(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】MEMS素子
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20240130BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
H04R19/04
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2020099816
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】日清紡マイクロデバイス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】根本 竜平
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-135456(JP,A)
【文献】国際公開第2019/226958(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/097974(WO,A1)
【文献】特開2011-055087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/00-19/04
B81B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板上に、振動膜と、該振動膜の振動に応じた容量変化を検知する第1の電極と第2の電極とを配置したMEMS素子において、
前記支持基板上に固定された前記振動膜と、
第1の電極膜連結部材によって前記振動膜と連結された前記第1の電極を含む第1の電極膜と、
前記第1の電極に対向するように配置された前記第2の電極を含む第2の電極膜と、を備え、
前記第1の電極膜連結部材は、前記振動膜の上下動に応じて前記第1の電極膜を水平方向に移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とで検知する容量が変化するように前記振動膜と前記第1の電極膜とを連結していることを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
請求項1記載のMEMS素子において、
前記第2の電極膜は第2の電極膜連結部材によって前記振動膜に連結され、
該第2の電極膜連結部材は、前記振動膜の上下動に応じて前記第1の電極膜が水平方向に移動するとき、該振動膜の上下動に応じて前記第2の電極膜を前記第1の電極膜が移動する方向とは異なる水平方向に移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とで検知する容量が変化するように前記振動膜と前記第2の電極膜とを連結していることを特徴とするMEMS素子。
【請求項3】
請求項1記載のMEMS素子において、
バックチャンバーを備えた前記支持基板上に、前記振動膜と前記第2の電極膜からなる固定電極膜とをスペーサーを介して対向するように配置し、
前記振動膜と前記固定電極膜との間のエアギャップ内に、第1の連結部材と第2の連結部材とからなる前記第1の電極膜連結部材に連結した前記第1の電極膜となる第1の可動電極膜を配置し、
前記第1の連結部材は、前記振動膜と前記第1の可動電極膜とを連結し、
前記第2の連結部材は、前記第1の可動電極膜と、前記固定電極膜あるいは前記スペーサーの少なくともいずれかと、を連結していることを特徴とするMEMS素子。
【請求項4】
請求項2記載のMEMS素子において、
バックチャンバーを備えた前記支持基板上に、前記振動膜と支持膜とをスペーサーを介して対向するように配置し、
前記振動膜と前記支持膜との間のエアギャップ内に、第3の連結部材と第4の連結部材とからなる前記第1の電極膜連結部材に連結した前記第1の電極膜となる第1の可動電極膜と、第5の連結部材と第6の連結部材とからなる前記第2の電極膜連結部材に連結した前記第2の電極膜となる第2の可動電極膜とを対向するように配置し、
前記第3の連結部材は、前記振動膜と前記第1の可動電極膜とを連結し、
前記第4の連結部材は、前記第1の可動電極膜と、前記支持膜あるいは前記スペーサーの少なくともいずれかと、を連結し、
前記第5の連結部材は、前記振動膜と前記第2の可動電極膜とを連結し、
前記第6の連結部材は、前記第2の可動電極膜と、前記支持膜あるいは前記スペーサーの少なくともいずれかと、を連結していることを特徴とするMEMS素子。
【請求項5】
請求項1または2いずれか記載のMEMS素子において、
前記第1の電極膜は、前記水平方向に移動するとともに、垂直方向に移動することを特徴とするMEMS素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS素子に関し、特にマイクロフォン、各種センサ、スイッチ等として用いられる容量型のMEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に需要が拡大しているスマートフォンには、小型、薄型で、組立のハンダリフロー工程の高温処理耐性を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いたマイクロフォンが多く使われている。さらにMEMSマイクロフォンに限らず、その他のMEMS素子が様々な分野で急速に普及してきている。
【0003】
例えば容量型のMEMS素子であるコンデンサマイクロフォンでは、音圧を通過させる複数の貫通孔を備えた固定電極膜と、音圧を受けて振動する可動電極膜とを対向配置させ、可動電極膜の変位を容量変化として検出する構成となっている。この種のMEMS素子は、例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
