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特許7429137シリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法及びシリカ-チタニア複合酸化物粒子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】シリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法及びシリカ-チタニア複合酸化物粒子
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/20 20060101AFI20240131BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240131BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C01B33/20
C08K3/22
C08K3/36
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020049535
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147281
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有行 正男
(72)【発明者】
【氏名】石津 賢一
(72)【発明者】
【氏名】青木 真里
(72)【発明者】
【氏名】田中 修
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-052128(JP,A)
【文献】特開平02-243508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B
C08K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドとを混合して得られる混合アルコキシド原料を、アルコールと水とを含む塩基性の溶媒中において加水分解するゾルゲル法によってシリカ-チタニア複合酸化物粒子を製造する方法であって、
前記溶媒中に第1の混合アルコキシド原料と水とを添加して、体積基準の累積50%径であるV-D50が0.2μm以上0.5μm以下である種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子を作製する種粒子工程と、
前記種粒子工程によって得られた前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含有する種粒子含有溶媒である種粒子分散液を複数に分ける工程と、
複数に分けられた前記種粒子分散液の1つに、第2の混合アルコキシド原料と水とを添加して、前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子をV-D50が0.6μm以上のシリカ-チタニア複合酸化物粒子に成長させる成長工程と
を含み、
前記成長工程において、前記混合アルコキシド原料と水とを添加する前に前記種粒子分散液をアルコールにより希釈し、
前記成長工程では、水の濃度を13質量%以上18質量%以下に保ってシリカ-チタニア複合酸化物粒子の成長を行う、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子が4質量%以上12質量%以下の濃度となるように、前記種粒子分散液をアルコールにより希釈する、請求項に記載のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法。
【請求項3】
Aを、前記種粒子工程において得られた前記種粒子分散液のうち、前記成長工程において使用される割合、
Wsを、前記種粒子工程において添加する前記第1の混合アルコキシド原料を調製するために用いたケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドの合計の質量(g)、
Dpを、前記成長工程において目標とする前記シリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)、
Dsを、前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)、
Msipを、前記成長工程において添加する前記第2の混合アルコキシド原料を形成するためのケイ素のアルコキシドの分子量、
Tを、シリカ-チタニア複合酸化物粒子におけるチタニアの含有率(mol%)、
Mtipを、前記成長工程において添加する前記第2の混合アルコキシド原料を形成するためのチタンのアルコキシドの分子量、
Msisを、前記種粒子工程において添加する前記第1の混合アルコキシド原料を形成するためのケイ素のアルコキシドの分子量、
Mtisを、前記種粒子工程において添加する前記第1の混合アルコキシド原料を形成するためのチタンのアルコキシドの分子量、
としたときに
前記成長工程において前記第2の混合アルコキシド原料を調製するために用いるケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドとの合計量Wp(g)を
Wp=A×Ws×{(Dp/Ds)-1}×{Msip×(100-T)+Mtip×T}/{Msis×(100-T)+Mtis×T}、
という計算式により算出した値とする、請求項1または2に記載のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記成長工程では、液温を20℃以上40℃以下に保ってシリカ-チタニア複合酸化物粒子の成長を行う、請求項1からのいずれか一つに記載のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法。
【請求項5】
請求項1に記載のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法によって製造され、
下記の条件において測定される円相当径が個数基準の累積50%径であるN-D50の1.1倍以上1.6倍以下である粒子が、個数基準において全体の10%以上である、シリカ-チタニア複合酸化物粒子。
測定条件:シリカ-チタニア複合酸化物粒子をアルコールによって0.1質量%の濃度で希釈して、出力40W、照射時間10分の超音波により分散させた分散液を、鏡面の板の上に滴下して乾燥させ、当該板の分散液を乾燥させた部分を走査型電子顕微鏡により撮影し、撮影されたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を300~3000個画像解析を行い、その画像より各粒子の円相当径を求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法及びシリカ-チタニア複合酸化物粒子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリカとチタニアからなる複合酸化物粒子(以下、シリカ-チタニア複合酸化物粒子とする)は、熱膨張係数がゼロ又は負の値を示すことや、チタニアの含有率を変えるとことにより屈折率の微調整が可能であることなどの優れた性質を持っている。そのため、透明な樹脂に対して屈折率が同じになるように屈折率を調整したシリカ-チタニア複合酸化物粒子を充填することで、透明な樹脂複合材料を得ることができ、光学材料、例えば発光する半導体の封止材などとして有用である。また、かかる充填材として使用する場合、樹脂に充填した際の流動性等特性向上のためや、半導体素子を傷つけないため、粒子は球状であることが望ましい。
【0003】
上記のような球状のシリカ-チタニア複合酸化物粒子はゾルゲル法によって製造することができる(例えば、特許文献1,2)。ゾルゲル法は、具体的には、シリコンアルコキシド化合物とチタニウムアルコキシド化合物との混合物を加水分解して得られたシリコンとチタニウムを主な構成成分とする球状共加水分解物粒子を600℃~1200℃で焼成して製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-2520号公報
【文献】特開2012-162438号公報
