(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-29
(45)【発行日】2024-02-06
(54)【発明の名称】シリンダキャビネット
(51)【国際特許分類】
F17C 13/08 20060101AFI20240130BHJP
【FI】
F17C13/08 301A
(21)【出願番号】P 2023106841
(22)【出願日】2023-06-29
【審査請求日】2023-06-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 明之
(72)【発明者】
【氏名】城 和則
(72)【発明者】
【氏名】曽根 大介
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 遼
【審査官】二ッ谷 裕子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-176798(JP,A)
【文献】特許第7157891(JP,B1)
【文献】特開2022-156780(JP,A)
【文献】特開2022-182450(JP,A)
【文献】米国特許第8459316(US,B2)
【文献】特開平8-193700(JP,A)
【文献】特開平8-100412(JP,A)
【文献】特開平10-110897(JP,A)
【文献】特開2000-65297(JP,A)
【文献】特開2021-65981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/08
F17C 1/00 - 13/12
B62B
B65B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用中又は使用されるガスボンベを格納可能で、かつ前記ガスボンベを搬入、搬出する開口部を有するキャビネット本体と、
前記開口部を
自動で開閉する扉と、
前記扉を前記キャビネット本体における前記開口部の反対側に退避させた位置である退避位置と、前記開口部を前記扉で閉鎖可能な位置である進出位置との間において、前記キャビネット本体の側壁に沿って前記扉を移動可能なスライド機構と、
前記スライド機構により移動する前記扉を、前記開口部を閉鎖する閉鎖位置と、前記開口部を開放する開放位置との間において開閉可能に案内し、かつ前記扉を吊下げ状態に支持する回転支持機構と
、
前記扉の開閉を制御する機器と、
前記スライド機構に設けられ、前記キャビネット本体の備える床部に沿って前記扉に追従可能な台車と、
を備え、
前記台車は、
前記スライド機構に設けられた台車本体と、
前記床部に対して交差する方向へ移動可能にサスペンションを介して前記台車本体に設けられたローラと、を備える、
シリンダキャビネット。
【請求項2】
前記回転支持機構は、
前記キャビネット本体の頂部に設けられ、前記扉を開閉可能に案内するカーブレールと、
前記カーブレールに沿って移動可能で、前記扉を吊り下げる懸垂部と、を備え、
前記スライド機構による前記扉の移動に追従して前記カーブレールに沿って前記懸垂部を移動させることにより前記扉を開閉する、請求項1に記載のシリンダキャビネット。
【請求項3】
前記回転支持機構及び前記スライド機構は、前記キャビネット本体の内部に設けられている、請求項1に記載のシリンダキャビネット。
【請求項4】
前記スライド機構は、前記扉を前記側壁に沿って移動させエアシリンダを備える、請求項1に記載のシリンダキャビネット。
【請求項5】
前記扉の位置状況を判断する位置センサを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリンダキャビネット。
【請求項6】
前記扉の移動範囲を検知するエリアセンサを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリンダキャビネット。
【請求項7】
前記エリアセンサで障害物を検知した場合に、前記移動範囲の周囲に前記扉の開閉を周知させる警告部を備える、請求項6に記載のシリンダキャビネット。
【請求項8】
前記扉の開閉作動を自動と手動とに切り替える切替スイッチを備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のシリンダキャビネット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダキャビネットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリンダキャビネットは、各種ガスを供給するための設備として広く用いられている。シリンダキャビネットでは、扉を開閉し、その内側の格納スペースに一対のガスボンベを並立した状態で格納している。シリンダキャビネットでは、何れか一方のガスボンベからガスを供給している間に、何れか他方のガスボンベを交換することで、ガスの供給を中断することなく行うことが可能となっている。
【0003】
ところで、上述したガスボンベの交換作業では、ボンベ搬送用台車を用いて、ガスボンベの搬送を行うと共に、ボンベ搬送用台車とシリンダキャビネットとの間で、ガスボンベの搬出及び搬入(入れ替え)が行われる。
【0004】
しかしながら、このようなガスボンベの交換作業は、作業者が重量物であるガスボンベを抱え上げて行う必要があり、非常に危険で且つ重労働である。さらに、ガスボンベの交換作業は、シリンダキャビネットの狭い格納スペースに対してガスボンベの搬出及び搬入を行わなければならず、作業性も悪かった。
【0005】
そこで、下記特許文献1、2に記載の発明では、ガスボンベの交換作業を容易にするため、シリンダキャビネットの開口部からガスボンベの搬出及び搬入をボンベ搬送用台車により自動で行うことが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第6745957号公報
【文献】特許第6812614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、シリンダキャビネットの開口部を開閉するためには、扉を手動により開放、閉鎖する必要がある。このため、上述したボンベ搬送用台車によりガスボンベの搬出及び搬入が自動化されるにつれて、開口部の開閉を自動化する必要性が高まってきた。また、例えば、開放された扉が、ボンベ搬送用台車の移動経路に干渉することを抑えるべき旨の課題がある。
