IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ニューフレアテクノロジーの特許一覧 ▶ ニューフレアテクノロジー アメリカ,インク.の特許一覧

特許7429128マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法
<>
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図1
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図2
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図3
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図4
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図5
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図6
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図7
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図8
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図9
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図10
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図11
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図12
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図13
  • 特許-マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/28 20060101AFI20240131BHJP
   H01J 37/29 20060101ALI20240131BHJP
   H01J 37/05 20060101ALI20240131BHJP
   H01J 37/12 20060101ALI20240131BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01J37/28 B
H01J37/29
H01J37/05
H01J37/12
H01J37/153 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020019840
(22)【出願日】2020-02-07
(65)【公開番号】P2020145184
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-01-06
(31)【優先権主張番号】62/814,087
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】317008610
【氏名又は名称】ニューフレアテクノロジー アメリカ,インク.
【氏名又は名称原語表記】NuFlare Technology America,Inc.
【住所又は居所原語表記】1294 Hammerwood Avenue,Sunnyvale,CA 94089,U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【弁理士】
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【弁理士】
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】井上 和彦
(72)【発明者】
【氏名】安藤 厚司
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 宗博
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ハートレイ
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-196951(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0117114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/05,37/28,37/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチ1次電子ビームを形成する形成機構と、
前記マルチ1次電子ビームを屈折させる電磁レンズと、
前記マルチ1次電子ビームの通過位置に合わせて、前記マルチ1次電子ビームの各ビームを通過させる、複数の径寸法の複数の開口部が各々形成された、前記マルチ1次電子ビームの各ビームの像面共役位置を前記径寸法に応じて調整可能な複数段の電極基板と、
前記複数段の電極基板を通過した前記マルチ1次電子ビームが照射される試料を載置することが可能なステージと、
を備え
前記複数段の電極基板は、前記電磁レンズの磁場中に配置されることを特徴とするマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項2】
前記複数段の電極基板の各電極基板に独立した電位を印加する電源回路をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項3】
前記複数段の電極基板の各電極基板において、前記複数の開口部の各開口部の径寸法が、前記マルチ1次電子ビーム全体の軌道中心軸に対して回転対称になることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項4】
前記複数段の電極基板の各電極基板において、前記複数の開口部の各開口部の径寸法が前記マルチ1次電子ビーム全体の軌道中心軸から離れるに従って大きくなることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項5】
前記複数段の電極基板は、前記マルチ1次電子ビームの各ビームの像面位置と共役な位置とは異なる位置に配置されることを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項6】
前記複数段の電極基板を通過した前記マルチ1次電子ビームを前記試料面にフォーカスさせる対物レンズをさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項7】
前記試料に前記マルチ1次電子ビームが照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビームを前記マルチ1次電子ビームから分離するビームセパレーターと、
分離された前記マルチ2次電子ビームを個別に検出するマルチ検出器と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載のマルチ電子ビーム照射装置。
【請求項8】
マルチ1次電子ビームを形成し、
