(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】フォームラバー用ラテックスの製造方法およびフォームラバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 9/30 20060101AFI20240130BHJP
C08C 1/07 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08J9/30 CEQ
C08C1/07
(21)【出願番号】P 2020128526
(22)【出願日】2020-07-29
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石葉 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 慎二
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-159037(JP,A)
【文献】特開2004-107436(JP,A)
【文献】特開2007-153920(JP,A)
【文献】特開2003-268006(JP,A)
【文献】特開平07-157501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
C08C 1/00-4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数平均粒子径が0.40μm以下であるゴム粒子が水中に分散してなるゴムラテックスを準備する準備工程、
前記ゴムラテックスに、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤を、前記ゴムラテックス中のゴム成分100重量部に対して0.15~2.0重量部の割合で添加し、固形分濃度が40重量%以上60重量%未満の範囲とされた安定化ラテックスを得る安定化工程、および、
前記安定化ラテックスに、pKaが0~4の酸性物質を添加することにより、前記ゴム粒子を肥大化させ、数平均粒子径が0.7μm以上である肥大化ゴム粒子が水中に分散してなる粒径肥大化ラテックスを得る粒径肥大化工程
を備えるフォームラバー用ラテックスの製造方法。
【請求項2】
前記ゴム粒子が、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体の粒子である請求項1に記載のフォームラバー用ラテックスの製造方法。
【請求項3】
前記スルホン酸塩構造を有する界面活性剤が、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩である請求項1または2に記載のフォームラバー用ラテックスの製造方法。
【請求項4】
前記準備工程が、脂肪酸塩の存在下に、水中で、単量体を乳化重合する工程である請求項1~3のいずれかに記載のフォームラバー用ラテックスの製造方法。
【請求項5】
前記粒径肥大化ラテックスを、固形分濃度60重量%以上に濃縮する濃縮工程を備える請求項1~4のいずれかに記載のフォームラバー用ラテックスの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の製造方法により得られるフォームラバー用ラテックスを発泡および凝固させるフォームラバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォームラバー用ラテックスの製造方法およびフォームラバーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、フォームラバー製造用途のラテックスとしては、比較的高濃度(たとえば、固形分濃度60重量%以上)のものが好適に使用されている。一方、通常の乳化重合によって製造されるラテックスは、相対的に低濃度であるため、フォームラバー製造用途に用いるためには、濃縮が必要となる。しかしながら、通常の乳化重合によって製造されるラテックスは、ラテックス粒子が小さく(たとえば、数平均粒子径が0.2μm以下であり)、そのまま濃縮すると、ラテックスの流動性が低下する。そこで、ラテックス中のゴム粒子を肥大化させる方法が検討されている。
【0003】
ラテックス中のゴム粒子を肥大化させる方法としては、(A)重合の過程で粒子を肥大化させる方法と、(B)重合により生成したラテックスを後処理によって粒子を肥大化させる方法とに大別される。(A)の方法では重合時間が長くなり、生産性が低いなどの問題があった。これらの方法に代わる方法として、(B)の方法が盛んに検討されるようになってきた。
【0004】
たとえば、特許文献1には、酸性で界面活性能が低下する乳化剤を主体とする乳化剤を用いて乳化重合法により得た小粒子径ポリマーラテックスに、酸を加えてラテックス粒子を凝集させて肥大化する方法において、あらかじめ小粒子径ポリマーラテックスに酸性で良好な界面活性能を有する乳化剤を添加しておき、次いで第一段階として、小粒子径ポリマーラテックスに酸を加えて凝集させて中粒子径ポリマーラテックスを得た後、アルカリ物質で酸を中和して中粒子径ポリマーラテックスを安定化し、第二段階として、再びこの中粒子径ポリマーラテックスに酸および高分子凝集剤を加えて凝集させて粒径5,000Å以上の大粒子径ポリマーラテックスを得ることを特徴とするポリマーラテックスの凝集方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の方法では、ラテックス中のゴム粒子を肥大化させるために多くの工程を経る必要があり、フォームラバー用ラテックスをより高い生産性にて生産することができる技術が求められている。また、フォームラバー用ラテックスとしては、ゲル化性に優れ、かつ、フォームラバー成形時の収縮抑制性にも優れたものが求められている。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れたフォームラバー用ラテックスを、高い生産性にて生産することができる、フォームラバー用ラテックスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、ゴムラテックスにスルホン酸塩構造を有する界面活性剤を特定量含有させることにより得られ、固形分濃度が特定の範囲に調整された安定化ラテックスに、pKaが0~4の酸性物質を添加する製造方法により、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、数平均粒子径が0.40μm以下であるゴム粒子が水中に分散してなるゴムラテックスを準備する準備工程、前記ゴムラテックスに、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤を、前記ゴムラテックス中のゴム成分100重量部に対して0.15~2.0重量部の割合で添加し、固形分濃度が40重量%以上60重量%未満の範囲とされた安定化ラテックスを得る安定化工程、および、前記安定化ラテックスに、pKaが0~4の酸性物質を添加することにより、前記ゴム粒子を肥大化させ、数平均粒子径が0.7μm以上である肥大化ゴム粒子が水中に分散してなる粒径肥大化ラテックスを得る粒径肥大化工程を備えるフォームラバー用ラテックスの製造方法が提供される。
【0010】
本発明の製造方法において、前記ゴム粒子が、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体の粒子であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記スルホン酸塩構造を有する界面活性剤が、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩であることが好ましい。
前記準備工程が、脂肪酸塩の存在下に、水中で、単量体を乳化重合する工程であることが好ましい。
本発明の製造方法は、前記粒径肥大化ラテックスを、固形分濃度60重量%以上に濃縮する濃縮工程を備えることが好ましい。
さらに、本発明の製造方法により得られるフォームラバー用ラテックスを発泡および凝固させるフォームラバーの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法によれば、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れたフォームラバー用ラテックスを、高い生産性にて生産することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ラテックスの粒径肥大化方法として、ラテックスに粒径肥大化剤を添加する等の方法により、ラテックスの分散性を不安定化させることで、ゴム粒子を合一化させる方法が検討されている。
