(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】キャブタイヤケーブル
(51)【国際特許分類】
H01B 7/04 20060101AFI20240130BHJP
H01B 7/18 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H01B7/04
H01B7/18 E
(21)【出願番号】P 2020157053
(22)【出願日】2020-09-18
【審査請求日】2023-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山根 一貴
(72)【発明者】
【氏名】福里 宏史
【審査官】神田 太郎
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-103979(JP,U)
【文献】特開2018-023758(JP,A)
【文献】特開平07-192540(JP,A)
【文献】特開2012-181300(JP,A)
【文献】特開昭58-163105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/04
H01B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集合コアと、前記集合コアを被覆するシースと、を備えるキャブタイヤケーブルであって、
前記集合コアは、それぞれが撚り合わされた複数本の線心によって構成される2以上のコア層を含む複層構造を有し、
それぞれの前記コア層を構成している前記線心は、導体と、前記導体を被覆する絶縁体と、を有し、
前記集合コアの層間に、前記線心の前記絶縁体よりも静止摩擦係数が大きい介在が前記絶縁体に接して設けられて
おり、
それぞれの前記コア層を構成している前記線心は、いずれも同じ方向に撚られており、
それぞれの前記コア層の周囲に、前記線心の撚り方向と同方向に巻かれた線条体が設けられている、キャブタイヤケーブル。
【請求項2】
抗張力体及び当該抗張力体を覆うゴム被覆を備え、最内層の前記コア層の内側に配置されている心材を有し、
前記心材と最内層の前記コア層との間にも前記介在が設けられている、請求項1に記載のキャブタイヤケーブル。
【請求項3】
前記シースは、前記集合コアの周囲に設けられている内層シースと、前記内層シースの周囲に設けられている補強層と、前記補強層の周囲に設けられている外層シースと、を含む、請求項1又は2に記載のキャブタイヤケーブル。
【請求項4】
より外側の前記コア層を構成している前記線心ほど大きなピッチで撚られている、請求項1~3のいずれか1項に記載のキャブタイヤケーブル。
【請求項5】
前記絶縁体は、フッ素樹脂からなり、
前記介在は、ゴム材料からなる、請求項1~
4のいずれか1項に記載のキャブタイヤケーブル。
【請求項6】
前記フッ素樹脂は、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体であり、
前記ゴム材料は、クロロプレンゴムである、請求項
5に記載のキャブタイヤケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給ケーブルに関し、特にキャブタイヤケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、各種の電力供給ケーブルが開発され、使用されている。それら電力供給ケーブルの1つとしてキャブタイヤケーブルが知られている。キャブタイヤケーブルは、通電状態のまま移動可能な電力供給ケーブルであって、撚り合わされた複数本の線心(コア)と、コアの周囲に設けられたシースと、を有する。
【0003】
キャブタイヤケーブルは、例えば、港湾に設置されるコンテナクレーンで使用されている。多くのコンテナクレーンでは、ツイストロックと呼ばれる吊り金具を備えるスプレッダが昇降される。スプレッダには、オペレータによって遠隔操作される電動油圧ユニット等の電力機器が設けられており、それら電力機器に電力を供給するためにキャブタイヤケーブルが使用されている。
【0004】
コンテナクレーンの一種である垂直リールスプレッダ方式のコンテナクレーンで使用されているキャブタイヤケーブルは、回転駆動されるリールに巻かれている。この場合、キャブタイヤケーブルは、スプレッダの降下に伴ってリールから繰り出され、スプレッダの上昇に伴ってリールに巻き取られる。つまり、キャブタイヤケーブルは、自重による張力を受けつつ、リールから繰り返し繰り出され、また、リールに繰り返し巻き取られる。
【0005】