電磁レンズを用いて前記マルチ1次電子ビームを屈折させ、
前記マルチ1次電子ビームの通過位置に合わせて、前記マルチ1次電子ビームの各ビームを通過させる、複数の径寸法の複数の開口部が各々形成された、前記マルチ1次電子ビームの各ビームの像面共役位置を前記径寸法に応じて調整可能な複数段の電極基板を用いて、前記マルチ1次電子ビームに前記複数段の電極基板を通過させ、
ステージに載置された試料に、前記複数段の電極基板を通過した前記マルチ1次電子ビームを照射し、
前記複数段の電極基板は、前記電磁レンズの磁場中に配置されることを特徴とするマルチ電子ビーム照射方法。
【請求項9】
前記複数段の電極基板の各電極基板に独立した電位を印加することを特徴とする請求項8記載のマルチ電子ビーム照射方法。
【請求項10】
前記複数段の電極基板の各電極基板において、前記複数の開口部の各開口部の径寸法が、前記マルチ1次電子ビーム全体の軌道中心軸に対して回転対称になることを特徴とする請求項8記載のマルチ電子ビーム照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチ電子ビーム照射装置及びマルチ電子ビーム照射方法に関する。例えば、電子線によるマルチビームを照射して放出されるパターンの2次電子画像を取得してパターンを検査する検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大規模集積回路(LSI)の高集積化及び大容量化に伴い、半導体素子に要求される回路線幅はますます狭くなってきている。そして、多大な製造コストのかかるLSIの製造にとって、歩留まりの向上は欠かせない。しかし、1ギガビット級のDRAM(ランダムアクセスメモリ)に代表されるように、LSIを構成するパターンは、サブミクロンからナノメータのオーダーになっている。近年、半導体ウェハ上に形成されるLSIパターン寸法の微細化に伴って、パターン欠陥として検出しなければならない寸法も極めて小さいものとなっている。よって、半導体ウェハ上に転写された超微細パターンの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。その他、歩留まりを低下させる大きな要因の一つとして、半導体ウェハ上に超微細パターンをフォトリソグラフィ技術で露光、転写する際に使用されるマスクのパターン欠陥があげられる。このため、LSI製造に使用される転写用マスクの欠陥を検査するパターン検査装置の高精度化が必要とされている。
【0003】
検査手法としては、半導体ウェハやリソグラフィマスク等の基板上に形成されているパターンを撮像した測定画像と、設計データ、あるいは基板上の同一パターンを撮像した測定画像と比較することにより検査を行う方法が知られている。例えば、パターン検査方法として、同一基板上の異なる場所の同一パターンを撮像した測定画像データ同士を比較する「die to die(ダイ-ダイ)検査」や、パターン設計された設計データをベースに設計画像データ(参照画像)を生成して、これとパターンを撮像した測定データとなる測定画像とを比較する「die to database(ダイ-データベース)検査」がある。撮像された画像は測定データとして比較回路へ送られる。比較回路では、画像同士の位置合わせの後、測定データと参照データとを適切なアルゴリズムに従って比較し、一致しない場合には、パターン欠陥有りと判定する。
【0004】
上述したパターン検査装置には、レーザ光を検査対象基板に照射して、この透過像或いは反射像を撮像する装置の他、検査対象基板上を1次電子ビームで走査(スキャン)して、1次電子ビームの照射に伴い検査対象基板から放出される2次電子を検出して、パターン像を取得する検査装置の開発も進んでいる。電子ビームを用いた検査装置では、さらに、マルチビームを用いた装置の開発も進んでいる。マルチビームを照射する装置では、試料面上に照射されるビームが光軸中心から外周方向に離れるのに伴い、像面湾曲収差の影響により、ビームのスポット径に差異が生じる。よって、視野(FOV)を大きくすると、かかる収差の影響によって、ビームのボケが大きくなってしまう。このため、試料面を観察する装置や検査装置等でFOVを拡大することが困難であるといった問題がある。ここで、荷電粒子線に対して光軸から離れるように偏向する凹レンズの機能を有する偏向器が複数配置された偏向器アレイ、レンズアレイ、及び四極子アレイを組み合わせた収差補正器を使って複数の荷電粒子線を偏向して、色収差や球面収差を補正することが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、ボケの補正をビーム毎に行うと、ビーム毎に印加電位が異なるため、ビーム毎に個別に電源が必要となってしまう。よって、大規模な装置構成になってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-229481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一態様は、マルチ1次電子ビームの像面湾曲を補正可能な照射装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム照射装置は、
マルチ1次電子ビームを形成する形成機構と、
前記マルチ1次電子ビームを屈折させる電磁レンズと、
前記マルチ1次電子ビームの通過位置に合わせて、前記マルチ1次電子ビームの各ビームを通過させる、複数の径寸法の複数の開口部が各々形成された、前記マルチ1次電子ビームの各ビームの像面共役位置を前記径寸法に応じて調整可能な複数段の電極基板と、
前記複数段の電極基板を通過した前記マルチ1次電子ビームが照射される試料を載置することが可能なステージと、
を備え
前記複数段の電極基板は、前記電磁レンズの磁場中に配置されることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様のマルチ電子ビーム照射方法は、
マルチ1次電子ビームを形成し、
電磁レンズを用いて前記マルチ1次電子ビームを屈折させ、
前記マルチ1次電子ビームの通過位置に合わせて、前記マルチ1次電子ビームの各ビームを通過させる、複数の径寸法の複数の開口部が各々形成された、前記マルチ1次電子ビームの各ビームの像面共役位置を前記径寸法に応じて調整可能な複数段の電極基板を用いて、前記マルチ1次電子ビームに前記複数段の電極基板を通過させ、
ステージに載置された試料に、前記複数段の電極基板を通過した前記マルチ1次電子ビームを照射し、
前記複数段の電極基板は、前記電磁レンズの磁場中に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、マルチ1次電子ビームの像面湾曲を補正できる。よって、基板の表面観察等のレビューや検査において視野(FOV)を拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
図3】実施の形態1における収差補正器の構成を説明するための上面図である。
図4】実施の形態1における収差補正器の構成を説明するための断面図である。
図5】実施の形態1における収差補正器通過後の像面共役位置と通過孔の径寸法との関係の一例を示す図である。
図6】実施の形態1の収差補正器の効果を説明するための図である。
