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特許7428478拡散剤組成物、及び半導体基板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】拡散剤組成物、及び半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/225 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
H01L21/225 R
H01L21/225 D
H01L21/225 Q
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019098088
(22)【出願日】2019-05-24
(65)【公開番号】P2020194827
(43)【公開日】2020-12-03
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】久保 慧輔
(72)【発明者】
【氏名】澤田 佳宏
(72)【発明者】
【氏名】真下 峻一
【審査官】桑原 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-030011(JP,A)
【文献】国際公開第2020/116270(WO,A1)
【文献】特開2007-194306(JP,A)
【文献】特開2004-218028(JP,A)
【文献】特開2018-107434(JP,A)
【文献】国際公開第2020/158317(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/225
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板への不純物拡散に用いられる拡散剤組成物であって、
不純物拡散成分(A)と、アミン化合物(B)とを含み、
前記アミン化合物(B)が脂肪族アミンであり、前記アミン化合物(B)が有する第一級アミノ基の数をNAとし、前記アミン化合物(B)が有する第二級アミノ基の数をNBとし、前記アミン化合物(B)が有する第三級アミノ基の数をNCとする場合に、NA、NB、及びNCが下記式(1)及び(2):
(NB+NC)≧1・・・(1)
(NA+NB+NC)≧2・・・(2)
を満たし、
NB+NC<NAである場合、前記アミン化合物(B)において、第一級アミノ基が炭素原子数2以下の脂肪族炭化水素基に結合しており
前記アミン化合物(B)が下記式(B1)で表されるアミン化合物である、拡散剤組成物。
b1 b2 N-(-R b3 -NR b4 -) -R b5 ・・・(B1)
(上記式(B1)中、R b1 、R b2 、R b4 、及びR b5 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のヒドロキシアルキル基である。R b3 は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。mは1以上5以下の整数である。
mが2以上5以下の整数である場合、複数のR b3 は同一であっても異なっていてもよく、複数のR b4 は同一であっても異なっていてもよい。
mが1である場合、式(B1)において、R b1 、R b2 、R b4 、及びR b5 からなる群より選択される任意の2つの基が結合して環を形成しておらず、また、式(B1)で表されるアミン化合物は、2つの環を含んでいない。
mが2以上5以下の整数である場合、式(B1)において、R b1 、R b2 、R b4 、及びR b5 からなる群より選択される任意の2つの基が結合して環を形成してもよく、また、式(B1)で表されるアミン化合物は、2つの環を含んでいてもよい。)
【請求項2】
半導体基板への不純物拡散に用いられる拡散剤組成物であって、
不純物拡散成分(A)と、アミン化合物(B)とを含み、
前記アミン化合物(B)が脂肪族アミンであり、前記アミン化合物(B)が有する第一級アミノ基の数をNAとし、前記アミン化合物(B)が有する第二級アミノ基の数をNBとし、前記アミン化合物(B)が有する第三級アミノ基の数をNCとする場合に、NA、NB、及びNCが下記式(1)及び(2):
(NB+NC)≧1・・・(1)
(NA+NB+NC)≧2・・・(2)
を満たし、
NB+NC<NAである場合、前記アミン化合物(B)において、第一級アミノ基が炭素原子数2以下の脂肪族炭化水素基に結合しており
前記アミン化合物(B)が下記式(B1)で表されるアミン化合物である、拡散剤組成物。
b1 b2 N-(-R b3 -NR b4 -) -R b5 ・・・(B1)
(上記式(B1)中、R b1 、R b2 、R b4 、及びR b5 は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のヒドロキシアルキル基である。R b3 は、メチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、又はヘキサン-1,6-ジイル基である。mは1以上5以下の整数である。
mが2以上5以下の整数である場合、複数のR b3 は同一であっても異なっていてもよく、複数のR b4 は同一であっても異なっていてもよい。
式(B1)において、R b1 、R b2 、R b4 、及びR b5 からなる群より選択される任意の2つの基が結合して環を形成してもよい。また、式(B1)で表されるアミン化合物は、2つの環を含んでいてもよい。)
【請求項3】
半導体基板への不純物拡散に用いられる拡散剤組成物であって、
不純物拡散成分(A)と、アミン化合物(B)とを含み、
前記アミン化合物(B)が脂肪族アミンであり、前記アミン化合物(B)が有する第一級アミノ基の数をNAとし、前記アミン化合物(B)が有する第二級アミノ基の数をNBとし、前記アミン化合物(B)が有する第三級アミノ基の数をNCとする場合に、NA、NB、及びNCが下記式(1)及び(2):
(NB+NC)≧1・・・(1)
(NA+NB+NC)≧2・・・(2)
を満たし、
NB+NC<NAである場合、前記アミン化合物(B)において、第一級アミノ基が炭素原子数2以下の脂肪族炭化水素基に結合しており
前記アミン化合物(B)が、直鎖状又は分岐状の脂肪族アミン化合物である、拡散剤組成物。
【請求項4】
前記アミン化合物(B)が、直鎖状又は分岐状の脂肪族アミン化合物である、請求項1又は2に記載の拡散剤組成物。
【請求項5】
前記不純物拡散成分(A)が、ホウ素化合物、リン化合物、及びヒ素化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の拡散剤組成物。
【請求項6】
有機溶剤(S)を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の拡散剤組成物。
【請求項7】
半導体基板上に請求項1~のいずれか1項に記載の拡散剤組成物を塗布することによる塗布膜の形成と、
前記拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の、前記半導体基板への拡散と、を含む、半導体基板の製造方法。
【請求項8】
前記塗布膜を、700℃以上1200℃未満の温度で加熱して、前記不純物拡散成分(A)を前記半導体基板に拡散させる、請求項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項9】
前記塗布膜の膜厚が0.5nm以上30nm以下である、請求項又はに記載の半導体基板の製造方法。
【請求項10】
前記塗布膜の有機溶剤によるリンスを含む、請求項のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【請求項11】
