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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240130BHJP
   H01S 5/022 20210101ALI20240130BHJP
   H01L 33/48 20100101ALI20240130BHJP
   C09K 11/79 20060101ALI20240130BHJP
   C09K 11/06 20060101ALN20240130BHJP
   C09K 11/84 20060101ALN20240130BHJP
   C09K 11/56 20060101ALN20240130BHJP
   C09K 11/64 20060101ALN20240130BHJP
   C09K 11/59 20060101ALN20240130BHJP
【FI】
H01L33/50
H01S5/022
H01L33/48
C09K11/79
C09K11/06
C09K11/84
C09K11/56
C09K11/64
C09K11/59
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020525601
(86)(22)【出願日】2019-06-12
(86)【国際出願番号】 JP2019023203
(87)【国際公開番号】W WO2019240150
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2018111551
(32)【優先日】2018-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018211960
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】510138741
【氏名又は名称】フェニックス電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】福田 隆史
(72)【発明者】
【氏名】郷田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】咲本 祐太
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
(72)【発明者】
【氏名】高橋 向星
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/174236(WO,A1)
【文献】特開2017-214442(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159175(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/055831(WO,A1)
【文献】特開2009-224053(JP,A)
【文献】V.P.Dotsenko et al.,「Influence of Ce3+ Ions on the Near Infrared Emission of Eu2+-doped Ca3Sc2Si3O12」,JOURNAL OF NANO-AND ELECTRONIC PHYSICS,2015年01月01日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/48-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
480nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発光する固体光源と、該固体光源を覆い少なくとも一種の蛍光体を含有する蛍光膜とを少なくとも備え、
前記蛍光膜が、前記固体光源からの光に励起されて700nmを超える範囲にピーク波長を有しかつ該ピーク波長を含む範囲における発光スペクトルの半値全幅が100nm以上である光を発する少なくとも一種の近赤外蛍光体を含有し、
前記近赤外蛍光体が、以下の式(I):
LiSrLaSiEu・・・(I)
(ただし、a~fは、a+b+c+d+e+f=100、0≦a≦8.22、0.22≦b≦17.33、1.12≦c≦11.36、22.41≦d≦38.09、49.47≦e≦56.09、0.88≦f≦1.01、を満たす数である。)
で示される組成を有する、発光装置。
【請求項2】
少なくとも、400nm以上1000nm以下の範囲に連続的な発光スペクトルを有する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記蛍光膜が、前記固体光源からの光に励起されて350nm以上700nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発する少なくとも一種の可視蛍光体をさらに含有する、請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記蛍光膜が、前記可視蛍光体として、前記固体光源からの光に励起されて350nm以上430nm未満の範囲にピーク波長を有する光を発する可視蛍光体A、前記固体光源からの光に励起されて430nm以上500nm未満の範囲にピーク波長を有する光を発する可視蛍光体B、前記固体光源からの光に励起されて500nm以上700nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発する可視蛍光体Cを、それぞれ一種以上含む、請求項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記蛍光膜が2以上の層で形成されており、前記可視蛍光体A及びBが異なる層に含まれている、請求項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記蛍光膜が、含まれる前記蛍光体の種類が異なる2以上の層で形成されており、
該2以上の層が、ピーク波長がより長い蛍光体を含有する層からピーク波長がより短い蛍光体を含有する層へと順に、前記固体光源からの光の進行方向に積層されている、請求項又はに記載の発光装置。
【請求項7】
前記蛍光膜の各層に含まれる前記蛍光体の種類が1以上3以下である、請求項又はに記載の発光装置。
【請求項8】
前記蛍光膜が、含まれる前記蛍光体の種類が異なる2以上の領域を同一面上に有する、請求項に記載の発光装置。
【請求項9】
前記蛍光体の種類が異なる2以上の領域が、少なくとも、前記近赤外蛍光体を含有する領域及び前記可視蛍光体を含有する領域を有する、請求項に記載の発光装置。
【請求項10】
前記固体光源を2以上備える、請求項1からのいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項11】
前記固体光源が、発光ダイオード、レーザーダイオード、及び有機エレクトロルミネッセンス発光素子から選択される少なくとも1種である、請求項1から10のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項12】
