(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ろう材および銅セラミックス接合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 37/02 20060101AFI20240130BHJP
B23K 35/30 20060101ALI20240130BHJP
C22C 9/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C04B37/02 B
B23K35/30 310C
C22C9/00
(21)【出願番号】P 2022047963
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2023-05-31
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】能川 玄也
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼野 俊
(72)【発明者】
【氏名】沖代 賢次
(72)【発明者】
【氏名】岡本 篤志
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-140929(JP,A)
【文献】特開2005-305526(JP,A)
【文献】特開2021-091595(JP,A)
【文献】特開2001-085571(JP,A)
【文献】特開2012-136378(JP,A)
【文献】中国特許第108642317(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 - 37/04
H01L 23/12 - 23/15
B23K 35/30
C22C 9/00
H05K 1/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuまたはCu合金からなる銅材と、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、の接合に用いられ、
Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含
み、Agを含有しない
ろう材。
【請求項2】
Mgを、Cuとの金属間化合物の態様で含む
請求項
1に記載のろう材。
【請求項3】
Cuを、Cu単体と、Mgとの金属間化合物と、の態様で含む
請求項
1または
2に記載のろう材。
【請求項4】
CuまたはCu合金からなる銅材と、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、をろう材を介して積層させるように配置する工程と、
前記銅材と前記セラミックス材との積層体を、積層方向に加圧しながら、加熱して保持
する工程と、を有し、
前記ろう材として、Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含
み、Agを含有しない材料を用いる
銅セラミックス接合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、銅セラミックス接合体、ろう材、および、銅セラミックス接合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車やハイブリット自動車に搭載される電力制御装置の構成材料として、銅材とセラミックス材とを接合させてなる接合体(以下、銅セラミックス接合体ともいう)が用いられることがある。銅材とセラミックス材との接合には、銀(Ag)を含む活性金属ろう材を用いる技術が知られているが、近年、Agマイグレーションや高コストといった課題の解消のため、Ag非含有の活性金属ろう材を用いて接合する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、銅セラミックス接合体における接合強度を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
CuまたはCu合金からなる銅材と、
前記銅材に接合され、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、
前記銅材と前記セラミックス材との接合面に形成され、Cuと、Mgと、を含み、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素をさらに含む接合層と、を有し、
前記接合層のせん断強度が10MPa以上である
銅セラミックス接合体が提供される。
【0006】
本開示の他の態様によれば、
CuまたはCu合金からなる銅材と、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、の接合に用いられ、
Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含む
ろう材が提供される。
【0007】
本開示のさらに他の態様によれば、
CuまたはCu合金からなる銅材と、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、をろう材を介して積層させるように配置する工程と、