一般的なこの種のMEMS素子の断面図を
図10に示す。
図10に示すように、支持基板1上に絶縁膜2を介して可動電極膜3が固定、配置され、可動電極膜3上にスペーサー4を介して固定電極膜5が固定、配置されている。可動電極膜3が音圧等を受けて矢印方向あるいは逆方向に振動すると、固定電極膜5の固定電極と可動電極膜3の可動電極との間で形成されるキャパシタの容量値が変化する。この容量変化を図示しない電極から取り出すことで、可動電極膜3が受ける音圧等に応じた出力信号を得ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところでこの種のMEMS素子では、
図10に示すように音圧等を受ける可動電極膜3は、周囲全体をスペーサー4と支持基板1上の絶縁膜2によって挟持され固定されているため、中央部の変位量は大きいものの、固定部に近づくほど変位量が小さくなってしまう。
【0007】
可動電極膜3がこのように湾曲して変形すると、可動電極も同様に変形して固定電極に対向するため、平行平板の電極とならず出力信号が小さくなってしまうという問題があった。本発明はこのような問題点を解消し、大きな出力信号を得ることができるMEMS素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、支持基板上に、振動膜と、該振動膜の振動に応じた容量変化を検知する第1の電極と第2の電極とを配置したMEMS素子において、前記支持基板上に固定された前記振動膜と、第1の電極膜連結部材によって前記振動膜と連結された前記第1の電極を含む第1の電極膜と、前記第1の電極に対向するように配置された前記第2の電極を含む第2の電極膜と、を備え、前記第1の電極膜連結部材は、前記振動膜の上下動に応じて前記第1の電極膜を水平方向に移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とで検知する容量が変化するように前記振動膜と前記第1の電極膜とを連結していることを特徴とする。
【0009】
本願請求項2に係る発明は、請求項1記載のMEMS素子において、前記第2の電極膜は第2の電極膜連結部材によって前記振動膜に連結され、該第2の電極膜連結部材は、前記振動膜の上下動に応じて前記第1の電極膜が水平方向に移動するとき、該振動膜の上下動に応じて前記第2の電極膜を前記第1の電極膜が移動する方向とは異なる水平方向に移動させ、前記第1の電極と前記第2の電極とで検知する容量が変化するように前記振動膜と前記第2の電極膜とを連結していることを特徴とする。
【0010】
本願請求項3に係る発明は、請求項1記載のMEMS素子において、バックチャンバーを備えた前記支持基板上に、前記振動膜と前記第2の電極膜からなる固定電極膜とをスペーサーを介して対向するように配置し、前記振動膜と前記固定電極膜との間のエアギャップ内に、第1の連結部材と第2の連結部材とからなる前記第1の電極膜連結部材に連結した前記第1の電極膜となる第1の可動電極膜を配置し、前記第1の連結部材は、前記振動膜と前記第1の可動電極膜とを連結し、前記第2の連結部材は、前記第1の可動電極膜と、前記固定電極膜あるいは前記スペーサーの少なくともいずれかと、を連結していることを特徴とする。
【0011】
本願請求項4に係る発明は、請求項2記載のMEMS素子において、バックチャンバーを備えた前記支持基板上に、前記振動膜と支持膜とをスペーサーを介して対向するように配置し、前記振動膜と前記支持膜との間のエアギャップ内に、第3の連結部材と第4の連結部材とからなる前記第1の電極膜連結部材に連結した前記第1の電極膜となる第1の可動電極膜と、第5の連結部材と第6の連結部材とからなる前記第2の電極膜連結部材に連結した前記第2の電極膜となる第2の可動電極膜とを対向するように配置し、前記第3の連結部材は、前記振動膜と前記第1の可動電極膜とを連結し、前記第4の連結部材は、前記第1の可動電極膜と、前記支持膜あるいは前記スペーサーの少なくともいずれかと、を連結し、前記第5の連結部材は、前記振動膜と前記第2の可動電極膜とを連結し、前記第6の連結部材は、前記第2の可動電極膜と、前記支持膜あるいは前記スペーサーの少なくともいずれかと、を連結していることを特徴とする。
【0012】
本願請求項5に係る発明は、請求項1または2いずれか記載のMEMS素子において、前記第1の電極膜は、前記水平方向に移動するとともに、垂直方向に移動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のMEMS素子は、振動膜が湾曲して変位しても、第1の電極膜と第2の電極膜が平板状態のまま移動するため、大きな出力信号を得ることができる。特に、振動膜の変位の大きい部分と可動電極膜となる電極膜を電極膜連結部材で連結することで、振動膜の大きな変位を電極膜の大きな移動に変換することができ、特性の優れたMEMS素子を提供することができる。
【0014】
また本発明のMEMS素子は、第1の電極膜を振動膜に連結するだけでなく第2の電極膜も振動膜に連結し、第1の電極膜が移動する方向と第2の電極膜が移動する方向とを変える構成とすることで、第1の電極膜と第2の電極膜との相対位置が大きく変化し、特性の優れたMEMS素子を得ることが可能となる。
【0015】
さらに本発明のMEMS素子は、第1の電極膜が水平方向に移動するとともに、第2の電極膜に近づくように垂直方向にも移動させることで、第1の電極と第2の電極とが重なる面積が増すとともに、第1の電極と第2の電極が近づくことで大きな容量変化となり、特性の優れたMEMS素子を得ることができる。
【0016】
