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特許7428491硬化性組成物、硬化物、及び絶縁膜の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】硬化性組成物、硬化物、及び絶縁膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240130BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20240130BHJP
   H01L 21/312 20060101ALI20240130BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G65/48
H01L21/312 D
G03F7/004 501
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019150663
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021031541
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-05-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】海老澤 和明
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-159022(JP,A)
【文献】特開2015-069141(JP,A)
【文献】特開2016-074902(JP,A)
【文献】特開昭60-243125(JP,A)
【文献】国際公開第2012/173088(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/126536(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/125884(WO,A1)
【文献】特開2020-084057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 290/00-290/14
C08G 65/00-65/48
C08G 73/00-73/26
G03F 7/004、7/027、7/20
H01L 21/312
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マレイミド変性化合物(A)と、ラジカル発生剤(C)と、チオール化合物(D)と、プロトン酸(E)を含み、
前記マレイミド変性化合物(A)が、下記式(a1):
【化1】
で表される基を1以上有し、
前記式(a1)で表される基が、前記マレイミド変性化合物(A)における脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子に結合しており、
前記式(a1)中、Ra01及びRa02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基であり、
前記マレイミド変性化合物(A)が、マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)であり、
前記ラジカル発生剤(C)が、光ラジカル発生剤(C1)を含み、露光により硬化し得るものであり、
前記チオール化合物(D)が、2以上の水酸基を有するポリオールのメルカプトアルカノエートであり、
前記ラジカル発生剤(C)の含有量が、前記マレイミド変性化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下であり、
前記チオール化合物(D)の含有量が、前記マレイミド変性化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であり、
前記プロトン酸(E)の含有量が、前記マレイミド変性化合物(A)100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記チオール化合物(D)が、前記ポリオールの3-メルカプトブタノエートである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記マレイミド変性化合物(A)を含む第1剤と、前記チオール化合物(D)を含む第2剤とを含む2剤以上の多剤からなる、多剤混合型の硬化性組成物である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
絶縁膜形成に用いられる、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物の硬化物。
【請求項6】
絶縁膜形成箇所に、請求項1~のいずれか1項に記載の硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成する、塗布工程と、
前記塗布膜を硬化させる、硬化工程とを含む、絶縁膜の形成方法。
【請求項7】
前記硬化性組成物が、前記ラジカル発生剤(C)として、光ラジカル発生剤(C1)を含み、前記塗布膜を露光により硬化させる、請求項に記載の絶縁膜の形成方法。
【請求項8】
前記塗布膜への前記露光が位置選択的に行われ、
露光された前記塗布膜を現像液により現像する、現像工程をさらに含む、請求項に記載の絶縁膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、硬化物、及び絶縁膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の通信機器では、高周波数化が進んでいる。そのため、通信機器が有する金属配線を絶縁する絶縁膜にも高周波数化への対応が求められる。
ここで、周波数が高いほど伝送損失が増加し、伝送損失が増加すると電気信号が減衰する。従って、高周波数化への対応として、伝送損失を低減することが求められる。
【0003】
伝送損失を低減するために、誘電率及び誘電正接が低い材料を用いて絶縁膜を形成する技術が開示されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-87639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は、特定構造の樹脂組成物、具体的には特許文献1に記載された式(1)で表される架橋成分を含有する樹脂組成物を用いた技術であり、その他の組成物を用いる技術が求められている。
なお、高周波数化への対応は、サーバー等のネットワーク関連の電子機器や、コンピュータ等の電子機器等、通信機器以外の電気・電子デバイスにおいても、同様に求められている。
【0006】
また、電気・電子デバイスの製造においては、組成物から絶縁膜を形成した後に、加熱されてさらに配線等の部材を形成されることが多いため、絶縁膜には耐熱性も求められている。
そして、組成物から絶縁膜を形成する際に、塗布法によれば容易に絶縁膜を形成できるため、組成物は、塗布法に適用できる、すなわち塗布法での成膜性に優れていることが望ましい。
【0007】
さらに、フレキシブルディスプレイデバイス用のパネル等の用途に代表されるように、絶縁膜について、伸び等の変形に対する耐久性が求められる場合が増えてきている。このため、絶縁膜を形成し得る組成物について、伸びや引張強度に優れる膜を製膜できることが求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性、伸び、及び引張強度に優れた硬化物を形成することができ且つ成膜性に優れた硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物と、当該硬化性組成物を用いる絶縁膜の形成方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、マレイミド骨格を含む特定の構造のラジカル重合性基を有するマレイミド変性化合物(A)とともに、ラジカル発生剤(C)、及びチオール化合物(D)を含む硬化性組成物が、誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性、伸び、及び引張強度に優れた硬化物を与え、且つ、成膜性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の第1の態様は、マレイミド変性化合物(A)と、ラジカル発生剤(C)と、チオール化合物(D)とを含み、
マレイミド変性化合物(A)が、下記式(a1):
【化1】
で表される基を1以上有し、
式(a1)で表される基が、マレイミド変性化合物(A)における脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子に結合しており、
式(a1)中、Ra01及びRa02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基又は炭素原子数6以上12以下のアリール基である、硬化性組成物である。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる硬化性組成物の硬化物である。
【0012】
本発明の第3の態様は、絶縁膜形成箇所に、第1の態様にかかる硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成する、塗布工程と、
塗布膜を硬化させる、硬化工程とを含む、絶縁膜の形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性、伸び、及び引張強度に優れた硬化物を形成することができ且つ成膜性に優れた硬化性組成物と、当該硬化性組成物の硬化物と、当該硬化性組成物を用いる絶縁膜の形成方法とを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
≪硬化性組成物≫
硬化性組成物は、マレイミド変性化合物(A)と、ラジカル発生剤(C)と、チオール化合物(D)とを含む。
マレイミド変性化合物(A)は、下記式(a1):
【化2】
で表される基を1以上有する。式(a1)で表される基は、マレイミド変性化合物(A)における脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子に結合している。
式(a1)中、Ra01及びRa02が、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基、又は炭素原子数6以上12以下のアリール基である。
【0015】
上記のマレイミド変性化合物(A)と、ラジカル発生剤(C)とを含む硬化性組成物は、良好な成膜性を有し、誘電率及び誘電正接が低く、耐熱性に優れた硬化物を与える。
また、硬化性組成物が、マレイミド変性化合物(A)とともにチオール化合物(D)を含むことにより、硬化性組成物を用いて伸び、及び引張強度に優れた硬化物を形成することができる。
【0016】
硬化性組成物は、好ましくは絶縁膜の形成に用いられる。典型的には、硬化性組成物は、金属配線を有する電気・電子デバイスにおいて、金属配線を絶縁する絶縁膜を形成するために用いられる。
電気・電子デバイスは、特に限定されず、携帯電話等の通信機器、サーバー等のネットワーク関連の電子機器や、コンピュータ等の電子機器等、特にはこれらの機器が有する半導体部品、具体的には、ウェハレベルパッケージと称される半導体パッケージが挙げられる。
これらの電気・電子デバイスは、銅等の金属や合金からなる金属配線を、電気・電子デバイス用の基板上に有する。金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板としては、シリコン基板や、シリコン基板上に種々の層や部材が設けられたものが挙げられる。
この金属配線と他の金属配線や導電部材とを、硬化性組成物により形成される絶縁膜で絶縁する。
後述する成分を含む硬化性組成物を用いることにより、誘電率及び誘電正接(tanδ)が低い絶縁膜を形成できる。このため、後述する成分を含む硬化性組成物は、高周波数の信号を用いる電気・電子デバイスの金属配線を絶縁する絶縁膜に好適である。なお、本明細書において、「高周波数」とは、3GHz以上の周波数を意味する。
また、耐熱性に優れた絶縁膜を形成できるため、硬化性組成物は、例えば、硬化性組成物により絶縁膜を形成した後に加熱により他部材を形成する電気・電子デバイスにおける絶縁膜の形成に用いることができる。
さらに、硬化性組成物は、伸び、及び引張強度に優れる硬化物を与える。このため、硬化性組成物を用いて形成される絶縁膜は、例えば、フレキシブルディスプレイデバイス用のパネル等の曲げ応力や引張応力がかかる用途においても好適に使用し得る。
硬化性組成物は、塗布法での成膜性に優れている、すなわち、塗布法で成膜したときに、クラック及び結晶の発生がなく、タック(べたつき)がなく、成分の相溶性もよいため、容易な方法である塗布法で絶縁膜を形成することができる。
【0017】
以下、硬化性組成物が含む、必須又は任意の成分について説明する。
【0018】
<マレイミド変性化合物(A)>