前記銅材と前記セラミックス材との積層体を、積層方向に加圧しながら、加熱して保持する工程と、を有し、
前記ろう材として、Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含む材料を用いる
銅セラミックス接合体の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、銅セラミックス接合体における接合強度を高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の一態様における銅セラミックス接合体100の部分断面拡大図である。
【
図2】(a)は
図1の要部Aを撮影した部分断面拡大写真であり、(b)は
図1の要部Bを撮影した部分断面拡大写真である。
【
図3】
図1の要部Cを撮影した部分断面拡大写真である。
【
図4】(a)は接合層30に加わるせん断応力を模式的に示す図であり、(b)は接合層30に加わる引張応力を模式的に示す図である。
【
図5】(a)は、銅材10とセラミックス材20とをろう材50を介して配置した様子を、(b)は、銅材10とセラミックス材20との積層体を加圧しながら加熱する様子を、(c)は、製造された銅セラミックス接合体100をそれぞれ示す図である。
【
図6】せん断強度試験を実施する際の様子を模式的に示す図である。
【
図7】サイズの大きなボイド33Lが発生した接合層の部分断面拡大写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の一態様>
以下、本開示の一態様について、上述の図面群を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものである。図面に示される各要素の寸法や比率は現実とは必ずしも一致しない。また、図面間においても、各要素の寸法や比率は必ずしも一致しない。
【0011】
(1)銅セラミックス接合体の構成
図1に示すように、銅セラミックス接合体100は、銅材10と、銅材10に接合されたセラミックス材20と、を備えている。
【0012】
銅材10は、純銅(以下、Cuともいう)、または、銅合金(以下、Cu合金ともいう)により構成されている。純銅としては、例えば、無酸素銅、タフピッチ銅、りん脱酸銅を用いることができる。銅合金としては、銅(Cu)を主元素とし、例えば、亜鉛(Zn),すず(Sn),りん(P),アルミニウム(Al),ベリリウム(Be),コバルト(Co),ニッケル(Ni),鉄(Fe),マンガン(Mn)からなる群より選択される少なくとも一種の元素を添加した合金を用いることができる。銅材10の形状や寸法については、特に限定はないが、銅セラミックス接合体100を絶縁回路基板の構成材料として用いる場合は、例えば、0.1mm以上4.0mm以下の範囲内の厚さを有する平板とすることができる。
【0013】
セラミックス材20は、シリコン(Si)またはアルミニウム(Al)の窒化物、すなわち、組成式Si3N4で表される窒化ケイ素、または、組成式AlNで表される窒化アルミニウムからなる焼結体により構成されている。セラミックス材20の形状や寸法についても、特に限定はないが、銅セラミックス接合体100を絶縁回路基板の構成材料として用いる場合は、例えば、0.2mm以上4.0mm以下の範囲内の厚さを有する平板とすることができる。以下、一例として、セラミックス材20が窒化ケイ素からなる場合について説明する。
【0014】
銅材10とセラミックス材20との間には、これらの接合面10s,20sに沿って、接合層30が形成されている。接合層30は、銅(Cu)と、マグネシウム(Mg)と、を含み、チタン(Ti),ジルコニウム(Zr),ハフニウム(Hf),バナジウム(V),ニオブ(Nb),タンタル(Ta),クロム(Cr),モリブデン(Mo),タングステン(W),カルシウム(Ca),イットリウム(Y),セリウム(Ce),ランタン(La),サマリウム(Sm),イッテルビウム(Yb),ネオジム(Nd),ガドリニウム(Gd),エルビウム(Er)等からなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素をさらに含んでいる。以下、一例として、活性金属元素がTiである場合について説明する。
【0015】
なお、後述するように、接合層30は、Cu、Mg、および、上述の活性金属元素をそれぞれ所定の割合で含むろう材50(
図5参照)が、銅材10およびセラミックス材20のそれぞれと反応することにより形成されている。本態様にて用いるろう材50は、Ag非含有であり、また、Mgおよび上述の活性金属元素を含むだけでなく、Cuを後述の割合で含んでいる。また好ましくは、本態様にて用いるろう材50は、Mgを、Cuとの金属間化合物の態様で含んでいる。このようなろう材50を用いて接合を行うことにより、本態様における接合層30には、以下に示す種々の特徴が表れることとなる。
【0016】
以下、接合層30が有する種々の特徴について説明する。
【0017】
(特徴1)
図1に示すように、接合層30は、銅材10との界面を構成する第1層31と、セラミックス材20との界面を構成する第2層32と、の積層構造を有している。第1層31の厚さとしては1~2000μmが、第2層32の厚さとしては1~2000nmが、それぞれ例示される。