【0013】
たとえば、ラテックス粒子を形成する単量体をラテックスに添加し、強撹拌することにより、ラテックスの分散性を不安定化することができる。しかしながら、この方法では、ラテックス中に残留する単量体を処理する工程が追加で必要となるため、フォームラバー用ラテックスをより高い生産性にて生産することができる技術が求められている。
【0014】
また、ラテックスに、カルボキシル基変性重合体のラテックスを添加し、撹拌等する方法により、ラテックスの分散性を不安定化することができる。しかしながら、この方法で得られるラテックスは、ゲル化に長時間を要する、すなわち、ゲル化性に劣るものであった。そのため、この方法で得られるラテックスをフォームラバーの生産に使用した場合には、フォームラバーの生産性に劣るため、フォームラバー用ラテックスとしての使用には適さなかった。
【0015】
さらに、粒径肥大化効率を高めるために、粒径肥大化剤を添加する際のラテックス濃度を高めることも検討されている。しかしながら、粒径肥大化剤を添加する際のラテックス濃度が高いほど、ラテックスが凝固しやすいという問題があった。
【0016】
これに対し、ゴムラテックスにスルホン酸塩構造を有する界面活性剤を特定量含有させることにより得られ、固形分濃度が特定の範囲に調整された安定化ラテックスに、pKaが0~4の酸性物質を添加する本発明の製造方法によれば、高い効率で粒径肥大化を行うことができ、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れたフォームラバー用ラテックスを、高い生産性にて生産することができる。
【0017】
<準備工程>
本発明の製造方法は、数平均粒子径が0.40μm以下であるゴム粒子が水中に分散してなるゴムラテックスを準備する準備工程を備える。
【0018】
ゴム粒子を構成するゴムとしては、特に限定されないが、たとえば、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体;スチレン-ブタジエン共重合体;合成ポリイソプレン;スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS);ポリブタジエン;天然ゴム;脱蛋白質天然ゴムなどが挙げられる。これらの中でも、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体またはスチレンブタジエ共重合体が好ましい。得られるフォームラバーを、風合い、および、耐油性、耐摩耗性等の耐久性に優れたものとすることができることから、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体がより好ましい。ゴム粒子を構成するゴムは、1種単独であってもよく、あるいは2種以上であってもよい。
【0019】
ゴム粒子を構成するゴムは、カルボキシル基などの変性基を有するものであってもよいが、ゲル化性の観点から、カルボキシル基を有しないゴムが好ましい。なお、カルボキシル基を有しないゴムとしては、カルボキシル基を実質的に有しないゴムであればよく、たとえば、不純物等に起因する程度の量(たとえば、単量体単位換算で、0.05重量%未満程度の量)であれば、カルボキシル基が含まれるものであってもよい。
【0020】
ニトリル基含有共役ジエン系共重合体は、共役ジエン単量体と、エチレン性不飽和ニトリル単量体とを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
【0021】
共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエン、イソプレンが好ましく、1,3-ブタジエンがより好ましい。これらの共役ジエン単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、共役ジエン単量体により形成される共役ジエン単量体単位の含有割合は、好ましくは20~95重量%であり、より好ましくは30~85重量%、さらに好ましくは40~80重量%である。共役ジエン単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0022】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、ニトリル基を含有するエチレン性不飽和単量体であれば特に限定されないが、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリルなどが挙げられる。なかでも、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、エチレン性不飽和ニトリル単量体により形成されるエチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合は、好ましくは5~80重量%であり、より好ましくは15~70重量%、さらに好ましくは20~60重量%である。エチレン性不飽和ニトリル単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0023】
共役ジエン単量体およびエチレン性不飽和ニトリル単量体と共重合可能なその他のエチレン性不飽和単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、マレイン酸モノまたはジメチル、フマル酸モノまたはジエチル、フマル酸モノまたはジ-n-ブチル、イタコン酸モノまたはジ-n-ブチル等のエチレン性不飽和カルボン酸のモノまたはジアルキルエステル;メトキシアクリレート、エトキシアクリレート、メトキシエトキシエチルアクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸のアルコキシアルキルエステル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基を有する(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド及びその誘導体;ジメチルアミノメチルアクリレート、ジエチルアミノメチルアクリレート等のアミノ基を有するアクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のα-オレフィン;ジシクロペンタジエン、ビニルノルボルネン等の非共役ジエン単量体などを挙げることができる。これらの単量体は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。ニトリル基含有共役ジエン系共重合体中における、その他のエチレン性不飽和単量体により形成されるその他の単量体単位の含有割合は、好ましくは40重量%以下であり、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは20重量%以下である。その他の単量体単位の含有割合を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーを、風合いおよび耐久性に優れたものとすることができる。
【0024】
また、スチレン-ブタジエン共重合体は、共役ジエン単量体としての1,3-ブタジエンにスチレンを共重合してなる共重合体であり、これらに加えて、必要に応じて用いられる、これらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体を共重合してなる共重合体であってもよい。
【0025】
ゴム粒子が水中に分散してなるゴムラテックスを調製する方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を採用することができる。ゴム粒子が水中に分散してなるゴムラテックスを調製する方法としては、たとえば、単量体を乳化重合する方法、単量体を溶液重合することにより得られるゴムの溶液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去する方法、固体のゴムを有機溶媒に溶解または微分散してなるゴムの溶液またはゴムの水性分散液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化し、必要により有機溶媒を除去する方法が挙げられる。なかでも、生産性の観点から、単量体を乳化重合することによりゴムラテックスを得る方法が好ましい。すなわち、準備工程において、単量体を乳化重合することが好ましい。
【0026】