【0008】
上記事情に鑑み、本発明は、シリンダキャビネットに備えた扉の開閉を自動化しつつ、ボンベ搬送用台車の移動に支障をきたさないようにすることができる技術の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様は、使用中又は使用されるガスボンベを格納可能で、かつ前記ガスボンベを搬入、搬出する開口部を有するキャビネット本体と、前記開口部を開閉する扉と、前記扉を前記キャビネット本体における前記開口部の反対側に退避させた位置である退避位置と、前記開口部を前記扉で閉鎖可能な位置である進出位置との間において、前記キャビネット本体の側壁に沿って前記扉を移動可能なスライド機構と、前記スライド機構により移動する前記扉を、前記開口部を閉鎖する閉鎖位置と、前記開口部を開放する開放位置との間において開閉可能に案内し、かつ前記扉を吊下げ状態に支持する回転支持機構と、を備えるシリンダキャビネットである。
【0010】
本発明の一態様は、前記回転支持機構は、前記キャビネット本体の頂部に設けられ、前記扉を開閉可能に案内するカーブレールと、前記カーブレールに沿って移動可能で、前記扉を吊り下げる懸垂部と、を備え、前記スライド機構による前記扉の移動に追従して前記カーブレールに沿って前記懸垂部を移動させることにより前記扉を開閉する。
【0011】
本発明の一態様は、前記スライド機構に設けられ、前記キャビネット本体の備える床部に沿って前記扉に追従可能な台車を備え、前記台車は、前記スライド機構に設けられた台車本体と、前記床部に対して交差する方向へ移動可能にサスペンションを介して前記台車本体に設けられたローラと、を備える。
【0012】
本発明の一態様は、前記回転支持機構及び前記スライド機構は、前記キャビネット本体の内部に設けられている。
【0013】
本発明の一態様は、前記スライド機構は、前記扉を前記側壁に沿って移動させるエアシリンダを備える。
【0014】
本発明の一態様は、前記扉の位置状況を判断する位置センサを備える。
【0015】
本発明の一態様は、前記扉の移動範囲を検知するエリアセンサを備える。
【0016】
本発明の一態様は、前記エリアセンサで障害物を検知した場合に、前記移動範囲の周囲に前記扉の開閉を周知させる警告部を備える。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、シリンダキャビネットに備えた扉の開閉を自動化しつつ、ボンベ搬送
用台車の移動に支障をきたさないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るシリンダキャビネットを扉が閉鎖された状態において幅方向に複数個並べた斜視図である。
【
図2】実施形態に係るシリンダキャビネットを扉が開放された状態において開口部から破断した正面図である。
【
図3】
図2のシリンダキャビネットをIII-III線に沿って破断した断面図である。
【
図4】
図2のシリンダキャビネットをIV-IV線に沿って破断した断面図である。
【
図5】実施形態に係るシリンダキャビネットの回転支持機構を示す斜視図である。
【
図6】実施形態に係るシリンダキャビネットの開口部を扉で閉鎖した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
(シリンダキャビネット)
本発明の一実施形態として、例えばガスボンベGBを収納するシリンダキャビネット1について説明する。
図1は、実施形態に係るシリンダキャビネットを扉が閉鎖された状態において幅方向に複数個並べた斜視図である。
図2は、実施形態に係るシリンダキャビネットを扉が開放された状態において開口部から破断した正面図である。
【0020】
図1、
図2に示すように、シリンダキャビネット1は、ガスボンベGB内に充填されたガスを半導体製造装置(図示せず)に供給する設備として、フロア(床面)FLの上に設置されている。シリンダキャビネット1は、全体として略直方体状を為すと共に、開口部10に左右一対の扉3を有している。
以下、シリンダキャビネット1において開口部10側を前方、開口部10の反対側を後方、シリンダキャビネット1を開口部10の正面側からみて左側を左方向、右側を右方向として説明する。また、シリンダキャビネット1を設置するフロアFL側を下方、フロアFLの反対側を上方として説明する。
【0021】
シリンダキャビネット1では、扉3を開閉し、その内側の格納スペースSに一対のガスボンベGBを左右方向(幅方向)に並立した状態で格納している。また、シリンダキャビネット1では、何れか一方のガスボンベGBからガスを供給している間に、何れか他方のガスボンベGBを交換することで、ガスの供給を中断することなく行うことが可能となっている。
【0022】
なお、シリンダキャビネット1には、例えば、制御ボックス、配管用ボックス(何れも図示せず)等が設けられている。不図示の制御ボックスは、ガスボンベGBと接続される配管や、扉3の開閉、弁の開閉や圧力の監視、ガス漏れの監視等を行うための機器を収納する。不図示の配管用ボックスは、半導体製造装置等に接続するための配管を収納する。
また、不図示の制御ボックスには、上位装置と通信するための通信部(図示せず)が備えられ、通信部によって扉3の開閉の情報、弁の開閉の情報、圧力の監視結果、ガス漏れの監視結果及びガスボンベGBの残量の情報等が上位装置に送信される。
【0023】
図3は、
図2のシリンダキャビネットをIII-III線に沿って破断した断面図である。
図4は、
図2のシリンダキャビネットをIV-IV線に沿って破断した断面図である。
図2~
図4に示すように、シリンダキャビネット1は、キャビネット本体2と、左右一対の扉3と、左右一対のスライド機構4と、左右一対の回転支持機構5と、左右一対の台車6と、を備えている。また、シリンダキャビネット1は、位置センサと、エリアセンサと、警告部と、切替スイッチ(何れも図示せず)と、を備えている。
【0024】
(キャビネット本体)