【0018】
図2(a)および
図2(b)に、第1層31の断面拡大写真をそれぞれ例示する。これらの写真は、第1層31およびその周辺を、観察位置を異ならせて撮影したものである。これらの写真に示されるように、第1層31は、固溶相31Aと、化合物相31Bと、を有している。固溶相31Aと化合物相31Bとは海島状に相分離している。例えば、連続層である海状の固溶相31Aに、化合物相31Bが、島状に分散している。
【0019】
固溶相31Aは、Cu結晶にMgが固溶した固溶体を主成分としている。固溶相31A中には、さらに、ろう材50に含まれていたTi等の活性金属元素や、セラミックス材20に含まれていたSiやAl等が固溶している場合もある。
【0020】
化合物相31Bは、CuとMgとの金属間化合物、すなわち、組成式MgCu2で表される化合物(以下、Cu-Mg合金ともいう)を主成分としている。化合物相31Bには、さらに、上述の活性金属元素を含む金属間化合物が析出している場合がある。活性金属元素としてTiを選択する場合、活性金属元素を含む金属間化合物としては、組成式Cu4Ti,Cu3Ti2,Cu2Ti,Cu4Ti3,CuTi,CuTi2,Ti5Si3,Ti3Si,CuTiSi等で表される化合物群より選択される少なくとも一種の化合物が挙げられる。
【0021】
金属間化合物を主成分とする化合物相31Bは、固溶体を主成分とする固溶相31Aに比べて脆性な特性を有しており、第1層31中における出現の態様によっては、銅材10とセラミックス材20との接合強度を著しく低下させる要因となり得る。というのも、銅材10とセラミックス材20との接合に、Mgおよび上述の活性金属元素をそれぞれ単体で含み、Cuを含まないろう材を用いる場合、金属間化合物は、第1層31のうち、第2層32に隣接する界面近傍領域Dに集中して出現することとなる。金属間化合物が界面近傍領域Dに集中して出現すると、第1層31中には接合面に沿って脆弱な層構造が構成されることとなり、これにより、銅材10とセラミックス材20との接合強度が著しく低下することとなる。またこの場合、銅材10とセラミックス材20との接合そのものが不可となることもある。
【0022】
このような課題に対し、本態様においては、銅材10とセラミックス材20との接合の際、Mgおよび活性金属元素を含むだけでなく、Cuを後述の割合で含むろう材50を用いることにより、第1層31中における化合物相31Bの局所的な出現、例えば、第2層32との界面近傍領域Dにおける化合物相31Bの局所的な出現を、抑制することに成功している。
【0023】
具体的には、本態様においては、銅材10とセラミックス材20との接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、第2層32との界面に隣接する界面近傍領域D、すなわち、第1層31のうち第2層32との界面から銅材10側に向けて例えば厚さ10μmの範囲内の所定の領域において、固溶相31Aの合計断面積SA、化合物相31Bの合計断面積SBが、SA/(SA+SB)>0.6、好ましくは>0.7、より好ましくは>0.8の関係式を満たしている。
【0024】
なお、
図2(a)および
図2(b)に示すように、本態様における化合物相31Bは、第1層31の厚さ方向の略全域、および、幅方向の略全域において、局所的に集中することなく、略均一な出現頻度で分散している。したがって、本態様においては界面近傍領域Dだけでなく、界面近傍領域Dを除く第1層31内の任意の領域(例えば、界面近傍領域Dよりも銅材10に近い側の任意の領域)のいずれにおいても、SA,SBが上述の関係を満たしている。いい換えれば、本態様においては、銅材10とセラミックス材20との接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、その厚さ方向全域にわたっての平均値としてSA/(SA+SB)>0.6、好ましくは>0.7、より好ましくは>0.8を満たすだけでなく、第1層31内における例えば厚さ10μmを単位とした任意の局所的領域のいずれにおいても、SA/(SA+SB)>0.6、好ましくは>0.7、より好ましくは>0.8を満たしているといえる。
【0025】
合計断面積SA,SBが上述の関係式を満たすことにより、
図2(a)および
図2(b)にそれぞれ示されるように、本態様の第1層31中には、化合物相31Bが局所的に発生してなる脆弱な層構造が出現しなくなる。そして、第1層31中には、第2層32と銅材10とを繋ぐ固溶相31Aからなるパスが確保されることとなる。このパスは、固溶体を主成分とすることから、延性、展性に優れており、また、脆性な化合物相31Bによって途中で分断されることなく、第2層32と銅材10とを連続的に繋いでいる。このパスは、銅材10とセラミックス材20との間を繋ぐ強固な接続構造を構成することとなる。
【0026】
(特徴2)
Mgを含むろう材を用いて銅材10とセラミックス材20とを接合させる場合、ろう材に含まれるMgが蒸発することにより、第1層31中に、ボイドやピンホール(以下、これらを総称してボイドという)が発生することが懸念される。
図7に、Mgの蒸発等に起因して発生したボイド33Lを含む接合層の断面拡大写真を例示する。
図7においては、略3500μm