上記のように使用されるキャブタイヤケーブルは、その使用中に捩じれることがある。そして、ケーブルが捩じれると、シース内でコアが長手方向に移動し、座屈してしまうことがある。
【0006】
そこで、捩じれを防止するための工夫が施されたキャブタイヤケーブルが提案されている。例えば、特許文献1には、シース表面の所定範囲に複数の切込み筋が入れられたキャブタイヤケーブルが記載されている。特許文献1によれば、切込み筋が設けられた部分がリールに接触すると、当該部分が潰れる。すると、ケーブルの断面が部分的に扁平化し、捩じれ変形が起こり難くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、キャブタイヤケーブルの使用環境はますます過酷になりつつある。例えば、コンテナクレーンの大型化に伴って、スプレッダの昇降距離が長くなり、昇降速度も速くなっている。かかる状況の下、キャブタイヤケーブルの耐久性に低下傾向が見られる。具体的には、ケーブルの捩じれに起因すると思われるコアの座屈が従来よりも早期に、かつ、頻繁に発生する傾向が見られる。本件発明者らは、その原因について研究した結果、次のような知見を得た。
【0009】
図2を参照する。キャブタイヤケーブル100がリール101に巻き取られる際、キャブタイヤケーブル100は、既にリール101に巻き取られている当該キャブタイヤケーブル100の一部(先行部分100a)の上に重なる。その後、先行部分100aの上に重なったキャブタイヤケーブル100の他の一部(後続部分100b)は、回転しながら先行部分100aの隣に落下し、先行部分100aの横に並ぶ。キャブタイヤケーブル100の後続部分100bが回転しながら先行部分100aの隣に落下するとき、当該後続部分100bに捩じれが生じる。言い換えれば、リール101に近いキャブタイヤケーブル100の上部が周方向に捩じられる。すると、キャブタイヤケーブル100の下部は、上部の捩れ方向と反対方向に回転しようとするので、シース内でコアの撚りが緩み、コアがシース内を下方に移動する。この結果、キャブタイヤケーブルの耐久性が低下する。つまり、コアが従来よりも早期、かつ、頻繁に座屈する。
【0010】
本発明は、本件発明者らが得た上記知見に基づくものであって、キャブタイヤケーブルの耐久性をさらに向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のキャブタイヤケーブルは、集合コアと、前記集合コアを被覆するシースと、を備える。前記集合コアは、それぞれが撚り合わされた複数本の線心によって構成される2以上のコア層を含む複層構造を有する。また、それぞれの前記コア層を構成している前記線心は、導体と、前記導体を被覆する絶縁体と、を有する。そして、前記集合コアの層間に、前記線心の前記絶縁体よりも静止摩擦係数が大きい介在が前記絶縁体に接して設けられる。
【0012】
本発明の一態様では、抗張力体及び当該抗張力体を覆うゴム被覆を備え、最内層の前記コア層の内側に配置される心材が設けられる。そして、前記心材と最内層の前記コア層との間にも前記介在が設けられる。
【0013】
本発明の他の一態様では、前記シースは、前記集合コアの周囲に設けられている内層シースと、前記内層シースの周囲に設けられている補強層と、前記補強層の周囲に設けられている外層シースと、を含む。
【0014】
本発明の他の一態様では、より外側の前記コア層を構成している前記線心ほど大きなピッチで撚られる。
【0015】
本発明の他の一態様では、それぞれの前記コア層を構成している前記線心は、いずれも同じ方向に撚られ、それぞれの前記コア層の周囲に、前記線心の撚り方向と同方向に巻かれた線条体が設けられる。
【0016】
本発明の他の一態様では、前記絶縁体は、フッ素樹脂からなり、前記介在は、ゴム材料からなる。
【0017】
本発明の他の一態様では、前記フッ素樹脂は、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体であり、前記ゴム材料は、クロロプレンゴムである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐久性が向上したキャブタイヤケーブルが実現される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明が適用されたキャブタイヤケーブルの一例を示す断面図である。
【