キャビネット本体2は、使用中又は使用されるガスボンベGBを格納可能に全体として略直方体状に形成されている。キャビネット本体2は、床部2a、左側壁(側壁)2b、右側壁(側壁)2c、頂部2d、及び背面壁2e等を有している。キャビネット本体2は、床部2a、左側壁2b、右側壁2c、頂部2d、及び背面壁2e等によりガスボンベGBを格納可能な格納スペースSが形成されている。また、キャビネット本体2は、ガスボンベGBを搬入、搬出する開口部10を正面に有している。開口部10は、正面視において矩形状に形成されている。
【0025】
キャビネット本体2の内部(すなわち、ガスボンベGBを格納する格納スペースS)には、左右一対のスライド機構4、左右一対の回転支持機構5、及び左右一対の台車6が設けられている。左側のスライド機構4及び左側の回転支持機構5に左側の扉3が、開口部10における左側半分を開閉可能に支持されている。また、右側のスライド機構4及び右側の回転支持機構5に右側の扉3が、開口部10における右側半分を開閉可能に支持されている。
【0026】
なお、シリンダキャビネット1の左側構成と右側構成とは、概ね左右対称に構成されている。よって、シリンダキャビネット1の左側構成及び右側構成において各構成部材に同じ符号を付し、左側構成について詳しく説明して右側構成の説明を省略する。また、左側の扉3が開口部10の左側半分を開閉する作動を、「扉3が開口部10を開閉する」と略記する。
【0027】
(扉)
扉3は、開口部10を開閉可能にスライド機構4及び回転支持機構5に支持されている。扉3は、スライド機構4により退避位置と進出位置との間を移動可能である。退避位置は、開口部10を開放した扉3を、キャビネット本体2における開口部10の反対側に退避させてキャビネット本体2の背面壁2e側に配置することによりキャビネット本体2の内部に収納する位置である。進出位置は、扉3をキャビネット本体2の開口部10側の位置で、かつ開口部10を扉3で閉鎖可能な位置ある。扉3は、スライド機構4により退避位置と進出位置との間を自動的に移動する。
【0028】
また、扉3は、回転支持機構5により開放位置と閉鎖位置との間を移動可能である。開放位置は、扉3が、キャビネット本体2の開口部10を開放する位置である。閉鎖位置は、扉3が、キャビネット本体2の開口部10を閉鎖する位置である。扉3は、スライド機構4及び回転支持機構5により開放位置と閉鎖位置との間を自動的に移動する。
以下、扉3において、スライド機構4及び回転支持機構5に支持される側を基端部3a、基端部3aの反対側を先端部3bとして説明する。
【0029】
(スライド機構)
スライド機構4は、扉3の退避位置と進出位置との間において、扉3をキャビネット本体2の左側壁2bに沿って移動可能である。スライド機構4は、第1ロッドレスシリンダ12と、第1リニアガイド13と、第2リニアガイド14と、第1スライドプレート15と、第2ロッドレスシリンダ16と、第2スライドプレート17と、を備えている。
【0030】
第1ロッドレスシリンダ12は、キャビネット本体2の左側壁2bに設けられている。第1ロッドレスシリンダ12は、第1シリンダ本体21と、第1スライダ22と、を備えている。第1シリンダ本体21は、左側壁2bの上下方向中央において前後方向に向けて配置されている。第1シリンダ本体21の内部に第1ピストン(不図示)が空圧で移動自在に収納され、第1ピストンに第1スライダ22が設けられている。すなわち、第1ロッドレスシリンダ12は、エアシリンダである。第1スライダ22は、扉3の進出位置と退避位置との間において第1シリンダ本体21に沿って空圧で前後方向に移動する。第1スライダ22は、第1スライドプレート15において上端部寄りの部位15aに固定されている。
【0031】
第1リニアガイド13は、第1ロッドレスシリンダ12の上方においてキャビネット本体2の左側壁2bに設けられている。第1リニアガイド13は、第1レール24と、第1ブロック25と、を備えている。第1レール24は、キャビネット本体2の左側壁2bにおいて扉3の進出位置と退避位置との間に前後方向に沿って固定されている。第1ブロック25は、扉3の進出位置と退避位置との間において第1レール24に沿って円滑に移動可能に支持されている。第1ブロック25は、第1スライドプレート15の上端部15bに固定されている。
【0032】
第2リニアガイド14は、第1ロッドレスシリンダ12の下方においてキャビネット本体2の左側壁2bに設けられている。第2リニアガイド14は、第1リニアガイド13と同様に構成され、第2レール27と、第2ブロック28と、を備えている。第2レール27は、キャビネット本体2の左側壁2bにおいて扉3の進出位置と退避位置との間に前後方向に沿って固定されている。第2ブロック28は、扉3の進出位置と退避位置との間において第2レール27に沿って円滑に移動可能に支持されている。第2ブロック28は、第1スライドプレート15の下端部15c寄りの部位15dに固定されている。
【0033】
第1スライドプレート15は、第1ロッドレスシリンダ12の第1スライダ22、第1リニアガイド13の第1ブロック25、及び第2リニアガイド14の第2ブロック28に固定されている。第1スライドプレート15は、一定の幅寸法で直線に延びる帯状に形成されている。第1スライドプレート15は、左側壁2bにおいて下端部寄りの部位2b1と上下方向中央の上方部位2b2との間に上下方向へ向けて配置されている。第1スライドプレート15には、第1支持ブラケット31、第2支持ブラケット32、第3支持ブラケット33、及び第4支持ブラケット34が固定されている。
【0034】
第1支持ブラケット31は、第1リニアガイド13の上方に配置されている。第2支持ブラケット32は、第1リニアガイド13と第1ロッドレスシリンダ12との間に配置されている。第3支持ブラケット33は、第1ロッドレスシリンダ12の下方に配置されている。第4支持ブラケット34は、第2リニアガイド14の下方に配置されている。第1支持ブラケット31、第2支持ブラケット32、第3支持ブラケット33、及び第4支持ブラケット34には、ヒンジシャフト38が貫通されている。第1支持ブラケット31~第4支持ブラケット34は同様に構成されている。
【0035】
ヒンジシャフト38は、第1支持ブラケット31~第4支持ブラケット34に対して周方向へ回転可能に支持されて配置されている。ヒンジシャフト38は、キャビネット本体2の頂部2dと床部2a寄りの部位との間において上下方向に向けて配置されている。