2の視野内において、円相当径(ボイドの断面積に等しい面積を有する円の直径)が8μm以上の大きさであるボイド33Lの存在が確認できる。なお、
図7の右上におけるボイド33Lの円相当径は9~10μm程度であり、左上におけるボイド33Lの円相当径は5μm以上であり、左下におけるボイド33Lの円相当径は3~4μm程度である。
【0027】
このような大きなサイズを有するボイド33Lの存在は、銅材10とセラミックス材20との接合強度を低下させる要因となる。ここで、銅材10とセラミックス材20との接合に、Mgおよび上述の活性金属元素をそれぞれ単体で含み、Cuを含まないろう材を用いた場合、ろう材に含まれるMgが激しく蒸発し、第1層31中おける円相当径が8μmを超えるボイド33Lの発生は不可避となり、結果、銅材10とセラミックス材20との接合強度が著しく低下することとなる。またこの場合、銅材10とセラミックス材20との接合そのものが不可となることもある。
【0028】
このような課題に対し、本態様においては、接合の際、Mgおよび活性金属元素をそれぞれ含むだけでなく、Cuを後述の割合で含むろう材50を用いることにより、サイズの大きなボイド33L、例えば、8μm以上の円相当径を有するボイド33Lの、接合層30中における出現を、充分に抑制することに成功している。
【0029】
例えば、
図2(a)においては、略10000μm
2の視野内において、円相当径が3μm以上の大きさであるボイド33Sは1つも観察されず、また、円相当径が1~2μm程度の大きさであるボイド33Sの数は3個のみとなっている。また例えば、
図2(b)においては、略10000μm
2の視野内において、円相当径が2.5μm程度の大きさであるボイド33Sの数は1個のみとなっており、また、円相当径が1~2μm程度の大きさであるボイド33Sの数は2個のみとなっている。
【0030】
これらのように、本態様における接合層30は、接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、略10000μm2の任意の視野内において、円相当径が8μm以上の大きさであるようなボイド33Lが1つも観察されないという、極めて優れた特徴を有している。
【0031】
本態様においては、接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、仮にボイド33Sが観察されたとしても、その円相当径は、8μm未満の大きさに収まっており、例えば、5μm未満、好ましくは3μm未満の大きさとなっている。
【0032】
また、本態様においては、接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、円相当径が8μm未満の大きさであるボイド33S、例えば、円相当径が2μm超8μm未満の大きさであるボイド33Sが観察される場合はあり得るが、その数は、略10000μm2の任意の視野内において、10個以下、好ましくは5個以下と、非常に少なくなっている。また、本態様おいては、円相当径が1μm以上2μm以下の大きさであるボイド33Sが観察される場合もあり得るが、その数は、略10000μm2の任意の視野内において、20個以下、好ましくは10個以下と、非常に少なくなっている。
【0033】
(特徴3)
接合層30のうち、セラミックス材20との界面を構成する第2層32は、活性金属元素(ここでは一例としてTi)の窒化物である窒化チタン(TiN)を主成分としている。セラミックス材20が窒化ケイ素からなる場合には、第2層32中に、組成式Ti5Si3で表される化合物等が含まれる場合もある。
【0034】
なお、本態様においては、第2層32が、組成式MgSiN
2で表される窒化物結晶Xを含んでいる。また、
図3に示すように、窒化物結晶Xは、第2層32のうち、セラミックス材20との界面近傍に偏在している。
【0035】
窒化物結晶Xが偏在する領域の厚さは、第2層32の厚さをTxとしたとき、Txの5%~50%、好ましくは、10~40%程度となる。例えば、
図3に示すように、第2層32の厚さTxが250nm程度である場合、窒化物結晶Xが偏在する領域の厚さは、10~150nm、好ましくは、20~100nm程度となる。
【0036】
窒化物結晶Xの存在は、第2層32に対し、例えば、プリセッション電子線回折法を用いた結晶解析(TEM-PED法)を用いることにより確認することができる。
【0037】
なお、本態様における第2層32は、組成式Mg3N2で表される窒化物結晶Yを実質的に含んでいない。窒化物結晶Yは、TEM-PED法による分析を行っても確認することができない。
【0038】
(特徴4)
これら種々の特徴を有することにより、本態様においては、銅材10とセラミックス材20との接合強度を著しく高めることに成功している。
【0039】
具体的には、本態様における接合層30のせん断強度は、10MPa以上、好ましくは50MPa以上の大きさとなっている。また、本態様における接合層30の引張強度は、17.3MPa以上、好ましくは86.6MPa以上の大きさとなっている。
【0040】
なお、ここでいう接合層30のせん断強度とは、