本発明のMEMS素子は、第1の電極あるいは第2の電極の形状を変更することで、振動膜の上下動に応じて第1の電極と第2の電極とが重なる面積を線形に変化させ、あるいは非線形に変化させることができる。またその変化量も適宜変更することができ、使用形態に応じた出力信号を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1の実施例のMEMS素子の説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施例のMEMS素子の可動電極の移動を説明する図である。
【
図3】本発明の第2の実施例のMEMS素子の説明図である。
【
図4】本発明の第2の実施例のMEMS素子の第1の可動電極の移動を説明する図である。
【
図5】本発明の第2の実施例の別のMEMS素子の説明図である。
【
図6】本発明の第3の実施例のMEMS素子の説明図である。
【
図7】本発明の第4の実施例のMEMS素子の説明図である。
【
図8】本発明の第5の実施例のMEMS素子の説明図である。
【
図9】本発明の第5の実施例のMEMS素子の可動電極の移動を説明する図である。
【
図10】一般的なMEMS素子を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のMEMS素子は、振動膜と電極膜とを電極膜連結部材により連結し、振動膜の上下動に応じて電極膜を水平方向に移動させ、電極膜上に配置した電極によって形成されるキャパシタの容量変化を検知する構成としている。以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
本発明の第1の実施例について説明する。本実施例のMEMS素子は、容量変化を検知するために配置される2枚の電極膜の一方の電極膜を、振動膜の振動に応じて水平方向に移動させる構成のMEMS素子となる。
図1は、第1の実施例のMEMS素子の断面図である。
図1に示すようにシリコン基板からなる支持基板1上に、熱酸化膜からなる絶縁膜2とUSG膜からなる第1のスペーサー4aに挟持された振動膜6が配置されている。さらに第1のスペーサー4aとUSG膜からなる第2のスペーサー4bに挟持された可動電極膜3(第1の電極膜に相当)が配置され、第2のスペーサー4b上に固定電極膜5(第2の電極膜に相当)が配置されている。可動電極膜3上には可動電極3a(第1の電極に相当)が、固定電極膜5上には固定電極5a(第2の電極に相当)がそれぞれ対向するように配置されている。
【0020】
さらに振動膜6と固定電極膜5との間の空間(エアギャップ)内に配置された可動電極膜3は、連結部材7a(第1の電極膜連結部材であって第1の連結部材に相当)によって振動膜6に連結されている。この連結は、連結部材7aの一端を振動膜6の振動の振幅が大きい領域(中央近傍)に連結し、連結部材7aの他端を可動電極膜3に、連結部材7aが所定の方向(
図1では左方向)に傾くように連結する構造となっている。
【0021】
図2は、可動電極膜3の平面図である。可動電極3aを備えた可動電極膜3は、第1のスペーサー4aと第2のスペーサー4bに挟持される周辺部と、弾性のある連結部材7b1(第1の電極膜連結部材であって第2の連結部材に相当)によっても連結されている。
図2において5a1は
図1に示す固定電極5aが対向配置する位置を示しており、7a1は連結部材7aとの接合位置を示している。このような構造の可動電極膜3は、外圧が加わると弾性のある連結部材7b1が変形して水平方向への移動が可能となっている。
【0022】
また可動電極膜3は、
図1に示すように固定電極膜5との対向面で連結部材7b2(第1の電極膜連結部材であって第2の連結部材に相当)によって固定電極膜5と連結されている。
【0023】
上記のような構造の本実施例のMEMS素子は、
図1に示すようにキャビティ8側から音圧等が加わると、振動膜6が振動する。この振動膜6に加わる圧力は、連結部材7aを介して可動電極膜3に伝えられる。ここで可動電極膜3には、連結部材7aと同等で対称の連結部材7b2を配置している。連結部材7aと対称となる接合位置、長さ、材質等を選定した連結部材7b2を配置することで、可動電極膜3を固定電極膜5側へ変位させる圧力に連結部材7b2が対抗し、可動電極膜3を弾性のある連結部材7b1側に変位させることになる。当然ながら、このとき固定電極膜5は変位しない。
【0024】
具体的には、振動膜6にキャビティ8側から矢印方向の圧力が加わり振動膜6が振動すると、振動膜6がエアギャップ側に上がる変位(矢印と同じ方向への変位)が生じ、連結部材7a、連結部材7b2および連結部材7b1で支持された可動電極膜3は、図面左方向へ水平移動する。その結果、可動電極3aと固定電極5aとが重なる面積が増加し、容量値が増加するように変化する。また振動膜6の振動によりキャビティ8側に下がる変位(矢印と逆の方向への変位)が生じると、可動電極膜3は、図面右方向へ水平移動する。その結果、可動電極3aと固定電極5aとが重なる面積が減少し、容量値が減少するように変化する。
【0025】
このように振動膜6の振動による上下動は、可動電極膜3を水平方向へ移動させ、可動電極3aと固定電極5aの重なる面積が変化し、容量変化として検知することが可能となる。なお、連結部材7b1と連結部材7b2は必ずしも両方を備える必要はなく、可動電極膜3を固定電極膜5に平行に対向するように支持することができれば、いずれか一方でもよい。また連結部材7a、連結部材7b2は、複数設けることも可能である。連結部材7b1の配置や形状、可動電極膜との連結位置等も適宜変更可能である。
【0026】
連結部材7aと連結部材7b2は、剛性があり、振動膜6の上下動を可動電極膜3の水平方向の動きとして伝えることができる材料から適宜選択して使用することができる。また単一の材料により構成されることに限定されず、多層構造のような集合体で構成してもよい。
【0027】