【文献】特開2013-136499号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、径(例えば体積基準の累積50%径)が0.6μm以上のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を製造しようとすると巨大な反応槽が必要になり、場合によっては必要量以上のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を製造してしまうという問題があった。また、1つの反応槽を用いて、所望の径のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を所望の量作成し、径や量を変更するにはどのように行ったらよいのか明確ではなかった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、0.6μm以上の球状のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を適切な量だけ製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法は、ケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドとを混合して得られる混合アルコキシド原料を、アルコールと水とを含む塩基性の溶媒中において加水分解するゾルゲル法によってシリカ-チタニア複合酸化物粒子を製造する方法であって、前記溶媒中に第1の混合アルコキシド原料と水とを添加して、体積基準の累積50%径であるV-D50が0.2μm以上0.5μm以下である種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子を作製する種粒子工程と、前記種粒子工程によって得られた前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含有する種粒子含有溶媒である種粒子分散液を複数に分ける工程と、複数に分けられた前記種粒子分散液の1つに、第2の混合アルコキシド原料と水とを添加して、前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子をV-D50が0.6μm以上のシリカ-チタニア複合酸化物粒子に成長させる成長工程とを含む構成を有している。
【0008】
前記成長工程において、前記混合アルコキシド原料と水とを添加する前に前記種粒子分散液をアルコールにより希釈してもよい。この場合、前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子が4質量%以上12質量%以下の濃度となるように、前記種粒子分散液をアルコールにより希釈することが好ましい。
【0009】
Aを、前記種粒子工程において得られた前記種粒子分散液のうち、前記成長工程において使用される割合、Wsを、前記種粒子工程において添加する前記第1の混合アルコキシド原料を調製するために用いたケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドの合計の質量(g)、Dpを、前記成長工程において目標とする前記シリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)、Dsを、前記種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)、Msipを、前記成長工程において添加する前記第2の混合アルコキシド原料を形成するためのケイ素のアルコキシドの分子量、Tを、シリカ-チタニア複合酸化物粒子におけるチタニアの含有率(mol%)、Mtipを、前記成長工程において添加する前記第2の混合アルコキシド原料を形成するためのチタンのアルコキシドの分子量、Msisを、前記種粒子工程において添加する前記第1の混合アルコキシド原料を形成するためのケイ素のアルコキシドの分子量、Mtisを、前記種粒子工程において添加する前記第1の混合アルコキシド原料を形成するためのチタンのアルコキシドの分子量、としたときに
前記成長工程において前記第2の混合アルコキシド原料を調製するために用いるケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドの合計量Wp(g)を
Wp=A×Ws×{(Dp/Ds)-1}×{Msip×(100-T)+Mtip×T}/{Msis×(100-T)+Mtis×T}、
という計算式により、算出した値としてもよい。ここで、Aで表される前記種粒子工程において得られた前記種粒子分散液のうち、前記成長工程において使用される割合は単位のない無次元量であって、0から1の間の数である。
【0010】
前記第1の混合アルコキシド原料と前記第2の混合アルコキシド原料とは同じ混合アルコキシド原料であってもよい。
【0011】
前記成長工程では、水の濃度を8質量%以上12質量%以下に保ってシリカ-チタニア複合酸化物粒子の成長を行ってもよい。
【0012】
前記成長工程では、水の濃度を13質量%以上18質量%以下に保ってシリカ-チタニア複合酸化物粒子の成長を行ってもよい。
【0013】
前記成長工程では、液温を20℃以上40℃以下に保ってシリカ-チタニア複合酸化物粒子の成長を行ってもよい。
【0014】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、下記の条件において測定される円相当径が個数基準の累積50%径であるN-D50の1.1倍以上1.6倍以下である粒子が、個数基準において全体の10%以上である構成を有している。測定条件:シリカ-チタニア複合酸化物粒子をアルコールによって0.1質量%の濃度で希釈して、出力40W、照射時間10分の超音波により分散させた分散液を、鏡面の板の上に滴下して乾燥させ、当該板の分散液を乾燥させた部分を走査型電子顕微鏡により撮影し、撮影されたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を300~3000個画像解析を行い、その画像より各粒子の円相当径を求める。
【発明の効果】
【0015】
本発明のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法は、体積基準の累積50%径であるV-D50が0.2μm以上0.5μm以下である種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子を作製して、その一部を取り出してV-D50が0.6μm以上に成長させるので、シリカ-チタニア複合酸化物粒子を所望する量だけ容易に作製することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0017】
実施形態に係るシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、粉末を構成する粒子が、シリカ(SiO)とチタニア(TiO)からなり、これらが原子レベルで複合化しているものである。原子レベルで複合化しているとは、前記粒子において一つの酸素原子がSi原子とTi原子との両方と結合している結合状態(Si-O-Ti)が含まれていることを意味する。なお、部分的にSi-O-Siの結合及びTi-O-Tiの結合が含まれていても本実施形態においては以下に説明する製造方法によって、1つの粒子内においてシリカとチタニアとの存在比率がいずれの箇所においてもほぼ均一となり、Si-O-Tiが含まれているので、原子レベルで複合化しているということができる。
【0018】
シリカとチタニアとの割合は特に限定されるものではないが、個々が独立している球状粒子を製造しやすく、多くの樹脂と屈折率の範囲が近い点でチタニアの含有率(全酸化物に対するチタニアのモル百分率)は25mol%以下であることが好ましく、20mol%以下がより好ましく、17mol%以下が特に好ましい。チタニアの含有率が大きくなると屈折率が高くなる。また、本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を構成する粒子は非晶質であることが好ましいが、粒子の構成成分の割合のうち、チタニアの含有率が高くなる、すなわちシリカの含有率が低くなると、シリカ成分による非晶質構造を取りにくくなるため粒子中にチタニアの微結晶を生じやすくなる。
【0019】
一方、熱膨張係数を所望の値にしたり、屈折率をシリカよりも高くすることを考慮すると、チタニア含有率は1mol%以上であることが好ましく、3mol%以上が特に好ましい。