図4(a)に示すように、銅材10とセラミックス材20とを接合面10s,20sに平行な方向に沿って互いに反対方向へ位置ずれさせるように、接合層30に対して応力(せん断応力)を加えた際に、接合層30を破断(せん断破壊)させるのに必要となる、単位面積当たりにおけるせん断応力の大きさを意味する。また、接合層30の引張強度とは、
図4(b)に示すように、銅材10とセラミックス材20とを接合面10s,20sに垂直な方向に沿って互いに引き離すように、接合層30に対して応力(引張応力)を加えた際に、接合層30を破断(剥離破壊)させるのに必要となる、単位面積当たりにおける引張応力の大きさを意味する。
【0041】
(2)銅セラミックス接合体の製造方法
次に、上述の銅セラミックス接合体100の製造方法について、
図5(a)~
図5(c)を用いて説明する。
【0042】
まず、
図5(a)に示すように、上述の銅材10と、上述のセラミックス材20と、をろう材50を介して積層させるように配置する。
【0043】
ろう材50としては、上述の通り、Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、上述の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含む材料を用いることができる。
【0044】
ろう材50に含まれるCuは、ろう材50が銅材10およびセラミックス材20と反応することで形成される接合層30に、上述した種々の特徴を発現させるように作用する。また、ろう材50に含まれるMgは、銅材10とセラミックス材20とを接合する際に、銅材10とろう材50との濡れ性、および、セラミックス材20とろう材50との濡れ性を、バランスよく高めるように作用する。また、ろう材50に含まれる活性金属元素は、セラミックス材20と反応して第2層32を形成し、接合層30とセラミックス材20と間の接合強度を高めるように作用する。
【0045】
なお、ろう材50に含まれるMg含有量が4.5at%未満となったり、活性金属元素含有量が合計で0.1at%未満となったりして、Cu含有量が95at%を超える場合には、上述したMg添加による効果や、活性金属元素添加による効果が、得られなくなる。
【0046】
また、ろう材50におけるMg含有量が33at%を超えたり、活性金属元素含有量が合計で7at%を超えたりし、Cu含有量が65at%未満となる場合には、上述したCu添加による効果が得られなくなる。例えば、上述のSA,SBが、SA/(SA+SB)>0.6の関係式を満たさなくなり、第1層31中に、第2層32と銅材10とを繋ぐ固溶相31Aからなるパスを確保できなくなる。また例えば、接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、円相当径が8μm以上の大きさであるようなボイド33Lが出現するようになる。また例えば、セラミックス材20との界面を構成する第2層32に、組成式MgSiN2で表される窒化物結晶Xが出現しなくなる。これらの結果、接合層30のせん断強度や引張強度が大きく低下し、せん断強度は10MPa未満、引張強度は17.3MPa未満となり、さらには、銅材10とセラミックス材20との接合が実質的に失敗する場合もある。
【0047】
これらのことから、ろう材50に含ませるCu、Mg、および、活性金属元素の添加量は、Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、上述の活性金属元素を合計で0.1~7at%の範囲内の量とすることが好ましい。
【0048】
なお、Cuは、単体(Cu結晶)、水素化物(CuH)、Mgとの金属間化合物(MgCu2)、活性金属元素との金属間化合物(例えばCu-Ti化合物)のうち、少なくともいずれかの態様で含ませることができる。Mgは、単体(Mg結晶)、水素化物(MgH2)、Cuとの金属間化合物(MgCu2)、活性金属元素との化合物(例えばMg-Ti化合物)のうち、少なくともいずれかの態様で含ませることができる。活性金属元素は、例えばTiを選択する場合、単体(Ti結晶)、水素化物(TiH2)、Cuとの金属間化合物、Mgとの金属間化合物のうち、少なくともいずれかの態様で含ませることができる。
【0049】
ろう材50は、Mgを、Mg単体の態様で含まず、Cuとの金属間化合物(MgCu2)の態様で含むことが好ましい。また、ろう材50は、Cuを、Cu単体と、Mgとの金属間化合物(MgCu2)と、の態様で含むことが好ましい。ろう材50が、Cu-MgCu2の共晶組成を有することにより、ろう材50の融点を低下させることが可能となる。また、これにより、接合時の加熱温度を低下させることができ、Mgの過激な蒸発を回避することができる。結果として、形成される接合層30に、上述した種々の特徴をより確実に発現させることが可能となる。
【0050】
ろう材50の態様は、粉末状、箔状、ペースト状のうちのいずれであってもよい。粉末状の態様とする場合、粉末の平均粒径(D50)は例えば5~50μmとすることができる。箔状の態様とする場合、その平均膜厚は例えば5~200μmとすることができる。ペースト状の態様とする場合、その主溶媒として、ターピネオール、ブタンジオール等のアルコール類やトルエン類を、バインダとして、ポリビニルアルコール、エチルセルロース、ポリメタクリル酸、ポリアクリル等を、界面活性剤として、カチオン系、アニオン系、ノニオン系の活性剤を用いることができる。可塑剤や分散剤をさらに含んでいてもよい。
