぞれ独立に、-CR4R5-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-CS-O-、-O-C(=S)-O-、-C(=O)-NR1-、-O-CH2-、-S-CH2-又は単結合を表す。A1及びA2は、それぞれ独立に、炭素数5~8の2価の脂環式炭化水素基又は炭素数6~18の2価の芳香族炭化水素基を表し、当該脂環式炭化水素基を構成するメチレン基は、酸素原子、硫黄原子又は-NH-に置き換っていてもよく、当該脂環式炭化水素基を構成するメチン基は、第三級窒素原子に置き換っていてもよい。k及びlは、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。F1及びF2は、それぞれ独立に、炭素数1~12の2価の脂肪族炭化水素基を表す。P1は、水素原子又は重合性基を表し、好ましくは重合性基を表す。P2は、水素原子又は重合性基を表す。P1及びP2は、これらのうち少なくとも1つが重合性基であればよい。R4及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。R1は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。)
好ましい化合物(A)としては、特表2011-207765号公報に記載の重合性液晶化合物が挙げられる。
【0038】
化合物(A)とは異なる重合性液晶化合物としては、下記式(X)で表される基を含む化合物(以下、化合物(X)と称することがある)が挙げられる。
【0039】
P11-B11-E11-B12-A11-B13- …(X)
(式中、P11は、重合性基を表す。A11は、2価の脂環式炭化水素基又は2価の芳香族炭化水素基を表す。当該2価の脂環式炭化水素基及び2価の芳香族炭化水素基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、シアノ基又はニトロ基で置換されていてもよく、当該炭素数1~6のアルキル基及び当該炭素数1~6のアルコキシ基に含まれる水素原子は、フッ素原子で置換されていてもよい。B11は、-O-、-S-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-C(=O)-、-CS-又は単結合を表す。R16は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。B12及びB13は、それぞれ独立に、-C≡C-、-CH=CH-、-CH2-CH2-、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-O-C(=O)-O-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-C(=O)-NR16-、-NR16-C(=O)-、-OCH2-、-OCF2-、-CH2O-、-CF2O-、-CH=CH-C(=O)-O-、-O-C(=O)-CH=CH-又は単結合を表す。E11は、炭素数1~12のアルカンジイル基を表し、当該アルカンジイル基に含まれる水素原子は、炭素数1~5のアルコキシ基で置換されていてもよく、当該アルコキシ基に含まれる水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。当該アルカンジイル基を構成する-CH2-は、-O-又は-C(=O)-に置き換わっていてもよい。)
重合性液晶化合物の具体例としては、液晶便覧(液晶便覧編集委員会編、丸善株式会社、平成12年10月30日発行)の「3.8.6 ネットワーク(完全架橋型)」、「6.5.1 液晶材料 b.重合性ネマチック液晶材料」に記載された化合物の中で重合性基を有する化合物、並びに、特開2010-31223号公報、特開2010-270108号公報、特開2011-6360号公報及び特開2011-207765号公報に記載された重合性液晶化合物等が挙げられる。
【0040】
組成物の固形分100質量部に占める、重合性液晶化合物の合計の含有量は、通常、70~99.5質量部であり、好ましくは80~99質量部であり、より好ましくは80~94質量部である。上記合計の含有量が上記範囲内であれば、得られる光学異方層の配向性が高くなる傾向がある。ここで、固形分とは、組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。
【0041】
<光重合開始剤>
光重合開始剤は、光照射によってラジカルを発生する光重合開始剤がより好ましい。
【0042】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、ベンジルケタール化合物、α-ヒドロキシケトン化合物、α-アミノケトン化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。具体的には、イルガキュア(Irgacure、登録商標)907、イルガキュア184、イルガキュア651、イルガキュア819、イルガキュア250、イルガキュア369、イルガキュア379、イルガキュア127、イルガキュア2959、イルガキュア754、イルガキュア379EG(以上、BASFジャパン株式会社製)、セイクオールBZ、セイクオールZ、セイクオールBEE(以上、精工化学株式会社製)、カヤキュアー(kayacure)BP100(日本化薬株式会社製)、カヤキュアーUVI-6992(ダウ社製)、アデカオプトマーSP-152、アデカオプトマーSP-170、アデカオプトマーN-1717、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831、アデカアークルズNCI-930(以上、株式会社ADEKA製)、TAZ-A、TAZ-PP(以上、日本シイベルヘグナー社製)及びTAZ-104(三和ケミカル社製)が挙げられる。
【0043】
本発明では、光重合開始剤組成物を使用する。光重合開始剤組成物は、1種の光重合開始剤のみを含んでもよいし、2種以上の光重合開始剤を含んでもよい。本発明における光重合開始剤組成物としては、波長350nm未満の光と、波長350nm以上の光を効率的に使用するために、主感光波長が互いに異なる2種類以上の光重合開始剤を使用することが好ましい。
【0044】
波長350nm未満の光を効率的に利用可能な光重合開始剤としては、α-アセトフェノン化合物を使用することが好ましく、α-アセトフェノン化合物としては、例えば、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン及び2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-(4-メチルフェニルメチル)ブタン-1-オン等が挙げられ、より好ましくは2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン及び2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オンが挙げられる。α-アセトフェノン化合物の市販品としては、イルガキュア369、イルガキュア379EG、イルガキュア907(以上、BASFジャパン株式会社製)及びセイクオールBEE(精工化学株式会社製)等が挙げられる。
【0045】
