(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】基板固定装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240131BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240131BHJP
H01L 21/205 20060101ALI20240131BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20240131BHJP
H05B 3/74 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/302 101G
H01L21/205
H02N13/00 D
H05B3/74
(21)【出願番号】P 2020014639
(22)【出願日】2020-01-31
【審査請求日】2022-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 博幸
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-084350(JP,A)
【文献】特開2014-112672(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0070814(US,A1)
【文献】特開昭55-096684(JP,A)
【文献】特表2017-527980(JP,A)
【文献】特表2017-522730(JP,A)
【文献】特開昭60-126821(JP,A)
【文献】特表2013-545310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/3065
H01L 21/205
H02N 13/00
H05B 3/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレートと、
接着層を介して前記ベースプレートの一方の面に搭載された静電チャックと、を有し、
前記静電チャックは、
基体に内蔵された複数の発熱体と、
前記基体に内蔵され、各々の前記発熱体に直列に接続された、光で制御可能な電流制御素子と、を有し、
各々の前記電流制御素子の受光部が前記基体の外部から光を受光可能であ
り、
前記ベースプレートには、前記ベースプレートから前記接着層に連通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔には、前記受光部に照射される光を伝搬する光ファイバーが配置され、
前記光ファイバーの先端は、前記貫通孔の前記ベースプレートに形成された部分に位置している基板固定装置。
【請求項2】
前記基体の外部から前記受光部に照射される光により前記電流制御素子が導通し、前記電流制御素子に接続された前記発熱体に電流が流れる請求項1に記載の
基板固定装置。
【請求項3】
前記基体には、独立に温度制御可能な複数の領域が画定され、
各々の前記領域には、前記発熱体が1つ配置されている請求項1又は2に記載の
基板固定装置。
【請求項4】
前記電流制御素子は、フォトトランジスタである請求項1乃至3の何れか一項に記載の
基板固定装置。
【請求項5】
前記基体は、前記発熱体と異なる層に、外部から電圧を印加することで発熱する他の発熱体を内蔵している請求項1乃至4の何れか一項に記載の
基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置を製造する際に使用される成膜装置やプラズマエッチング装置は、ウェハを真空の処理室内に精度良く保持するためのステージを有する。このようなステージとして、例えば、ベースプレートに搭載された静電チャックによりウェハを吸着保持する基板固定装置が提案されている。
【0003】
基板固定装置の一例として、ウェハの温度調節をするための発熱体を設けた構造のものが挙げられる。この基板固定装置では、例えば、発熱体として抵抗体を静電チャックに内蔵させ、抵抗体に電力を付加することで加熱する方法や、発熱体として発光ダイオードを用い、発光ダイオードを固定数の行及び列を有する規則的アレイとして配列したり、外側の同心円が内側の同心円より多数の発光ダイオードを有するように円の直径に関連させて配列したりすることが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、基板固定装置において複数の発熱体を独立に制御するためには、制御用の多数の電線を静電チャックの外部に引き出す必要がある。又、静電チャックの外部に引き出された電線は、ベースプレートに形成された貫通孔を通して外部に引き出す必要があるため、電線が増えると貫通孔も増える。つまり、電線の多数化によりベースプレートにおける貫通孔の専有面積が大きくなり、ベースプレートの設計自由度が低下する。