(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】接着剤用組成物、蓄電装置用外装材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 123/30 20060101AFI20240130BHJP
C09J 4/02 20060101ALI20240130BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240130BHJP
B32B 15/08 20060101ALI20240130BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240130BHJP
H01M 50/121 20210101ALI20240130BHJP
H01M 50/129 20210101ALI20240130BHJP
【FI】
C09J123/30
C09J4/02
C09J11/06
B32B15/08 E
B32B27/32 E
H01M50/121
H01M50/129
(21)【出願番号】P 2021511375
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 JP2020011391
(87)【国際公開番号】W WO2020203213
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019065622
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100114177
【氏名又は名称】小林 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100175259
【氏名又は名称】尾林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100168701
【氏名又は名称】豆塚 浩二
(74)【代理人】
【識別番号】100109715
【氏名又は名称】塩谷 英明
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】大賀 一彦
(72)【発明者】
【氏名】川本 健
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 快
(72)【発明者】
【氏名】山本 龍之介
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/134931(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/139016(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/187216(WO,A1)
【文献】特開2016-195113(JP,A)
【文献】特開2018-55976(JP,A)
【文献】特開2022-7514(JP,A)
【文献】国際公開第2014/208518(WO,A1)
【文献】特開2002-352778(JP,A)
【文献】特開2001-307777(JP,A)
【文献】特開2002-216715(JP,A)
【文献】国際公開第2019/003977(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 43/00
C09J 1/00- 5/10
C09J 7/00- 7/50
C09J 9/00-201/10
H01M 50/00- 50/198
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材において、前記第二接着剤層を形成するために使用される接着剤用組成物であって
、下記成分1、成分3
、成分4
、成分5及び成分6-1を含むことを特徴とする接着剤用組成物。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
(成分5) 1分子中に複数個のイソシアナト基を有する化合物であり、且つ、1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物以外の化合物
(成分6-1) 1分子中に複数個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、且つ、1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物以外の化合物
【請求項2】
少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材において、前記第二接着剤層を形成するために使用される接着剤用組成物であって、下記成分1、成分2、成分3及び成分4を含むことを特徴とする接着剤用組成物。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分2) 1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
【請求項3】
前記成分2が、ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル含有化合物の前記アルコール性水酸基を反応させた反応生成物である、請求項2に記載の接着剤用組成物。
【請求項4】
前記成分2における1分子中のイソシアナト基の数と(メタ)アクリロイル基の数の総量が3以上である、請求項2又は請求項3に記載の接着剤用組成物。
【請求項5】
さらに、下記成分5を含む、請求項2~4のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
(成分5) 1分子中に複数個のイソシアナト基を有する、前記成分2以外の化合物
【請求項6】
さらに、下記成分6を含む、請求項2~5のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
(成分6) 1分子中に複数個のラジカル重合性官能基を有する、前記成分2以外の化合物。
【請求項7】
前記ラジカル重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である、請求項6に記載の接着剤用組成物。
【請求項8】
前記成分1が無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【請求項9】
前記成分1が、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合体の酸変性物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【請求項10】
前記成分1の融点が、75℃以上90℃以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【請求項11】
さらに、下記成分7を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
(成分7) イソシアナト基の反応を促進する反応触媒
【請求項12】
前記接着剤用組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基の総数に対するイソシアナト基の総数の比が、3.0以上15.0以下である、請求項1~11のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【請求項13】
前記接着剤用組成物の総量から前記成分3及び前記成分4の総量を差し引いた量を100質量%とした場合に、前記成分1の量の割合が60質量%以上96質量%以下であり、前記接着剤用組成物の総量から前記成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、前記成分3の量の割合が0.05質量%以上10質量%以下である、請求項1~12のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【請求項14】
前記接着剤用組成物の総量から前記成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、前記成分1の量の割合が56質量%以上92質量%以下、前記成分3の量の割合が0.05質量%以上10質量%以下、前記接着剤用組成物の総量から前記成分1、前記成分3及び前記成分4の量を差し引いた量の割合が4質量%以上50質量%以下である、請求項1~13のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【請求項15】
前記接着剤用組成物の総量を100質量%とした場合に、前記成分4の量の割合が75質量%以上95質量%以下である、請求項1~14のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【請求項16】
少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
前記第二接着剤層が、請求項1~15のいずれか一項に記載の接着剤用組成物の重合物を含む蓄電装置用外装材。
【請求項17】
前記金属箔層の少なくとも前記シーラント層側の面に腐食防止処理層が設けられており、前記シーラント層がポリオレフィン樹脂を含む、請求項16に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項18】
少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材の製造方法であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の接着剤用組成物を、前記金属箔層の前記シーラント層側の面及び前記シーラント層の前記金属箔層側の面の一方又は両方に塗布し、塗布した前記接着剤用組成物から前記溶剤の一部又は全部を除去し、その後、前記溶剤の一部又は全部を除去された前記接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して重合させることで、前記第二接着剤層として高分子層を形成する工程を備える、蓄電装置用外装材の製造方法。
【請求項19】
