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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】ナチュラルチーズ
(51)【国際特許分類】
   A23C 19/00 20060101AFI20240130BHJP
   A23C 19/032 20060101ALI20240130BHJP
   A23C 19/08 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
A23C19/00
A23C19/032
A23C19/08
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019212652
(22)【出願日】2019-11-25
(65)【公開番号】P2021083327
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岸田 麻衣
(72)【発明者】
【氏名】本田 祐徳
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-289413(JP,A)
【文献】特開2008-022829(JP,A)
【文献】牛乳乳製品の知識,2017年,pp.59-69
【文献】チーズを科学する,2016年,pp.32-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23C 19/00-19/16
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Google
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非蛋白態窒素/総窒素12.2(%)以下、乳酸1560.0 mg/100g以下、リン酸1294.4mg/100g以下、5-methyl-2-hexanoneを0.0001部としたときのジアセチル24.9以上、アセトイン575.3以上16008.3以下、ヘキサナール15.6以下、δ-デカラクトン2.8以上、乳糖およびガラクトースの合計量 1.5mg/g以下、水分50%未満であることを特徴とするナチュラルチーズ。
【請求項2】
請求項1に記載のナチュラルチーズを含むことを特徴とするプロセスチーズ。
【請求項3】
生乳に乳酸を添加してpHを6.2~6.4に調整し、これに乳酸菌として、ラクトコッカスラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカス ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis)を添加することを含むプロセスチーズ用のナチュラルチーズの製造方法。
【請求項4】
請求項3で製造されたナチュラルチーズを用いてプロセスチーズを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポーションタイプやブロックタイプのプロセスチーズの原料用ナチュラルチーズに関する。
【背景技術】
【0002】
熟成味が弱く、フレッシュ感、ミルク感があるプロセスチーズを製造作成するときは、一般的にクリームチーズ、モザレラ、ステッペン、カリアッタ、クワルク、マスカルポーネ、カッテージ等のフレッシュチーズを原料とする。
しかしながら、これらのフレッシュチーズのみからプロセスチーズを製造すると、熟成味が弱く、フレッシュ感、ミルク感があっても、水分が過多であったり、乳化後に粘度が高かったり、乳化釜が焦げ付いたりする等、製造適性や保存性の面で問題が発生する。
そしてこれを解決するべく十分に熟成したチェダーやゴーダ等のチーズを原料に加えるほど、熟成味の発現が強く、フレッシュ感、ミルク感が弱くなる。
このため、熟成味が弱く、フレッシュ感、ミルク感があるプロセスチーズを製造するにあたり、適切な特性を有するナチュラルチーズを製造することが求められている。
【0003】
プロセスチーズの原料用のナチュラルチーズを製造することに関し、いくつかの先行技術がある。
特許文献1は、プロセスチーズを製造するのに適した粒状ナチュラルチーズをブロックを形成することなく製造する方法の提供を課題とし、乳を乳酸スターター培養物で発酵させて発酵乳を生成することによって乳より凝固物を生成させ、この発酵乳に乳凝固酵素を加え、前記凝固物を切断してチーズカードとホエイとを生成させ、前記カードを攪拌しつつ、前記チーズカードより前記ホエイを排除し、前記チーズカードを冷却して、貯蔵の間に結着することのない別個の粒として前記チーズカードを維持する方法を開示している。