また、光学異方層の深部での重合反応をより効率的に進行させるという観点から、波長350nm以上の光を効率的に利用可能な光重合開始剤を使用することが好ましく、例えば、光重合開始剤1mgを含む100mLクロロホルム溶液中における波長350nmの吸光度が0.10以上である当該光重合開始剤を使用することができる。波長350nm以上の光を効率的に利用可能な光重合開始剤としては、トリアジン化合物やオキシムエステル型カルバゾール化合物が好ましく、感度の観点からはオキシムエステル型カルバゾール化合物がより好ましい。オキシムエステル型カルバゾール化合物としては、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)-2-(O-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)等が挙げられる。オキシムエステル型カルバゾール化合物の市販品としては、イルガキュアOXE-01、イルガキュアOXE-02(以上、BASFジャパン株式会社製)、アデカオプトマーN-1919、アデカアークルズNCI-831(以上、株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0046】
また、重合反応をより効率的に進行させるという観点から、光重合開始剤は、波長300nm以上に2つ以上の極大吸収を持つことが好ましい。波長300nm以上に2つ以上の極大吸収を持つ光重合開始剤としては、アデカアークルズNCI-831(株式会社ADEKA製)、イルガキュアOXE-03(BASFジャパン株式会社製)等が挙げられる。
【0047】
本発明に係る組成物において、光重合開始剤組成物は、1種類のみの光重合開始剤を含むこと、又は、2種類のみの光重合開始剤を含むことが好ましい。また、少なくとも1種類の光重合開始剤が、波長290~330nmの範囲に極大吸収波長を有すること、又は、少なくとも1種類の光重合開始剤が、波長340~380nmの範囲に極大吸収波長を有することがより好ましい。さらに、少なくとも1種類の光重合開始剤が、分子内にオキシム構造を有することが好ましい。
【0048】
本発明に係る組成物は、少なくとも1種類の重合性液晶化合物と、少なくとも1種類の光重合開始剤を含む光重合開始剤組成物とを含む。上記光重合開始剤組成物は、極大吸収波長λ(A)及び極大吸収波長λ(B)の2つの極大吸収波長を有し、少なくとも1種類の上記重合性液晶化合物の極大吸収波長をλmax(LC)としたとき、下記式を満たす。
【0049】
λ(A)<λ(B)
20nm<λ(B)-λmax(LC)又は
20nm<λmax(LC)-λ(A)
上記式を満たすことにより、上記光重合開始剤及び重合性液晶化合物に光を照射した場合に、重合性液晶化合物の光吸収に阻害されることなく、光重合開始剤の光吸収が行われ、重合反応を開始するのに十分な量のラジカルが発生するため、重合反応を好適に行うことができる。なお、光重合開始剤として、光重合開始剤組成物に加えてその他の光重合開始剤を使用してもよい。その他の光重合開始剤とは、その光重合開始剤の有する極大吸収波長と、重合性液晶化合物の極大吸収波長λmax(LC)とが上記式を満たさないものをいう。
【0050】
上記式を満たす光重合開始剤組成物の添加量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、通常、0.1~30質量部であり、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは3~18質量部である。また、光重合開始剤組成物に含まれる光重合開始剤であって、光重合開始剤の有する少なくとも一つの極大吸収波長λ1が、下記式(II)を満たすものの添加量は、重合性液晶化合物100質量部に対して、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは3~18質量部である。
【0051】
20nm<|λ1-λmax(LC)| (II)
上記光重合開始剤組成物において、式(II)を満たす極大吸収波長を有する光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物と上記光重合開始剤組成物の総量に対して好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、さらに好ましくは2質量%以上であり、ことさら好ましくは2.5質量%以上であり、また好ましくは18質量%以下であり、より好ましくは14質量%以下である。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、また光学異方性層を転写する際に生じる欠陥を抑制することができる。
【0052】
また、上記光重合開始剤組成物において、式(II)を満たす極大吸収波長を有する光重合開始剤の含有量は、上記光重合開始剤組成物の総量に対し、10質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、さらに好ましくは16質量%以上である。この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱し難く、また光学異方性層を転写する際に生じる欠陥を抑制することができる。
【0053】
ここで、本発明の組成物に重合性液晶化合物が2種類以上含まれる場合には、質量単位で最も多く含まれる重合性液晶化合物のλmax(LC)が上記式を満たすのが好ましい。より好ましくは、含まれる全ての重合性液晶化合物のλmax(LC)が上記式を満たす。
【0054】
より好ましくは、さらに、下記式
300nm≦λmax(LC)≦380nm
を満たし、さらに好ましくは、その上、下記式
λ(A)<λmax(LC)<λ(B)
を満たす。
【0055】
本発明に係る組成物は、溶剤、増感剤、重合禁止剤及びレベリング剤等の成分をさらに含んでいてもよい。
【0056】
<溶剤>
溶剤としては、重合性液晶化合物を完全に溶解し得る溶剤が好ましく、また、重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0057】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;クロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤;等が挙げられる。これら溶剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
組成物100質量部に占める溶剤の含有量は、50~98質量部が好ましい。従って、組成物100質量部に占める固形分は、2~50質量部が好ましい。組成物の固形分が50質量部以下であると、組成物の粘度が低くなることから、光学異方層の厚みが略均一になり、光学異方層にムラが生じ難くなる傾向がある。上記固形分は、製造しようとする光学異方層の厚みを考慮して適宜定めることができる。
【0059】
<増感剤>
増感剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合反応をより促進させることができる。
【0060】
増感剤としては、光増感剤が好ましい。増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレン等が挙げられる。
【0061】
組成物における増感剤の含有量は、重合性液晶化合物の合計量100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。
【0062】
<重合禁止剤>
