(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】切削装置、及び、切削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 55/02 20060101AFI20240130BHJP
B23Q 11/10 20060101ALI20240130BHJP
B23Q 11/12 20060101ALI20240130BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20240130BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240130BHJP
【FI】
B24B55/02 D
B23Q11/10 A
B23Q11/12 A
B24B27/06 M
H01L21/78 F
(21)【出願番号】P 2020003153
(22)【出願日】2020-01-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】山本 直子
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-167145(JP,A)
【文献】特開2014-180738(JP,A)
【文献】特開2018-133387(JP,A)
【文献】特開2004-303855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 55/02
B23Q 11/10
B23Q 11/12
B24B 27/06
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ブレードを有した切削ユニットと、
該切削ブレードで切削する被加工物を保持する保持面を含む保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された被加工物を切削する該切削ブレードに向かって切削液を噴射して供給する切削液ノズルと、
該切削ブレードを避けた方向に冷却液を噴射する冷却液ノズルと、
該切削ブレードで被加工物を切削していないときに該切削液ノズルからの該切削液の供給を停止するとともに、該冷却液ノズルから冷却液を供給するよう制御するコントローラと、を備
え、
該コントローラは、アイドリング時間をカウントするためのアイドリング時間カウント部を有し、該アイドリング時間が所定時間に達した際に該切削液の供給を停止させる構成とする、切削装置。
【請求項2】
該冷却液は、該切削液と同一の供給源から供給され、
該冷却液ノズルは、切削中の被加工物に向けられ、
該切削ブレードによる被加工物の切削中に該冷却液ノズルから被加工物に該冷却液を噴射して該被加工物に異物が付着するおそれを低減する、ことを特徴とする請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該アイドリング時間は、切削装置を起動した後に最初の切削加工が開始される前の準備時間、あるいは、前の被加工物の切削加工を終えてから次の被加工物の切削加工が開始されるまでの間の待機時間、である、
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の切削装置。
【請求項4】
請求項1
乃至請求項
3に記載の切削装置で複数の被加工物を切削する切削方法であって、
第一の被加工物を該保持テーブルで保持する第一保持ステップと、
該切削液ノズルから該切削液を該切削ブレードに供給しつつ該保持テーブルで保持された第一の被加工物を該切削ブレードで切削する第一切削ステップと、
該第一切削ステップ終了後に該保持テーブル上から第一の被加工物を搬出する搬出ステップと、
該搬出ステップを実施した後、該保持テーブルで第二の被加工物を保持する第二保持ステップと、
該切削液ノズルから該切削液を該切削ブレードに供給しつつ該保持テーブルで保持された第二の被加工物を該切削ブレードで切削する第二切削ステップと、を有し、
ある被加工物についての該第一切削ステップを終了し