480nm以下の範囲にピーク波長を有する光により700nmを超える範囲にピーク波長を有しかつ該ピーク波長を含む範囲における発光スペクトルの半値全幅が100nm以上である光を発する少なくとも一種の近赤外蛍光体と、前記光により350nm以上700nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発する少なくとも一種の可視蛍光体とを含有し、
前記近赤外蛍光体が、以下の式(I):
LiSrLaSiEu・・・(I)
(ただし、a~fは、a+b+c+d+e+f=100、0≦a≦8.22、0.22≦b≦17.33、1.12≦c≦11.36、22.41≦d≦38.09、49.47≦e≦56.09、0.88≦f≦1.01、を満たす数である。)
で示される組成を有する、蛍光膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用照明をはじめとする各種照明は、ハロゲンランプから発光ダイオード(LED)への置き換えが急速に進んでおり長寿命化及び小型化が実現可能となっている。しかし、分光分析装置等の産業機器用の光源は、未だハロゲンランプが支配的に用いられており、LEDへの置き換えが進んでいない。その大きな原因として、従来のLEDでは、産業機器用の光源に求められる、広帯域での安定した発光スペクトル分布を呈することや温度変化による波長シフトが生じ難いこと等の特性を充足することが困難であることが考えられる。特許文献1には、赤色蛍光体と緑色蛍光体を含む2種以上の蛍光体を含有する発光装置用の多層膜シートにおいて、各々の蛍光体層に含有される蛍光体が一種類であり、発光波長が長い蛍光体を含有する蛍光体層から発光波長が短い蛍光体を含有する蛍光体層へと順に配置することによって発光装置の全光束を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-130459号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の発光装置は、照明用途への適用を目的としたものであったため高波長側のピーク波長が700nm以下のものであり、700nmを超える近赤外線領域にもピーク波長を有する発光が求められる産業機器用の光源としては十分ではない。
本発明は、光源からの光による励起により、少なくとも、700nmを超える領域にピーク波長を有する発光装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下に関するものである。
[1]480nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発光する固体光源と、該固体光源を覆い少なくとも一種の蛍光体を含有する蛍光膜とを少なくとも備え、前記蛍光膜が前記固体光源からの光に励起されて700nmを超える範囲にピーク波長を有しかつ該ピーク波長を含む範囲における発光スペクトルの半値全幅が100nm以上である光を発する少なくとも一種の近赤外蛍光体を含有する、発光装置。
[2]少なくとも、400nm以上1000nm以下の範囲に連続的な発光スペクトルを有する、[1]に記載の発光装置。
[3]前記蛍光膜が、前記固体光源からの光に励起され350nm以上700nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発する少なくとも一種の可視蛍光体をさらに含有する、[1]又は[2]に記載の発光装置。
[4]前記蛍光膜が、前記可視蛍光体として、前記固体光源からの光に励起されて350nm以上430nm未満の範囲にピーク波長を有する光を発する可視蛍光体A、前記固体光源からの光に励起されて430nm以上500nm未満の範囲にピーク波長を有する光を発する可視蛍光体B、前記固体光源からの光に励起されて500nm以上700nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発する可視蛍光体Cを、それぞれ一種以上含む、[3]に記載の発光装置。
[5]前記蛍光膜が2以上の層で形成されており、前記可視蛍光体A及びBが異なる層に含まれている、[4]に記載の発光装置。
[6]前記蛍光膜が、含まれる前記蛍光体の種類が異なる2以上の層で形成されており、該2以上の層が、ピーク波長がより長い蛍光体を含有する層からピーク波長がより短い蛍光体を含有する層へと順に、前記固体光源からの光の進行方向に積層されている、[4]又は[5]に記載の発光装置。
[7]前記蛍光膜の各層に含まれる前記蛍光体の種類が1以上3以下である、[5]又は[6]に記載の発光装置。
[8]前記蛍光膜が、含まれる前記蛍光体の種類が異なる2以上の領域を同一面上に有する、[4]に記載の発光装置。
[9]前記蛍光体の種類が異なる2以上の領域が、少なくとも、前記近赤外蛍光体を含有する領域及び前記可視蛍光体を含有する領域を有する、[8]に記載の発光装置。
[10]前記固体光源を2以上備える、[1]から[9]のいずれかに記載の発光装置。
[11]前記固体光源が、発光ダイオード、レーザーダイオード、及び有機エレクトロルミネッセンス発光素子から選択される少なくとも1種である、[1]~[10]のいずれかに記載の発光装置。
[12]前記近赤外蛍光体が2価のユーロピウムイオンを含有する、[1]~[11]のいずれかに記載の発光装置。
[13]前記近赤外蛍光体が、以下の式(I)で示される組成を有する、[1]~[12]のいずれかに記載の発光装置。
LiSrLaSiEu・・・(I)
(ただし、a~fは、a+b+c+d+e+f=100、0≦a≦8.22、0.22≦b≦17.33、1.12≦c≦11.36、22.41≦d≦38.09、49.47≦e≦56.09、0.88≦f≦1.01、を満たす数である。)
[14]480nm以下の範囲にピーク波長を有する光により700nmを超える範囲にピーク波長を有しかつ該ピーク波長を含む範囲における発光スペクトルの半値全幅が100nm以上である光を発する少なくとも一種の近赤外蛍光体と、前記光により350nm以上700nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発する少なくとも一種の可視蛍光体とを含有する、蛍光膜。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、光源からの光による励起により、少なくとも、700nmを超える領域にピーク波長を有する発光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態に係る発光装置の構成を示す概略図であり、(A)は平面図であり、(B)は側面図である。
図2】固体光源及び蛍光膜の積層例を示す説明図である。
図3】実施例で用いた近赤外蛍光体P1~P7の発光スペクトルである。Aに近赤外蛍光体P1,P2の発光スペクトルを示す。Bに近赤外蛍光体P3,P4の発光スペクトルを示す。Cに近赤外蛍光体P5~P7の発光スペクトルを示す。
図4】実施例で用いた近赤外蛍光体P8~P14の発光スペクトルである。Dに近赤外蛍光体P8,P9の発光スペクトルを示す。Eに近赤外蛍光体P10,P11の発光スペクトルを示す。Fに近赤外蛍光体P12~14の発光スペクトルを示す。
図5】実施例で用いた近赤外蛍光体P8の発光スペクトルである。
図6】実施例1,3の発光装置の発光スペクトルである。
図7】実施例2の発光装置の発光スペクトルである。
図8】実施例1及び比較例1,2の発光装置の発光スペクトルである。
図9】第1変形例の発光装置の構成例を示す概略平面図である。