ヒンジシャフト38の上端部38aは、第1ヒンジ部41に対して周方向へ回転可能に支持されている。第1ヒンジ部41は、扉3の基端部3aにおいて上端部3a1に取り付けられている。また、ヒンジシャフト38の下端部38bは、第2ヒンジ部42に対して周方向へ回転可能に支持されている。第2ヒンジ部42は、扉3の基端部3aにおいて下端部寄りの部位3a2に取り付けられている。さらに、ヒンジシャフト38の中央部38cは、第3ヒンジ部43に対して周方向へ回転可能に支持されている。第3ヒンジ部43は、扉3の基端部3aにおいて中央3a3に取り付けられている。
第1ヒンジ部41、第2ヒンジ部42、及び第3ヒンジ部43は、例えば、扉3の開閉作動で発生する摩擦により、扉3を任意の位置に停止させるトルクヒンジしての機能を備える。
【0036】
ここで、ヒンジシャフト38は、第1ヒンジ部41、第2ヒンジ部42、及び第3ヒンジ部43を介して扉3の基端部3aに取り付けられている。ヒンジシャフト38には第1支持ブラケット31~第4支持ブラケット34を介して第1スライドプレート15が連結されている。すなわち、第1スライドプレート15は、第1支持ブラケット31~第4支持ブラケット34、ヒンジシャフト38、及び第1ヒンジ部41~第3ヒンジ部43を介して扉3の基端部3aに連結されている。第1スライドプレート15は、扉3の基端部3aにおいて上下方向の下半部に配置されている。
【0037】
第2ロッドレスシリンダ16は、第1ロッドレスシリンダ12と同様に構成され、キャビネット本体2の左側壁2bに設けられている。第2ロッドレスシリンダ16は、第2シリンダ本体45と、第2スライダ46と、を備えている。第2シリンダ本体45は、左側壁2bの上部において前後方向に向けて配置されている。第2シリンダ本体45の内部に第2ピストン(不図示)が空圧で移動自在に収納され、第2ピストンに第2スライダ46が設けられている。すなわち、第2ロッドレスシリンダ16は、エアシリンダである。第2スライダ46は、扉3の進出位置と退避位置との間において第2シリンダ本体45に沿って空圧で前後方向に移動する。第2スライダ46は、第2スライドプレート17において上下方向中央に固定されている。
【0038】
第2スライドプレート17は、第2スライダ46に固定された状態において、左側壁2bの上部に上下方向へ向けて配置されている。第2スライドプレート17には、第5支持ブラケット48及び第6支持ブラケット49が固定されている。
第5支持ブラケット48は、第2ロッドレスシリンダ16の上方に配置されている。第6支持ブラケット49は、第2ロッドレスシリンダ16の下方に配置されている。第5支持ブラケット48及び第6支持ブラケット49には、ヒンジシャフト38が貫通された状態において周方向へ回転可能に支持されている。第5支持ブラケット48及び第6支持ブラケット49は、第1支持ブラケット31~第4支持ブラケット34と同様に構成されている。
【0039】
ヒンジシャフト38には第5支持ブラケット48及び第6支持ブラケット49を介して第2スライドプレート17が連結されている。すなわち、第2スライドプレート17は、第5支持ブラケット48、第6支持ブラケット49、ヒンジシャフト38、及び第1ヒンジ部41~第3ヒンジ部43を介して扉3の基端部3aに連結されている。第2スライドプレート17は、扉3の基端部3aにおいて上部に配置されている。
【0040】
スライド機構4は、第1ヒンジ部41、第2ヒンジ部42、及び第3ヒンジ部43が扉3の基端部3aに取り付けられることにより、扉3の基端部3aに第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が連結されている。スライド機構4は、第1ロッドレスシリンダ12の第1スライダ22及び第2ロッドレスシリンダ16の第2スライダ46が上下方向において同一位置に配置されている。第1スライダ22及び第2スライダ46は、同期した状態で、扉3の進出位置と退避位置との間を移動する。すなわち、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17は、上下方向において同一位置に配置された状態で、扉3の進出位置と退避位置との間を同期移動する。
【0041】
具体的には、第1ロッドレスシリンダ12の第1スライダ22が扉3の進出位置と退避位置との間を移動することにより、第1スライドプレート15が扉3の進出位置と退避位置との間を移動する。ここで、第1スライドプレート15は、第1リニアガイド13の第1ブロック25及び第2リニアガイド14の第2ブロック28に固定されている。よって、第1スライドプレート15は、第1リニアガイド13及び第2リニアガイド14に安定的に支持されている。これにより、第1スライドプレート15は、第1スライダ22の移動に追従して円滑に、かつ安定的に移動する。
【0042】
また、第2ロッドレスシリンダ16の第2スライダ46が扉3の進出位置と退避位置との間を移動することにより、第2スライドプレート17が扉3の進出位置と退避位置との間を移動する。ここで、第2スライドプレート17は、上下方向中央に第2スライダ46が固定されている。よって、第2スライドプレート17は、第2スライダ46の移動に追従して円滑に、かつ安定的に移動する。
【0043】
このように、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が扉3の進出位置から退避位置まで矢印Aの如く移動することにより、扉3を進出位置から退避位置まで矢印Aの如く左側壁2bに沿って後方に退避(移動)させることができる。
また、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が扉3の退避位置から進出位置まで矢印Bの如く移動することにより、扉3を退避位置から進出位置まで矢印Bの如く左側壁2bに沿って前方に進出(移動)させることができる。
【0044】