てから、次の被加工物についての該第一切削ステップが開始されるまでのアイドリング時間が予め設定された所定時間に達したときに、該切削液の供給を停止するとともに、該冷却液を該冷却液ノズルから噴射した状態にする切削液停止ステップを更に有する、切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードを高速回転させて被加工物を切削する切削装置に関するものであり、より詳しくは、切削ブレードやワークを切削液で冷却する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に開示されるように、切削ブレードを高速回転させることでワーク(被加工物)の切削加工を行う切削装置において、加工中に切削液を切削ブレードとワークに供給し、異物(コンタミ)の除去や、加工点の冷却を行うことが知られている。ワークが半導体デバイスウェーハの場合には、切削液として純水が広く利用されている。
【0003】
そして、装置の稼働による発熱に起因する加工点の位置ずれを防止するため、アライメント時やカーフチェック、セットアップ等の工程以外のいわゆるアイドリング時においては、切削ブレードに対して常に切削液の供給が行われることとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、切削液が切削ブレードに長時間噴射され続けることで切削ブレードのボンド材の腐食や溶出が発生してしまうことが懸念される。
【0006】
特に、純水には金属イオン等の不純物が溶け込み易く、切削ブレードのボンド材の腐食や溶出が発生しやすいものといえる。そして、切削ブレードに腐食や溶出が生じると、切削ブレードの異常摩耗等を引き起すことになり、切削ブレードの寿命の低下や加工品質の悪化を招くことになる。
【0007】
本発明は以上の問題に鑑み、切削ブレードへの切削液の最適な供給を可能とする新規な技術を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、
切削ブレードを有した切削ユニットと、
該切削ブレードで切削する被加工物を保持する保持面を含む保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された被加工物を切削する該切削ブレードに向かって切削液を噴射して供給する切削液ノズルと、
該切削ブレードを避けた方向に冷却液を噴射する冷却液ノズルと、
該切削ブレードで被加工物を切削していないときに該切削液ノズルからの該切削液の供給を停止するとともに、該冷却液ノズルから冷却液を供給するよう制御するコントローラと、を備えた切削装置とする。
【0009】
また、本発明の一態様によれば、
該冷却液は、該切削液と同一の供給源から供給され、
該冷却液ノズルは、切削中の被加工物に向けられ、
該切削ブレードによる被加工物の切削中に該冷却液ノズルから被加工物に該冷却液を噴射して該被加工物に異物が付着するおそれを低減する、こととする。
【0010】
また、本発明の一態様によれば、
上記記載の切削装置で複数の被加工物を切削する切削方法であって、
第一の被加工物を該保持テーブルで保持する第一保持ステップと、
該切削液ノズルから該切削液を該切削ブレードに供給しつつ該保持テーブルで保持された第一の被加工物を該切削ブレードで切削する第一切削ステップと、
該第一切削ステップ終了後に該保持テーブル上から第一の被加工物を搬出する搬出ステップと、
該搬出ステップを実施した後、該保持テーブルで第二の被加工物を保持する第二保持ステップと、
該切削液ノズルから該切削液を該切削ブレードに供給しつつ該保持テーブルで保持された第二の被加工物を該切削ブレードで切削する第二切削ステップと、を有し、
該第一切削ステップを終了した後、該切削液の供給を停止するとともに該冷却液を該冷却液ノズルから噴射した状態にする切削液停止ステップを更に有する、切削方法とする。
【発明の効果】
【0011】
被加工物を切削していないときには切削液が噴出しないため、切削液が過剰に切削ブレードに向けて噴出されることによる切削ブレードの腐食の進行を防ぐことができる。また、冷却液が噴出することで、切削ユニットの周囲の雰囲気温度の上昇が防がれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る切削装置の斜視図である。
【
図2】切削ユニットの構成について説明する正面図である。
【