【0020】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、レーザー散乱法で測定される体積基準累積50%径(以下、「V-D50径」という)が0.6μm以上3.0μm以下の範囲にあることが好ましい。粒子が大きくなりすぎると、僅かな屈折率の差により透明性が著しく変化するため透明な複合化材料を得にくい。このため、より好ましい粒子の大きさは、V-D50径が0.6μm以上2μm以下の範囲であり、さらに好適な範囲としては0.6μm以上1.5μm以下である。
【0021】
なおこのようなV-D50径のものであれば粒度分布は問題がないが、広い粒度分布を有する場合には粗粒を生成しやすいため、単分散性が高いことが好ましい。
【0022】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、測定波長589nmにおける平均屈折率(以下、屈折率という場合は測定波長589nmにおける平均屈折率のことをいう)が1.47以上であることが好ましい。単一元素からなるシリカの屈折率が1.46であるのに対し、チタニアが複合化されているため、シリカ単体より高い屈折率を示す。そのため、多くの場合に屈折率が1.5を超えるような各種の樹脂と複合化した際に屈折率を一致させることが容易となり、それ故、透明性などの光学特性として優れたものを得ることができる。
【0023】
なおここで、上記の平均屈折率は以下のようにして液浸法で測定される値である。即ち、波長589nmにおける屈折率の異なる液体を複数用意し、これらの液にシリカ-チタニア複合酸化物粒子を分散させる。分散液の波長589nmにおける透明性(透過率又は吸光度)を測定し、最も透明性の高い分散液を与えた液体の屈折率をシリカ-チタニア複合酸化物粒子の波長589nmにおける屈折率とする。
【0024】
なお、シリカ-チタニア複合酸化物粒子に吸着した水分が屈折率に影響を与える場合があるため、上記屈折率の測定は、粉末を100℃で12時間以上乾燥した後に行う。
【0025】
ここで、液体の屈折率を調整する方法としては、屈折率の異なる複数の物質を所望の屈折率になるように混ぜ合わせる方法、測定時の温度を変化させる方法などが採用できる。なお測定に用いる分散媒に用いる液体としては波長589nmにおいて、実質的に透明な液体を採用する。例えば、液体としては、水、トルエン、1-ブロモナフタレン、1-クロロナフタレン、ジョードメタン、イオウ入りジョードメタン、2-メトキシエタノール、ベンジルアルコール、サリチル酸メチル、安息香酸メチル、シリコーン油等が使用でき、これらを適宜混合して、さらには屈折率調整の為に各種の塩類や有機物固体を溶解させることも可能である。また、屈折率の標準液として各種屈折率の液体が市販されており、それを用いてもよい。
【0026】
また上記の方法とは別に、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率を、JIS K 7142 プラスチック屈折率の求め方におけるB法(粉体又は粒状の透明材料の屈折率を、顕微鏡による液浸法によって測定する方法)に準じて求めても良い。
【0027】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子に係る上記屈折率は、シリカとチタニアとの割合を変えることにより制御できる。即ち、上述の通り純粋なシリカの屈折率は1.46であり、チタニアの割合が増えるほど屈折率は高くなっていく。
【0028】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、粒子径が5μm以上の粗粒の質量割合が、全体の質量に対して500ppm以下であることが好ましい。ここで、粗粒とは、幾つかの独立した粒子が複数集まったもの又は独立した粒子でなるものである。このような粗粒が多いと、例えば樹脂と複合化して複合化材料を形成した後に欠陥を生じやすい。
【0029】
なおここで、上記の粗粒は、水またはメタノール液中にシリカ-チタニア複合酸化物粒子を2.5質量%になるよう加えたのち超音波破砕機で分散させた分散液を、コールターカウンターで、粒子の計測数を50000個計測する測定を5回繰返し、得られる5μm以上の粒子の質量割合である。
【0030】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子に含まれる個々の粒子形状は、特に制限されないが、有機/無機複合化材料の流動性や成形性を加味すると球状であることが好ましい。
【0031】
また本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、ケイ素及びチタン以外の金属含有量が少ないことが好ましく、特に、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属含有量は10ppm以下であることが好ましく、1ppm以下がより好ましい。
【0032】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の使用態様に応じて、適宜、粒子の表面を表面処理等により調製することが出来る。樹脂と複合化する場合、使用樹脂とのなじみを考慮し、最小吸光度に影響がない範囲であれば、公知の方法で表面処理を行い、表面を改質することが出来る。例えば、親水性部位を有する樹脂と複合化する場合には、粒子の表面に親水性のシラノール基が多数存在していることが好ましい。この場合には、シリカ-チタニア複合酸化物粒子をそのまま使用することも出来るし、また、表面に無機物よりなるコートを施して、より親和性を向上させることも出来る。一方で、表面の親水性を低下させたい場合には、メチル基を有するシランカップリング剤などを適宜使用して表面の改質を行うことも出来る。
【0033】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は粗粒を含まず、有機高分子に充填した際の透明性も十分に良好であるため、そのような特性を要求される電子材料用樹脂組成物への充填用として好適に用いることができる。さらに、樹脂に添加すると、その樹脂組成物の溶融時の流動性が優れ、成形品の透明性を制御でき、表面の凹凸を精密に制御できるため、フィルム用途を初めとした、各種成形品用途にも好適に用いることができる。
【0034】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を配合する樹脂の種類は、特に限定されない。樹脂の種類は所望の用途により適宜選択すればよいが、屈折率の値を加味すると、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂やオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0035】
たとえば、半導体封止材用途であれば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等が好ましい。フィルム用途であれば、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなど)、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0036】
さらに構造体として使用する場合には、ポリカーボネートやアクリル樹脂などが好ましい。
【0037】
樹脂にシリカ-チタニア複合酸化物粒子を添加した組成物において、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の充填量は、その用途と目的に応じて適宜調整すればよい。具体的には、半導体封止材用途に用いる場合は樹脂成分100質量部に対して30~900質量部の範囲が好ましく、フィルム用途に用いる場合は樹脂成分100質量部に対して0.01~10質量部の範囲であることが好ましい。また、構造材に使用する場合には、樹脂成分100質量部に対して0.01~100質量部の範囲であることが好ましい。
【0038】
なお、本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を樹脂に添加して樹脂組成物として用いる場合には、必要に応じて別の充填剤など、他の成分を含んでいても無論かまわない。
【0039】