前記半導体基板が、凸部と凹部とを備える立体構造を前記拡散剤組成物が塗布される面上に有する、請求項10のいずれか1項に記載の半導体基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不純物拡散成分として、半導体基板の表面に塗布することによる拡散層の形成が可能である拡散剤組成物と、当該拡散剤組成物を用いて形成される薄膜から半導体基板に不純物拡散成分を拡散させる、半導体基板の製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
トランジスタ、ダイオード、太陽電池等の半導体素子に用いられる半導体基板は、半導体基板にリンやホウ素等の不純物拡散成分を拡散させて製造されている。かかる半導体基板について、Fin-FET、ナノワイヤーFET等のマルチゲート素子用の半導体基板を製造する際には、例えばナノメートルスケールの微小な空隙を有する3次元構造をその表面に有する半導体基板に対して不純物の拡散が行われることがある。
【0003】
ここで、半導体基板に不純物拡散成分を拡散させる方法としては、例えば、イオン注入法(例えば特許文献1を参照)やCVD法(例えば特許文献2を参照)が知られている。イオン注入法では、イオン化された不純物拡散成分が半導体基板の表面に打ち込まれる。CVD法では、リンやホウ素等の不純物拡散成分がドープされたケイ素酸化物等の酸化物膜をCVDにより半導体基板上に形成した後、酸化物膜を備える半導体基板を電気炉等により加熱して、不純物拡散成分を酸化物膜から半導体基板に拡散される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平06-318559号公報
【文献】国際公開第2014/064873号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載されるようなイオン注入法では、半導体基板にイオンを注入する際に、イオンの種類によっては、基板の表面付近の領域に点欠陥や点欠陥クラスターが形成される場合がある。例えば、半導体基板にイオン注入法により不純物拡散成分を拡散させて、CMOSイメージセンサーのようのCMOS素子を形成する場合、このような欠陥の発生が素子の性能の低下に直結してしまう。
【0006】
また、半導体基板が、例えば、複数のソースのフィンと、複数のドレインのフィンと、それらのフィンに対して直交するゲートとを備える、Fin-FETと呼ばれるマルチゲート素子を形成するための立体構造のようなナノスケールの3次元構造を、その表面に有する場合、イオン注入法では、フィンやゲートの側面及び上面や、フィンとゲートとに囲まれた凹部の内表面全面に対する、均一なイオンの打ち込みが困難である。
【0007】
そして、ナノスケールの3次元構造を有する半導体基板に、イオン注入法により不純物拡散成分を拡散させる場合、仮に、均一なイオンの打ち込みが出来たとしても、以下のような不具合がある。例えば、微細なフィンを有する立体パターンを備える半導体基板を用いてロジックLSIデバイス等を形成する場合、イオン注入によってシリコン等の基板材料の結晶が破壊されやすい。かかる結晶のダメージは、デバイスの特性のバラツキや、待機リーク電流の発生のような不具合を招くと考えられる。
【0008】
また、特許文献2に記載されるようなCVD法を適用する場合、オーバーハング現象によって、フィンとゲートとに囲まれた凹部の内表面全面を、膜厚が均一な不純物拡散成分を含む酸化物膜で被覆することが困難であったり、フィンとゲートとに囲まれた凹部の開口部に堆積した酸化物により開口部が閉塞したりする問題がある。このように、イオン注入法やCVD法では、半導体基板の表面形状によっては、半導体基板に良好且つ均一に不純物拡散成分を拡散させることが困難である。
【0009】
かかる課題を解決するためには、塗布型の拡散剤組成物を用いることが考えられる。
ナノスケールの微小な空隙を有する三次元構造をその表面に備える基板において、微小な空隙の内表面全面を含む全表面に塗布型の拡散剤組成物を均一に塗布できれば、かかる立体的な表面を有する半導体基板において、不純物を均一に拡散させることができる。
しかし、ナノスケールの三次元構造上に拡散剤組成物を塗布する場合、拡散剤組成物からなる塗布膜の膜厚を薄くする必要がある。ところが、塗布型の拡散剤組成物を用いて極薄い塗布膜を形成する場合に、膜厚等のムラが少ない均一な塗布膜を形成しにくかったり、形成された塗布膜の安定性が低かったりする場合がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ムラが少なく均一であって、形成後の安定性に優れる塗布膜を形成できる拡散剤組成物と、当該拡散剤組成物を用いて形成された塗布膜から不純物拡散成分を半導体基板に拡散させる、半導体基板の製造方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、不純物拡散成分(A)を含む拡散剤組成物に、所定の条件を満たす脂肪族アミンをアミン化合物(B)として含有させることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0012】
本発明の第1の態様は、半導体基板への不純物拡散に用いられる拡散剤組成物であって、
不純物拡散成分(A)と、アミン化合物(B)とを含み、
アミン化合物(B)が脂肪族アミンであり、アミン化合物(B)が有する第一級アミノ基の数をNAとし、アミン化合物(B)が有する第二級アミノ基の数をNBとし、アミン化合物(B)が有する第三級アミノ基の数をNCとする場合に、NA、NB、及びNCが下記式(1)及び(2):
(NB+NC)≧1・・・(1)
(NA+NB+NC)≧2・・・(2)
を満たし、
NB+NC<NAである場合、アミン化合物(B)において、第一級アミノ基が炭素原子数2以下の脂肪族炭化水素基に結合している、拡散剤組成物である。
である。
【0013】
本発明の第2の態様は、半導体基板上に第1の態様にかかる拡散剤組成物を塗布することによる塗布膜の形成と、
拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の、半導体基板への拡散と、を含む、半導体基板の製造方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ムラが少なく均一であって、形成後の安定性に優れる塗布膜を形成できる拡散剤組成物と、当該拡散剤組成物を用いて形成された塗布膜から不純物拡散成分を半導体基板に拡散させる、半導体基板の製造方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪拡散剤組成物≫
拡散剤組成物は、半導体基板への不純物拡散に用いられる拡散剤組成物であって、不純物拡散成分(A)を含む。
不純物拡散成分(A)は、半導体基板の表面に塗布することにより拡散層を形成可能である。
【0016】
拡散剤組成物は、不純物拡散成分(A)とともに、脂肪族アミンであるアミン化合物(B)を含む。かかるアミン化合物(B)は、後述する所定の条件を満たす。このようなアミン化合物(B)を、不純物拡散成分(A)とともに拡散剤組成物に含有させることによって、不純物拡散剤組成物を用いてムラが少なく均一であって、形成後の安定性に優れる塗布膜を形成できる。
【0017】
以下、拡散剤組成物が含む、必須又は任意の成分について説明する。
【0018】
〔不純物拡散成分(A)〕
不純物拡散成分(A)は、従来から半導体基板へのドーピングに用いられている成分であれば特に限定されず、n型ドーパントであっても、p型ドーパントであってもよい。n型ドーパントとしては、リン、ヒ素、及びアンチモン等の単体、並びにこれらの元素を含む化合物が挙げられる。p型ドーパントとしては、ホウ素、ガリウム、インジウム、及びアルミニウム等の単体、並びにこれらの元素を含む化合物が挙げられる。