加えて、扉3の基端部3aにおいて上下方向の下半部に、第1スライドプレート15が第1支持ブラケット31~第4支持ブラケット34、ヒンジシャフト38、及び第1ヒンジ部41~第3ヒンジ部43を介して連結されている。さらに、扉3の基端部3aにおいて上部に、第2スライドプレート17が第5支持ブラケット48、第6支持ブラケット49、ヒンジシャフト38、及び第1ヒンジ部41~第3ヒンジ部43を介して連結されている。よって、扉3の基端部3aにおいて上下方向の概ね全域を、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17で支持できる。
これにより、スライド機構4(具体的には、第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16)で、扉3を安定させた状態において前後方向へ平行に移動させることができる。
【0045】
(回転支持機構)
図5は、実施形態に係るシリンダキャビネットの回転支持機構を示す斜視図である。
図3~
図5に示すように、回転支持機構5は、スライド機構4により移動する扉3を閉鎖位置と開放位置との間において開閉可能に案内し、かつ扉3を吊下げ状態に支持する。回転支持機構5は、カーブレール52と、懸垂部53と、扉連結部54と、を備えている。カーブレール52は、例えばキャビネット本体2の頂部2dに複数の固定部55を介して設けられている。カーブレール52は、頂部2dに沿って前後方向に向けて配置されている。また、カーブレール52は、扉3が退避位置に配置された状態において、第1ヒンジ部41及び扉3に対してキャビネット本体2の内側に位置し、かつ第2スライドプレート17の上方に配置されている。
【0046】
カーブレール52は、レール直線部56と、レール湾曲部(湾曲部)57と、を有する。レール直線部56は、第2ロッドレスシリンダ16に沿って前後方向に向けて配置されている。レール直線部56の前端部56aにレール湾曲部57の後端部57aが設けられている。すなわち、レール湾曲部57の後端部57aは、レール直線部56の前端部56aに対して同じ位置に形成されている。レール湾曲部57は、後端部57aから前端部57bまで開口部10に向かうに従って開口部10の中央に向けて湾曲状に延びている。カーブレール52には懸垂部53が支持されている。
【0047】
懸垂部53は、移動部61と、懸垂シャフト62と、を備えている。移動部61は、カーブレール52に沿ってレール直線部56の後端部56bとレール湾曲部57の前端部57bとの間において移動可能に支持されている。
移動部61は、例えば、一対の第1ローラ64,64及び一対の第2ローラ65,65が一対の連結ブロック66,66で連結されている。移動部61は、一対の第1ローラ64,64及び一対の第2ローラ65,65でカーブレール52に沿って移動可能に支持されている。また、移動部61は、例えば、支持ブロック67が一対のシャフト68に取り付けられ、カーブレール52の下方に配置されている。支持ブロック67から懸垂シャフト62が下方に向けて延びている。
【0048】
懸垂シャフト62には扉連結部54が懸垂シャフト62の周方向へ回転可能に連結されている。扉連結部54は、扉3の上端部3a1に固定されている。すなわち、カーブレール52には、懸垂シャフト62及び扉連結部54を介して扉3の上端部3a1が吊り下げられている。よって、扉3の自重を回転支持機構5のカーブレール52で支えることができる。換言すれば、扉3を回転支持機構5で支持することができる。
移動部61は、第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16により扉3を進出位置と退避位置との間で移動する際に、扉3の移動に追従してレール直線部56の後端部56bとレール湾曲部57の前端部57bとの間で移動する。
【0049】
ここで、第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16により扉3が進出位置に進出することにより、扉3の進出移動に追従して移動部61(すなわち、懸垂部53)がレール湾曲部57の前端部57bに移動する。この状態において、扉3が開口部10を閉鎖する閉鎖位置に配置される。
また、第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16により扉3が進出位置から退避位置側に退避することにより、扉3の退避移動に追従して移動部61がレール湾曲部57の後端部57aに移動する。この状態において、扉3が開口部10を開放する開放位置に配置される。すなわち、レール湾曲部57は、扉3の移動に追従して移動部61がレール湾曲部57に沿って前端部57bと後端部57aとの間を移動することにより、扉3を開閉可能に案内する。
【0050】
さらに、第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16により扉3が退避位置側に退避することにより、扉3の退避作動に追従して移動部61がレール直線部56の後端部56bに移動する。この状態において、扉3がキャビネット本体2の内部において左側壁2bに沿って配置され、扉3の先端部3bが開口部10に対して面一に配置される。すなわち、扉3がキャビネット本体2の内部に退避する。
【0051】
(台車)
図2、
図3に示すように、スライド機構4の第1スライドプレート15において下端部15cに台車6が設けられている。台車6は、台車本体72と、ローラ73と、サスペンション73sと、を備えている。台車本体72は、第1スライドプレート15の下端部15cに設けられている。ローラ73は、台車本体72にサスペンション73sを介して設けられている。ローラ73は、キャビネット本体2の備える床部2aに載置され、例えば床部2aに設けられたガイドレール(図示せず)に沿って前後方向へ移動する。ローラ73は、サスペンション73sにより床部2aに対して交差する方向へ移動可能に支持されている。
【0052】
台車6は、第1スライドプレート15の下端部15cに設けられることにより、扉3の進出位置と退避位置との間において第1スライドプレート15とともに前後方向に移動する。第1スライドプレート15は、第1ヒンジ部41、第2ヒンジ部42、及び第3ヒンジ部43を介して扉3の基端部3aに連結されている。すなわち、台車6は、扉3に追従して移動可能に第1スライドプレート15に設けられている。
【0053】