【0004】
特許文献2は、プロセスチーズの製造にあたって、プロセスチーズに良好な旨み及びコクを付与することができ、優れた風味を有するプロセスチーズ、及びその製造方法を提供すること、特に、ナチュラルチーズ等に旨みやコクの少ない原料を使用しても、該プロセスチーズに旨み及びコクを付与し、風味・呈味に優れたプロセスチーズを製造する方法を提供することを課題とし、プロセスチーズ原料に、ナチュラルチーズを配合し、チーズの風味や呈味を調整するプロセスチーズの製造方法において、該ナチュラルチーズの一部乃至全部として、チーズカードに麹菌を接種し培養することによって調製された麹チーズを用いることを特徴とする旨味、コクを付与した風味・呈味に優れたプロセスチーズの製造方法を開示している。
しかし、これらの先行技術は、ナチュラルチーズに対し、プロセスチーズ製造に適した製造適性を付与するものであったり、あるいは、プロセスチーズに良好な旨みやコクを付与するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-172963号公報
【文献】特開2010-246499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したとおり、先行技術には、プロセスチーズを製造するための製造適性と風味(熟成味、フレッシュ感、ミルク感)を兼ね備えたプロセスチーズ製造用の原料ナチュラルチーズの提供を課題とし、その解決手段を開示するものはない。
本発明は、製造適性や保存性があり、かつ熟成味が弱く、フレッシュ感、ミルク感のあるプロセスチーズを製造するための原料ナチュラルチーズを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明には以下の構成が含まれる。
(1)非蛋白態窒素/総窒素12.2(%)以下、乳酸1560.0 mg/100g以下、リン酸1294.4mg/100g以下、5-methyl-2-hexanoneを0.0001部としたときのジアセチル24.9以上、アセトイン575.3以上16008.3以下、ヘキサナール15.6以下、δ-デカラクトン2.8以上、乳糖およびガラクトースの合計量 1.5mg/g以下、水分50%未満であることを特徴とするナチュラルチーズ。
(2)(1)のナチュラルチーズを含むことを特徴とするプロセスチーズ。
(3)生乳に乳酸を添加してpHを6.2~6.4に調整し、これに乳酸菌として、ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカス ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis))を添加することを含む、プロセスチーズ用のナチュラルチーズの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、製造適性や保存性があり、かつ熟成味が弱く、フレッシュ感、ミルク感のあるプロセスチーズを製造するための新規な原料ナチュラルチーズを提供するものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について以下に詳細に説明する。
(プロセスチーズ用ナチュラルチーズ)
本発明のプロセスチーズ用ナチュラルチーズについて説明する。
本発明においてナチュラルチーズの「熟成味が弱い」とは、旨味が少ないことであり、より具体的には、非蛋白態窒素/総窒素が12.2(%)以下とすることでナチュラルチーズの熟成味を弱くすることができる。
本発明において「フレッシュ感がある」とは、酸味や乳酸菌による発酵によって生じたヨーグルト様の香りが適度に感じられることであり、乳酸やリン酸が多すぎず、乳酸菌によるジアセチルの生成が一定以上であり、かつアセトインの生成があるが過度ではないことである。具体的には、乳酸1560.0 mg/100g以下、リン酸1294.4mg/100g以下であり、かつ後述する測定方法(固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ/質量分析法:SPME-GC/MS)により、5-methyl-2-hexanoneを0.0001部としたときのジアセチル24.9以上、アセトイン575.3以上16008.3以下である。
