(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】無線通信システム、接続リカバリ方法、無線基地局、サーバ、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 36/16 20090101AFI20240130BHJP
H04W 12/06 20210101ALI20240130BHJP
H04W 24/04 20090101ALI20240130BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20240130BHJP
【FI】
H04W36/16
H04W12/06
H04W24/04
H04W92/20
(21)【出願番号】P 2020089324
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】玉置 真也
(72)【発明者】
【氏名】原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】南 勝也
(72)【発明者】
【氏名】久保 亮吾
【審査官】伊藤 嘉彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-046356(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0310240(US,A1)
【文献】特開2020-053784(JP,A)
【文献】特開2010-062936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の無線基地局が互いにカバーエリアを重複させて配置されている無線通信システムであって、
前記無線基地局は、
自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得する無線通信器と、
前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信する管理通信器と、
前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報を記憶するデータベースと、
前記他の無線基地局に通信障害が発生した場合、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続するように前記無線通信器を動作させる制御器と、
を備え
、
前記通信障害が、前記他の無線基地局と前記他接続の無線端末との接続が切断したことであり、
前記他の無線基地局は、前記管理通信器を介して前記通信障害を前記無線基地局に通知することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
複数の無線基地局が互いにカバーエリアを重複させて配置され
、前記無線基地局のそれぞれと接続するサーバを備えている無線通信システムであって、
前記無線基地局は、
自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得する無線通信器と、
前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信する管理通信器と、
前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報を記憶するデータベースと、
前記他の無線基地局に通信障害が発生した場合、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続するように前記無線通信器を動作させる制御器と、
を備え
、
前記通信障害が、前記他の無線基地局と前記サーバとの接続が切断したことであり、
前記サーバは、
前記通信障害が発生した前記他の無線基地局を検知する障害検知器と、
前記管理通信器を介して前記通信障害を前記無線基地局に通知する通知器と、
を有することを特徴とする無線通信システム。
【請求項3】
複数の無線基地局が互いにカバーエリアを重複させて配置されている無線通信システムでの接続リカバリ方法であって、
前記無線基地局が、自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得すること、
前記無線基地局が、前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信すること、
前記無線基地局が、前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報のデータベースを作成すること、及び
前記他の無線基地局に通信障害が発生した場合、前記無線基地局が、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続すること、
を行うことを特徴と
し、
前記通信障害が、前記他の無線基地局と前記他接続の無線端末との接続が切断したことである場合、前記他の無線基地局が、前記通信障害を前記無線基地局に通知することを特徴とする接続リカバリ方法。