少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有し、前記金属箔層の少なくとも前記シーラント層側の面に腐食防止処理層が設けられており、前記シーラント層がポリオレフィン樹脂を含む、蓄電装置用外装材の製造方法であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の接着剤用組成物を、前記金属箔層の前記シーラント層側の面及び前記シーラント層の前記金属箔層側の面の一方又は両方に塗布し、塗布した前記接着剤用組成物から前記溶剤の一部又は全部を除去し、その後、前記溶剤の一部又は全部を除去された前記接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して重合させることで、前記第二接着剤層として高分子層を形成させ、さらに、その後該高分子層を30℃以上70℃以下の雰囲気に1時間以上曝す工程を備える、蓄電装置用外装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤用組成物、該接着剤用組成物を使用して得られる蓄電装置用外装材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、及び鉛蓄電池等の二次電池、並びに電気二重層キャパシタ等の電気化学キャパシタが知られている。携帯機器の小型化又は設置スペースの制限等により蓄電装置のさらなる小型化が求められており、エネルギー密度が高いリチウムイオン電池が注目されている。リチウムイオン電池に用いられる外装材としては、従来は金属製の缶が用いられていたが、軽量で、放熱性が高く、低コストで作製できる金属箔層を有する多層フィルムが用いられるようになっている。
【0003】
上記多層フィルムを外装材に用いるリチウムイオン電池では、内部への水分の浸入を防止するため、金属箔層としてアルミニウム箔層やSUS箔層を含む外装材により電池内容物を覆う構成が採用されている。このような構成を採用したリチウムイオン電池は、金属ラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれており、金属箔層としてアルミニウム箔層を使用した場合には、アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池と呼ばれている。
【0004】
リチウムイオン電池の電池内容物としては、正極、負極、セパレータ、及び電解液がある。あるいは、電解液の代わりに、該電解液を含浸させたポリマーゲルからなる電解質層が用いられる場合もある。この電解液としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の浸透力を有する非プロトン性の溶媒に、電解質としてリチウム塩を溶解したものが挙げられる。
【0005】
アルミラミネートタイプのリチウムイオン電池としては、例えば、外装材の一部に冷間成型によって凹部を形成し、該凹部内に電池内容物を収容し、外装材の残りの部分を折り返して縁部分をヒートシールで封止したエンボスタイプのリチウムイオン電池が知られている。このようなリチウムイオン電池を構成する外装材には、ヒートシールによって安定した密封性を示すとともに、電池内容物の電解液によりアルミニウム箔層とシーラント層の間のラミネート強度の低下が生じにくいこと(以下、このような性質を「耐電解液性」と記すこともある。)が求められている。
例えば、特許文献1には、基材層とアルミニウム箔層とシーラント層とを順次積層した積層体が開示されている。この積層体は、アルミニウム箔層とシーラント層との間に、分子内に水酸基及びカルボキシ基を有する樹脂からなる樹脂膜層(接着剤層)を備えている。
【0006】
また、特許文献2には、接着性ポリメチルペンテン層を含むヒートシール層(シーラント層)を備える外装材が提案されている。
また、特許文献3には、アルミニウム箔層とシーラント層との間に接着剤層を備える外装材が提案されている。この接着剤層は、ポリオレフィン樹脂又は酸変性ポリオレフィン樹脂が、(メタ)アクリロキシ基又はアリル基を有する化合物に由来する構造を介して架橋された架橋構造を有する層である。
なお、本明細書及び請求の範囲において、「アルミニウム」の語は、アルミニウム及びその合金を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】日本国特許公開公報 2004年第66645号
【文献】日本国特許公開公報 2002年第245983号
【文献】日本国特許公開公報 2017年第201580号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、スマートフォン、タブレット型パーソナルコンピュータなどの電子機器の薄型化及び大型化に伴い、電子機器に搭載される電池には、薄型化及び大容量化が求められている。その中で、電池容量の増加及びコスト削減の観点から、電池用外装材には薄型化が要求され、絶縁体であるシーラント層の薄膜化も求められている。しかし、上記特許文献2に記載されたような従来の外装材では、シーラント層を薄膜化すると、冷間成型時の応力などによって微細なクラックがシーラント層中に発生しやすく、そうなれば、電解液がそのクラックに浸透してアルミニウム箔層とシーラント層との間に入ることになる。
【0009】
よって、上記アルミラミネートタイプの多層フィルムを用いる外装材として、優れた成形性を確保しつつ、電池の電解液によるアルミニウム箔層とシーラント層との間の接着強度の経時的劣化が、より長期間にわたって抑制できるものが求められていた。即ち、耐電解液性をさらに向上させた外装材の開発が求められていた。
【0010】
本発明は、かかる技術的背景に鑑みてなされたものであって、電池の電解液によるアルミニウム箔層とシーラント層との間の接着強度の経時的低下が長期間にわたって抑制されて十分な耐電解液性を有する外装材及びその製造方法、並びに該外装材を得るための接着剤用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を重ねた結果、特定の成分を有する組成物を、アルミニウム箔に代表される金属箔層とシーラント層の間の接着剤として用いることによって、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の態様を含む。
【0012】
[1] 少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材において、前記第二接着剤層を形成するために使用される接着剤用組成物であって、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を含み、さらに下記成分1、成分3及び成分4を含むことを特徴とする接着剤用組成物。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
【0013】
[2] 少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材において、前記第二接着剤層を形成するために使用される接着剤用組成物であって、下記成分1、成分2、成分3及び成分4を含むことを特徴とする接着剤用組成物。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分2) 1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
【0014】
[3] 前記成分2が、ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル含有化合物の前記アルコール性水酸基を反応させた反応生成物である、[2]に記載の接着剤用組成物。
[4] 前記成分2における1分子中のイソシアナト基の数と(メタ)アクリロイル基の数の総量が3以上である、[2]又は[3]に記載の接着剤用組成物。
【0015】
[5] さらに、下記成分5を含む、[2]~[4]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
(成分5) 1分子中に複数個のイソシアナト基を有する、前記成分2以外の化合物
[6] さらに、下記成分6を含む、[2]~[5]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
(成分6) 1分子中に複数個のラジカル重合性官能基を有する、前記成分2以外の化合物。
【0016】
[7] 前記ラジカル重合性官能基が(メタ)アクリロイル基である、[6]に記載の接着剤用組成物。
[8] 前記成分1が無水マレイン酸変性ポリオレフィンである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
[9] 前記成分1が、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合体の酸変性物である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【0017】
[10] 前記成分1の融点が、75℃以上90℃以下である、[1]~[9]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
[11] さらに、下記成分7を含む、[1]~[10]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
(成分7) イソシアナト基の反応を促進する反応触媒
[12] 前記接着剤用組成物に含まれる(メタ)アクリロイル基の総数に対するイソシアナト基の総数の比が、3.0以上15.0以下である、[1]~[11]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【0018】
[13] 前記接着剤用組成物の総量から前記成分3及び前記成分4の総量を差し引いた量を100質量%とした場合に、前記成分1の量の割合が60質量%以上96質量%以下であり、前記接着剤用組成物の総量から前記成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、前記成分3の量の割合が0.05質量%以上10質量%以下である、[1]~[12]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【0019】
[14] 前記接着剤用組成物の総量から前記成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、前記成分1の量の割合が56質量%以上92質量%以下、前記成分3の量の割合が0.05質量%以上10質量%以下、前記接着剤用組成物の総量から前記成分1、前記成分3及び前記成分4の量を差し引いた量の割合が4質量%以上50質量%以下である、[1]~[13]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