連結部材7aと連結部材7b2の傾斜した連結構造は、例えば、第1のスペーサー4aおよび第2のスペーサー4bを形成する工程において次のように形成することができる。まず、第1のスペーサー4aとなる犠牲層を形成する際、傾斜面を有する犠牲層を形成して、傾斜面上に連結部材7aをパターニングする。別の犠牲層を形成して傾斜面を覆い、連結部材7aの一部を露出して平坦化した第1のスペーサー4aとなる犠牲層を形成する。その後、露出する連結部材7aに連結するように可動電極膜3および可動電極3aを形成する。同様に第2のスペーサー4bとなる犠牲層を形成する際、傾斜面を有する犠牲層を形成して、傾斜面上に連結部材7b2をパターニングする。別の犠牲層を形成して傾斜面を覆い、連結部材7b2の一部を露出して平坦化した第2のスペーサー4bとなる犠牲層を形成する。その後、露出する連結部材7b2に連結する固定電極5aおよび固定電極膜5を形成する。第1のスペーサー4aおよび第2のスペーサー4bを形成するため、犠牲層を除去することで、傾斜した連結部材7a、連結部材7b2を形成することができる。
【0028】
なお、連結部材7aと連結部材7b2とが均等に変形しない場合、あるいは連結部材7b2を備えない場合であって、連結部材7b1が可動電極膜3の上下動を完全に抑えることができない場合もある。その場合、容量値が増加する水平方向の移動とともに可動電極3aと固定電極5aが近づくように変位し、容量値が減少する水平方向の移動とともに可動電極3aと固定電極5aが離れるように変位するように構成すると、より大きな容量変化を得ることができ好ましい。
【実施例2】
【0029】
次に第2の実施例について説明する。本実施例のMEMS素子は、容量変化を検知するために配置される2枚の電極膜を、振動膜の振動に応じてそれぞれ水平方向に移動させる構成のMEMS素子となる。
図3は、第2の実施例のMEMS素子の断面図である。
図3に示すようにシリコン基板からなる支持基板1上に、熱酸化膜からなる絶縁膜2とUSG膜からなる第1のスペーサー4aに挟持された振動膜6が配置されている。さらに第1のスペーサー4aとUSG膜からなる第2のスペーサー4bに挟持された第1の可動電極膜31(第1の電極膜に相当)が配置され、第2のスペーサー4b上に第2の可動電極膜32((第2の電極膜に相当)が配置されている。第1の可動電極膜31上には第1の可動電極31a(第1の電極に相当)が、第2の可動電極膜32上には第2の可動電極32a(第2の電極に相当)がそれぞれ対向するように配置されている。
【0030】
さらに振動膜6と第1の可動電極膜31は、連結部材7c(第1の電極膜連結部材であって第3の連結部材に相当)によって連結されている。この連結は、連結部材7cの一端を振動膜6に連結し、連結部材7cの他端を第1の可動電極膜31に、連結部材7cが所定の方向(
図3では左方向)に傾くように連結する構造となっている。
【0031】
さらにまた振動膜6と第2の可動電極膜32は、連結部材7e(第2の電極膜連結部材であって第5の連結部材に相当)によって連結されている。この連結も、連結部材7eの一端を振動膜6に連結し、連結部材7eの他端を第2の可動電極膜32に、連結部材7eが所定の方向(
図3では右方向)に傾くように連結する構造となっている。
【0032】
図4は、第1の可動電極膜31の平面図である。第1の可動電極31aを備えた第1の可動電極膜31は、第1のスペーサー4aと第2のスペーサー4bに挟持される周辺部と、弾性のある連結部材7d(第1の電極膜連結部材であって第4の連結部材に相当)によっても連結されている。
図4において32a1は
図3に示す第2の可動電極32aが対向配置する位置を示している。また、7c1は連結部材7cとの接合位置を示し、9は連結部材7eが貫通する貫通孔を示している。このような構造の第1の可動電極膜31は、外圧が加わると弾性のある連結部材7dが変形して変位可能となっている。
【0033】
第2の可動電極膜32も、第1の可動電極膜31同様、第2のスペーサー4bと接合する周辺部と、弾性のある連結部材7f(第2の電極膜連結部材であって第6の連結部材に相当)によって連結されている。
【0034】
上記のような構造の本実施例のMEMS素子は、
図3に示すようにキャビティ8側から音圧等が加わると、振動膜6が振動する。この振動膜6に加わる圧力は、連結部材7cを介して第1の可動電極膜31に伝えられる。同時に、振動膜6に加わる圧力は、連結部材7eを介して第2の可動電極膜32にも伝えられる。ここで、第1の可動電極膜31が第2の可動電極膜32側へ変位するより連結部材7d側に変位するように連結部材7dを形成することで、第1の可動電極膜31は水平方向に変位することになる。同様に第2の可動電極膜32が表面側へ変位するより結部材7f側に変位するように連結部材7fを形成することで、第2の可動電極膜32は水平方向に変位することになる。
【0035】
具体的には、振動膜6にキャビティ8側から矢印方向の圧力が加わり振動膜6が振動すると、振動膜6がエアギャップ側に上がる変位(矢印と同じ方向への変位)が生じ、連結部材7cと連結部材7dで支持された第1の可動電極膜31は、図面左方向へ水平移動する。同時に、連結部材7eと連結部材7fで支持された第2の可動電極膜32は、図面右方向へ水平移動する。その結果、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aとが重なる面積が増加し、容量値が増加するように変化する。また振動膜6の振動によりキャビティ8側に下がる変位(矢印と逆方向への変位)が生じると、第1の可動電極膜31は図面右方向へ水平移動し、同時に第2の可動電極膜32は図面左方向へ水平移動する。その結果、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aとが重なる面積が減少し、容量値が減少するように変化する。本実施例では、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aが、相互に反対方向に移動するため、相対的な移動寸法が大きくなり、容量変化が大きくなる。