よって、台車6は、扉3の開閉をガイドすることにより、扉3を円滑に動作させることができる。また、台車6は、床部2aに載置されることにより、扉3の想定外の動きを抑えて扉3を安定させることができる。
さらに、ローラ73が台車本体72にサスペンション73sを介して設けられている。よって、台車6は、例えば、シリンダキャビネット1が設置されるフロアFLが傾いている等の理由によって床部2aが傾いている場合に、床部2aに柔軟に対応させることができる。
【0054】
(位置センサ)
不図示の位置センサは、例えば、第1ロッドレスシリンダ12の第1スライダ22及び第2ロッドレスシリンダ16の第2スライダ46の少なくとも一方の位置を検知するシリンダ位置センサである。第1スライダ22及び第2スライダ46の少なくとも一方の位置を位置センサで検知することにより、例えば扉3が閉鎖位置、開放位置、退避位置、進出位置等に配置されたことを把握できる。これにより、シリンダキャビネット1の制御装置を経由して搬送システムに位置信号を提供することにより、扉3の位置状況を判断できる。
シリンダキャビネット1の制御装置は、位置センサで検知した扉3の位置状況に基づいて、スライド機構4に備えた第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16等の作動を制御する。
【0055】
なお、制御装置は、例えば、不図示の開放開始スイッチの操作信号に基づいて扉3を開放するように第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16等の作動を制御する。また、制御装置は、例えば、不図示の閉鎖開始スイッチの操作信号に基づいて扉3を閉鎖するように第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16等の作動を制御する。
【0056】
なお、制御装置は、例えば、ボンベ搬送用台車がシリンダキャビネット1に接近したことに基づいて扉3を開放するように第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16等の作動を制御する。ボンベ搬送用台車は、シリンダキャビネット1に格納されたガスボンベGBを搬出及び搬入する。また、制御装置は、例えば、ボンベ搬送用台車がシリンダキャビネット1から離反したことに基づいて扉3を閉鎖するように第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16等の作動を制御する。
【0057】
(エリアセンサ)
不図示のエリアセンサは、扉3の移動範囲を検知する。扉3の移動範囲の周囲をエリアセンサで検知することにより、扉3を開閉する前に、移動範囲の周囲における障害物を検知できる。
特に、スライド機構4に第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16においてエアシリンダを使用した場合、扉3の作動途中に第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16を停止することが難しい。このため、移動範囲の周囲における障害物を検知することが好ましい。
【0058】
(警告部)
不図示の警告部は、エリアセンサで障害物を検知した場合に、移動範囲の周囲に扉3の開閉を周知させることができる。このように、扉3の移動範囲を検知するエリアセンサに警告部を併用できる。これにより、移動範囲の周囲において障害物を検知した場合に、例えば扉3を開閉する前に移動範囲の周囲に扉3の開閉を周知させることができる。
【0059】
(切替スイッチ)
なお、シリンダキャビネット1には切替スイッチ(図示せず)が備えられている。不図示の切替スイッチは、扉3の開閉作動を「自動」と「手動」とに切り替えるスイッチである。すなわち、シリンダキャビネット1の扉3を「手動」で開閉する場合が必要なことが考えられる。よって、不図示の切替スイッチを備えることにより、扉3を手動で開閉する場合に適切に対応することが可能である。
【0060】
(扉の開閉作動)
つぎに、シリンダキャビネット1の扉3を自動的に開閉する作動を
図3、
図4、
図6に基づいて説明する。なお、扉3を自動的に開閉する作動の説明においては、位置センサ、エリアセンサ、警告部についての説明を省略する。
まず、シリンダキャビネット1の扉3を閉鎖位置から自動的に開放する作動について説明する。
図6は、実施形態に係るシリンダキャビネットの開口部を扉で閉鎖した状態を示す断面図である。
図6に示すように、シリンダキャビネット1の扉3が閉鎖位置に配置され、扉3で開口部10が閉鎖されている。扉3で開口部10を閉鎖した状態において、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が扉3の進出位置に配置される。また、懸垂部53がレール湾曲部57の前端部57bに配置される。この状態において、例えば、不図示の開放開始スイッチを操作することで、扉3の開放作動を開始する。
【0061】
図3、
図6に示すように、開放開始スイッチを操作すること等により、スライド機構4に備えた第1ロッドレスシリンダ12の第1スライダ22が扉3の進出位置から後方の退避位置側に移動する。同時に、スライド機構4に備えた第2ロッドレスシリンダ16の第2スライダ46が扉3の進出位置から後方の退避位置側に移動する。よって、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が扉3の進出位置から後方の退避位置側に矢印Aの如く移動する。
第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が後方に移動することにより、懸垂部53がレール湾曲部57の前端部57bからレール湾曲部57に沿って後方に矢印Cの如く移動する。よって、扉3を矢印Dの如くヒンジシャフト38を軸にして閉鎖位置から開放できる。
【0062】
第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17を継続して後方に移動することにより、懸垂部53がレール湾曲部57の後端部57aまでレール湾曲部57に沿って矢印Cの如く移動する。懸垂部53がレール湾曲部57の後端部57aまで移動することにより、扉3を矢印Dの如くヒンジシャフト38を軸にして継続して開放位置まで開放する。扉3を開放位置まで矢印Dの如く開放することにより、扉3がキャビネット本体2の左側壁2bに対して平行に配置される。