さらに本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、溶媒に分散させた状態で、上記したようなフィルムや塗料等の製造原料とすることもできる。
【0040】
<<シリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法>>
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、基本的には、以下に示すケイ素のアルコキシド及びチタンのアルコキシドを使用し、いわゆるゾル-ゲル法で製造することができる(以下、本製造方法という)。
【0041】
(1)ケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドを混合させて少なくとも一部を複合化させ、混合アルコキシド原料を作製する工程(以下、混合化工程ともいう)。
【0042】
(2)水を含む分散媒中に、窒素含有塩基触媒を存在させ、そこへ前記混合アルコキシド原料と水とを添加し、これを加水分解・縮合させる反応により、体積基準の累積50%径であるV-D50が0.2μm以上0.5μm以下である種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子を生成させて、種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子が分散媒中に分散した種粒子分散液を得る工程(以下、種粒子工程ともいう)。
【0043】
(3)種粒子分散液を複数に分ける工程(以下、分割工程ともいう)。
【0044】
(4)複数に分けられた前記種粒子分散液の1つに対して、混合アルコキシド原料と水とを添加して、種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子をV-D50が0.6μm以上の、最終製品となるシリカ-チタニア複合酸化物粒子に成長させる工程(以下、成長工程ともいう)。
【0045】
(5)前記分散液を固液分離する工程(以下、固液分離工程ともいう)。
【0046】
(6)シリカ-チタニア複合酸化物粒子からなる固体分を乾燥させる工程(以下、乾燥工程ともいう)。
【0047】
(7)乾燥物を焼成する工程(以下、焼成工程ともいう)。
【0048】
なお、必要に応じて、使用する原料液や各工程液を濾過し不純物を除去する工程や乾燥粉、焼成粉を解砕・分級する工程などを行うことが出来る。
【0049】
以下、上記各工程について説明するが、(1)(2)(4)(6)及び(7)の工程はゾル-ゲル法で複合酸化物の製造方法として広く知られている工程と同様に行えば良く、よって、以下に記載されていない部分は、そのような公知技術を適宜選択して実施すればよい。また必要に応じて、以下に記載の方法をアレンジして実施することも可能である。
【0050】
(1)混合化工程
本製造方法では、まずシリコンのアルコキシドとチタンのアルコキシドを混合した混合アルコキシド原料を調製する。混合アルコキシド原料には複合化されたアルコキシドが含まれる。
【0051】
混合アルコキシド原料を調製する方法としては、公知の方法が使用でき、例えば、シリコンのアルコキシドに水を添加し部分的に加水分解したアルコキシドを調製し、この液とチタンのアルコキシドとを混合する方法が好ましく使用できる。
【0052】
シリコンのアルコキシドとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシドなどのアルコキシドが使用できる。
【0053】
チタンのアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシドなどのアルコキシドが使用できる。このうちチタンテトライソプロポキシドは、工業的に入手が容易に可能である点、及び取扱いが容易である点から特に好ましい。
【0054】
チタンのアルコキシド、シリコンのアルコキシドともに、1種のみを使用してもよく、あるいはそれぞれ、又は一方のみ2種以上を併用してもよい。
【0055】
また、上記のアルコキシドは、アルコールなどの有機溶媒と混合して使用することが好ましい。この場合、使用するアルコキシドに応じて有機溶媒の種類を変えても良い。
【0056】
また、使用する有機溶媒の量は、粒子の大きさや所望の粒度分布に応じて調製することが出来る。
【0057】
また、部分加水分解に使用する水の量は、適切な量にすればよい。
【0058】
また、シリコンのアルコキシドの部分加水分解及び縮合によるアルコキシドの複合化を迅速に進めるために触媒を使用することが好ましい。アルコキシドの複合化とは、アルコキシドの加水分解により生じた2つの水酸基が脱水反応による縮合により結合することであり、ケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドとの結合が行われる。触媒としては、酸が好ましく、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸等が挙げられる。酸は、水溶液のpHが1~4の範囲となるように調整して使用することが好ましい。
【0059】
以下では、上記のような混合により得られたアルコキシドを混合アルコキシド原料とよぶ。
【0060】
上記の複合化において、チタンのアルコキシドと結合するケイ素のアルコキシドはモノマーであっても良いし、オリゴマーであっても良い。複合化されたアルコキシドは、一分子内に一つのTi原子と少なくとも3~4個のSi原子、少なくとも10~12のアルコキシ基を有したアルコキシドである。また、複合化されたアルコキシドは、一部であればアルコキシ基が加水分解されていてもかまわない。
【0061】
ところで、本実施形態においては、使用するケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドの割合は、所望する屈折率の値に応じて変化させうる。
【0062】
ケイ素のアルコキシドの一部は、チタンのアルコキシドとの複合化に供されるが、ケイ素のアルコキシドが全量、複合化に使用される必要はない。
【0063】
なお、以下に説明する種粒子工程と成長工程とでは、同じ混合アルコキシド原料を用いてもよいし、ケイ素とチタンのアルコキシドの割合を変更させたり、アルコキシ基を変えたりした、異なる混合アルコキシド原料を用いてもかまわない。
【0064】
(2)種粒子工程
本製造方法では、上記のようにして調製した複合化されたアルコキシドを含む混合アルコキシド原料(第1の混合アルコキシド原料)を原料とし、該混合アルコキシド原料からV-D50が0.2μm以上0.5μm以下である種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子をまず生成させる。体積基準の累積50%径であるV-D50は、レーザー回折散乱法により測定を行うことが好ましい。ここで、上記混合化工程では、通常は複合化されたアルコキシドを含み、さらにシリコンのアルコキシド及びその加水分解物、水、有機溶媒を含む混合物が得られるが、ここから複合化されたアルコキシドを単離する必要はなく、混合物のまま使用できる。
【0065】
本工程では、混合アルコキシド原料から、微細な核と呼ばれる粒子を生成させ、その表面に存在する水酸基と混合アルコキシド原料の加水分解により生じた水酸基とを縮合させて、溶液中のアルコキシド原料を粒子表面に結合させていくことを無数に繰返して,V-D50が0.2μm以上0.5μm以下の範囲から選択された所望の大きさの種粒子を得る。
【0066】
本工程で得られる種粒子は、前述の通り縮合を繰返し成長したものである。
【0067】
上記種粒子は、連続的に結合したSi-O-Si結合、Si-O-Ti、部分的にはTi-O-Ti結合を有する網目構造からなる。
【0068】
また、上記種粒子には、アルコキシ基が加水分解を受けることなくそのまま残留したもの、またアルコキシ基が加水分解を受けて生成したSi-OH基やTi-OH基が縮合せずにそのまま残留したもの、また、これらと化学的に結合した塩基性触媒、水及び溶媒成分を含有する。
【0069】
このように、本工程で得られる種粒子は、無機骨格を有しつつも、反応に使用した溶媒や加水分解により生じたアルコールなど、内部に様々な分子や結合基を有する粒子である。
【0070】
本工程は、公知の方法で行うことが出来る。すなわち、加水分解による水の減量を補うために混合アルコキシド原料の添加に合わせアルカリ性水溶液を添加する方法を好ましく挙げることができる。