図10】第1変形例の発光装置の構成例を示す概略側面図である。
図11】第2変形例の発光装置の構成例を示す概略平面図である。
図12】第2変形例の発光装置の構成例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0009】
<第1実施形態>
[発光装置]
図1に、一実施形態に係る発光装置の構成を示す概略平面図及び側面図を示す。図2に、固体光源及び蛍光膜の積層例を示す。図1,2に示す発光装置10は、パッケージ1に載置された固体光源2と、該固体光源2を覆う蛍光膜3とを備える。パッケージ1は、凹部を有するカップ状の基体で構成され、凹部の底面に固体光源2が設けられているとともに、凹部の開口部分が蛍光膜3で覆われている。なお、図1(A)では蛍光膜3は省略している。パッケージ1を構成する基体としては、樹脂板、セラミックス板等を用いた、表面実装用パッケージ(SMDパッケージ)又はチップオンボード用基板(COB基板)等を用いることができる。固体光源2は、図示しない銀ペースト等のダイアタッチ材を用いてパッケージ1に接合されているとともに、固体光源2の正極及び負極がパッケージ1の正極及び負極のそれぞれの電極パッド5に繋がるように、金等を含むワイヤ4によってパッケージ1と電気的に接続されている。なお、フリップチップ実装の場合は、ワイヤ4に替えて導電部材を用いた突起状の端子を用いて電気的に接続されていてもよい。固体光源2の上側には、固体光源2の上面から所定の空間をあけて、パッケージ1の凹部の開口部を覆いかつ固体光源2の上面と平行になるように、蛍光膜3が設けられている。これにより、蛍光膜3は、固体光源2の全体を覆うように、かつ主面が固体光源2からの光と垂直に交わるように設けられている。
図2では、蛍光膜3は三層で構成されているが、単層でもよく、二層以上の任意の層数とすることができる。層構成の詳細は後述する。蛍光膜3が複数の層(2以上の層)で形成されている場合、各層は固体光源2からの光の進行方向に積層されている。図1では、蛍光膜3は、固体光源の上面から所定の空間をあけて設けられているが、該空間は不活性ガスや樹脂やガラスなどの透明部材等により充填されていてもよい。また、蛍光膜3は、固体光源2に接するように設けられていてもよい。
必要に応じて、図1に示すように、ツェナーダイオードやESD素子等の静電保護素子6を、固体光源2と並列に、ワイヤ4で電極パット5に接続してもよい。
【0010】
(固体光源)
固体光源は、480nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発光する固体光源である。固体光源は、450nm以下、又は410nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発光する固体光源とすることもできる。固体光源が発する光のピーク波長の範囲の下限値は、特に限定されず、260nm以上、330nm以上、又は350nm以上とすることができる。なお、本明細書において、特に指定のない限り、「ピーク波長」との用語は、分光発光スペクトルがピークを示す波長のことであり、そのうち最大強度の波長を「最大ピーク波長」という。上記範囲にピーク波長を有する光を発光する固体光源を用いることで、後述する各種の蛍光体を励起させることができる。また、固体光源の発光スペクトルは、通常は半値全幅が10nm以上、かつ、該発光スペクトルはガウス関数に従う強度分布を取ると考えて良いため、カットオフ波長(例えば、蛍光強度が最大ピーク波長における強度の1.5%を下回る波長)の幅(短波長側カットオフ波長と長波長側カットオフ波長の間隔)は20nm以上となるので、例えば、400nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発光する固体光源を用いることで、380nm以下の紫外線領域の発光スペクトルを有する発光装置とすることができる。
【0011】
固体光源としては、例えば、発光ダイオード(LED)、レーザーダイオード(LD)、及び有機エレクトロルミネッセンス発光素子(有機EL素子)から選択される少なくとも1種を用いることができる。LED又はLDとしては、例えば、InGan系、GaN系、AlGaN系等の紫外から紫色発光のLED又はLDを挙げることができる。有機EL素子としては、例えば、発光層に、ナフタレン、ジスチリルアリーレン、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、イミダゾール、カルバゾール、ピラゾール、ピロール、フラン、フラザン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、フルオレン、ピリジン、ピラン、ベンゾピラン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ビピリジン、キノキサリン、キサンテン、フェナジン、フェノキサジン、ジベンゾジオキシン、ジベンゾフラン、及びそれらの誘導体等芳香族基を骨格に有する化合物から選択される1以上の青色系の発光材料を含む有機EL素子等を挙げることができる。
【0012】
(蛍光膜)
蛍光膜は、固体光源を覆うように設けられており、少なくとも一種の蛍光体を含有する。蛍光膜は、単層で構成されていてもよく2以上の層で構成されていてもよい。蛍光膜は、固体光源からの光に励起されて700nmを超える範囲、好ましくは750nm以上の範囲にピーク波長(好ましくは、最大ピーク波長)を有しかつ該発光スペクトルの半値全幅(full width at half maximum,FWHM)が100nm以上、好ましくは120nm以上、より好ましくは150nm以上、特に好ましくは200nm以上である光を発する少なくとも一種の近赤外蛍光体(以下、単に「近赤外蛍光体」ともいう。)を含有する。
【0013】
なお、本明細書において、「近赤外蛍光体」との用語は、上記のとおり、「固体光源からの光に励起されて700nmを超える範囲にピーク波長(好ましくは、最大ピーク波長)を有しかつ該ピーク波長を含む範囲における発光スペクトルの半値全幅が100nm以上である光を発する蛍光体」のことを意味している。一般的には、「近赤外」との用語は、780nm~3000nm程度の波長範囲を指す用語として用いられている。本実施形態で用いる近赤外蛍光体は、700nmを超える範囲にピーク波長を有しかつ該ピーク波長を含む範囲における発光スペクトルの半値全幅が100nm以上、かつ、該発光スペクトルはガウス関数に従う強度分布を取ると考えて良いため、カットオフ波長(例えば、蛍光強度が最大ピーク波長における強度の1.5%を下回る波長)の幅(短波長側カットオフ波長と長波長側カットオフ波長の間隔)は200nm以上であるので、少なくとも780nmを超える波長範囲にスペクトルを呈することができ、一般的な意味合いからも矛盾しない。
【0014】
固体光源からの光に励起されて700nmを超える範囲にピーク波長を有しかつ該発光スペクトルの半値全幅が50nm以上、特に100nm以上のブロードなピークを形成する近赤外蛍光体を含有するので、上記した光源からの光による励起により近赤外線領域に一定の強度でかつブロードなピーク波長を有する発光装置とすることができる。加えて、上記固体光源や後述する必要に応じて含有してもよい可視蛍光体と組み合わせて、紫外線領域から近赤外線領域までの広帯域の発光スペクトルを有する発光装置とすることができる。なお、近赤外蛍光体は、700nmを超える範囲、好ましくは750nm以上の範囲にピーク波長を有していればよく、それ以外の範囲にもピーク波長を有していてよい。例えば、近赤外蛍光体は、600nm以上700nm以下の範囲と、700nmを超える範囲とにピーク波長を有しているように構成することもできる。