【0020】
[15] 前記接着剤用組成物の総量を100質量%とした場合に、前記成分4の量の割合が75質量%以上95質量%以下である、[1]~[14]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物。
[16] 少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、
前記第二接着剤層が、[1]~[15]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物の重合物を含む蓄電装置用外装材。
【0021】
[17] 前記金属箔層の少なくとも前記シーラント層側の面に腐食防止処理層が設けられており、前記シーラント層がポリオレフィン樹脂を含む、[16]に記載の蓄電装置用外装材。
[18] 少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材の製造方法であって、
[1]~[15]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物を、前記金属箔層の前記シーラント層側の面及び前記シーラント層の前記金属箔層側の面の一方又は両方に塗布し、塗布した前記接着剤用組成物から前記溶剤の一部又は全部を除去し、その後、前記溶剤の一部又は全部を除去された前記接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して重合させることで、前記第二接着剤層として高分子層を形成する工程を備える、蓄電装置用外装材の製造方法。
【0022】
[19] 少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有し、前記金属箔層の少なくとも前記シーラント層側の面に腐食防止処理層が設けられており、前記シーラント層がポリオレフィン樹脂を含む、蓄電装置用外装材の製造方法であって、
[1]~[15]のいずれか一項に記載の接着剤用組成物を、前記金属箔層の前記シーラント層側の面及び前記シーラント層の前記金属箔層側の面の一方又は両方に塗布し、塗布した前記接着剤用組成物から前記溶剤の一部又は全部を除去し、その後、前記溶剤の一部又は全部を除去された前記接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して重合させることで、前記第二接着剤層として高分子層を形成させ、さらに、その後該高分子層を30℃以上70℃以下の雰囲気に1時間以上曝す工程を備える、蓄電装置用外装材の製造方法。
なお、本明細書に記載の「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方又は両方を意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明の接着剤用組成物を、アルミニウム箔に代表される金属箔層とシーラント層との接着剤に使用することにより、電池の電解液による前記金属箔層とシーラント層との間の接着強度の経時的低下が長期間にわたって抑制されて十分な耐電解液性を有したものとなり、長寿命の安定した蓄電装置用外装材が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】この発明の蓄電装置用外装材の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず、本発明の蓄電装置用外装材について説明する。
この発明に係る蓄電装置用外装材の一実施形態を
図1に示す。この外装材は、特に、非水電解質系リチウムイオン電池用外装材として好適に用いられるものである。前記電池用外装材(1)は、金属箔層としてのアルミニウム箔層(4)の一方の面(下面)に第二接着剤層(6)を介して熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(シーラント層)(3)が積層一体化されると共に、前記アルミニウム箔層(4)の他方の面(上面)に第一接着剤層(5)を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(基材層)(2)が積層一体化された構成からなる。
【0026】
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(基材層)(2)は、外装材として良好な成形性を確保する役割を主に担う部材である、即ち成形時のアルミニウム箔のネッキングによる破断を防止する役割を担うものである。前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(基材層)(2)としては、特に限定されるものではないが、ポリアミド又はポリエステルからなる延伸フィルムを用いるのが好ましい。前記基材層(2)の厚さは、12~50μmに設定されるのが好ましい。
前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(シーラント層)(3)は、リチウムイオン電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、外装材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。
【0027】
前記シーラント層(3)は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン樹脂を主成分とする層を含むことが好ましく、具体的には、ポリエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン系(共)重合体、これらの酸変性物及びアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂により構成される層を含むことが好ましい。さらに好ましくは、ポリエチレン系(共)重合体、ポリプロピレン系(共)重合体、これらの酸変性物及びアイオノマーからなる群より選ばれた少なくとも1種の熱可塑性樹脂からなる未延伸フィルムにより構成される層であり、上記熱可塑性樹脂として特に好ましくは、ポリプロピレン系(共)重合体である。
なお、本明細書に記載の(共)重合体とは、単独重合体と共重合体の一方あるいは両方を意味する。
【0028】
前記シーラント層(3)の厚さは、20~150μmに設定されるのが好ましい。20μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できると共に、150μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図り得る。中でも、前記熱可塑性樹脂未延伸フィルム層(3)の厚さは30~100μmに設定されるのが特に好ましい。
なお、前記基材層(2)、前記シーラント層(3)は、いずれも単層であっても良いし、複層であっても良い。
【0029】
前記アルミニウム箔層(4)は、外装材に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記アルミニウム箔層(4)としては、純アルミニウム又はアルミニウム-鉄系合金からなる厚さ5~50μmの箔が好適に用いられる。
前記第一接着剤層(5)としては、前記基材層(2)と前記アルミニウム箔層(4)との接着強度を十分に保持できる接着剤層であれば特に限定されない。例えば、ウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層等が挙げられる。
【0030】
前記第二接着剤層(6)は、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を含み、さらに下記成分1、成分3及び成分4を含む接着剤用組成物から、溶剤の一部及び全部を除去した成分の重合物によって構成される。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
【0031】
この第二接着剤層(6)は、通常は、前記接着剤用組成物を、前記アルミニウム箔層(4)のシーラント層側の面及び前記シーラント層(3)の金属箔層側の面の一方又は両方に塗布して乾燥せしめることによって形成される。第二接着剤層(6)の単位面積当たりの形成量(固形分付与量)は、1.5~5g/m2であるのが好ましい。
なお、この実施形態では、第二接着剤層(6)に加えて、第一接着剤層(5)を設けた構成を採用している。前記第一接着剤層(5)としては、特に限定されるものではないが、例えば、ウレタン系接着剤層、アクリル系接着剤層等が挙げられる。
【0032】
本発明の蓄電装置用外装材は、少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有しているが、この金属箔層の少なくとも前記シーラント層側の面に腐食防止処理層が設けられていることが好ましい。前記金属箔にアルミニウム箔を用いた場合、電解液と水分との反応で生成するフッ化水素酸により生じる、アルミニウム表面の溶解や腐食を防止するためである。
【0033】
これら腐食防止処理層の形成方法としては、アルミニウム表面に耐酸性改質皮膜を形成する方法である。
アルミニウム表面への耐酸性改質皮膜としては、リン酸塩系、クロム酸系の皮膜が挙げられる。リン酸塩系としては、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸マンガン、リン酸カルシム、リン酸クロムを挙げることができ、クロム酸系としては、クロム酸クロム等を挙げることができる。
【0034】
次に、本発明の接着剤用組成物について説明する。本発明の接着剤用組成物は、以下の通りである。
すなわち、少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材において、前記第二接着剤層を形成するために使用される接着剤用組成物であって、イソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を含み、さらに下記成分1、成分3及び成分4を含むことを特徴とする接着剤用組成物である。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
【0035】