重合禁止剤を用いることにより、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0063】
重合禁止剤としては、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等のフェノール系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート等の硫黄系化合物、トリオクチルホスファイト等のリン系化合物、及び2,2,6,6-テトラメチルピペリジンに代表されるヒンダードアミン構造を含むアミン系化合物等のラジカル捕捉剤が挙げられる。
【0064】
液晶硬化膜である光学異方層の着色が少ないという点で、重合禁止剤としては、フェノール系化合物が好ましい。
【0065】
組成物における重合禁止剤の含有量は、重合性液晶化合物の合計量100質量部に対して、0.1~30質量部が好ましく、0.5~10質量部がより好ましく、0.5~8質量部がさらに好ましい。上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができる。重合禁止剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
<レベリング剤>
レベリング剤とは、組成物の流動性を調整し、組成物を塗布して得られる膜をより平坦にする機能を有する添加剤であり、界面活性剤が挙げられる。好ましいレベリング剤としては、“BYK-361N”(BYK Chemie社製)等のポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤、及びサーフロン(登録商標)“S-381”(AGCセイミケミカル株式会社製)等のフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤が挙げられる。
【0067】
組成物におけるレベリング剤の含有量は、重合性液晶化合物の合計量100質量部に対して、0.01~5質量部が好ましく、0.1~3質量部がさらに好ましい。上記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる光学異方層がより平滑となる傾向がある。組成物は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
【0068】
<光学異方層>
本発明に係る光学異方層は、組成物を硬化してなる液晶硬化膜からなる。つまり、光学異方層は、組成物から形成されている。光学異方層は、通常、基材上又は基材上に形成された配向膜上に、重合性液晶化合物を含む組成物を塗布し、重合性液晶化合物を重合することによって得られる。
【0069】
光学異方層は、通常、重合性液晶化合物が配向した状態で硬化した、厚さが5μm以下の膜であり、好ましくは重合性液晶化合物が基材面に対して水平方向又は垂直方向に配向した状態で硬化した液晶硬化膜である。
【0070】
光学異方層の厚さは、0.5~5μmが好ましく、1~3μmがより好ましい。光学異方層の厚さは、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡又は触針式膜厚計により測定することができる。
【0071】
重合性液晶化合物が基材面に対して水平方向に配向した状態で硬化した光学異方層は、波長λnmの光に対する複屈折率Δn(λ)が、下記式(1)及び式(2)で示される光学特性を満たすことが好ましく、式(1)、式(2)及び下記式(3)で示される光学特性を満たすことがより好ましい。
【0072】
Re(450)/Re(550)≦1.00 …(1)
1.00≦Re(650)/Re(550) …(2)
(式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。)
100nm<Re(550)<160nm …(3)
(式中、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を表す。)
本発明に係る光学異方層は、液晶表示装置やEL表示装置の素子を紫外線から保護することを目的として、当該素子の劣化を招くおそれのある波長300~380nmの範囲の光に対する吸収を有していることが好ましく、330~380nmの範囲の光に対する吸収を有していることがより好ましい。また、当該光学異方層は、上記範囲に極大吸収を有していることがより好ましい。即ち、本発明に係る光学異方層は、波長300~380nmの範囲に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物から形成されていることが好ましく、波長330~380nmの範囲に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物から形成されていることがより好ましい。
【0073】
波長300~380nmの範囲に極大吸収波長を有する重合性液晶化合物としては、例えば、上述した化合物(A)が挙げられる。
【0074】
重合性液晶化合物が基材面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した光学異方層は、下記式(4)を満たすことが好ましい。
【0075】
nz>nx≒ny …(4)
(式中、nzは、厚さ方向の屈折率を表す。nxは、面内において最大の屈折率を生じる方向の屈折率を表す。nyは、面内においてnxの方向に対して直交する方向の屈折率を表す。)
光学異方層の面内位相差値は、光学異方層の厚さによって調整することができる。面内位相差値は下記式(50)によって決定されることから、所望の面内位相差値(Re(λ))を得るには、Δn(λ)と膜厚dとを調整すればよい。
【0076】
Re(λ)=d×Δn(λ) …(50)
(式中、Re(λ)は、波長λnmにおける面内位相差値を表し、dは膜厚を表し、Δn(λ)は波長λnmにおける複屈折率を表す。)
複屈折率Δn(λ)は、面内位相差値を測定して、光学異方層の厚さで除することで得られる。具体的な測定方法は実施例に示すが、このとき、ガラス基板のように基材自体に面内位相差が無いような基材上に製膜した膜を測定することで、実質的な光学異方層の特性を測定することができる。
【0077】
重合性液晶化合物が基材面に対して垂直方向に配向した状態で硬化した光学異方層において、Re(550)は、好ましくは0~10nmであり、より好ましく0~5nmである。厚さ方向の位相差値Rthは、好ましくは-10~-300nmであり、より好ましくは-20~-200nmである。式(4)を満たし、Re(550)及びRthが上記範囲内の光学異方層は、特にIPS(in-plane switching)モードの液晶表示装置の補償に適する。
【0078】
Rthは、面内の進相軸を傾斜軸として、該進相軸に対して光学異方層平面を40度傾斜させて測定される位相差値R40と面内の位相差値R0とから算出することができる。即ち、Rthは、面内の位相差値R0、進相軸を傾斜軸として、該進相軸に対して光学異方層平面を40度傾斜させて測定した位相差値R40、光学異方層の厚さd、及び光学異方層の平均屈折率n0から、下記式(9)~(11)によりnx、ny及びnzを求め、これらを式(8)に代入して算出することができる。
【0079】
Rth=[(nx+ny)/2-nz]×d …(8)
R0 =(nx-ny)×d …(9)
R40=(nx-ny’)×d/cos(φ) …(10)
(nx+ny+nz)/3=n0 …(11)
ここで、