単量体を乳化重合することによりゴムラテックスを得る方法としては、乳化剤の存在下に、水中で、単量体を乳化重合する方法であればよく、従来公知の方法を採用することができる。たとえば、単量体を乳化重合する際には、通常用いられる、重合開始剤、キレート剤、酸素補足剤、分子量調整剤、pH調整剤等の重合副資材を使用することができる。これら重合副資材の添加方法は特に限定されず、初期一括添加法、分割添加法、連続添加法などいずれの方法でもよい。
【0027】
乳化剤としては、特に限定されないが、たとえば、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤などが挙げられる。アニオン性乳化剤としては、たとえば、牛脂脂肪酸カリウム、部分水添牛脂脂肪酸カリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩;ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム、水添ロジン酸カリウム、水添ロジン酸ナトリウム等の樹脂酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、たとえば、ポリエチレングリコールエステル型、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドのブロック共重合体等のプルロニック(登録商標)型等の乳化剤が挙げられる。これらのなかでも、脂肪酸塩が好ましく、オレイン酸カリウム、オレイン酸ナトリウムがより好ましく、オレイン酸カリウムがさらに好ましい。また、これらの乳化剤は、単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。乳化剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.5~5重量部であり、より好ましくは1.5~4重量部である。
【0028】
重合開始剤としては、特に限定されないが、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジ-α-クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;などを挙げることができる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。重合開始剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.01~10重量部、より好ましくは0.01~2重量部である。
【0029】
また、過酸化物開始剤は還元剤との組み合わせで、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;などが挙げられる。これらの還元剤は単独で、または2種以上を組合せて用いることができる。還元剤の使用量は、過酸化物100重量部に対して3~1000重量部であることが好ましい。
【0030】
分子量調整剤としては、たとえば、n-ヘキシルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、t-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、t-ドデシルメルカプタン、n-ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;α-ベンジルオキシスチレン、α-ベンジルオキシアクリロニトリル、α-ベンジルオキシアクリルアミド、トリフェニルエタン、ペンタフェニルエタン、アクロレイン、メタアクロレイン、チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2-エチルヘキシルチオグリコレート、α-メチルスチレンダイマー、ターピノレンなどが挙げられる。これらの分子量調整剤は、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。分子量調整剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対し、好ましくは0.1~3重量部、より好ましくは0.2~2重量部、特に好ましくは0.3~1.5重量部である。分子量調整剤の使用量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を向上させることができる。
【0031】
乳化重合する際に使用する水の量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、80~600重量部が好ましく、100~200重量部がさらに好ましい。
【0032】
乳化重合反応は、連続式、回分式のいずれでもよく、重合時間等も特に限定されない。単量体の添加方法としては、たとえば、反応容器に使用する単量体を一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。単量体を混合して連続的または断続的に添加する場合、混合物の組成は、一定としても、あるいは変化させてもよい。また、各単量体は、使用する各種単量体を予め混合してから反応容器に添加しても、あるいは別々に反応容器に添加してもよい。なお、ゴムラテックスとして、ニトリル基含有共役ジエン系共重合体のラテックスを製造する場合において、重合反応を開始した後に、単量体の一部を反応器に添加して重合を継続する方法を用いる場合には、たとえば、エチレン性不飽和ニトリル単量体および共役ジエン単量体の一部を反応器に添加して、重合反応を開始した後、反応器内の重合反応率が20~65%である間に、共役ジエン単量体の残部を一括または分割して反応器に添加し、さらに重合反応を継続する方法が挙げられる。この際においては、重合反応を開始した後に添加する共役ジエン単量体の割合は、重合に用いる共役ジエン単量体全量の20~60重量%とすることが好ましい。
【0033】
以上のように単量体混合物を乳化重合し、所定の重合転化率に達した時点で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合を停止する際の重合転化率は、特に限定されないが、好ましくは75重量%以上である。重合転化率は低すぎても、高すぎても、生産性が低下する傾向にある。重合温度は、特に限定されないが、好ましくは0~50℃、より好ましくは5~35℃である。
【0034】
重合停止剤としては、特に限定されないが、たとえば、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ハイドロキノン誘導体、カテコール誘導体、ならびに、ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸およびこれらのアルカリ金属塩などが挙げられる。重合停止剤の使用量は、重合に用いる単量体100重量部に対して、好ましくは0.05~2重量部である。
【0035】
以上のようにして重合反応を行い、ゴム粒子が水中に分散してなるゴムラテックスを得ることができる。必要に応じてゴムラテックスから未反応単量体を除去してもよい。
【0036】
ゴムラテックス中におけるゴム粒子の数平均粒子径は0.40μm以下である。ゴム粒子の数平均粒子径は、フォームラバー用ラテックスの生産性の観点から、0.10μm以上0.30μm以下が好ましく、0.15μm以上0.20μm以下がより好ましい。ゴム粒子の数平均粒子径は、光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて測定することができる。
【0037】
ゴム粒子の数平均粒子径は、単量体を乳化重合することによりゴムラテックスを得る場合には、乳化剤の種類および量、開始剤の種類および量、水量、重合時間等の重合条件を調整することにより、制御することができる。また、ゴムの溶液またはゴムの水性分散液を、乳化剤の存在下に、水中で乳化することによりゴムラテックスを得る場合には、乳化剤の種類および量、水量、ゴムの溶液またはゴムの水性分散液と水との混合条件等の乳化条件を調整することにより、制御することができる。
【0038】
ゴムラテックスの固形分濃度は、通常、10重量%~50重量%である。ゴムラテックスの固形分濃度は、40重量%未満であってもよい。ゴムラテックスの固形分濃度は、安定化ラテックスの固形分濃度の測定方法として後述する方法により測定することができる。
【0039】
ゴムラテックスは、キレート剤、脱酸素剤、老化防止剤、防腐剤、抗菌剤、消泡剤などを適宜含有してもよい。
【0040】
<安定化工程>
本発明の製造方法は、上記した準備工程で得られたゴムラテックスに、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤を、ゴム成分100重量部に対して0.15~2.0重量部の割合で添加し、必要に応じて固形分濃度を調整することにより、固形分濃度が40重量%以上60重量%未満の範囲とされた安定化ラテックスを得る安定化工程を備える。