図2】キャブタイヤケーブルに捩じれが生じる原因を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明のキャブタイヤケーブルの実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示されるように、本実施形態に係るキャブタイヤケーブル1は、心材10,集合コア20,介在30及びシース40を有し、その外径(D1)は34.0mm以上38.0mm以下である。
【0021】
図1に示されるように、集合コア20は、2以上のコア層を含む複層構造を有し、その外径(D2)は23.5mm以上26.0mm以下である。具体的には、集合コア20は、第1コア層21,第2コア層22及び第3コア層23からなる3層構造を有している。第1コア層21は、集合コア20の最内層のコア層であり、第3コア層23は、集合コア20の最外層のコア層である。尚、集合コア20の積層構造は、3層構造に限らず、例えば、最内層のコア層である第1コア層21と、最外層のコア層である第2コア層22からなる2層構造のキャブタイヤケーブル1であってもよい。また、第3コア層23の外周にさらに他のコア層が配置されていてもよい。スプレッダの昇降距離が長くなることや昇降速度が高速になることに対するキャブタイヤケーブルの耐久性向上の観点からは、3層構造からなる集合コア20とすることが好ましい。
【0022】
第1コア層21,第2コア層22及び第3コア層23のそれぞれは、所定方向に撚り合わされた複数本の線心25によって構成されている。具体的には、第1コア層21は8本の線心25によって構成され、第2コア層22は15本の線心25によって構成され、第3コア層23は21本の線心25によって構成されている。つまり、本実施形態に係るキャブタイヤケーブル1は、44心である。
【0023】
それぞれの線心25は、導体25aと、導体25aを被覆する絶縁体25bと、を有する絶縁電線である。尚、絶縁体25bの静止摩擦係数は、0.01以上0.4以下である。
【0024】
それぞれの線心25の導体25aは、銅や銅合金等の導線性材料によって形成されており、その断面積は2.0mm2以上5.5mm2である。また、絶縁体25bは、エチレン-テトラフロロエチレン共重合体(ETFE)等のフッ素樹脂によって形成されており、その厚さは0.30mm以上0.50mm以下である。
【0025】
第1コア層21,第2コア層22及び第3コア層23の各コア層を構成している複数本の線心25は、いずれも同じ方向に撚られている。具体的には、
図1に示されている第1コア層21を構成している8本の線心25は、図中において反時計方向に撚られている。同様に、第2コア層22を構成している15本の線心25は、図中において反時計方向に撚られており、第3コア層23を構成している21本の線心25も図中において反時計方向に撚られている。つまり、集合コア20の各コア層を構成している線心25の撚り方向は共通である。
【0026】
一方、集合コア20の各コア層を構成している線心25の撚りピッチは共通ではない。具体的には、より外側のコア層を構成している線心25ほど大きなピッチで撚られている。より具体的には、第1コア層21を構成している線心25の撚りピッチは約70mmである。第2コア層22を構成している線心25の撚りピッチは、70mmよりも大きく、130mmよりも小さい。また、第3コア層23を構成している線心25の撚りピッチは、130mmよりも大きく、200mmよりも小さい。
【0027】
図示は省略されているが、第1コア層21,第2コア層22及び第3コア層23の各コア層の周囲には、線心25の撚り方向と同方向に巻かれた線条体(例えば、スフ糸)が設けられているとよい。線条体は、キャブタイヤケーブル1に捩じれが加わったときに、各コア層を構成している線心25の撚りが乱れたり、緩んだりすることを防止又は抑制する。尚、線条体は、線心25よりも大幅に細い。また、線条体は、各コア層の外周面を覆い隠すことが無いように、それぞれのコア層を構成している線心25の撚りピッチに対して十分に大きなピッチで巻かれている。よって、集合コア20の各コア層の外周面は、実質的にその全域が露出している。
【0028】
図1に示されるように、心材10は、高強力繊維からなる抗張力体10aと、抗張力体10aを覆うゴム被覆10bとを有する。心材10は、集合コア20の最内層のコア層である第1コア層21の内側に配置されている。より詳細には、心材10は集合コア20の中心(キャブタイヤケーブル1の中心)に配置され、心材10の周囲に第1コア層21を構成する複数本の線心25が配置されている。尚、抗張力体10aには、例えば、ポリエステル系(ポリアリレート)繊維からなるロープが用いられる。また、心材10は、配置されていなくてもよい。
【0029】
