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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】渋滞予測方法および渋滞予測装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/01 20060101AFI20240131BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G08G1/01 E
G08G1/00 C
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019239175
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021108013
(43)【公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(73)【特許権者】
【識別番号】391021226
【氏名又は名称】株式会社カーメイト
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】西成 活裕
(72)【発明者】
【氏名】徳田 勝
(72)【発明者】
【氏名】品田 康志
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 健
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-076078(JP,A)
【文献】特開2009-104542(JP,A)
【文献】特開2009-031029(JP,A)
【文献】特開2007-200137(JP,A)
【文献】特開2018-075987(JP,A)
【文献】特開2009-001245(JP,A)
【文献】特開2005-032063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
渋滞予測に際して、自車両に搭載した撮影手段により前方と後方を撮影し、自車走行レーンに隣接する走行レーンを走行中の前方車両とこれに後続する後方車両との間の車間距離を撮影画像によって取得し、前記車間距離を取得した時刻と位置情報とを取得し、前記車間距離が設定値以下でその継続時間が設定値超えの場合に渋滞の前兆在りもくしは渋滞中とすることを記憶装置に格納することを特徴とする渋滞予測方法。
【請求項2】
前記車間距離は撮影手段によりそれぞれ前方と後方を撮影して前方車間距離と後方車間距離とを求め、撮影手段間の距離を加算して前記車間距離を算出可能としていることを特徴とする請求項1に記載の渋滞予測方法。
【請求項3】
別途に自車側方の画像を取得可能としてなることを特徴とする請求項1に記載の渋滞予測方法。
【請求項4】
車両の全方位を撮影可能な撮影手段により自車走行レーンに隣接する走行レーンにある前後車両間距離を算出し、この車間距離を出力しその出力された車間距離を収集し、収集された車間距離情報に基づき渋滞を予測することを特徴とする請求項1に記載の渋滞予測方法。
【請求項5】
隣接する走行レーンを走行する車両が自車両の前後の撮影画像の死角になった場合に前記車間距離の出力を一時的に停止し、車間距離の誤検出を防止することを特徴とする請求項1に記載の渋滞予測方法。
【請求項6】
隣接する走行レーンを走行する車両が自車両の前後の撮影画像の死角になった場合に、死角になった車両は自車両の真横にいると仮定し、撮影した画像中の前方もしくは後方車両のいずれか自車両に近い側の車両と自車両との車間距離を隣接する車両の車間距離とすることを特徴とする請求項1に記載の渋滞予測方法。
【請求項7】
自車両に設置され自車走行レーンに隣接する走行レーンを走行中の前方車両と後続する後方車両とを撮り込む撮影手段と、
前記撮影手段からのデータに基づき前後車間距離を求める演算手段と、
この演算手段による計測時間を求める時計手段と、
自車両に搭載された位置情報取得手段と、
前記車間距離が設定値以下で前記計測時間が設定値超えの場合に渋滞の前兆在りもくしは渋滞中とする記憶装置と、
を備えていることを特徴とする渋滞予測装置。
【請求項8】
自車両の前後に設置され前方と後方に向けられた撮影手段と、
この撮影手段による画像に基づき自車レーンに隣接する走行レーンを走行している車両の前方車間距離と後続する後方車間距離を算出する演算手段と、
この演算手段による計測時期を求める時計手段と、
自車両に搭載された位置情報取得手段と、
上記演算手段、時計手段、位置情報取得手段に基づき前記車間距離が設定値以下で前記計測時間が設定値超えの場合に渋滞の前兆在りもくしは渋滞中とする記憶装置と、
前記記憶装置のデータを出力可能な通信手段と、
を有することを特徴とする渋滞予測装置。
【請求項9】
前記撮影手段、演算手段、時計手段、および位置情報取得手段をもつ携帯端末を用いていることを特徴とする請求項7または8に記載の渋滞予測装置。