前記接着剤用組成物がイソシアナト基及び(メタ)アクリロイル基を含む態様としては、例えば、前記接着剤用組成物が、1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物(成分2)を含む態様1と、前記接着剤用組成物が、1分子中に複数個のイソシアナト基を有する、成分2以外の化合物(成分5)、及び、1分子中に複数個の(メタ)アクリロイル基を有する、成分2以外の化合物(成分6-1)を含む態様2とを挙げることができる。なお、態様1と態様2との組み合わせ、すなわち前記(成分2)、(成分5)及び(成分6-1)を含む態様も使用することができる。
【0036】
本発明の接着剤用組成物の上記の態様1は、以下の通りである。
すなわち、少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材において、前記第二接着剤層を形成するために使用される接着剤用組成物であって、下記成分1、成分2、成分3及び成分4を含むことを特徴とする接着剤用組成物である。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分2) 1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
【0037】
また、本発明の接着剤用組成物の上記の態様2は、以下の通りである。
すなわち、少なくとも、基材層、第一接着剤層、金属箔層、第二接着剤層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材において、前記第二接着剤層を形成するために使用される接着剤用組成物であって、下記成分1、成分5、成分6-1、成分3及び成分4を含むことを特徴とする接着剤用組成物である。
(成分1) 酸変性ポリオレフィン
(成分5) 1分子中に複数個のイソシアナト基を有する、成分2以外の化合物
(成分6-1) 1分子中に複数個の(メタ)アクリロイル基を有する、成分2以外の化合物
(成分3) 活性エネルギー線重合開始剤
(成分4) 溶剤
【0038】
まず、本発明の接着剤用組成物の1成分である、(成分1)酸変性ポリオレフィンについて説明する。
酸変性ポリオレフィンとしては、例えば、ポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸又はその酸無水物をグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂、オレフィンモノマーとエチレン性不飽和カルボン酸との共重合樹脂等を用いることができる。前記酸変性ポリオレフィンのオレフィン成分としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等のオレフィンモノマーの単独重合体又はこれらオレフィンモノマーの共重合体等が挙げられる。前記酸変性ポリオレフィンの酸成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸無水物、イタコン酸、イタコン酸無水物等を用いることができる。これらのようなエチレン性不飽和カルボン酸は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0039】
中でも、酸変性ポリオレフィンのポリオレフィン成分としては、プロピレンとプロピレン以外のオレフィンとの共重合体であることが好ましく、より好ましいのは、プロピレンとブテンを含むオレフィンとの共重合体である。プロピレンとブテンの共重合体の場合には、その共重合比率は、プロピレン:ブテンが90:10~70:30(mol比)であることが好ましく、さらに好ましくは、87:13~72:28であり、特に好ましくは、82:18~75:25の範囲である。
【0040】
また、酸変性ポリオレフィンとしては、エチレン性不飽和カルボン酸又はその酸無水物をポリオレフィンにグラフト重合させた変性ポリオレフィン樹脂を用いるのが好ましく、前記エチレン性不飽和カルボン酸又はその酸無水物が、無水マレイン酸であることがさらに好ましい。酸変性ポリオレフィンとして、ポリオレフィンに無水マレイン酸を付加した変性ポリオレフィン樹脂を用いる場合には、その酸変性ポリオレフィン総量に対する無水マレイン酸の付加割合は、0.6~3.0質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、0.7~2.5質量%の範囲であり、特に好ましくは、0.8~2.0質量%の範囲である。
【0041】
また、前記酸変性ポリオレフィンの融点は、70℃~110℃であることが好ましく、さらに好ましくは70℃~100℃であり、特に好ましくは75℃~95℃である。ここでの融点は、示差走査熱量測定において、後述の実施例の項で記載された条件で、昇温速度10℃/minの条件で測定されたものである。
【0042】
また、本発明に用いられる酸変性ポリオレフィンの融解熱量は、5J/g~60J/gの範囲であることが好ましい。より好ましくは10J/g~50J/gの範囲であり、最も好ましくは15J/g~40J/gの範囲である。酸変性ポリオレフィンの融解熱量は、5J/g~60J/gの範囲であると、結晶由来の凝集力を維持でき、接着性や耐熱性を保持でき且つ後述の溶剤への溶解安定性、流動性を維持でき、接着剤用組成物の取り扱う際の操作性を保持することができる。ここでの融解熱量の測定は、上記の融点測定と同様の条件行われ、ベースラインの延長線と融解ピークで囲まれる面積から融解熱量を測定する。
【0043】
また、前記酸変性ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、60,000~150,000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、70,000~140,000の範囲であり、特に好ましくは、80,000~130,000の範囲である。前記酸変性ポリオレフィンの数平均分子量(Mn)は、30,000~90,000の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、35,000~80,000の範囲であり、特に好ましくは、40,000~70,000の範囲である。ここでの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定したポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量である。
【0044】
次に、本発明の接着剤用組成物の1成分である、(成分2)1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物について説明する。
1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、同一分子内にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基をともに有する化合物であれば、特に限定されるものではないが、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート化合物やアルコール性水酸基含有(メタ)アクリルアミド化合物等のアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル含有化合物のアルコール性水酸基を反応させた反応生成物、
トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物のビュレット変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート化合物やアルコール性水酸基含有(メタ)アクリルアミド化合物等のアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル含有化合物のアルコール性水酸基を反応させた反応生成物、
前記ジイソシアネート化合物をトリメチロールプロパン等の多価アルコールでアダクト変性した変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート化合物やアルコール性水酸基含有(メタ)アクリルアミド化合物等のアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル含有化合物のアルコール性水酸基を反応させた反応生成物、
及び下記式(1)で表されるアクリロイル基とイソシアナト基とを有するオリゴマーや、下記式(2)で表されるアクリロイル基とイソシアナト基とを有する化合物等を挙げることができる。
【0045】
式(1):
【0046】
【0047】
(式(1)中、nは1以上の整数であり、nの上限は通常16である。)
式(2):
【0048】
【0049】
式(1)で表されるアクリロイル基とイソシアナト基とを有するオリゴマーの市販品の例としては、BASF社製のLaromer(登録商標) PR9000等を挙げることができ、式(2)で表されるアクリロイル基とイソシアナト基とを有する化合物の市販品の例としては、昭和電工社製のカレンズ(登録商標)BEI等を挙げることができる。このイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0050】
また、本発明に用いられる、1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、1分子中のイソシアナト基の数と(メタ)アクリロイル基の数の総量が3以上であるものを含むことが好ましい。
例えば、構造的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート化合物やアルコール性水酸基含有(メタ)アクリルアミド化合物等のアルコール性水酸基を有する(メタ)アクリロイル含有化合物のアルコール性水酸基を反応させた反応生成物、及び式(1)で表されるアクリロイル基とイソシアナト基とを有するオリゴマーが好ましい。
【0051】
さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート化合物のアルコール性水酸基を反応させた反応生成物、及び式(1)で表されるアクリロイル基とイソシアナト基とを有するオリゴマーであり、特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物のイソシアナト基の一部に、アルコール性水酸基含有(メタ)アクリレート化合物のアルコール性水酸基を反応させた反応生成物、及び式(1)で表されるアクリロイル基とイソシアナト基とを有するオリゴマーである。