【0015】
図5に基づいて、近赤外蛍光体の発光スペクトルの一例を説明する。図5は、後述する実施例で用いた近赤外蛍光体P8の発光スペクトル(光源:370nmに分光したキセノンランプ)である。図5に示すように、この近赤外蛍光体は、680±3nm、及び776±3nmにピーク波長を有している。つまり、この近赤外蛍光体は、700nmを超える範囲に一つのピーク波長を有している。各発光スペクトルの半値全幅は、それぞれ113nm、及び209nmである。これら二つのピークは重なり合っており、両者を含む発光スペクトルのカットオフ波長(例えば、蛍光強度が800nmにおける強度の1.5%を下回る波長)は、短波長側が540±3nmであり、長波長側が1200nm±3nmである。なお、近赤外蛍光体の発光スペクトルは、700nmを超える範囲にピーク波長を有していればよく、図5に示す発光スペクトルと同じ波形に限定されない。
【0016】
この近赤外蛍光体を用いた蛍光膜(後述する可視蛍光体を含まない蛍光膜)と上記固体光源とで構成される発光装置は、強度バランスは任意となるものの、図5と概ね同じ波長にピーク波長を有する。
【0017】
近赤外蛍光体としては、上記範囲にピーク波長を有する蛍光体であれば特に限定されず、例えば、ユーロピウム又はセリウム賦活化窒化物又は酸窒化物蛍光体を挙げることができる。これらは、5dと4f間の遷移による発光であり、半値幅が広いため好ましい。特に、2価のユーロピウム(2価のユーロピウムイオン)を添加した蛍光体は、半値幅が広く発光強度が高いためより好ましい。
【0018】
ユーロピウム又はセリウム賦活化窒化物又は酸窒化物蛍光体としては、例えば、Li,Sr,La,及びSiからなる群から選択された1以上の金属の窒化物を母体結晶として、該母体結晶に賦活剤としてユーロピウムを含有する窒化物蛍光体を挙げることができる。
【0019】
近赤外蛍光体は、以下の式(I)で示される組成を有する近赤外蛍光体とすることが、半値幅が広いため好ましく、以下の式(I)において、0.88≦f≦1.01の組成を有する近赤外蛍光体とすることが、発光強度が高いためより好ましい。
LiSrLaSiEu・・・(I)
(ただし、a~fは、a+b+c+d+e+f=100、0≦a≦8.22、0.22≦b≦17.33、1.12≦c≦11.36、22.41≦d≦38.09、49.47≦e≦56.09、0.05≦f≦10、となる数である。)
【0020】
近赤外蛍光体の含有量は、蛍光膜に含まれる全蛍光体中、5質量%以上50質量%以下であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上25質量%以下であることがさらに好ましい。上記範囲内とすることで、他の蛍光体層の発光を妨げることなく近赤外蛍光体の発光を得ることができる。
【0021】
蛍光膜は、上記近赤外蛍光体の他に、固体光源からの光に励起されて350nm以上700nm以下の範囲にピーク波長(好ましくは、最大ピーク波長)を有する光を発する少なくとも一種の可視蛍光体(以下、単に「可視蛍光体」ともいう。)を含有していてもよい。可視蛍光体を含有することで、紫外線領域、可視光領域及び近赤外線領域までの広帯域な発光スペクトルを有する発光装置とすることができる。
なお、本明細書において、「可視蛍光体」との用語は、上記のとおり、「固体光源からの光に励起されて350nm以上700nm以下の範囲にピーク波長(好ましくは、最大ピーク波長)を有する光を発する蛍光体」のことを意味している。一般的には、「可視」との用語は、380nm~780nm程度の波長範囲を指す用語として用いられている。本実施形態で用いる可視蛍光体は、350nm以上700nm以下の範囲にピーク波長を有しており、通常は該発光スペクトルの半値全幅は50nm以上であり、かつ、該発光スペクトルはガウス関数に従う強度分布を取ると考えて良いため、カットオフ波長(例えば、蛍光強度が最大ピーク波長における強度の1.5%を下回る波長)の幅(短波長側カットオフ波長と長波長側カットオフ波長の範囲)は100nm以上であるので、少なくとも380nm~780nm程度の波長範囲全域にわたってスペクトルを呈することになるため、一般的な意味合いからも矛盾しない。
【0022】
可視蛍光体としては、上記範囲にピーク波長を有する蛍光体であれば特に限定されず、例えば、固体光源からの光に励起されて350nm以上430nm未満の範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体A(以下、単に「可視蛍光体A」ともいう。)、固体光源からの光に励起されて430nm以上500nm未満の範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体B(以下、単に「可視蛍光体B」ともいう。)、固体光源からの光に励起されて500nm以上700nm未満の範囲にピーク波長を有する光を発する蛍光体C(以下、単に「可視蛍光体C」ともいう。)、を挙げることができる。蛍光体A~Cは、それぞれ、上記範囲に最大ピーク波長を有することが好ましい。広帯域の発光スペクトルをより確実に呈する点で、可視蛍光体は、蛍光体A~Cをそれぞれ一種以上含むことが好ましい。なお、可視蛍光体のピーク波長は、可視蛍光体の活化剤の含有量を調整したり、混合物の混合比を調整したりすることで各領域内の任意の波長に調整することができる。
【0023】
可視蛍光体Aとしては、例えば、π電子共役系有機蛍光体A1(以下、「可視蛍光体A1」ともいう。)、ユーロピウム賦活化酸硫化物蛍光体及び銀賦活化硫化亜鉛蛍光体の混合物蛍光体A2(以下、「可視蛍光体A2」ともいう。)を挙げることができ、これらから選択される一種以上を用いることができる。
【0024】
可視蛍光体A1としては、例えば、以下の式(A1)で表される、1,3,4-オキサジアゾリル環の2,5位にπ電子共役系置換基を有する蛍光体を挙げることができる。
【化1】
(π),R(π)は、水素、または、π電子共役系置換基であり、例えば、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、カルバゾリル基、ピリジル基、ビピリジル基を挙げることができる。また、それらのπ共役系置換基は、炭素数が1以上10以下のアルキル基、ハロゲン原子等の置換基を有していても良い。炭素数が1以上10以下のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ジメチルプロピル基、tert-ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基等を挙げることができる。
【0025】
可視蛍光体A1は、例えば、1,3,4-オキサジアゾリル環(-CO-)、1,4-フェニル環(-C-)、及び1-フェニル環(-C)をそれぞれ1~3個含むπ電子共役系有機蛍光体とすることもできる。可視蛍光体A1は、その純度が90%以上であることが好ましい。可視蛍光体A1は、これらから選択される一種以上を用いることができる。
【0026】