【0071】
ゾル-ゲル法では、上記の加水分解と縮合のために反応系を塩基性下で行うのが通常であるが、本製造方法においては、窒素含有塩基触媒を使用することが好ましい。窒素含有塩基性触媒は、反応後に除去が困難な成分を含有せず、特に製造された複合酸化物中にアルカリ金属等が含まれる可能性を排除できる。このような窒素含有塩基性触媒としては、アンモニア、水酸化第4級アンモニウム或いは各種アミン化合物が挙げられる。このようなアミン化合物としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等を挙げることができる。水酸化第4級アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の水酸化物等を挙げることができる。これらのうち、揮発性が高く除去し易いこと、ゾル-ゲル法の反応速度が速いこと等から、アンモニアを使用することが特に好ましい。
【0072】
窒素含有塩基性触媒の使用割合は、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応の反応速度等を勘案して適宜決定すればよい。窒素含有塩基性触媒の使用割合としては、通常は、反応溶液のpHを8以上とする必要がある。
【0073】
本工程におけるそれぞれの原料の使用量は、反応装置の構成や反応スケールを勘案して、所望の粒径や屈折率を有するシリカ-チタニア複合酸化物粒子の粉末が得られるよう、公知の範囲から適宜選択して決定すればよい。
【0074】
本工程の製造方法で使用する反応設備は、攪拌するための装置を備えた反応器及び添加液量を制御し得る供給装置及び液の供給管、さらに反応液の温度を保つ温度制御装置を有する設備が好ましい。
【0075】
反応温度は、用いる原料物質の種類に応じて、ゾル-ゲル法の反応が速やかに進行する温度であれば特に制限されず、目的とするシリカ-チタニア複合酸化物粒子の粒径に応じて公知の範囲から適宜に選択すればよいが、平均粒子径が0.2μm以上0.5μm以下のシリカ系複合酸化物粒子を得るためには、反応温度としては、-10~60℃の範囲が好適である。
【0076】
また、反応を確実に進行させるために、液の添加を終了した後に、反応温度と同程度の温度で撹拌を継続する操作、いわゆる熟成操作を行っても良い。熟成操作を行う時間としては0.25~5時間とすることが好ましい。
【0077】
また、所望の大きさの粒子を得るために、上記、反応後の液の一部を使用して、同じ混合アルコキシド原料を用いて反応を継続させても良い。
【0078】
上述した方法によって、V-D50が0.2μm以上0.5μm以下の種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子の分散液が得られる。
【0079】
上記分散液中において種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子は、癒着粒子や凝集塊を実質生じること無く良好に分散した状態で得られるが、局所的な過度の反応進行により、粒径が5μmを越える、粗大な独立一次粒子が若干量混存する恐れがある。このため、このような粗粒を除去するため、本工程完了後にろ過するフィルタリングの実施が好ましい。
【0080】
(3)分割工程
本実施形態の分割工程では、種粒子工程にて得られた分散液を複数に分ける。分けられた分散液の少なくとも一つが、次の成長工程において一回に使用する量と同一となればよく、三つ以上に分ける場合は一度に分けてもよいし、成長工程を実施するたびにその必要量を分けとってもよい。
【0081】
成長工程を種粒子工程同一の反応槽にて行う場合には、成長工程に用いる分だけ槽内に残して、それ以外の分散液を別に用意した保管槽に移す方法を採用してもよいが、いったん全量を保管槽に移して、成長工程を行う毎に必要量を保管槽から取り出して、成長工程を実施する反応槽に移すことが好ましい。保管槽内では種粒子が沈殿しないよう適度な撹拌を行い、また溶媒が揮発しないよう揮発温度より十分に低い温度にて密閉状態で保管することが好ましい。
【0082】
なお、保管槽を複数用意し、種粒子工程で得られた分散液を分けて異なる保管槽で保管してもよい。この場合、一回の成長工程で用いる量の分散液を一つの保管槽から分けとれるのであればそのように分けとればよいが、ある保管槽の分散液の量が少なくなって一回の成長工程で用いる量に満たない場合は、複数の保管槽から分散液を分けとってもかまわない。このような保管の都合上の分散液の分割は、成長工程実施のための必要量を得るための分割とは違う工程である。
【0083】
(4)成長工程
本実施形態の成長工程では、分割工程において分取した種粒子分散液の一つに混合アルコキシド原料(第2の混合アルコキシド原料)と水とを添加して、目的とするシリカ-チタニア複合酸化物粒子を、所望の粒径にまで成長させる。
【0084】
種粒子分散液の一つを反応容器に導入して、そこに混合アルコキシド原料と水とを添加していってもよいし、種粒子分散液の一つを反応容器に導入してから、それをメタノールやイソプロパノール等のアルコールによって希釈をしてから、混合アルコキシド原料と水とを添加していってもよい。アルコールによって希釈する際には、種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子が4質量%以上12質量%以下の濃度となるように、種粒子分散液をアルコールにより希釈することが好ましい。このような濃度にすることにより、4質量%よりも濃度が高い場合は新たな核の発生を抑制でき、12質量%よりも濃度が低い場合は粒子同士の凝集を抑制することができる。
【0085】
また、添加する混合アルコキシド原料は、種粒子工程において使用された混合アルコキシド原料を用いてもよいし、それとは異なる混合アルコキシド原料、例えばシリカとチタニアの含有比率が異なる原料であったり各アルコキシドのアルコキシ基が異なる原料等を用いてもよい。
【0086】
成長工程においては、所望の粒径のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を確実に得るために、混合アルコキシド原料を調製するために用いるケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドとの合計量Wp(g)を以下の計算式(1)により算出することが好ましい。
【0087】
Wp=A×Ws×{(Dp/Ds)-1}×{Msip×(100-T)+Mtip×T}/{Msis×(100-T)+Mtis×T} ・・・(式1)
【0088】
ここで、Aは種粒子工程において得られた種粒子分散液のうち、成長工程において使用される割合、Wsは種粒子工程において添加する混合アルコキシド原料を調製するために用いたケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドとの合計の質量(g)、Dpは成長工程において目標とするシリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)、Dsは種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)、Msipは成長工程において添加する混合アルコキシド原料を形成するためのケイ素のアルコキシドの分子量、Tはシリカ-チタニア複合酸化物粒子におけるチタニアの含有率(mol%)、Mtipは成長工程において添加する混合アルコキシド原料を形成するためのチタンのアルコキシドの分子量、Msisは種粒子工程において添加する混合アルコキシド原料を形成するためのケイ素のアルコキシドの分子量、Mtisは種粒子工程において添加する混合アルコキシド原料を形成するためのチタンのアルコキシドの分子量、である。
【0089】
上記式(1)は、種粒子工程における第1の混合アルコキシド原料を調製するために用いるケイ素のアルコキシド及びチタンのアルコキシドと、成長工程における第2の混合アルコキシド原料を調製するために用いるケイ素のアルコキシド及びチタンのアルコキシドとが同一であっても、それぞれ異なるアルコキシドを用いても適用できる式であるが、通常は第1の混合アルコキシド原料を調製するために用いる両アルコキシドと、第2の混合アルコキシド原料を調製するために用いる両アルコキシドとはそれぞれ同一である方が好ましい。
【0090】
この場合、Msip=Msis、Mtip=Mtisであるから、Wpは上記式1を簡略化した以下の式2で求めることができる。