また、「ミルク感がある」とは、牛乳の甘い味が感じられることであり、δ-デカラクトンが多いことである。具体的には、同じくδ-デカラクトン2.8以上である。
また、熟成味が弱い、フレッシュ感がある、ミルク感があるとの風味は、これらを阻害するヘキサナールが少ないことで実現される。具体的には、同じくヘキサナール15.6以下である。
【0010】
本発明におけるプロセスチーズの「製造適性がある」とは、乳糖およびガラクトースの合計量が少なく乳化釜が焦げ付かないこと、また、乳化終了後から20分後までの間の粘度上昇が300P以下で、充填ラインにおいて流動性が維持されることである。具体的には、乳糖およびガラクトースの合計量1.5mg/g以下である。
【0011】
本発明のナチュラルチーズは上記した性質をすべて具備するもの、すなわち、非蛋白態窒素/総窒素12.2(%)以下、乳酸1560.0 mg/100g以下、リン酸1294.4mg/100g以下、5-methyl-2-hexanoneを0.0001部としたときのジアセチル24.9以上、アセトイン575.3以上16008.3以下、ヘキサナール15.6以下、δ-デカラクトン2.8以上、乳糖およびガラクトースの合計量 1.5mg/g以下、水分50%未満であることを特徴とするナチュラルチーズである。
【0012】
(プロセスチーズ用ナチュラルチーズの製造方法)
本発明のプロセスチーズ用ナチュラルチーズの製造方法の具体的一態様を説明する。
原料には生乳を用い、乳酸を添加しpHを6.2~6.4程度に調整する。これに乳酸菌を添加する。添加する乳酸菌はラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカス ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis)を用いることが好ましい。
凝乳酵素等を用いて凝固させたカードを、カット、撹拌、加温などにより、得られるナチュラルチーズの水分が50%未満となるよう調整する。水分値を限定するのは、最終製品のプロセスチーズの保存性を高めるためと、ブロックタイプのポーションタイプやブロックタイプのチーズとしての物性、組織、目的とする風味を確保するためである。
得られたカードは、堆積、圧搾等を行い適宜成型する。なお、加塩は成型前または成型後のどちらに実施してもよい。
成型後は、保管・熟成を行うが、このときの温度は5~10℃程度を例示でき、熟成期間は3~12週間程度を例示できる。
【0013】
本発明におけるナチュラルチーズは、プロセスチーズを製造する際の製造適性と保存性、および優れた風味(熟成味が弱く、フレッシュ感、ミルク感のある)を兼ね備えたナチュラルチーズである。これは、本発明において、非蛋白態窒素/総窒素の比率、乳酸、リン酸の含有量、香料成分(ジアセチル、アセトイン、ヘキサナール、δ-デカラクトン)の含有量、および、乳糖とガラクトースの合計量、水分含有量を特定することによってはじめて達成された効果である。
このため、本発明は、これらの成分の含有量を特定した点に特徴があるナチュラルチーズであり、この点は従来技術には記載も示唆もない新たな技術的特徴である。
【0014】
また、上記のような特徴を有するナチュラルチーズは、乳酸を添加して所定範囲にpH調整した生乳を使用することにより製造することができる。さらに、本発明のナチュラルチーズを使用することにより、製造時に釜への焦げ付きがなく、風味に優れたプロセスチーズを製造することができる。
これらの点もまた、本発明により見出された技術的特徴である。
【0015】
(プロセスチーズ用ナチュラルチーズを用いたプロセスチーズの製造方法)
プロセスチーズの製造は定法に従えばよいが、製造適性や保存性があり、かつ熟成味が弱く、フレッシュ感、ミルク感のあるプロセスチーズを製造するためには、本発明のナチュラルチーズを80%以上使用することが好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましく、100%が最も好ましい。
【0016】
(非蛋白態窒素/総窒素)
非蛋白態窒素/総窒素(%)は非蛋白態窒素と総窒素量を以下の方法で定量したのち算出することができる。
試料チーズ10gを秤量し、0.5Mクエン酸ナトリウム溶液40mL、温湯30mLを加え、均質化して得られた溶液を200mLに定容したものを試料チーズ溶液とする。総窒素は上記試料チーズ溶液をそのまま10mL採取、非蛋白態窒素は、上記試料チーズ溶液と24%トリクロロ酢酸水溶液を等量混合し、発生した沈殿をろ過し除去した上澄み10mLを試料溶液とし、それぞれケルダール法を用いて窒素量を定量する。