【0052】
1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物のイソシアナト基は、酸変性ポリオレフィンと反応して、接着剤用組成物を硬化させる硬化剤として作用するものである。また、1分子中にイソシアナト基と(メタ)アクリロイル基を有する化合物の(メタ)アクリロイル基は、ラジカル重合反応により、接着剤用組成物を重合又は硬化させる作用をするものである。
なお、本明細書に記載の「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方を意味する。また、本明細書に記載の「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドとメタクリルアミドの一方又は両方を意味する。
【0053】
本発明の接着剤用組成物の全化合物中の、カルボキシ基(-COOH基)の数の総量に対するイソシアナト基(-NCO基)の数の総量の比([NCO]/[COOH])が1.0~20.0に設定されるのが好ましい。このような範囲に設定されていれば、初期の接着性能に優れた接着剤用組成物とすることができると共に、電池の電解液によるアルミニウム箔層(4)とシーラント層(3)との間の接着強度の経時的低下を長期にわたって十分に抑制することができて耐電解液性能を向上させることができる。前記比([NCO]/[COOH])は2.0~15.0に設定されるのがより好ましく、中でも3.0~12.0に設定されるのが特に好ましい。
なお、本明細書においては、-C(=O)-O-C(=O)-で表されるカルボキシ基2分子の脱水縮合生成物であるカルボン酸無水物は、カルボン酸無水物1個で2個のカルボキシ基を有するものとする。
【0054】
また、本発明の接着剤用組成物では、接着剤用組成物の総量から後述の成分3及び成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、成分1の量の割合が60質量%~96質量%であり、さらに好ましくは70質量%~95質量%である。
同様に、前記の態様1の場合の成分2の量の割合、又は、前記の態様2の場合の成分5と成分6-1の合計量の割合は、0質量%超40質量%以下とすることができ、0.1質量%以上30質量%未満が好ましい。
同様に、接着剤用組成物の総量から成分1、成分3及び成分4の量を差し引いた成分の量の割合は、4質量%~40質量%とすることができ、5質量%~30質量%であることが好ましく、特に好ましくは、10質量%~25質量%である。
【0055】
接着剤用組成物の総量から成分3及び成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、成分1の量の割合が60質量%~96質量%で、接着剤用組成物の総量から成分1、成分3及び成分4の量を差し引いた成分の量の割合が4質量%~40質量%であると、アルミニウム箔に代表される金属箔層とシーラント層との間の接着強度の経時的低下が長期間にわたって抑制されて十分な耐電解液性を有したものとすることができる。
【0056】
次に、本発明の接着剤用組成物の1成分である、(成分3)活性エネルギー線重合開始剤について説明する。活性エネルギー線重合開始剤としては、活性エネルギー線に感応するラジカル重合開始剤であれば、特に限定されない。活性エネルギー線としては、近赤外線、可視光線、紫外線、真空紫外線、X線、γ線、電子線等の電磁波、粒子線があるが、一般的には可視光線又は紫外線の照射に感応する光重合開始剤が好適に使用される。
【0057】
光重合開始剤としては、具体的には、アセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-1-(4-イソプロペニルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロピルフェニル)プロパノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-ドデシルフェニル)プロパノン、及び、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパノン、ベンゾフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、4-ブロモベンゾフェノン、2-カルボキシベンゾフェノン、2-エトキシカルボニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4′-メチルジフェニルスルフィド、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4′-ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば4,4′-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′-ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン)、4-メトキシ-4′-ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4′-ジメトキシベンゾフェノン、4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、2-メチルアントラキノン、フェナントラキノン、フルオレノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]ブタノン-1、2-ベンジル-2-メチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-(4-イソプロペニルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン及びそのオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えばベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N-メチルアクリドン、N-ブチルアクリドン、N-ブチル-クロロアクリドン、アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,6-ジクロロベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルメトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキサイド、2,3,5,6-テトラメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、などが挙げられる。アシルホスホネート化合物としては、ベンゾイルジ-(2,6-ジメチルフェニル)ホスホネートなどが挙げられる。ビスアシルホスフィンオキサイド化合物としては、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントンなどが挙げられる。
【0058】
なお、水素引抜タイプの光重合開始剤(例えばベンゾフェノン系、チオキサントン系)に加えて、優れた促進機能を有する、一般的に光重合促進剤と呼ばれている化合物(例えばp-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチル)も、本発明においては光重合開始剤に含まれるものと定義する。
【0059】
また、光重合開始剤として、メタロセン化合物を使用することもできる。メタロセン化合物としては、中心金属がFe、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Mo、Ru、Rh、Lu、Ta、W、Os、Irなどに代表される遷移元素を用いることができ、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス[2,6-ジフルオロ-3-(ピロール-1-イル)フェニル]チタニウムを挙げることができる。
これらの光重合開始剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0060】
これらの光重合開始剤の中では、アシルホスフィンオキサイド化合物、ビスアシルホスフィンオキサイド化合物、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-メチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタノン-1、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンが好ましく、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-1-(4-イソプロペニルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン及びそのオリゴマー、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンがより好ましい。特に好ましい光重合開始剤としては、ジフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-ヒドロキシ-1-(4-イソプロペニルフェニル)-2-メチルプロパン-1-オン及びそのオリゴマー、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンがあげられ、これらの混合物であるLAMBERTI S.p.A社製の製品名「ESACURE KTO 46」が使用できる。
【0061】
成分3である活性エネルギー線重合開始剤の使用量は、接着剤用組成物の総量から後述の成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、0.05~10質量%であることが好ましく、さらに好ましくは0.1~8質量%である。
活性エネルギー線重合開始剤の使用量が、0.05~10質量%の範囲であると、活性エネルギー線の照射により、成分2を含むラジカル重合性成分を重合させかつ重合物の物性に悪影響が起こりにくい。
【0062】
また、本発明の接着剤用組成物の総量から成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、成分1の量の割合が56~92質量%、成分3の量の割合が0.05~10質量%であることが好ましい。