【0091】
Wp=A×Ws×{(Dp/Ds)-1} ・・・・(式2)
【0092】
Ws:種粒子工程において添加する混合アルコキシド原料の質量(g)
Wp:成長工程において添加する原料アルコキシドの質量(g)
A:種粒子工程で得られた種粒子分散液のうち、成長工程において使用される割合、即ち、種粒子工程で得られた種粒子分散液を分割して成長工程で用いる当該種粒子分散液の質量/種粒子工程で使用した全ての原料の合計質量
Ds:種粒子工程で得られた種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)
Dp:成長工程において目標とするシリカ-チタニア複合酸化物粒子のV-D50(μm)
【0093】
当該式(1)あるいは式(2)を用いて得られたWpは、ケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドの合計量なので、シリカ-チタニア複合酸化物粒子におけるチタニアの含有率の所望値(=ケイ素のアルコキサイドとチタンのアルコキサイドの使用量のモル比)に基づき、ケイ素のアルコキシドの使用量とチタンのアルコキシドの使用量を、定法に基づき各々算出すればよい。
【0094】
なお上記式(1)あるいは式(2)においては、種粒子工程で形成する種粒子におけるチタニアの含有率と、成長工程で形成される層におけるチタニアの含有率が同一である場合の計算式であり、変化させる場合には、それに合わせてアレンジして用いる必要がある。
【0095】
また、成長工程において、反応容器内の水の濃度を8質量%以上12質量%以下に保持するように添加する水の量を調整すると、成長工程を経て最終的に得られるシリカ-チタニア複合酸化物粒子はそれぞれの粒子の径がほぼ同じになりやすく、単分散性の高いシリカ-チタニア複合酸化物粒子が得られる。単分散性が高いシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、樹脂への充填物として使用する場合、透明な樹脂に充填すると充填後の樹脂組成物の透明性を高く保つことができる。また充填後の樹脂組成物を半導体素子や半導体部品等の封止材として用いると、樹脂組成物は高い流動性を有するので狭いギャップにも流入しやすく、封止後の樹脂組成物の中に気泡が残らないようになる。
【0096】
一方、成長工程において、反応容器内の水の濃度を13質量%以上18質量%以下に保持するように添加する水の量を調整すると、成長工程を経て最終的に得られるシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、単粒子が2つあるいは3つ結合した、いわゆる二個玉、三個玉が多く含まれるようになりやすい。このような二個玉、三個玉が所定の量含まれているシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、樹脂への充填物として使用する場合、充填された樹脂組成物の硬度が大きくなり、あるいはアンチブロッキング材として樹脂に充填すると、充填された樹脂組成物をフィルムにした際にフィルム表面に微細な凹凸が形成されて、適度な表面荒さとなってフィルム同士の密着を防ぐ効果が上がる。このような目的においては、二個玉、三個玉は個数基準で10%以上存在することが好ましく、15%以上存在することがより好ましい。
【0097】
なお、二個玉、三個玉は電子顕微鏡観察にてその存在を把握出来るが、定量的には画像解析により把握される円相当径が、個数基準の累積50%径(N-D50)の1.1倍以上1.6倍以下である粒子を指すものとする。
【0098】
また、この成長工程における反応液の液温は、溶媒が凍結ないしは沸騰しない範囲で適宜設定することができる。温度が低いほどN-D50を下回る小さな粒子(具体的にはN-D50の0.9倍以下の粒子)の生成数が少なくなるが、一方で温度が低すぎると生成した粒子同士の凝集が進みやすくなり、単粒子が4つ以上凝集し二個玉、三個玉よりも遙かに円相当径が大きい凝集粒子が生じやすくなる。好ましくは液温が15℃以上50℃以下、特に好ましくは液温が20℃以上40℃以下を保った状態で成長工程を行う。
【0099】
なお、成長工程における反応容器や反応条件、混合アルコキシド原料と水以外に加える物質およびその濃度等は、種粒子工程と同じであってもよいし、違うものであってもよい。
【0100】
(5)固液分離工程
本実施形態においては、次に、成長工程により得られたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を反応液中から分離する。反応が終了した液には、未反応のアルコキシド、窒素含有塩基性触媒、水、溶媒など雑多物が含まれる(以下、反応液に含まれるシリカ-チタニア複合酸化物粒子以外の成分を反応液成分とする)。
【0101】
分離の方法としては、溶媒を蒸発させて除去し、シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む蒸発残分を分離する方法や、遠心力及び重力によりシリカ-チタニア複合酸化物粒子を沈降させた後、上澄みを除去してシリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む濃縮物を得る方法、濾材に反応液を通液して濾材上に補足されたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む濃縮物を得る方法など、公知の方法を使用できる。
【0102】
また、上記の方法を組み合わせる方法、例えば、遠心容器に濾材を設置し、遠心力により濾材を通過した溶液を除去し、濾材状のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む濃縮物を取得する方法が好ましく使用できる。これらのなかでも、窒素含有率を低減させやすい点で、ろ過を伴う方法が特に好ましい。
【0103】
本製造方法においては前記の通り窒素含有塩基性触媒を好ましく用いるが、当該塩基性触媒は固液分離で完全に分離されることはない。シリカ-チタニア複合酸化物粒子内には未反応のアルコキシ基や未縮合のSi-OH基あるいはTi-OH基が存在しており、窒素含有塩基性触媒の一部は上記したSi-OH基やTi-OH基(以下、合わせて「水酸基」という)と化学的な力で結合しており、そのため当該水酸基近傍は当該窒素含有塩基性触媒により空間的に占有されている。
【0104】
このような窒素含有塩基性触媒が近傍に存在しない水酸基であれば、加熱により他の近接する水酸基と縮合する(M-O-Mとなる)ことで、網目構造は単純に強化される。一方、水酸基近傍が窒素含有塩基性触媒により空間的に占有されている場合、その水酸基は他の水酸基と近接できず、縮合することができない。このため、窒素含有塩基性触媒の残存量が多い場合には、縮合できない水酸基が多くなるものと思われる。窒素含有塩基性触媒の残存量が多いシリカ-チタニア複合酸化物粒子に対して、そのまま高温での焼成を行うとシリカ-チタニア複合酸化物粒子内に微細な空隙が多く生成し、各シリカ-チタニア複合酸化物粒子における空隙量のばらつきが相対的に大きくなり、よって各シリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率のバラツキが大きくなってしまうと考えられる。本製造方法においては、このような現象の発生を避けるために、窒素含有率を低減させることができるろ過を伴う方法を固液分離に用いることが好ましい。
【0105】
さらに、固液分離操作を円滑にするため反応液に凝析剤を投入して緩やかな凝集物を作成し、沈降を促進したり、濾過性を改善させたりする方法を併用しても良い。
【0106】
また、ろ過後に更に洗浄を行うことも、窒素含有率を低減しやすい点で好ましい。
【0107】
(6)乾燥工程
本実施形態の製造方法において乾燥は、シリカ-チタニア複合酸化物粒子間に存在する反応液成分と粒子内に残留する反応液成分の一部を除去する工程である。乾燥工程では、これらの除去に伴い顕著な質量変化を伴う。
【0108】
乾燥の終了の目処は、同条件の乾燥を継続して行っても顕著な質量減少を示さない、すなわちシリカ-チタニア複合酸化物粒子間に残存する反応液成分や、シリカ-チタニア複合酸化物粒子内に残留し除去が容易な一部の反応液成分が、十分に除去された状態になった時点である。さらに質量減少の目処としては質量変化で3%以下であるが、窒素含有率に比べて、他の成分の悪影響は著しく少ないため、この3%という値にこだわる必要はない。