【請求項10】
自車の側方を撮影可能な撮影手段を追加したことを特徴とする請求項7または8に記載の渋滞予測装置。
【請求項11】
前記撮影手段は360度の視角領域の撮影装置であることを特徴とする請求項7または8に記載の渋滞予測装置。
【請求項12】
位置情報取得装置から出力された計測位置情報と演算手段から出力された車間距離を収集し、計測位置ごとに車間距離情報とに基づいた渋滞情報を予測する請求項7または8に記載の渋滞予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誰でも簡単に渋滞情報を測ることができ、これを収集して収集データから渋滞予測をすることにより、利用者が簡単に予測データを利用できるようにした渋滞予測方法および渋滞予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速道路などでは車両の通過量は通過速度を検出し、これらの情報に基づき渋滞の予測する方法が提示されている(特許文献1)。しかし、この方法はリアルタイムではなく、定点で設備も大掛かりなものである。
【0003】
そのため自車両で取得した情報に基づいて渋滞を予測する方法も提案されている(特許文献2)。この公知の方法によれば、自車両の速度を検出しつつ、自車両から前方の追越車線上の画像を取り込み、追越車線上の2台の車両の通過を検知したときに、両者の時間差と、車間距離、速度を算出し、追越車線の交通量を求めて、この交通量から渋滞の予測をなすようにしている。
【0004】
ところが、上記従来の方法では、交通量の算出など計算上の負荷が大きく、前方の車両が2台通過するまでは渋滞予測ができないため、リアルタイムの計測ができないなど問題があった。また、前方車両が2台通過したときは先行車両が撮影時に後方車両の陰になった場合など、計測できないか、計測しても誤差が大きくなるなどの欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-309735号公報
【文献】特開2019-16081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に着目し、計測時に誤差が少なく迅速に追越車線を含む隣接した車線上の前後2台の車両の車間距離を把握し、これを収集した車間距離情報から渋滞予測しているため、より正確に渋滞予測することができて、車間距離情報を用いた渋滞予測データを利用する者の利便に供することが出来る渋滞予測方法および渋滞予測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、スマートフォンなどの車内持ち込み装置などを持っている者ならば、誰でも簡単に低コストで渋滞するか否かの判断材料を取得でき、このデータを収集して渋滞の予測ができるようにして利用者の利便に供することができるようにすることである。
【0008】
上記目的を達成するために、本願発明に係る渋滞予測方法は、渋滞予測に際して、自車両に搭載した撮影手段により前方と後方を撮影し、自車走行レーンに隣接する走行レーンを走行中の前方車両とこれに後続する後方車両との間の車間距離を利用するようにした。
【0009】
また、本発明は、車両前後の撮影画像から自車走行レーンに隣接する走行レーンを走行中の前方車両とこれに後続する後方車両との間の車間距離を算出し、この車間距離を出力し、その出力された車間距離を収集し、収集された車間距離情報に基づき渋滞を予測するものである。
【0010】
前記車間距離は撮影手段によりそれぞれ前方と後方を撮影して前方車間距離と後方車間距離とを求め、撮影手段間の距離を加算して前記車間距離を算出可能としている。別途に自車側方の画像を取得可能としておくことができる。
【0011】
本発明は、車両の全方位を撮影可能な撮影手段により自車走行レーンに隣接する走行レーンにある前後車両間距離を算出し、この車間距離を出力しその出力された車間距離を収集し、収集された車間距離情報に基づき渋滞を予測するようにできる。
【0012】
隣接する走行レーンを走行する車両が自車両の前後の撮影画像の死角になった場合に前記車間距離の出力を一時的に停止し、車間距離の誤検出を防止するようにしてもよい。
【0013】
隣接する走行レーンを走行する車両が自車両の前後の撮影画像の死角になった場合に、死角になった車両は自車両の真横にいると仮定し、撮影した画像中の前方もしくは後方車両のいずれか自車両に近い側の車両と自車両との車間距離を隣接する車両の車間距離とする構成とすることもできる。
【0014】
本発明に係る渋滞予測装置は、自車両に設置され自車走行レーンに隣接する走行レーンを走行中の前方車両と後続する後方車両とを撮り込む撮影手段と、前記撮影手段からのデータに基づき前後車間距離を求める演算手段を備えた構成とした。さらに、本発明は、自車両に設置され自車走行レーンに隣接する走行レーンを走行中の前方車両と後続する後方車両とを撮り込む撮影手段と、前記撮影手段からのデータに基づき前後車両間距離を求める演算手段と、演算手段から出力された車間距離と計測位置情報を収集し、計測位置ごとに車間距離情報とに基づいた渋滞を予測する手段と、を備えた渋滞予測装置の構成とした。