図3】(A)は切削ユニットの構成について説明する斜視図である。(B)はブレードクーラーアセンブリを移動させた状態について説明する図である。
【
図4】切削ユニットの他の構成例について説明する図である。
【
図5】(A)は切削液、冷却液の供給経路の構成例について説明する図である。(B)は切削液、冷却液の供給経路の他の構成例について説明する図である。
【
図6】切削装置を制御するコントローラの構成について説明する図である。
【
図7】アイドリング時間とアイドリング累積時間の関係について説明する図である。
【
図8】被加工物の一例であるウェーハの構成について説明する図である。
【
図9】(A)は第一保持ステップについて示す図である。(B)はアライメントステップについて示す図である。(C)は切削ステップについて示す図である。
【
図10】(A)は切削液停止ステップについて示す図である。(B)は搬出ステップについて示す図である。(C)はドレス判定ステップにおけるドレッシングについて示す図である。
【
図11】加工方法の一実施形態について示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る切削装置2について示す斜視図である。切削装置2はベース4を有しており、ベース4上には保持テーブル8が図示せぬ切削送り機構(X軸移動機構)によりX軸方向に往復動可能に配設されている。
【0014】
ベース4の上面には、図示せぬ被加工物を収容するカセット5を載置するカセット載置部5aと、切削加工後の被加工物を洗浄するための洗浄装置6が設けられている。被加工物は、図示せぬ搬送装置によりカセット5から保持テーブル8上に搬入され、切削ユニット34にて切削加工された後、洗浄装置6へ搬送されて洗浄され、洗浄後はカセット5へと搬出される。
【0015】
保持テーブル8の周囲には複数のクランプ9及びウォーターカバー11が配設されており、このウォーターカバー11とベース4にわたり、下方に配置される切削送り機構を保護するための蛇腹12が連結されている。
【0016】
ウォーターカバー11の上面には、ドレスボード50の上面を露出させて保持するドレスボードテーブル52が設けられている。ウォーターカバー11は保持テーブル8とともにX軸方向に移動するものであり、このウォーターカバー11の移動に伴ってドレスボードテーブル52もX軸方向に移動されるものである。
【0017】
ベース4には門型形状のコラム14が立設され、コラム14の側面にはY軸方向に伸長する一対のガイドレール15と、ボールねじ16aとパルスモータ16bとからなるY軸移動機構17と、Y軸移動ブロック18と、が設けられ、Y軸移動ブロック18がY軸移動機構17の駆動によりガイドレール15に沿ってY軸方向に移動する。
【0018】
Y軸移動ブロック18にはZ軸方向に伸長する一対のガイドレール19と、ボールねじ31aとパルスモータ31bとからなるZ軸移動機構32と、Z軸移動ブロック30とが設けられ、Z軸移動ブロック30がZ軸移動機構32の駆動によりガイドレール19に沿ってZ軸方向に移動する。
【0019】
Z軸移動ブロック30には切削ユニット34が取り付けられており、切削ユニット34のスピンドルハウジング36内に図示せぬスピンドルが回転可能に収容され、スピンドルの先端部に切削ブレード38が装着されている。切削ブレード38の略上半分はブレードカバー(ホイールカバー)40により覆われている。切削ユニット34の近傍には撮像ユニット7が配設されている。
【0020】
図2、及び、
図3(A)(B)は切削ユニット34の構成について説明する図である。切削ユニット34は、切削ブレード38とブレードカバー40を備え、ブレードカバー40の下方にむけて切削ブレード38の刃先が突出される。ブレードカバー40には、切削ブレード38の下部に純水等の切削液を供給するブレードクーラーノズル41a,41bと、切削ブレード38の外周部分に切削液を供給するシャワーノズル46と、が設けられている。
【0021】
図2に示すように、切削ブレード38は、例えば、アルミからなる基台(ハブ基台)38aに、電着で切り刃38bを形成したハブタイプブレードや、基台がなく切り刃をフランジで固定する形態の切削ブレードについても、本発明は好適に実施可能である。
【0022】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、ブレードカバー40は、スピンドルを回転可能に収容するスピンドルハウジング36(