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、複数の発熱体を設けた場合でも、ベースプレートの設計自由度の低下を抑制可能な基板固定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本基板固定装置は、ベースプレートと、接着層を介して前記ベースプレートの一方の面に搭載された静電チャックと、を有し、前記静電チャックは、前記基体に内蔵された複数の発熱体と、前記基体に内蔵され、各々の前記発熱体に直列に接続された、光で制御可能な電流制御素子と、を有し、各々の前記電流制御素子の受光部が前記基体の外部から光を受光可能であり、前記ベースプレートには、前記ベースプレートから前記接着層に連通する貫通孔が形成され、前記貫通孔には、前記受光部に照射される光を伝搬する光ファイバーが配置され、前記光ファイバーの先端は、前記貫通孔の前記ベースプレートに形成された部分に位置している。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、複数の発熱体を設けた場合でも、ベースプレートの設計自由度の低下を抑制可能な基板固定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
【
図2】基体に画定された温度制御領域を例示する平面図である。
【
図3】温度制御領域に配置される発熱体を模式的に示す平面図である。
【
図4】第1実施形態に係る基板固定装置における発熱体と電流制御素子の電気的な接続について説明する図である。
【
図5】電流制御素子の周辺部の実装構造を例示する部分断面図である。
【
図6】
図5の電流制御素子の周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
【
図7】比較例に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
【
図8】第1実施形態の変形例1に係る基板固定装置における電流制御素子の周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
【
図9】第1実施形態の変形例2に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
〈第1実施形態〉
図1は、第1実施形態に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
図1を参照すると、基板固定装置1は、主要な構成要素として、ベースプレート10と、接着層20と、静電チャック30と、光ファイバー80とを有している。基板固定装置1は、ベースプレート10の一方の面に搭載された静電チャック30により吸着対象物である基板(ウェハ等)を吸着保持する装置である。
【0012】
ベースプレート10は、静電チャック30を搭載するための部材である。ベースプレート10の厚さは、例えば、20~40mm程度である。ベースプレート10は、例えば、アルミニウムから形成され、プラズマを制御するための電極等として利用できる。ベースプレート10に所定の高周波電力を給電することで、発生したプラズマ状態にあるイオン等を静電チャック30上に吸着された基板に衝突させるためのエネルギーを制御し、エッチング処理を効果的に行うことができる。
【0013】
ベースプレート10の内部に、静電チャック30上に吸着された基板を冷却する不活性ガスを導入するガス供給路が設けられてもよい。基板固定装置1の外部からガス供給路に、例えば、HeやAr等の不活性ガスが導入され、静電チャック30上に吸着された基板の裏面に不活性ガスが供給されると、基板を冷却できる。
【0014】
ベースプレート10の内部に、冷媒流路が設けられてもよい。冷媒流路は、例えば、ベースプレート10の内部に環状に形成された孔である。基板固定装置1の外部から冷媒流路に、例えば、冷却水やガルデン等の冷媒が導入される。冷媒流路に冷媒を循環させベースプレート10を冷却することで、静電チャック30上に吸着された基板を冷却できる。
【0015】
静電チャック30は、吸着対象物である基板を吸着保持する部分である。静電チャック30の平面形状は、例えば、円形である。静電チャック30の吸着対象物である基板の直径は、例えば、8、12、又は18インチである。
【0016】
なお、平面視とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物をベースプレート10の上面10aの法線方向から視た形状を指すものとする。
【0017】
静電チャック30は、接着層20を介して、ベースプレート10の上面10aに設けられている。接着層20は、例えば、シリコーン系接着剤である。接着層20の厚さは、例えば、0.1~2.0mm程度である。接着層20は、ベースプレート10と静電チャック30を接着すると共に、セラミックス製の静電チャック30とアルミニウム製のベースプレート10との熱膨張率の差から生じるストレスを低減させる効果を有する。
【0018】
静電チャック30は、主要な構成要素として、基体31と、静電電極32と、複数の発熱体33と、複数の電流制御素子34と、配線36とを有している。基体31の上面は、吸着対象物が載置される載置面31aである。静電チャック30は、例えば、ジョンセン・ラーベック型静電チャックである。但し、静電チャック30は、クーロン力型静電チャックであってもよい。