【請求項4】
複数の無線基地局が互いにカバーエリアを重複させて配置され
、前記無線基地局のそれぞれと接続するサーバを備えている無線通信システムでの接続リカバリ方法であって、
前記無線基地局が、自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得すること、
前記無線基地局が、前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信すること、
前記無線基地局が、前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報のデータベースを作成すること、及び
前記他の無線基地局に通信障害が発生した場合、前記無線基地局が、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続すること、
を行うことを特徴と
し、
前記通信障害が、前記他の無線基地局と前記サーバとの接続が切断したことである場合、前記サーバが、前記通信障害が発生した前記他の無線基地局を検知すること、及び前記通信障害を前記無線基地局に通知することを特徴とする接続リカバリ方法。
【請求項5】
互いのカバーエリアを重複させて配置されている無線基地局であって、
自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得する無線通信器と、
前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信する管理通信器と、
前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報を記憶するデータベースと、
前記他の無線基地局
に通信障害が発生した場合、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続するように前記無線通信器を動作させる制御器と、
を備え
、
前記通信障害が、前記他の無線基地局と前記他接続の無線端末との接続が切断したことである場合、前記制御器は前記他の無線基地局から前記管理通信器を介して前記通信障害が通知されることを特徴とする無線基地局。
【請求項6】
無線通信システムのサーバと接続するとともに、互いのカバーエリアを重複させて配置されている無線基地局であって、
自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得する無線通信器と、
前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信する管理通信器と、
前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報を記憶するデータベースと、
前記他の無線基地局
に通信障害が発生した場合、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続するように前記無線通信器を動作させる制御器と、
を備え
、
前記通信障害が、前記サーバが検知した、前記他の無線基地局と前記サーバとの接続が切断したことである場合、
前記管理通信器は、前記サーバから前記通信障害が通知されること
を特徴とする無線基地局。
【請求項7】
請求項5
又は6に記載の無線基地局としてコンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の無線基地局が設置された無線通信システムにおける無線端末との接続リカバリ手法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、安価かつ低消費電力のIoT(Internet of Things)のセンサ類の普及により、様々なセンサ情報に基づいた環境の状態/情報を活用するIoTサービスが普及しつつある。IoTセンサ情報の活用例として災害時の情報取得が一例として挙げられる。しかしながら、災害によって例えば無線アクセスポイント(AP;例えばWi-Fiアクセスポイント等)等が故障した場合は、該アクセスポイント配下の一帯の情報が取得できなくなり、被害状況の把握が遅れたり、避難情報にセンサ情報を活用できないという課題が存在する。
【0003】
当該課題に対して、無線アクセスポイントが故障した際の復旧方法や冗長システムが複数報告されている。
例えば、特許文献1は、APに接続不可の時に、アドホックモードを利用して近隣のSTA(端末)経由でデータを送信する通信方法を開示する。
特許文献2から4は、AP間で事前に情報交換をしておき、ある端末がセカンダリのAPを検知したときにトリガに応じてセカンダリに接続を変更する装置を開示する。
特に特許文献4は、切り替え時に無線チャンネルも考慮し、故障したAPが当初使用していた無線チャネルを用いることで端末側への影響を少なくすることも開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-304253号公報