φ=sin-1〔sin(40°)/n0〕
ny’=ny×nz/〔ny2×sin2(φ)+nz2×cos2(φ)〕1/2
である。
【0080】
<基材>
基材としては、ガラス基材及びプラスチック基材が挙げられ、好ましくはプラスチック基材である。プラスチック基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル;ポリアクリル酸エステル;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシド;等のプラスチックが挙げられる。
【0081】
市販のセルロースエステル基材としては、“フジタックフィルム”(富士写真フイルム株式会社製);“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(以上、コニカミノルタオプト株式会社製)等が挙げられる。
【0082】
市販の環状オレフィン系樹脂としては、“Topas”(登録商標)(Ticona社(独)製)、“アートン”(登録商標)(JSR株式会社製)、“ゼオノア(ZEONOR)”(登録商標)、“ゼオネックス(ZEONEX)”(登録商標)(以上、日本ゼオン株式会社製)及び“アペル”(登録商標)(三井化学株式会社製)が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、溶剤キャスト法、溶融押出法等の公知の手段により製膜して、基材とすることができる。市販されている環状オレフィン系樹脂基材を用いることもできる。市販の環状オレフィン系樹脂基材としては、“エスシーナ”(登録商標)、“SCA40”(登録商標)(以上、積水化学工業株式会社製)、“ゼオノアフィルム”(登録商標)(オプテス株式会社製)及び“アートンフィルム”(登録商標)(JSR株式会社製)が挙げられる。
【0083】
基材の厚さは、実用的な取り扱いができる程度の質量である点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。基材の厚さは、通常、5~300μmであり、好ましくは20~200μmである。
【0084】
<配向膜>
配向膜は、厚さが500nm以下の膜であり、重合性液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有する膜である。配向膜としては、配向性ポリマーから形成されている配向膜、光配向膜、及びグルブ(groove)配向膜が挙げられる。
【0085】
配向膜は、重合性液晶化合物の液晶配向を容易にする。水平配向、垂直配向、ハイブリッド配向、傾斜配向等の液晶配向の状態は、配向膜及び重合性液晶化合物の性質によって変化し、その組み合わせは任意に選択することができる。配向膜が配向規制力として水平配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は水平配向又はハイブリッド配向を形成することができ、垂直配向を発現させる材料であれば、重合性液晶化合物は垂直配向又は傾斜配向を形成することができる。「水平」、「垂直」等の表現は、光学異方層平面を基準とした場合、配向した重合性液晶化合物の長軸の方向を表す。水平配向とは、光学異方層平面に対して平行な方向に、配向した重合性液晶化合物の長軸を有する配向である。ここでいう「平行」とは、光学異方層平面に対して0°±20°の角度を意味する。垂直配向とは、光学異方層平面に対して垂直な方向に、配向した重合性液晶化合物の長軸を有する配向のことである。ここでいう「垂直」とは、光学異方層平面に対して90°±20°の角度を意味する。
【0086】
配向規制力は、配向膜が配向性ポリマーから形成されている場合は、当該ポリマーの表面状態やラビング条件によって任意に調整することが可能であり、光配向性ポリマーから形成されている場合は、当該ポリマーに対する偏光照射条件等によって任意に調整することが可能である。重合性液晶化合物の表面張力や液晶性等の物性を選択することにより、重合性液晶化合物の液晶配向を制御することもできる。
【0087】
光学異方層が式(4)を満たす場合、当該光学異方層を形成する重合性液晶化合物の液晶配向は、好ましくは垂直配向である。重合性液晶化合物を垂直配向させるには、珪素原子、フッ素原子等からなる非極性置換基を有する配向膜を用いることが好ましく、当該配向膜としては、特許第4605016号、特許第4985906号、特許第4502119号及び、WO2008/117760号に記載されているような、一般的に垂直配向型液晶表示素子の液晶配向膜として用いられる材料を使用することができる。
【0088】
基材と光学異方層との間に形成される配向膜としては、配向膜上に光学異方層を形成するときに使用される溶剤に不溶であり、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有する膜が好ましい。配向膜としては、配向性ポリマーからなる配向膜、光配向膜及びグルブ配向膜等が挙げられる。
【0089】
配向膜の厚さは、通常、10~500nmであり、好ましくは10~200nmである。
【0090】
<配向性ポリマーからなる配向膜>
配向性ポリマーからなる配向膜は、通常、配向性ポリマーが溶剤に溶解した組成物(以下、配向性ポリマー組成物と称することがある)を基材に塗布し、溶剤を除去する、又は、配向性ポリマー組成物を基材に塗布し、溶剤を除去し、ラビングすること(ラビング法)で得られる。
【0091】
配向性ポリマー組成物中の配向性ポリマーの濃度は、配向性ポリマー材料が、溶剤に完溶できる範囲内であればよいが、溶液に対して固形分換算で0.1~20質量%が好ましく、0.1~10質量%がさらに好ましい。
【0092】
市販の配向性ポリマー組成物としては、サンエバー(登録商標)(日産化学工業株式会社製)又はオプトマー(登録商標)(JSR株式会社製)等が挙げられる。
【0093】
<光配向膜>
光配向膜は、通常、光反応性基を有するポリマー又はモノマー(光配向性材料)と溶剤とを含む組成物(以下、光配向膜形成用組成物と称することがある)を基材に塗布し、偏光(好ましくは偏光UV)を照射することで得られる。光配向膜は、照射する偏光の偏光方向を選択することにより、配向規制力の方向を任意に制御できる点でより好ましい。
【0094】
光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光反応性基は、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、或いは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じる基である。当該光反応性基の中でも、二量化反応又は光架橋反応を起こす基が、配向性に優れる点で好ましい。上記反応を生じ得る光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有する基が好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)、及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも1つを有する基が特に好ましい。
【0095】
光配向膜形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの含有量は、0.2質量%以上が好ましく、0.3~10質量%が特に好ましい。光配向膜形成用組成物は、光配向膜の特性が著しく損なわれない範囲内で、ポリビニルアルコ-ルやポリイミド等の高分子材料や光増感剤を含んでいてもよい。