【0109】
本製造方法において、乾燥の方法は特に制限はされず、静置乾燥のほか、送風乾燥や減圧乾燥等を使用できる。
【0110】
乾燥の温度は、使用する溶媒成分にもよるが、溶媒の沸点以上の条件で行うことが好ましい。大気圧であれば、乾燥温度は70℃~200℃であることが好ましく、100℃以上であることがより好ましい。乾燥時間は、特に制限はされないが、2~48時間程度が好ましい。なお、このような乾燥を行うことにより、乾燥物は粉末として得ることができる。以下では、乾燥を行ったものを「乾燥粉」と称す。
【0111】
またTi含有量は、原料の仕込み値から把握でき、必要であれば焼成後に確認することができる。
【0112】
(7)焼成工程
上記の乾燥工程を行ったシリカ-チタニア複合酸化物粒子内にも、種々の成分が残留しており、骨格構造は弱く無機物としての機能である硬さや優れた熱的安定性が得られないため、本製造方法では残存物を除去し、強固な骨格構造を得るために焼成を行う。
【0113】
ここで、400℃~600℃の温度領域での焼成でシリカ-チタニア複合酸化物粒子内に残留した未反応のアルコキシ基や未縮合の水酸基、これらと化学的に結合した反応液成分の多くは分解・脱離し、機械的強度も向上するが、水酸基の一部は残存し、微細な空隙を生じる。それぞれのシリカ-チタニア複合酸化物粒子において、この微細な空隙が占める割合は一様ではない。このため、それぞれのシリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率差が大きくなってしまう。
【0114】
そこで、本製造方法においては、さらに高い温度、具体的には800℃以上の温度で焼成を行ってシリカ-チタニア複合酸化物粒子を得る。即ち、焼成温度を高くすると構成された網目構造が再配列されやすく全般的にSi-OH基やTi-OH基がより除去される。
【0115】
このため、微細な空隙が占める割合は、どの粒子においても減少し、個々のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率差は減少する。
【0116】
一方で、焼成温度が高くなると、粒子間の接触点近傍において存在している水酸基が隣接するシリカ-チタニア複合酸化物粒子の水酸基と縮合反応を起こす。
【0117】
シリカ-チタニア複合酸化物粒子間の縮合が進むと粒子は同一化しやすく、このような同一化が複数のシリカ-チタニア複合酸化物粒子からなる構成されると凝集粒を生成する。
【0118】
このような凝集粒の生成は、状況により様々で一概にはいえないが、1100℃を超える温度で焼成を行った場合には生じやすく、1000℃~1100℃の焼成でも凝集粒を生じることがある。
【0119】
このため焼成温度は、1100℃以下であればよく、さらには1000℃以下とすることがより好ましい。
【0120】
焼成は、公知の方法で行うことが出来る。一般的には、乾燥粉を敷きつめた容器を所望の温度の炉中に存在せしめる方法が好ましく使用することが出来る。
【0121】
焼成時間については、上記焼成の目的を達することができれば、特に制限されない。しかし、あまりにも長すぎると生産性が落ちるため、目的とする焼成温度まで昇温した後、0.5~48時間、より好ましくは、2~24時間の範囲で保持し焼成を行えば十分である。
【0122】
焼成時の雰囲気も特に制限はされず、アルゴンや窒素などの不活性ガス下、または大気雰囲気下で行うことができる。
【実施例
【0123】
(評価・分析方法)
<レーザー回折散乱法体積基準累積50%径(V-D50)>
種粒子工程の後および成長工程の後に、以下の方法にて測定を行う。
【0124】
シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含んだ水性分散液から1mlを取得し、遠心分離後、上澄み液を廃棄した。残った部分に水30mlを加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させた。その後、その分散液に対してレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS-230)を用いて、体積基準累積50%径(μm)を測定した。
【0125】
焼成工程の後には以下の方法にて測定を行う。
【0126】
50mLのガラス瓶にシリカ-チタニア複合酸化物粒子約0.1gを電子天秤ではかりとり、蒸留水を約40g加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させた。その後、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS-230)を用いて、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の体積基準累積50%径(μm)を測定した。
【0127】
<SEM画像解析法個数基準累積50%径(N-D50)>
成長工程の後、および焼成工程の前に、以下の方法にて測定を行う。
【0128】
シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む分散液を固形分(粒子)濃度が0.1質量%となるようにメタノールで希釈し、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させた。その後、シリコンウェーハーの鏡面上に希釈した分散液を滴下させて、その滴下した液を乾燥させた後、日本電子社製走査型電子顕微鏡JSM-6060を用いて加速電圧20kVの条件によって、乾燥させた部分に存在しているシリカ-チタニア複合酸化物粒子の独立粒子を撮影した。その後、三谷商事社製画像解析ソフトWinROOF2018を用いて、独立粒子300~3000個について画像解析を行い、各粒子の円相当径を測定し個数基準頻度分布を得た後、個数基準累積50%径(N-D50)を算出した。
【0129】
ここで、個数基準累積50%径の1.1~1.6倍の径を有する粒子を癒着粒子(二個玉・三個玉)、個数基準累積50%径の0.9倍以下の径を有する粒子を小玉と定義する。なお、SEM観察によれば、個数基準累積50%径の1.1~1.6倍の径を有する粒子は、通常は2つまたは3つの独立粒子が結合した形状である。
【0130】
焼成工程後には以下の方法にて測定を行う。
【0131】
50mLのガラス瓶にシリカ-チタニア複合酸化物粒子約0.1gを電子天秤ではかりとり、メタノールを約40g加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させた。その後、シリコンウェーハーの鏡面上にこの分散液を滴下させ、その滴下液を乾燥させた。シリカ-チタニア複合酸化物粒子の観察および画像解析条件は前記と同様にして行った。
【0132】
<TiOの割合>
種粒子工程及び成長工程における有機ケイ素化合物と有機チタン化合物の使用量から、全てがシリカ-チタニア複合酸化物粒子へと変換されたとしてTiOの割合を計算した。今回の以下実施例・比較例は全てTiOの割合を8mol%と設定した。
【0133】
<粒子濃度>
使用したアルコキサイドが全て完全に酸化物になる(TMOSがSiOに、TPTがTiOになる)として生じる酸化物量を計算し、これを、溶媒等を含む全ての原料の使用量の合計で除した算出した。
【0134】
使用した原料の略号は以下の通りである。
【0135】
TMOS:テトラメトキシシラン(多摩化学工業社製、正珪酸メチル)
TPT:テトライソプロピルチタネート(日本曹達社製、A-1)
IPA:イソプロピルアルコール
【0136】
以下の実施例、比較例ではすべてチタニア濃度8mol%(種粒子工程と成長工程とで組成比が同一)、最初から最後まで一貫して、ケイ素アルコキシドはTMOS、チタンアルコキシドはTPTのみを用いた。従って、TMOSとTPTの合計使用量Wpは、簡略式である前記式(2)を使用して求めた。
【0137】
そして算出されたWpから、全体がWpとなり且つSiとTiのモル比が92:8になるようにTMOSとTPTとの使用量を振り分けた。
【0138】
(実施例1)
<混合化工程>
滴下する混合アルコキシド原料の調製
5Lのガラス製4つ口フラスコに、金属アルコキシドとしてTMOSを1400g仕込み、有機溶媒としてメタノールを140gと、酸触媒として0.04質量%塩酸58gを加え、室温で20分間攪拌することによって、TMOSを加水分解した。続いて、金属アルコキシドとしてTPT227gをIPA159gで希釈した液を添加し、透明な混合アルコキシド原料の溶液1984gを得た。なおケイ素とチタンのモル比は92:8となる。表1に条件を示した。