【0019】
不純物拡散成分(A)としては、入手の容易性や取扱いが容易であることから、リン化合物、ホウ素化合物、又はヒ素化合物が好ましい。リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ジ亜リン酸、ポリリン酸、及び五酸化二リンや、亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、亜リン酸トリス(トリアルキルシリル)、及びリン酸トリス(トリアルキルシリル)等が挙げられる。ホウ素化合物としては、ホウ酸、メタホウ酸、ボロン酸、過ホウ酸、次ホウ酸、三酸化二ホウ素、ホウ酸トリアルキル、テトラヒドロキシジボラン、モノアルコキシトリヒドロキシジボラン、ジアルコキシジヒドロキシジボラン、トリアルコキシモノヒドロキシジボラン、及びテトラアルコキシジボランが挙げられる。ヒ素化合物としては、ヒ酸、及びヒ酸トリアルキルが挙げられる。
【0020】
リン化合物としては、亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、亜リン酸トリス(トリアルキルシリル)、及びリン酸トリス(トリアルキルシリル)が好ましく、その中でもリン酸トリメチル、リン酸トリエチル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、リン酸トリス(トリメチルシリル)、及び亜リン酸トリス(トリメチルシリル)が好ましく、リン酸トリメチル、亜リン酸トリメチル、及びリン酸トリス(トリメチルシリル)がより好ましく、リン酸トリメチルが特に好ましい。
【0021】
ホウ素化合物としては、ホウ酸、トリメトキシホウ素、トリエトキシホウ素、トリn-プロポキシホウ素、トリイソプロポキシホウ素、トリn-ブトキシホウ素、トリメチルホウ素、トリエチルホウ素、及びテトラヒドロキシジボランが好ましい。
【0022】
ヒ素化合物としては、ヒ酸、トリエトキシヒ素、及びトリ-n-ブトキシヒ素が好ましい。
【0023】
拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の含有量は特に限定されない。拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.02質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上1質量%以下が特に好ましい。
【0024】
〔アミン化合物(B)〕
拡散剤組成物はアミン化合物(B)を含有する。アミン化合物(B)は脂肪族アミンである。ここで芳香族基を有さないアミン化合物を脂肪族アミンとする。
アミン化合物(B)について、アミン化合物(B)が有する第一級アミノ基の数をNAとし、アミン化合物(B)が有する第二級アミノ基の数をNBとし、アミン化合物(B)が有する第三級アミノ基の数をNCとする場合に、NA、NB、及びNCが下記式(1)及び(2):
(NB+NC)≧1・・・(1)
(NA+NB+NC)≧2・・・(2)
を満たす。
拡散剤組成物が不純物拡散成分(A)とともに、前述の所定の条件を満たすアミン化合物(B)を含むことにより、拡散剤組成物を用いて経時的な安定性に優れる薄膜を形成できる。
【0025】
なお、NB+NC<NAである場合、アミン化合物(B)において、第一級アミノ基が炭素原子数2以下の脂肪族炭化水素基に結合している。
比較的鎖長が長い脂肪族炭化水素基に立体障害の小さい第一級アミノ基が結合する場合、第一級アミノ基の立体的な自由度が高い。また、NB+NC<NAである場合、アミン化合物が2以上の第一級アミノ基を有する。詳細な理由は不明であるが、第一級アミノ基についての上記の条件を満たすことにより、立体的な自由度が高い第一級アミノ基の数を制限することで、成膜性や膜の安定性が向上すると思われる。
【0026】
アミン化合物(B)、直鎖状又は分岐状の脂肪族アミンであってもよく、環式骨格を有する脂肪族アミンであってもよい。アミン化合物(B)の使用による所望する効果を得やすいことから、アミン化合物(B)は、直鎖状又は分岐状の脂肪族アミン化合物であるのが好ましい。
【0027】
アミン化合物(B)は、炭素-炭素不飽和結合を含んでいてもよい。拡散剤組成物の安定性の点等から、アミン化合物(B)は、炭素-炭素不飽和結合を含まないのが好ましい。
【0028】
アミン化合物(B)としては、NA、NB、及びNCに関する上記の条件を満たし、且つ、下記式(B1)で評されるアミン化合物が好ましい。
b1b2N-(-Rb3-NRb4-)-Rb5・・・(B1)
【0029】
式(B1)中、Rb1、Rb2、Rb4、及びRb5は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上6以下のヒドロキシアルキル基である。Rb3は、炭素原子数1以上6以下のアルキレン基である。mは1以上5以下の整数であり、1以上3以下の整数であるのが好ましい。
mが2以上5以下の整数である場合、複数のRb3は同一であっても異なっていてもよく、複数のRb4は同一であっても異なっていてもよい。
式(B1)において、Rb1、Rb2、Rb4、及びRb5からなる群より選択される任意の2つの基が結合して環を形成してもよい。また、式(B1)で表されるアミン化合物は、2つの環を含んでいてもよい。
【0030】
b1、Rb2、Rb4、及びRb5としてのアルキル基の炭素原子数は、1以上6以下であり、1以上4以下が好ましい。
b1、Rb2、Rb4、及びRb5としてのアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、及びn-ヘキシル基が挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基が好ましい。
【0031】
b1、Rb2、Rb4、及びRb5としてのヒドロキシアルキル基の炭素原子数は、1以上6以下であり、1以上4以下が好ましい。
b1、Rb2、Rb4、及びRb5としてのヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル基(メチロール基)、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシ-n-プロピル基、4-ヒドロキシ-n-ブチル基、5-ヒドロキシ-n-ペンチル基、及び6-ヒドロキシ-n-ヘキシル基が挙げられる。これらの中では、2-ヒドロキシエチル基、及び3-ヒドロキシ-n-プロピル基が好ましい。
【0032】
b3としてのアルキレン基の炭素原子数は、1以上6以下であり、1以上4以下が好ましい。
b3としてのアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、及びヘキサン-1,6-ジイル基が挙げられる。これらの中では、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、及びプロパン-1,3-ジイル基が好ましい。
【0033】
アミン化合物(B)の好適な具体例としては、N-メチルエチレンジアミン、N-エチルエチレンジアミン、N-n-プロピルエチレンジアミン、N-イソプロピルエチレンジアミン、N-n-ブチルエチレンジアミン、N-イソブチルエチレンジアミン、N-sec-ブチルエチレンジアミン、N-tert-ブチルエチレンジアミン、N-メチル-1,3-プロパンジアミン、N-エチル-1,3-プロパンジアミン、N-n-プロピル-1,3-プロパンジアミン、N-イソプロピル-1,3-プロパンジアミン、N-n-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N-イソブチル-1,3-プロパンジアミン、N-sec-ブチル-1,3-プロパンジアミン、及びN-tert-ブチル-1,3-プロパンジアミン等のN-アルキルアルカンジアミン;