硬化性組成物は、下記式(a1)で表される基を1分子中に1つ以上有するマレイミド変性化合物(A)を含有する。そして、下記式(a1)で表される基は、マレイミド変性化合物(A)に含まれる脂肪族炭化水素基又は芳香族基における炭素原子に結合している。マレイミド変性化合物(A)は、下記式(a1)で表される基を1分子中に1つ以上有する重合体であるマレイミド変性樹脂(A1)であってもよく、下記式(a1)で表される基を1分子中に1つ以上有する非重合体であるマレイミドモノマー(A2)であってもよい。機械的特性、耐熱性、耐薬品性等に優れる硬化物を形成しやすい点から、マレイミド変性化合物(A)は、マレイミド変性樹脂(A1)のみからなるか、マレイミド変性樹脂(A1)とマレイミド変性モノマー(A2)との組み合わせであるのが好ましい。
【化3】
(式(a1)中、Ra01及びRa02は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基または炭素原子数6以上12以下のアリール基である。)
【0019】
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数3以上8以下のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02としての炭素原子数6以上12以下のアリール基の具体例としては、フェニル基、ビフェニル基、1-ナフチル基及び2-ナフチル基が挙げられる。
式(a1)中のRa01及びRa02は、いずれも水素原子であることが好ましい。Ra01及びRa02がいずれも水素原子であると、重合性に優れるため、硬化性に優れた硬化性組成物とすることができる。Ra01及びRa02がいずれも水素原子の場合は、式(a1)で表される基は、無置換のマレイミド基となる。
【0020】
マレイミド変性化合物(A)における式(a1)で表される基の結合位置は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。マレイミド変性化合物(A)がマレイミド変性樹脂(A1)である場合、マレイミド変性樹脂(A1)において、上記式(a1)で表される基が、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、結合しているのが好ましい。すなわち、マレイミド変性樹脂(A1)は、樹脂の、主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に結合する水素原子が、式(a1)で表される基で置換された構造であるのが好ましい。
このような構造のマレイミド変性樹脂(A1)を与える樹脂としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が挙げられる。かかる樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂や、ポリスチレン系樹脂が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及び「メタクリル」の両者を意味する。
「(メタ)アクリル樹脂」とは、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位を含む樹脂である。(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミド以外の単量体に由来する構成単位を含んでいてもよい。
「ポリスチレン系樹脂」とは、スチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構成単位を含む樹脂である。
本出願の明細書では、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、及びN置換体であってもよい(メタ)アクリルアミドからなる群より選択される1種以上の単量体に由来する構成単位と、スチレン及び/又はスチレン誘導体に由来する構成単位とを含む樹脂について、便宜的に、(メタ)アクリル樹脂として扱う。
なお、本明細書において、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている分子鎖を意味する。例えば、樹脂が(メタ)アクリル樹脂の場合は、(メタ)アクリル樹脂の単量体のα炭素に結合している、カルボキシ基、エステル基、N置換されていてもよいアミド基や、メチル基は、側鎖である。樹脂がスチレン系樹脂の場合は、スチレン系樹脂の単量体の炭素-炭素二重結合に由来する炭素原子に結合するフェニル基や、その誘導体は、側鎖である。
【0021】
マレイミド変性樹脂(A1)において、上記式(a1)で表される基が、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、結合しているため、式(a1)で表される基は、マレイミド変性樹脂(A1)の側鎖の少なくとも一部である。
例えば、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、上記式(a1)で表される基が結合している場合は、マレイミド変性樹脂(A1)は主鎖中に脂肪族炭化水素基又は芳香族基を有する構造であり、この主鎖中の脂肪族炭化水素基又は芳香族基中の炭素原子に式(a1)で表される基が結合しているため、式(a1)で表される基は、マレイミド変性樹脂(A1)の側鎖になる。
また、マレイミド変性樹脂(A1)の側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子に、上記式(a1)で表される基が結合している場合は、マレイミド変性樹脂(A1)は側鎖中に脂肪族炭化水素基又は芳香族基を有する構造であり、この側鎖中の脂肪族炭化水素基又は芳香族基中の炭素原子に式(a1)で表される基が結合しているため、式(a1)で表される基は、マレイミド変性樹脂(A1)の側鎖の一部になる。
【0022】
なお、マレイミド変性樹脂(A1)において、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖及び/又は側鎖における、脂肪族炭化水素基中又は芳香族基中の炭素原子であって、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖末端以外に位置する炭素原子に、上記式(a1)で表される基が結合していればよい。さらに、マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖末端に位置する炭素原子に上記式(a1)で表される基が結合していてもよい。
また、式(a1)で表される基は、樹脂の構成単位中に含まれていることが好ましい。
【0023】
マレイミド変性樹脂(A1)の主鎖は、これらに限定されないが、例えば、(メタ)アクリル樹脂に由来する主鎖、又は、ポリスチレン系樹脂に由来する主鎖であることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂やポリスチレン系樹脂は、誘電率や誘電正接が低いため、主鎖が、(メタ)アクリル樹脂に由来する主鎖、又は、ポリスチレン系樹脂に由来する主鎖であると、形成される絶縁部の誘電率や誘電正接をより低減することができる。
【0024】
マレイミド変性樹脂(A1)の分子量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、質量平均分子量(Mw)が4000以上であることが好ましく、5000以上であることがより好ましく、1万以上であることがさらに好ましい。マレイミド変性樹脂(A1)の分子量は、質量平均分子量(Mw)として、10万以下であることが好ましく、8万以下がより好ましい。
本明細書において質量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算による測定値である。
【0025】
マレイミド変性化合物(A)を製造する方法は特に限定されない。具体的には、マレイミド変性化合物(A)は、第一級アミノ基を有する樹脂等の原料化合物における第一級アミノ基と、下記式(a2):
【化4】
(式(a2)中、Ra01及びRa02は、式(a1)中のRa01及びRa02と同様であり、
a1~Ra6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1以上4以下のアルキル基、又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基であり、Ra1とRa5とは、互いに結合して-O-、-S-、-CH-、又は-CRa7a8-を形成してもよく、Ra3とRa4とは、互いに結合して炭素数6以上12以下の環を構成してもよく、
a7及びRa8は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1以上4以下のアルキル基又は炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基である。)
で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、下記式(a3):
【化5】
(式(a3)中、Ra01及びRa02は、式(a1)中のRa01及びRa02と同様であり、Ra1~Ra6は、式(a2)中のRa1~Ra6と同様である。)
で示される基を生成させる第1工程と、
第1工程で生成した、式(a3)で表される基を有する中間体化合物を加熱して、式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換する第2工程と、を含む製造方法により製造することができる。
【0026】
式(a2)中のRa1~Ra6としてのハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
式(a2)中のRa1~Ra6としての炭素原子数1以上4以下のアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基が挙げられる。
式(a2)中のRa1~Ra6としての炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、直鎖でも分岐鎖状でもよく、具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、及びn-ブトキシ基が挙げられる。
a7及びRa8としての炭素数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基は、Ra1~Ra6としての炭素数1以上4以下のアルキル基及び炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基と同様である。
【0027】
第1工程では、第一級アミノ基を有する原料化合物における第一級アミノ基と、上記式(a2)で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させて、上記式(a3)で示される基を生成させる。これにより、式(a3)で表される基を有する樹脂が得られる。
【0028】
第一級アミノ基を有する原料化合物としては、不飽和二重結合を有する単量体の重合体が挙げられる。かかる樹脂としては、例えば、第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂が挙げられる。より具体的な例としては、側鎖末端に第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、側鎖末端に第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂が挙げられる。
「第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂」とは、第一級アミノ基を有する構成単位を含む(メタ)アクリル樹脂である。第一級アミノ基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位であってもよく、(メタ)アクリルアミドのN置換体に由来する構成単位であってもよく、これらの構成単位以外の構成単位であってもよい。第一級アミノ基を有する構成単位は、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位、及び/又は(メタ)アクリルアミドのN置換体に由来する構成単位であるのが好ましい。
「第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂」とは、第一級アミノ基を有する構成単位を含むポリスチレン系樹脂である。第一級アミノ基を有する構成単位は、p-アミノスチレン、m-アミノスチレン、及びo-アミノスチレン等のアミノスチレンに由来する構成単位であってもよく、p-アミノメチルスチレン、m-アミノメチルスチレン、及びo-アミノメチルスチレン等のアミノ基を有するスチレン誘導体に由来する構成単位であってもよく、これらの構成単位以外の構成単位であってもよい。第一級アミノ基を有する構成単位は、アミノスチレンに由来する構成単位、及び/又はアミノ基を有するスチレン誘導体に由来する構成単位であるのが好ましい。