【0096】
偏光を照射するには、基材上に塗布された光配向膜形成用組成物から溶剤を除去した組成物に直接、偏光を照射する形式でもよく、基材側から偏光を照射し、偏光を透過させて組成物に照射する形式でもよい。当該偏光は、実質的に平行光であることが特に好ましい。照射する偏光の波長は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの光反応性基が光エネルギーを吸収し得る波長領域の波長がよい。具体的には、波長250~400nmのUV(紫外線)が特に好ましい。
【0097】
尚、ラビング又は偏光照射を行うときに、マスキングを行えば、液晶配向の方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0098】
<グルブ配向膜>
グルブ(groove)配向膜は、膜表面に凹凸パターン又は複数のグルブ(溝)を有する膜である。等間隔に並んだ複数の直線状のグルブを有する膜に重合性液晶化合物を塗布した場合、その溝に沿った方向に液晶分子が配向する。
【0099】
グルブ配向膜を得る方法としては、感光性ポリイミド膜表面にパターン形状のスリットを有する露光用マスクを介して露光後、現像及びリンス処理を行って凹凸パターンを形成する方法、表面に溝を有する板状の原盤に、硬化前のUV硬化樹脂の層を形成し、樹脂層を基材へ移してから硬化する方法、及び、基材上に形成した硬化前のUV硬化樹脂の膜に、複数の溝を有するロール状の原盤を押し当てて凹凸を形成し、その後硬化する方法等が挙げられる。具体的には、特開平6-34976号公報及び特開2011-242743号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0100】
<積層体の製造方法>
光学異方層と、粘接着剤層と、被転写体とを含む積層体は、基材上に光学異方層を形成し、当該光学異方層を、粘接着剤層を介して被転写体に貼合し、上記基材を取り除くことで製造することができる。
【0101】
粘接着剤層は、光学異方層上に形成されていてもよく、被転写体上に形成されていてもよい。基材と光学異方層との間に配向膜がある場合は、基材と共に配向膜も取り除いてもよい。
【0102】
光学異方層又は配向膜等と化学結合を形成する官能基を表面に有する基材は、当該官能基が光学異方層又は配向膜等と化学結合を形成し、基材を取り除き難くなる傾向がある。よって基材を剥離して取り除く場合は、表面の官能基が少ない基材が好ましく、表面に官能基を形成する表面処理を施していない基材が好ましい。
【0103】
基材と化学結合を形成する官能基を有する配向膜は、基材と配向膜との密着力が大きくなる傾向があるため、基材を剥離して取り除く場合は、基材と化学結合を形成する官能基が少ない配向膜が好ましい。配向性ポリマー組成物及び光配向膜形成用組成物等の溶液は、基材と配向膜とを架橋する試薬を含まないことが好ましく、さらに、基材を溶解する溶剤等の成分を含まないことが好ましい。
【0104】
光学異方層と化学結合を形成する官能基を有する配向膜は、光学異方層と配向膜との密着力が大きくなる傾向がある。よって基材と共に配向膜を取り除く場合は、光学異方層と化学結合を形成する官能基が少ない配向膜が好ましい。配向性ポリマー組成物及び光配向膜形成用組成物等の溶液は、光学異方層と配向膜とを架橋する試薬を含まないことが好ましい。
【0105】
配向膜と化学結合を形成する官能基を有する光学異方層は、配向膜と光学異方層との密着力が大きくなる傾向がある。よって基材を取り除く場合、又は基材と共に配向膜を取り除く場合は、基材又は配向膜と化学結合を形成する官能基が少ない光学異方層が好ましい。組成物は、基材又は配向膜と光学異方層とを架橋する試薬を含まないことが好ましい。
【0106】
<粘接着剤層>
粘接着剤層は粘接着剤から形成される。粘接着剤としては、粘着剤、乾燥固化型接着剤及び化学反応型接着剤が挙げられる。化学反応型接着剤としては、例えば、活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。好ましい粘接着剤層は、粘着剤或いは活性エネルギー線硬化型接着剤である。
【0107】
<粘着剤>
粘着剤は、ポリマーを含む。
【0108】
ポリマーとしては、アクリル系ポリマー、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、又はポリエーテル等が挙げられる。中でも、アクリル系ポリマーを含むアクリル系の粘着剤は、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を有し、接着性に優れ、さらには耐候性や耐熱性等が高く、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等が生じ難いため好ましい。
【0109】
アクリル系ポリマーとしては、エステル部分のアルキル基がメチル基、エチル基又はブチル基等の炭素数1~20のアルキル基である(メタ)アクリレート(以下、アクリレート、メタクリレートを総称して(メタ)アクリレートと称することがあり、アクリル酸とメタクリル酸とを総称して(メタ)アクリル酸と称することがある)と、(メタ)アクリル酸やヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の官能基を有する(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体が好ましい。
【0110】
このような共重合体を含む粘着剤は、粘着性に優れており、表示装置に粘着剤層を貼合した後に取り除くときも、表示装置に糊残り等を生じさせることなく、比較的容易に取り除くことが可能であるので好ましい。
【0111】
粘着剤は、光拡散剤を含有していてもよい。光拡散剤としては、無機化合物からなる微粒子、及び有機化合物(ポリマー)からなる微粒子が挙げられる。
【0112】
粘着剤から形成される粘接着剤層の厚さは、その密着力等に応じて決定されるため、特に制限されないが、通常、1~40μmである。加工性や耐久性等の点から、当該厚さは3~25μmが好ましく、5~20μmがより好ましい。粘着剤から形成される粘接着剤層の厚さを5~20μmとすることにより、表示装置を正面から見た場合や斜めから見た場合の明るさを保ち、表示像のにじみやボケを生じ難くすることができる。
【0113】
<乾燥固化型接着剤>
乾燥固化型接着剤としては、水酸基、カルボキシル基又はアミノ基等のプロトン性官能基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーの重合体、又は、ウレタン樹脂を主成分として含有し、さらに、多価アルデヒド、エポキシ化合物、エポキシ樹脂、メラミン化合物、ジルコニア化合物、及び亜鉛化合物等の架橋剤又は硬化性化合物を含有する組成物等が挙げられる。
【0114】
水酸基、カルボキシル基又はアミノ基等のプロトン性官能基とエチレン性不飽和基とを有するモノマーの重合体としては、エチレン-マレイン酸共重合体、イタコン酸共重合体、アクリル酸共重合体、アクリルアミド共重合体、ポリ酢酸ビニルのケン化物、及び、ポリビニルアルコール系樹脂等が挙げられる。
【0115】
ウレタン樹脂としては、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂等が挙げられる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とは、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入された樹脂である。