【0051】
銅材10とセラミックス材20との接合予定面10s’,20s’にろう材50を配置する方法としては、スクリーン印刷、転写、ディスペンス、インクジェット、スプレー塗布、スパッタリング、蒸着等の公知の手法を用いることができる。
【0052】
続いて、
図5(b)に示すように、ろう材50を介して配置した銅材10とセラミックス材20との積層体100’を、積層方向に加圧しながら、所定の雰囲気下で加熱して保持する。
【0053】
条件としては、以下が例示される。
雰囲気:減圧雰囲気、不活性ガス雰囲気、還元雰囲気のうちいずれか
酸素濃度:1000ppm以下、好ましくは300ppm以下、より好ましくは30ppm以下
加圧:0.5kPa以上
加熱温度:735℃以上900℃以下
保持時間:特に制限はないが、例えば3分以上120分以下
【0054】
加熱の際には、ろう材50の一部に液相が形成されていることが必要であり、加えて、その液相中に活性金属元素が溶融している必要がある。加熱温度を735℃以上とすることで、この状態を作り出すことができる。ただし、加熱温度を高くしすぎると、Mgの蒸発が激しくなり、液相形成が困難となったり、形成される接合層30中にボイド33Lが発生したりする場合がある。加熱温度を900℃以下とすることで、このような課題を回避することが可能となる。加圧を0.5kPa以上とすることで、ろう材50を介した銅材10とセラミックス材20との密着状態を維持することができ、銅材10とセラミックス材20との接合強度を高めることが可能となる。加圧の上限については特に限定はないが、例えば2.0kPa程度とすることができる。雰囲気中に含まれる酸素成分は、活性金属元素やMgを酸化させる要因となるため低いほうが望ましく、上述の濃度範囲とすることで、このような課題を解消することが可能となる。
【0055】
その後、加熱させた積層体100’を降温させる。その結果、
図5(c)に示すように、上述の種々特徴を有する銅セラミックス接合体100が製造される。
【0056】
(3)効果
本態様によれば、以下に示す効果のうち、1つまたは複数の効果が得られる。
【0057】
(a)銅材10とセラミックス材20とを、Mgおよび活性金属元素をそれぞれ含むだけでなく、Cuを上述の割合で含む上述のろう材50を用いて接合することにより、第1層31内における化合物相31Bの局所的な発生(例えば、上述の界面近傍領域Dにおける局所的な発生)を回避することが可能となる。その結果、接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、第2層32に隣接する界面近傍領域Dにおいて、固溶相31Aの合計断面積SA、化合物相31Bの合計断面積SBが、SA/(SA+SB)>0.6の関係式を満たすようになる。また、第1層31中に、第2層32と銅材10とを繋ぐ固溶相31Aからなるパスが確保されるようになる。
【0058】
(b)銅材10とセラミックス材20とを、上述のろう材50を用いて接合することにより、第1層31中におけるボイド33Lの発生を抑制することが可能となる。その結果、接合面10s,20sに垂直な断面で第1層31を観察した際、10000μm2の視野内において、円相当径が8μm以上の大きさであるボイド33Lが観察されなくなる。
【0059】
(c)銅材10とセラミックス材20とを、上述のろう材50を用いて接合することにより、第2層32中に、組成式MgSiN2で表される窒化物結晶Xを含ませることが可能となる。また、この窒化物結晶Xを、第2層32のうち、セラミックス材20との界面近傍に偏在させることも可能となる。
【0060】
(d)これらの種々の特徴のうち少なくともいずれかにより、銅材10とセラミックス材20との接合強度を飛躍的に高めることが可能となる。例えば、接合層30のせん断強度を、10MPa以上、好ましくは50MPa以上の大きさとすることが可能となる。また、接合層30の引張強度を、17.3MPa以上、好ましくは86.6MPa以上の大きさとすることが可能となる。
【0061】
<本開示の他の態様>
以上、本開示の態様を具体的に説明した。しかしながら、本開示は上述の態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0062】
セラミックス材20の材料として、窒化ケイ素や窒化アルミニウムを用いる例について説明したが、これらに限定されず、アルミナ(Al2O3)、炭化ケイ素(SiC)、炭化ホウ素(B4C)、ZTA(ジルコニア強化アルミナ)、ダイヤモンド等を用いてもよい。これらの場合であっても、本開示の技術を適用することができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0063】
セラミックス材20に接合する金属材として、CuまたはCu合金からなる銅材10を用いる例について説明したが、これらに限定されず、NiまたはNi合金からなるニッケル材を用いてもよい。この場合であっても、本開示の技術を適用することができ、上述の態様と同様の効果が得られる。
【0064】
本態様における銅セラミックス接合体は、絶縁回路基板の用途に限定されるものではなく、例えば、ヒートシンクや、内燃機関や発電機械の構成部品といった、種々の用途に広く適用可能であり、これらの場合であっても、上述の態様と同様の効果が得られる。