図7】実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図8】実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。
図9】実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。
図10】実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。
図11】実施の形態1における収差補正器を静電レンズと見做した場合の各電極の一例を示す図である。
図12図11に対応する集束作用の一例を説明するための図である。
図13】実施の形態1における収差補正器を静電レンズと見做した場合の各電極の他の一例を示す図である。
図14図13に対応するさらなら集束作用の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態では、マルチ電子ビーム照射装置の一例として、マルチ電子ビーム検査装置について説明する。但し、マルチ電子ビーム照射装置は、検査装置に限るものではなく、例えば、画像が取得可能なマルチ電子ビームを照射する装置であれば構わない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるパターン検査装置の構成を示す構成図である。図1において、基板に形成されたパターンを検査する検査装置100は、マルチ電子ビーム検査装置の一例である。検査装置100は、画像取得機構150、及び制御系回路160を備えている。画像取得機構150は、電子ビームカラム102(電子鏡筒ともいう。)(マルチビームカラムの一例)、検査室103、検出回路106、チップパターンメモリ123、ステージ駆動機構142、及びレーザ測長システム122を備えている。電子ビームカラム102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203(形成機構の一例)、電磁レンズ205、収差補正器204、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板206、電磁レンズ220、ビームセパレーター214、対物レンズ207、主偏向器208、副偏向器209、偏向器218、投影レンズ224、及びマルチ検出器222が配置されている。照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、電磁レンズ205、収差補正器204、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板206、電磁レンズ220、ビームセパレーター214、対物レンズ207、主偏向器208、及び副偏向器209によって1次電子ビーム光学系が構成される。また、ビームセパレーター214、偏向器218、及び投影レンズ224によって2次電子ビーム光学系が構成される。
【0013】
検査室103内には、少なくともXY平面上を移動可能なXYステージ105が配置される。XYステージ105上には、検査対象となる基板101(試料)が配置される。基板101には、露光用マスク基板、及びシリコンウェハ等の半導体基板が含まれる。基板101が半導体基板である場合、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されている。基板101が露光用マスク基板である場合、露光用マスク基板には、チップパターンが形成されている。チップパターンは、複数の図形パターンによって構成される。かかる露光用マスク基板に形成されたチップパターンが半導体基板上に複数回露光転写されることで、半導体基板には複数のチップパターン(ウェハダイ)が形成されることになる。以下、基板101が半導体基板である場合を主として説明する。基板101は、例えば、パターン形成面を上側に向けてXYステージ105に配置される。また、XYステージ105上には、検査室103の外部に配置されたレーザ測長システム122から照射されるレーザ測長用のレーザ光を反射するミラー216が配置されている。マルチ検出器222は、電子ビームカラム102の外部で検出回路106に接続される。検出回路106は、チップパターンメモリ123に接続される。
【0014】
制御系回路160では、検査装置100全体を制御する制御計算機110が、バス120を介して、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、ステージ制御回路114、収差補正回路121、レンズ制御回路124、ブランキング制御回路126、偏向制御回路128、磁気ディスク装置等の記憶装置109、モニタ117、メモリ118、及びプリンタ119に接続されている。また、偏向制御回路128は、DAC(デジタルアナログ変換)アンプ144,146,148に接続される。DACアンプ146は、主偏向器208に接続され、DACアンプ144は、副偏向器209に接続される。また、DACアンプ148は、偏向器218に接続される。収差補正回路121は、収差補正器204に接続される。
【0015】
また、チップパターンメモリ123は、比較回路108に接続されている。また、XYステージ105は、ステージ制御回路114の制御の下にステージ駆動機構142により駆動される。ステージ駆動機構142では、例えば、ステージ座標系におけるX方向、Y方向、θ方向に駆動する3軸(X-Y-θ)モータの様な駆動系が構成され、XYステージ105が移動可能となっている。これらの、図示しないXモータ、Yモータ、θモータは、例えばステップモータを用いることができる。XYステージ105は、XYθ各軸のモータによって水平方向及び回転方向に移動可能である。そして、XYステージ105の移動位置はレーザ測長システム122により測定され、位置回路107に供給される。レーザ測長システム122は、ミラー216からの反射光を受光することによって、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を測長する。ステージ座標系は、例えば、マルチ1次電子ビームの光軸に直交する面に対して、X方向、Y方向、θ方向が設定される。
【0016】
一括ブランキング偏向器212は、少なくとも2極の電極群により構成され、ブランキング制御回路126によって制御される。主偏向器208は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ146を介して、偏向制御回路128によって制御される。同様に、副偏向器209は、少なくとも4極の電極群により構成され、電極毎に配置されるDACアンプ144を介して、偏向制御回路128によって制御される。同様に、偏向器218は、少なくとも4極の電極で構成され、電極毎にDACアンプ148を介して、偏向制御回路128によって制御される。
【0017】