【0036】
このように振動膜6の振動による上下動は、第1の可動電極膜31と第2の可動電極膜32をそれぞれ反対の水平方向へ移動させ、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aの重なる面積が変化し、容量変化として検知することが可能となる。なお、連結部材7c、連結部材7eの数、配置や形状、第1の可動電極膜31あるいは第2の可動電極膜32との接続位置や配置、材質等は適宜変更可能である。連結部材7d、7fの配置や形状、第1、第2の可動電極膜31、32とのそれぞれの連結位置等も適宜設定可能である。
【0037】
連結部材7cの傾斜した連結構造は、上記第1の実施例で説明した連結部材7aを形成する方法により形成することができる。一方連結部材7eは、第1の可動電極膜31の貫通孔9を貫通する構造となっている。そこで、連結部材7cを形成する際、同時に連結部材7eの一部を形成して第1の可動電極膜31を形成する。その後、第1の可動電極膜31の一部を除去して貫通孔9を形成し、貫通孔9内に連結部材7eの一部を露出させる。この連結部材7eに連続するように、上記第1の実施例で説明した連結部材7b2を形成する方法により、連結部材7eの他の部分を形成する。あるいは、
図5に示すMEMS素子のように、貫通孔9を形成する代わりに、接合部材7eと接合する第1の可動電極膜の一部を貫通孔形成予定領域内に残し、この第1の可動電極膜31から独立して残された第1の可動電極膜の一部に接合するように接合部材7eを形成することで、第1の可動電極膜の一部を中継部材10として用いることもできる。
【0038】
なお、連結部材7dが第1の可動電極膜31の上下動を完全に抑えることができない場合や、連結部材7fが第2の可動電極膜32の上下動を完全に抑えられない場合もある。その場合、容量値が増加する水平方向の移動とともに第1の可動電極31aと第2の可動電極32aが近づくように変位し、容量値が減少する水平方向の移動とともに第1の可動電極31aと第2の可動電極32aが離れるように変位するように構成すると、より大きな容量変化を得ることができ好ましい。
【実施例3】
【0039】
次に第3の実施例について説明する。本実施例のMEMS素子は、上記第2の実施例同様、容量変化を検知するために配置される2枚の電極膜を、振動膜の振動に応じてそれぞれ水平方向に移動させる構成のMEMS素子となる。
図6は、第3の実施例のMEMS素子の断面図である。
図6に示すようにシリコン基板からなる支持基板1上に、熱酸化膜からなる絶縁膜2とUSG膜からなる第1のスペーサー4aに挟持された振動膜6が配置されている。さらに第1のスペーサー4aとUSG膜からなる第2のスペーサー4bに挟持された第1の可動電極膜31(第1の電極膜に相当)が配置され、第2のスペーサー4bとUSG膜からなる第3のスペーサー4cに挟持された第2の可動電極膜32(第2の電極膜に相当)が配置され、第3のスペーサー4c上に支持膜11が配置されている。第1の可動電極膜31上には第1の可動電極31a(第1の電極に相当)が、第2の可動電極膜32上には第2の可動電極32a(第2の電極に相当)がそれぞれ対向するように配置されている。
【0040】
さらに振動膜6と第1の可動電極膜31は、連結部材7c(第1の電極膜連結部材であって第3の連結部材に相当)によって連結されている。この連結は、連結部材7cの一端を振動膜6に連結し、連結部材7cの他端を第1の可動電極膜31に、連結部材7cが所定の方向(
図6では左方向)に傾くように連結する構造となっている。
【0041】
また第1の可動電極膜31は、第2の可動電極膜32との対向面で連結部材7d2(第1の連結部材であって第4の連結部材に相当)によって支持膜11に連結している。この連結は、連結部材7d2の一端を第1の可動電極膜31に連結し、連結部材7d2の他端を支持膜11に、連結部材7d2が所定の方向(
図6では右方向)に傾くように連結する構造となっている。なお連結部材7d2は、第2の可動電極膜32に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。
【0042】
さらにまた振動板6と第2の可動電極膜32は、連結部材7e(第2の電極膜連結部材であって第5の連結部材に相当)によって連結されている。この連結は、連結部材7eの一端を振動膜6に連結し、連結部材7eの他端を第2の可動電極膜32に、連結部材7eが所定の方向(
図6では右方向)に傾くように連結する構造となっている。なお連結部材7eは、第1の可動電極膜31に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。
【0043】
また第2の可動電極膜32は、支持膜11との対向面で連結部材7f2(第2の電極膜連結部材であって第6の連結部材に相当)によって支持膜11に連結している。この連結は、連結部材7f2の一端を第2の可動電極膜32に連結し、連結部材7f2の他端を支持膜11に、連結部材7f2が所定の方向(
図6では左方向)に傾くように連結する構造となっている。
【0044】
本実施例においても、第1の可動電極31aを備えた第1の可動電極膜31は、第1のスペーサー4aと第2のスペーサー4bに挟持される周辺部と、弾性のある連結部材7d1によっても連結されている。このような構造の第1の可動電極膜31は、外圧が加わると弾性のある連結部材7d1が変形して変位可能となっている。また第2の電極32aを備えた第2の可動電極膜32は、第2のスペーサー4bと第3のスペーサー4cに挟持される周辺部と、弾性のある連結部材7f1によって連結されている。このような構造の第2の可動電極膜32も、外圧が加わると弾性のある連結部材7f1が変形して変位可能となっている。