【文献】米国特許US8019344
【文献】米国特許US8953521
【文献】特表2008-526104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した文献には、それぞれ次のような課題がある。
特許文献1の通信方法には、当該機能をSTA(端末)側に実装する必要があり、全ての端末に当該機能を実装することは困難という課題がある。また、特許文献1の通信方法には、APの上流NW側に対して故障や輻輳を検知及び回避することが困難という課題もある。
特許文献2から4には、2つのAP間のハンドオーバー手法しか開示されておらず、3以上のAPでの接続変更について当該手法を適用することが困難という課題がある。さらに、特許文献2から4には、当該機能を端末側に実装する必要があり、全ての端末に当該機能を実装することは困難という課題もある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の無線基地局が、カバーエリアを一部重複させながら面的に展開されている環境において、無線端末の機能を更新することなく、通信障害が発生した場合でも無線端末と上位ネットワークとの疎通を維持できる無線通信システム、接続リカバリ方法、無線基地局、サーバ、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る無線通信システムは、AP1のカバーエリア内にあるが、現在は他のAP2と通信している無線端末の情報を予め取得しておき、通信障害が発生したときに、AP2からAP1に切り替えて無線端末の通信を維持することとした。
【0008】
具体的には、本発明に係る無線通信システムは、複数の無線基地局が互いにカバーエリアを重複させて配置されている無線通信システムであって、
前記無線基地局は、
自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得する無線通信器と、
前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信する管理通信器と、
前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報を記憶するデータベースと、
前記他の無線基地局に通信障害が発生した場合、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続するように前記無線通信器を動作させる制御器と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る接続リカバリ方法は、複数の無線基地局が互いにカバーエリアを重複させて配置されている無線通信システムでの接続リカバリ方法であって、
前記無線基地局が、自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得すること、
前記無線基地局が、前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信すること、
前記無線基地局が、前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報のデータベースを作成すること、及び
前記他の無線基地局に通信障害が発生した場合、前記無線基地局が、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続すること、
を行うことを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明に係る無線基地局は、互いのカバーエリアを重複させて配置されている無線基地局であって、
自装置に接続可能であり、且つ前記カバーエリアが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得する無線通信器と、
前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信する管理通信器と、
前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報を記憶するデータベースと、
前記他の無線基地局と前記他接続の無線端末との接続が切断する通信障害が発生した場合、前記データベースに基づいて前記他配下の無線端末と接続するように前記無線通信器を動作させる制御器と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
APのカバーエリアが重複している部分にある無線端末は、そのカバーエリアのAPのいずれとも接続できるが、通常は1つのAPのみと接続している。無線端末は自身のアドレスをブロードキャストしているので、当該無線端末がカバーエリア内にあるAPはそのアドレスを入手できる。つまり、APは自身のカバーエリア内にある未接続の無線端末を知ることができる。
【0012】