ここで、図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。検査装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0018】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)の穴(開口部)22がx,y方向に所定の配列ピッチで形成されている。図2の例では、5×5の穴(開口部)22が形成されている場合を示している。穴22の配列数はこれに限るものではない。各穴22は、共に同じ外径の円形で形成される。或いは、同じ寸法形状の矩形であっても構わない。これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。ここでは、横縦(x,y方向)が共に2列以上の穴22が配置された例を示したが、これに限るものではない。例えば、横縦(x,y方向)どちらか一方が複数列で他方は1列だけであっても構わない。また、穴22の配列の仕方は、図2のように、横縦が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0019】
次に、検査装置100における画像取得機構150の動作について説明する。
【0020】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202によりほぼ垂直に成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、図2に示すように、複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば複数の電子ビーム(マルチ1次電子ビーム)20(図1の実線)が形成される。
【0021】
形成されたマルチ1次電子ビーム20は、図示しない像面共役位置で各ビームがそれぞれ集束した後、各ビームが広がった状態で電磁レンズ205に入射し、電磁レンズ205によって制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって屈折させられる。言い換えれば、電磁レンズ205は、マルチ1次電子ビーム20の入射を受け、マルチ1次電子ビーム20を屈折させる。ここで、一括ブランキング偏向器212によって、マルチ1次電子ビーム20全体が一括して偏向された場合には、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置が外れ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、一括ブランキング偏向器212によって偏向されなかったマルチ1次電子ビーム20は、図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかる一括ブランキング偏向器212のON/OFFによって、マルチ1次電子ビーム20全体の一括したブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが一括制御される。このように、制限アパーチャ基板206は、一括ブランキング偏向器212によってビームOFFの状態になるように偏向されたマルチ1次電子ビーム20を遮蔽する。そして、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビーム群により、検査用のマルチ1次電子ビーム20が形成される。
【0022】
制限アパーチャ基板206を通過したマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ220に進む。電磁レンズ220は、マルチ1次電子ビーム20の入射を受け、マルチ1次電子ビーム20を屈折させる。マルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ220によって、ビーム毎に、クロスオーバー(C.O.)を形成する。マルチビーム20は、かかるビーム毎に形成されるクロスオーバーの位置に配置されたビームセパレーター214を通過した後、対物レンズ207により基板101(試料)面上に焦点が合わされ(合焦され)、所望の縮小率のパターン像(ビーム径)となり、主偏向器208及び副偏向器209によって、制限アパーチャ基板206を通過したマルチ1次電子ビーム20全体が同方向に一括して偏向され、各ビームの基板101上のそれぞれの照射位置に照射される。かかる場合に、主偏向器208によって、マルチ1次電子ビーム20が走査するマスクダイの基準位置にマルチビーム20全体を一括偏向する。実施の形態1では、例えばXYステージ105を連続移動させながらスキャンを行う。このため、主偏向器208は、さらにXYステージ105の移動に追従するように、トラッキング偏向を行う。そして、副偏向器209によって、各ビームがそれぞれ対応する領域内を走査するようにマルチ1次電子ビーム20全体を一括偏向する。一度に照射されるマルチ1次電子ビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに所望の縮小率(1/a)を乗じたピッチで並ぶことになる。このように、電子ビームカラム102は、一度に2次元状のm×n本のマルチビーム20を基板101に照射する。
【0023】
基板101の所望する位置にマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して基板101からマルチ1次電子ビーム20の各ビームに対応する、反射電子を含む2次電子の束(マルチ2次電子ビーム300)(図1の点線)が放出される。図1では、マルチ2次電子ビーム300を1本のビームで代表して示している。
【0024】
基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、対物レンズ207によって、マルチ2次電子ビーム300の中心側に屈折させられ、クロスオーバー位置に配置されたビームセパレーター214に進む。ビームセパレーター214は、基板101(試料)にマルチ1次電子ビーム20が照射されたことに起因して放出されるマルチ2次電子ビーム300をマルチ1次電子ビーム20から分離する。
【0025】
ここで、ビームセパレーター214はマルチビーム20の中心ビームが進む方向(光軸)に直交する面上において電界と磁界を直交する方向に発生させる。電界は電子の進行方向に関わりなく同じ方向に力を及ぼす。これに対して、磁界はフレミング左手の法則に従って力を及ぼす。このため電子の侵入方向によって電子に作用する力の向きを変化させることができる。ビームセパレーター214に上側から侵入してくるマルチ1次電子ビーム20には、電界による力と磁界による力が打ち消し合い、マルチ1次電子ビーム20は下方に直進する。これに対して、ビームセパレーター214に下側から侵入してくるマルチ2次電子ビーム300には、電界による力と磁界による力がどちらも同じ方向に働き、マルチ2次電子ビーム300は斜め上方に曲げられる。これにより、マルチ2次電子ビーム300は、マルチ1次電子ビーム20から分離される。図1では、マルチ2次電子ビーム300を1本のビームで代表して示している。
【0026】
斜め上方に曲げられたマルチ2次電子ビーム300は、偏向器218によって、さらに曲げられ、投影レンズ224に進む。そして、偏向器218によって偏向されたマルチ2次電子ビーム300は、投影レンズ224によって、屈折させられながらマルチ検出器222に投影される。マルチ検出器222は、マルチ1次電子ビーム20から分離されたマルチ2次電子ビームを個別に検出する。具体的には、マルチ検出器222は、投影されたマルチ2次電子ビーム300を検出する。また、XYステージ105を連続移動させながらスキャンを行うため、上述したようにトラッキング偏向が行われる。偏向器218は、かかるトラッキング偏向及びスキャン動作に伴うマルチ1次電子ビーム20の偏向位置の移動によるマルチ検出器222の受光面でのマルチ2次電子ビーム300の受光位置のずれをキャンセルして、マルチ2次電子ビーム300をマルチ検出器222の受光面における所望の位置に照射させるように偏向する。そして、マルチ2次電子ビーム300は、マルチ検出器222にて検出される。マルチ検出器222にて検出された強度信号によって、基板101上の画像が形成される。