本発明の接着剤用組成物の総量から成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、成分1の量の割合が56~92質量%、成分3の量の割合が0.05~10質量%であると、アルミニウム箔に代表される金属箔層とシーラント層との間の接着強度の経時的低下が長期間にわたって抑制されて十分な耐電解液性を有したものとすることができる。
【0063】
次に、本発明の接着剤用組成物の1成分である(成分4)溶剤について説明する。
本発明の接着剤用組成物に使用される溶剤としては、前記酸変性ポリオレフィンを溶解させる又は分散させることができるものであれば特に限定されない。これらの中でも、前記酸変性ポリオレフィンを溶解させることができる有機溶剤が好ましく用いられる。また、前記有機溶剤としては、本発明の接着剤用組成物から該有機溶剤を加熱等により揮発させて除去することが容易な有機溶剤が好ましく用いられる。
【0064】
前記酸変性ポリオレフィンを溶解させることができ且つ加熱等により揮発させて除去することが容易な有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、n-ヘキサン等の脂肪族系有機溶剤、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン(MCH)等の脂環族系有機溶剤、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系有機溶剤等が挙げられる。これら有機溶剤は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0065】
また、上記の前記酸変性ポリオレフィンを溶解させることができ且つ加熱等により揮発させて除去することが容易な有機溶剤と併用して、他の有機溶剤を使用することが可能である。これらの有機溶剤としては、酢酸エチル、酢酸n-プロピル等の酢酸エステル系有機溶剤が好適に使用される。
【0066】
本発明の接着剤用組成物の総量に対して、溶剤の量が75~95質量%であることが好ましい。成分4の量がこの範囲にあると、接着剤用組成物の粘度を適正に保持でき、かつ塗工して溶剤を除去した際に、適正な接着剤の厚みにすることが容易である。
なお、接着剤用組成物の塗工時の25℃での粘度が200mPa・s以下であることが好ましい。
【0067】
本発明の接着剤用組成物には、必要に応じて、(成分5)1分子中に複数個のイソシアナト基を有する、成分2以外の化合物を含むことができかつ好ましい。
前記成分5の化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物のビュレット変性物、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等のジイソシアネート化合物をトリメチロールプロパン等の多価アルコールでアダクト変性した変性物、及び下記式(3)で表されるポリメリックMDI等を挙げることができる。
式(3):
【0068】
【0069】
(mは0以上50以下の整数を表し、mの平均は0より大きい。)
前記成分5の化合物は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。また、前記成分5の化合物は、1分子中のイソシアナト基の数が3以上であるものを含むことが好ましい。
【0070】
具体的には、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのジイソシアネート化合物をトリメチロールプロパン等の多価アルコールでアダクト変性した変性物、及び式(3)で表されるポリメリックMDIから選ばれる少なく1種の化合物を含むことが好ましく、さらに好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物、及び式(3)で表されるポリメリックMDIから選ばれる少なく1種の化合物を含むことであり、特に好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性物、及び式(3)で表されるポリメリックMDIから選ばれる少なく1種の化合物を含むことである。
【0071】
また、前記成分5の化合物のイソシアナト基の反応性に着目すると、反応性の異なるイソシアナト基を有する2種類以上の化合物を併用すること、また、前記成分5の化合物のイソシアナト基に1級イソシアナト基が含まれることが、反応性と配合物の可使時間とのバランスをとる場合には好ましい。
【0072】
本発明の接着剤用組成物中の成分5の好ましい量は、その他の成分の量によって変わるので、一概には言えないが、接着剤用組成物の総量から成分3及び成分4の量を差し引いた量を100質量%とした場合に、0質量%超30質量%未満とすることができる。
また、本発明の接着剤用組成物の光重合性と熱硬化のバランスを考えると、本発明の接着剤用組成物中に含まれるアクリロイル基の数及びメタクリロイル基の数を合わせた総数、すなわち(メタ)アクリロイル基の総数に対する、イソシアナト基の総数の比が、3.0~15.0の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、3.5~14.5であり、特に好ましくは、4.0~14.0である。
【0073】
本発明の接着剤用組成物中に含まれる(メタ)アクリロイル基の総数に対するイソシアナト基の総数の比が3.0~15.0の範囲であると、光重合後の接着剤が極端に硬くなりその後の熱硬化反応を阻害するということが起こりにくく、かつ、熱硬化後の蓄電装置用外装材の耐電解液性も良好になり、好ましい。
【0074】
また、本発明の接着剤用組成物には、必要に応じて、(成分6)1分子中に複数個のラジカル重合性官能基を有する、成分2以外の化合物を含んでよい。ラジカル重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニロキシカルボニル基、ビニルカルバモイル基等を挙げることができる。
【0075】
前記成分6の化合物としては、1分子中に複数個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物や1分子中に(メタ)アクリロイル基とアリル基等の他のラジカル重合性基を有する化合物であることが好ましい。ここで、特に1分子中に複数個の(メタ)アクリロイル基を有する、成分2以外の化合物を、(成分6-1)と称する。
【0076】
本発明の接着剤用組成物中に、1分子中に複数個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、1分子中に(メタ)アクリロイル基とアリル基等の他のラジカル重合性基を有する化合物を含むことにより、前記接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して架橋構造を形成することが容易となる。
【0077】
前記成分6-1の化合物の具体例としては、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の2価アルコールのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0078】
また、前記成分6-1の化合物のさらなる具体例としては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
さらに、前記成分6-1の化合物のさらなる具体例としては、1モルのネオペンチルグリコールに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、1モルのビスフェノールAに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0079】
さらに、前記成分6-1の化合物のさらなる具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0080】
さらに、前記成分6-1の化合物のさらなる具体例としては、ジイソシアネートの3量体にアルコール性水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートを反応させて得られるトリ(メタ)アクリレート化合物(下記式(4)~下記式(6)を参照)や、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)のすべてのイソシアナト基とアルコール性水酸基含有アルキル(メタ)アクリレートのアルコール性水酸基を反応させて得られるポリ(メタ)アクリレート化合物(下記式(7)を参照)を挙げることができる。
式(4):
【0081】
【0082】
(式(4)中、3つのR1はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、3つのpはそれぞれ独立に2~4の整数を表す。)
式(5):
【0083】
【0084】
(式(5)中、3つのR2はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、3つのqはそれぞれ独立に2~4の整数を表す。)
式(6):
【0085】
【0086】
(式(6)中、3つのR3はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、3つのrはそれぞれ独立に2~4の整数を表す。)
式(7):
【0087】
【0088】
(式(7)中、(2+t)個のR4はそれぞれ独立に水素又はメチル基を表し、(2+t)個のsはそれぞれ独立に2~4の整数を表し、tは0以上の整数を表す。)
また、1分子中に(メタ)アクリロイル基と、アリル基等の他のラジカル重合性基を有する、成分2以外の化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸アリル、ビス((メタ)アリロキシエチル)-モノ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、モノ(アリロキシエチル)-ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート等を挙げることができる。これらの1分子中に複数個の(メタ)アクリロイル基を有する化合物は、1種で用いることも2種以上併用することもできる。
【0089】