一方、無線端末が接続しているAPは、当該無線端末のアドレスの他に、接続のための認証情報も取得することができる。そこで、AP同士で無線端末のアドレスと認証情報を交換することで、APは自身のカバーエリア内にある未接続の無線端末の認証情報を取得することができる。例えば、APは、隣接する複数のAPから情報を受け取り、無線端末のアドレスと認証情報をリストにしてデータベースに保管しておく。
【0013】
APは、このようなリストを保持することで、隣接するAPに通信障害が発生した場合、隣接するAPと通信していた無線端末と接続することができ、無線端末の情報を上位ネットワークへ継続的に転送することができる。本手法は、APの数が2に限られず、3以上でも可能であり、無線端末の機能の更新も不要である。
【0014】
従って、本発明は、複数の無線基地局が、カバーエリアを一部重複させながら面的に展開されている環境において、無線端末の機能を更新することなく、通信障害が発生した場合でも無線端末と上位ネットワークとの疎通を維持できる無線通信システム、接続リカバリ方法、及び無線基地局を提供することができる。
【0015】
例えば、前記通信障害が、前記他の無線基地局と前記他接続の無線端末との接続が切断したことであり、前記他の無線基地局は、前記管理通信器を介して前記通信障害を前記無線基地局に通知することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る無線通信システムは、前記無線基地局のそれぞれと接続するサーバをさらに備えており、
前記接続障害が、前記他の無線基地局と前記サーバとの接続が切断したことであり、
前記サーバは、
前記接続障害が発生した前記他の無線基地局を検知する障害検知器と、
前記管理通信器を介して前記通信障害を前記無線基地局に通知する通知器と、
を有することを特徴とする。
【0017】
つまり、本発明に係るサーバは、1つの無線基地局と、前記1つの無線基地局のカバーエリアに重複するカバーエリアを持つ他の無線基地局と接続するサーバであって、
前記1つの無線基地局との接続が切断する接続障害が発生したときに、前記接続障害が発生した前記1つの無線基地局を検知する障害検知器と、
前記通信障害を前記他の無線基地局に通知する通知器と、
を有することを特徴とする。
【0018】
本無線通信システムは、AP自体の障害にもAPと上位ネットワークとの通信障害にも対応できる。
【0019】
また、本発明は、前記無線基地局としてコンピュータを機能させるプログラムである。
【0020】
さらに、本発明は、前記サーバとしてコンピュータを機能させるプログラムである。
【0021】
本無線基地局及びサーバは、コンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0022】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、複数の無線基地局が、カバーエリアを一部重複させながら面的に展開されている環境において、無線端末の機能を更新することなく、通信障害が発生した場合でも無線端末と上位ネットワークとの疎通を維持できる無線通信システム、接続リカバリ方法、無線基地局、サーバ、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る無線通信システムを説明する図である。
【
図2】本発明に係る無線基地局を説明する図である。
【
図4】本発明に係る無線通信システムの動作を説明する図である。
【
図5】本発明に係る無線通信システムの動作を説明する図である。
【
図6】本発明に係る無線通信システムの動作を説明する図である。
【
図7】本発明に係る接続リカバリ方法を説明する図である。
【
図8】本発明に係る無線通信システムの動作を説明する図である。
【
図9】本発明に係る無線通信システムの動作を説明する図である。
【
図10】本発明に係る無線通信システムの動作を説明する図である。
【
図11】本発明に係る無線基地局のカバーエリアを説明する図である。
【
図12】本発明に係る接続リカバリ方法を説明する図である。
【
図13】本発明に係る無線基地局が有する配下の無線端末の救済先リストを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0026】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の無線通信システム301を説明する図である。無線通信システム301は、複数の無線基地局10が互いにカバーエリアArを重複させて配置されている無線通信システムである。本実施形態では、無線基地局は6台(10-1~10-6)であり、それぞれのカバーエリア(Ar1~Ar6)の一部が重なるように配置されている。また、これらのカバーエリアの中に無線端末30が存在している。
【0027】
図2は、無線基地局10を説明する図である。無線基地局10は、
自装置に接続可能であり、且つカバーエリアArが重複する他の無線基地局に接続中である他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報を取得する無線通信器11と、