図3(A))の一端部に固定された開閉プレート48を有する。
【0023】
図3(B)に示すように、開閉プレート48にはエアシリンダが内蔵されており、エアシリンダのピストンロッド43の先端にはブレードクーラーアセンブリ44が取り付けられている。ブレードクーラーアセンブリ44は、切削ブレード38の周囲において周方向約半分を覆うカバー部材45を有する。
【0024】
図3(B)に示すように、ピストンロッド43が伸長されると、その先端のブレードクーラーアセンブリ44がX軸方向において切削ブレード38から離れる一側方向に移動し、ブレードクーラーアセンブリ44と開閉プレート48が互いに離れることにより、切削ブレード38の周囲が広く開放され、切削ブレード38の交換が可能な状態となる。
【0025】
図3(A)(B)に示すように、ブレードクーラーアセンブリ44は、一対の接続ポート53a,53bと、各接続ポート53a,53bに接続される略L字状のパイプ材で構成されるブレードクーラーノズル41a,41bと、を有する。ブレードクーラーノズル41aは切削ブレード38の表側(手前側)において水平に伸長するように配置され、ブレードクーラーノズル41bは切削ブレード38の裏側(奥側)において水平に伸長するように配置される。各ブレードクーラーノズル41a,41bの水平部分において、その周面には、切削ブレード38に対向する側に切削液を噴出させる複数のスリットが形成される。
【0026】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、ブレードクーラーノズル41a,41bから、それぞれ切削ブレード38の表面と裏面に向けて切削液が噴出されることで、切削ブレード38及び被加工物が冷却され、切削ブレード38と被加工物の接触領域となる加工点で生じる摩擦熱に起因する加工不良が抑制される。また、切削ブレードや被加工物に付着した切削屑が切削液により排出される。
【0027】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、開閉プレート48において、ブレードクーラーアセンブリ44と反対側となる位置には、シャワーノズルブロック54が固定されている。シャワーノズルブロック54の下端部には、切削ブレード38の外周部に向かって開口するシャワーノズル46が設けられる。シャワーノズル46には、シャワーノズルブロック54に接続される接続ポート55を通じて切削液が供給される。
【0028】
図2に示すように、シャワーノズル46から、切削ブレード38の外周部に向かって切削役が噴出されることで、切削ブレード38が冷却される。また、切削ブレード38の回転によって切削液が切削ブレード38と被加工物との接触領域となる加工点に供給され、加工点で生じる摩擦熱に起因する加工不良が防がれる。
【0029】
ここで、
図2、及び、
図3(A)(B)に示されるブレードクーラーノズル41a,41bとシャワーノズル46は、切削ブレード38を冷却することを目的として設けられるものであり、両者を合わせて切削液ノズルが構成される。なお、ブレードクーラーノズル41a,41bとシャワーノズル46のいずれかを設けることで、切削液ノズルとしてもよい。
【0030】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、シャワーノズルブロック54の下端部には、切削ブレード38を避けた方向に向けられ、被加工物を冷却させる冷却液を噴出する冷却液ノズル60a,60bが設けられる。冷却液は、被加工物の冷却と、雰囲気温度の上昇の抑制することを目的とするものである。
【0031】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、本実施例では、冷却液ノズル60a,60bは、切削ブレード38の軸方向にずらして二箇所に設けられており、各冷却液ノズル60a,60bから真下に冷却液が噴出されるように構成される。冷却液ノズル60a,60bには、シャワーノズルブロック54に接続される接続ポート62を通じて冷却液が供給される。