N,N-ジメチルエチレンジアミン、N,N-ジエチルエチレンジアミン、N,N-ジ-n-プロピルエチレンジアミン、N,N-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N-ジ-n-ブチルエチレンジアミン、N,N-ジイソブチルエチレンジアミン、N,N-ジ-sec-ブチルエチレンジアミン、N,N-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン、N,N-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジ-n-プロピル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジイソプロピル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジイソブチル-1,3-プロパンジアミン、N,N-ジ-sec-ブチル-1,3-プロパンジアミン、及びN,N-ジ-tert-ブチル-1,3-プロパンジアミン等のN,N-ジアルキルアルカンジアミン;
N,N’-ジメチルエチレンジアミン、N,N’-ジエチルエチレンジアミン、N,N’-ジ-n-プロピルエチレンジアミン、N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N’-ジ-n-ブチルエチレンジアミン、N,N’-ジイソブチルエチレンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチルエチレンジアミン、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン、N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジエチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジ-n-プロピル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジイソプロピル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジ-n-ブチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジイソブチル-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ジ-sec-ブチル-1,3-プロパンジアミン、及びN,N’-ジ-tert-ブチル-1,3-プロパンジアミン等のN,N’-ジアルキルアルカンジアミン;
ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、3,3-ジアミノジプロピルアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)-1,3-プロパンジアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、及びトリス(3-アミノプロピル)アミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、及びN-(3-アミノプロピル)ピペラジン等の3以上の窒素原子を有する脂肪族アミン類;
N-(2-アミノエチル)エタノールアミン、N,N-ビス(2-アミノエチル)エタノールアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N-(3-アミノプロピル)エタノールアミン、N,N-ビス(3-アミノプロピル)エタノールアミン、及びN,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-1,3-プロパンジアミン等のヒドロキシアルキルアミン類;及び
ピペラジン、N-メチルピペラジン、及びN-エチルピペラジン等の環式骨格を有する脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0034】
アミン化合物(B)は、1種を単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0035】
拡散剤組成物中のアミン化合物(B)の含有量は、アミン化合物(B)の使用による所望する効果が得られる限り特に限定されない。拡散剤組成物中のアミン化合物(B)の含有量は、0.01質量%以上20質量%以下が好ましく、0.02質量%以上5質量%以下がより好ましく、0.03質量%以上1質量%以下が特に好ましい。
上記の範囲内の量のアミン化合物(B)を用いる場合、パーティクルの発生等に起因する膜の不均一化、及びアミンの析出による膜質の劣化を抑制しやすい。
【0036】
〔加水分解性シラン化合物(C)〕
拡散剤組成物は、加水分解性シラン化合物(C)を含有していてもよい。拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(C)を含む場合、拡散剤組成物を半導体基板に塗布して薄膜を形成する際に、加水分解性シラン化合物が加水分解縮合して、塗布膜内にケイ素酸化物系の極薄い膜が形成される。塗布膜内に、ケイ素酸化物系の極薄い膜が形成される場合、前述の不純物拡散成分(A)の基板外への外部拡散が抑制され、拡散剤組成物からなる膜が薄膜であっても、良好且つ均一に半導体基板に不純物拡散成分(A)を拡散させやすい。
【0037】
加水分解性シラン化合物(C)は、加水分解により水酸基を生成させ、且つSi原子に結合する官能基を有する。加水分解により水酸基を生成させる官能基としては、アルコキシ基、イソシアネート基、ジメチルアミノ基及びハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基としては、炭素原子数1以上5以下の、直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましい。好適なアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn-ブトキシ基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0038】
加水分解により水酸基を生成させる官能基としては、速やかに加水分解されやすいことと、加水分解性シラン化合物(C)の取り扱い性や入手の容易性の点から、イソシアネート基、及び炭素原子数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、及びイソシアネート基がより好ましい。
【0039】