【0041】
スルホン酸塩構造を有する界面活性剤は、スルホン酸アニオン基(-SO3-)と対カチオンとの塩からなる構造を少なくとも1つ有する界面活性剤である。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤としては、たとえば、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)等のナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カリウム、デシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、デシルベンゼンスルホン酸カリウム、セチルベンゼンスルホン酸ナトリウム、セチルベンゼンスルホン酸カリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸ナトリウム、ジ(2-エチルヘキシル)スルホコハク酸カリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等のアルキルスルホコハク酸塩;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸カリウム等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩などが挙げられる。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
アルキルベンゼンスルホン酸塩は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0043】
スルホン酸塩構造を有する界面活性剤としては、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物塩または直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましく、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩または直鎖状アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩がより好ましく、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)または直鎖状ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩がさらに好ましく、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)が特に好ましい。
【0044】
スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の添加割合は、ゴムラテックス中に含まれるゴム成分100重量部に対して0.15~2.0重量部である。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の添加量が少なすぎると、後述する粒径肥大化工程において、pKaが0~4の酸性物質を添加した際に凝固しやすい。一方、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の添加量が多すぎると、得られるフォームラバー用ラテックスがゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に劣るものとなる。スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の添加割合は、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、ゴムラテックス中のゴム成分100重量部に対して0.15~2.0重量部であり、好ましくは0.20~2.0重量部であり、より好ましくは0.20~1.9重量部である。
【0045】
また、安定化工程においては、ゴムラテックスにスルホン酸塩構造を有する界面活性剤を添加する前、あるいは、添加した後に、必要に応じてゴムラテックスの固形分濃度を調整することにより、安定化工程において得られる安定化ラテックスの固形分濃度を40重量%以上60重量%未満の範囲とする。
【0046】
ゴムラテックスの固形分濃度の調整は、特に限定されないが、準備工程により得られたゴムラテックスの固形分濃度に応じて、ゴムラテックスを濃縮または希釈する方法により行うことができる。
【0047】
ゴムラテックスを濃縮する方法としては、特に限定されないが、たとえば、減圧蒸留、常圧蒸留、遠心分離、膜濃縮等の方法が挙げられる。ゴムラテックスを濃縮する方法としては、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、蒸留が好ましく、減圧蒸留がより好ましい。また、ゴムラテックスを希釈する方法としては、水を添加する方法が挙げられる。
【0048】
蒸留を行う際の温度としては、30℃~100℃が好ましく、40℃~90℃がより好ましい。蒸留を行う際の圧力(ゲージ圧)としては、-0.1~0.0MPa0MPaが好ましく、-0.05~-0.099MPaがより好ましい。
【0049】
遠心分離は、たとえば、連続遠心分離機を用いて、遠心力を、好ましくは100~10,000G、遠心分離前のゴムラテックスの固形分濃度を、好ましくは2~15重量%、遠心分離機に送り込む流速を、好ましくは500~1700Kg/hr、遠心分離機の背圧(ゲージ圧)を、好ましくは0.03~1.6MPaの条件にて実施することが好ましく、遠心分離後の軽液として、安定化ラテックスを得ることができる。
【0050】
安定化ラテックスの固形分濃度は、40重量%以上60重量%未満である。安定化ラテックスの固形分濃度が低すぎると、後述する粒径肥大化工程における酸性物質の添加効果が十分に得られず、粒径肥大化を適切に行うことができない。安定化ラテックスの固形分濃度は、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、好ましくは40~55重量であり、より好ましくは42~52重量%である。
【0051】
安定化ラテックスの固形分濃度は、以下の方法により測定できる。
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させる。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出する。
固形分濃度(重量%)=(X3-X1)×100/X2
【0052】
<粒径肥大化工程>
本発明の製造方法は、上述した安定化工程で得られた安定化ラテックスに、pKaが0~4の酸性物質を添加することにより、前記ゴム粒子を肥大化させ、数平均粒子径が0.7μm以上である肥大化ゴム粒子が水中に分散してなる粒径肥大化ラテックスを得る粒径肥大化工程を備える。
【0053】
粒径肥大化工程において、pKaが0~4の酸性物質を用いる。酸性物質とは、水中で電離した場合にH+を放出する物質である。酸性物質のpKaが小さすぎると、ゴムラテックスが凝固しやすいという問題がある。一方、酸性物質のpKaが大きすぎると、粒径肥大化が進行しにくく、数平均粒子径が0.7μm以上である肥大化ゴム粒子を形成することが困難となる。また、酸性物質のpKaが大きすぎると、得られるフォームラバー用ラテックスは、フォームラバー成形時の収縮抑制性にも劣るものとなる。
【0054】
本明細書において、pKaとは、25℃の水中における解離指数を表す。解離指数とは、HAで表される酸が、水中において、H+とA-に電離し、電離平衡となった状態における、平衡定数Ka:
Ka=[H+][A-]/[HA]
([ ]は各物質のモル濃度を表す。)
の逆数の常用対数である。
【0055】
酸性物質が、多段階で電離する物質である場合には、酸性物質のpKaは、イオン化前の酸性物質と、一段階電離した物質(一価のアニオンとH+)とが電離平衡となった状態における平衡定数から算出されるpKaを意味する。たとえば、本明細書において、リン酸のpKaは、H3PO4と、H2PO4
-およびH+との電離平衡状態における平衡定数から算出される解離指数pKa=2.12を意味する。
【0056】
pKaが0~4の酸性物質としては、たとえば、シュウ酸、亜硫酸、リン酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、乳酸が挙げられる。pKaが0~4の酸性物質としては、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、リン酸またはクエン酸が好ましく、リン酸がより好ましい。pKaが0~4の酸性物質は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