前記他の無線基地局から送信された前記他の無線基地局に接続中である他接続の無線端末のアドレス情報及び認証情報を受信する管理通信器12と、
前記他配下の無線端末からブロードキャストされたアドレス情報と前記他接続の無線端末のアドレス情報とを照合し、前記他配下の無線端末のアドレス情報及び認証情報を記憶するデータベース13と、
前記他の無線基地局に通信障害が発生した場合、データベース13に基づいて前記他配下の無線端末と接続するように無線通信器11を動作させる制御器14と、
を備えることを特徴とする。
【0028】
図4~
図6は、無線通信システム301の動作を説明する図である。
図4~
図6では、説明容易のため、無線基地局が2台(10-1、10-2)の場合を説明する。基地局が3台以上の場合も同様である。
図4及び
図5は、通信障害の発生前を説明する図である。
図6は、通信障害の発生後を説明する図である。
【0029】
無線基地局10-1は、端末と接続できる領域であるカバーエリアAr1を形成する。無線基地局10-2は、端末と接続できる領域であるカバーエリアAr2を形成する。カバーエリアAr1とカバーエリアAr2とが一部重複するように無線基地局10-1と無線基地局10-2とが設置される。
【0030】
無線基地局10-1と無線基地局10-2とは、それぞれの管理通信器12を介して管理線で接続される。さらに当該管理線にはサーバ50が接続される。無線基地局10-1と無線基地局10-2は、それぞれのカバーエリア内にある端末30と接続し、端末30と上位ネットワーク40との間でデータを転送する。
【0031】
端末30-1は、カバーエリアAr1にあり、無線基地局10-1と接続している。端末30-2は、カバーエリアAr2にあり、無線基地局10-2と接続している。端末30-3は、カバーエリアAr1とカバーエリアAr2との重複エリアにあり、現在は無線基地局10-2と接続している。
【0032】
無線基地局10-1は、無線通信器11を介して端末30-1のアドレス(例えば、MACアドレス)と認証情報(例えば、SSID及びパスワード)を認識できる。無線基地局10-2は、無線通信器11を介して端末30-2と端末30-3のアドレスと認証情報を認識できる。さらに、無線基地局10-1と無線基地局10-2は、それぞれが認識した端末のアドレスと認証情報(情報I-2)を管理線を介して交換する(後述するステップS02)。
【0033】
また、各端末30は定期的に自身のアドレス(例えば、MACアドレス)をブロードキャストしている。このため、無線基地局10-1は、未接続であるが、自身のカバーエリアAr1にある端末30-3のアドレス(情報I-1)を無線通信器11で受信することができる(後述するステップS03)。
【0034】
ここで、無線基地局10-1の制御器14は、無線基地局10-2から得た情報I-2と自身の無線通信器11から得た情報I-1とを照合する。情報I-2には、カバーエリアAr2内にある全ての端末のアドレスと認証情報が含まれる。一方、情報I-1には、カバーエリアAr1内にある未接続の端末30のアドレスが含まれる。つまり、両情報に含まれているアドレスは、カバーエリアAr1とカバーエリアAr2の重複エリアにあり、且つ、現在は無線基地局10-2に接続している端末のアドレスといえる。
【0035】
無線基地局10-1の制御器14は、カバーエリアAr1とカバーエリアAr2の重複エリアにあり、且つ、現在は無線基地局10-2に接続している端末のアドレスと認証情報のリストLstを作成し、データベース13に記憶させる(後述するステップS03)。このリストLstに記載された端末が、無線基地局10-2に通信障害が発生したときに無線基地局10-1が救済できる対象となる。
【0036】
また、
図5のように無線基地局10-1と無線基地局10-2とは定期的に通信I-3を行い、互いの状況を把握している。通信I-3は、例えば、Keep-aliveである。なお、無線基地局の状態をサーバ50が監視していてもよい。
図3は、サーバ50を説明する図である。
サーバ50は、無線基地局10-1と、無線基地局10-1のカバーエリアAr1に重複するカバーエリアAr2を持つ無線基地局10-2と接続するサーバであって、
無線基地局10-2との接続が切断する接続障害が発生したときに、前記接続障害が発生した無線基地局10-2を検知する障害検知器51と、
前記通信障害を無線基地局10-1に通知する通知器52と、
を有する。
【0037】
図6は、無線基地局10-2に通信障害(例えば、カバーエリアAr2内の端末と通信できなくなったこと、又は、上位ネットワーク40との疎通ができなくなったこと)が発生したときの動作を説明する図である。
【0038】
無線基地局10-2は、通信障害が発生したとき、カバーエリアAr2内の端末(30-2、30-3)との接続を切断する。
無線基地局10-1は、情報I-3又は障害を検知したサーバ50からの通知により無線基地局10-2の通信障害を知ることができる。