【0139】
【表1】
【0140】
<種粒子工程>
初期仕込み原料の準備
10Lのジャケット付きガラス製セパラブルの5つ口フラスコ(直径22cm、円筒状)に、バッフル板、フルゾーン翼(翼径12cm)を設置し、反応液としてIPAを1200g、25質量%アンモニア水300gを仕込み、20℃で保持、60rpmで攪拌した(初期仕込み原料)。この時の初期仕込み原料中の水濃度は15質量%である。
【0141】
原料滴下による種粒子の合成
上記の初期仕込み原料に、上記混合アルコキシド原料の溶液と、25質量%アンモニア水656gとを、それぞれ独立に初期仕込み原料の液中に滴下した。滴下開始時は、混合アルコキシド原料の溶液は5.0g/min、アンモニア水は2.0g/minの速度で反応媒体中に供給し、その後は徐々に供給量を増やし3時間で滴下を同時に完了し、種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子を合成していった。反応液は徐々に白濁していった。
【0142】
滴下完了後も撹拌を続けつつ20℃のままで30分間保持した(熟成)。セパラブルフラスコから反応液を全量回収し重量を測定した結果、4140gであり、使用した原料(混合アルコキシド原料、25質量%アンモニア水および初期仕込み原料)の合計量4140gと一致した。また、反応液中の種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子のレーザー回折散乱法体積基準累積50%径(Ds)は0.45μmであった。表1に合成の条件と粒子径を示した。
【0143】
以下、このようにして得た反応液を「種粒子分散液」と称する。
【0144】
<分割工程>
10Lのジャケット付きガラス製セパラブルの5つ口フラスコ(直径22cm、円筒状)に、バッフル板、フルゾーン翼(翼径12cm)を設置した。この反応器に、反応液として第1の工程で得られた種粒子分散液のうちの500g(約1/8)、およびメタノール465g、25質量%アンモニア水105gを仕込み、35℃で保持、攪拌した。この時の仕込み原料中の水濃度は12質量%である。
【0145】
<成長工程>
成長工程が完了した後の目標粒径を1.1μm(V-D50)として以下の操作を行った。また前記の通り、この成長工程でもケイ素とチタンのモル比は92:8のままとしている。
【0146】
滴下する混合アルコキシド原料の調製
5Lのガラス製4つ口フラスコに、金属アルコキシドとしてTMOSを2300g仕込み、有機溶媒としてメタノールを575gと、酸触媒として0.04質量%塩酸95gを加え、室温で20分間攪拌することによって、TMOSを加水分解した。続いて、金属アルコキシドとしてTPT374gをIPA374gで希釈した液を添加し、透明な混合アルコキシド原料3718gを得た。
【0147】
上記各金属アルコキシドの使用量は、前記式2において種粒子分散液の分割の割合Aを500/4140×100=12.08(%)として計算して求めたWpから、ケイ素とチタンのモル比が92:8となるように振り分けて算出したものである。
【0148】
原料滴下による粒子の成長
分割工程において10Lのジャケット付きガラス製セパラブルの5つ口フラスコの中に希釈して仕込んだ種粒子分散液に対して、上記混合アルコキシド原料3718gと、25質量%アンモニア水1305gを、それぞれ独立に液中滴下した。滴下開始時は、混合アルコキシド原料は5.0g/min、アンモニア水は1.8g/minの速度で反応媒体中に供給し、その後は徐々に供給量を増やし5時間で原料供給を同時に完了し、シリカ-チタニア複合酸化物粒子を成長させた。
【0149】
滴下完了後も撹拌を続けつつ20℃のままで30分間保持した(熟成)。得られた反応液中のシリカ-チタニア複合酸化物粒子のレーザー回折散乱法体積基準累積50%径(V-D50)は1.10μm、SEM画像解析法個数基準累積50%径(N-D50)は1.10μm、癒着粒子(二個玉・三個玉)の個数頻度2%、小玉の個数頻度3%、平均円形度0.95であった。表2,3に合成の条件と粒子径等の測定値を示した。
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
<固液分離工程>
上記の成長工程で得られたスラリーを、目開き5μmのポリプロピレン製フィルターを通して10Lのポリエチレン製容器に移液した。これにドライアイス(固体状の二酸化炭素)20gを投入後、3時間放置した。
【0153】
3時間放置した段階でシリカ-チタニア複合酸化物粒子が凝集沈降しており、定量ろ紙(保留粒子径5μm)を使用し、減圧濾過を行い、溶媒成分が粒子内および粒子間に残留した固形物を得た。ろ液は透明であり、ろ過漏れは確認されなかった。
【0154】
<乾燥工程>
固液分離工程において得られた固形物を100℃で16時間真空乾燥し、シリカ-チタニア複合酸化物粒子を得た。
【0155】
<焼成工程>
得られたシリカ-チタニア複合酸化物粒子に対して、昇温速度5℃/min、1000℃という条件により12時間焼成を行った。焼成雰囲気の調整は特に行わず、空気雰囲気下で実施した。焼成後に確認したところ、焼結している様子はなかった。
【0156】
焼成後のシリカ-チタニア複合酸化物粒子のレーザー回折散乱法体積基準累積50%径(V-D50)は1.01μmであって、粗大粒子は検出されなかった。SEM画像解析法個数基準累積50%径(N-D50)は1.01μm、癒着粒子(二個玉・三個玉)の個数頻度2%、小玉の個数頻度2%、平均円形度0.96であった。表4に粒子径等の測定値を示した。
【0157】
【表4】
【0158】
(実施例2,3)
実施例2,3では、実施例1の種粒子工程において調製した種粒子分散液から各々500gを計り取った(分割工程)。そして、実施例1の成長工程で滴下した25質量%アンモニア水の量を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして成長工程およびその後の工程を実施した。
【0159】
成長工程実施後で焼成工程前の評価結果を表3に、焼成工程実施後の評価結果を表4に示す。なお表4中で「-」は評価していない項目である(以下同じ)。
【0160】
(実施例4,5)
実施例4,5では、実施例1と同一の方法で混合化工程および種粒子工程を行って、V-D50が0.45μmである種粒子分散液を得た。ここから各々1200gを計り取った(分割工程)。目標粒径Dpを0.80μmとして、分割した種粒子分散液に対して、成長工程において滴下した混合アルコキシド原料、25質量%アンモニア水および初期仕込み原料を表2に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして成長工程およびその後の工程を実施した。
【0161】
成長工程実施後で焼成工程前の評価結果を表3に、焼成工程実施後の評価結果を表4に示す。
【0162】
(実施例6,7)
種粒子工程における初期仕込み原料及び温度を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして種粒子分散液を得た。種粒子シリカ-チタニア複合酸化物粒子のDs(V-D50)は各々0.30μm(実施例6)、0.20μm(実施例7)であった。
【0163】
ついで、各原料の使用量及び温度を表2に示すように変更して、それ以外は実施例1と同様にして成長工程およびその後の工程を実施した。
【0164】
成長工程実施後で焼成工程前の評価結果を表3に、焼成工程実施後の評価結果を表4に示す。
【0165】
(実施例8~15)
実施例1と同一の方法で種粒子工程を行い、Ds(V-D50)が0.45μmである種粒子分散液を調製した。
【0166】
ついで、各原料の使用量及び温度を表2に示すように変更して、それ以外は実施例1と同様にして成長工程およびその後の工程を実施した。
【0167】
成長工程実施後で焼成工程前の評価結果を表3に、焼成工程実施後の評価結果を表4に示す。
【0168】
(その他の実施形態)
上述の実施形態は本願発明の例示であって、本願発明はこれらの例に限定されず、これらの例に周知技術や慣用技術、公知技術を組み合わせたり、一部置き換えたりしてもよい。また当業者であれば容易に思いつく改変発明も本願発明に含まれる。