【0027】
図3は、実施の形態1における収差補正器204の構成を説明するための上面図である。図4は、実施の形態1における収差補正器204の構成を説明するための断面図である。図4において、収差補正器204は、電磁レンズ205の磁場中に配置される。収差補正器204は、複数段の電極基板11,12,13を有する。隣接する電極基板11,12,13同士間は、所定の隙間を空けて配置される。各段の電極基板11,12,13は、導電性材料、例えば、金属で形成される。或いは、絶縁性材料の周囲に導電性の薄膜をコーティングして形成してもよい。図3及び図4に示すように、各段の電極基板11,12,13には、マルチ1次電子ビーム20の通過位置に合わせて、それぞれ複数の通過孔15が形成される。複数の通過孔15は、マルチ1次電子ビーム20の通過位置に合わせて形成され、マルチ1次電子ビーム20の各ビームを個別に通過させる。収差補正回路121から上段、中段、及び下段の3つの電極基板11,12,13にそれぞれ独立に電位を印加することで、ビーム毎に個別に集束作用を与えるマルチ静電レンズを構成する。
【0028】
ここで、実施の形態1では、各ビームの像面共役位置(焦点位置)を個別にずらす補正を行う。このため、各ビームに及ぼす集束作用を補正する。よって、複数段の電極基板11,12,13は、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの像面位置と共役な位置(像面共役位置)とは異なる位置に配置される。図4の例では、成形アパーチャアレイ基板203により形成されたマルチ1次電子ビーム20の各ビームが、像面共役位置で各ビームがそれぞれ集束した後、各ビームが広がりながら複数段の電極基板11,12,13の対応する通過孔15内に進み、途中から収束側に転じ、複数段の電極基板11,12,13を通過後に集束点(像面共役位置)で集束する。かかる場合に、実施の形態1では、収差補正器204によって、ビーム毎に、複数段の電極基板11,12,13を通過後の各ビームの像面共役位置をずらす。図4の例では、収差補正器204を通過後の各ビームの像面共役位置を高さ位置の異なる3種類の像面共役位置Z1,Z2,Z3のいずれかにずらすように補正する。実施の形態1では、通過孔15の径寸法を変えることで、複数種の集束作用を提供する。
【0029】
そこで、実施の形態1における各段の電極基板11,12,13に各々形成される複数の通過孔15(開口部)は、複数の径寸法で形成される。複数段の電極基板11,12,13に形成される、同じビームが通過する各通過孔15は、同じ径サイズで形成されればよい。図3の例では、5×5本のマルチ1次電子ビーム20に対して、5種類の径寸法の異なる円形通過孔が示されている。図4の例では、中心ビームが通過する通過孔15が径寸法d1で形成され、外側に1つ離れたビームが通過する通過孔15が径寸法d2で形成され、外側にさらに1つ離れたビームが通過する通過孔15が径寸法d3で形成される場合を示している。
【0030】
図4において、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームの焦点位置を基板101面上に合わせる場合(中心ビーム基準にする場合)、像面湾曲収差により、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームから外側に離れるビームほど、焦点位置が基板101面から上方に離れてしまう。マルチ1次電子ビーム20の外周ビームの焦点位置を基板101面上に合わせる場合(外周ビーム基準にする場合)、像面湾曲収差により、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームの焦点位置が基板101面から下方に離れてしまう。よって、中心ビームから外側に離れるビームほど、収差補正器204通過後の像面共役位置が収差補正器204から離れる(遠くなる)ように、軌道を修正することが必要となる。そこで、実施の形態1では、異なる径サイズの通過孔15を使って、複数の静電レンズ作用を選択的に適用させる。
【0031】
図5は、実施の形態1における収差補正器通過後の像面共役位置と通過孔の径寸法との関係の一例を示す図である。図5において、縦軸に収差補正器204通過後の収差補正器204から像面共役位置までの距離(a.u.)を示す。横軸に各段の電極基板11,12,13に各々形成される円状の通過孔15の径寸法(a.u.)を示す。なお、図5では、例えば、上段の電極基板11の電位V1と、下段の電極基板13の電位V3とを、グランド電位GNDとして、中段の電極基板12の電位V2として、例えば、-100V程度の負の電位(負の制御電位)を用いる。図5に示すように、通過孔15の径寸法が大きいほど、収差補正器204通過後の収差補正器204から像面共役位置までの距離が収差補正器204から離れる(遠くなる)ことがわかる。
【0032】
そこで、実施の形態1では、複数段の電極基板11,12,13により、マルチ1次電子ビーム20の各ビームの像面共役位置を通過孔15の径寸法に応じて個別に調整する。中心側のビームほど、通過孔15の径寸法を小さくすることで、収差補正器204通過後のビームの集束作用を大きくする。言い換えれば、中心側のビームほど、収差補正器204通過後の像面共役位置を近くにする。具体的には、中心ビームが通過する通過孔15を、複数の径寸法のうち最小の径寸法で形成し、外周側に位置するビームが通過する通過孔15ほど、径寸法を大きく形成する。図4の例では、中心ビームが通過する通過孔15が最小の径寸法d1で形成され、外側に1つ離れたビームが通過する通過孔15が中間サイズの径寸法d2で形成され、外側にさらに1つ離れたビームが通過する通過孔15が大きい径寸法d3で形成される場合を示している。そして、上段の電極基板11の電位V1(例えば、GND電位)と、下段の電極基板13の電位V3(例えば、GND電位)とに対して、中段の電極基板12に例えば負の電位V2(例えば、-100V)を印加することで、中心ビームに最も大きい集束作用を与え、外周側に位置するビームほど集束作用を小さくする。これにより、収差補正器204通過後の中心ビームの像面共役位置を収差補正器204に近い像面共役位置Z1に制御できる。また、収差補正器204通過後の外周ビームの像面共役位置を収差補正器204から最も離れた像面共役位置Z3に制御できる。そして、収差補正器204通過後の中心ビームと外周ビームとの中間に位置する中間ビームの像面共役位置を収差補正器204から中間の距離にあたる像面共役位置Z2に制御できる。
【0033】
なお、電位V1,V3は、同じ電位であっても良いし、異なる電位であってもよい。電位V1に対して、電位V2が例えば負の電位になり、V1,V2間に所望の電位差が得られればよい。同様に、電位V3に対して、電位V2が例えば負の電位になり、V3,V2間に所望の電位差が得られればよい。
【0034】