【実施例】
【0065】
(サンプル1~20)
セラミックス材として、厚さ0.3mmの窒化ケイ素からなる板材を、銅材として、厚さ2.0mmの無酸素銅からなる板材を用いた。ろう材としては、Cu-Mg合金粉末、Cu粉末、TiH2粉末を所定の比率で混合してペースト化したものを用いた。ペースト化に際しては、溶媒として分子量400以下のポリエチレングリコールおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルを用い、ペースト中における溶媒の比率は9mass%とした。ペースト中におけるCu:Mg:Tiの元素混合比は、表1のとおりとした。このペーストを、セラミックス材の接合予定面上にスクリーン印刷を用いて塗布し、塗布したペースト膜の直上に銅材を配置し、積層方向に沿って8kPaの力で加圧し、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で、表1の条件下にて加熱処理を行うことにより、サンプル1~20を作製した。
【0066】
そして、サンプル1~20について、接合面10s,20sに垂直な断面で第1層を観察し、第2層との界面から銅材側に向けかう界面近傍領域において、上述のSA/(SA+SB)で表される断面積比率を測定した。この観察は、FE-SEMおよびEDXを用いて行った。EDXから主相がCuとなっている相を確認してこれを固溶相とし、反射電子像のコントラストが固溶相とは異なっている相を化合物相とした。これらの合計断面積やその比率は、画像解析ソフト「Image J(登録商標)」を用いて算出した。解析範囲は、第2層との界面から10μm、幅は90μmの範囲とした。
【0067】
続いて、接合層のせん断強度試験を行った。この試験では、まず、得られたサンプル1~20(銅セラミックス接合体)について、銅材を直径3mm、高さ2mmの円柱形状に加工し、その周囲のセラミックス材の接合面を露出させた状態とし、試験片を作製した。そして、
図6に示すように、試験片のセラミックス材を固定した状態で、円柱状の銅材を、接合面と平行な方向に沿って変位治具を用いて押圧し、接合層が破断(せん断破壊)に至る際の応力の大きさを測定し、その値に基づいて、接合層のせん断強度を算出した。なお、せん断試験位置(変位治具の当接高さH)は、セラミックス材の露出面から200μmの高さとし、変位軸の移動速度は100μm/sとした。
【0068】
また、せん断強度試験の結果に基づいて、接合層の引張強度を算出した。接合層の引張強度は、フォンミーゼスの式を用いてせん断強度から換算することができ、その大きさは、概ね、せん断強度の1.73倍となる。
【0069】
【0070】
表1に示されるように、サンプル1~20においては、いずれも、SA/(SA+SB)で表される断面積比率が0.6を超えていることが確認できた。また、いずれのサンプルも、せん断強度はいずれも10MPa以上(これらのサンプルでは50MPa以上)であり、これに基づいて換算される引張強度は17.3MPa以上(これらのサンプルでは86.6MPa以上)であることが確認できた。
【0071】
なお、断面観察の結果、サンプル1~20においては、いずれも、(1)第1層中に、第2層と銅材とを繋ぐ固溶相からなるパスが確保されていること、(2)略10000μm2の視野内において、第1層中に、円相当径が8μm以上の大きさであるようなボイドが1つも観察されないこと、(3)同視野内において、第1層中に、円相当径が2μm超8μm未満の大きさであるボイドが観察された場合であってもその数が10個以下、好ましくは5個以下であること、(4)同視野内において、第1層中に、円相当径が1μm以上2μm以下の大きさであるボイドが観察された場合であっても、その数が20個以下、好ましくは10個以下であること、(5)第2層が、組成式MgSiN2で表される窒化物結晶Xを含んでいること、(6)窒化物結晶Xが、厚さTxの第2層のうち、セラミックス材との界面近傍に、Txの5%~50%、好ましくは、10~40%程度の厚さで偏在していること、についても確認できた。
【0072】
(サンプル21,22)
サンプル1~20と同様、セラミックス材として、厚さ0.32mmの窒化ケイ素からなる板材を、銅材として、厚さ2mmの無酸素銅からなる板材を用いた。ろう材としては、Cu粉末を含まず、Mg粉末、TiH2粉末を所定の比率で混合してペースト化したものを用いた。ペースト化に際しては、サンプル1~20と同様、溶媒として分子量400以下のポリエチレングリコールおよびジエチレングリコールモノブチルエーテルを用い、ペースト中における溶媒の比率は9mass%とした。ペースト中におけるCu:Mg:Tiの元素混合比は、表1のとおりとした。このペーストをセラミックス材の接合予定面上にスクリーン印刷を用いて塗布し、塗布したペースト膜の直上に銅材を配置し、積層方向に沿って8kPaの力で加圧し、1.0×10-2Pa以下の真空雰囲気下で、表1の条件下にて加熱処理を行って、サンプル21,22を作製した。
【0073】