【0116】
乾燥固化型接着剤から形成される粘接着剤層の厚さは、通常、0.001~5μmであり、好ましくは0.01~2μmであり、さらに好ましくは1μm以下である。乾燥固化型接着剤から形成される粘接着剤層が厚すぎると、光学異方層が外観不良となり易い。
【0117】
<活性エネルギー線硬化型接着剤>
活性エネルギー線硬化型接着剤とは、活性エネルギー線の照射を受けて硬化する接着剤である。
【0118】
活性エネルギー線硬化型接着剤としては、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤とを含有するカチオン重合性の接着剤、アクリル系硬化成分とラジカル重合開始剤とを含有するラジカル重合性の接着剤、エポキシ化合物等のカチオン重合性の硬化成分及びアクリル系化合物等のラジカル重合性の硬化成分の両者を含有し、さらにカチオン重合開始剤及びラジカル重合開始剤を含有する接着剤、及び、これら重合開始剤を含まずに電子ビームを照射することで硬化される接着剤等が挙げられる。好ましくは、アクリル系硬化成分とラジカル重合開始剤とを含有するラジカル重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤である。また、実質的に無溶剤で使用することができる、エポキシ化合物とカチオン重合開始剤とを含有するカチオン重合性の活性エネルギー線硬化型接着剤が好ましい。
【0119】
エポキシ化合物の市販品としては、“jER”シリーズ(三菱化学株式会社製)、“エピクロン”(DIC株式会社製)、“エポトート”(登録商標)(東都化成株式会社製)、“アデカレジン”(登録商標)(株式会社ADEKA製)、“デナコール”(登録商標)(ナガセケムテックス株式会社製)、“ダウエポキシ”(ダウケミカル社製)、“テピック”(登録商標)(日産化学工業株式会社製)等が挙げられる。脂環式エポキシ化合物としては、“セロキサイド”シリーズ及び“サイクロマー”(全て、株式会社ダイセル製)、“サイラキュア UVR”シリーズ(ダウケミカル社製)等が挙げられる。
【0120】
カチオン重合開始剤とは、紫外線等の活性エネルギー線の照射を受けてカチオン種を発生する化合物であり、芳香族ジアゾニウム塩;芳香族ヨードニウム塩及び芳香族スルホニウム塩等のオニウム塩;並びに鉄-アレーン錯体が挙げられる。これらのカチオン重合開始剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0121】
カチオン重合開始剤の市販品としては、“カヤラッド”(登録商標)シリーズ(日本化薬株式会社製)、“サイラキュア UVI”シリーズ(ダウケミカル社製)、“CPI”シリーズ(サンアプロ株式会社製)、“TAZ”、“BBI”及び“DTS”(以上、みどり化学株式会社製)、“アデカオプトマー”シリーズ(株式会社ADEKA製)、“RHODORSIL”(登録商標)(ローディア株式会社製)等が挙げられる。
【0122】
アクリル系硬化成分としては、メチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート及び(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0123】
ラジカル重合開始剤としては、水素引き抜き型光ラジカル発生剤、及び、開裂型光ラジカル発生剤等が挙げられる。
【0124】
水素引き抜き型光ラジカル発生剤としては、1-メチルナフタレン等のナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ピレン誘導体、カルバゾール誘導体、ベンゾフェノン誘導体、チオキサントン誘導体及びクマリン誘導体等が挙げられる。
【0125】
開裂型光ラジカル発生剤としては、ベンゾインエーテル誘導体、アセトフェノン誘導体等のアリールアルキルケトン類、オキシムケトン類、アシルホスフィンオキシド類、チオ安息香酸S-フェニル類、チタノセン類、及びそれらを高分子量化した誘導体等が挙げられる。
【0126】
開裂型光ラジカル発生剤の中でもアシルホスフィンオキシド類が好ましく、具体的には、トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(商品名「DAROCURE TPO」;BASFジャパン株式会社製)、ビス(2,6-ジメトキシ-ベンゾイル)-(2,4,4-トリメチル-ペンチル)-ホスフィンオキシド(商品名「CGI 403」;BASFジャパン株式会社製)、又はビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-2,4-ジペントキシフェニルホスフィンオキシド(商品名「Irgacure819」;BASFジャパン株式会社製)が好ましい。
【0127】
活性エネルギー線硬化型接着剤は、増感剤を含有していてもよい。増感剤の含有量は、活性エネルギー線硬化型接着剤100質量部に対して、好ましくは0.1~20質量部である。
【0128】
活性エネルギー線硬化型接着剤には、さらに、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤及び消泡剤等が含有されていてもよい。
【0129】
本明細書において活性エネルギー線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような活性エネルギー線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線及び電子線等が挙げられ、紫外線及び電子線が好ましい。
【0130】
活性エネルギー線硬化型接着剤から形成される粘接着剤層の厚さは、通常、0.001~5μmであり、好ましくは0.01μm以上であり、また、好ましくは2μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。活性エネルギー線硬化型接着剤から形成される粘接着剤層が厚すぎると、光学異方層が外観不良となり易い。
【0131】
<被転写体>
被転写体としては、上記基材と同じ材質の物質、偏光子、偏光板等が挙げられる。
【0132】
<偏光子及び偏光板>
偏光子は、偏光機能を有する。偏光子としては、吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルム、又は、吸収異方性を有する色素を塗布したフィルム等が挙げられる。吸収異方性を有する色素としては、二色性色素が挙げられる。
【0133】
吸収異方性を有する色素を吸着させた延伸フィルムは、通常、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する工程、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより、その二色性色素を吸着させる工程、二色性色素が吸着されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムをホウ酸水溶液で処理する工程、及びホウ酸水溶液による処理後に水洗する工程を経て製造される。
【0134】
二色性色素として、ヨウ素や二色性の有機染料が挙げられる。二色性の有機染料としては、C.I. DIRECT RED 39等のジスアゾ化合物からなる二色性直接染料及び、トリスアゾ、テトラキスアゾ等の化合物からなる二色性直接染料等が挙げられる。