【0032】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、シャワーノズルブロック54には、冷却液ノズル60a,60bと切削ブレード38を隔離するための壁部56が形成される。この壁部56によって、冷却液ノズル60a,60bから噴出される冷却液が切削ブレード38に当たらないようにしている。
【0033】
図2、及び、
図3(A)(B)に示すように、本実施例では、壁部56の下端部よりも上側に冷却液ノズル60a,60bの噴出口を配置させることで、冷却液が切削ブレード38側に供給されないようにしている。
【0034】
図4は、切削ユニット38xの他の構成例を示すものである。
この構成例では、冷却液ノズル60xが切削ブレード38xが装着されたスピンドルの軸方向の延長線上に配置される。冷却液ノズル60xは、冷却液が切削ブレード38xに供給されない方向に向けられるのであればよく、特に配置が限定されるものではない。
【0035】
図5(A)は、各ノズルへの切削液、冷却液の供給経路の構成について説明する図である。
切削液供給源71の切削液は、切削液供給路72及び切削液制御弁73を介し、接続ポート53a,53bや接続ポート55に供給され、ブレードクーラーノズル41a,41bやシャワーノズル46から噴出される。
【0036】
図5(A)に示すように、切削液供給路72には、二酸化炭素制御弁74を介して二酸化炭素供給源75が接続され、切削液に二酸化炭素を混入させ、比抵抗値を下げて(電気伝導率を上げて)被加工物の帯電を防止することができる。切削液は二酸化炭素が混入されることで酸性に傾く。
【0037】
図5(A)に示すように、切削液供給路72に検出器76を設けることで、切削液のpH、導電率、比抵抗値等をモニタリングできるようになっている。
【0038】
図5(A)に示すように、冷却液供給源81の冷却液は、冷却液供給路82、及び冷却液制御弁83を介し、接続ポート62に供給され、冷却液ノズル60a,60bから噴出される。
【0039】
図5(A)に示すように、冷却液供給路82に検出器86を設けることで、切削液のpH、導電率、比抵抗値等をモニタリングできるようになっている。
【0040】
切削液供給源71や冷却液供給源81から供給する切削液や冷却液は、純水とする他、被加工物や切削ブレードの属性、加工条件などによって適宜選択することができる。
【0041】
また、
図5(B)に示すように、冷却液として切削液と同じものを使用する場合には、切削液供給路72を分岐し冷却液制御弁83に接続し、切削液供給路72から供給される切削液を冷却液として使用することとしてもよい。
【0042】
図6は、以上の構成とする切削装置を制御するコントローラの構成の概要について示す図である。
コントローラ10には、タッチパネルやキーボード等の入力手段101が接続され、加工条件や、加工の開始/停止などの各種情報がオペレータにより入力可能となっている。
【0043】
コントローラ10には、ディスプレイ等の表示手段102が接続され、加工状況や動作状況などがモニタリングできるようになっている。
【0044】
コントローラ10は、切削ブレードや保持テーブルなどの各駆動部を制御する動作制御部110を有し、動作制御部110が切削加工の実施を制御する。
【0045】
コントローラ10は、
図5(A)にも示される切削液制御弁73、二酸化炭素制御弁74、冷却液制御弁83の動作をそれぞれ制御する切削液制御部111,二酸化炭素制御部112,冷却液制御部113を有する。これらの各制御部により各制御弁の開/閉が制御され、切削ユニットでの切削液や冷却液の噴出のON/OFFが制御される。このON/OFF制御の例については、後に詳述する。
【0046】
コントローラ10は、各アイドリング時間T1,T2・・・をカウントするアイドリング時間カウント部114を有する。
図7に示すように、アイドリング時間T1,T2・・・とは、切削装置を起動した後に最初の切削加工が開始される前の準備時間、あるいは、前の被加工物の切削加工を終えてから次の被加工物の切削加工が開始されるまでの間の待機時間、をいうものである。アイドリング時間T1,T2・・・は、切削加工が開始/再開された際にリセットされ、切削加工が停止するとゼロからカウントを再開する。
【0047】
コントローラ10は、各アイドリング時間の合計であるアイドリング累積時間Tr(
図7)をカウントするためのアイドリング累積時間カウント部115を有する。