【0045】
上記のような構造の本実施例のMEMS素子も、上記第2の実施例で説明したMEMS素子同様、
図6に示すようにキャビティ8側から音圧等が加わると、振動膜6が振動する。この振動膜6に加わる圧力は、連結部材7cを介して第1の可動電極膜31に伝えられる。ここで第1の可動電極膜31には、連結部材7d2が連結しており、この連結部材7d2の接合位置、長さ、材質等を適宜選定することで、第1の可動電極膜31を支持膜11側へ変位させる圧力に連結部材7d2が対抗し、第1の可動電極膜31は弾性のある連結部材7d1側に変位することになる。同時に、振動膜6に加わる圧力は、連結部材7eを介して第2の可動電極膜32にも伝えられる。ここで第2の可動電極膜32には、連結部材7f2が連結しており、この連結部材7f2の接合位置、長さ、材質等を適宜選定することで、第2の可動電極膜32を支持膜11側へ変位させる圧力に連結部材7f2が対抗し、第2の可動電極膜32は弾性のある連結部材7f1側に変位することになる。
【0046】
具体的には、振動膜6にキャビティ8側から矢印方向の圧力が加わり振動膜6が振動すると、振動膜6が振動膜6と支持膜11との間のエアギャップ側に上がる変位(矢印と同じ方向への変位)が生じ、連結部材7cと連結部材7d2で支持された第1の可動電極膜31は、図面左方向へ水平移動する。同時に連結部材7eと連結部材7f2で支持された第2の可動電極膜32は、図面右方向へ水平移動する。第1の可動電極31aと第2の可動電極32aの配置を
図4に示す配置と同じとすると、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aとが重なる面積が増加し、容量値が増加するように変化する。また振動膜6の振動によりキャビティ8側に下がる変位(矢印と逆方向への変位)が生じると、第1の可動電極膜31は図面右方向へ水平移動し、同時に第2の可動電極膜32は図面左方向へ水平移動する。その結果、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aとが重なる面積が減少し、容量値が減少するように変化する。本実施例でも第2の実施例同様、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aが、相互に反対方向に移動するため、相対的な移動寸法が大きくなり、容量変化が大きくなる。
【0047】
このように振動膜6の振動による上下動は、第1の可動電極膜31と第2の可動電極膜32をそれぞれ反対の水平方向へ移動させ、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aの重なる面積が変化し、容量変化として検知することが可能となる。なお連結部材7c、連結部材7d2、連結部材7e、連結部材7f2の数、配置や形状、第1の可動電極膜31あるいは第2の可動電極膜32との接続位置や配置、材質等は適宜変更可能である。連結部材7d1、7f1の配置や形状、第1、第2の可動電極膜31、32とのそれぞれの接続位置等も適宜設定可能である。
【0048】
連結部材7cの傾斜した形状、連結部材7eの傾斜した形状は、上記第3の実施例で説明したように形成することができる。連結部材7d2の傾斜した形状は、連結部材7eの一部を形成する際、同時に連結部材7d2の一部を形成し、その後第2の可動電極膜32の一部を除去して貫通孔を形成し、連結部材7d2の一部を露出させる。この連結部材7d2の一部に連続するように、第3のスペーサー4cとなる犠牲層を形成する際、傾斜面を有する犠牲層を形成して、傾斜面状に連結部材7d2の他の部分を形成する。同様に連結部材7f2も形成する。別の犠牲層を形成して傾斜面を覆い、連結部材7d2、連結部材7f2の一部を露出して平坦化した第3のスペーサー4cとなる犠牲層を形成する。その後、露出する連結部材7d2、連結部材7f2に連結する支持膜11を形成する。第1乃至第3のスペーサー4a~4cを形成するため犠牲層を除去することで、連結部材7c、連結部材7d2、連結部材7e、連結部材7f2を形成することができる。第1の可動電極膜31、第2の可動電極膜32に貫通孔を形成する代わりに、中継部材を形成することも可能である。
【0049】
なお、連結部材7cと連結部材7d2、連結部材7eと連結部材7fの変形の仕方によっては、第1の可動電極膜31と第2の可動電極膜32の上下動を完全に抑えることができない場合もある。その場合、容量値が増加する水平方向の移動とともに第1の可動電極31と第2の可動電極32が近づくように変位し、容量値が減少する水平方向の移動とともに可動電極3aと固定電極5aが離れるように変位するように構成すると、より大きな容量変化を得ることができ好ましい。
【実施例4】
【0050】
次に第4の実施例について説明する。本発明のMEMS素子は、上記第2の実施例、第3の実施例同様、容量変化を検知するために配置される2枚の電極膜を、振動膜の振動に応じてそれぞれ水平方向に移動させる構成のMEMS素子となる。また、上記第3の実施例と比較して、第1の可動電極膜31と連結部材7cおよび連結部材7d2との接続、第2の可動電極膜32と連結部材7eおよび連結部材7f2との接続を、中継部材10aを介して行っている点で相違している。以下、実施例3との相違点について詳細に説明する。
【0051】
図7に示すように、振動膜6と第1の可動電極膜31は、連結部材7c(第1の電極膜連結部材であって第3の連結部材に相当)によって連結されている。この連結は、連結部材7cの一端は振動膜6に直接連結し、連結部材7cの他端は中継部材10aを介して第1の可動電極膜31に、連結部材7cが所定の方向(
図7では左方向)に傾くように連結する構造となっている。なお連結部材7cは、第1の可動電極膜32に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。