【0015】
また、本発明は、自車両の前後に設置され前方と後方に向けられた撮影手段と、この撮影手段による画像に基づき自車レーンに隣接する走行レーンを走行している車両の前方車間距離と後続する後方車間距離を算出する演算手段と、この演算手段による計測時期を求める時計手段と、自車両に搭載された位置情報取得手段と、上記演算手段、時計手段、位置情報取得手段を出力可能な通信手段と、この通信手段からのデータを受け取り、収集された渋滞情報を出力するサーバと、を有する構成とすることも可能である。
【0016】
前記撮影手段、演算手段、時計手段、および位置情報取得手段をもつ携帯端末を用いる構成とすることもできる。更に、自車の側方を撮影可能な撮影手段を追加した構成としてもよい。また、前記撮影手段は360度の視角領域の撮影装置とすることも可能である。
【0017】
また、GPS等の位置情報取得装置から出力された計測位置情報と演算手段から出力された車間距離を収集し、計測位置ごとに車間距離情報とに基づいた渋滞を予測することも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、計測時に誤差が少なく迅速に隣接車線上の前後2台の車両の車間距離を把握し、これを収集した車間距離情報に用いて渋滞予測しているため、より正確な渋滞予測することができて利用者の利便に供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施例に係る渋滞予測装置を説明する全体ブロック構成図である。
図2】実施例に係る渋滞予測装置の構成図である。
図3】実施例に係る渋滞予測方法の前部携帯端末の全体アルゴリズムを示すフローチャートである。
図4】同方法の前部携帯端末の計測アルゴリズムを示すフローチャートである。
図5】同方法の前部携帯端末の通信アルゴリズムを示すフローチャートである。
図6】同方法の後部携帯端末の全体アルゴリズムを示すフローチャートである。
図7】同方法の後部携帯端末の計測アルゴリズムを示すフローチャートである
図8】同方法の後部携帯端末の通信アルゴリズムを示すフローチャートである。
図9】本発明の第2実施例を示す走行車両の上面図である。
図10】第2実施例を示す車両の平面透視図である。
図11】第3実施例を示す車両の平面透視図である。
図12】第3実施例の前後車両の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の渋滞予測方法および渋滞予測装置に係る実施の形態について、図面を参照して、詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態は、本発明を実施する上での好適な形態の一部であり、同様な効果を奏する限りにおいて、構成、方法の一部を変更したとしても、本発明の一部とみなすことができる。
【0021】
図1は実施例に係る渋滞予測方法の構成図であり、図2は渋滞予測装置のブロック図である。
【0022】
これら図に示すように、本実施例では、走行レーン10を走っている自車両12から見て、隣接車線14を走行中の前方車両16とこれに後続する後方車両18を、スマートフォンによる動画として捉えている。図1に示すように、自車両12の前部に搭載され前方撮影が可能な前部スマートフォン20と、同様に後部に搭載され後方撮影が可能な後部スマートフォン22とがあり、これらスマートフォン20,22により、それぞれ前方画像24と後方画像26を撮影する。
【0023】
走行中の前方車両16とこれに後続する後方車両18との間の車間距離hLは、図1に示すように、前部スマートフォン20の撮影装置21位置から前方車両16までの距離h2と、後部スマートフォン22の撮影装置23位置から後部車両18までの距離h3と、およびスマートフォン20、22間の距離hiiとの加算値である。すなわち、車間距離hL=h2+h3+hiiとなる。これを求めるためには、実施例では、画像処理を用いて前方車間距離を計測する。また、スマートフォン20、22間の距離hiiはあらかじめ計測しておけばよい。したがって、車間距離hLは画像からのみで演算することが出来る。
【0024】
車間距離hL=h2+h3+hiiを求めるためには、前部(後部)スマートフォン20に後部(前部)スマートフォン22のデータを集めなくてはならない。このため、図2に示しているように、スマートフォン20,22の持っている近距離通信手段30を利用する。すなわち、前部(後部)スマートフォン20にて加算処理を行うようにしている。この加算は演算部としての処理装置32で行い、これを内蔵する記憶装置33に記憶させ、後述する長距離通信装置34にて例えばサーバ28に送られる。
【0025】