【0019】
基体31は誘電体であり、基体31としては、例えば、酸化アルミニウム(Al2O3)や窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスを用いる。基体31は、助剤として、例えば、ケイ素(Si)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)、及びイットリウム(Y)から選択される2種以上の元素の酸化物を含んでもよい。基体31の厚さは、例えば、5~10mm程度、基体31の比誘電率(1kHz)は、例えば、9~10程度である。
【0020】
静電電極32は、例えば薄膜電極であり、基体31に内蔵されている。静電電極32は、基板固定装置1の外部に設けられた電源に接続され、電源から所定の電圧が印加されると、ウェハとの間に静電気による吸着力を発生させる。これにより、静電チャック30の基体31の載置面31a上にウェハを吸着保持できる。吸着保持力は、静電電極32に印加される電圧が高いほど強くなる。静電電極32は、単極形状でも、双極形状でも構わない。静電電極32の材料としては、例えば、タングステン、モリブデン等を用いる。
【0021】
図2は、基体に画定された温度制御領域を例示する平面図である。
図2に示すように、基体31には、平面視において、独立に温度制御可能な複数の温度制御領域31eが画定されている。
図2の例では、30個の温度制御領域31eが画定されているが、温度制御領域31eは100から200個程度にすることも可能である。又、温度制御領域31eの平面形状は任意であり、必ずしも略同心円状に区切る必要はなく、例えば、略格子状に区切ってもよい。
【0022】
図3は、温度制御領域に配置される発熱体を模式的に示す平面図である。発熱体33は、基体31に内蔵されており、電流が流れると発熱して基体31の載置面31aが所定の温度となるように加熱するヒータである。
【0023】
図3に示すように、発熱体33は、各々の温度制御領域31eに1つずつ配置されている。各々の温度制御領域31eに配置された発熱体33同士は互いに絶縁されており、電流値を変えることで、独立に発熱量を変えることができる。このように、基体31に独立に温度制御可能な複数の温度制御領域31eが画定され、各々の温度制御領域31eに1つずつ発熱体33が配置されることで、基体31の載置面31aを均一に加熱できる。
【0024】
発熱体33は、例えば、基体31の載置面31aの温度を50℃~200℃程度まで加熱できる。発熱体33の材料としては、例えば、タングステン(W)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、コンスタンタン(Cu/Ni/Mn/Feの合金)等を用いることができる。発熱体33の厚さは、例えば、20~100μm程度である。発熱体33は、例えば、ジグザグ状等の所定のパターンに形成できる。
【0025】
図4は、第1実施形態に係る基板固定装置における発熱体と電流制御素子の電気的な接続について説明する図である。
図4に示すように、電流制御素子34は基体31に内蔵されており、1つの発熱体33は1つの電流制御素子34と直列に接続されている。電流制御素子34の受光部は基体31の外部に露出しており、電流制御素子34の受光部は基体31の外部から光を受光可能である。なお、
図4において、Lは、光ファイバー80を経由して電流制御素子34の受光部に照射される光(例えば、レーザ光や発光ダイオードの光)を示している。
【0026】
電流制御素子34は、導通/非導通を光で制御可能な素子であり、基体31の外部から電流制御素子34の受光部に光が照射されると、電流制御素子34が導通し、電流制御素子34に接続された発熱体33に所定の電流が流れ、発熱体33が発熱する。電流制御素子34は、例えば、フォトトランジスタであるが、フォトレジスタ(CdSセル)、太陽電池等であってもよい。電流制御素子34の大きさは、例えば、縦3mm×横3mm×高さ1mm程度である。
【0027】
図4の例では、電流制御素子34はフォトトランジスタである。電流制御素子34の第1端子(エミッタ)は発熱体33の一端と電気的に接続され、発熱体33の他端はGNDと電気的に接続されている。電流制御素子34の第2端子(コレクタ)はVDD(電源)と電気的に接続されている。電流制御素子34として、耐熱性の高いフォトトランジスタを使用することが好ましい。
【0028】
GNDは、電線61(GND)を経由して基板固定装置1の外部に引き出されている。VDDは、電線62(VDD)を経由して基板固定装置1の外部に引き出されている。又、1つの電流制御素子34に対して1つの光ファイバー80が割り当てられており、各々の光ファイバー80は基板固定装置1の外部に引き出されている。
【0029】
なお、電線61(GND)、電線62(VDD)、光ファイバー80を直接基板固定装置1の外部に引き出す形態に代えて、ベースプレート10にソケットを設け、電線61(GND)、電線62(VDD)、光ファイバー80をソケットを介して基板固定装置1の外部と接続可能な形態としてもよい。
【0030】