【0052】
また第1の可動電極膜31は、連結部材7d2(第1の連結部材であって第4の連結部材に相当)によって支持膜11に連結している。この連結は、連結部材7d2の一端を第1の可動電極膜31に連結した中継部材10aに連結し、連結部材7d2の他端を支持膜11に、連結部材7d2が所定の方向(
図7では右方向)に傾くように連結する構造となっている。なお、連結部材7d2は、第2の可動電極膜32に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。
【0053】
さらにまた振動膜6と第2の可動電極膜32は、連結部材7e(第2の電極膜連結部であって第5の連結部材に相当)によって連結されている。この連結も、連結部材7eの一端を振動膜6に連結し、連結部材7eの他端を第2の可動電極膜32に連結した中継部材10aに連結し、連結部材7eが所定の方向(
図7では右方向)に傾くように連結している。なお連結部材7eは、第1の可動電極膜31に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。
【0054】
また第2の可動電極膜32は、連結部材7f2(第2の連結部材であって第6の連結部材に相当)によって支持膜11に連結している。この連結は、連結部材7f2の一端を第2の可動電極膜32に連結した中継部材10aに連結し、連結部材7f2の他端を支持膜11に、連結部材7f2が所定の方向(
図7では左方向)に傾くように連結している。なお、連結部材7f2は、第2の可動電極膜32に形成された貫通孔を貫通するように配置されている。
【0055】
上記のような構造の本実施例のMEMS素子も、上記第3の実施例で説明したMEMS素子同様、
図7に示すようにキャビティ8側から音圧等が加わると、振動膜6が振動する。この振動膜6に加わる圧力は、連結部材7cを介して第1の可動電極膜31に伝えられる。ここで、第1の可動電極膜31には中継部材10aを介して連結部材7d2が連結しており、連結部材7cと連結部材7d2を対称の形状とすることができ、第1の可動電極膜31を支持膜11側へ変位させる圧力に連結部材7d2が対抗し、第1の可動電極膜31を弾性のある連結部材7d1側に変位させることになる。同時に、振動膜6に加わる圧力は、連結部材7eを介して第2の可動電極膜32にも伝えられる。ここで第2の可動電極膜32には中継部材10aを介して連結部材7f2が連結しており、連結部材7eと連結部材7f2を対称の形状とすることができ、第2の可動電極膜32を支持膜11側へ変位させる圧力に連結部材7f2が対抗し、第2の可動電極膜32を弾性のある連結部材7f1側に変位させることになる。
【0056】
具体的には、振動膜6にキャビティ8側から矢印方向の圧力が加わり振動膜6が振動すると、振動膜6が振動膜6と支持膜11との間のエアギャップ側に上がる変位(矢印と同じ方向への変位)が生じ、連結部材7cと連結部材7d2で支持された第1の可動電極膜31は、図面左方向へ水平移動する。同時に連結部材7eと連結部材7f2で支持された第2の可動電極膜32は、図面右方向へ水平移動する。第1の可動電極31aと第2の可動電極32aの配置を
図4に示す配置と同じとすると、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aとが重なる面積が増加し、容量値が増加するように変化する。また振動膜6の振動によりキャビティ8側に下がる変位(矢印と逆方向への変位)が生じると、第1の可動電極膜31は図面右方向へ水平移動し、同時に第2の可動電極膜32は図面左方向へ水平移動する。その結果、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aとが重なる面積が減少し、容量値が減少するように変化する。本実施例でも第2、第3の実施例同様、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aが、相互に反対方向に移動するため、相対的な移動寸法が大きくなり、容量変化が大きくなる。
【0057】
このように振動膜6の振動による上下動は、第1の可動電極膜31と第2の可動電極膜32をそれぞれ反対の水平方向へ移動させ、第1の可動電極31aと第2の可動電極32aの重なる面積が変化し、容量変化して検知することが可能となる。なお、連結部材7c、連結部材7d2、連結部材7e、連結部材7f2、中継部材10aの数、配置や形状、第1の可動電極膜31あるいは第2の可動電極膜32との接続位置や配置、材質等は適宜変更可能である。特に本実施例の連結部材は、中継部材10aを挟んで対称の形状とすることができ、第1の可動電極膜31と第2の可動電極膜32を水平方向に変位しやすくすることができる。連結部材7d1、7f1の配置や形状、第1、第2の可動電極膜31、32とのそれぞれの接続位置等も適宜設定可能である。
【0058】
中継部材10aは、第2のスペーサー4bとなる犠牲層を形成する工程において、中継部材10aを形成する工程を付加して所望の形状に形成することができる。
【実施例5】
【0059】
次に第5の実施例について説明する。上記実施例では、対向する矩形の電極が相互にスライドするように水平方向に移動する場合について説明したが、連結部材の配置によっては電極が相互に回転するように水平移動するように構成することができる。
【0060】
例えば、
図1で説明したMEMS素子において、電極が回転するように水平移動する第5の実施例について説明する。
図8は、第5の実施例のMEMS素子の断面図である。
図8に示すようにシリコン基板からなる支持基板1上に、熱酸化膜からなる絶縁膜2とUSG膜からなる第1のスペーサー4aに挟持された振動膜6が配置されている。さらに第1のスペーサー4aとUSG膜からなる第2のスペーサー4bに挟持された可動電極膜3(第1の電極膜に相当)が配置され、第2のスペーサー4b上に固定電極膜5(第2の電極膜に相当)が配置されている。可動電極膜3上には可動電極3a(第1の電極に相当)が、固定電極膜5上には可動電極5a(第2の電極に相当)がそれぞれ対向するように配置されている。