炭素原子数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(C)の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-n-ペンチルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、モノメトキシトリエトキシシラン、トリメトキシモノ-n-プロポキシシラン、ジメトキシジ-n-プロポキシラン、モノメトキシトリ-n-プロポキシシラン、トリメトキシモノ-n-ブトキシシラン、ジメトキシジ-n-ブトキシシラン、モノメトキトリ-n-トリブトキシシラン、トリメトキシモノ-n-ペンチルオキシシラン、ジメトキシジ-n-ペンチルオキシシラン、モノメトキシトリ-n-ペンチルオキシシラン、トリエトキシモノ-n-プロポキシシラン、ジエトキシジ-n-プロポキシシラン、モノエトキシトリ-n-プロポキシシラン、トリエトキシモノ-n-ブトキシシラン、ジエトキシジ-n-ブトキシシラン、モノエトキシトリ-n-ブトキシシラン、トリエトキシモノ-n-ペンチルオキシシラン、ジエトキシジ-n-ペンチルオキシシラン、モノエトキシトリ-n-ペンチルオキシシラン、トリ-n-プロポキシモノ-n-ブトキシシラン、ジ-n-プロポキシジ-n-ブトキシシラン、モノ-n-プロポキシトリ-n-プロポキシシラン、トリ-n-プロポキシモノ-n-ペンチルオキシシラン、ジ-n-プロポキシジ-n-ペンチルオキシシラン、モノ-n-プロポキシトリ-n-ペンチルオキシシラン、トリ-n-ブトキシモノ-n-ペンチルオキシシラン、ジ-n-ブトキシジ-n-ペンチルオキシシラン、モノ-n-ブトキシトリ-n-ペンチルオキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-n-プロポキシシラン、メチルトリ-n-ブトキシシラン、メチルトリ-n-ペンチルオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリ-n-プロポキシシラン、エチルトリ-n-ブトキシシラン、及びエチルトリ-n-ペンチルオキシシランが挙げられる。これらの加水分解性シラン化合物(C)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記のアルコキシシラン化合物の部分加水分解縮合物も加水分解性シラン化合物(C)として使用できる。
【0040】
これらの中では、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、及びエチルトリエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシラン、及びテトラエトキシシランが特に好ましい。
【0041】
イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(C)としては、下記式(c1)で表される化合物が好ましい。
(Rc14-nSi(NCO)・・・(c1)
(式(c1)中、Rc1は炭化水素基であり、nは3又は4の整数である。)
【0042】
式(c1)中のRc1としての炭化水素基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rc1としては、炭素原子数1以上12以下の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6以上12以下の芳香族炭化水素基、炭素原子数7以上12以下のアラルキル基が好ましい。
【0043】
炭素原子数1以上12以下の脂肪族炭化水素基の好適な例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、及びn-ドデシル基が挙げられる。
【0044】
炭素原子数6以上12以下の芳香族炭化水素基の好適な例としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、及びビフェニリル基が挙げられる。
【0045】
炭素原子数7以上12以下のアラルキル基の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、2-α-ナフチルエチル基、及び2-β-ナフチルエチル基が挙げられる。
【0046】
以上説明した炭化水素基の中では、メチル基、エチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0047】
式(b1)で表される加水分解性シラン化合物(C)の中では、テトライソシアネートシラン、メチルトリイソシアネートシラン、及びエチルトリイソシアネートシランが好ましく、テトライソシアネートシランがより好ましい。
【0048】
なお、イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(C)と、炭素原子数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(C)とを併用することもできる。この場合、イソシアネート基を有する加水分解性シラン化合物(C)のモル数Xと、炭素原子数1以上5以下の直鎖又は分岐鎖状の脂肪族アルコキシ基を有する加水分解性シラン化合物(C)のモル数Yとの比率X/Yは、1/99~99/1が好ましく、50/50~95/5がより好ましく、60/40~90/10が特に好ましい。
【0049】
拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(C)を含む場合の、拡散剤組成物中の加水分解性シラン化合物(C)の含有量は特に限定されないが、Siの濃度として、0.001質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.01質量%以上1.0質量%以下がより好ましい。拡散剤組成物がこのような濃度で加水分解性シラン化合物(C)を含有することにより、拡散剤組成物を用いて形成された薄い塗布膜からの不純物拡散成分(A)の外部拡散を良好に抑制しやすく、不純物拡散成分(A)を良好且つ均一に半導体基板に拡散させやすい。
【0050】
〔有機溶剤(S)〕
拡散剤組成物は、通常、薄膜の塗布膜を形成できるように、溶媒として有機溶剤(S)を含む。有機溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
【0051】
また、拡散剤組成物が、加水分解性シラン化合物(B)を含む場合、拡散剤組成物は実質的に水を含まないのが好ましい。拡散剤組成物中が実質的に水を含まないとは、加水分解性シラン化合物(B)が、その添加による所望する効果が得られない程度まで加水分解されてしまう量の水を、拡散剤組成物が含有しないことを意味する。
【0052】
有機溶剤(S)の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、及びトリプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール類のモノエーテル;ジイソペンチルエーテル、ジイソブチルエーテル、ベンジルメチルエーテル、ベンジルエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、パーフルオロ-2-ブチルテトラヒドロフラン、及びパーフルオロテトラヒドロフラン等のモノエーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジプロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジプロピルエーテル、及びジプロピレングリコールジブチルエーテル等のグリコール類の鎖状ジエーテル類;1,4-ジオキサン等の環状ジエーテル類;1-オクタノン、2-オクタノン、1-ノナノン、2-ノナノン、アセトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、1-ヘキサノン、2-ヘキサノン、3-ペンタノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、及びイソホロン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、メトキシ酢酸エチル、エトキシ酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、2-メトキシブチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、4-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