第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂等の第一級アミノ基を有する樹脂は、側鎖末端に第一級アミノ基を有するのが好ましい。
側鎖末端に第一級アミノ基を有する(メタ)アクリル樹脂や、側鎖末端に第一級アミノ基を有するポリスチレン系樹脂において、側鎖が分岐鎖の場合の第一級アミノ基が結合する側鎖末端は、該分岐鎖が有する2以上の枝鎖のいずれの末端でもよい。また、側鎖の末端の構造が環構造である場合は、該環構造を構成する環の任意の位置が、第一級アミノ基が結合する側鎖末端である。
例えば、側鎖がα-ナフチル基やβ-ナフチル基からなる場合、ナフタレン環上の任意の位置が側鎖末端である。また、側鎖を構成する基が、分岐鎖状である1-フェニルエチル基である場合、2つの枝鎖の末端に相当するメチル基と、フェニル基上の任意の位置とが側鎖末端である。
【0029】
マレイミド変性樹脂(A1)の製造方法において、第一級アミノ基を有する樹脂(原料化合物)は、第一級アミノ基を有するモノマーを単独重合することにより樹脂である原料化合物を製造すること、または、第一級アミノ基を有するモノマーと、コモノマーとを共重合して、樹脂である原料化合物を製造することを含むのが好ましい。
第一級アミノ基を有するモノマーとしては、アミノメチル(メタ)アクリレート、2-アミノエチル(メタ)アクリレート、3-アミノプロピル(メタ)アクリレート、4-アミノフェニル(メタ)アクリレート、3-アミノフェニル(メタ)アクリレート、2-アミノフェニル(メタ)アクリレート、4-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート、3-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート、及び2-アミノフェニルメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類;N-2-アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-4-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド、N-3-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド、及びN-2-アミノフェニル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド類;p-アミノスチレン、m-アミノスチレン、及びo-アミノスチレン等のアミノスチレン;p-アミノメチルスチレン、m-アミノメチルスチレン、及びo-アミノメチルスチレン等のアミノアルキルスチレン等が挙げられる。
【0030】
コモノマーは、第一級アミノ基を有するモノマー以外のモノマーである。コモノマーとしては、例えば、下記式(a-I)で表される化合物が挙げられる。
CH=CRa11-CO-O-Ra10・・・(a-I)
式(a-I)中、Ra10は、1価の有機基であり、Ra11は、水素原子又はメチル基である。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
【0031】
a10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、N-モノ置換アミノ基、及びN,N-ジ置換アミノ基等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0032】
a10としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は複素環基が好ましい。これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0033】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0034】
アルキル基が、脂環式基、又は脂環式基を含む基である場合、アルキル基に含まれる好適な脂環式基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、及びテトラシクロドデシル基等の多環の脂環式基が挙げられる。
【0035】
コモノマーの他の好ましい例としては、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられる。これらのコモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0036】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド;N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、及びN-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN-アルキル(メタ)アクリルアミド;N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-α-ナフチル(メタ)アクリルアミド、及びN-β-ナフチル(メタ)アクリルアミド等のN-アリール(メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジ-n-プロピル(メタ)アクリルアミド、及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;N,N-ジフェニル(メタ)アクリルアミド等のN,N-ジアリール(メタ)アクリルアミド;N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、及びN-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等のその他のN,Nジ置換(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0037】
不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
【0038】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0039】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0040】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0041】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0042】
第一級アミノ基を有するモノマーと、コモノマーとを共重合する場合の第一級アミノ基を有するモノマーとコモノマーとの割合は特に限定されないが、例えば、モル基準で、第一級アミノ基を有するモノマー:コモノマー=5~50:50~95である。
【0043】
式(a2)で表される化合物としては、下記式(a2-1):
【化6】
(式(a2-1)中、Ra01、Ra02、Ra2、Ra3、Ra4及びRa6は、式(a2)中のRa01、Ra02、Ra2、Ra3、Ra4及びRa6と同様である。)
で表される化合物が挙げられる。
【0044】
式(a2)で表される化合物は、例えば、下記式で表される化合物と、式(a2)で表される化合物の構造に対応する共役ジエン化合物とのディールスアルダー反応により得ることができる。
このディールスアルダー反応の条件は、用いる原料の種類等に応じて適宜設定すればよく、また、有機溶剤中での反応を行ってもよい。
【化7】
【0045】
当該ディールスアルダー反応に用いられる有機溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、マロン酸ジエチル等のエステル類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド等のアミド類;ジエチルエーテル、エチルシクロペンチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカヒドロナフタレン等の脂肪族炭化水素類、メチレンクロリド、エチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホアミド等が挙げられる。用いる有機溶剤は、1種類の溶剤を使用してもよいし、2種以上を任意に組み合わせて使用してもよい。
採用できる反応温度としては、例えば-10℃~200℃の範囲であり、好ましくは0℃~150℃の範囲であり、より好ましくは5℃~120℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、例えば5分以上12時間以下であり、10分以上10時間以下であり、30分以上8時間以下である。
【0046】
第1工程における縮合は、通常縮合剤を用いて行われる。脱水縮合剤としては、カルボニルジイミダソール、カルボジイミド系化合物等が挙げられる。
この縮合剤の添加は、前述したディールスアルダー反応を行った反応容器中に対して行ってもよいし、ディールスアルダー反応における生成物を別途単離したうえで、再度有機溶剤等に溶解して添加を行ってもよい。
この縮合の際に用いられる有機溶剤は、ディールスアルダー反応において用いられる有機溶剤と同様のものを採用できる。
採用できる反応温度としては、例えば-10℃~200℃の範囲であり、好ましくは0℃~150℃の範囲であり、より好ましくは5℃~120℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、例えば5分以上12時間以下であり、10分以上10時間以下であり、30分以上8時間以下である。
【0047】
なお、第1工程を実施することで得られる上記式(a3)で表される基を有する化合物は、第1工程を実施した後に単離してもよい。
上記式(a3)で表される基を有する化合物が樹脂である場合、この単離は例えば第1工程における縮合が終わったあとの反応液を貧溶媒に注ぐことで固体化させ、これをろ取することで行われる。
【0048】
第2工程では、第1工程で生成した、上記式(a3)で表される基を有する化合物を加熱して、上記式(a3)で表される基を上記式(a1)で表される基に変換する(逆ディールスアルダー反応)。これにより、上記式(a1)で表される基を有するマレイミド変性化合物(A)が得られる。
上記式(a1)で表される基は、式(a2)で表される化合物の使用量に応じて、原料化合物である第一級アミノ基を有するモノマー由来のアミノ基の全て又は一部に導入され得る。
【0049】
第2工程における逆ディールスアルダー反応は、例えば有機溶剤中で行われる。用いられる有機溶剤は前述したディールスアルダー反応において用いられる有機溶剤と同様のものを採用できるが、加熱による反応を実施するため、沸点が60℃以上であることが好ましく、沸点が80℃以上であることがより好ましく、沸点が100以上であることがさらに好ましい。沸点の上限値は特に制限がないが、例えば350℃以下である。
第2工程の加熱について、採用できる反応温度としては、例えば60℃~280℃の範囲であり、好ましくは80℃~250℃の範囲であり、より好ましくは100℃~225℃の範囲である。
採用できる反応時間としては、例えば5分以上12時間以下であり、好ましくは10分以上10時間以下であり、より好ましくは30分以上8時間以下である。
【0050】
また、第2工程を実施することで得られる上記式(a1)で表される基を有する化合物は、第2工程を実施した後に単離してもよい。
上記式(a1)で表される基を有する化合物が樹脂である場合、この単離は例えば第2工程における縮合が終わったあとの反応液を貧溶媒(例えばアルコール系溶剤)に注ぐことで固体化させ、これをろ取することで行われる。
【0051】
マレイミド変性化合物(A)の製造方法の一例として、第一級アミノ基を有する原料化合物として、第一級アミノ基を有するモノマーであるアミノスチレンと、コモノマーであるスチレンとの共重合体を用いた場合の反応式を以下に示す。下記反応式において、第2工程は、トルエン中で還流した例を示している。また、下記反応式におけるm及びnは、それぞれ構成単位の繰り返し数である。
【化8】
【0052】
このようなマレイミド変性化合物(A)の製造方法によれば、マレイミド化以外の副反応が抑制される。特にマレイミド変性樹脂(A1)を製造する場合、上記の方法によれば、副反応が抑制される結果、式(a1)で表される基を有するマレイミド変性樹脂(A1)を固体状で得ることができる。従って、例えば上記硬化性組成物に、固体状の樹脂として、式(a1)で表される基を有するマレイミド変性樹脂(A1)を配合することができる。例えば、側鎖末端に上記式(a1)で表される基を含む、不飽和二重結合を有する単量体の重合体は、ゲル化の問題があったため、従来、固体状の樹脂として得ることができなかった。具体的には、例えばアミノ基を有するスチレン樹脂にマレイン酸無水物を反応させて閉環する方法では、ゲル化が生じてしまい固体状の樹脂が得られなかった。これは、所望するマレイミド化以外の副反応が生じやすいことに起因すると考えられる。しかし、上記の製造方法によれば、式(a1)で表される基を含む、不飽和二重結合を有する単量体の重合体を固体状の樹脂として得られる。