加算時に、前部スマートフォン20には近距離通信手段30から後部スマートフォン22で計測した車間距離h3と時計装置38により得た計測時刻が送られ、前部スマートフォン20で計測した車間距離h2と、予め計測されて記憶装置33に保持されている撮影装置21、23間距離hiiを読み出し、処理装置32で車間距離hLを演算処理し、記憶装置33に格納する。
【0026】
次に、この車間距離hLを出力し、その出力された車間距離hLを複数の車両12から収集する。収集先は例えばサーバ28とする。収集のため、スマートフォン20、22には上述したように、長距離通信装置34が設けられているが、これは同時にスマートフォン20、22に装備されている位置情報取得装置36を用いて車間距離計測時の位置情報を送るようにしている。位置情報取得装置は例えばスマートフォンに搭載されているGPSを使用する。また、車間距離hLは前方車間距離h2と後方車間距離h3との加算値あるため、加算の時の時間が一致する必要がある。そこで前方車間距離h2と後方車間距離h3の計測時刻を得るため、時計装置38が設けられている。時計装置38により計測時刻差が一定時間以上であればその加算データを使用しないようにしている。このように処理されたデータは長距離通信装置34により、サーバ28に送られるのである。
【0027】
そして、上述のようにサーバ28では収集された車間距離情報{hL}に基づき渋滞を予測する。例えば、車間距離が40m以下となった期間が一定時間を超えたら将来この先で渋滞が発生するとの情報を提供するのである。これを判別するサーバ28は自ら作成した交通網に渋滞情報を流し込み、収集した車間距離情報{hL}から迅速に渋滞情報を作成し、運送会社やバス会社、タクシー会社、あるいは高速道路会社など利用者40が利用料42を払い、その渋滞情報44を活用することが出来る。
【0028】
以下に具体的な処理手順を、図3~8を参照しつつ、説明する。
図3は前部スマートフォン20の全体処理を示す。最初は前部スマートフォン計測アルゴリズムが開始する(S100)。この計測アルゴリズムは、図4に示すように、撮影装置21を用いて画像撮影を行う(S101)。この後、前方車両16の有無が確認され(S102)、認識した車両が隣接車線14にあるか否かの判別をなす(S103)。映っていなければ処理を終了し、映っていれば画像処理を用いて距離を算出する(S104)。図3に示しているように、計測が終了したならば、記憶装置33に前方車間距離として情報を保存する(S110)。前方車間距離h2の情報がなければ、その点の渋滞の情報はなし(S170)として作業を終了し、情報があれば次の前部スマートフォン通信アルゴリズムに進む(S120)。
【0029】
図5に示すように、通信手段としての近距離通信手段30から相手方スマートフォン22と通信可能か否かをチェックし(S121)、不能であれば作業を終了し、可能ならば計測した車間距離h2と相手方スマートフォン22の計測時刻を受信する(S122)。そして、前後スマートフォン20、22の車間距離h2、h3を計測したときの時刻のずれが一定時間以内かどうかを確認し(S123)、以内であれば記憶装置33に記憶し、そうでない場合にはリセットして終了する。これは計測した時点の車間距離h2、h3が正しいか否かを判断させるためである。これが終了したならば、全体アルコリズムに戻り、前後車間距離h2、h3を算出する(S130)。撮影装置21、23間の距離hiiを加算して車間距離hLを求め、これが規定値としての40m以上か未満かを判断する(S140)。これは車間距離hLが40mを基準として、40m未満であれば今後渋滞が始まるとの研究結果に基づく(新潮選書 渋滞学 西成活裕著P48~)。もちろん、この数値を変更することもかまわない。渋滞具合に関わらず瞬間的に車間距離hLの短くなった場合等の特殊な状況を除外するため、計測した車間距離hLが規定値としての値未満である期間が3分間継続したかを判断する(S150)。もちろんこの時間を変更することもかまわない。一定時間以上、車間距離hLが規定値未満の状態が継続すればその地点は渋滞の前兆ありとするか、渋滞中として記憶装置33に格納する(S160)。
【0030】
後部スマーフォン22の全体アルゴリズムは、図6からわかるように、最初に後部スマートフォン22の計測アルゴリズムを実施する(S200)。このアルゴリズムは前方と同じように処理する。すなわち、図7に示すように、撮影装置23を用いて画像撮影を行う(S201)。この後、後方車両18の有無が確認され(S202)、認識した車両が隣接車線14にあるか否かの判別をなす(S203)。映っていなければ処理を終了し、映っていれば画像処理を用いて距離を算出する(S204)。計測が終了したならば、記憶装置33に後方車間距離として情報を保存する(S210)。図6の後部スマートフォン22側の全体アルゴリズムに戻って、後方車間距離hの情報がなければ、その点の渋滞の情報はなしとして作業を終了し、情報があれば次の後部スマートフォン通信アルゴリズムに進む(S220)。通信手段としての近距離通信手段30から相手方となっている前部スマートフォン20と通信可能か否かをチェックし(S221)、不能であれば作業を終了し、可能ならば計測した後方車間距離hと時計装置38で計測した時刻を送信して(S222)終了する。