pKaが0~4の酸性物質のpKaは、0~4であればよく、特に限定されないが、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、1.0~3.5が好ましく、1.5~3.3がより好ましく、1.8~2.4がさらに好ましい。
【0058】
粒径肥大化工程における、pKaが0~4の酸性物質の添加量としては、特に限定されないが、得られるフォームラバー用ラテックスの安定性の観点から、安定化ラテックス100重量部に対して0.1~50重量部が好ましく、0.5~20重量部がより好ましい。
【0059】
pKaが0~4の酸性物質を安定化ラテックスに添加する方法としては、純粋なpKaが0~4の酸性物質を、そのまま、安定化ラテックスに添加する方法や、pKaが0~4の酸性物質の溶液または分散液を調製し、得られた溶液または分散液を安定化ラテックスに添加する方法が挙げられる。フォームラバー用ラテックスの安定性および生産性の観点から、pKaが0~4の酸性物質の溶液または分散液を調製し、得られた溶液または分散液を安定化ラテックスに添加する方法が好ましい。pKaが0~4の酸性物質の溶液または分散液中における、pKaが0~4の酸性物質の濃度は、pKaが0~4の酸性物質の種類や、安定化ラテックスの固形分濃度等に応じて適宜決定すればよいが、フォームラバー用ラテックスのゲル化性、安定性および生産性の観点から、1重量%~30重量%が好ましく、2重量%~20重量%がより好ましい。
【0060】
pKaが0~4の酸性物質を安定化ラテックスに添加する際には、全量のpKaが0~4の酸性物質を一度に添加してもよく、pKaが0~4の酸性物質を複数回に分割して添加してもよく、pKaが0~4の酸性物質を連続的に添加してもよい。得られるフォームラバー用ラテックスの安定性の観点から、pKaが0~4の酸性物質を複数回に分割して安定化ラテックスに添加する方法、または、pKaが0~4の酸性物質を連続的に安定化ラテックスに添加する方法が好ましい。
【0061】
pKaが0~4の酸性物質を複数回に分割して安定化ラテックスに添加する方法、または、pKaが0~4の酸性物質を連続的に安定化ラテックスに添加する方法において、安定化ラテックスへのpKaが0~4の酸性物質の添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、0.5~120分間が好ましく、0.5~60分間がより好ましい。
【0062】
粒径肥大化工程においては、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、安定化ラテックスを撹拌しながらpKaが0~4の酸性物質を添加することが好ましい。安定化ラテックスの撹拌方法としては、たとえば、パドル型撹拌翼等の撹拌装置を用いて、回転速度50~2,500rpmで撹拌する方法が挙げられる。
【0063】
また、粒径肥大化工程においては、pKaが0~4の酸性物質を安定化ラテックスに添加した後に、安定化ラテックスを撹拌してもよい。pKaが0~4の酸性物質を添加した後の、安定化ラテックスの撹拌条件としては、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、回転速度は50~2,500rpmが好ましく、50~1000rpmがより好ましく、撹拌時間は0.5時間~12時間が好ましく、0.5時間~5時間がより好ましい。
【0064】
粒径肥大化工程により、ゴム粒子を肥大化させ、数平均粒子径が0.7μm以上の肥大化ゴム粒子とする。肥大化ゴム粒子の数平均分子量が小さすぎると、得られるフォームラバー用ラテックスがフォームラバー成形時の収縮抑制性に劣るものとなる。粒径肥大化ラテックス中における肥大化ゴム粒子の数平均粒子径としては、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができ、さらに、得られるフォームラバーの品質を向上することができることから、好ましくは0.75~5μm、より好ましくは0.75~4μmである。粒径肥大化ラテックス中における肥大化ゴム粒子の数平均粒子径は、ゴムラテックス中におけるゴム粒子の数平均粒子径の測定方法と同様にして測定することができる。
【0065】
粒径肥大化工程は、特に限定されないが、pH2.0~6.0である粒径肥大化ラテックスを得る工程であることが好ましい。ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、粒径肥大化ラテックスのpHとしては、3.0~5.5がより好ましく、3.0~5.2がさらに好ましい。
【0066】
本発明の製造方法は、粒径肥大化ラテックスにアルカリ水溶液を添加する工程を含むことが好ましい。粒径肥大化ラテックスにアルカリ水溶液を添加することにより、安定性に優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができる。
【0067】
アルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ金属水酸化物の水溶液;炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液などのアルカリ金属炭酸塩の水溶液;炭酸水素ナトリウム水溶液などのアルカリ金属炭酸水素塩の水溶液;アンモニア水溶液;トリメチルアミン水溶液、トリエタノールアミン水溶液などの有機アミン化合物の水溶液;等が挙げられるが、アルカリ金属水酸化物の水溶液またはアンモニアの水溶液が好ましく、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニアの水溶液がより好ましく、水酸化カリウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液がさらに好ましい。
【0068】
アルカリ水溶液を添加した後の、粒径肥大化ラテックスのpHとしては、7.5~12.0が好ましく、8.0~11.0がより好ましい。
【0069】
本発明の製造方法は、粒径肥大化ラテックスを固形分濃度60重量%以上に濃縮する工程を含むことが好ましい。
【0070】
粒径肥大化工程において、数平均粒子径が0.7μm以上である肥大化ゴム粒子が水中に分散してなる粒径肥大化ラテックスを得ることができる。このような粒径肥大化ラテックスは、濃縮時の流動性に優れており、固形分濃度を容易に60重量%以上(フォームラバー製造用途として好適な固形分濃度)とすることができる。そして、粒径肥大化ラテックスを、固形分濃度60重量%以上に濃縮することにより、フォームラバー用ラテックスを、フォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたものとすることができ、さらには、得られるフォームラバーの品質(たとえば、気泡の均一性や強度)を向上させることもできる。
【0071】
粒径肥大化ラテックスを濃縮する方法としては、ゴムラテックスを濃縮する方法として上述した方法およびその条件を適宜採用することができる。粒径肥大化ラテックスを濃縮する方法としては、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができることから、蒸留が好ましく、減圧蒸留がより好ましい。
【0072】
濃縮後の粒径肥大化ラテックスの固形分濃度としては、60重量%以上が好ましい。ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産することができ、さらに、得られるフォームラバーの品質を向上することもできることから、濃縮後の粒径肥大化ラテックスの固形分濃度としては、60~75重量%がより好ましく、60~70重量%がさらにより好ましい。
【0073】
本発明の製造方法が、粒径肥大化ラテックスにアルカリ水溶液を添加する工程、および、粒径肥大化ラテックスを固形分濃度60重量%以上に濃縮する工程を含む場合には、粒径肥大化ラテックスにアルカリ水溶液を添加した後に、アルカリ水溶液を添加した粒径肥大化ラテックスを固形分濃度60重量%以上に濃縮してもよく、粒径肥大化ラテックスを固形分濃度60重量%以上に濃縮した後に、濃縮後の粒径肥大化ラテックスにアルカリ水溶液を添加してもよい。ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性により優れ、安定性にも優れたフォームラバー用ラテックスを、より高い生産性にて生産する観点から、粒径肥大化ラテックスにアルカリ水溶液を添加した後に、アルカリ水溶液を添加した粒径肥大化ラテックスを固形分濃度60重量%以上に濃縮することが好ましい。