【0017】
(乳酸、リン酸)
乳酸、リン酸はイオンクロマトグラフィーにて分析することができる。
試料チーズ3gを秤量し、水に懸濁させたのち10%スルホサリチル酸水溶液でpH3~4に調整する。これを30mLに定容したものを遠心分離し、得た上澄みを試料溶液とする。乳酸、リン酸の標準物質を用いて検量線を求め、クロマトグラムの示すピーク面積から乳酸およびリン酸の含有量を算出する。
【0018】
(香気成分)
香気成分は、固相マイクロ抽出-ガスクロマトグラフ/質量分析法(SPME-GC/MS)にて分析できる。
20mLバイアル瓶に粉砕したチーズ2gを入れ、シリコンシールで密閉し、測定試料とする。また、これと同様の密閉容器に、内部標準として5-methyl-2-hexanoneを5ppm溶液のみ50μL入れたものを内部標準試料とする。これらのバイアル瓶を40℃で10分間平衡化し、同様に40℃で60分間SPMEファイバー(50/30 DVB/Carboxen/PDMS (SUPELCO社製))にヘッドスペース香気を吸着させた後、250℃に設定した注入口で10分間成分を熱脱着しスプリットレスでGC-MSに供する。キャリアガスにはヘリウムを用い、圧力を315.69kPaのコンスタントプレッシャーで測定する。カラムは40℃で3分間保持したのち、4℃/minで250℃まで昇温し、5分間保持する。分析機器はAgilent 7890(GC)、5975C(MSD) (アジレント・テクノロジー社製)、MPS(ゲステル社製)、カラムはDB-WAX(30m×0.25mm i.d.×0.25μm LTM、J&W社製)を用いる。MS条件は以下に示すとおりである。検出器はイオントラップ型(EIモード)、測定はSIMスキャンモード(SIM設定はm/z 18)、MS四重極温度150℃、MSイオン源温度230℃、質量範囲29~300 m/z、スキャン速度2.68スキャン/secとする。解析はMSDChemiStation、Aroma Office(アジレント・テクノロジー社製)を用いる。
【0019】
本願では、内部標準試料の検出エリア面積で、チーズのヘッドスペース香気測定時の各成分のエリア面積を除し10000を乗じたもので香気成分量を定量化した。ただし、ジアセチルおよびδ-デカラクトンについては、特徴的なマススペクトルとして選抜した選抜イオン面積をそれぞれm/z 86、m/z 99で算出したのち、内部標準の検出値で除し10000を乗じたものとする。
水分は加熱乾燥法を用いて測定することができる。
乳糖およびガラクトースの合計量は酵素法・紫外部吸光度測定法により定量することができる。
【実施例1】
【0020】
以下、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例品1)
生乳を定法に従い加熱殺菌および冷却した。乳酸を添加し原料乳のpHを6.4に調整した。
塩化カルシウムと乳酸菌(ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカス ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis))を添加し、レンネットを用いて凝固させたのち、カット、撹拌、加温により水分を37.5%に調整した。
得られたチーズカードは堆積したのち粉砕し、食塩を添加混合したのち圧搾成型した。成型後は10℃以下にて3週間保管・熟成を行った。
【0021】
官能評価は、訓練したパネル7名を対象とし、0点~10点の評価で実施した。ここで、熟成味の発現が弱いことは「熟成感」のポイントが4.2ポイント以下であること、「フレッシュ感」の発現があることは「フレッシュ感」が4.6ポイント以上であること、「ミルク感」の発現があることは「ミルク感」が4.6ポイント以上であることを判定基準とした。
【0022】
上記の手段で得たチーズを各種分析に供したところ、乳酸1421.1 mg/100g、リン酸1120.5mg/100g、蛋白態窒素/総窒素5.3(%)、5-methyl-2-hexanoneを0.0001部としたときのジアセチル44.3、アセトイン1023.3、δ-デカラクトン2.8、ヘキサノール8.7であり、風味面の規定条件を全て満たした。
また、確認のため官能評価を実施したところ、「フレッシュ感」は5.7ポイント、「ミルク感」は5.1ポイント、「熟成感」は2.6ポイントであり、上記判定基準からすれば、熟成味の発現が弱く、フレッシュ感、ミルク感があるナチュラルチーズであることが確認できた。