電流制御素子34の受光部に、光ファイバー80を介して基板固定装置1の外部から光が照射されると、電流制御素子34が導通し、電流制御素子34に接続された発熱体33に電流が流れる。発熱体33の発熱量は、基板固定装置1の外部からの光をオン/オフして電流制御素子34をスイッチとして動作させ、光をオンする時間を変化させることで可変できる。或いは、増幅作用による入力光強度に応じた電流の可変方式をとることもできる。
【0031】
なお、
図4では、発熱体33と電流制御素子34の直列回路を3組図示しているが、発熱体33と電流制御素子34の直列回路は温度制御領域31eの個数分設けられる。例えば、温度制御領域31eが100個あれば、発熱体33と電流制御素子34の直列回路が100個設けられる。
【0032】
図5は、電流制御素子の周辺部の実装構造を例示する部分断面図である。
図6は、
図5の電流制御素子の周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
図5及び
図6を参照すると、基体31の下面には、接着層20側に開口する凹部31x及び31zが形成されている。
【0033】
凹部31xは、電流制御素子34を配置するための凹部であり、電流制御素子34の個数分設けることができる。但し、1つの凹部31xに複数の電流制御素子34を配置してもよい。凹部31zは、電線を接続するためのはんだ50が配置される凹部である。
【0034】
基体31には、配線36が内蔵されている。配線36は、電流制御素子実装用パッド、はんだ接続用パッド、配線パターン等を含んでいる。配線36は複数層に形成されており、異なる層に位置する配線36の所定部分は、ビア配線37により相互に接続されている。又、配線36の所定部分は、ビア配線37により、発熱体33の所定部分と電気的に接続されている。配線36及びビア配線37の材料としては、例えば、タングステン(W)やモリブデン(Mo)等を用いることができる。
【0035】
凹部31x内には、配線36の電流制御素子実装用パッドが露出している。凹部31x内に配置された電流制御素子34は、配線36の電流制御素子実装用パッドに、例えばフリップチップ実装されている。
【0036】
ベースプレート10及び接着層20には、光ファイバー80を通すための貫通孔10xが、凹部31xと連通するように形成されている。凹部31x内に配置された電流制御素子34の受光部は接着層20側を向いており、貫通孔10xには電流制御素子34の受光部に照射される光を伝搬する光ファイバー80が配置されている。つまり、電流制御素子34の受光部は、光ファイバー80を経由して照射される光を受光可能に配置されている。光ファイバー80は接着剤等により貫通孔10xに固定してもよいし、ベースプレート10の下面にソケットを設けることでベースプレート10に固定してもよい。
【0037】
凹部31z内には、配線36のはんだ接続用パッドが露出している。ベースプレート10及び接着層20には、電線を通すための貫通孔10yが、凹部31zと連通するように形成されている。貫通孔10y内に配置されたGND用の電線61は、はんだ50により、はんだ接続用パッドと電気的に接続されている。貫通孔10y内に配置された電源用(VDD用)の電線62は、はんだ50により、はんだ接続用パッドと電気的に接続されている。
【0038】
電線61及び62は、例えば、導体の周囲に絶縁体を被覆した構造である。電線61及び62の各々の導体が、はんだ50により、はんだ接続用パッドと電気的に接続されている。電線61及び62とベースプレート10との絶縁性を高めるために、貫通孔10yの内壁に絶縁層15を設けることが好ましい。絶縁層15としては、例えば、樹脂やセラミック等を用いることができる。
【0039】
なお、GND用の電線61及び電源用(VDD用)の電線62には比較的大きな電流が流れる。そのため、電線61及び62が配置される貫通孔10yの径は、光ファイバー80が配置される貫通孔10xの径よりも大きい。又、電線61及び62の径は、光ファイバー80の径よりも大きい。電線61及び62が配置される貫通孔10yの径は、例えば、φ5mmであり、光ファイバー80が配置される貫通孔10xの径は、例えば、φ0.5mmである。電線61及び62の径は、例えば、φ4mmであり、光ファイバー80の径は、例えば、φ0.2mmである。
【0040】
ここで、基板固定装置1の製造方法について説明する。基板固定装置1を作製するには、まず、グリーンシートにビア加工を行う工程、ビアに導電ペーストを充填する工程、静電電極となるパターンを形成する工程、発熱体となるパターンを形成する工程、配線となるパターンを形成する工程、他のグリーンシートを積層して焼成する工程、表面を平坦化する工程等を含む周知の製造方法により、基体31に静電電極32、発熱体33、及び配線36を内蔵する静電チャック30を作製する。
【0041】
そして、配線36の電流制御素子実装用パッドが露出するように、基体31の下面から載置面31a側に窪む凹部31xを必要な個数形成する。又、はんだ接続用パッドが露出するように、基体31の下面から載置面31a側に窪む凹部31zを必要な個数形成する。凹部31x及び31zは、例えば、穴加工したグリーンシートを最下面に積層する方法で形成される。