【0074】
フォームラバー用ラテックスには、さらに、気泡安定剤;キレート剤;脱酸素剤;老化防止剤;防腐剤;抗菌剤;消泡剤;着色剤;増粘剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤などを配合してもよい。
【0075】
気泡安定剤としては、フォームラバーの製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、エチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物(たとえば、商品名「トリメンベース」、Crompton Corp社製)、ヘキサフルオロケイ酸塩などが挙げられる。気泡安定剤の配合量は、フォームラバー用ラテックス中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.4~10重量部、より好ましくは0.4~6重量部である。気泡安定剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーに含まれる気泡を微細で均一なものとすることができ、柔軟性および強度を向上させることができる。
【0076】
<フォームラバー用ラテックス組成物>
本発明の製造方法により得られるフォームラバー用ラテックスに、架橋剤を配合することで、フォームラバー用ラテックス組成物としてもよい。
【0077】
架橋剤としては、たとえば、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリン・ジスルフィド、アルキルフェノール・ジスルフィド、N,N’-ジチオ-ビス(ヘキサヒドロ-2H-アゼピノン-2)、含りんポリスルフィド、高分子多硫化物、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等の硫黄含有化合物が挙げられる。これらのなかでも、硫黄が好ましく使用できる。架橋剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0078】
架橋剤の配合量としては、特に限定されないが、フォームラバー用ラテックス組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~10重量部、より好ましくは0.2~3重量部である。架橋剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0079】
また、フォームラバー用ラテックス組成物には、さらに架橋促進剤を配合することが好ましい。
【0080】
架橋促進剤としては、フォームラバーの製造において通常用いられるものが使用でき、たとえば、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ-2-エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸などのジチオカルバミン酸類およびそれらの亜鉛塩;2-メルカプトベンゾチアゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2-メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2-(2,4-ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2-(N,N-ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(2,6-ジメチル-4-モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2-(4′-モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホニリル-2-ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3-ビス(2-ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリアなどが挙げられるが、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、2ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。架橋促進剤は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0081】
架橋促進剤の配合量は、フォームラバー用ラテックス組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~5重量部であり、より好ましくは0.1~2重量部である。架橋剤促進剤の配合量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0082】
また、フォームラバー用ラテックス組成物には、さらに酸化亜鉛を配合することが好ましい。
【0083】
酸化亜鉛の含有量は、特に限定されないが、重合体ラテックスに含まれる重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部、より好ましくは0.2~2重量部である。酸化亜鉛の配合量を上記範囲とすることにより、得られるフォームラバーの強度を高めることができる。
【0084】
フォームラバー用ラテックス組成物の調製方法は、特に限定されないが、たとえば、ボールミル、ニーダー、ディスパー等の分散機を用いて、フォームラバー用ラテックスに、架橋剤、および必要に応じて配合される各種配合剤を混合する方法や、上記の分散機を用いて、フォームラバー用ラテックス以外の配合成分の水性分散液を調製した後、該水性分散液をフォームラバー用ラテックスに混合する方法などが挙げられる。
【0085】
フォームラバー用ラテックス組成物に、キレート剤;脱酸素剤;老化防止剤;防腐剤;抗菌剤;消泡剤;着色剤;増粘剤;カーボンブラック、シリカ、タルク等の補強剤;炭酸カルシウム、クレー等の充填剤;紫外線吸収剤;可塑剤;pH調整剤などを添加してもよい。
【0086】
pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ金属の炭酸水素塩;アンモニア;トリメチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機アミン化合物;等が挙げられるが、アルカリ金属の水酸化物またはアンモニアが好ましい。
【0087】
<フォームラバーの製造方法>
本発明の製造方法で得られるフォームラバー用ラテックスおよび上記のフォームラバー用ラテックス組成物は、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れている。よって、本発明の製造方法で得られるフォームラバー用ラテックスまたは上記のフォームラバー用ラテックス組成物を用いることで、収縮の抑制された高品質のフォームラバーを高い生産性にて製造することができる。フォームラバーの製造方法としては、本発明の製造方法で生産されるフォームラバー用ラテックスまたは上記のフォームラバー用ラテックス組成物を、発泡および凝固させる製造方法が好ましい。
【0088】
フォームラバー用ラテックスまたは上記のフォームラバー用ラテックス組成物を発泡させる際には、通常空気が用いられる。たとえば、フォームラバー用ラテックスまたは上記のフォームラバー用ラテックス組成物を攪拌し、空気を巻き込むことで発泡させることができる。この際、たとえば、オークス発泡機、超音波発泡機等を用いることができる。また、炭酸アンモニウム、重炭酸ソーダ等の炭酸塩;アゾジカルボン酸アミド、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;ベンゼンスルフォニルヒドラジド等のガス発生物質をフォームラバー用ラテックスまたは上記のフォームラバー用ラテックス組成物に添加して発泡させることもできる。
【0089】
フォームラバー用ラテックスまたは上記のフォームラバー用ラテックス組成物を発泡させて、発泡物を得た後、発泡状態を固定化するために、発泡物を凝固させることが好ましい。凝固方法は、発泡物をゲル化し、固化させることができる方法であればよく、従来公知の方法を用いることができるが、たとえば、ヘキサフルオロ珪酸ナトリウム(珪フッ化ナトリウム)、ヘキサフルオロ珪酸カリウム(珪フッ化カリウム)、チタン珪フッ化ソーダ等のフッ化珪素化合物などの常温凝固剤を、発泡物に添加するダンロップ法(常温凝固法);オルガノポリシロキサン、ポリビニルメチルエーテル、硫酸亜鉛アンモニウム錯塩などの感熱凝固剤を、発泡物に添加する感熱凝固法;冷凍凝固法等が使用される。常温凝固剤、感熱凝固剤などの凝固剤の使用量は、特に限定されないが、発泡物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.5~10重量部、より好ましくは0.5~8重量部である。