実施の形態1では、複数段の電極基板11,12,13の各電極基板において、複数の通過孔15の各通過孔15の径寸法は、マルチ1次電子ビーム20全体の軌道中心軸に対して回転対称になる。図3の例では、5×5本のマルチ1次電子ビーム20の中心ビームの位置をマルチ1次電子ビーム20全体の軌道中心軸として、かかる軌道中心軸から同心円(点線)上に中心が位置する通過孔15同士は、円形状の同じ径寸法に形成される。そして、複数段の電極基板11,12,13の各電極基板において、複数の通過孔15の各通過孔15の径寸法をマルチ1次電子ビーム20全体の軌道中心軸から離れるに従って大きくする。かかる構成により、中心ビームから外側に離れるビームほど、収差補正器204通過後の像面共役位置が収差補正器204から離れる(遠くなる)ように、軌道を修正できる。これにより、マルチ1次電子ビーム20の外周側のビームの焦点位置を基板101面上に合わせるように設定すれば、中心ビームの焦点位置を上方にずらし、基板101面上に合わせることができる。
【0035】
なお、予め、各ビームの焦点位置のずれを測定しておき、かかるずれを補正する通過孔15の径寸法を求めておけばよい。
【0036】
ここで、実施の形態1の比較例として、電磁レンズ205の磁場外で収差補正器204により、例えば、-10kVの加速電圧で放出された高速で移動する電子ビーム(e)の像面共役位置を変更しようとする場合、加速電圧と同程度の例えば、-10kV程度の電位を中段の電極基板12に印加する必要がある。上段と下段の電極基板11,13には、GND電位を印加する。これに対して、実施の形態1では、収差補正器204を電磁レンズ205の磁場中に配置する。これにより、例えば、-10kVの加速電圧で放出された高速で移動する電子ビーム(e)が電磁レンズ205の磁場に進入すると、かかる磁場によって電子の移動速度が遅くなる。よって、電磁レンズ205により合焦される中間像の焦点位置となる像面共役位置を変更する場合、電子の移動速度が遅くなっている状態、言い換えれば電子のエネルギーが小さくなっている状態で、収差補正器204により電子ビームの軌道を修正するので、上段と下段の電極基板11,13にGND電位を印加する場合、中段の電極基板12に印加する電位は、例えば-10kVの加速電圧に対して、例えば1/100の-100V程度に低減することができる。
【0037】
図6は、実施の形態1の収差補正器の効果を説明するための図である。収差補正器204によって、像面湾曲していたマルチ1次電子ビーム20(破線)に対して、個別に収差補正器204通過後の像面共役位置を補正することで、図6に示すように、各ビームの焦点位置を同一面上、例えば基板101面上に合わせることができる(実線)。
【0038】
図7は、実施の形態1における検査方法の要部工程を示すフローチャート図である。図7において、実施の形態1における検査方法は、被検査画像取得工程(S202)と、参照画像作成工程(S204)と、位置合わせ工程(S206)と、比較工程(S208)と、いう一連の工程を実施する。
【0039】
被検査画像取得工程(S202)として、画像取得機構150は、収差補正器204を通過したマルチ1次電子ビーム20を使って、基板101(試料)に形成されたパターンの2次電子画像を取得する。具体的には、以下のように動作する。上述したように、成形アパーチャアレイ基板203によって形成されたマルチ1次電子ビーム20は、電磁レンズ205に入射する。
【0040】
電磁レンズ205の磁場を通過中、収差補正器204によってマルチ1次電子ビーム20は個別にビーム軌道が補正される。この後、一括ブランキング偏向器212、制限アパーチャ基板206、電磁レンズ220、及びビームセパレーター214を通過して、対物レンズ207によって、複数段の電極基板11,12,13を通過したマルチ1次電子ビーム20を基板101面にフォーカスさせる。複数段の電極基板11,12,13を通過したマルチ1次電子ビーム20が照射される基板101は、XYステージ105上に載置される。そして、基板101から放出されたマルチ2次電子ビーム300は、対物レンズ207、ビームセパレーター214、偏向器218、及び投影レンズ224を通過して、マルチ検出器222により各2次電子ビームが個別に検出される。
【0041】
図8は、実施の形態1における半導体基板に形成される複数のチップ領域の一例を示す図である。図8において、基板101が半導体基板(ウェハ)である場合、半導体基板(ウェハ)の検査領域330には、複数のチップ(ウェハダイ)332が2次元のアレイ状に形成されている。各チップ332には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のマスクパターンが図示しない露光装置(ステッパ)によって例えば1/4に縮小されて転写されている。各チップ332内は、例えば、2次元状の横(x方向)m列×縦(y方向)n段(m,nは2以上の整数)個の複数のマスクダイ33に分割される。実施の形態1では、かかるマスクダイ33が単位検査領域となる。
【0042】
図9は、実施の形態1におけるマルチビームのスキャン動作を説明するための図である。図9の例では、5×5列のマルチ1次電子ビーム20の場合を示している。1回のマルチ1次電子ビーム20の照射で照射可能な照射領域34は、(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じたx方向サイズ)×(基板101面上におけるマルチ1次電子ビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じたy方向サイズ)で定義される。図9の例では、照射領域34がマスクダイ33と同じサイズの場合を示している。但し、これに限るものではない。照射領域34がマスクダイ33よりも小さくても良い。或いは大きくても構わない。そして、マルチ1次電子ビーム20の各ビームは、自身のビームが位置するx方向のビーム間ピッチとy方向のビーム間ピッチとで囲まれるサブ照射領域29内を走査(スキャン動作)する。マルチ1次電子ビーム20を構成する各ビームは、互いに異なるいずれかのサブ照射領域29を担当することになる。そして、各ショット時に、各ビームは、担当サブ照射領域29内の同じ位置を照射することになる。サブ照射領域29内のビームの移動は、副偏向器209によるマルチ1次電子ビーム20全体での一括偏向によって行われる。かかる動作を繰り返し、1つのビームで1つのサブ照射領域29内のすべてを順に照射していく。
【0043】
以上のように、マルチ1次電子ビーム20全体では、マスクダイ33を照射領域34として走査(スキャン)することになるが、各ビームは、それぞれ対応する1つのサブ照射領域29を走査することになる。そして、1つのマスクダイ33の走査(スキャン)が終了すると、隣接する次のマスクダイ33が照射領域34になるように移動して、かかる隣接する次のマスクダイ33の走査(スキャン)を行う。かかる動作を繰り返し、各チップ332の走査を進めていく。マルチ1次電子ビーム20のショットにより、その都度、照射された位置から2次電子が放出され、マルチ検出器222にて検出される。
【0044】
以上のようにマルチ1次電子ビーム20を用いて走査することで、シングルビームで走査する場合よりも高速にスキャン動作(測定)ができる。なお、ステップアンドリピート動作で各マスクダイ33のスキャンを行っても良いし、XYステージ105を連続移動させながら各マスクダイ33のスキャンを行ってもよい。照射領域34がマスクダイ33よりも小さい場合には、当該マスクダイ33中で照射領域34を移動させながらスキャン動作を行えばよい。