なお、本出願の明細書において、式(a1)で表される置換又は無置換の環状イミド基を、便宜的に「マレイミド基」とも称する。
【0053】
また、上記の製造方法によれば、マレイミド基を導入したモノマーを重合するのではなく、あらかじめ重合したポリマーを原料化合物として用い、ポリマーの第一級アミノ基を反応させることにより式(a1)で表される基を導入するため、重合が、時間のかかるカチオン重合に制限されない。よって、上記製造方法は、簡便な方法である。
【0054】
また、第一級アミノ基と式(a2)で表されるジカルボン酸無水物とを縮合させ式(a3)で示される基を生成させた後に、加熱することにより式(a3)で表される基を式(a1)で表される基に変換するため、閉環反応による不具合が生じることなく、式(a1)で表される基を確実に導入することができる。
【0055】
<マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)>
以上、マレイミド変性化合物(A)について、主にマレイミド変性樹脂(A1)について説明したが、式(a1)で表される基を有するマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)もマレイミド変性樹脂(A1)として好ましい。マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)は、未変性のポリフェニレンエーテル樹脂の分子鎖末端が式(a1)で表される基を含む末端基により変性された樹脂であるのが好ましい。式(a1)で表される基を含む末端基の構造は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)の主鎖に含まれるフェニレン基は、1以上4以下の置換基を有してもよい。
マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)が式(a1)で表される基を含む末端基を有する場合、末端基は、下記式(Ai):
*-Y-Y-**・・・(Ai)
で表される連結基を介して、マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)の主鎖に結合するのが好ましい。
連結基中の**側の結合手は、マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)を与える未変性ポリフェニレンエーテル樹脂の分子鎖末端の水酸基に由来する酸素原子に結合する。他方で、連結基中の*側の結合手が、末端基に結合する。
式(Ai)中、Yは、単結合、又はカルボニル基である。Yは、2価の有機基である。Yが単結合である場合、Yとしての単結合は、Yとしての2価の有機基中のsp3混成軌道をとる炭素原子に結合する。
【0056】
式(Ai)において、Yがカルボニル基である場合、Yが、-Y-Y-で表される基であるのが好ましい。Yは、単結合、-O-、又は-NH-である。Yは2価の有機基である。YがYとしてのカルボニル基と結合する。
つまり、式(Ai)中のYがカルボニル基である場合、式(Ai)で表される連結基は、下記式(Ai-1)~(Ai-3)で表される基であるのが好ましい。
*-Y-CO-**・・・(Ai-1)
*-Y-O-CO-**・・・(Ai-2)
*-Y-NH-CO-**・・・(Ai-3)
【0057】
としての2価の有機基は、Yと、式(a1)で表される末端基を連結し得る基であれば特に限定されない。有機基の構造は、直鎖状であっても、分岐鎖状であっても、環状であってもこれらの構造の組み合わせでもよい。有機基が含み得る炭素原子及び水素原子以外のヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ハロゲン原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子等が挙げられる。有機基は、1以上の不飽和結合を有してもよい。
としては、マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)における末端変性に用いる化合物の入手又は製造が容易であったり、所望する末端変性が容易であったりすること等から、炭化水素基が好ましい。
炭化水素基の炭素原子数は1以上10以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上6以下がさらに好ましい。
炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であっても、芳香族炭化水素基であってもよい。剛直な芳香族炭化水素基と比較して柔軟であることから、炭化水素基としては、肪族炭化水素基が好ましい。
【0058】
として好ましい炭化水素基としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル、デカン-1,10-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、シクロヘキサン-1,2-ジイル基、p-フェニレン基、m-フェニレン基、o-フェニレン基、ナフタレン-1,4-ジイル基、ナフタレン-2,6-ジイル基、及びナフタレン-2,7-ジイル基が挙げられる。
これらの中では、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、及びシクロヘキサン-1,3-ジイル基が好ましい。
【0059】
式(Ai)において、Yが単結合である場合、Yとしての単結合は、Yとしての2価の有機基中のsp3混成軌道をとる炭素原子に結合する。sp3混成軌道をとる炭素原子は典型的には、Yとしての有機基における、脂肪族炭化水素基からなる全体構造又は部分構造を構成する炭素原子である。
【0060】
式(Ai)において、Yが単結合である場合、Yとしての2価の有機基は、sp3混成軌道をとる炭素原子を少なくとも1つ有し、且つ末端マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)を与える未変性ポリフェニレンエーテル樹脂の分子鎖末端の水酸基に由来する酸素原子と、式(a1)で表される末端基を連結し得る基であれば特に限定されない。Yが単結合である場合の、Yとしての2価の有機基は、炭素原子及び水素原子以外に、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ハロゲン原子、リン原子、ケイ素原子、及びホウ素原子等のヘテロ原子を1つ以上含んでいてもよい。
【0061】
が単結合である場合、Yとしての2価の有機基の炭素原子数は、1以上10以下が好ましく、1以上8以下がより好ましく、1以上6以下がさらに好ましい。
【0062】
が単結合である場合、Yとしての2価の有機基は、1以上のメチレン基が、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、又はイミノ基(-NH-)で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であるのが好ましい。
が単結合である場合、Yとして好ましい脂肪族炭化水素基としては、メチレン基、エタン-1,2-ジイル基、エタン-1,1-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,1-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、ノナン-1,9-ジイル、デカン-1,10-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,3-ジイル基、及びシクロヘキサン-1,2-ジイル基が挙げられる。また、これらの炭化水素基が有する1つ又は2つのメチレン基が、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、又はイミノ基(-NH-)で置換された基も好ましい。
これらの中では、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、シクロヘキサン-1,4-ジイル基、及びシクロヘキサン-1,3-ジイル基が好ましい。
【0063】
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂の分子鎖末端に、式(a1)で表される末端基を導入して変性する方法は特に限定されない。
かかる変性を行うためには、フェノール性水酸基末端を有する未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が好ましく使用される。
【0064】
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、フェノール性水酸基末端を少なくとも1つ有する樹脂であればよい。未変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、2以上のフェノール性水酸基末端を有するのが好ましく、2又は3のフェノール性水酸基末端を有するのがより好ましく、2つのフェノール性水酸基末端を有するのがさらに好ましい。
なお、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が末端にフェノール性水酸基を有する場合、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、主鎖に含まれるフェニレン基上にさらにフェノール性水酸基を有していてもよい。
【0065】
ポリフェニレンエーテル樹脂は、典型的には、2,6-ジメチルフェノール等のフェノール化合物を、銅等の金属を含む触媒の存在下に酸化的に重合することにより製造され得る。未変性ポリフェニレンエーテル樹脂の製造方法は特に限定されないが、公知の方法に従って、前述の典型的な方法に従って未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が製造されるのが好ましい。
【0066】
マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)の主鎖に含まれるフェニレン基は、1以上4以下の置換基を有してもよい。このため、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂の主催に含まれるフェニレン基も、1以上4以下の置換基を有してもよい。
置換基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、及びtert-ブチル基等の炭素原子数1以上4以下のアルキル基、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、及びp-トリル基等の芳香族炭化水素基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、及びtert-ブチルオキシ基等の炭素原子数1以上4以下のアルコキシ基、フェノール性水酸基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子等のハロゲン原子が好ましい。
これらの置換基の中では、メチル基、フェニル基、塩素原子、及び臭素原子が好ましく、メチル基、フェニル基、及び塩素原子がより好ましい。
【0067】
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、フェノール類の単独重合体、又は2種以上のフェノール類の共重合体が挙げられる。
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、1価フェノールのみを重合させた重合体であってもよく、1価フェノールと、2価フェノールや3価フェノールのような多価フェノールとを共重合させた重合体であってもよい。
1価フェノールのみの重合体は、一方の末端に、水酸基を持たない原料フェノールに由来するアリール基を有し、他方の末端に原料フェノールに由来するヒドロキシアリール基を有する。
【0068】
1価フェノールと、多価フェノールとの共重合体では、多価フェノールが有する2以上のフェノール性水酸基を起点としてポリフェニレンエーテルの分子鎖が成長する。このため、2価フェノールに1価フェノールを共重合させると、両末端にヒドロキシアリール基を有するポリフェニレンエーテル樹脂が得られる。また、3価以上のフェノールに1価フェノールを共重合させると、多価フェノールの価数に対応する分岐鎖を有し、各分岐鎖の末端にヒドロキシアリール基を有するポリフェニレンエーテル樹脂が得られる。
【0069】
フェノール類の単独重合体の具体例としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2-メチル-6-フェニル-1,4-フェニレンエーテル)、ポリ(2,6-ジクロロ-1,4-フェニレンエ-テル)等が挙げられる。
前述の通り、2種以上のフェノール類の共重合体は、2種以上の1価フェノールの共重合体であってもよく、1種以上の1価フェノールと、1種以上の2価フェノールとの共重合体であってもよい。