【0063】
図3、
図4に示すように、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17を継続して退避位置まで後方に矢印Aの如く移動する。これにより、懸垂部53がレール湾曲部57の後端部57aからレール直線部56を経てレール直線部56の後端部56bまで矢印Eの如く移動する。懸垂部53がレール直線部56の後端部56bまで移動することにより、扉3の先端部3bが開口部10に対して面一(あるいは、概ね面一)に配置される。よって、扉3がキャビネット本体2の内部に退避してシリンダキャビネット1の開口部10が開放される。
退避した扉3は、キャビネット本体2の内部において左側壁2bに沿って配置される。これにより、シリンダキャビネット1の扉3を閉鎖位置から開放位置に自動的に開放する作動が完了する。
【0064】
つぎに、シリンダキャビネット1の扉3を開放位置から自動的に閉鎖する作動について説明する。
図3、
図4に示すように、シリンダキャビネット1の扉3が退避位置に配置され、扉3で開口部10が開放されている。この状態において、例えば、不図示の閉鎖開始スイッチを操作することで、扉3の閉鎖作動を開始する。閉鎖開始スイッチを操作すること等により、スライド機構4に備えた第1ロッドレスシリンダ12の第1スライダ22が扉3の退避位置から前方の進出位置側に移動する。同時に、スライド機構4に備えた第2ロッドレスシリンダ16の第2スライダ46が扉3の退避位置から前方の進出位置側に移動する。よって、第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が扉3の退避位置から前方の進出位置側に矢印Bの如く移動する。
【0065】
第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17が前方に移動することにより、懸垂部53がレール直線部56の後端部56bからレール直線部56を経てレール湾曲部57の後端部57aまで前方に矢印Fの如く移動する。
第1スライドプレート15及び第2スライドプレート17を継続して前方に移動することにより、懸垂部53がレール湾曲部57の後端部57aからレール湾曲部57に沿って矢印Gの如く移動する。
【0066】
図3、
図6に示すように、懸垂部53がレール湾曲部57に沿って矢印Gの如く移動することにより、扉3がヒンジシャフト38を軸にして矢印Hの如く開口部10を閉鎖する方向に移動する。懸垂部53がレール湾曲部57の前端部57bまで移動することにより、扉3を閉鎖位置まで移動する。閉鎖位置まで移動した扉3でキャビネット本体2の開口部10が閉鎖される。これにより、シリンダキャビネット1の扉3を退避位置から閉鎖位置に自動的に閉鎖する作動が完了する。
【0067】
以上説明した実施形態のシリンダキャビネット1によれば、
図3、
図4、
図6に示すように、不図示の開放開始スイッチを操作すること等により、スライド機構4及び回転支持機構5で扉3を回転させて開口部10を自動的に開放できる。さらに、開放された扉3をスライド機構4でキャビネット本体2の内部に自動的に退避できる。この状態において、扉3がキャビネット本体2の内部に収納される。
また、不図示の閉鎖開始スイッチを操作すること等により、開かれた扉3をスライド機構4及び回転支持機構5で開口部10側に自動的に進出できる。さらに、開口部10側に進出した扉3をスライド機構4及び回転支持機構5で回転させて開口部10を自動的に閉鎖できる。
これにより、シリンダキャビネット1に備えた扉3の開閉を自動化できる。したがって、シリンダキャビネット1の開口部10を開閉するために、扉3を手動で開放、閉鎖する必要がない。この結果、シリンダキャビネット1は、ガスボンベGBを搬出及び搬入する際の自動化に寄与できる。
【0068】
加えて、開かれた扉3をスライド機構4及び回転支持機構5で退避させて、キャビネット本体2の内部に収納できる。よって、キャビネット本体2の前方において正面側の開口部10をフルフラットにできる。このため、例えばガスボンベGBを搬出及び搬入する自動化に使用されるボンベ搬送用台車(図示せず)が開口部10に近づく際に、扉3が邪魔になることを防止できる。これにより、ボンベ搬送用台車の移動に支障をきたさないようにすることができる。また、ボンベ搬送用台車を開口部10に適切にドッキング(接触)できる。したがって、ボンベ搬送用台車への対応が可能になり、ガスボンベGBを搬出及び搬入する際の自動化に一層適切に寄与できる。
【0069】
ここで、キャビネット本体2は、設置されるフロアFLの平滑度により鉛直性が左右される。例えば、キャビネット本体2を設置するフロアFLが斜めに傾斜している場合、キャビネット本体2が斜めに設置される。この場合、扉3をスライド機構4で開閉する際に、スライド機構4に扉3が引っかかり、スライド機構4による扉3の開閉に支障をきたすことが考えられる。
【0070】
そこで、扉3を回転支持機構5で吊下げ状態に支持するようにした。よって、例えば、キャビネット本体2をフロアFLに斜めに設置した場合でも、フロアFLからの影響を最小限に抑えて扉3を回転支持機構5で安定的に支えることができる。これにより、扉3をスライド機構4及び回転支持機構5で支障なく円滑(スムーズ)に開閉でき、シリンダキャビネット1に備えた扉3の開閉を一層好適に自動化できる。
【0071】
また、キャビネット本体2の頂部2dに回転支持機構5のカーブレール52を設けた。さらに、カーブレール52に沿って移動可能な懸垂部53に扉3を吊り下げた。このように、キャビネット本体2の頂部2dにカーブレール52を設けることにより、扉3の上端部3a1をカーブレール52に吊り下げることができる。すなわち、扉3の自重をカーブレール52で支えることができる。よって、例えば、キャビネット本体2が斜めに設置された場合でも、扉3をカーブレール52で安定的に支えることができる。これにより、扉3をスライド機構4及び回転支持機構5で支障なく開閉でき、シリンダキャビネット1に備えた扉3の開閉を一層好適に自動化できる。