【0042】
次に、凹部31x内に露出する配線36の電流制御素子実装用パッドに、例えばフリップチップ実装により、電流制御素子34を実装する。
【0043】
次に、凹部31z内のはんだ接続用パッドに、はんだ50で電線の導体部を接続する。そして、凹部31x及び31zが形成されている部分を除く静電チャック30の下面に未硬化の接着層20を形成する。又、光ファイバー80を通すための貫通孔10x、電線61及び62を通すための貫通孔10y、冷媒流路、ガス供給路等を形成したベースプレート10を準備する。そして、貫通孔10y内に電線を通す。そして、接着層20を介してベースプレート10を静電チャック30の下面と接続し、接着層20を硬化させる。そして、貫通孔10x内に光ファイバー80を通す。以上の工程により、
図1等に示す基板固定装置1が完成する。
【0044】
ここで、比較例を交えながら、基板固定装置1を構成する静電チャック30の奏する効果について説明する。
【0045】
図7は、比較例に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
図7を参照すると、基板固定装置1Xは、静電チャック30が静電チャック30Xに置換された点が、基板固定装置1(
図1等参照)と相違する。
【0046】
静電チャック30Xは、主要な構成要素として、基体31と、静電電極32と、発熱体33と、配線36を有している。静電チャック30Xには、電流制御素子34は内蔵されていない。基体31には、
図2と同様に、平面視において、独立に温度制御可能な複数の温度制御領域31eが画定されている。又、発熱体33は、
図3と同様に、各々の温度制御領域31eに1つずつ配置されている。各々の温度制御領域31eに配置された発熱体33同士は互いに絶縁されており、電流値を変えることで、独立に発熱量を変えることができる。
【0047】
各々の発熱体33の一端は、配線36により相互に接続された後、入出力用の電線65(IN1)に接続され、電線65(IN1)は基板固定装置1Xの外部に引き出されている。各々の発熱体33の他端は、入出力用の電線66(IN2)に接続され、電線66(IN2)は、基板固定装置1Xの外部に引き出されている。電線65と電線66の合計は、発熱体33の個数+1本となる。例えば、発熱体33が100個あれば、電線65と電線66の合計は101本となる。
【0048】
例えば、電線65(IN1)と電線66(IN2)の一方はGNDに接続され、他方は電源に接続される。各々の発熱体33の発熱量は、電線65(IN1)と電線66(IN2)を介して各々の発熱体の両端に印加される電圧の値により可変できる。或いは、電線65(IN1)と電線66(IN2)を介して各々の発熱体の両端に一定の電圧(パルス電圧)を供給し、電圧を供給する時間を変化させることで、発熱体33の発熱量を可変してもよい。
【0049】
電線65(IN1)と電線66(IN2)には、発熱体33の発熱に必要な比較的大きな電流が流れるため、電線65及び66が配置される貫通孔10yの径は、例えば、φ5mmである。又、電線65及び66の径は、例えば、φ4mmである。そのため、電線65と電線66の合計の本数が増えるにつれて、ベースプレート10における貫通孔10yの専有面積が無視できないほど大きくなる。
【0050】
例えば、
図7に示す比較例に係る基板固定装置1Xのような構造の場合、温度制御領域31eを100個にすると、基板固定装置と外部との電気的な接続が100本以上となる。つまり、100本以上の電線をベースプレート10に形成された貫通孔10yを通して外部に引き出す必要がある。この場合、前述のようにベースプレート10における貫通孔10yの専有面積が無視できないほど大きくなり、ベースプレート10の設計自由度が大幅に低下する。
【0051】
基板固定装置1の場合も、温度制御領域31eと同数の光ファイバー80が必要になる。しかしながら、前述のように、電線61及び62が配置される貫通孔10yの径がφ5mm程度であるのに対し、光ファイバー80が配置される貫通孔10xの径はφ0.5mm程度であり、貫通孔10yの径の1/10程度である。
【0052】
そのため、ベースプレート10に多数の貫通孔10xを設ける場合であっても、同数の貫通孔10yを設ける場合に比べて、ベースプレート10における貫通孔10xの専有面積が大幅に低減される。すなわち、基板固定装置1の静電チャック30は、ベースプレート10に多数の貫通孔10xを設けた場合でも、ベースプレート10の設計自由度の低下を抑制可能である。
【0053】
又、基板固定装置1では、上記のように、基板固定装置1と外部との電気的な接続は、電源(VDD)、GNDのみとなるため、外部接続に必要な部品の低減によりコストを抑制できる。又、はんだ付け箇所の大幅な低減等に伴うアッセンブリー難易度の飛躍的な低下により、歩留り及び信頼性の向上が期待できる。静電チャック30は消耗部品であるため、歩留り改善によるコスト低減効果は大きい。
【0054】
又、光ファイバー80は、ベースプレート10との電気的な絶縁が不要となるため、貫通孔10x内には絶縁材等が不要となり、この点でもコスト削減に繋がる。