可視蛍光体A2としては、例えば、ユーロピウム賦活化酸硫化物蛍光体(A2-1)及び銀賦活化硫化亜鉛蛍光体(A2-2)の混合物等を挙げることができる。
ユーロピウム賦活化酸硫化物蛍光体(A2-1)としては、例えば、ガドリニウム、イットリウム、及びランタンからなる群から選択された1以上の希土類金属と、酸硫化物を母体結晶として、該母体結晶に賦活剤としてユーロピウムを含有する、酸硫化物蛍光体等を挙げることができる。
【0027】
ユーロピウム賦活化酸硫化物蛍光体は、以下の式(A2-1)で表される蛍光体とすることもできる。
(A2-x,EuxS ・・・(A2-1)
(但し、Aは、Ga,Y,Laのいずれかであり、xは、0<x<0.1を満たす数である。)
【0028】
銀賦活化硫化亜鉛蛍光体(A2-2)は、以下の式(A2-2)で表される蛍光体とすることもできる。
(Zn1-x,Ag2x)S ・・・(A2-2)
(但し、xは、0<x<0.1を満たす数である。)
【0029】
可視蛍光体A2において、ユーロピウム賦活化酸硫化物蛍光体(A2-1)と銀賦活化硫化亜鉛蛍光体(A2-2)との混合比は、質量比[(A2-1)/(A2-2)]として、0.1以上9以下とすることができる。
【0030】
可視蛍光体Bとしては、例えば、ユーロピウム賦活化アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体を挙げることができる。ユーロピウム賦活化アルカリ土類アルミン酸塩蛍光体としては、例えば、カルシウム、ストロンチウム、マグネシウム及びバリウムからなる群から選択される1以上の第2族元素のアルミン酸塩を母体結晶とし、該母体結晶に賦活剤としてユーロピウムを含有する蛍光体を挙げることができる。可視蛍光体Bとしては、これらから選択される一種以上を用いることができる。
【0031】
可視蛍光体Bは、以下の式(B1)~(B4)で表される蛍光体とすることもできる。
(A1-x,Eu)Al1117 ・・・(B1)
(但し、Aは、Ca,Sr,Mg,Ba又はその組み合わせであり、xは、0<x<0.1を満たす数である。)
【0032】
(Sr0~0.8Si:Eu0.01~0.2 ・・・(B2)
(Ca0.25~2Si0.01~11.49Al0.51~11.990.01~11.494.51~15.99):Ce0.001~0.5 ・・・(B3)
Al4.6Si0.3~0.39:Eu0.01~0.1 ・・・(B4)
【0033】
可視蛍光体Cとしては、例えば、ユーロピウム賦活化ストロンチウムシリケート蛍光体を挙げることができる。ユーロピウム賦活化ストロンチウムシリケート蛍光体としては、例えば、ストロンチウムシリケートを母体結晶とし、該母体結晶に賦活剤としてユーロピウムを含有する蛍光体であって、以下の式(C1)~(C5)で表される可視蛍光体C1~C5を挙げることができる。
【0034】
(Sr1-x,EuSiO ・・・(C1)
(但し、xは、0<x<0.1を満たす数である。)
【0035】
(Sr1-x―y,Ba,EuSiO ・・・(C2)
(但し、x,yは、0<x<1、0<y<0.1を満たす数である。)
【0036】
(Sr1-x―y,Ba,EuSiO ・・・(C3)
(但し、x,yは、0<x<1、0<y<0.1を満たす数である。)
【0037】
MeSi:Eu ・・・(C4)
MeAlSiN:Eu ・・・(C5)
但し、式(C4),(C5)において、Meは、Ca,Sr,又はBaを表す。
【0038】
可視蛍光体Cとしては、上記可視蛍光体C1~C5から選択される1以上を用いることができる。
【0039】
各層における蛍光体の総含有量は、3質量%以上75質量%以下であることが好ましく、5質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。上記範囲内とすることで、分散性良く均質な層を形成でき、かつ、蛍光体からの発光を効果的に得るとともに、層内での散乱による光の散逸を押さえた条件を達成し、十分な発光強度と狭い放射角特性を具備することが可能となる。
【0040】
可視蛍光体の含有量は、所望される各々の波長の光量バランスに応じて選択することができる。例えば、蛍光体Aの含有量は、蛍光膜に含まれる全蛍光体中、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。蛍光体Bの含有量は、蛍光膜に含まれる全蛍光体中、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。蛍光体Cの含有量は、蛍光膜に含まれる全蛍光体中、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、5質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。
【0041】
蛍光膜中に含まれる蛍光体の数は、少なくとも400nm以上1000nm以下の範囲に連続的な発光スペクトルを有する発光装置とする場合、上記近赤外蛍光体に可視蛍光体を組み合わせて、合計2種以上とすることができ、3種以上とすることが好ましく、5種以上とすることがより好ましい。上限値は特に限定されず、10種以下、又は8種以下とすることができる。
蛍光膜が複数の層で構成されている場合、各層に含まれる蛍光体の種類は、1以上4以下であることが好ましく、1以上3以下であることがより好ましい。蛍光体の種類を1以上4以下とすることで、比重や粒径の違う多種の蛍光体を含むことにより蛍光体の分散性が低下することを防ぐことができる。
【0042】
蛍光膜は、一層以上で構成されており、好ましくは、含まれる蛍光体の種類が異なる複数の層で構成されている。含まれる蛍光体の種類が異なる複数の層で構成することで、一層に含まれる蛍光体の種類が過度に多くならないので、蛍光体の分散性を高めて均一な蛍光膜とすることができる。蛍光膜を構成する層の数は、1以上、2以上又は3以上とすることができ、8以下、7以下又は5以下とすることができる。
【0043】
なお、「蛍光体の種類」とは、蛍光体のピーク波長によって区別される種類のことである。同じ母体結晶や混合物の構成要素が同一の場合でも、賦活化物の添加量や混合物の構成要素の混合比が異なる等によりピーク波長が異なる蛍光体は種類が異なる。「蛍光体の種類が異なる複数の層(2以上の層)」とは、ある一層に含まれる少なくとも一種の蛍光体が、他の層に含まれる蛍光体の種類と一致していないことを意味している。広帯域の発光スペクトルを呈することができる蛍光膜を効率よく作製する点で、含まれる蛍光体の種類が層間ですべて異なることが好ましい。「蛍光体の種類が異なる複数の層」とするには、例えば、近赤外蛍光体を含む層、可視蛍光体A~Cを含む層の2層で構成することができる。或いは、近赤外蛍光体を含む層、可視蛍光体Aを含む層、可視蛍光体Bを含む層、可視蛍光体Cを含む層の4層で構成することで蛍光体の種類が異なる複数の層とすることもできる。蛍光体の種類ごとに別の層として積層させることもできる。
【0044】
但し、紫外領域および紫外領域寄りの可視領域にピーク波長を有する蛍光体の光は、特に、他の蛍光体による再吸収によって消失してしまう傾向にある。よって、蛍光膜が可視蛍光体A及び可視蛍光体Bを含む場合は、光の失活を防ぎながら、十分な強度の短波長側の発光を得る目的から、可視蛍光体Aと可視蛍光体Bとは異なる層に含むことが好ましい。一方、近赤外蛍光体、可視蛍光体Cは、他の蛍光体と混合しても発光スペクトルの強度に大きな影響は及ぼさない。