無線基地局10-2の通信障害を知った無線基地局10-1の制御部14は、上位ネットワーク40との疎通を確認し、データベース13に記憶したリストLstを参照し、救済できる端末30-3の情報(アドレス及び認証情報)を取り出す。そして、無線基地局10-1の制御部14は、当該情報を使って端末30-3との接続を開始する(後述するステップS04)。端末30-3にとっては再接続となるが、接続先の無線基地局が変更になったことを認識する必要が無い。
【0039】
図7は、上記動作をフローチャートにしたものであり、無線通信システム301の接続リカバリ方法を説明している。
本接続リカバリ方法は、
無線基地局10-1が、自装置に接続可能であり、且つカバーエリアが重複する他の無線基地局10-2に接続中である他配下の無線端末30-3からブロードキャストされたアドレス情報を取得すること(ステップS01)、
無線基地局10-1が、他の無線基地局10-2から送信された他の無線基地局10-2に接続中である他接続の無線端末(30-2、30-3)のアドレス情報及び認証情報を受信すること(ステップS02)、
無線基地局10-1が、他配下の無線端末30-3からブロードキャストされたアドレス情報と他接続の無線端末(30-2、30-3)のアドレス情報とを照合し、他配下の無線端末30-3のアドレス情報及び認証情報のデータベース13を作成すること(ステップS03)、及び
他の無線基地局10-2に通信障害が発生した場合、無線基地局10-1が、データベース13に基づいて他配下の無線端末30-3と接続すること(ステップS04)、
を行う。
【0040】
(実施形態2)
実施形態1では、無線基地局が2つ、無線端末が3つの場合を説明したが、本実施形態では、無線基地局が3つ、無線端末が6つの場合を説明する。
図8~
図10は、本実施形態の無線通信システム302の動作を説明する図である。
【0041】
無線通信システム302は、無線端末(30-1~30-6)、無線基地局(10-1~10-3)、及びサーバ50を備える。無線基地局(10-1~10-3)は、それぞれカバーエリア(Ar1~Ar3)を形成する。カバーエリアAr1には無線端末(30-1~30-4)、カバーエリアAr2には無線端末(30-2~30-5)、カバーエリアAr3には無線端末(30-3~30-6)が含まれる。
【0042】
図8は、通信障害の発生前の状態を説明する図である。無線端末(30-1、30-2)は無線基地局30-1と接続し、無線端末(30-3、30-4)は無線基地局30-2と接続し、無線端末(30-5、30-6)は無線基地局30-3と接続している。各無線端末(30-1~30-6)は、自身のアドレスをブロードキャスト81しており、各無線基地局(10-1~10-3)は、自装置のカバーエリア内にあり、接続していない無線端末のアドレスを把握することができる(ステップ82)。また、各無線基地局(10-1~10-3)は、自装置のカバーエリア内で接続中の無線端末の情報83を互いに交換する。情報83には、無線端末のアドレスや認証情報(SSID、パスワード、認証方式)等が含まれる。各無線基地局(10-1~10-3)は、これらの情報から自装置のカバーエリア内にあり、他の無線基地局に接続中の無線端末を把握し、救済可能な無線端末としてリストLstを作成する(ステップ84)。
【0043】
なお、
図11のように3つ以上の無線基地局のカバーエリアが重複し、無線端末を救済可能な無線基地局が複数ある場合もある。例えば、カバーエリアAr1の無線基地局が通信障害となった場合、その周囲にあるカバーエリア(Ar2~Ar6)の無線基地局がカバーエリアAr1内の無線端末を救済する。それぞれの無線基地局は、制御器14がデータベース13内のリストLstを参照し、無線端末のアドレスからカバーエリアの重複を判断することができる。
【0044】
例えば、カバーエリアAr1内のエリアGは、カバーエリアAr3、カバーエリアAr4、及びカバーエリアAr5が重複している。カバーエリアAr1の無線基地局が通信障害を発生した場合、エリア91にある無線端末をカバーエリアAr3、カバーエリアAr4、及びカバーエリアAr5のいずれの無線基地局が救済するかが問題となる。
【0045】
図12は、このような場合、どのように無線端末を救済する無線基地局を決定するかを説明するフローチャートである。ここでは、注目する無線基地局を「自装置」、その周囲に配置されている無線基地局を「近傍装置」として説明する。具体的には、自装置は
図4の無線基地局10-2、近傍装置は
図4の無線基地局10-1である。なお、自装置の周囲とは、自装置からある閾値より短い距離以内としてもよいし、自装置の電波強度が所定値より大きい範囲としてもよい。また、近傍装置は複数あるので「近傍装置群」と表現することがある。
【0046】
まず、自装置は配下の無線端末の情報(アドレス、認証情報、認証方法、接続情報等)を近傍装置群に広告する(ステップS11)。同時に、自装置は近傍装置群からそれぞれの近傍装置の配下の無線端末の情報(アドレス、認証情報、認証方法、接続情報等、ここではブロードキャストされたアドレスも含む)を受信する(ステップS12)。自装置は、ステップS11の情報のアドレスとステップS12の情報のアドレスを照合し、自装置のカバーエリア内にあり、近傍装置と未接続である無線端末を検出する(ステップS13)。自装置配下の無線端末の番号iを1とする(ステップS14)。