【0090】
そして、発泡物に凝固剤を添加した後、所望の形状の型に移し、凝固を行うことで、フォームラバーを得ることができる。また、凝固を行った後に、発泡物を架橋させるために、加熱してもよい。架橋の条件は、好ましくは100~160℃の温度で、好ましくは15~120分の加熱処理を施す条件とすることができる。
【0091】
得られたフォームラバーについては、型から取り出した後、洗浄することが好ましい。洗浄の方法としては、特に限定されないが、たとえば、洗濯機等を用い、20~70℃程度の水で、5~15分程度攪拌して洗浄する方法が挙げられる。洗浄後、水切りをし、フォームラバーの風合いを損なわないように30~90℃程度の温度で乾燥することが好ましい。このようにして得られたフォームラバーは、たとえば、所定の厚さにスライスし、所定形状に切断した後、側面を回転砥石等で研磨することによって、パフ(化粧用スポンジ)等として用いることができる。
【0092】
本発明のフォームラバー用ラテックスまたは上記のフォームラバー用ラテックス組成物を用いて得られるフォームラバーは、マットレス、パフ(化粧用スポンジ)、ロール、衝撃吸収剤等の各種用途に好適に用いることができる。
【実施例】
【0093】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」および「%」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0094】
<固形分濃度>
アルミ皿(重量:X1)に試料2gを精秤し(重量:X2)、これを105℃の熱風乾燥器内で2時間乾燥させた。次いで、デシケーター内で冷却した後、アルミ皿ごと重量を測定し(重量:X3)、下記の計算式にしたがって、固形分濃度を算出した。
固形分濃度(重量%)=(X3-X1)×100/X2
【0095】
<ゴム粒子の数平均分子量>
光散乱回折粒径測定装置(型式「LS-13320」、ベックマンコールター社製)を用いて、ゴム粒子の数平均粒子径を求めた。
【0096】
<ゲル化時間>
フォームラバー用ラテックス中のゴム成分100部に対して、加硫系水分散液(コロイド硫黄/ジチオカルバミン酸塩系加硫促進剤ノクセラーEZ(大内新興化学工業社製)/チアゾール系加硫促進剤ノクセラーMZ(大内新興化学工業社製)=2/1/1(重量比)、固形分濃度50%)4部、酸化亜鉛水分散液(固形分濃度50%)3部、気泡安定剤(トリメンベース:CromptonCorp製)1部を添加し、十分に分散させることで、フォームラバー用ラテックス組成物を得た。得られたフォームラバー用ラテックス組成物について、上記方法にしたがって、を評価した。
フォームラバー用ラテックスを、スタンドミキサー(エレクトロラックス社製、ESM945)を用いて攪拌して発泡させ、攪拌前の体積に対して5.0倍の体積を有する発泡物を得た。得られた発泡物に、珪フッ化ナトリウム水分散液(固形分濃度20重量%)を、得られた発泡物中のゴム成分100部に対する珪フッ化ナトリウムの添加量が1.5部となるように添加し、さらに1分間撹拌することで、ゲル化性発泡物を得た。ゲル化性発泡物を得てから、ゲル化性発泡物を手で触れてもゲル化性発泡物が付着しなくなるまでの時間を求め、以下の基準で評価した。
○:ゲル化時間が5分以内であった。
△:ゲル化時間が5分超10分以内であった。
×:ゲル化時間が10分超であった。
ゲル化時間が短いほど、フォームラバー用ラテックスがゲル化性に優れることを意味する。
【0097】
<フォームラバー成形時の収縮率>
全ての実施例および比較例において、同じ形状のシャーレを用いた。ゲル化時間測定と同時にしてゲル化性発泡物を得た。予め決定した高さ(すなわち架橋前の発泡物の高さ)まで、ゲル化性発泡物をシャーレに流し入れ、110℃で40分間架橋させ、得られた架橋物の高さを測定し、次式により収縮率を求めた。
収縮率(%)=[(架橋物の高さ)-(架橋前の発泡物の高さ)]/(架橋前の発泡物の高さ)×100
収縮率が小さいほど、フォームラバー用ラテックスがフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れることを意味する。
【0098】
<実施例1>
耐圧反応容器に、水200部、オレイン酸カリウム(OLK)3部、アクリロニトリル55部、t-ドデシルメルカプタン0.5部、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート0.03部、硫酸第一鉄0.003部、エチレンジアミン四酢酸・ナトリウム0.008部を添加し、十分に脱気した後、1,3-ブタジエン25部を添加した。次いで、重合開始剤としてクメンハイドロパーオキサイド0.05部を添加して、反応温度5℃で乳化重合を開始した。重合転化率が40%に達した時点で、1,3-ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。さらに、重合転化率が60%に達した時点で、1,3-ブタジエンを10部添加し、重合反応を継続した。重合転化率が80%になった時点で、ジエチルヒドロキシルアミン0.25部および水5部からなる重合停止剤溶液を添加して重合反応を停止させ、未反応単量体を除去し、ゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中のゴム粒子の数平均分子量は、180nmであった。
【0099】
得られたゴムラテックスに、NASF水溶液(β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩(NASF)の濃度45重量%水溶液、製品名「デモールT-45」、花王社製)を、ゴム成分100部に対するNASF量が1.5部となるように添加した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱することにより、安定化ラテックスを得た。安定化ラテックスの固形分濃度を、上記方法にしたがって測定した。結果を表1に示す。
【0100】
得られた安定化ラテックスに、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油(商品名「DF714S」、星光PMC社製)0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、リン酸水溶液(リン酸濃度10重量%)を、安定化ラテックス100部に対するリン酸の割合が1.7部となるように添加した。なお、リン酸水溶液の添加は複数回に分割して行い、リン酸水溶液の添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、30分間であった。リン酸水溶液の添加を終了した後、1.0時間撹拌を継続し、粒径肥大化ラテックスを得た。得られた粒径肥大化ラテックスのpHを表1に示す。また、得られた粒径肥大化ラテックスについて、上記方法にしたがって、ゴム粒子の平均粒子径を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
得られた粒径肥大化ラテックスに水酸化カリウム水溶液(水酸化カリウム濃度3重量%)を添加して、粒径肥大化ラテックスのpHを10.0に調整した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱し、固形分濃度65重量%のフォームラバー用ラテックスを得た。フォームラバー用ラテックスは、流動性に優れるものであった。フォームラバー用ラテックスについて、上記方法にしたがって、固形分濃度、ゲル化時間およびフォームラバー成形時の収縮率を測定・評価した。結果を表1に示す。
【0102】
<実施例2>
NASF水溶液の添加量を、ゴムラテックス中のゴム成分100部に対するNASF量が0.3部となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックスを得た。フォームラバー用ラテックスは、流動性に優れるものであった。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0103】
<実施例3>