-エチル-3-メトキシブチルアセテート、2-エトキシブチルアセテート、4-エトキシブチルアセテート、4-プロポキシブチルアセテート、2-メトキシペンチルアセテート、3-メトキシペンチルアセテート、4-メトキシペンチルアセテート、2-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-3-メトキシペンチルアセテート、3-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、4-メチル-4-メトキシペンチルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、炭酸エチル、炭酸プロピル、炭酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、ピルビン酸ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、メチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-メトキシプロピオネート、エチル-3-エトキシプロピオネート、プロピル-3-メトキシプロピオネート、及びイソプロピル-3-メトキシプロピオネート、プロピレンカーボネート、及びγ-ブチロラクトン等のエステル類;N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の活性水素原子を持たないアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類;ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、2,2,4-トリメチルペンタン、2,2,3-トリメチルヘキサン、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン、リモネン、及びピネン等のハロゲンを含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、1-メチルプロピルベンゼン、2-メチルプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、及びジプロピルベンゼン等の芳香族炭化水素系溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、及び2-フェノキシエタノール等の1価アルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、及びジプロピレングリコール等のグリコール類が挙げられる。なお、上記の好ましい有機溶剤(S)の例示において、エーテル結合とエステル結合とを含む有機溶剤はエステル類に分類される。これらは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
拡散剤組成物が加水分解性シラン化合物(C)を含む場合、有機溶剤(S)は、加水分解性シラン化合物(C)と反応する官能基を持たないものが好ましく使用される。特に加水分解性シラン化合物(C)がイソシアネート基を有する場合、加水分解性シラン化合物(C)と反応する官能基を持たない有機溶剤(S)を用いるのが好ましい。
【0054】
加水分解性シラン化合物(C)と反応する官能基には、加水分解により水酸基を生成し得る基と直接反応する官能基と、加水分解により生じる水酸基(シラノール基)と反応する官能基との双方が含まれる。加水分解性シラン化合物(C)と反応する官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシ基、アミノ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0055】
加水分解性シラン化合物(C)と反応する官能基を持たない有機溶剤の好適な例としては、上記の有機溶剤(S)の具体例のうち、モノエーテル類、鎖状ジエーテル類、環状ジエーテル類、ケトン類、エステル類、活性水素原子を持たないアミド系溶剤、スルホキシド類、ハロゲンを含んでいてもよい脂肪族炭化水素系溶剤、及び芳香族炭化水素系溶剤の具体例として列挙された有機溶剤が挙げられる。
【0056】
〔その他の成分〕
拡散剤組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘度調整剤等の種々の添加剤を含んでいてもよい。また、拡散剤組成物は、塗布性や、製膜性を改良する目的でバインダー樹脂を含んでいてもよい。バインダー樹脂としては種々の樹脂を用いることができ、アクリル樹脂が好ましい。
【0057】
それぞれ所定量の以上説明した成分を均一に混合することにより、拡散剤組成物が得られる。
【0058】
≪半導体基板の製造方法≫
半導体基板の製造方法は、
半導体基板上に前述の拡散剤組成物を塗布することによる塗布膜の形成と、
拡散剤組成物中の不純物拡散成分(A)の、半導体基板への拡散と、を含む方法が好ましい。
以下、塗布膜の形成について「塗布工程」とも記し、不純物拡散成分(A)の半導体基板への拡散を「拡散工程」とも記す。
また、塗布膜を備える半導体基板を、拡散温度よりも低い温度条件下に所定の時間処理する拡散前加熱処理工程を、塗布工程と拡散工程との間に実施してもよい。
【0059】
<塗布工程>
塗布工程では、半導体基板上に前述の拡散剤組成物を塗布して塗布膜を形成する。拡散剤組成物を塗布する方法は、所望の膜厚の塗布膜を形成できる限り特に限定されない。拡散剤組成物の塗布方法としては、スピンコート法、インクジェット法、及びスプレー法が好ましく、スピンコート法が特に好ましい。
【0060】
拡散剤組成物を用いて形成される塗布膜の膜厚は特に限定されない。塗布膜の膜厚は、0.5nm以上30nm以下が好ましく、1nm以上10nm以下がより好ましい。
なお、塗布膜の膜厚は、エリプソメーターを用いて測定された5点以上の膜厚の平均値である。
【0061】
不純物拡散成分(A)を拡散させる半導体基板としては、従来から不純物拡散成分を拡散させる対象として用いられている種々の基板を特に制限なく用いることができる。半導体基板としては、典型的にはシリコン基板が用いられる。シリコン基板は、拡散剤組成物に含まれる不純物拡散成分(A)の種類に応じて、n型シリコン基板と、p型シリコン基板とから適宜選択される。
シリコン基板等の半導体基板は、表面が自然に酸化されることにより形成される自然酸化膜を備えることが多い。例えばシリコン基板は、主にSiOからなる自然酸化膜を備えることが多い。
半導体基板に、不純物拡散成分(A)を拡散させる場合、必要に応じて、フッ化水素酸の水溶液等を用いて、半導体基板表面の自然酸化膜が除去される。
【0062】
半導体基板は、凸部と凹部とを有する立体構造を拡散剤組成物が塗布される面上に有していてもよい。前述の拡散剤組成物を用いると、半導体基板がこのような立体構造、特に、ナノスケールの微小なパターンを備える立体構造をその表面に有する場合であっても、例えば30nm以下の薄い塗布膜を、半導体基板の立体構造上に均一に形成しやすい。
【0063】
パターンの形状は特に限定されないが、典型的には、断面の形状が矩形である直線状又は曲線状のライン又は溝や、ホール形状が挙げられる。
【0064】
拡散剤組成物を半導体基板表面に塗布した後に、半導体基板の表面を有機溶剤によりリンスするのも好ましい。塗布膜の形成後に、半導体基板の表面をリンスすることにより、塗布膜の膜厚をより均一にすることができる。特に、半導体基板がその表面に立体構造を有するものである場合、立体構造の底部(段差部分)で塗布膜の膜厚が厚くなりやすい。しかし、塗布膜の形成後に半導体基板の表面をリンスすることにより、塗布膜の膜厚を均一化できる。
【0065】