2種以上の1価フェノール類の共重合体の具体例としては、2,6-ジメチルフェノールと2,3,6-トリメチルフェノールとの共重合体、2,6-ジメチルフェノールと2,6-ジクロロフェノールとの共重合体、及び2,6-ジメチルフェノールと2-メチル-6-フェニルフェノールとの共重合体等が挙げられる。
1種以上の1価フェノールと、1種以上の2価フェノールとの共重合体としては、3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールAに2,6-ジメチルフェノールを重合させた共重合体や、3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールAに2-メチル-6-フェニルフェノールを重合させた共重合体や、3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールAに2,6-ジクロロフェノールを重合させた共重合体が挙げられる。
【0070】
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂としては、1価フェノールと、2価フェノールとの共重合体である、3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールAに2,6-ジメチルフェノールを重合させた共重合体、3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールAに2-メチル-6-フェニルフェノールを重合させた共重合体、及び3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールAに2,6-ジクロロフェノールを重合させた共重合体が好ましく、3,3’,5,5’-テトラメチルビスフェノールAに2,6-ジメチルフェノールを重合させた共重合体がより好ましい。
【0071】
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂を変性して、末端に式(a1)で表される末端基を導入する方法は特に限定されない。
例えば、式(Ai)においてYがカルボニル基であり、式(Ai)で表される連結基が、下記式(Ai-1):
*-Y-CO-**・・・(Ai-1)
で表される基である場合、MIG-Y-CO-OHで表されるカルボン酸と、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有するフェノール性水酸基とを、カルボニルジイミダソールやN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド等のカルボジイミド系化合物等の縮合剤を用いて縮合させることにより、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有する末端フェノール性水酸基を、-O-CO-Y-MIGで表される基に変換することができる。なお、MIGは、式(a1)で表される末端基である。
また、MIG-Y-CO-Halで表されるカルボン酸ハライドと、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有するフェノール性水酸基とを反応させることにより、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有する末端フェノール性水酸基を、-O-CO-Y-MIGで表される基に変換することができる。なお、Halは、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子である。
【0072】
式(Ai)においてYがカルボニル基であり、式(Ai)で表される連結基が、下記式(Ai-2):
*-Y-O-CO-**・・・(Ai-2)
で表される基である場合、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有するフェノール性水酸基と、フェノール性水酸基に対して過剰量のMIG-Y-OHで表されるアルコールとを、ホスゲンやトリホスゲン等のカーボネート結合を生成させる化合物と反応させることにより、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有する末端フェノール性水酸基を、-O-CO-O-Y-MIGで表される基に変換することができる。
【0073】
式(Ai)においてYがカルボニル基であり、式(Ai)で表される連結基が、下記式(Ai-3):
*-Y-NH-CO-**・・・(Ai-3)
で表される基である場合、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有するフェノール性水酸基を、MIG-Y-NCOで表されるイソシアネートと反応させることにより、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有する末端フェノール性水酸基を、-O-CO-NH-Y-MIGで表される基に変換することができる。
【0074】
式(Ai)においてYが単結合である場合、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有するフェノール性水酸基と、MIG-Y-Halで表されるハロゲン化物とを、いわゆるWilliamsonのエーテル合成等の方法によりエーテル化することにより、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有する末端フェノール性水酸基を、-O-Y-MIGで表される基に変換することができる。
【0075】
以上、代表的なフェノール性水酸基の変性方法について説明したが、フェノール性水酸基の変性方法はこれらの方法に限定されず、式(a1)で表される末端基に結合する連結基の構造に応じて、公知の種々の方法を採用し得る。
また、上記の変性方法において、必要に応じて、採用された反応に応じた有機溶媒を適宜使用することができる。反応温度や反応時間についても、採用された反応における、公知の好適な条件を適宜採用することができる。
【0076】
なお、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂を用いてマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)を調製する際、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂が有するフェノール性水酸基の一部に式(a1)で表される末端基を含む基が導入されてもよく、フェノール性水酸基の全てに式(a1)で表される末端基を含む基が導入されてもよい。
【0077】
マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂(A1-1)の分子量は、本発明の効果を損なわない限り特に制限はないが、質量平均分子量(Mw)が2000以上であることが好ましく、2500以上であることがより好ましく、3000以上であることがさらに好ましい。マレイミド変性ポリフェニレンーテル樹脂(A1-1)の分子量は、質量平均分子量(Mw)として、10万以下が好ましく、8万以下がより好ましく、5万以下がさらに好ましく、1万以下がさらにより好ましい。
【0078】
以上、式(a1)で表される基を有するマレイミド変性樹脂(A1)について説明したが、マレイミド変性樹脂(A1)以外のマレイミド変性化合物(A)である、式(a1)で表される基を有するマレイミド変性モノマー(A2)としては、芳香族ジアミンや脂肪族ジアミンの2個のアミノ基を、式(a1)で表される基に置換したビスマレイミド化合物が挙げられる。
【0079】
芳香族ジアミンの具体例としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、及び2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。
脂肪族ジアミンの具体例としては、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、2,3,3-トリメチルペンタン-1,5-ジアミン等が挙げられる。
市販されており、入手性の高いマレイミド変性モノマー(A2)としては、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンや下記化合物(いずれも東京化成工業社製)や、BMI-689、BMI-1400、BMI-1500、BMI-1700、BMI-2700、BMI-3000(いずれもDesigner molecules社製)も挙げられる。
【化9】
【0080】
このように、式(a1)で表される末端基を分子鎖末端に有するマレイミド変性化合物(A)は、式(a1)で表される末端基がラジカル重合性基であるため、露光や加熱して重合し得る。重合の結果、マレイミド変性化合物(A)は、低誘電率で、低誘電正接であり、且つ耐熱性に優れた絶縁膜を与える。例えば、形成される絶縁膜の誘電率を、3.00未満にすることができる。また、形成される絶縁膜の誘電正接を、0.01未満とすることができる。また、形成される絶縁膜のガラス転移温度(Tg)を150℃以上とすることができる。
また、マレイミド変性化合物(A)を含む硬化性組成物は、塗布法での成膜性に優れている、すなわち、塗布法で成膜したときに、クラック及び結晶の発生がなく、タック(べたつき)がなく、成分の相溶性もよい。従って、容易な方法である塗布法で絶縁膜を形成することができる。
【0081】
そして、マレイミド変性化合物(A)は溶剤溶解性に優れている。従って、マレイミド変性化合物(A)を含む硬化性組成物は、ネガ型組成物として、該溶剤による現像プロセスに適用可能である。
特に、マレイミド変性化合物(A)は、その構造にもよるが、アルカリ性水溶液に可溶である場合がある。例えば、マレイミド変性化合物(A)がカルボキシ基やフェノール性水酸基等のアルカリ可溶性基を有する場合である。このようなアルカリ可溶性のマレイミド変性化合物(A)を含む硬化性組成物は、ネガ型組成物として、アルカリ現像プロセスに適用可能である。
マレイミド変性化合物(A)を含む硬化性組成物からなる塗布膜に対して、位置選択的な露光と、上記の現像プロセスとを適用することにより、所望のパターン形状の硬化膜を形成することができる。
【0082】
硬化性組成物中のマレイミド変性化合物(A)の含有量は特に限定されない。マレイミド変性化合物(A)の含有量は、硬化性組成物の全固形分量に対して5質量%以上100質量%以下が好ましい。
硬化性組成物がマレイミド変性化合物(A)として、マレイミド変性樹脂(A1)と、マレイミド変性モノマー(A2)とを含む場合、マレイミド変性樹脂(A1)の質量W1と、マレイミド変性モノマー(A2)の質量W2との比率W1:W2は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましい。比率W1:W2は、30:70~70:30であってよく、40:60~60:40であってよい。
【0083】
〔ラジカル重合性化合物(B)〕
硬化性組成物は、さらに、ラジカル重合性化合物(B)を含んでいてもよい。勿論、硬化性組成物は、ラジカル重合性化合物(B)を含まなくてもよい。
ラジカル重合性化合物(B)は、マレイミド変性化合物(A)以外のラジカル重合性の化合物である。
ラジカル重合性化合物(B)は、スチレン、スチレン重合体、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等の不飽和二重結合を有する化合物でもよい。
【0084】
上記のラジカル重合性化合物としては、従来よりラジカル重合性の組成物に配合されている種々のラジカル重合性化合物を特に制限なく用いることができる。マレイミド化合物以外のラジカル重合性化合物の具体例としては、下記の化合物が挙げられる。
【0085】
単官能のラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリルアミド、メチロール(メタ)アクリルアミド、メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、クロトン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、tert-ブチルアクリルアミドスルホン酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、フタル酸誘導体のハーフ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0086】