図1に示されるように、介在30は、心材10と集合コア20との間および集合コア20の層間に設けられている。具体的には、心材10と第1コア層21との間に介在30が設けられている。また、第1コア層21と第2コア層22との間、第2コア層22と第3コア層23との間にも介在30が設けられている。
【0030】
心材10と第1コア層21との間に設けられている介在30は、心材10のゴム被覆10b及び第1コア層21を構成している線心25の絶縁体25bと接している。また、集合コア20の隣接するコア層の間に設けられている介在30は、それらコア層を構成している線心25の絶縁体25bと接している。この結果、心材10と集合コア20との密着性が高まっており、また、集合コア20の各層間の密着性も高まっている。尚、介在30は、集合コア20の層間のみでなく、それぞれのコア層を構成している線心25同士の間にも入り込み、それら線心25の絶縁体25bと接している。この結果、各コア層を構成している線心25同士の密着性も高まっている。
【0031】
さらに、介在30は、線心25の絶縁体25bよりも静止摩擦係数が大きい。より具体的には、介在30の静止摩擦係数は、1.0以上1.5以下であるとよい。介在30の静止摩擦係数は、シース40の静止摩擦係数よりも大きいことがよい。これにより、キャブタイヤケーブル1の耐久性をさらに向上させることができる。介在30は、ゴム材料によって形成されている。絶縁体25bがフッ素樹脂(エチレン-テトラフロロエチレン共重合体)によって形成されている本実施形態では、クロロプレンゴム等のゴム材料によって介在30が形成されている。
【0032】
尚、介在30及び絶縁体25bの静止摩擦係数は、リングオンディスク試験によって測定した。より具体的には、クロロプレンゴムを用いて外径が約25mm~26mm、内径が約20mm、高さが約18mmの円板型の試料を用意した。次いで、金属製の中空円筒材料を用意した試料に接触させた。その後、中空円筒材料を当該中空円筒材料の上方から一定の加圧荷重(約1kg)を加えながら10m/minの周速度で回転させ、そのときの剪断力を摩擦力として検出して静止摩擦係数を算出した。このようにして求めたクロロプレンゴムからなる介在30の静止摩擦係数は、1.4であった。
【0033】
上記のとおり、
図1に示されている集合コア20の各コア層を構成している線心25の外周面は、当該外周面を形成している絶縁体25bよりも静止摩擦係数が大きい介在30と接している。よって、
図2に示すようなキャブタイヤケーブル1の使用環境において、スプレッダの昇降距離が長くなり、かつ昇降速度も速くなった場合に、キャブタイヤケーブル1の捩れに起因して集合コア20の撚りに緩みが生じたとしても、ケーブル長手方向への集合コア20の移動が抑制され、集合コア20の座屈が防止又は低減される。すなわち、本実施形態に係るキャブタイヤケーブル1では、耐久性をさらに向上させることができる。
【0034】
図1に示されるように、シース40は、集合コア20の周囲に設けられている。シース40は、
図1に示されるように、集合コア20の周囲に設けられている内層シース41と、内層シース41の周囲に設けられている補強層42と、補強層42の周囲に設けられている外層シース43と、を含んでいるとよい。内層シース41の内面は、最外層であるコア層(第3コア層)を構成する線心25に接触して設けられているとよい。内層シース41及び外層シース43は、塩素化ポリエチレンをベース樹脂に含む樹脂組成物によって形成されている。補強層42は、編まれた高抗張力繊維によって形成されている。尚、内層シース41は、外層シース43と異なる樹脂組成物によって形成されていてもよい。内層シース41及び外層シース43は、同種の樹脂組成物によって形成されている方が、異種の樹脂組成物によって形成されているよりもキャブタイヤケーブル1の耐久性をさらに向上させる効果が得られやすい。また、補強層42は、省略することも可能である。補強層42を設けない場合、シース40は、内層シース41及び外層シース43の2層構造の他に、内層シース41及び外層シース43を区別せずに単層のみで構成される単層構造としてもよい。内層シース41と外層シース43との間に補強層42が設けられているシース40では、キャブタイヤケーブル1の耐捻回性が向上する。
【0035】
また、シース40(内層シース41、外層シース43)の静止摩擦係数は、介在30の静止摩擦係数よりも小さい。シース40の静止摩擦係数は、例えば、0.5以上0.9以下である。つまり、シース40の静止摩擦係数は、絶縁体25bの静止摩擦係数よりも大きく、かつ介在の静止摩擦係数よりも小さい。このようなシース40とすることにより、キャブタイヤケーブル1の耐久性をさらに向上させることができる。尚、塩素化ポリエチレンをベース樹脂に含む樹脂組成物で形成されたシース40(内層シース41、外層シース43)の静止摩擦係数は、0.7である。