リンスに用いる有機溶剤としては、拡散剤組成物が含有していてもよい前述の有機溶剤を用いることができる。
【0066】
〔拡散前加熱処理工程〕
拡散前加熱処理工程では、塗布膜の形成後から、不純物拡散成分(A)の拡散の開始の間に、半導体基板に対して拡散温度よりも低い温度条件下での加熱処理を行う。
かかる加熱処理の条件は、好ましくは、450℃以上700℃未満、5秒以上1分以下である。拡散前加熱処理は好ましくは一定の温度で行われる。
【0067】
塗布膜を備える半導体基板を、拡散温度よりも低い温度条件下に、所定の時間処理する場合、不純物拡散成分(A)の種類によっては、不純物拡散成分(A)の昇華を抑制し、不純物拡散成分(A)の拡散性(面内均一性や抵抗値)を向上できる場合がある。
拡散前加熱処理工程の実施は、不純物拡散成分(A)がホウ素化合物である場合に特に有効である。不純物拡散成分(A)中の、ホウ素が酸化されてホウ酸ガラス化することにより、ホウ素が膜として固定されやすくなると考えられる。
【0068】
拡散前加熱処理において、好ましい温度は、例えば、450℃以上700℃未満の範囲内が好ましく、500℃以上690℃以下の範囲内がより好ましく、500℃以上670℃以下の範囲内が特に好ましい。
【0069】
拡散前加熱処理工程による不純物拡散性の向上の効果と、半導体基板の製造効率とのバランスの点から、拡散前加熱処理における加熱処理時間は、5秒以上45秒以下が好ましく、10秒以上30秒以下がより好ましい。
【0070】
〔拡散工程〕
拡散工程では、拡散剤組成物を用いて半導体基板上に形成された薄い塗布膜中の不純物拡散成分(A)を半導体基板に拡散させる。不純物拡散成分(A)を半導体基板に拡散させる方法は、加熱により拡散剤組成物からなる塗布膜から不純物拡散成分(A)を拡散させる方法であれば特に限定されない。
なお、本願明細書では、「拡散工程」を所定の拡散温度に到達した時点から、拡散時間(拡散温度の保持時間)が経過するまでの間の工程とする。
【0071】
典型的な方法としては、拡散剤組成物からなる塗布膜を備える半導体基板を電気炉等の加熱炉中で加熱する方法が挙げられる。この際、加熱条件は、所望する程度に不純物拡散成分(A)が拡散される限り特に限定されない。
【0072】
不純物拡散成分(A)を拡散させる際の加熱は、好ましくは700℃以上1400℃以下、より好ましくは700℃以上1200℃未満の温度下において、好ましくは1秒以上20分以下の間、より好ましくは1秒以上1分以下の間行われる。
【0073】
また、25℃/秒以上の昇温速度で半導体基板を速やかに所定の拡散温度まで昇温させることができる場合、拡散時間(拡散温度の保持時間)は、30秒以下、10秒以下、5秒以下、3秒以下、2秒以下、又は1秒未満のようなごく短時間であってもよい。拡散時間の下限は、所望する程度に不純物拡散成分を拡散させることができる限り特に限定されない。拡散時間の下限は、例えば、0.05秒以上、0.1秒以上、0.2秒以上、0.3秒以上、又は0.5秒以上であってよい。この場合、半導体基板表面の浅い領域において、高濃度で不純物拡散成分(A)を拡散させやすい。
【0074】
拡散工程において、半導体基板の加熱を行う際の半導体基板の周囲の雰囲気について、酸素濃度が1体積%以下の雰囲気であるのが好ましい。雰囲気の酸素濃度は、0.5体積%以下がより好ましく、0.3体積%以下がさらに好ましく、0.1体積%以下が特に好ましく、酸素が含まれないことが最も好ましい。
雰囲気中の酸素濃度は、拡散工程より前の工程における任意のタイミングにて、所望する濃度に調整される。
酸素濃度の調整方法は特に限定されない。酸素濃度の調整方法としては、半導体基板の加熱を行う装置内に、窒素ガス等の不活性ガスを流通させて、装置内の酸素を不活性ガスとともに装置外に排出する方法が挙げられる。この方法では、不活性ガスを流通させる時間を調整することにより、装置内の酸素濃度を調整出来る。不活性ガスを流通させる時間が長い程、装置内の酸素濃度が低下する。
低酸素濃度の雰囲気で拡散を行う場合、半導体基板表面に酸素により形成される酸化ケイ素が形成しにくいと考えられる。その結果、不純物拡散成分(A)がケイ素を主体とする基板に拡散しやすくなり、不純物拡散成分(A)の拡散の面内均一性が向上する。
【0075】
上記の拡散工程後には、半導体基板の不純物拡散成分(A)が拡散した面や、当該面の近傍に、不純物拡散成分(A)に由来する残渣物が付着したり、不純物拡散成分を過度に高濃度で含む高濃度層が形成されたりする場合がある。
かかる残渣物の付着や、高濃度層の形成は、拡散工程を経て得られた半導体基板を用いて半導体デバイスを製造する場合に、製造される半導体デバイスの性能に悪影響を与える場合がある。
このため、拡散工程後には、残渣物や高濃度層を除去する処理を行うのが好ましい。
【0076】
拡散工程後の好ましい処理としては、半導体基板表面に対して、フッ化水素酸(HF)水溶液を接触させる処理が挙げられる。かかる処理によれば、半導体基板表面に付着する残渣物を除去することができる。
フッ化水素酸の水溶液の濃度は、残渣物を除去できる限り特に限定されない。フッ化水素酸の水溶液の濃度は、例えば、0.05質量%以上5質量%以下が好ましく、0.1質量%以上1質量%以下がより好ましい。
半導体基板表面と、フッ化水素酸の水溶液とを接触させる温度は、残渣物を除去できる限り特に限定されない。半導体基板表面と、フッ化水素酸の水溶液とを接触させる温度は、例えば、20℃以上40℃以下が好ましく、23℃以上30℃以下がより好ましい。
半導体基板表面と、フッ化水素酸の水溶液とを接触させる時間は、残渣物を除去でき、半導体基板に許容できないダメージが生じない限り特に限定されない。半導体基板表面と、フッ化水素酸の水溶液とを接触させる時間は、例えば、15秒以上5分以下が好ましく、30秒以上1分以下がより好ましい。
【0077】
また、上記のフッ化水素酸の水溶液を接触させる処理の前に、半導体基板表面に対して、プラズマアッシングを行うのも好ましい。かかる処理によれば、残渣物に加えて、半導体基板表面又は半導体基板表面の近傍に形成された高濃度層を除去することができる。
プラズマアッシングとしては、酸素含有ガスを用いるプラズマアッシングが好ましく、酸素プラズマアッシングがより好ましい。
酸素プラズマの発生に用いられるガスには、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来、酸素とともにプラズマ処理に用いられている種々のガスを混合することができる。かかるガスとしては、例えば、窒素ガス、水素ガス等が挙げられる。
プラズマアッシングの条件は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
【0078】
以上説明した方法によれば、拡散剤組成物を用いて、薄く且つ形成後の安定性に優れる塗布膜を形成しつつ、半導体基板に良好且つ均一に不純物拡散成分を拡散させやすい。
このため、上記の製造方法は、表面が平坦な半導体基板の製造のみならず、微小な立体的な構造を有するマルチゲート素子の製造に用いられる半導体基板の製造に好適に適用できる。本発明にかかる方法は、特に、CMOSイメージセンサー用のCMOS素子や、ロジックLSIデバイス等の半導体素子の製造に好適に適用できる。
【実施例
【0079】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0080】
〔実施例1~実施例52、及び比較例2~比較例18〕
実施例1~実施例52、及び比較例2~比較例18において、不純物拡散成分(A)((A)成分)として、下記のA1~A5を用いた。
A1:ホウ酸
A2:三酸化ホウ素
A3:テトラヒドロキシジボラン
A4:トリn-ブトキシホウ素
A5:トリメトキシホウ素
【0081】
実施例1~実施例52において、アミン化合物(B)((B)成分)として、下記のB1~B13を用いた。