図7には、アイドリング累積時間Trとアイドリング時間T1,T2・・・の関係が示される。
【0048】
コントローラ10は、ドレス制御部116を有する。ドレス制御部116dでは、アイドリング累積時間Trと、予め規定されたドレッシング時間Tdを比較し、アイドリング累積時間Trがドレッシング時間Tdを超えた場合には、動作制御部110を制御してドレッシングを実施させる。
【0049】
次に、以上の装置構成を用いた加工方法について説明する。以下で説明する各ステップの流れは
図11のフローチャートを参照されたい。
【0050】
まず、
図8に示す、被加工物の一例であるウェーハ20について説明する。ウェーハ20の表面20a側には、デバイス22が格子状に配置されており、各デバイス22の間が分割予定ライン24(ストリート)として構成され、分割予定ライン24に沿って切削加工することで、半導体チップに分割されるものである。
【0051】
ウェーハ20の裏面20bは、粘着テープ26に貼着され、ウェーハ20の周囲を囲むようにして環状フレーム28が同じく粘着テープ26に貼着される。
【0052】
以上のようにして、ウェーハ20が粘着テープ26を介して環状フレーム28に固定されてなるウェーハユニット29が構成され、このウェーハユニット29が切削装置にてハンドリングされる。
【0053】
<第一保持ステップS1-1>
図9(A)に示すように、第一(一枚目)の被加工物であるウェーハ20を保持テーブル8で保持するステップである。
この例では、粘着テープ26を介してウェーハ20が保持テーブル8の表面に吸着保持される。環状フレーム28は、クランプ9によって挟持される。
【0054】
このステップでは、
図6に示すように、切削液制御部111が切削液制御弁73を閉とし、冷却液制御弁83が冷却液制御部113を閉とする。これにより、切削ユニット34では、切削液は噴出せず、冷却液Rは噴出する。
【0055】
このように、第一保持ステップでは、切削液が噴出しないため、切削液が過剰に供給されて切削ブレードが腐食することが防がれる。また、冷却液Rが噴出することで、切削ユニット34の周囲の雰囲気温度の上昇が防がれる。
【0056】
<アライメントステップS1-2>
図9(B)に示すように、第一(一枚目)の被加工物であるウェーハ20の表面20aを撮像ユニット7にて撮像して分割予定ライン24(
図8)を検出し、分割予定ライン24が加工送り方向(X軸方向)(
図1)と平行となるように保持テーブル8を回転させてアライメントを行うステップである。
【0057】
このステップでは、
図6に示すように、切削液制御部111が切削液制御弁73を閉とし、冷却液制御弁83が冷却液制御部113を閉とする。これにより、切削ユニット34では、冷却液と切削液は両方とも噴出しない。
【0058】
このように、アライメントステップでは、切削液が噴出しないため、切削液が過剰に供給されて切削ブレードが腐食することが防がれる。
【0059】
<切削ステップS1-3>
図9(C)に示すように、切削ブレード38を回転させつつ、保持テーブル8を加工送りすることで、分割予定ライン24(
図8)に沿ってウェーハ20を切削するステップである。
【0060】
図8において第一の方向(X軸方向)に伸びる分割予定ライン24について、保持テーブル8の加工送りと、切削ブレード38(
図9(C))のY軸方向のインデックス送りを交互に繰り返すことで、第一の方向(X軸方向)の全ての分割予定ライン24について切削加工を行った後、保持テーブル8を90度回転させることで、第二の方向(Y軸方向)に伸びる分割予定ライン24についての切削加工が行われる。
【0061】
このステップでは、
図6に示すように、切削液制御部111が切削液制御弁73を開とし、冷却液制御弁83が冷却液制御部113を開とする。これにより、
図9(C)に示すように、切削ユニット34では、冷却液Rと切削液Sの両方が噴出する。切削液Sが噴出することで、切削ブレード38や加工点が冷却される。また、冷却液Rが噴出することで、切削液Sとともに、ウェーハ20の表面20a上から切削屑を洗い流すことができる(異物除去)。なお、冷却液Rは噴出しないこととしてもよい。
【0062】
<搬出ステップS1-4>
図10(B)に示すように、保持テーブル8上から第一被加工物を搬出するステップである。
このステップでは、