【0055】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、光ファイバーの先端の位置を下方に後退させる例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0056】
図8は、第1実施形態の変形例1に係る基板固定装置における電流制御素子の周辺部を拡大した部分拡大断面図である。
【0057】
図8では、
図6の場合と同様に、凹部31x内に配置された電流制御素子34の受光部は接着層20側を向いており、光ファイバー80を経由して照射される光を受光可能である。
【0058】
図6では、光ファイバー80の先端は、ベースプレート10から接着層20に連通する貫通孔10xの接着層20に形成された部分に位置していた。これに対し、
図8では、光ファイバー80の先端は、ベースプレート10から接着層20に連通する貫通孔10xのベースプレート10に形成された部分に位置しており、貫通孔10xの接着層20に形成された部分には入り込んでいない。
【0059】
一般に、ベースプレート10と基体31の熱膨張係数の違いにより、温度条件によってはベースプレート10に対して基体31が水平方向に変位する。このとき、接着層20も変位するため、光ファイバー80の先端が接着層20内に入り込んでいると、光ファイバー80の先端が劣化等のダメージを負う場合がある。
図8のように、光ファイバー80の先端が貫通孔10xのベースプレート10に形成された部分に位置しており、接着層20に形成された部分に入り込んでいない構造とすることで、光ファイバー80の先端が劣化等のダメージを負うことを回避できる。ベースプレート10に対する基体31の変位量は基体31の外周側に行くほど大きくなるため、ベースプレート10の外周側に配置された貫通孔10xにおいて、特に顕著な効果を奏する。
【0060】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、基体31の発熱体33と異なる層に、外部から電圧を印加することで発熱する他の発熱体を内蔵した静電チャックを備えた基板固定装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
【0061】
図9は、第1実施形態の変形例2に係る基板固定装置を簡略化して例示する断面模式図である。
図9を参照すると、基板固定装置1Bは、静電チャック30が静電チャック30Bに置換された点が、基板固定装置1(
図1等参照)と相違する。又、静電チャック30Bは、発熱体40と、電線68(IN1)と、電線69(IN2)が追加された点が、静電チャック30(
図1等参照)と相違する。
【0062】
静電チャック30Bでは、発熱体33とは別の層に発熱体33とは独立に制御可能な発熱体40が配置されている。発熱体40は、例えば、厚さ方向において静電電極32と発熱体33との間に配置できる。発熱体40は、例えば、渦巻き状のパターン等に形成された1本の抵抗体であり、複数の温度制御領域31eに跨って基体31の載置面31aの全体を加熱できるように配置されている。発熱体40の材料は、例えば、発熱体33と同様である。
【0063】
発熱体40の一端は、入出力用の電線68(IN1)に接続され、電線68(IN1)は基板固定装置1Bの外部に引き出されている。発熱体40の他端は、入出力用の電線69(IN2)に接続され、電線69(IN2)は、基板固定装置1Bの外部に引き出されている。電線68と電線69は、1本ずつである。
【0064】
例えば、電線68(IN1)と電線69(IN2)の一方はGNDに接続され、他方は電源に接続される。発熱体40の発熱量は、電線68(IN1)と電線69(IN2)を介して発熱体40の両端に印加される電圧の値により可変できる。或いは、電線68(IN1)と電線69(IN2)を介して発熱体40の両端に一定の電圧(パルス電圧)を供給し、電圧を供給する時間を変化させることで、発熱体40の発熱量を可変してもよい。
【0065】
このように、発熱体33とは別に発熱体40を基体31に内蔵してもよい。例えば、発熱体40に電流を流して基体31の載置面31aを加熱し、不均一になる部分のみを発熱体33を加熱して補うことで、基体31の載置面31aの全体を均一に加熱できる。
【0066】
なお、上記では、発熱体40を1本の抵抗体であるとしたが、発熱体40を独立した複数の抵抗体とし、複数の領域を独立に温度制御可能としてもよい。
【0067】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0068】
例えば、本発明に係る基板固定装置の吸着対象物としては、半導体ウェハ(シリコンウエハ等)以外に、液晶パネル等の製造工程で使用されるガラス基板等を例示できる。
【符号の説明】
【0069】
1、1A、1B 基板固定装置
10 ベースプレート
10a 上面
15 絶縁層
30、30B 静電チャック
31 基体
31a 載置面
31e 温度制御領域
31x、31z 凹部
32 静電電極
33、40 発熱体
34 電流制御素子
36 配線
37 ビア配線
50 はんだ
61、62、65、66、68、69 電線