B1:N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミン(NA:0、NB:2、NC:0)
B2:N-(2-アミノエチル)エタノールアミン(NA:1、NB:1、NC0)
B3:ピペラジン(6水和物)(NA:0、NB:2、NC:0)
B4:トリエチレンテトラミン(NA:2、NB:2、NC:0)
B5:N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(NA:2、NB:2、NC:0)
B6:N,N’-ジメチルエチレンジアミン(NA:0、NB:2、NC:0)
B7:N,N’-ジイソプロピルエチレンジアミン(NA:0、NB:2、NC:0)
B8;N,N’-ジメチル-1,3-プロパンジアミン(NA:0、NB:2、NC:0)
B9:ジエチレントリアミン(NA:2、NB:1、NC:0)
B10:テトラエチレンペンタミン(NA2;NB3、NC:0)
B11;N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン(NA:2、NB:2、NC:0)
B12:トリス(2-アミノエチル)アミン(NA:3、NB:0、NC:1)
B13:N-(2-アミノエチル)ピペラジン(NA:1、NB1:NC:1)
【0082】
比較例2~比較例18において、アミン化合物として、下記のB’1~B’6を用いた。
B’1:tert-ブチルアミン(NA:1、NB:0、NC:0)
B’2:ジエチルアミン(NA:0、NB:1、NC:0)
B’3:トリエチルアミン(NA:0、NB:0、NC:1)
B’4:イミダゾール
B’5:1-メチルイミダゾール
B’6:モノエタノールアミン(NA:1、NB:0、NC:0)
【0083】
実施例1~実施例52、及び比較例2~比較例18において、有機溶剤(S)((S)成分)として、下記のS1、及びS2を用いた。
S1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート70質量%と、プロピレングリコールモノメチルエーテル30質量%とからなる混合溶剤
S2:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0084】
表1~表4に記載の種類の不純物拡散成分(A)と、表1~表4に記載の種類のアミン化合物(B)又はアミン化合物(B)に該当しないアミン化合物とを、それぞれ表1~4に記載の濃度となるように、表1~4に記載の種類の有機溶剤(S)に溶解させて、各実施例及び比較例の拡散剤組成物を調製した、
なお、比較例1ではアミン化合物を用いなかった。
【0085】
平坦な表面を備えるシリコン基板(6インチ、n型)の表面に、スピンコーターを用いて拡散剤組成物をそれぞれ塗布して塗布膜を形成した。膜形成条件として、スピンコーターの回転数(rpm)と、塗布後の有機溶剤によるリンスの有無と、塗布後又はリンス後のベークの有無及びベーク条件とを、表1~表4に記す。
実施例7では、スピンコーターによる塗布後にプロピレングリコールモノメチルエーテルによるリンスを行った。
実施例28、実施例31、比較例2、比較例4、比較例7、比較例10、比較例13、及び比較例16では、スピンコーターによる塗布後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートによるリンスを行った。
実施例45、実施例47、実施例49、及び実施例51では、スピンコーターによる塗布後に前述の有機溶剤S1によるリンスを行った。
【0086】
以上の方法により形成された塗布膜について、膜厚を測定した。また、実施例1~4、実施例6、実施例8~24、実施例26、実施例29、実施例33、35~37、実施例40~52、及び比較例18については、下記の方法により塗布膜の安定性を評価した。
具体的には、形成された塗布膜を、クリーンルーム(常温常圧)の環境に24時間置いた後に再度塗布膜の膜厚を測定し、以下の基準に従い塗布膜の安定性を評価した。
◎:24時間静置後の塗布膜の膜厚が、形成直後の塗布膜の膜厚の90%以上である。
〇:24時間静置後の塗布膜の膜厚が、形成直後の塗布膜の膜厚の70%以上90%未満である。
×:24時間静置後の塗布膜の膜厚が、形成直後の塗布膜の膜厚の70%未満である。
【0087】
膜厚の測定結果と、塗布膜の安定性の評価結果とを表1~表4に記す。なお、比較例1~17では、塗布時の粒子の発生により均一な塗布膜を形成できなかった。このため、比較例1~17では、塗布膜の膜厚の測定と、塗布膜の安定性の評価とを行わなかった。
【0088】
実施例の一部について、塗布膜の形成後、以下の方法に従って、不純物拡散成分の拡散処理を行った。
ラピッドサーマルアニール装置(ランプアニール装置)を用いて、流量1L/mの窒素雰囲気下において昇温速度15℃/秒の条件で塗布膜を備える半導体基板を表1~表3に記載の温度まで加熱した。次いで、表1~表3に記載の温度を表1~表3に記載の時間保持して拡散処理を行った。拡散時間の始点は、基板の温度が所定の拡散温度に達した時点である。拡散の終了後、半導体基板を室温まで急速に冷却した。
【0089】
拡散処理を行った実施例のいずれでも、拡散処理後、半導体基板がn型からp型に反転していた。拡散処理後の半導体基板のシート抵抗値を測定した結果を表1~表3に記す。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
【0092】
【表3】
【0093】
【表4】
【0094】
表1~表3によれば、不純物拡散成分(A)と、所定の条件を満たすアミン化合物(B)とを含む拡散剤組成物を用いる場合、薄く、且つ形成後の安定性に優れる塗布膜を容易に形成できることがわかる。
また、不純物拡散剤組成物(A)のみを含むか、不純物拡散剤組成物(A)とともに、所定の条件を満たさないアミン化合物を含む拡散剤組成物を用いる場合、そもそも均一な塗布膜を形成できないか、安定性に優れる塗布膜を形成しにくいことがわかる。
【0095】
〔実施例53〕
実施例28の拡散剤組成物を、表面にトレンチパターンを有するシリコン基板上に、実施例28と同条件にて塗布したのち、実施例28と同条件について拡散処理を行った。
トレンチパターンについて、トレンチ(溝)の幅が450nmであり、トレンチの深さが4500nmであり、トレンチ間の間隔が1800nmである。
拡散処理後の半導体基板を走査型広がり抵抗顕微鏡法(SSRM)により観察したところ、トレンチパターンの表面形状に追従した均一な厚さの発光が確認された。これにより、トレンチパターンの表面に均一な塗布膜が形成されていたことが分かる。
【0096】
〔実施例54~実施例78〕
実施例54~実施例78において、不純物拡散成分(A)((A)成分)として、下記のA6~A9を用いた。
A6:リン酸トリメチル
A7:リン酸トリス(トリメチルシリル)
A8:五酸化二リン
A9:トリ-n-ブトキシヒ素
【0097】
実施例54~実施例78において、アミン化合物(B)((B)成分)として、前述のB1、B2、B3、B4、及びB11を用いた。
【0098】
実施例54~実施例78において、有機溶剤(S)((S)成分)として、前述のS1、及びS2を用いた。
【0099】
シリコン基板(6インチ、n型)をシリコン基板(6インチ、p型)に変更することの他は、実施例1~実施例52と同様に塗布膜の形成を行った。形成された塗布膜の膜厚を表5に記す。
【0100】
【表5】
【0101】
実施例54~実施例78について、実施例1~実施例52と同様に塗布膜の安定性を確認したが、評価結果はいずれも良好であった。また、実施例54~実施例78の一部について、実施例1~実施例52と同様に、拡散温度1000℃、拡散時間25秒の条件で拡散処理を行ったが、良好な拡散性が確認された。