図6に示すように、切削液制御部111が切削液制御弁73を閉とし、冷却液制御弁83が冷却液制御部113を開とする。これにより、切削ユニット34では、切削液は噴出せず、冷却液Rは噴出する。
【0063】
このように、切削液が噴出しないため、切削液が噴出しないため、切削液が過剰に供給されて切削ブレードが腐食することが防がれる。また、冷却液Rが噴出することで、切削ユニット34の周囲の雰囲気温度の上昇が防がれる。
【0064】
<第二保持ステップS2―1>
図9(A)に示すように、第二(二枚目)の被加工物であるウェーハ20を保持テーブル8で保持するステップである。
【0065】
このステップでは、
図6に示すように、切削液制御部111が切削液制御弁73を閉とし、冷却液制御弁83が冷却液制御部113を閉とする。これにより、切削ユニット34では、切削液は噴出せず、冷却液Rは噴出する。
【0066】
このように、第二保持ステップでは、切削液が噴出しないため、切削液が過剰に供給されて切削ブレードが腐食することが防がれる。また、冷却液Rが噴出することで、切削ユニット34の周囲の雰囲気温度の上昇が防がれる。
【0067】
以降は同様に、アライメントステップ、切削ステップ、搬出ステップが繰り返される。
【0068】
<切削液停止ステップS6>
図7のアイドリング時間T3に示すように、ある被加工物についての切削ステップを終了してから、次の被加工物についての切削ステップが開始されるまでのアイドリング時間が予め設定された所定時間Tsに達したときに、切削液の供給を停止するとともに冷却液を噴射するステップである。
【0069】
より具体的には、切削ステップ終了後、
図6及び
図7に示すように、アイドリング時間カウント部114によりアイドリング時間のカウントが開始され、切削液制御部111はアイドリング時間が所定時間Tsに達した際に切削液制御弁73を閉じることで、切削液の供給を停止させるものである。
図7の例では、アイドリング時間T3において所定時間Tsが経過したことを示している。
【0070】
他方、冷却液制御弁83は冷却液制御部113を開として、冷却液の供給は続行される。
【0071】
以上により、
図10(A)に示すように、アイドリング時間が所定時間Tsに達した後は、切削液が噴出しないため、切削液が過剰に供給されて切削ブレードが腐食することが防がれる。また、冷却液Rが噴出することで、切削ユニット34の周囲の雰囲気温度の上昇が防がれる。なお、切削ステップの終了時に冷却液Rの供給を停止し、所定時間Ts経過後に冷却液Rの噴出が再開されることとしてもよい。また、切削ステップ中には冷却液Rの供給を停止しておき、所定時間Ts経過後に冷却液Rを噴出させるようにしてもよい。
【0072】
さらに、所定時間Tsをゼロに設定することとしてもよい。この設定によれば、切削装置の起動直後や切削ステップ終了直後から切削液の供給が停止され、切削液が噴出されない状態とすることができる。この場合、切削ステップがされる際に、切削液の供給が開始されることとすればよい。
【0073】
<ドレス判定ステップS7>
図6、
図7,
図10(C)に示すように、ドレス制御部116が、アイドリング累積時間Trと、予め規定されたドレッシング時間Tdを比較し、アイドリング累積時間Trがドレッシング時間Tdに達した場合に、動作制御部110を制御してドレッシングをするステップである。
【0074】
図7の例では、アイドリング時間Txがカウントされた際に、アイドリング累積時間Trがドレッシング時間Tdを超過したことを示している。
【0075】
この際、
図10(C)に示すように、切削ユニット34をドレスボード50の位置まで移動し、切削ブレード38をドレスボード50に切り込ませることにより、ドレッシングが行われる。
【0076】
このステップでは、
図6に示すように、切削液制御部111が切削液制御弁73を開とし、冷却液制御部113が冷却液制御弁83を閉とする。これにより、切削ユニット34では、切削液が噴出し、冷却液は噴出しない。なお、冷却液制御部113が冷却液制御弁83も開とすることで、冷却液と切削液を両方とも噴出させてもよい。
【0077】
また、
図7において、切削液の停止の基準となる所定時間Tsや、ドレッシングの実施の基準となるドレッシング時間Tdは、は、切削ブレードの粒径、ボンドタイプ、厚み、切削液のPh等に基づいて事前に設定されるものである。