【0045】
蛍光膜は、蛍光体の種類が異なる複数の層で形成されている場合、該複数の層が、ピーク波長がより長い蛍光体を含有する層からピーク波長がより短い蛍光体を含有する層へと順に、固体光源からの光の進行方向に積層されていることが好ましい。このような構成にすることで、蛍光発光した光が次の層に含まれる蛍光体の励起に利用されて短い波長の光が消失してしまうことを防ぐことができる。
【0046】
蛍光膜の各層の厚みは、含まれる蛍光体の割合により調整され、例えば、蛍光体の含有量が5質量%以上60質量%以下の場合、1μm以上500μm以下とすることができ、蛍光体の含有量が60質量%より多い場合、10μm以上100μm以下とすることができる。
【0047】
蛍光膜の作製方法は、特に限定されず、例えば、上記した蛍光体を、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、エチルセルロース、ガラス等の薄膜材料中に、必要に応じてシリコーンナノパウダー等の分散剤とともに、公知の攪拌・混練装置を用いて分散させてペースト状にした後、ポッティング、スプレー、スピンコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、等により、固体光源上、又はガラス板等の透明基材上に塗布又は印刷して作製することができる。複数の蛍光体を混合して用いる場合の混合方法は、特に限定されず、従来の混合装置を用いて行えばよい。蛍光膜を複数の層で構成する場合、各層はシリコーン樹脂やエポキシ樹脂等で接着してもよいし、固定部品で押さえつけるように固定してもよい。蛍光膜をパッケージに装着する場合の接着方法についても、同様に、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等で接着してもよいし、固定部品で押さえつけるように固定してもよい。
【0048】
(発光装置)
本実施形態に係る発光装置は、少なくとも、400nm以上1000nm以下の範囲に連続的な発光スペクトル(以下、「連続スペクトル」ともいう。)を有していることが好ましい。この範囲に連続的なスペクトルを有することで、広帯域な発光が求められる産業用機器用の光源として好ましく用いることができる。「連続的な発光スペクトル」とは、発光スペクトルの発光強度(以下、「蛍光強度」ともいう。)がこの範囲内の全域で、800nm基準の相対値として0.01以上(1%以上)であることを意味している。上記範囲の全域で800nm基準の相対値として1%以上であるので、産業機器用の光源としてより好ましく用いることができる。標準光源として用いる場合は、発光スペクトルの発光強度(蛍光強度)が、上記範囲の全域で、800nm基準の相対値として0.015以上(1.5%以上)であることが好ましく、使いやすさの観点からは、0.05以上(5%以上)であることがより好ましい。
【0049】
例えば、図6に示す実施例1のスペクトルにおいて、連続スペクトルの両端(350nm、1200nm)における蛍光強度は、800nm付近の最大強度に対してそれぞれ1.7%、1.9%であり、かつ、390nm付近の極小点における蛍光強度も8.2%であり、いずれも1.5%を上回っており、350nm以上1200nm以下の範囲に連続的な発光スペクトルを有しているといえる。よって、この発光装置は、少なくとも、400nm以上1000nm以下の範囲に連続的な発光スペクトルを有しており、産業用機器の標準光源として十分に使用可能である。
【0050】
発光装置は、用いる固体光源及び近赤外蛍光体の発光スペクトルによって、より広帯域の連続スペクトルを有するように構成することができる。例えば、固体光源として、410nm以下の範囲にピーク波長を有する光を発光する固体光源を用いる場合、該発光スペクトルの半値全幅が50nm以上とすると、少なくとも、360nm以上の範囲に連続スペクトルを有する発光装置とすることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る近赤外蛍光体を用いることで、1200nmを超える領域を含む広帯域の連続スペクトルを実現することができる。後述する実施例では、少なくとも、350nm以上1200nm以下の範囲に連続的な発光スペクトルを有する発光装置の例を示している。
【0052】
発光装置は、700nmを超える近赤外線領域にピーク波長を有する。近赤外線領域に強い光量が求められる場合は、700nmを超える近赤外線領域に、発光装置が呈する連続的な発光スペクトルにおいて最大の発光強度を得る波長を有する。より高波長側の発光が求められる場合は、近赤外蛍光体の組成や混合比を調整することにより、750nm以上、又は800nm以上の範囲にピーク波長を有するように構成することもできる。近赤外線領域にピーク波長を有することで、従来のLEDより広い波長範囲の光を得ることができるので、分光分析装置等の産業機器用の発光装置としてより好適に用いることができる。
【0053】
産業機器としては、白色干渉膜厚計、ハンディタイプの色度計等の分光分析機器や、ハロゲンランプが用いられている産業機器等を挙げることができる。
白色干渉膜厚計は、光源の波長帯域の範囲に複数のフリンジ(干渉縞)が含まれていることが望ましいため、特に極薄膜の膜厚等を計測するためには、より広帯域の光源を用いることが求められている。従来のLED光源では十分な広帯域を達成することができないが、本実施形態に係る発光装置によれば白色干渉膜厚計の光源として十分な波長帯域を達成することができる。
ハンディタイプの色度計は、従来、光源の帯域に合せて測光範囲が400nm~700nmに設定されている。しかし、国際照明委員会(CIE)が定めるXYZ表色系は、380nm~780nmに規定されているため、従来のハンディタイプの色度計では厳密な計測が難しい。本実施形態に係る発光装置によれば、少なくとも、400nm以上1000nm以下の範囲の広帯域の発光スペクトルを有するので、CIEの規定に則った正確な計測が可能となる。その結果、照明分野、色彩分野、印刷分野、塗装分野等、広範囲の産業に貢献することができる。
ハロゲンランプは、多くの産業機器用光源として用いられている。しかし、例えばクリーンルーム等の外部と遮断された空間で用いられるものは、発熱及び排熱の問題が生じる場合がある。本実施形態に係る発光装置によれば、ハロゲンランプに類似した発光スペクトルに調整することが可能であるため、ハロゲンランプの代替品として好適に用いることができる。ハロゲンランプの代替品として用いる場合は、上記の蛍光体を複数組み合わせることにより、ハロゲンランプの発光スペクトルに類似した発光スペクトルを有する発光装置とすることができる。
【0054】
<変形例>
次に本実施形態に係る発光装置の変形例について述べる。以下の各変形例では、第1実施形態及び他の変形例と異なる点のみを述べる。以下に述べられていない構成については既述の構成と同様にすることができる。
【0055】
(第1変形例)
第1変形例は、第1実施形態において蛍光膜を複数の層で構成する例(図2参照)の変形例であり、含まれる蛍光体の種類が異なる複数の領域を同一面上に有するように構成する。
【0056】