【0047】
自装置は、通信障害が発生したとき、無線端末iについて救済できる近傍装置があるかどうかを判断する(ステップS15)。具体的には、近傍装置が無線端末iのアドレスを認知している場合、その近傍装置は無線端末iを救済できると判断する。
【0048】
ステップS15で“Yes”の場合、救済可能な近傍装置が複数あるか否かを判断する(ステップS16)。ステップS16で“Yes”の場合、所定の基準(ランダム、電波強度、リソース余力)に従い、1つの近傍装置を選択する(ステップS17)。
ステップS16で“No”の場合、その近傍装置の情報を、及びステップS17で選択した近傍装置の情報を、無線端末iを救済する装置としてデータベースに記載する(ステップS18)。一方、ステップS15で“No”の場合、データベースに無線端末iを救済できない旨を記載する(ステップS19)。
【0049】
自装置配下の全ての無線端末について調査した場合は終了し(ステップS20にて“No”)、未調査の無線端末がある場合はステップS15から繰り返す(ステップS20にて“Yes”)。
本作業が終了すると、自装置配下の無線端末について
図13のようなリストができ上る。自装置に通信障害が発生したときは、
図13のリストを参照して近傍装置で救済する。
【0050】
図9は、無線通信システム302に通信障害が発生したときの動作を説明する図である。本例は、無線基地局10-2が能動的に通信障害を広告する例である。通信障害として無線基地局10-2と無線端末(30-3、30-4)との接続が切断した場合を説明する。なお、無線基地局10-2は、当該接続の切断が発生した事実を正しく認識できているとする(ステップ91、92)。
【0051】
無線基地局10-2は、近傍の無線基地局(10-1、10-3)に無線端末(30-3、30-4)の接続が切断したことを通知する(断通知93)。なお、断通知93の宛先は、
図12で作成した
図13のリストに従う。断通知93を受けた無線基地局(10-1、10-3)は、データベース13が保持するリストLstを参照し、無線端末と接続する作業(認証等)を開始する(救済作業94)。本例では、無線基地局10-1が無線端末30-3を救済すべく、認証を行って接続し、通信を開始する。また、無線基地局10-2が無線端末30-4を救済すべく、認証を行って接続し、通信を開始する。
【0052】
図10は、無線通信システム302に通信障害が発生したときの動作を説明する図である。本例は、無線基地局10-2が自身に発生した通信障害を認識できない例である。通信障害として無線基地局10-2とサーバ50との接続が切断した場合を説明する。なお、サーバ50は、無線基地局10-2とサーバ50との接続が切断した事実を正しく認識できているとする(ステップ91a、92a)。また、サーバ50は、クラウドであってもよい。
【0053】
各無線基地局10は、定期的にサーバ50と疎通確認90aを行う。
無線基地局10-2は、ある時点でサーバ50との通信ができないことからサーバ50との接続が切断したことを把握する(ステップ93a)。サーバ50との接続が切断されたことを認識した無線基地局10-2は、配下の無線端末(30-3、30-4)との接続を切断する(断通知94a)。
【0054】
一方、サーバ50は、近傍の無線基地局(10-1、10-3)に無線基地局10-2との接続が切断したことを通知する(断通知95a)。なお、断通知95aの宛先は、
図12で作成した
図13のリストに従う。サーバ50は、事前に各無線基地局10から当該リストを受信しておく。
【0055】
断通知95aを受けた無線基地局(10-1、10-3)は、データベース13が保持するリストLstを参照し、無線端末と接続する作業(認証等)を開始する(救済作業96a)。本例では、無線基地局10-1が無線端末30-3を救済すべく、認証を行って接続し、通信を開始する。また、無線基地局10-2が無線端末30-4を救済すべく、認証を行って接続し、通信を開始する。
【0056】
(実施形態3)
無線基地局10及びサーバ50はコンピュータとプログラムによっても実現でき、プログラムを記録媒体に記録することも、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0057】
(他の実施形態)
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素を適宜な組み合わせにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10、10-1、10-2、・・・・:無線基地局(AP)
11:無線通信器
12:管理通信器
13:データベース
14:制御器
30、30-1、30-2、30-3:無線端末
40:上位ネットワーク
50:サーバ
51:障害検知器
52:通知器
301、302:無線通信システム