多官能のラジカル重合性化合物としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレン-プロピレン)グリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、フタル酸ジグリシジルエステルジ(メタ)アクリレート、グリセリントリアクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート(すなわち、トリレンジイソシアネート)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネート等と2-ビドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応物、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドメチレンエーテル、多価アルコールとN-メチロール(メタ)アクリルアミドとの縮合物、トリアクリルホルマール、2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリスエタノールトリアクリレート、及び2,4,6-トリオキソヘキサヒドロ-1,3,5-トリアジン-1,3,5-トリスエタノールジアクリレート等が挙げられる。これらの多官能化合物は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0087】
硬化性組成物中のラジカル重合性化合物(B)の含有量は特に限定されないが、マレイミド変性化合物(A)とラジカル重合性化合物(B)との合計量に対して、10質量%以上70質量%以下とすることが好ましい。
【0088】
〔ラジカル開始剤(C)〕
硬化性組成物は、ラジカル開始剤(C)を含む。ラジカル開始剤(C)は、光ラジカル開始剤(C1)でも熱ラジカル開始剤(C2)でもよく、光ラジカル開始剤(C1)及び熱ラジカル開始剤(C2)を併用してもよい。
【0089】
光ラジカル開始剤(C1)としては、Omnirad 651、Omnirad 184、Omnirad 1173、Omnirad 2959、Omnirad 127、Omnirad 907、Omnirad 369、Omnirad 369E、Omnirad 379EG(いずれもIGM Resins B.V.製)等のアルキルフェノン系開始剤、Omnirad TPO H、Omnirad 819(いずれもIGM Resins B.V.製)等のアシルフォスフィンオキサイド系開始剤や、Irgacure OXE01、Irgacure OXE02(いずれもBASF社製)等のオキシムエステル系光重合剤が挙げられる。
【0090】
光ラジカル開始剤(C1)の具体例としては、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、2-メチル-1-〔4-(メチルチオ)フェニル〕-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(O-ベンゾイルオキシム)(Irgacure OXE01)、エタノン-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾル-3-イル]-1-(O-アセチルオキシム)(Irgacure OXE02)、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(Omnirad TPO H)、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキシド(Omnirad 819)、4-ベンゾイル-4’-メチルジメチルスルフィド、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(O-エトキシカルボニル)オキシム、O-ベンゾイル安息香酸メチル、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、2-クロロチオキサンテン、2,4-ジエチルチオキサンテン、2-メチルチオキサンテン、2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、2-メルカプトベンゾイミダール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、2-(O-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、p-ジメチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、2-メチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、9-フェニルアクリジン、1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、1,3-ビス-(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、2,4-ビス-トリクロロメチル-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、オキシム系の開始剤を用いることを感度の面で特に好ましい。
【0091】
熱ラジカル重合開始剤(C2)としては、ケトンパーオキシド(メチルエチルケトンパーオキシド及びシクロヘキサノンパーオキシド等)、パーオキシケタール(2,2-ビス(tert-ブチルパーオキシ)ブタン及び1,1-ビス(tert-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等)、ヒドロパーオキシド(tert-ブチルヒドロパーオキシド及びクメンヒドロパーオキシド等)、ジアルキルパーオキシド(ジ-tert-ブチルパーオキシド(パーブチル(登録商標)D(日油株式会社製)、及びジ-tert-ヘキシルパーオキサイド(パーヘキシル(登録商標)D(日油株式会社製))等)、ジアシルパーオキシド(イソブチリルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド及びベンゾイルパーオキシド等)、パーオキシジカーボネート(ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等)、パーオキシエステル(tert-ブチルパーオキシイソブチレート及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン等)等}の有機過酸化物や、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-プロペニル)プロピオンアミジン]ジヒドロクロリド、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロパン)、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)及びジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)等}等のアゾ化合物が挙げられる。
【0092】
硬化性組成物中のラジカル開始剤(C)の含有量は特に限定されないが、マレイミド変性化合物(A)とラジカル重合性化合物(B)との合計質量100質量部に対して、0.1質量部以上10質量部以下が好ましい。
【0093】
<チオール化合物(D)>
硬化性組成物は、マレイミド変性化合物(A)とともにチオール化合物(D)を含む。これにより、硬化性組成物は、伸び、及び引張強度に優れる硬化物を与える。
チオール化合物(D)が有するメルカプト基の数は特に限定されない。チオール化合物(D)が有するメルカプト基の数は、伸び、及び引張強度に優れる硬化物をより得やすい点から、2以上が好ましく、2以上10以下がより好ましく、2以上6以下がさらに好ましい。
【0094】
2以上のメルカプト基を有する化合物の具体例としては、1,2-ベンゼンジチオール、1,3-ベンゼンジチオール、1,4-ベンゼンジチオール、1,2-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3-トリメルカプトベンゼン、1,2,4-トリメルカプトベンゼン、1,3,5-トリメルカプトベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、2,5-トルエンジチオール、3,4-トルエンジチオール、1,3-ジ(p-メトキシフェニル)プロパン-2,2-ジチオール、1,3-ジフェニルプロパン-2,2-ジチオール、フェニルメタン-1,1-ジチオール、2,4-ジ(p-メルカプトフェニル)ペンタン、1,2-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4-ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5-トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、及び1,3,5-トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等が挙げられる。
【0095】
また、2以上のメルカプト基を有するチオール化合物(D)としては、入手又は合成が容易である点や、硬化性組成物中での溶解安定性の点等から、2以上の水酸基を有するポリオールのメルカプトアルカノエートが好ましい。
2以上の水酸基を有するポリオールのメルカプトアルカノエートは、水酸基を有していてもよいが、水酸基を有していないのが好ましい。
【0096】
メルカプトアルカノエートを与えるメルカプトアルカン酸の炭素原子数は特に限定されないが、2以上6以下が好ましく、3又は4が好ましい。メルカプトアルカノエートを与えるメルカプトアルカン酸の具体例としては、チオグリコール酸、2-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピオン酸、2-メルカプトブタン酸、3-メルカプトブタン酸、4-メルカプトブタン酸、2-メルカプトペンタン酸、3-メルカプトペンタン酸、4-メルカプトペンタン酸、5-メルカプトペンタン酸、2-メルカプトヘキサン酸、3-メルカプトヘキサン酸、4-メルカプトヘキサン酸、及び5-メルカプトヘキサン酸が挙げられる。
これらの中では、2-メルカプトプロピオン酸、及び3-メルカプトブタン酸が好ましい。
【0097】
メルカプトアルカノエートを与えるポリオールは、芳香族基を含んでいてもよい。
芳香族基を含まないポリオールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ショ糖、グルコース、マンノース、メチルグルコシド、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸等が挙げられる。
芳香族ポリオールとしては、ハイドロキノン、レゾルシノール、及びカテコール等のベンゼンジオール;フロログルシノール、ピロガロール、及び1,2,4-ベンゼントリオール等のベンゼントリオール;1,2-ナフタレンジオール、1,3-ナフタレンジオール、1,4-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、1,6-ナフタレンジオール、1,7-ナフタレンジオール、1,5-ナフタレンジオール、2,3-ナフタレンジオール、2,6-ナフタレンジオール、及び2,7-ナフタレンジオール等のナフタレンジオール;1,4,5-ナフタレントリオール、1,2,4-ナフタレントリオール、1,3,8-ナフタレントリオール、及び1,2,7-ナフタレントリオール等のナフタレントリオール;ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、及びビスフェノールZ等のビスフェノール類;3,3’,4,4’-テトラヒドロキシビフェニル、及び3,3’,5,5’-テトラヒドロキシビフェニル等のテトラヒドロキシビフェニル;カリックスアレーン;フェノールノボラック、クレゾールノボラック、及びナフトールノボラック等のノボラック樹脂が挙げられる。
【0098】
上記のポリオールの中では、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸が好ましく、1,4-ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸がより好ましい。
【0099】
以上説明したポリオールのメルカプトアルカノエートとしては、1,4-ブタンジオールジ(2-メルカプトプロピオネート)、1,4-ブタンジオールジ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールエタントリ(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールエタントリ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールプロパントリ(2-メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトブタノエート)、ペンタエリスリトールテトラ(2-メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトブタノエート)、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(2-メルカプトプロピオネート)、及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(3-メルカプトブタノエート)が好ましく、1,4-ブタンジオールジ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールエタントリ(3-メルカプトブタノエート)、トリメチロールプロパントリ(3-メルカプトブタノエート)、ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトブタノエート)及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(3-メルカプトブタノエート)がより好ましい。