重合反応器に、スチレン30部、1,3-ブタジエン70部、t-ドデシルメルカプタン0.3部、イオン交換水132部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム3部、β-ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物ナトリウム塩0.5部,過硫酸カリウム0.3部及びエチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩0.05部を仕込み、重合温度を60℃に保持して重合を開始した。
重合転化率が60%になった時点で、t-ドデシルメルカプタン0.15部を添加して、重合温度を70℃に昇温し、その後、重合転化率が80%になった時点で、t-ドデシルメルカプタン0.15部を添加して重合反応を継続し、重合転化率が95%に達するまで反応させた。その後、重合停止剤としてジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム0.1部を添加して重合反応を停止し、共重合体ラテックスを得た。
得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去し、ゴムラテックスを得た。ゴムラテックス中のゴム粒子の数平均分子量は、180nmであった。
【0104】
上記にて得られたゴムラテックスを用いた以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックスを得た。フォームラバー用ラテックスは、流動性に優れるものであった。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0105】
<実施例4>
実施例1と同様にして得られたゴムラテックスに、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを、ゴムラテックス中のゴム成分100部に対する直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム量が0.3部となるように添加した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱することにより、安定化ラテックスを得た。
【0106】
得られた安定化ラテックスに、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、クエン酸水溶液(クエン酸濃度10重量%)を、安定化ラテックス100部に対するクエン酸の割合が2.5部となるように添加した。なお、クエン酸水溶液の添加は複数回に分割して行い、クエン酸水溶液の添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、30分間であった。クエン酸水溶液の添加を終了した後、1.0時間撹拌を継続し、粒径肥大化ラテックスを得た。
【0107】
得られた粒径肥大化ラテックスを-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱し、固形分濃度65重量%のフォームラバー用ラテックスを得た。フォームラバー用ラテックスは、流動性に優れるものであった。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0108】
<比較例1>
実施例1と同様にして得られたゴムラテックスに、NASF水溶液を、ゴムラテックス中のゴム成分100部に対するNASF量が1.5部となるように添加し、加熱は行わずに、安定化ラテックスを得た。
【0109】
得られた安定化ラテックスを用いた以外は、実施例1と同様にして、粒径肥大化ラテックスを得た。さらに、得られた粒径肥大化ラテックスを、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱したところ、ラテックスの流動性が著しく低下し、固形分濃度が52重量%となった時点で濃縮が困難となったため、加熱を停止してフォームラバー用ラテックスを得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0110】
<比較例2>
実施例1と同様にして得られたゴムラテックスに、オレイン酸カリウムを、ゴムラテックス中のゴム成分100部に対して1.5部添加した後、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱し、安定化ラテックスを得た。得られた安定化ラテックスについて、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0111】
得られた安定化ラテックスに、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、リン酸水溶液を、安定化ラテックス100部に対するリン酸の割合が1.7部となるように添加したところ、安定化ラテックスにおいて、ゴム成分の凝固が発生し、ラテックス状態を維持できないものとなった。
【0112】
<比較例3>
NASF水溶液の添加量を、ゴムラテックス中のゴム成分100部に対するNASF量が0.1部となる量に変更した以外は、実施例1と同様にして、安定化ラテックスを得た。得られた安定化ラテックスについて、実施例1と同様に測定した。結果を表1に示す。
【0113】
得られた安定化ラテックスに、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、リン酸水溶液を、安定化ラテックス100部に対するリン酸の割合が1.7部となるように添加したところ、安定化ラテックスにおいて、ゴム成分の凝固が発生し、ラテックス状態を維持できないものとなった。
【0114】
<比較例4>
NASF水溶液に代えて、直鎖ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを、ゴムラテックス中のゴム成分100部に対して5.0部の割合で添加した以外は、実施例1と同様にして、フォームラバー用ラテックスを得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0115】
<比較例5>
実施例1と同様にして、安定化ラテックスを得た。得られた安定化ラテックスに、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、塩酸水溶液(濃度3重量%)を、安定化ラテックス100部に対する塩酸の割合が0.3部となるように添加したところ、安定化ラテックスにおいて、ゴム成分の凝固が発生し、ラテックス状態を維持できないものとなった。
【0116】
<比較例6>
実施例1と同様にして、安定化ラテックスを得た。得られた安定化ラテックスに、消泡剤としての鉱油を基剤とする変性炭化水素油0.01部を添加し、パドル型攪拌翼を用いて、回転速度100rpmで撹拌した。撹拌を継続したまま、酢酸水溶液(濃度10重量%)を、安定化ラテックス100部に対する酢酸の割合が80部となるように添加した。なお、酢酸水溶液の添加は複数回に分割して行い、酢酸水溶液の添加を開始してから、添加を終了するまでの時間は、30分間であった。酢酸水溶液の添加を終了した後、1.0時間撹拌を継続し、粒径肥大化ラテックスを得た。
【0117】
得られた粒径肥大化ラテックスを、-0.05MPa(ゲージ圧)の減圧条件下、70℃で加熱したところ、ラテックスの流動性が著しく低下し、固形分濃度が55重量%となった時点で濃縮が困難となったため、加熱を停止してフォームラバー用ラテックスを得た。実施例1と同様に測定・評価した結果を表1に示す。
【0118】
【0119】
表1に示すように、ゴムラテックスにスルホン酸塩構造を有する界面活性剤を特定量含有させることにより得られ、固形分濃度が特定の範囲に調整された安定化ラテックスに、pKaが0~4の酸性物質を添加する製造方法によれば、ゲル化性およびフォームラバー成形時の収縮抑制性に優れたフォームラバー用ラテックスを、高い生産性にて生産することができた(実施例1~4)。
【0120】
一方、安定化ラテックスの固形分濃度が40%未満である場合や(比較例1)、pKaが4を超える酸性物質を用いた場合には(比較例6)、得られるフォームラバー用ラテックスは、フォームラバー成形時の収縮抑制性に劣るものであった。
【0121】
また、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の添加量が0.2部未満である場合や(比較例2,3)、pKaが0未満である酸性物質を用いた場合には(比較例5)、凝固が生じ、フォームラバー用ラテックスを生産することができなかった。
【0122】
さらに、スルホン酸塩構造を有する界面活性剤の添加量が過剰である場合には、得られるフォームラバー用ラテックスは、ゲル化性に劣るものであった(比較例4)。