【0061】
さらに振動膜6と固定電極膜5との間の空間(エアギャップ)内に配置された可動電極膜3は、連結部材7a(第1の電極膜連結部材であって第1の連結部材に相当)によって振動膜6に連結されている。この連結は、連結部材7aの一端を振動膜6に連結し、連結部材7aの他端を可動電極膜3に、連結部材7aが所定の方向に傾くように連結する。
図8に示す例では、1対の連結部材7aを配置しており、各連結部材7aは、逆方向に傾くように連結する構造となっている。
【0062】
図9は、可動電極膜3の平面図である。扇型の可動電極3aを備えた可動電極膜3は、第1のスペーサー4aと第2のスペーサー4bに挟持される周辺部と、弾性のある連結部材7b1(第1の電極膜連結部材であって第2の連結部材に相当)によって連結されている。
図9において5a1は
図8に示す固定電極5aが対向配置する位置を示しており、固定電極5aも扇型としている。7a1は、連結部材7aとの接合位置を示しており、円形の可動電極膜3の中心に対して点対称に配置されている。このような構造の可動電極膜3は、外圧が加わると弾性のある連結部材7b1が変形して回転移動(水平方向への移動)が可能となっている。
【0063】
また可動電極膜3は、
図8に示すように固定電極膜5との対向面で連結部材7b2(第1の電極膜連結部材であって第2の連結部材に相当)によって固定電極膜5と連結される。この連結部材7b2は、それぞれ、連結部材7aと同等で対称の形状となるように、位置、長さ、材質等を選定して配置される。
【0064】
上記のような構造の本実施例のMEMS素子は、
図8示すようにキャビティ8側から音圧等が加わると、振動膜6が振動する。この振動膜6に加わる圧力は、連結部材7aを介して可動電極膜3に伝えられる。ここで可動電極膜3には、連結部材7aと対称に連結部材7b2を配置し、さらに連結部材7aと連結部材7b2の組を可動電極膜3の中心に対して点対称の位置に配置することで、可動電極膜3を固定電極膜5側へ変位させる圧力に連結部材7b2が対抗し、可動電極膜3を回転移動させることになる。
【0065】
具体的には、振動膜6にキャビティ8側から矢印方向の圧力が加わり振動膜6が振動すると、振動膜6がエアギャップ側に上がる変位(矢印と同じ方向への変位)が生じ、連結部材7a、連結部材7b2および連結部材7b1で支持された可動電極膜3は、水平移動する。このとき連結部材7aと対称に配置された連結部材7b2との組で支持された可動電極膜3には、
図9に示す接続位置7a1にそれぞれ180度異なる矢印方向に変位する圧力が加わり、回転するように水平移動する。その結果、可動電極3aと固定電極5aとが重なる面積が増加し、容量値が増加するように変化する。また振動膜6の振動によりキャビティ8側に下がる変位(矢印と逆の方向への変位)が生じると、可動電極膜3は、
図9に示す矢印と逆方向に回転するように水平移動する。その結果、可動電極3aと固定電極5aとが重なる面積が減少し、容量値が減少するように変化する。
【0066】
このように振動膜6の振動による上下動は、可動電極膜3を回転するように水平移動させ、可動電極3aと固定電極5aの重なる面積が変化し、容量変化として検知することが可能となる。なお、可動電極膜3を固定電極膜5に平行に対向するように支持することができれば、連結部材7b1を除くことで、可動電極膜3を回転方向へ移動しやすくすることも可能である。また、連結部材と可動電極膜等との連結位置や配置、材質等は、適宜変更可能である。
【0067】
以上、
図1に示すMEMS素子において可動電極膜が回転するように水平移動する場合について説明したが、
図3に示すMEMS素子、
図5に示すMEMS素子、
図6に示すMEMS素子および
図7に示しMEMS素子においても可動電極膜が回転するように水平移動するように構成することが可能である。
【0068】
このように電極膜の形状を変えることで、可動電極3aと固定電極5aとが重なる面積の変化を非線形とすることも容易となる。
【0069】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、可動電極や固定電極の形状や配置等は、所望の容量変化を検知できるように種々変更可能である。振動膜の上下動を可動電極膜の移動に伝搬させるため連結部材により直接接続する代わりに、振動膜の上下動の大きい部分と中継部材とを配置し、連結部材の一部となる中継部材を介して振動膜と可動電極膜とを接続するようにしてもよい。可動電極の水平移動の移動量、あるいは可動電極の水平移動と垂直移動のそれぞれの移動量は、連結部材を適宜選択することで調整すればよい。なお、上記実施例では振動膜6を絶縁膜2と第1のスペーサー4a等とで固定する構造として説明したが、
図1、
図8に示すMEMS素子において振動膜6と固定電極膜5とを反転した構造、
図3、
図5に示すMEMS素子において振動膜6と第2の可動電極膜32とを反転した構造、
図6、
図7に示すMEMS素子において振動膜6と支持膜11とを反転した構造とし、振動膜1がスペーサー等を介して支持基板1に固定された構造とすることも可能である。
【符号の説明】
【0070】
1:支持基板、2:絶縁膜、3:可動電極膜、31:第1の可動電極膜、32:第2の可動電極膜、3a:可動電極、31a:第1の可動電極、32a:第2の可動電極、4:スペーサー、4a:第1のスペーサー、4b:第2のスペーサー、4c:第3のスペーサー、5:固定電極膜、5a:固定電極、6:振動膜、7a、7b、7c:連結部材、7a1、7c1:連結位置、8:キャビティ、9:貫通孔、10、10a:中継部材、11:支持膜