【0031】
このように、前後スマートフォン20、22の前後車間距離h2、h3を計測したときの時刻のずれを確認し、前後車間距離h2、h3を算出する。撮影装置21、23間の距離hiiを加算して車間距離hLを求め、これが規定値以上か未満かを判断する。計測した車間距離hLが規定値としての値未満であればその地点は渋滞の前兆ありとするか、渋滞中として記憶装置33に格納するのである。
【0032】
この結果は、例えば、長距離通信装置34を通じてサーバ28に送られ、サーバ28ではデータの収集を行い、収集された車間距離情報{hL}に基づき渋滞を予測するように用いることができる。例えば、車間距離が40m以下である情報が一定数、収集されたから将来この先で渋滞が発生するとの情報を提供するのである。これを判別するサーバ28は自ら作成した交通網に渋滞情報を流し込み、収集した車間距離情報{hL}から迅速に渋滞情報を作成し、運送会社やバス会社、タクシー会社、あるいは高速道路会社など利用者40が利用料42を払い、その渋滞情報44を活用することが出来るものとなる。
【0033】
このように、本実施例によれば、車載の撮影装置により前後を映して画像を得、画像から前方車間距離と後方車間距離を求め、また撮影装置間距離も加算して目的とする隣接車線上の2台の車間距離を算出できる。これと位置情報、並びに時間情報を結びつけて通信手段によりサーバに送り、送られたデータを収集すれば将来渋滞が発生するであろうことを交通情報に反映することができる。このデータを利用者が活用することで大幅な改善効果が期待できる。このとき隣接車線上の前後車両を計測する際、撮影手段、位置情報取得手段、時計手段、通信手段を備えているスマートフォンなどの携帯端末を持っている者ならば、誰でも簡単に低コストで渋滞の予測材料を提供できる。
【0034】
上記実施例ではスマートフォン20,22を利用して車間距離を計測したが、前後に撮影装置21,23を取付けるだけでなく、図9に示すように、側方を見るための側方スマートフォン46を取付けてもよい。側方スマートフォン46は後部スマートフォン22と同等の機能を有する装置である。もちろん、同等の機能を有した装置なら側方スマートフォン46に置き換えられる。このようにすると、図10に示されるごとく、隣接車線14に車両が並んでいる場合、前方車両16とこれに続く後方車両18の速度が増し、自車両12と並走している場合、後方車両18が前後撮影装置21,23の死角に入ってしまう。このとき側方スマートフォン46があることによって、後方車両18を撮影することができるので、正しい車間距離hLを計測することができる。この側方スマートフォン46で計測されたとき、隣接する走行レーンとしても隣接車線14を走行する車両が自車両の前後の撮影画像の死角になった場合に前記車間距離の出力を一時的に停止し、車間距離の誤検出を防止するようにする。また、隣接する走行レーンを走行する車両が自車両の前後の撮影画像の死角になった場合に、死角になった車両18は自車両12の真横にいると仮定し、撮影した画像中の前方もしくは後方車両のいずれか自車両12に近い側の車両と自車両との車間距離を隣接する車両の車間距離とすればよい。
【0035】
さらに図11に示すように、自車両12の車内、もしくは、車外に360度カメラ48を設置し、前方画像24と後方画像26を撮像し、計算装置を用いて画像処理をして画像中の大きさと位置から前方車両16と後方車両18の車間距離を求めるようにしてもよい。これによれば、図12に示すように、隣接車線の車両が自車両12の側方にある場合、前後撮影装置21、23では撮影装置の死角にあたるが、360度カメラ48では全方位の撮影が可能となり、より正しい車間距離htを計測でき、しかも撮影装置を一台設置するだけで撮影可能となるので、コスト低減効果がある。
【0036】
なお、実施例では、撮影機能、位置情報取得機能、時計機能、通信機能のあるスマートフォンを利用したものであるが、単独の機能を持つ手段により実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は車両の車間距離から渋滞予測ができ、だれでも簡単に利用してサーバ利用者に提供することができる。
【符号の説明】
【0038】
10……自車走行レーン、12……自車両、14……隣接車線(隣接走行レーン)、16……前方車両、18……後方車両、20……前部スマートフォン、22……後部スマートフォン、24……前方画像、26……後方画像、28……サーバ、30……近距離通信手段、32……処理装置、33……記憶装置、34……長距離通信装置、36……位置情報取得装置、38……時計装置、40……利用者、42……利用料、44……渋滞情報、46……側方スマートフォン、48……360度カメラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12