図9,10を用いて第1変形例を説明する。図9は第1変形例の発光装置の構成例を示す概略平面図であり、図10は概略側面図である。図9,10に示す発光装置100は、パッケージ11上に設けられた固体光源21と、固体光源21を覆うように設けられた蛍光膜30,31とを備える。蛍光膜30は、含まれる蛍光体の種類が異なる2以上の領域(領域30a~30f)を有している。「蛍光体の種類」とは、上記したように、蛍光体のピーク波長によって区別される種類のことである。なお、この例では、蛍光膜30,31は、基材7上に設けられているが、基材7は必須の構成ではない。基材としては、ガラス等の透明の部材を用いることができる。このような基材7を用いることで、製膜が容易であるとともに取り扱いが容易で、かつ強度を保つことができる。
【0057】
また、この例では、蛍光膜30を他の蛍光膜31と積層させる場合の例を示しているが、蛍光膜30のみを単層で用いることもできる。蛍光膜30を単層で用いる場合は、少なくとも一つの領域に近赤外蛍光体を含有するように構成する。この場合、蛍光膜30は、少なくとも一種の近赤外蛍光体を含有する領域(例えば領域30a)、及び少なくとも一種の可視蛍光体を含有する領域(例えば領域30b~30f)を有していることが好ましい。蛍光膜30が近赤外蛍光体を含有しない場合は、蛍光膜30を少なくとも一種の近赤外蛍光体を含有する蛍光膜31と積層させて用いればよい。他の蛍光膜31の構成は、特に限定されず、含まれる蛍光体の種類が異なる2以上の領域を同一面上に有する蛍光膜(蛍光膜30と同様の構成)であってもよく、1以上の蛍光体を含む一つの領域で構成された蛍光膜であってもよい。
【0058】
蛍光膜30を他の蛍光膜31と積層させる場合は、第1実施形態で複数の層構成とする場合と同様に、ピーク波長がより長い蛍光体を含有する蛍光膜からピーク波長がより短い蛍光体を含有する蛍光膜へと順に、固体光源からの光の進行方向に積層されていることが好ましい。このような構成にすることで、蛍光発光した光が次の蛍光膜に含まれる蛍光体の励起に利用されて短い波長の光が消失してしまうことを防ぐことができる。
【0059】
図9では、蛍光膜30は、6つの領域30a~30fで構成されているが、領域の数はこれに限定されず、2以上の任意の数で構成することができる。中でも、蛍光発光した光の消失を防ぐ点で、含まれる蛍光体の種類が異なる4以上の領域で構成されていることが好ましい。
【0060】
蛍光膜30の作製方法は、特に限定されず、蛍光体を含んだインクによる印刷や、あらかじめ蛍光体と樹脂を混合して作製された別々の蛍光膜を同一面上に配置することにより作製することができる。
【0061】
(第2変形例)
第2変形例は、固体光源を2以上用いる場合の例である。図11,12を用いて第2変形例を説明する。図11,12は、第2変形例の発光装置の構成例を示す概略平面図である。図11に示す発光装置101は、パッケージ12の同一面上に設けられた2以上の固体光源22a~22fと、該固体光源22a~22fのいずれか一つ又は複数を覆う蛍光膜32a~32eを備える。図12に示す発光装置102は、固体光源23a~23fと、該固体光源23a~23fの全てを覆う蛍光膜33gと、蛍光膜33gの上に設けられかつ固体光源23a~23fのうちの一つを覆う位置に設けられた蛍光膜33a~33fと、を備える。
固体光源22a~22f、23a~23fは、ピーク波長が同じ光を発光する固体光源であってもよく、ピーク波長が異なる光をそれぞれ発光する固体光源であってもよい。図11,12では、固体光源は6つの固体光源22a~22f又は23a~23fで構成されているが、固体光源の数は、これに限定されず2以上、3以上、5以上、10以上等、求められる明るさに対応できるよう任意の数にすることができる。
【0062】
各固体光源を覆う蛍光膜の構成は、図11,12に示すものに限定されず、各固体光源がそれぞれ別個の蛍光膜(好ましくは、含まれる蛍光体の種類がそれぞれ異なる蛍光膜)で覆われていてもよく、一部又は全ての固体光源が単一の蛍光膜で覆われていてもよい。いずれの場合も、少なくとも一つの蛍光膜は、少なくとも近赤外蛍光体を含有するように構成する。各固体光源が別個の蛍光膜で覆われている場合、少なくとも近赤外蛍光体を含有する蛍光膜以外の蛍光膜のうち少なくとも一つの蛍光膜は、上記可視蛍光体から選択される少なくとも一種を含有する蛍光膜であることが好ましい。各固体光源が単一の蛍光膜で覆われている場合、蛍光膜は、近赤外蛍光体及び可視蛍光体を含有することが好ましい。また、蛍光膜は、第1変形例に記載した同一面上に2以上の領域を有する蛍光膜を用いることもでき、複数の層を有する蛍光膜を用いることもできる。その場合の構成は上記のとおりである。
【0063】
蛍光膜の作製方法は、特に限定されず、前記の作製方法と同じ方法により作製することができる。
蛍光膜を同一平面状に複数個有する構成(例えば各固体光源がそれぞれ別個の蛍光膜で覆われている構成)にする場合は、樹脂硬化のための加熱時に樹脂が流れ出すことを防止する点で、例えばシリコーン樹脂等が固体光源の周囲を取り囲むように設けられている、いわゆるダムを有していてもよい。
【0064】
(その他の構成)
発光装置は、発光した光の指向性をコントロールするため、固体光源及び蛍光膜を覆うようにレンズが設けられていてもよい。レンズとしては、片面凸レンズ、両面凸レンズ、凸メニスカスレンズ、ロッドレンズ、光ファイバー、等を挙げることができる。
【0065】
発光装置は、さらに、異なる波長の光を混合する目的のため、レンズの光入射面や出射面にブラスト加工が施されていてもよい。ブラスト加工の方法は特に限定されず、公知のサンドブラスト加工の方法等を用いて行うことができる。
【実施例
【0066】
以下に実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0067】
[製造例1~14](近赤外蛍光体の製造)
実施例では、組成にLiSrLaSiEu(ただし、a~fは、a+b+c+d+e+f=100となる数)で表される赤外蛍光体材料を用いた。
以下のようにして、実施例で用いることのできる近赤外蛍光体P1~P14を製造した。表1にこれらの蛍光体の設計組成示す。
【表1】
【0068】
上記設計組成の蛍光体を得るために原料粉末Si、LiN、Sr、LaN、EuNを、表2に示す重量比率で秤量し、メノウ乳棒と乳鉢で10分間混合した。その後、得られた混合物を窒化ホウ素製のるつぼに充填した。尚、粉末の秤量、混合の各工程は全て、水分1ppm以下、酸素1ppm以下の窒素雰囲気を保持することができるグローブボックス中で行った。
【0069】
【表2】
【0070】
その後、この混合粉末を入れた窒化ホウ素製のるつぼを、黒鉛抵抗加熱方式の電気炉にセットした。焼成の操作は、まず、拡散ポンプにより焼成雰囲気を真空とし、室温から800℃まで毎時1200℃の速度で昇温し、800℃において、純度が99.999体積%の窒素を導入して圧力を0.92MPaとし、1700℃の焼成温度まで、毎時600℃で昇温し、1700℃の焼成温度で2時間保持して行った。焼成後、乳鉢を用いて手で粉砕して赤外蛍光体粉末P1~P14を得た。
この蛍光体を370nmに分光したXe光源で励起した場合の発光特性を表3に示す。なお、表3において、「発光ピーク波長」は、「最大ピーク波長」を示しており、発光半値全幅の単位は「nm」である。
【0071】
【表3】
【0072】