また、水分36.4%、乳糖およびガラクトースの合計量 0.13mg/gであり、製造適性面の条件も全て満たした。
【0023】
(実施例品1を用いたプロセスチーズの試作)
上記チーズ2.8kg(原料チーズの100%)、溶融塩70.8g、目標pH5.95になるようpH調整剤(重曹)を、目標水分量47%になるよう水を添加した。
高せん断タイプのステファン型式乳化釜を用い、700~900rpmで加熱溶融した。85℃に到達後、1500rpmで30秒間攪拌した。加熱乳化したチーズを充填し、5℃で24時間冷却してプロセスチーズを製造した。
得られたプロセスチーズは水分44.5%であり、製造時の釜への焦げ付きはなく、乳化直後から20分後までの粘度差は255Pと十分に抑制できた。
【0024】
[比較例1]
(比較例品1)
生乳を定法に従い加熱殺菌および冷却した。原料乳には塩化カルシウムと乳酸菌(ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカス ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis)、ロイコノストック クレモリス(Leuconostoc cremoris)、ラクトバチルス ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus))を添加し、レンネットを用いて凝固させたのち、カット、撹拌、加温による水分調整を実施した。得られたチーズカードは堆積したのち粉砕し、食塩を添加混合したのち圧搾成型した。成型後は10℃以下にて3週間保管・熟成を行った。
【0025】
上記の手段で得たチーズを各種分析に供したところ、乳酸1480.9 mg/100g、リン酸967.1mg/100g、非蛋白態窒素/総窒素5.6(%)、5-methyl-2-hexanoneを0.0001部としたときのジアセチル95.6、アセトイン1366.1、δ-デカラクトン5.2、ヘキサナール16.7、であり、規定条件のうちヘキサナールの値が上回っていた。
また、確認のため官能評価を実施したところ、「フレッシュ感」は5.4ポイント、「ミルク感」は5.1ポイント、「熟成感」は4.5ポイントであり、上記判定基準に対して「熟成感」のポイントが高いために、熟成味の発現が若干強い点で風味において物足りないチーズであった。
【0026】
[比較例2]
(比較例品2)
生乳を定法に従い加熱殺菌および冷却した。原料乳には塩化カルシウムと乳酸菌(ラクトコッカス ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトコッカス クレモリス(Lactococcus cremoris)、ラクトコッカス ジアセチラクティス(Lactococcus diacetylactis)、ストレプトコッカス サーモフィラス(Streptococcus thermophilus)を添加し、レンネットを用いて凝固させたのち、カット、撹拌、加温による水分調整を実施した。得られたチーズカードは堆積したのち粉砕し、食塩を添加混合したのち圧搾成型した。成型後は10℃以下にて3週間保管・熟成を行った。
【0027】
上記の手段で得たチーズを各種分析に供したところ、乳酸:798.8 mg/100g、リン酸1123.1mg/100g、非蛋白態窒素/総窒素:5.5(%)、5-methyl-2-hexanoneを0.0001部としたときのジアセチル191.2、アセトイン13121.4、δ-デカラクトン4.2、ヘキサナール11.6、であり、風味面の規定条件を全て満たした。
また、確認のため官能評価を実施したところ、「フレッシュ感」は4.6ポイント、「ミルク感」は5.3ポイント、「熟成感」は2.7ポイントであり、風味(熟成味、フレッシュ感、ミルク感)の点では満足のいくチーズであった。
しかし、水分36.3%、乳糖およびガラクトースの合計量 6.17mg/gであり、製造適性面の条件を満たすものではなかった。
【0028】
上記チーズ2.8kg、溶融塩70.8g、目標pH5.95になるようpH調整剤(重曹)を、目標水分量47%になるよう水を添加した。
高せん断タイプのステファン型式乳化釜を用い、700~900rpmで加熱溶融した。85℃に到達後、1500rpmで30秒間攪拌した。加熱乳化したチーズを充填し、5℃で24時間冷却してプロセスチーズを製造した。
得られたプロセスチーズは水分45.11%であったが、製造時の釜への焦げ付が見られ、乳化直後から20分後までの粘度差は445Pと高かった。