これらの中で好ましいものとしては、式(4)の化合物、式(6)の化合物及びビス((メタ)アリロキシエチル)-モノ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、モノ(アリロキシエチル)-ビス((メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートである。
【0090】
また、本発明の接着剤用組成物には、必要に応じて、(成分7)イソシアナト基の反応触媒を含有することができ、かつ好ましい。前記イソシアナト基の反応触媒は、カルボキシ基とイソシアナト基との反応を促進させるための物質であり、特に限定されるものではないが、例えば、有機スズ化合物、第3級アミン等が挙げられる。
有機スズ化合物の具体例としては、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫ジラウレート及びジオクチル錫ジマレート等を挙げることができる。
【0091】
また、第3級アミンの具体例としては、テトラメチルエチレンジアミン等のテトラアルキルエチレンジアミン、ジメチルベンジルアミン等のN,N’-ジアルキルベンジルアミン、トリエチレンジアミン、ペンタメチレンジエチレントリアミン、N-エチルモルフォリン、N-メチルモルフォリン、1-メチル-4-ジメチルアミンエチルピペラジン及びジアザビシクロウンデセン等が挙げられる。
この反応触媒は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0092】
この反応触媒を使用する場合には、本発明の接着剤用組成物の総量から成分4の量を差し引いた量を100質量部とした場合に、反応触媒の量の割合は0.01~3質量部であることが好ましい。この範囲であると、混合後のポットライフと、本発明の接着剤用組成物の重合物を介して金属箔層とシーラント層を貼り合わせた後の接着力が発現するまでの時間とのバランスが取り易い。
【0093】
また、本発明の接着剤用組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、粘着付与剤、可塑剤、酸性官能基を有しないポリオレフィン、ポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂を含有せしめても良い。
粘着付与剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、天然系では、ポリテルペン系樹脂、ロジン系樹脂等が挙げられ、石油系では、ナフサの分解油留分より得られる脂肪族(C5)系樹脂、芳香族(C9)系樹脂、共重合(C5/C9)系樹脂、脂環族系樹脂等が挙げられる。また、これら樹脂の二重結合部分を水素化した水添樹脂が挙げられる。この粘着付与剤は、1種のみ用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0094】
また、酸性官能基を有しないポリオレフィン或いはポリオレフィン以外の熱可塑性樹脂としては、特に限定されるものではないが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-エチルアクリレート共重合樹脂、ワックス等が挙げられる。前記カルボキシ基を有しないオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、特に限定されるものではないが、例えば、SEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)、SEPS(スチレン-エチレン-プロピレン-スチレン)等が挙げられる。
【0095】
最後に、本発明の蓄電装置用外装材の製造方法について説明する。
本発明の蓄電装置用外装材の製造方法は、前記蓄電装置用外装材の製造方法であって、前記第二接着剤層として、前記接着剤用組成物を前記金属箔層のシーラント層側の面及び前記シーラント層の金属箔層側の面の一方又は両方に塗布し、溶剤の一部又は全部を除去し、その後、溶剤の一部又は全部を除去された接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して重合させることで、高分子層として形成する工程を備える、蓄電装置用外装材の製造方法である。
尚、前記金属箔層のシーラント層側の面と反対側の面には、第二接着剤層を塗工する前に、予め前記第一接着剤層を介して前記基材層が積層されていることが好ましい。
【0096】
前記金属箔層の少なくとも前記シーラント層側の面に腐食防止処理層が設けられていることが好ましい。また、前記シーラント層が、ポリオレフィン樹脂を含むことが好ましい。
前記接着剤用組成物の塗布方法としては、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、バーコート印刷等を挙げることができるが、前記第二接着層の厚みを考慮すると、グラビア印刷による塗布方法が最も好ましい。
【0097】
接着剤用組成物の塗布後に溶剤の一部又は全部を除去する方法としては、室温以上の所定の温度で溶剤を乾燥し除去する方法が好ましい。上記の所定の温度は、溶剤の沸点未満の温度とすることが好ましい。複数種の溶剤を混合して成分4とする場合には、上記の所定の温度は、成分4として使用する複数種の溶剤の沸点のうち最も低い沸点よりも低い温度とすることが好ましい。
【0098】
溶剤の一部又は全部を除去された接着剤用組成物には、活性エネルギー線が照射される。このときに使用される活性エネルギー線は、可視光線、紫外線、真空紫外線、X線、γ線、電子線などのエネルギーを持つ電磁波又は粒子線を使用することができるが、一般的には、紫外線、可視光線を使用する場合が多い。活性エネルギー線が紫外線や可視光線である場合、重合や硬化のための照射光源に特に制限はなく、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、ハロゲンランプなどを用いることができる。この際の光の照射量は、組成物により異なるが、一般的には、50~2000mJの範囲であることが多い。
【0099】
溶剤の一部又は全部を除去された接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して重合させることで、高分子層として形成することができる。
また、さらに、溶剤の一部又は全部を除去された接着剤用組成物に活性エネルギー線を照射して重合させることで、高分子層として形成させた後に、該高分子層を20℃~70℃の雰囲気に1時間以上曝すことが好ましい。さらに好ましくは、30℃~60℃の雰囲気に1時間以上曝すことである。
【0100】
20℃~70℃の雰囲気に1時間以上曝すことにより、前記接着剤用組成物中のイソシアナト基と、カルボキシ基及びアルコール性水酸基との反応時間が促進される。カルボキシ基及びアルコール性水酸基は、前記接着剤用組成物中や、前記金属箔層の前記シーラント層側の面及び前記シーラント層の前記金属箔層側の面に存在する。なおかつ、20℃~70℃の温度範囲内であれば、シーラント層の物性を殆ど変化させない。
20℃~70℃の雰囲気に曝す時間は、好ましくは、3時間以上であり、さらに好ましくは6時間以上である。
【0101】
なお、本発明の蓄電装置用外装材は、非水電解質系リチウムイオン電池用外装材として好適に用いられるが、特にこのような用途に限定されるものではない。
本発明の蓄電装置用外装材を成形(深絞り成形、張り出し成形等)することにより、電池用ケースを得ることができる。
【実施例】
【0102】
次に、この発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
〔製造例1〕
上部に塩化カルシウム管を取り付けたコンデンサー、温度計、滴下ロート及び攪拌羽付きの攪拌機を具備した三口フラスコにタケネート(登録商標)D-127N(1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート変性物が主成分である、有効成分75.5質量%の酢酸エチル溶液、NCO濃度:13.8質量%、三井化学社製)112.27質量部、スズ触媒としてジブチルスズラウレート0.02質量部を仕込んだ。また、滴下ロートに4-ヒドロキシブチルアクリレート17.72質量部を仕込み、滴下の準備をした。
【0103】
その後、攪拌を開始し、オイルバスを用いて、三口フラスコの内温を70℃に昇温した。攪拌羽付きの攪拌機を用いて攪拌させ、滴下ロートから前記4-ヒドロキシブチルアクリレート17.72質量部を、三口フラスコの内温を70~75℃に制御するように、20分間かけて滴下した。その後、反応を4時間継続して、ガスクロマトグラフィーで4-ヒドロキシブチルアクリレートのピークが観測されなくなったのを確認して反応を終了し、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート変性物中のイソシアナト基の総数の1/3のイソシアナト基に4-ヒドロキシブチルアクリレートが付加したオリゴマー(以下、「オリゴマー1」と記す。)の酢酸エチル溶液(固形分濃度78.8質量%)を得た。
【0104】
〔製造例2〕
製造例1のタケネート(登録商標)D-127Nの量を98.81質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレートの量を31.19質量部に変更した以外は、製造例1の同様の操作を行い、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンのイソシアヌレート変性物中のイソシアナト基の総数の2/3のイソシアナト基に4-ヒドロキシブチルアクリレートが付加したオリゴマー(以下、「オリゴマー2」と記す。)の酢酸エチル溶液(固形分濃度81.4質量%)を得た。
【0105】
〔製造例3〕
上部に塩化カルシウム管を取り付けたコンデンサー、温度計、滴下ロート及び攪拌羽付きの攪拌機を具備した三口フラスコにデュラネート(登録商標)TKA-100(ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物、NCO濃度:21.7質量%、旭化成社製)104.15質量部、スズ触媒としてジブチルスズラウレート0.02質量部を仕込んだ。また、滴下ロートに4-ヒドロキシブチルアクリレート25.85質量部を仕込み、滴下の準備をした。
【0106】