【0135】
こうしてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、一軸延伸、二色性色素による染色、ホウ酸処理、水洗及び乾燥をして得られる偏光子の厚さは、好ましくは5~40μmである。
【0136】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、液晶性を有する二色性色素を含む組成物を塗布して得られるフィルム、又は、二色性色素と重合性液晶化合物とを含む組成物を塗布して得られるフィルム等が挙げられる。
【0137】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムは、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。当該フィルムの厚さは、通常、20μm以下であり、好ましくは5μm以下であり、より好ましくは0.5~3μmである。
【0138】
吸収異方性を有する色素を塗布したフィルムとしては、具体的には、特開2012-33249号公報等に記載のフィルムが挙げられる。
【0139】
偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して透明保護フィルムを積層することにより、偏光板が得られる。透明保護フィルムとしては、前述した基材と同様の透明フィルムが好ましい。
【0140】
<積層体の製造方法>
基材表面、又は、基材に形成された配向膜表面に、組成物を塗布する方法としては、スピンコーティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法、及びアプリケータ法等の塗布法や、フレキソ法等の印刷法等の公知の方法が挙げられる。塗布する組成物の厚みは、得られる光学異方層の厚みを考慮して定められる。
【0141】
次に、重合性液晶化合物が重合しない条件で組成物に含まれる溶剤を除去することにより、基材表面又は配向膜表面に組成物の乾燥被膜が形成される。溶剤の除去方法としては、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥法及び減圧乾燥法等が挙げられる。
【0142】
乾燥被膜を加熱する等して、乾燥被膜に含まれる重合性液晶化合物を液晶配向させた後、この液晶配向を保持したまま、乾燥被膜に光を照射することにより、重合性液晶化合物を重合させる。
【0143】
光照射の光源としては、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、或いはKrF、ArF等の紫外光レーザー等が挙げられ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、及びメタルハライドランプが好ましい。
【0144】
照射する光、及びその光源は、乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、又は重合性液晶化合物の種類(特に、当該重合性液晶化合物が有する重合基の種類)、及びその量に応じて適宜選択される。照射される光は、波長350nm未満の光と、波長350nm以上の光とを含んでいることが好ましい。このような光を用いることで、重合性液晶化合物がより充分に硬化する傾向がある。上記光は、重合反応の進行をコントロールし易い点や、重合に係る装置として当分野で広範に用いられている光を使用することができるという点で、紫外光が好ましい。従って、紫外光によって重合することができるように、組成物に含有される重合性液晶化合物及び光重合開始剤の種類を選択しておくと好ましい。重合させるときには、紫外光照射と共に適当な冷却手段により、乾燥被膜を冷却することで重合温度をコントロールすることが好ましい。このような冷却によって、より低温で重合性液晶化合物を重合すれば、基材に耐熱性が低い材質を用いたとしても、光学異方層を適切に製造することができる。
【0145】
かくして、液晶配向を有する光学異方層が基材表面又は配向膜表面に形成される。
【0146】
<プライマー層>
光学異方層と、粘接着剤層との間に、エポキシ樹脂等の透明樹脂等からなるプライマー層を設けてもよい。
【0147】
粘接着剤層は、粘接着剤を光学異方層又はプライマー層の表面に塗布することで形成される。粘接着剤が溶剤を含む場合は、粘接着剤を光学異方層又はプライマー層の表面に塗布し、溶剤を除去することで形成される。粘着剤から形成される粘接着剤層は、離型処理が施されたフィルムの離型処理面に粘着剤を塗布し、溶剤を除去することで離型処理が施されたフィルムの離型処理面に粘接着剤層を形成した後、この粘接着剤層付のフィルムを、粘接着剤層側が貼合面となるように、光学異方層又はプライマー層の表面に貼り合わせる方法によっても形成することができる。
【0148】
コロナ処理により、光学異方層又はプライマー層と粘接着剤層との密着性をさらに向上させることができる。
【0149】
粘接着剤を塗布する方法としては、配向性ポリマー組成物を基材に塗布する方法として例示した方法と同じ方法が挙げられる。塗布された粘接着剤から、溶剤を除去する方法としては、配向性ポリマー組成物から溶剤を除去する方法と同じ方法が挙げられる。
【0150】
<円偏光板>
被転写体が偏光子又は偏光板であり、光学異方層が、基材面に対して水平方向に重合性液晶化合物が配向した状態で硬化してなる膜である場合、光学異方層と、粘接着剤層と、偏光子又は偏光板とを含む積層体における当該光学異方層上に、粘接着剤層をさらに形成することで、偏光子又は偏光板と、第一の粘接着剤層と、光学異方層と、第二の粘接着剤層とをこの順に積層した円偏光板が得られる。つまり、円偏光板は、少なくとも、光学異方層と、偏光板とを備えている。
【0151】
光学異方層と、配向膜と、粘接着剤層と、偏光子又は偏光板とを含む積層体における当該光学異方層上に、粘接着剤層をさらに形成することで、偏光子又は偏光板と、第一の粘接着剤層と、配向膜と、光学異方層と、第二の粘接着剤層とをこの順に積層した円偏光板が得られる。
【0152】
<用途>
光学異方層及び円偏光板は、さまざまな表示装置に用いることができる。
【0153】
表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、タッチパネル表示装置、電子放出表示装置(電場放出表示装置(FED等)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置)、プラズマ表示装置、投射型表示装置(グレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置等)及び圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。液晶表示装置は、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置、直視型液晶表示装置及び投写型液晶表示装置等の何れをも含む。これら表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。特に円偏光板は有機EL表示装置及び無機EL表示装置に有効に用いることができ、光学補償偏光板は液晶表示装置及びタッチパネル表示装置に有効に用いることができる。
【実施例】