【0072】
さらに、カーブレール52のレール湾曲部57で移動部61(すなわち、懸垂部53)を移動することにより、扉3を開閉可能に案内するようにした。よって、扉3を開閉する際に、扉3をカーブレール52のレール湾曲部57で吊下げ状態に支えることができる。これにより、扉3をカーブレール52で安定的に支えることができ、扉3を支障なく開閉できる。
【0073】
加えて、スライド機構4の第1スライドプレート15において下端部15cに台車6を設け、台車6を扉3に追従可能とした。スライド機構4は、第1ヒンジ部41、第2ヒンジ部42、及び第3ヒンジ部43が扉3の基端部3aに取り付けられることにより、扉3の基端部3aに連結されている。扉3の開閉を台車6でガイドすることにより、扉3を円滑に動作させることができる。また、台車6を床部2aに載置させることにより、扉3の動きを台車6で抑えて扉3を安定させることができる。
【0074】
また、台車6のローラ73を台車本体72にサスペンション73sを介して設け、ローラ73を床部2aに対して交差する方向(すなわち、上下方向)へ移動可能とした。よって、例えば、台車6を扉3に追従させて移動する際に、ローラ73を床部2aに対応させて上下方向に移動させることができる。すなわち、例えば、シリンダキャビネット1が設置されるフロアFLが傾いている等の理由によって床部2aが傾いている場合に、台車6を床部2aに柔軟に対応させることができる。これにより、扉3をスライド機構4及び回転支持機構5で支障なく開閉でき、シリンダキャビネット1に備えた扉3の開閉を一層好適に自動化できる。
【0075】
ここで、シリンダキャビネット1に扉3を開閉するスライド機構4及び回転支持機構5を備える場合、スライド機構4及び回転支持機構5をキャビネット本体2の外側に設けることも考えられる。しかし、例えば、
図1に示すように、シリンダキャビネット1を設置するフロアFLに複数のシリンダキャビネット1を左右方向に並べて配置する場合がある。この場合、フロアFLに複数のシリンダキャビネット1を設置するために、隣接するシリンダキャビネット1間の間隔が比較的狭く抑えられる。
よって、キャビネット本体2の外側に設けたスライド機構4及び回転支持機構5のメンテナンスをおこなう空間が狭くなる。このため、スライド機構4及び回転支持機構5のメンテナンスが困難になることが考えられる。
【0076】
そこで、スライド機構4及び回転支持機構5をキャビネット本体2の内部(すなわち、ガスボンベGBを格納する格納スペースS)に設けるようにした。ガスボンベGBの格納スペースSは、ガスボンベGBを円滑に搬入、搬出するために、ガスボンベGBに対して比較的大きな空間に形成されている。よって、複数のシリンダキャビネット1を左右方向に並べて配置した状態においても(
図1参照)、スライド機構4及び回転支持機構5のメンテナンスをおこなう空間を十分に確保できる。これにより、スライド機構4及び回転支持機構5のメンテナンス性を向上させることができる。
【0077】
また、スライド機構4に備えた第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16をエアシリンダとした。よって、スライド機構4をエアで作動させることができる。これにより、シリンダキャビネット1に収納するガスボンベGBに対して好ましい駆動源とすることができる。
さらに、第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16のユーティリティ入口(図示せず)に、調整器(スピードコントローラ)又はオリフィスを設けることにより、扉3の開閉速度を調整できる。
加えて、複数のシリンダキャビネット1の扉3を同時に開閉する可能性もあるため、第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16の蓄圧器(バッファタンク)を装備し、作動用空気が不足しないよう考慮することが好ましい。
実施形態では、スライド機構4の駆動源として、空圧で作動する第1ロッドレスシリンダ12及び第2ロッドレスシリンダ16を例に説明するが、空圧による駆動源に代えて電気モータ等を駆動源としてもよい。
【0078】
また、扉3の位置状況を判断する位置センサを備える。これにより、扉3の位置状況に基づいて制御装置による扉3の制御を円滑に行うことに寄与することができる。
【0079】
また、扉3の移動範囲を検知するエリアセンサを備える。これにより、扉3の移動範囲に位置する障害物を検知することができる。よって、例えば、障害物の検知に合わせて扉3の開閉を制御することで、扉3が障害物と干渉することを抑えることができる。
【0080】
また、エリアセンサで障害物を検知した場合に、移動範囲の周囲に扉3の開閉を周知させる警告部を備える。これにより、例えば、扉3の開閉を安全に行うことに寄与することができる。
【0081】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0082】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…シリンダキャビネット 2…キャビネット本体 2a…床部 2b…キャビネット本体の左側壁(キャビネット本体の側壁) 2d…キャビネット本体の頂部 3…扉 4…スライド機構 5…回転支持機構 6…台車 10…開口部 52…カーブレール 53…懸垂部 61…移動部 72…台車本体 73…ローラ GB…ガスボンベ S…格納スペース(キャビネット本体の内部)
【要約】
【課題】シリンダキャビネットに備えた扉の開閉を自動化しつつ、ボンベ搬送用台車の移
動に支障をきたさないようにすること。
【解決手段】使用中又は使用されるガスボンベGBを格納可能で、かつガスボンベGBを搬入、搬出する開口部10を有するキャビネット本体2と、開口部10を開閉する扉3と、扉3を退避位置と進出位置との間においてキャビネット本体2の左側壁2bに沿って移動可能なスライド機構4と、スライド機構4により移動する扉3を、開口部10を閉鎖する閉鎖位置と、開口部10を開放する開放位置との間において開閉可能に案内し、かつ扉3を吊下げ状態に支持する回転支持機構5と、を備えるシリンダキャビネット。
【選択図】
図4