【0100】
チオール化合物(D)の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。チオール化合物(D)の使用量は、マレイミド変性化合物(A)の質量とラジカル重合性化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下が好ましく、0.5質量部以上15質量部以下がより好ましく、1質量部以上12質量部以下がさらに好ましい。
【0101】
<プロトン酸(E)>
硬化性組成物は、プロトン酸(E)を含むのが好ましい。硬化性組成物が、マレイミド変性化合物(A)とともにチオール化合物(D)を含む場合、硬化性組成物に経時的な粘度変化が生じやすい場合がある。しかし、硬化性組成物が、チオール化合物(D)とともにプロトン酸(E)を含む場合、硬化性組成物の経時的な安定性を高めることができる。ここでプロトン酸とは、プロトンHを放出可能な化合物をいう。
なお、マレイミド変性化合物(A)が、カルボキシ基やフェノール性水酸基のようなプロトン酸として作用する酸性基を有する場合、当該マレイミド変性化合物(A)を含む硬化性組成物がプロトン酸(E)を含むものとする。
【0102】
プロトン酸としては、有機酸であっても、無機酸であってもよく、有機酸が好ましい。
有機酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、アクリル酸、メタクリル酸、シュウ酸、フタル酸、安息香酸、サリチル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、マロン酸、リンゴ酸、コハク酸、グリコール酸、グルタミン酸、アスパラギン酸、マレイン酸、カプロン酸、カプリル酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ピルビン酸、アスコルビン酸、アジピン酸、フェノール、1-ナフトール、2-ナフトールメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、及びフェニルホスホン酸等が挙げられる。
無機酸の具体例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、及びリン酸等が挙げられる。
【0103】
プロトン酸(E)の使用量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。プロトン酸(E)の使用量は、マレイミド変性化合物(A)の質量とラジカル重合性化合物(B)の質量との合計100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.5質量部以上1.5質量部以下がさらに好ましい。
【0104】
<有機溶剤(S)>
硬化性組成物は、通常、有機溶剤(S)を含む。有機溶剤(S)の種類は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、従来より硬化性組成物に使用されている有機溶剤から適宜選択して使用することができる。
【0105】
有機溶剤(S)の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソアミルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;エチレングリコール、エチレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノアセテートのモノメチルエーテル、モノエチルエーテル、モノプロピルエーテル、モノブチルエーテル、モノフェニルエーテル等の多価アルコール類及びその誘導体;ジオキサン等の環式エーテル類;蟻酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ピルビン酸メチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート等のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0106】
有機溶剤(S)の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。硬化性組成物の固形分濃度が30質量%以上70質量%以下となる範囲で、有機溶剤(S)を用いるのが好ましい。
【0107】
〔その他の添加剤〕
硬化性組成物は、硬化性を向上させるため、さらにマレイミド硬化剤を含有していてもよく、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、さらに界面活性剤を含有していてもよい。
マレイミド硬化剤としては、ジアミン類、低極性多官能アリルフェノール樹脂(例えば、FATC-809、FATC-AE(ともに群栄化学工業社製))やアリルエーテル等のアリル化合物、プロぺニル化ビフェニレン樹脂(例えば、BPN(群栄化学工業社製))等の1-プロぺニル基を有する1-プロぺニル化合物、及びベンゾオキサジン化合物が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、フッ素系界面活性剤やシリコーン系界面活性剤が好ましく用いられる。
フッ素系界面活性剤の具体例としては、BM-1000、BM-1100(いずれもBMケミー社製)、メガファックF142D、メガファックF172、メガファックF173、メガファックF183(いずれも大日本インキ化学工業社製)、フロラードFC-135、フロラードFC-170C、フロラードFC-430、フロラードFC-431(いずれも住友スリーエム社製)、サーフロンS-112、サーフロンS-113、サーフロンS-131、サーフロンS-141、サーフロンS-145(いずれも旭硝子社製)、SH-28PA、SH-190、SH-193、SZ-6032、SF-8428(いずれも東レシリコーン社製)等の市販のフッ素系界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シリコーン系界面活性剤としては、未変性シリコーン系界面活性剤、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、アルキル変性シリコーン系界面活性剤、アラルキル変性シリコーン系界面活性剤、及び反応性シリコーン系界面活性剤等を好ましく用いることができる。
シリコーン系界面活性剤としては、市販のシリコーン系界面活性剤を用いることができる。市販のシリコーン系界面活性剤の具体例としては、ペインタッドM(東レ・ダウコーニング社製)、トピカK1000、トピカK2000、トピカK5000(いずれも高千穂産業社製)、XL-121(ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤、クラリアント社製)、BYK-310(ポリエステル変性シリコーン系界面活性剤、ビックケミー社製)等が挙げられる。
【0108】
硬化性組成物は、酸化防止剤を含有していてもよい。酸化防止剤としては、特に限定されず、従来公知の酸化防止剤を用いることができ、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0109】
硬化性組成物は、反応中の重合を適宜防止するために、重合防止剤を含有していてもよい。重合防止剤としては、特に限定されず、従来公知の重合防止剤を用いることができ、例えば、メトキノン、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、p-メトキシフェノール、ピロガロール、tert-ブチルカテコール、フェノチアジン等が挙げられる。
【0110】
硬化性組成物を用いて絶縁膜を形成する場合、硬化性組成物は、金属配線や、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板と、硬化性組成物を用いて形成される絶縁膜との密着性を向上させるために、密着性向上剤を含有していてもよい。密着性向上剤としては、特に限定されず、従来公知の密着性向上剤を用いることができ、例えば、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0111】
〔硬化性組成物の調製方法〕
硬化性組成物は、上記の各成分を通常の方法で混合、撹拌して調製される。上記の各成分を、混合、撹拌する際に使用できる装置としては、ディゾルバー、ホモジナイザー、3本ロールミル等が挙げられる。上記の各成分を均一に混合した後に、得られた混合物を、さらにメッシュ、メンブランフィルタ等を用いて濾過してもよい。
【0112】
また、硬化性組成物を、マレイミド変性化合物(A)を含む第1剤と、チオール化合物(D)を含む第2剤とを含む2剤以上の多剤からなる、多剤混合型の硬化性組成物とするのも好ましい。硬化性組成物中に、マレイミド変性化合物(A)とチオール化合物(D)とが共存する場合、硬化性組成物に経時的に変化が生じやすい場合がある。しかし、上記の多剤混合型の硬化性組成物であれば、このような経時変化の問題は生じない。
【0113】
上記の多剤混合型の硬化性組成物は、例えば、さらにラジカル発生剤(C)を含む第3剤を含むような3剤以上の多剤混合型の組成物であってもよい。しかし、使用時の混合作業が容易である点等から、多剤混合型の硬化性組成物は、マレイミド変性化合物(A)を含む第1剤と、チオール化合物(D)を含む第2剤とからなる2剤混合型の硬化性組成物であるのが好ましい。
かかる2剤混合型の硬化性組成物について、マレイミド変性化合物(A)を含む第1剤、及びチオール化合物(D)を含む第2剤のそれぞれが、マレイミド変性化合物(A)及びチオール化合物(D)以外の1種以上の成分を任意に含んでいてもよい。なお、2剤混合型の硬化性組成物では、第1剤、及び第2剤のいずれかがラジカル発生剤(C)を含む。
【0114】
≪絶縁膜の形成方法≫
上記の硬化性組成物を用いて絶縁膜が形成される。
絶縁膜の形成方法は、
絶縁膜形成箇所に、硬化性組成物を塗布して塗布膜を形成する、塗布工程と、
塗布膜を硬化させる、硬化工程と、を含む。
【0115】
好ましくは、硬化性組成物を用いて、金属配線を有する電気・電子デバイスにおける金属配線を絶縁する絶縁膜を形成することができる。
【0116】
絶縁膜の形成方法において、例えば、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上の、少なくとも絶縁膜形成箇所に、硬化性組成物が塗布され塗布膜が形成される。
硬化性組成物の塗布方法としては、スピンコート法、スリットコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、アプリケーター法等の方法を採用することができる。スクリーン印刷法やインクジェット法等の印刷法を適用する場合、絶縁膜を刑する箇所のみに硬化性組成物を塗布することが可能である。
【0117】
塗布膜の厚さは特に限定されないが、0.5μm以上が好ましく、0.5μm以上300μm以下がより好ましく、1μm以上150μm以下が特に好ましく、3μm以上50μm以下が最も好ましい。
【0118】
次いで、必要に応じて、塗布膜に対して乾燥や、プレベークが行われる。プレベーク条件は、硬化性組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、通常は70℃以上200℃以下で、好ましくは80℃以上150℃以下で、2分以上120分以下程度である。
【0119】
硬化性組成物が光ラジカル発生剤(C1)を含む場合、塗布膜に対して、活性光線又は放射線、例えば波長が300nm以上500nm以下の紫外線又は可視光線を照射(露光)する。塗布膜の全面に露光してもよく、また、所定のパターンのマスクを介して活性光線又は放射線を露光する等の方法により、位置選択的に露光(パターン露光)を行ってもよい。
露光により、重合成分であるマレイミド変性化合物(A)やラジカル重合性化合物(B)が重合し絶縁膜が形成される。これにより、例えば、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上に絶縁膜が形成される。
【0120】