【0045】
基板101が露光用マスク基板である場合には、露光用マスク基板に形成された1チップ分のチップ領域を例えば上述したマスクダイ33のサイズで短冊状に複数のストライプ領域に分割する。そして、ストライプ領域毎に、上述した動作と同様の走査で各マスクダイ33を走査すればよい。露光用マスク基板におけるマスクダイ33のサイズは、転写前のサイズなので半導体基板のマスクダイ33の4倍のサイズとなる。このため、照射領域34が露光用マスク基板におけるマスクダイ33よりも小さい場合には、1チップ分のチップ領域をスキャンするのに掛かるスキャン動作距離が、半導体基板のマスクダイ33の1チップ分のチップ領域をスキャンするのに掛かるスキャン動作に比べ、例えば4倍に増加することになる。しかし、露光用マスク基板には1チップ分のパターンが形成されるので、4チップよりも多くのチップが形成される半導体基板に比べてスキャン動作距離は短くて済む。
【0046】
マルチ検出器222によって検出された各位置からの2次電子の検出データ(測定画像:2次電子画像:被検査画像)は、測定順に検出回路106に出力される。検出回路106内では、図示しないA/D変換器によって、アナログの検出データがデジタルデータに変換され、チップパターンメモリ123に格納される。このようにして、画像取得機構150は、基板101上に形成されたパターンの測定画像を取得する。そして、例えば、1つのチップ332分の検出データが蓄積された段階で、チップパターンデータとして、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、比較回路108に転送される。
【0047】
参照画像作成工程(S204)として、参照画像作成回路112(参照画像作成部)は、被検査画像に対応する参照画像を作成する。参照画像作成回路112は、基板101にパターンを形成する基になった設計データ、或いは基板101に形成されたパターンの露光イメージデータに定義された設計パターンデータに基づいて、フレーム領域毎に、参照画像を作成する。フレーム領域として、例えばマスクダイ33を用いると好適である。具体的には、以下のように動作する。まず、記憶装置109から制御計算機110を通して設計パターンデータを読み出し、読み出された設計パターンデータに定義された各図形パターンを2値ないしは多値のイメージデータに変換する。
【0048】
ここで、設計パターンデータに定義される図形は、例えば長方形や三角形を基本図形としたもので、例えば、図形の基準位置における座標(x、y)、辺の長さ、長方形や三角形等の図形種を区別する識別子となる図形コードといった情報で各パターン図形の形、大きさ、位置等を定義した図形データが格納されている。
【0049】
かかる図形データとなる設計パターンデータが参照画像作成回路112に入力されると図形ごとのデータにまで展開し、この図形データの図形形状を示す図形コード、図形寸法などを解釈する。そして、所定の量子化寸法のグリッドを単位とするマス目内に配置されるパターンとして2値ないしは多値の設計パターン画像データに展開し、出力する。言い換えれば、設計データを読み込み、検査領域を所定の寸法を単位とするマス目として仮想分割してできたマス目毎に設計パターンにおける図形が占める占有率を演算し、nビットの占有率データを出力する。例えば、1つのマス目を1画素として設定すると好適である。そして、1画素に1/2(=1/256)の分解能を持たせるとすると、画素内に配置されている図形の領域分だけ1/256の小領域を割り付けて画素内の占有率を演算する。そして、8ビットの占有率データとして参照回路112に出力する。かかるマス目(検査画素)は、測定データの画素に合わせればよい。
【0050】
次に、参照画像作成回路112は、図形のイメージデータである設計パターンの設計画像データに適切なフィルタ処理を施す。測定画像としての光学画像データは、光学系によってフィルタが作用した状態、言い換えれば連続変化するアナログ状態にあるため、画像強度(濃淡値)がデジタル値の設計側のイメージデータである設計画像データにもフィルタ処理を施すことにより、測定データに合わせることができる。作成された参照画像の画像データは比較回路108に出力される。
【0051】
図10は、実施の形態1における比較回路内の構成の一例を示す構成図である。図10において、比較回路108内には、磁気ディスク装置等の記憶装置50,52,56、被検査画像生成部54、位置合わせ部57、及び比較部58が配置される。被検査画像生成部54、位置合わせ部57、及び比較部58といった各「~部」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。被検査画像生成部54、位置合わせ部57、及び比較部58内に必要な入力データ或いは演算された結果はその都度図示しないメモリ、或いはメモリ118に記憶される。
【0052】
比較回路108内では、転送されたストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)が、位置回路107からの各位置を示す情報と共に、記憶装置50に一時的に格納される。また、転送された参照画像データが、記憶装置52に一時的に格納される。
【0053】
次に、被検査画像生成部54は、ストライプパターンデータ(或いはチップパターンデータ)を用いて、所定のサイズのフレーム領域(単位検査領域)毎、フレーム画像(被検査画像)を生成する。フレーム画像として、例えば、ここでは、マスクダイ33の画像を生成する。但し、フレーム領域のサイズはこれに限るものではない。生成されたフレーム画像(例えばマスクダイ画像)は、記憶装置56に格納される。
【0054】
位置合わせ工程(S206)として、位置合わせ部57は、被検査画像となるマスクダイ画像と、当該マスクダイ画像に対応する参照画像とを読み出し、画素36より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0055】
比較工程(S208)として、比較部58は、マスクダイ画像(被検査画像)と参照画像とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素36毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素36毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0056】
なお、上述したダイ-データベース検査に限らず、ダイ-ダイ検査を行っても構わない。ダイ-ダイ検査を行う場合には、同じパターンが形成されたマスクダイ33の画像同士を比較すればよい。よって、ダイ(1)となるチップ332の一部の領域のマスクダイ33の画像と、ダイ(2)となる別のチップ332の対応する領域のマスクダイ33の画像と、を用いる。或いは、同じチップ332の一部の領域のマスクダイ33の画像をダイ(1)のマスクダイ33の画像とし、同じパターンが形成された同じチップ332の他の一部のマスクダイ33の画像をダイ(2)のマスクダイ33の画像として比較しても構わない。かかる場合には、同じパターンが形成されたマスクダイ33の画像同士の一方を参照画像として用いれば、上述したダイ-データベース検査と同様の手法で検査ができる。
【0057】