そして、サンプル21,22について、上述の手法によりせん断強度試験を行った。表1に結果を示すように、せん断強度は0.5MPa以下、引張強度は0.9MPa以下であり、これらのサンプルでは、実用的な接合強度が得られていないこと(実質的には未接合であること)が確認できた。なお、これらのサンプルにおいては、断面組織観察用の加工に耐えられる接合強度を有していないことから、接合面に垂直な断面での接合層の観察は行うことができなかった。
【0074】
<本開示の好ましい態様>
以下、本開示の好ましい態様について付記する。
【0075】
本開示の一態様によれば、
CuまたはCu合金からなる銅材と、
前記銅材に接合され、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、
前記銅材と前記セラミックス材との接合面に形成され、Cuと、Mgと、を含み、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素をさらに含む接合層と、を有し、
前記接合層のせん断強度が10MPa以上(好ましくは50MPa以上)である
銅セラミックス接合体が提供される。
【0076】
好ましくは、
前記接合層の引張強度が17.3MPa以上(好ましくは86.6MPa以上)である。
【0077】
また好ましくは、
前記接合層が、
前記銅材との界面を構成し、CuにMgが固溶してなる固溶相を含む第1層と、
前記セラミックス材との界面を構成し、前記活性金属元素の窒化物を含む第2層と、を有し、
前記第1層が、CuとMgとの金属間化合物を含む化合物相をさらに含み、
前記接合面に垂直な断面で前記第1層を観察した際、前記第2層との界面に隣接する界面近傍領域において、前記固溶相の合計断面積SA、前記化合物相の合計断面積SBが、SA/(SA+SB)>0.6、好ましくは>0.7、より好ましくは>0.8の関係式を満たす。
【0078】
好ましくは、
前記第1層が、前記第2層と前記銅材とを繋ぐ前記固溶相からなるパスを有する。
【0079】
好ましくは、
前記接合面に垂直な断面で前記第1層を観察した際、10000μm2の任意の視野内において、円相当径が8μm以上の大きさであるボイドが観察されない。
【0080】
好ましくは、
前記接合面に垂直な断面で前記第1層を観察した際、10000μm2の任意の視野内において、円相当径が2μm超8μm未満の大きさであるボイドの数が、10個以下、好ましくは5個以下であり、また、円相当径が1μm以上2μm以下の大きさであるボイドの数が、20個以下、好ましくは10個以下である。
【0081】
好ましくは、
前記第2層が、組成式MgSiN2で表される窒化物結晶Xを含んでいる。
【0082】
好ましくは、
前記窒化物結晶Xが、前記第2層のうち、前記セラミックス材との界面近傍に偏在している。
【0083】
好ましくは、
前記第2層が、組成式Mg3N2で表される窒化物結晶Yを実質的に含まない。
【0084】
本開示の他の態様よれば、
CuまたはCu合金からなる銅材と、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、の接合に用いられ、
Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含む
ろう材が提供される。
【0085】
好ましくは、
Mgを、(Mg単体の態様で含まず、)Cuとの金属間化合物(MgCu2結晶)の態様で含む。
【0086】
好ましくは、
Cuを、Cu単体と、Mgとの金属間化合物と、の態様で含む。
【0087】
本開示のさらに他の態様によれば、
SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と接合される銅材であって、
CuまたはCu合金からなり、
前記セラミックス材との接合予定面に、Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含むろう材からなる層が形成されている
ろう材付銅材が提供される。
【0088】
本開示のさらに他の態様によれば、
CuまたはCu合金からなる銅材と接合されるセラミックス材であって、
SiまたはAlの窒化物からなり、
前記銅材との接合予定面に、Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含むろう材からなる層が形成されている
ろう材付セラミックス材が提供される。
【0089】
本開示のさらに他の態様よれば、
CuまたはCu合金からなる銅材と、SiまたはAlの窒化物からなるセラミックス材と、をろう材を介して積層させるように配置する工程と、
前記銅材と前記セラミックス材との積層体を、積層方向に加圧しながら、加熱して保持する工程と、を有し、
前記ろう材として、Cuを65~95at%、Mgを4.5~33at%、Ti,Zr,Hf,V,Nb,Ta,Cr,Mo,W,Ca,Y,Ce,La,Sm,Yb,Nd,Gd,Erからなる群より選択される少なくとも一種の活性金属元素を合計で0.1~7at%の割合で含む材料を用いる
銅セラミックス接合体の製造方法が提供される。
【符号の説明】
【0090】
100 銅セラミックス接合体
100’ 積層体
10 銅材
10s 接合面
20 セラミックス材
20s 接合面
30 接合層
31 第1層
31A 固溶相
31B 化合物相
32 第2層
33L ボイド(円相当径8μm以上)
33S ボイド(円相当径8μm未満)
50 ろう材
D 界面近傍領域
X 窒化物結晶