図3,4に、上記蛍光体P1~P14の発光スペクトルを示す。図3,4において、横軸は波長(nm)を示し、縦軸は蛍光強度(任意単位)を示す。なお、スペクトル測定には大塚電子製MCPD9800(311C型)を用いた。ここでは、370nmに分光したキセノンランプで励起した場合を示したが、これらの蛍光体は300~500nmの広い波長範囲で励起することが可能であり、励起波長を変えても同様の発光スペクトルが得られた。これらの蛍光体は700~850nmの範囲に発光ピーク(ピーク波長)を有し、近赤外領域の広範囲に亘る発光スペクトルを有する。これらの蛍光体は、発光イオンとして2価Euを用いており、5d-4f遷移による半値全幅100nm以上の幅広い発光スペクトルを有する。さらに製造した蛍光体の発光イオンは複数の配位環境にあるため、いくつかの発光ピークが重畳したスペクトルを表している。このため、発光スペクトル線幅は通常の5d-4f遷移型蛍光体に比べても広く、本製造例に示すように100~300nmに及ぶ半値全幅を得ることができた。複数の発光ピークの強度のバランスは製造組成により異なり、組成によっては700nm以下に最大ピークを有するものもあるが、700nm以上の波長領域においてサブピークが重畳しているのが特徴である。
【0073】
以上の製造例からLiSrLaSiEuの組成(ただし、a+b+c+d+e+f=100、0≦a≦8.22、0.22≦b≦17.33、1.12≦c≦11.36、22.41≦d≦38.09、49.47≦e≦56.09、0.88≦f≦1.01)の蛍光体を本発明の実施例に用いることができる。ただし、発光イオンEuの濃度は約1atm%としたが、一般的に蛍光体で使われる範囲である0.01~10atm%とすることができる。上記の設計範囲とすることで、発光強度が低下することを抑制することができ、産業機器用の発光素子としてより好ましく使用することができる。
【0074】
以下の実施例では、上述の製造例の内の蛍光体P8を用いて発光素子を作製した。この蛍光体は、発光線幅が広く、発光強度も高いため、発光素子に特に適しているといえるが、この他の組成の蛍光体を用いても本発明の目的を達成することが可能である。
この近赤外蛍光体P8の発光スペクトルを、分光器(光源:370nmに分光したキセノンランプ)を用いて測定したところ、680±3nm、776±3nmにピーク波長が測定された。この結果を図5に示した。
【0075】
可視蛍光体として、以下の蛍光体を用いた。
[可視蛍光体A1]式(A1-1)で表される蛍光体(分子式:C2422O)、ピーク波長405nm±3nm
【化2】
[可視蛍光体A2]YS:Eu及びZnS:Agの混合物、ピーク波長424±3nm
[可視蛍光体B]BaMgAl1117:Eu、ピーク波長452±3nm、459±3nm
[可視蛍光体C1-1]SrSiO:Eu、ピーク波長520±3nm
[可視蛍光体C1-2]SrSiO:Eu、ピーク波長593±3nm
[バインダー]シリコーン樹脂、信越化学工業株式会社製「KER-1930」
[分散剤]シリコーンナノパウダー、株式会社トクヤマ製、「レシオロール」
【0076】
[実施例1]
表4に示す蛍光体粉末とシリコーン樹脂とを、攪拌装置を用いて表1に記載の割合で混合し、蛍光体樹脂組成物a~eを作製した。樹脂組成物aを、SCHOTT社製の透明基材上で基材との間に隙間を設けたスキージをスライドさせて成膜し、熱硬化させた後に透明基材から剥がして、表1に記載の厚さの第1層を形成した。次いで、樹脂組成物bを、第1層と同様の方法で第2層を形成した。さらに同様の方法で樹脂組成物c、d、eを用いて第3層、第4層、第5層を形成し、それぞれの層の間にシリコーン樹脂を薄く塗布し、重ねあわせることで5種類の蛍光体がそれぞれ別の層に含まれる5層の蛍光膜を製作した。
凹部を有するセラミック製パッケージの凹部の底面に、銀ペースト製のダイアタッチ材を塗布し、その上に365nmにピーク波長を有する紫外線LEDチップ(1.1mm×1.1mm×高さ0.2mm、電流値500mA、放射束600mW以上)をマウントした。LEDチップの正極と負極がパッケージの正極と負極のそれぞれの電極パッドに繋がるように金ワイヤで接続した。LEDチップと並列に、静電保護素子を配置した。パッケージの凹部の開口部に上記の蛍光膜をシリコーン樹脂で取り付け、図1,2に示す構造を有する発光装置を作製した。
【表4】
【0077】
[実施例2]
表5に示す組成及び割合で蛍光膜を作製した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。この発光装置における蛍光膜は、7種類の蛍光体がそれぞれ別の層に含まれる7層構造を有している。
【表5】
【0078】
[実施例3]
表6に示す組成及び割合で蛍光膜を作製した以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。この発光装置における蛍光膜は、可視蛍光体A,Bがそれぞれ別の層に含まれており、近赤外蛍光体、可視蛍光体C1-1、C1-2が同じ層に含まれている3層構造を有している。
【表6】
【0079】
[比較例1]
近赤外蛍光体を含まないこと以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0080】
[比較例2]
近赤外蛍光体に替えて三菱ケミカル株式会社製の蛍光体「BR-101/N」(ピーク波長648nm、半値全幅88nm)を用いた以外は、実施例1と同様にして、発光装置を作製した。
【0081】
[発光スペクトル]
実施例及び比較例の発光装置の発光スペクトルを、分光器を用いて、Ta=25℃、IF=500mAの条件により測定した。実施例1,3の結果を図6に示した。実施例2の結果を図7に示した。比較例1,2と実施例1との比較を図8に示した。
図6,7に示すように、実施例1~3の発光装置は、780nmを超える領域にピーク波長を有している。中でも、実施例1,3の発光装置は、780nmを超える領域に、連続的な発光スペクトルにおいて最大の発光強度を得る波長を有している。
また、図6に示す実施例1のスペクトルにおいて、連続スペクトルの両端(350nm、1200nm)における蛍光強度は、800nm付近の最大強度に対してそれぞれ1.7%、1.9%であり、かつ、390nm付近の極小点における蛍光強度も8.2%であり、いずれも1.5%を上回っている。よって、この発光装置は、少なくとも、350nm以上1200nm以下の範囲に連続的な発光スペクトルを有している。同様に、実施例2,3の発光装置についても、少なくとも、350nm以上1200nmの広帯域に連続的な発光スペクトルを有していることが確認された。
さらに、実施例に示す発光装置は、10mWを超える放射束を達成することが確認された。よって、この発光装置は、紫外線領域から近赤外線領域まで広帯域の発光スペクトル分布を有するとともに、高輝度性、高集光性に優れており、通電時の発光応答性、発光強度の時間的変動、温度による波長シフト等も小さいので、それらの特性に関して問題点を有していた従来光源(ハロゲンランプ等)の代替素子として、産業機器用の発光装置に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0082】
10,100,101,102 発光装置
1,11,12,13 パッケージ
2,21,22a~22e,23a~23f 固体光源
3,30,31,32a~32e,33a~33g 蛍光膜
4 ワイヤ
5 電極パッド
6 静電保護素子
図1
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