【0078】
例えば、切削ブレードの品種と切削液の組合せにおいて、切削ブレードが変質する時間を測定するテストを行うことで、所定時間Tsを設定することができる。同様に、切削ブレードがドレッシングせずに使用することができる限界の時間を測定するテストを行うことで、ドレッシング時間Tdを設定することができる。
【0079】
以上のようにして本発明を実施できる。
即ち、
図2、
図3(A)(B)及び、
図6に示すように、
切削ブレード38を有した切削ユニット34と、
切削ブレード38で切削する被加工物20を保持する保持面を含む保持テーブル8と、
保持テーブル8で保持された被加工物20を切削する切削ブレード38に向かって切削液を噴射して供給する切削液ノズル(ブレードクーラーノズル41a,41b、シャワーノズル46)と、
切削ブレード38を避けた方向に冷却液を噴射する冷却液ノズル60a,60bと、
切削ブレード38で被加工物20を切削していないときに切削液ノズル(ブレードクーラーノズル41a,41b、シャワーノズル46)からの切削液の供給を停止するとともに、冷却液ノズル60a,60bから冷却液を供給するよう制御するコントローラ10と、を備えた切削装置とするものである。
【0080】
これにより、被加工物20を切削していないときには切削液が噴出しないため、切削液が過剰に切削ブレードに向けて噴出されることによる切削ブレードの腐食の進行を防ぐことができる。また、冷却液が噴出することで、切削ユニット34の周囲の雰囲気温度の上昇が防がれる。
【0081】
また、
図5(B)、及び、
図9(C)に示すように、
冷却液は、切削液と同一の供給源から供給され、
冷却液ノズル60a,60bは、切削中の被加工物20に向けられ、
切削ブレード38による被加工物20の切削中に冷却液ノズル60a,60bから被加工物20に冷却液を噴射して被加工物20に異物が付着するおそれを低減する。
【0082】
この構成によれば、冷却液ノズル60a,60bは、切削ユニット34の周囲の雰囲気温度の上昇を防ぐ機能に加え、異物除去の機能も兼ね備えることができる。
【0083】
また、
図2、
図3(A)(B)及び
図11に示すように、
第一の被加工物20を保持テーブル8で保持する第一保持ステップと、
切削液ノズル(ブレードクーラーノズル41a,41b、シャワーノズル46)から切削液を切削ブレード38に供給しつつ保持テーブル8で保持された第一の被加工物20を切削ブレード38で切削する第一切削ステップと、
第一切削ステップ終了後に保持テーブル8上から第一の被加工物20を搬出する搬出ステップと、
搬出ステップを実施した後、保持テーブル8で第二の被加工物20を保持する第二保持ステップと、
切削液ノズル(ブレードクーラーノズル41a,41b、シャワーノズル46)から切削液を切削ブレード38に供給しつつ保持テーブル8で保持された第二の被加工物20を切削ブレード38で切削する第二切削ステップと、を有し、
第一切削ステップを終了した後、切削液の供給を停止するとともに冷却液を冷却液ノズル60a,60bから噴射した状態にする切削液停止ステップを更に有する、切削方法とするものである。
【0084】
これにより、被加工物20を切削していないときには切削液が噴出しないため、切削液が過剰に切削ブレードに向けて噴出されることによる切削ブレードの腐食の進行を防ぐことができる。また、冷却液が噴出することで、切削ユニット34の周囲の雰囲気温度の上昇が防がれる。
【符号の説明】
【0085】
2 切削装置
7 撮像ユニット
8 保持テーブル
10 コントローラ
34 切削ユニット
38 切削ブレード
40 ブレードカバー
41a ブレードクーラーノズル
41b ブレードクーラーノズル
44 ブレードクーラーアセンブリ
46 シャワーノズル
48 開閉プレート
50 ドレスボード
54 シャワーノズルブロック
56 壁部
60a 冷却液ノズル
60b 冷却液ノズル
62a 接続ポート
62b 接続ポート
71 切削液供給源
72 切削液供給路
73 切削液制御弁
74 二酸化炭素制御弁
75 二酸化炭素供給源
76 検出器
81 冷却液供給源
82 冷却液供給路
83 冷却液制御弁
86 検出器
T1 アイドリング時間
Td ドレッシング時間
Tr アイドリング累積時間
S 切削液
R 冷却液