放射線の線源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、アルゴンガスレーザー等を用いることができる。また、放射線には、マイクロ波、赤外線、可視光線、紫外線、X線、γ線、電子線、陽子線、中性子線、イオン線等が含まれる。放射線照射量は、硬化性組成物の組成や塗布膜の膜厚等によっても異なるが、例えば超高圧水銀灯使用の場合、100mJ/cm以上10000mJ/cm以下である。また、放射線には、ラジカルを発生させるために、ラジカル開始剤(C)を活性化させる光線が含まれていてもよい。
【0121】
位置選択的な露光の場合は、露光された塗布膜を、従来知られる方法に従って現像し、不要な部分を溶解、除去することにより、所定の形状の絶縁膜が形成される。この際、現像液としては、上記有機溶剤(S)や、アルカリ性水溶液が使用できる。例えば、前述のマレイミド変性化合物(A)がカルボキシ基やフェノール性水酸基のようなアルカリ可溶性基を有する場合、アルカリ性水溶液による現像が可能である。
【0122】
現像液として用いるアルカリ性水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(水酸化テトラメチルアンモニウム)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。
【0123】
現像時間は、硬化性組成物の組成や塗布膜の膜厚等によっても異なるが、通常1分以上30分以下の間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0124】
現像後は、例えば、流水洗浄を30秒以上90秒以下の間行い、エアーガンや、オーブン等を用いて乾燥させる。
【0125】
このようにして、例えば、金属配線を有する電気・電子デバイス用の基板上に、所望する形状にパターン化された絶縁膜が形成される。
【0126】
なお、上記では露光により、重合成分であるマレイミド変性化合物(A)やラジカル重合性化合物(B)が重合させて絶縁膜を形成する例を示した。硬化性組成物が熱ラジカル発生剤(C2)を含む場合、重合成分であるマレイミド変性化合物(A)やラジカル重合性化合物(B)を加熱により重合させて絶縁膜を形成してもよい。
【0127】
形成された絶縁膜は、誘電率が低く、誘電正接が低いため、高周波数用途の金属配線を有する電気・電子デバイスの絶縁膜に適している。例えば、3GHz以上30GHz以下の5G通信帯候補の周波数や、30GHz以上300GHz以下のミリ波帯の周波数の用途の金属配線を有する電気・電子デバイスの絶縁膜とすることができる。また、形成された絶縁膜は耐熱性に優れているため、絶縁膜を形成した後に加熱されてさらに配線等の部材を形成される用途に適している。
【実施例
【0128】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
〔調製例1〕
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂として、下記構造のフェノール性水酸基末端を有するポリフェニレンエーテル樹脂(SA90、SABIC Innovative Plastics社製)を用いた。
【化10】
【0130】
未変性ポリフェニレンエーテル樹脂166質量部と、下記構造のマレイミド基を有するカルボン酸47.2質量部を、ジクロロエタン1184質量部中に加えた。
【化11】
【0131】
反応液中にジイソプロピルカルボジイミド40.9質量部と、ジメチルアミノピリジン0.25質量部を加えた後、5℃で8時間、末端フェノール性水酸基の変性反応を行った。反応後、反応液を濾過しアセトニトリルで再沈殿して、未変性ポリフェニレンエーテル樹脂の両末端のフェノール性水酸基が下記式の基に変性された、マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂A1を145質量部得た。マレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂P1のゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定されたポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)は7000であった。
【化12】
【0132】
〔調製例2〕
樹脂A2として、スチレンと4-アミノスチレンとの共重合体におけるアミノ基が、マレイミド変性された樹脂を調製した。
スチレンと4-アミノスチレンとの共重合比が、スチレン/4-アミノスチレン(モル基準)として80/20(モル基準)である共重合体72.8質量部と、下記式で表されるオキソノルボルネン酸無水物41質量部とをテトラヒドロフラン300質量部に溶解させ、窒素雰囲気下で4時間撹拌した。
【化13】
【0133】
次いで、反応液にカルボニルジミダゾール61質量部を加えた後、反応液を6時間撹拌した。その後、反応液を、ヘプタン1500質量部に滴下することにより沈殿した下記構造の重合体を回収した。下記構造式における各構成単位中の括弧の右下の数字は、各樹脂中の構成単位の含有量(モル%)を表す。
【化14】
【0134】
得られた上記構造の重合体を、20質量%のトルエン溶液とし、リフラックスさせながら4時間撹拌した。その後、ヘプタンで再沈殿することで、固体状の下記構造の樹脂A2を17.8質量部得た。
13C NMRにおける、カルボニルピーク及び二重結合のピークから、マレイミド構造を確認した。なお、13C NMRの測定溶媒は、アセトン-d6とした。
また、得られた樹脂A2の質量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)のポリスチレン換算により求めた。樹脂A2の質量平均分子量(Mw)は、15000であった。
【化15】
【0135】
<硬化性組成物の調製>
[実施例1~14、及び比較例1~4]
実施例1~14では、マレイミド変性化合物(A)として、上記樹脂A1、A2及び下記A3を用いた。
なお、A3はBMI-689(Designer molecules社製)である。
【0136】
【化16】
【0137】
実施例1~14、及び比較例1~4では、ラジカル開始剤(C)として、下記C1及びC2を用いた。
C1:Irgacure OXE02(BASF製)
C2:パーヘキシルD(日油社製)
【0138】
実施例1~14では、チオール化合物(D)として、下記D1及びD2を用いた。
D1:ペンタエリスリトールテトラ(3-メルカプトブタノエート)
D2:トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸トリ(3-メルカプトブタノエート)
【0139】
実施例1~8、及び実施例11~14では、プロトン酸(E)として、下記E1~E3を用いた。
E1:フェニルホスホン酸
E2:サチリル酸
E3:マロン酸
【0140】
実施例1~14、及び比較例1~4では、添加剤として、下記F1を用いた。
F1:Irganox 1010(BASF製)
F2:FATC-809(マレイミド硬化剤、低極性多官能アリルフェノール樹脂(群栄化学工業社製))
F3:FATC-AE(マレイミド硬化剤、低極性多官能アリルフェノール樹脂(群栄化学工業社製))
【0141】
それぞれ表1~2に記載の種類及び量の、マレイミド変性化合物(A)と、ラジカル開始剤(C)と、チオール化合物(D)と、プロトン酸(E)と、添加剤と、界面活性剤(BYK310、ビックケミー社製)0.05質量部とを、固形分濃度が40質量%となるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解させて、各実施例及び比較例の硬化性組成物を得た。
【0142】
<評価>
得られた硬化性組成物を用いて、以下の方法に従って、成膜性と、フォトリソ特性と、誘電率と、誘電正接と、耐熱性とを評価した。これらの評価結果を表1~2に記す。
[成膜性及びフォトリソ特性]
実施例、及び比較例の硬化性組成物を、直径200mmのSi基板上に塗布し、塗布膜を形成した。次いで、塗布膜を80℃で200秒間プリベーク(PAB)した。なお、プリベーク後の塗布膜の膜厚は11μmであった。プリベーク後、直径30μmの円形の開口を形成できるホールパターンのマスクと露光装置Prisma GHI5452(ウルトラテック社製)とを用い露光量100mJ/cm以上4400mJ/cm以下にて、ghi線でパターン露光した。なお、焦点は0μm(塗布膜表面)とした。
次いで、基板をホットプレート上に載置して90℃で1.5分間の露光後加熱(PEB)を行った。その後、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に、露光された塗布膜を、60℃で60秒間浸漬した。その後、窒素ブローして、窒素雰囲気下で180℃1時間加熱して、パターン(絶縁膜)を得た。
プリベーク前の塗布膜の表面を走査型電子顕微鏡により観察して、成膜性を評価した。具体的には、パターン表面にクラック及び/又は結晶が観察されず、パターンにタック(べたつき)がなく、且つ含有成分が相溶しており透明であった場合を、○とした。また、パターン表面にクラックが観察された場合をa、パターン表面に結晶が観察された場合をb、パターン表面にタック(べたつき)があった場合をc、含有成分が相溶しておらず不透明であった場合をdとして、a~dの少なくとも1つに該当する場合を×とした。
また、得られたパターン(絶縁膜)の表面及び断面を走査型電子顕微鏡により観察して、フォトリソ特性を評価した。具体的には、上述の露光量範囲において、直径30μmの開口が形成される条件が存在していた場合は○、直径30μmの開口が形成される条件が存在しなかった場合を×として評価した。
【0143】
[誘電率及び誘電正接]
実施例、及び比較例の硬化性組成物を、直径200mmのSi基板上に塗布し、塗布膜を形成した。次いで、塗布膜を80℃で200秒間プリベーク(PAB)した。なお、プリベーク後の塗布膜の膜厚は11μmであった。プリベーク後、露光装置Prisma GHI5452(ウルトラテック社製)を用い露光量4400mJ/cmにて、ghi線で全面を露光した。なお、焦点は0μm(塗布膜表面)とした。その後、塗布膜表面を窒素ブローして、窒素雰囲気下で180℃1時間加熱して、サンプルを得た。
得られたサンプルの誘電率(ε)及び誘電正接(tanδ)を、電子情報通信学会の信学技報 vol. 118, no. 506, MW2018-158, pp. 13-18, 2019年3月 「感光性絶縁フィルムの円筒空洞共振器法によるミリ波複素誘電率評価に関する検討」(高萩耕平(宇都宮大学)、海老澤和明(東京応化工業株式会社)、古神義則(宇都宮大学)、清水隆志(宇都宮大学))に記載された方法で、測定した。ネットワークアナライザーHP8510C(キーサイト社製)を使用し、空洞共振器法で、室温25℃、湿度50%、周波数36GHz、サンプル厚さ10μmの条件で測定した。
誘電率値が3.00未満であった場合を○、3.00以上であった場合を×として、誘電率を評価した。
誘電正接値が、0.01未満であった場合を○、0.01以上であった場合を×として、誘電正接を評価した。
【0144】
[耐熱性]
[誘電率及び誘電正接]の項目と同様の手法で得られたサンプルについて、動的粘弾性測定装置Rheogel-E4000(UBM株式会社製)を使用して測定したtanδのピークトップ温度(℃)を、ガラス転移点(Tg)とした(DMA法)。測定条件は、測定モード:引張モード、周波数:10Hz、昇温速度:5℃/min、測定温度範囲:40~300℃、サンプル形状:長さ50mm、幅5mm、厚み10μmmとした。
Tgが150℃以上であった場合を○、150℃未満であった場合を×として、耐熱性を評価した。
【0145】
[伸び及び引張強度]
Si基板からフィルムを剥離して得られたフィルムから、幅1cm、長さ5cmの短冊状の試験片を切り出した。得られた試験片と、EZ-test(島津製作所製)とを用いてチャック間距離2cm、引っ張り速度1mm/minで引っ張り試験を行い伸びと引張強度とを測定した。破断点のチャック間距離を伸びとして求めた。
伸びについて、上記方法で測定された伸びが8%以上であった場合を○とし、8%未満であった場合を×とした。
引張強度について、上記方法で測定された引張強度が90MPa以上であった場合を○とし、90MPa未満であった場合を×とした。
【0146】
[保管安定性]
各実施例の硬化性組成物を室温で1週間保管し、ゲル化しなかった場合を○とし、ゲル化した場合を×とした。
【0147】
【表1】
【0148】
【表2】
【0149】
【表3】
【0150】
【表4】
【0151】
実施例1~14によれば、マレイミド変性化合物(A)と、ラジカル発生剤(C)と、チオール化合物(D)とを含む硬化性組成物であれば、製膜性、フォトリソ特性に優れ、絶縁膜として好適に使用され得る、誘電特性、耐熱性、伸び、及び引張強度に優れる硬化膜を形成できることが分かる。
他方、比較例1~4によれば、硬化性組成物がマレイミド変性化合物(A)を含んでいても、チオール化合物(D)を含まない場合、硬化膜についての優れた伸びと、優れた引張強度との両立が困難であることが分かる。
また、実施例9及び10と、他の実施例との比較から、硬化性組成物がマレイミド変性化合物(A)とともにチオール化合物(D)を含む場合、継時的なゲル化が発生しやすいが、硬化性組成物にプロトン酸(E)を添加することにより継時的なゲル化が抑制されることが分かる。