すなわち、位置合わせ工程(S206)として、位置合わせ部57は、ダイ(1)のマスクダイ33の画像と、ダイ(2)のマスクダイ33の画像と、とを読み出し、画素36より小さいサブ画素単位で、両画像を位置合わせする。例えば、最小2乗法で位置合わせを行えばよい。
【0058】
そして、比較工程(S208)として、比較部58は、ダイ(1)のマスクダイ画像と、ダイ(2)のマスクダイ画像とを比較する。比較部58は、所定の判定条件に従って画素36毎に両者を比較し、例えば形状欠陥といった欠陥の有無を判定する。例えば、画素36毎の階調値差が判定閾値Thよりも大きければ欠陥と判定する。そして、比較結果が出力される。比較結果は、記憶装置109、モニタ117、若しくはメモリ118に出力される、或いはプリンタ119より出力されればよい。
【0059】
図11は、実施の形態1における収差補正器を静電レンズと見做した場合の各電極の一例を示す図である。図12は、図11に対応する集束作用の一例を説明するための図である。図12において、縦軸に集束作用の強さ、横軸に印加電位を示す。図11の例では、磁場分布の広がり範囲Lに対して、静電レンズ(中段の電極基板)の厚みt1が非常に小さい場合を示している。かかる場合、磁場の影響は受けず、静電レンズの効果として、図12に示す放物線に沿った集束作用の効果が得られる。印加する電位が正負いずれの場合であっても、通過孔15の径寸法が小さい場合の方が、大きい場合よりも集束作用が大きいことがわかる。
【0060】
よって、上述したように、像面湾曲が下に凸な形状となる場合に、マルチ1次電子ビーム20の外周ビームの焦点位置を基板101面上に合わせるように設定し、複数の通過孔15の各通過孔15の径寸法をマルチ1次電子ビーム20全体の軌道中心軸から離れるに従って大きくすればよい。これにより、中心側のビームほど大きな集束作用が働くため収差補正器204通過後の像面共役位置が収差補正器204から近くなるように、軌道を修正でき、像面湾曲を補正できる。
【0061】
他方、像面湾曲が上に凸な形状となった場合に、中心側のビームほど収差補正器204通過後の像面共役位置が収差補正器204から離れる(遠くなる)ように、軌道を修正する必要がある。この場合には、マルチ1次電子ビーム20の中心ビームの焦点位置を基板101面上に合わせるように設定し、複数の通過孔15の各通過孔15の径寸法をマルチ1次電子ビーム20全体の軌道中心軸から離れるに従って小さくすればよい。これにより、外周側のビームほど大きな集束作用が働くため収差補正器204通過後の像面共役位置が収差補正器204から近くなるように、軌道を修正でき、像面湾曲を補正できる。
【0062】
図13は、実施の形態1における収差補正器を静電レンズと見做した場合の各電極の他の一例を示す図である。図14は、図13に対応するさらなら集束作用の一例を説明するための図である。図14において、縦軸に集束作用の強さ、横軸に印加電位を示す。磁場分布の広がり範囲Lに対して静電レンズの中段電極の厚みt2がある大きさ以上になると、図12に示した集束作用に加えて、さらに、図14に示すような磁場中でのエネルギー変化に応じた集束作用効果が生じる。よって、かかる場合には、印加する電位の符号の正負によって集束作用が大きく変化する。静電レンズと磁場レンズの組み合わせによって、図12の効果と図14の効果の大小関係が異なるので、各電極の通過孔15の開口径と電位の関係は一意に決まるものではない。
【0063】
よって、収差補正器204の中段電極の厚みが磁場の影響範囲Lに対して非常に小さい場合には、磁場レンズの有無に関わらず、印加電位を設定できる。他方、収差補正器204の中段電極の厚みを大きくする場合、磁場の影響範囲内に配置しなければ、図12の効果に沿って各電極の通過孔15の開口径と印加電位を設定すればよい。しかし、磁場の影響範囲内に配置する場合には、図14の効果がさらに生じるので、各電極の通過孔15の開口径と印加電位の関係を予め実験等により求め、この関係に応じて、両者を適宜設定すればよい。
【0064】
以上のように、実施の形態1によれば、通過孔15の径寸法を選択することで、マルチ1次電子ビーム20の像面湾曲を補正できる。よって、像面湾曲収差の影響によるビームのスポット径の差異を抑制できる。よって、基板101の表面観察等のレビューや検査において視野(FOV)を拡大できる。さらに、1つの電極基板に1種の電位が印加されるだけなので電源数を抑制できる。よって大規模な装置構成になることを回避できる。
【0065】
以上の説明において、一連の「~回路」は、処理回路を含み、この処理回路には、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置等が含まれる。また、各「~回路」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いてもよい。或いは、異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。プロセッサ等を実行させるプログラムは、磁気ディスク装置、磁気テープ装置、FD、或いはROM(リードオンリメモリ)等の記録媒体に記録されればよい。例えば、位置回路107、比較回路108、参照画像作成回路112、収差補正回路121、及び偏向制御回路128等は、上述した少なくとも1つの処理回路で構成されても良い。
【0066】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0067】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。
【0068】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全てのマルチ電子ビーム照射装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0069】
11,12,13 電極基板
15 通過孔
20 マルチ1次電子ビーム
22 穴
29 サブ照射領域
33 マスクダイ
34 照射領域
50,52,56 記憶装置
54 被検査画像生成部
57 位置合わせ部
58 比較部
100 検査装置
101 基板
102 電子ビームカラム
103 検査室
105 XYステージ
106 検出回路
107 位置回路
108 比較回路
109 記憶装置
110 制御計算機
112 参照画像作成回路
114 ステージ制御回路
117 モニタ
118 メモリ
119 プリンタ
120 バス
121 収差補正回路
122 レーザ測長システム
123 チップパターンメモリ
124 レンズ制御回路
126 ブランキング制御回路
128 偏向制御回路
142 ステージ駆動機構
144,146,148 DACアンプ
150 画像取得機構
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 収差補正器
205 電磁レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 対物レンズ
208 主偏向器
209 副偏向器
212 一括ブランキング偏向器
214 ビームセパレーター
216 ミラー
218 偏向器
220 電磁レンズ
222 マルチ検出器
224 投影レンズ
300 マルチ2次電子ビーム300
330 検査領域
332 チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14