【0154】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに詳細に説明する。実施例及び比較例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、「質量%」及び「質量部」である。
【0155】
実施例及び比較例において使用したポリマーフィルム、装置及び測定方法は、以下の通りである。
・シクロオレフィンポリマー(COP)フィルムには、日本ゼオン株式会社製のZF-14を用いた。
・コロナ処理装置には、春日電機株式会社製のAGF-B10を用いた。
・コロナ処理は、上記コロナ処理装置を用いて、出力0.3kW、処理速度3m/分の条件で1回行った。
・偏光UV照射装置には、ウシオ電機株式会社製の偏光子ユニット付SPOT CURESP-7を用いた。
・高圧水銀ランプには、ウシオ電機株式会社製のユニキュアVB-15201BY-Aを用いた。
・面内位相差値は、王子計測機器株式会社製のKOBRA-WRを用いて測定した。
・膜厚は、日本分光株式会社製のエリプソメータ M-220を用いて測定した。
【0156】
〔実施例1~26〕
[光配向膜形成用組成物の調製]
下記構造の光配向性材料5部とシクロペンタノン(溶剤)95部とを成分として混合し、得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、光配向膜形成用組成物を得た。下記光配向性材料は、特開2013-33248号公報記載の方法で合成した。
【0157】
【0158】
[重合性液晶化合物を含む組成物の調製]
下記構造の重合性液晶Aと、ポリアクリレート化合物(レベリング剤)(BYK-361N;BYK-Chemie社製)と、下記光重合開始剤とを成分として混合し、重合性液晶化合物を含む組成物(本発明に係る組成物)を得た。
【0159】
【0160】
重合性液晶Aは、特開2010-31223号公報に記載の方法で合成した。重合性液晶Aの極大吸収波長λmax(LC)は、350nmであった。
【0161】
ポリアクリレート化合物の量は、重合性液晶A100部に対して0.01部とした。
【0162】
光重合開始剤として下記5種類を使用し、重合性液晶A100部に対して、実施例ごとに、下記表1に示す光重合開始剤を、表1に示す添加量で添加した。尚、表1には、各光重合開始剤の極大吸収波長λ(A)及び極大吸収波長λ(B)も記載した。
・イルガキュアOXE-03(BASFジャパン株式会社製)
・アデカアークルズ NCI-831(株式会社ADEKA製)
・1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガキュア184(Irg184);BASFジャパン株式会社製)
・2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369(Irg369);BASFジャパン株式会社製)
・2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン(イルガキュア651(Irg651);BASFジャパン株式会社製)。
【0163】
[光学異方層の製造]
上述した重合性液晶化合物を含む組成物に、固形分濃度が13%となるように溶剤としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を添加し、80℃で1時間攪拌することにより、塗工液を得た。
【0164】
一方、基材としてのシクロオレフィンポリマー(COP)フィルムを、コロナ処理装置を用いてコロナ処理した。次いで、コロナ処理を施したCOPフィルム(基材)の表面に、バーコーターを用いて上述した光配向膜形成用組成物を塗布し、80℃で1分間乾燥した後、偏光UV照射装置を用いて100mJ/cm2の積算光量で偏光UV露光を実施して配向膜を得た。得られた配向膜の膜厚は、122nmであった。
【0165】
続いて、上記配向膜上にバーコーターを用いて上述した塗工液を塗布し、120℃で1分間乾燥した後、高圧水銀ランプを用いて、塗工液の塗布面側から紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長:365nm、波長365nmにおける積算光量は表1に記載の通り)することにより、光学異方層を形成した。また、被転写体としてのCOPフィルムを、コロナ処理装置を用いてコロナ処理した。
【0166】
得られた光学異方層に粘接着剤層を貼合した後、当該粘接着剤層を介して光学異方層を、コロナ処理を施したCOPフィルム(被転写体)に貼り合せた。その後、基材としてのCOPフィルムを剥離することにより、被転写体としてのCOPフィルムに光学異方層を転写してなる光学フィルムを得た。このとき、転写された層は光学異方層のみであり、配向膜は基材としてのCOPフィルム上に残った。光学異方層の転写性を評価した結果を表1に示す。
【0167】
【0168】
*転写性の評価は以下の通り;
A :転写欠陥無し
B :転写欠陥無しだが配向欠陥あり
C :転写可能だがスジ状欠陥あり
E :転写不可。
【0169】
得られた光学フィルムの波長450nm、波長550nm並びに波長650nmの光に対する面内位相差値を測定した。その結果、実施例1では、面内位相差値は120~150nmで、各波長での面内位相差値の関係は以下の通りとなった。
【0170】
Re(450)/Re(550)=0.87
Re(650)/Re(550)=1.02
(式中、Re(450)は波長450nmの光に対する面内位相差値を、Re(550)は波長550nmの光に対する面内位相差値を、Re(650)は波長650nmの光に対する面内位相差値を表す。)
即ち、光学異方層は、下記式(1)、式(2)及び式(3)で表される光学特性を有していた。尚、COPの波長550nmにおける面内位相差値は略0であるため、式(1)~(3)で表される光学特性には影響しない。
【0171】
Re(450)/Re(550)≦1.00 …(1)
1.00≦Re(650)/Re(550) …(2)
100nm<Re(550)<160nm …(3)
実施例2~26に関しても、同様の結果が得られた。但し、実施例19では光学異方層を転写欠陥無く転写することができたものの、積算光量が実施例19の半分である実施例20では、転写後の光学異方層にスジ状の欠陥が認められた。また、実施例21~26では光学異方層を転写欠陥無く転写することができたものの、転写後の光学異方層に配向欠陥が認められた。
【0172】
〔比較例1~4〕
実施例1と同様にして、被転写体としてのCOPフィルムに光学異方層を転写してなる光学フィルムを得た。使用した光重合開始剤及びその添加量を表1に示す。波長365nmにおける積算光量は表1に記載の通りである。そして、光学異方層の転写性を評価した結果を表1に示す。比較例1~4では、光重合開始剤が極大吸収波長λ(B)を有していないので、重合性液晶化合物によって光重合開始剤の働きが阻害された結果、重合性液晶化合物の重合が不十分となり、光学異方層を転写することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0173】
本発明によれば、重合性液晶化合物が十分に硬化することができる。従って、転写時の転写欠陥が少ない光学異方層を形成することができる組成物、及び光学異方層を備える表示装置等を提供することができる。本発明の組成物は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置やタッチパネル表示装置等の表示装置等において広範に利用することができる。