その後、攪拌を開始し、オイルバスを用いて、三口フラスコの内温を70℃に昇温した。攪拌羽付きの攪拌機を用いて攪拌させ、滴下ロートから前記4-ヒドロキシブチルアクリレート25.85質量部を、三口フラスコの内温を70~75℃に制御するように、20分間かけて滴下した。その後、反応を4時間継続して、ガスクロマトグラフィーで4-ヒドロキシブチルアクリレートのピークが観測されなくなったのを確認して反応を終了し、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物中のイソシアナト基の総数の1/3のイソシアナト基に4-ヒドロキシブチルアクリレートが付加したオリゴマー(以下、「オリゴマー3」と記す。)を得た。
【0107】
〔製造例4〕
デュラネート(登録商標)TKA-100の量を86.88質量部、4-ヒドロキシブチルアクリレートの量を43.12質量部に変更した以外は、製造例3の同様の操作を行い、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物中のイソシアナト基の総数の2/3のイソシアナト基に4-ヒドロキシブチルアクリレートが付加したオリゴマー(以下、「オリゴマー4」と記す。)を得た。
【0108】
〔実施例1~7、比較例1〕
コンデンサー及び攪拌機付きの容量500mLのフラスコに、下記表1に示す成分1と成分4を仕込み、60℃で10分間攪拌し、液状の樹脂組成物を得た。その後、当該樹脂組成物を室温に冷却した。
次いで、成分2又は成分6-1と、成分3と、イソシアナト基の反応触媒と、必要に応じて成分5とを、表1に記載の割合で混合し、接着剤用組成物を得た。
なお、後述の試験片の作製に際して、成分2や成分6-1や成分5を配合後、2時間以内に接着剤用組成物を使用した。
【0109】
得られた表1の接着剤用組成物を使用し、後述の評価を実施した。それらの結果を表1に示す。表1中の各成分の値は、質量部を示す。
また、表1中の成分5及び成分6は、以下の通りである。
スミジュール(登録商標)44V40:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、NCO濃度:31.0質量%、住化コベストロウレタン社製
デュラネート(登録商標)TKA-100:ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物、NCO濃度:21.7質量%、旭化成社製
【0110】
デスモジュール(登録商標)Z 4470 BA:イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート変性物の酢酸ブチル溶液、固形分濃度70質量%、NCO濃度:11.9質量%、住化コベストロウレタン社製
ライトアクリレート(登録商標)DCP-A:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、分子量304、共栄社化学社製
Laromer(登録商標)PR9000:前記式(1)の化合物、分子量736.82、BASF社製
カレンズ(登録商標)MOI-EG:2-(2-メタクリロイルオキシエチルオキシ)エチルイソシアナート、分子量199.206、昭和電工製
【0111】
【0112】
なお、配合に使用した酸変性ポリオレフィン(成分1)は、以下の物性値のものを使用した。
(使用した酸変性ポリオレフィン)
種類:プロピレン-ブテン共重合体の無水マレイン酸グラフト変性物
酸価:12.6mg-KOH/g
融点:80℃
融解熱量:25J/g
プロピレンとブテンの共重合比率(mol比)は、プロピレン:ブテンが78:22であり、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)はそれぞれ、Mw=110,000、Mn=58,000である。
【0113】
(酸価の測定方法)
JIS K0070:1992に準拠して、測定した。
(融点測定)
融点は、JIS K7121(1987年制定)「プラスチックの転移温度測定方法」に規定された方法で測定した。測定には株式会社島津製作所製のDSC(示差走査熱量計)(型式DSC-60A)を用い、昇温速度10℃/分で示差走査熱量測定を行った結果得られた融解ピーク温度を「融点」とした。
【0114】
さらに詳細な測定条件は、以下の通りである。すなわち、粉状サンプルを仕込み、室温から180℃まで昇温速度10℃/分で昇温し、180℃の高温に5分間ホールドして融解させて、その後-30℃まで降温し、-30℃で5分間ホールドした後、10℃/分の昇温速度で昇温することにより、融解ピーク温度を測定した。
【0115】
(融解熱量測定)
前記融点測定の項で記した条件で測定を行い、得られた測定チャートのベースラインの延長線と融解ピークとで囲まれる部分の面積から融解熱量を測定した。
(プロピレンとブテンの共重合比率(mol比)の測定方法)
13C NMR測定(溶媒;CDCl3)を行い、以下の方法により解析した。
解析方法:13C NMRスペクトルの34.0ppmのピークはポリブテンのメチンの炭素由来であり、27.0ppm~28.0ppmのピークは、ポリブテンの側鎖のメチレンの炭素とポリプロピレンのメチンの炭素由来である。従って、34.0ppmのピークの積分比を27.0ppm~28.0ppmのピークの積分比で除して100を掛け合わせた値により、ブテンの共重合比率(mol%)を算出した。また、上記のようにして算出されたブテンの共重合比率を100から差し引くことにより、プロピレンの共重合比率(mol%)を算出した。
【0116】
(重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」と記す。)で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量である。
下記の条件で測定し、ポリスチレン標準物質として、(STANDARD SM-105)を使用した。
装置名:日本分光株式会社製HPLCユニット HSS-2000
カラム:ShodexカラムLF-805L×3本(直列)
移動相:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/min
検出器:日本分光株式会社製RI-2031Plus
オーブン温度:40.0℃
試料量:サンプルループ 100μL
試料濃度:0.1質量%前後に調整。
【0117】
〔接着剤用組成物の液性評価〕
・粘度
B型回転粘度計(ブルックフィールド社製 LVDV-2+Pro ビスコメーター)と、少量サンプルアダプターモデル(スピンドル/チャンバー:SC4 18/13RP)を用いて、温度25.0℃、回転数20rpmの条件で接着剤用組成物の粘度を測定した。結果を表1に示す。
【0118】
〔試験片の作製〕
表面に腐食防止処理(化成処理)層を有するアルミニウム箔(幅:35cm、厚さ:40μm)のアルミロールをグラビア印刷機にセットし、グラビア印刷法によって、アルミニウム箔の腐食防止処理(化成処理)層面に接着剤用組成物を塗布し、その後、溶剤を蒸発させるために120℃の熱風乾燥炉を通過させた。
【0119】
次いで、シーラント層用の熱融着性フィルムである無延伸ポリプロピレン(厚さ80μm、以下「CPP」と記す。)と前記熱風乾燥炉を通過させた塗布済みのアルミニウム箔とを、2本のロール(1本は昇温なしのゴムロール、他の1本は80℃に昇温した金属ロール)の間に通し、アルミニウム箔の塗布側の面とCPPを貼り合わせた。ロール通過時の圧力は0.5MPaで、通過速度は8m/minである。
【0120】
その後、貼り合わせた多層フィルムのCPP面から紫外線照射装置を用いて600mJ(365nm)の照射量の光を照射し、その後、2本のロール(1本は昇温なしのゴムロール、他の1本は95℃に昇温した金属ロール)を用いて、多層フィルムをロール状に巻き取った。ロール通過時の圧力は0.5MPaで、通過速度は8m/minである。これらのロール状多層フィルムを50℃の熱風循環式オーブンに、12時間又は24時間収容し、その後、35cm幅の積層フィルムの中央部の幅19cmの部分を使って、短冊状試験片を作製した。
【0121】
〔試験片の評価〕
前記の方法で得られた試験片を用い、後記する評価を行った。
〔接着性評価〕
[常温剥離強度]
前記試験片を15mm幅に裁断し、アルミニウム箔とCPPとの間の常温剥離強度(測定温度25℃)を、JIS K6854-3:1999に準拠して、T字剥離試験(引張速度100mm/min)で測定した。その結果を表2に示す。
【0122】
[熱間剥離強度]
前記試験片を15mm幅に裁断し、アルミニウム箔とCPPとの間の熱間剥離強度(測定温度85℃)を、前記同様にT字剥離試験(引張速度100mm/min)で測定した。その結果を表2に示す。
[耐電解液性]
電解液として、炭酸エチレン及び炭酸ジエチルを1:1(体積比)で混合し、これに1mol/Lの濃度でヘキサフルオロリン酸リチウムを添加したものを用いた。
前記試験片を85℃の電解液中に24時間又は1週間浸漬した後に、アルミニウム箔とCPPとの間の常温剥離強度(測定温度25℃)を、前記同様にT字剥離試験(引張速度100mm/min)で測定した。結果を表2に示す。
【0123】
【0124】
表2に示すように、実施例1~7の接着剤用組成物は、電解液によるアルミニウム箔層とシーラント層との間の接着強度の経時的低下が長期間にわたって抑制されて、十分な耐電解液性を有した。
【0125】
〔外装材の評価〕
厚さ40μmのアルミニウム箔の一方の面にウレタン系樹脂接着剤(第一接着剤層)をグラビアロールで塗布し、加熱により乾燥させた後、その接着剤面に基材層として厚さ25μmの2軸延伸ナイロンフィルムをラミネートして、積層フィルムを得た。尚、前記アルミニウム箔の他方の面には、化成処理が施されている。
【0126】
表面に腐食防止処理(化成処理)層を有するアルミニウム箔の代わりに、上記2軸延伸ナイロンフィルム(基材層)をラミネートした積層フィルムを使ったこと以外は、前記試験片の作製の項で説明した方法と同様のプロセスで、アルミニウム箔面に第二接着剤層及びシーラント層を積層し、ロール状多層フィルムを作製した。その第二接着剤層として、実施例1~7の接着剤用組成物を使用して作製した多層フィルムは、上記耐電解液性の評価で使用した電解液に85℃で1週間浸漬しても、接着面の剥がれなどの異常は見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明の蓄電装置用外装材は、例えば、リチウムイオン電池等の電池用外装材として用いられる。
【符号の説明】
【0128】
1・・・電池用外装材
2・・・基材層
3・・・シーラント層
4・・・アルミニウム箔層
5・・・第一接着剤層
6・・・第二接着剤層