【0036】
既述のとおり、集合コア20の各コア層を構成している線心25の絶縁体25bにはフッ素樹脂が用いられている。フッ素樹脂は、従来の同種線心に用いられている絶縁体材料(例えば、EPゴム)に比べて機械的強度が高い。そこで、本実施形態では、絶縁体25bの厚さを薄くすることにより、線心25の強度を維持しつつ、線心25の外径を従来の同種線心に比べて細くしてある。この結果、キャブタイヤケーブル1の外径(D1)に対する集合コア20の外径(D2)を小さくし、シース40の厚さを厚くすることに成功している。つまり、キャブタイヤケーブル1の大径化を回避しつつ、シース40の厚さを厚くすることに成功している。具体的には、内層シース41の厚さ(T1)を1.70mm以上2.10mm以下とし、外層シース43の厚さ(T2)を2.60mm以上3.20mm以下としてある。
【0037】
本実施形態に係るキャブタイヤケーブル1では、シース40の肉厚化に成功したことにより、外力が集合コア20に伝達され難くなっている。例えば、シース40は、
図2に示すような使用環境においてキャブタイヤケーブル1が巻上装置のリールに巻き取られるときや、リールから繰り出されるとき、シース40が互いに擦れたり、しごかれたりする。しかし、肉厚のシース40を備える本実施形態に係るキャブタイヤケーブル1では、上記のような擦れやしごきに起因する力が集合コア20に伝達され難い。この結果、外力の影響によって集合コア20がケーブル長手方向に移動することが抑制され、集合コア20の座屈が防止又は低減される。
【0038】
尚、本実施形態におけるシース40は、内層シース41,補強層42及び外層シース43からなる3層構造を有している。さらに、外層シース43は内層シース41よりも厚い。よって、シース40が上記のような擦れやしごきを受けても補強層42が露出し難い。この結果、補強層42の損傷による耐捩回性の低下やシース40の絶縁抵抗の低下などといった不具合の発生も防止又は低減される。かかる観点からは、外層シース43の厚さがシース40の全体の厚さの60%以上の厚さであることが好ましい。
【0039】
もっとも、本実施形態に係るキャブタイヤケーブル1の外層シース43は、摺動性に優れている塩素化ポリエチレンからなる樹脂組成物によって形成されている。つまり、上記のような擦れやしごきによって集合コア20に影響を与える力が発生すること自体が抑制されている。
【0040】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、絶縁体25bに使用されるフッ素樹脂はエチレン-テトラフロロエチレン共重合体に限られない。絶縁体25bの他の材料としては、ペルフルオロエーテルとテトラフロロエチレン共重合体(PFA)等が挙げられる。また、介在30に使用されるゴム材料はクロロプレンゴムに限られない。介在30の他の材料としては、エチレンプロピレンゴム等が挙げられる。
【0041】
キャブタイヤケーブル1に含まれる複数本の線心25の一部を給電に用いるとともに、複数本の線心25の他の一部を信号伝送に用いることもできる。例えば、第1コア層21を構成している線心25を信号線として利用し、第2コア層22及び第3コア層23を構成している線心25を給電線として利用することができる。
【0042】
キャブタイヤケーブル1に関する上記の寸法や数値等は全て一例に過ぎない。例えば、キャブタイヤケーブル1の心数(線心25の本数)は適宜増減させることができる。また、集合コア20の各コア層を構成している線心25の撚り方向、撚りピッチ、シース40の厚み等も適宜変更することができる。
【0043】
本明細書では、垂直リールスプレッダ方式のコンテナクレーンに使用されるキャブタイヤケーブルを例にとって、本発明のキャブタイヤケーブルに実施形態の一例について説明した。しかし、本発明のキャブタイヤケーブルは、垂直リールスプレッダ方式以外の方式のコンテナクレーンに使用することもできる。さらに、本発明のキャブタイヤケーブルは、コンテナクレーン以外に使用することもできる。
【符号の説明】
【0044】
1,100 キャブタイヤケーブル
10 心材
10a 抗張力体
10b ゴム被覆
20 集合コア
21 第1コア層
22 第2コア層
23 第3コア層
25 線心
25a 導体
25b 絶縁体
30 介在
40 シース
41 内層シース
42 補強層
43 外層シース
100a 先行部分
100b 後続部分
101 リール