(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】光変調式電子源
(51)【国際特許分類】
H01J 37/06 20060101AFI20240131BHJP
H01J 35/06 20060101ALI20240131BHJP
H01J 1/304 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01J37/06 A
H01J37/06 Z
H01J35/06 B
H01J1/304
(21)【出願番号】P 2022519008
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 US2020051344
(87)【国際公開番号】W WO2021061500
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-09-13
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガルシア ベリオス エドガルド
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング ジェイ ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】シャオ-リー インイン
(72)【発明者】
【氏名】フィールデン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン ユン-ホ アレックス
【審査官】中尾 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-236877(JP,A)
【文献】特表2018-521457(JP,A)
【文献】特表2018-529188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/06
H01J 35/06
H01J 1/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光変調式電子源であって、
対向する第1面と第2面を有するシリコン基板、並びに前記シリコン基板に一体的に接続された基部
を有するエミッタ突出部、前記第1面から延在する本体部分、及び前記本体部分の遠位端に配設された放出先端を含む電界エミッタカソードと、
前記電界エミッタカソードに隣接して固定的に配置され、前記放出先端に向かって前記シリコン基板内の自由電子を誘引する電界を生成するように構成された電極と、
約1μmよりも短い波長を有する光子を含む光子ビームを生成するように構成され、前記光子の少なくとも一部が前記電界エミッタカソードによって吸収されるように、前記エミッタ突出部上に前記光子ビームを誘導するように構成された光子ビーム源と、
前記光子ビーム源から伝送されて、前記電界エミッタカソードによって受取られる前記光子ビームの強度を制御することによって、前記放出先端から放出された電子を含む電子ビームの放出電流を変調させるように構成された制御回路と、
前記電界エミッタ突出部に隣接する前記第1面上に配設された誘電体層と、
を備え、前記電極は、前記誘電体層上に配設され前記電界エミッタカソードに対して約30V乃至約200Vの正電圧に維持される抽出器と、前記
放出先端から少なくとも1mmの離隔距離に配設され前記電界エミッタカソードに対して少なくとも500Vの正電圧に維持されるアノードと、を備え
、
前記制御回路は、前記光子ビームが第1期間中に第1強度で生成され、第2期間中に第2強度で生成されるように前記光子ビーム源を制御するように構成され、前記第2強度は、前記第1強度よりも高い、光変調式電子源。
【請求項2】
前記抽出器は、前記誘電体層が前記抽出器と前記基板との間に配設されるように前記誘電体層上に配設され、
前記誘電体層の厚さは、前記第1面より上の前記放出先端の高さよりも小さく、
前記第1面より上の前記抽出器の公称高さは、前記放出先端の前記高さの約±300nmであり、
前記抽出器は、前記電界エミッタカソードに対して約30V乃至200Vの正電圧に維持され、
前記放出先端は、1nm乃至50nmの横方向の寸法を有し、
前記電子源は、前記放出先端を全体的に連続的に覆うように前記シリコン基板上に配設された酸化防止被覆層を更に備え、
前記酸化防止被覆層は、ホウ素、ホウ化物、及び炭化物のうちの1つを含み、1nm乃至10nmの厚さを有する、
請求項1に記載の電子源。
【請求項3】
前記光子ビーム源は、250nm乃至700nmの範囲内の波長を有する前記光子を生成するように構成された光源を備えている、請求項1に記載の電子源。
【請求項4】
前記光子ビーム源は、前記光源と前記電界エミッタカソードとの間の前記光子ビームの経路内に配設された集束装置及び光変調デバイスのうちの少なくとも1つを更に備えている、請求項3に記載の電子源。
【請求項5】
前記集束装置は、前記電極内に形成された開口部を通して前記光子ビームを誘導するように構成された少なくとも1つのミラーを備えている、請求項4に記載の電子源。
【請求項6】
前記制御回路は、前記光源及び前記光変調デバイスのうちの少なくとも1つを制御することによって、前記光子ビームの強度を制御するように構成されている、請求項4に記載の電子源。
【請求項7】
前記電子ビームの前記放出電流を測定して、対応する放出電流測定値を生成するように構成された少なくとも1つのモニタを更に備え、
前記制御回路は、前記放出電流測定値に従って制御信号を生成するように更に構成され、
前記光源及び前記光変調デバイスのうちの少なくとも1つは、前記制御信号によって制御される、請求項6に記載の電子源。
【請求項8】
前記シリコン基板は、pドープシリコンを含み、
前記電極は、前記電界エミッタカソードの電位バリアが前記放出先端において前記電界エミッタカソードのフェルミ準位より上に維持されるように、前記放出先端において電界を生成するように構成されているアノードを備え、
前記制御回路は、前記光子ビームの前記第1強度が最小化され、これによって前記第1期間中に放出先端からの電子の放出を最小化するように、及び、前記第2強度が前記第2期間中に前記第1強度よりも実質的に高く、それによって十分な数の前記光子が前記電界エミッタカソードによって吸収されることにより、前記放出先端からの前記電子ビームの光利用電界放出を生じさせるように、前記光子ビーム源を制御するように構成されている、請求項1に記載の電子源。
【請求項9】
前記電界エミッタカソードは、前記シリコン基板の前記第1面に一体的に接続され、2次元周期性パターンに配列された複数の電界エミッタ突出部を備えている、請求項1に記載の電子源。
【請求項10】
シリコン型電界エミッタカソードから放出された電子ビームを変調させる方法であって、方法は、
放出先端における伝導帯が電界エミッタカソードのフェルミ準位より上に維持されるように、前記電界エミッタカソードの前記放出先端において電界を生成するステップと、
約1μmよりも短い波長を有する光子を含む光子ビームを生成するように構成されて、前記電界エミッタカソードに向かって前記光子ビームを誘導するように構成された光子ビーム源を制御するステップと、
を含み、
前記光子ビーム源を制御するステップは、第1期間中に第1強度で前記光子ビームを生成することと、第2期間中に第2強度で前記光子ビームを生成することと、を含み、前記第2強度が前記第1強度よりも実質的に高いことにより、前記第1期間中に放出先端からの電子の放出が最小化され、前記第2期間中に前記光子の十分な数が前記電界エミッタカソードによって吸収されて、前記伝導帯域内に光電子を生成し、これによって前記放出先端からの前記電子ビームの光利用電界放出を生じさせる、方法。
【請求項11】
前記光子ビームを生成することは、250nm乃至700nmの範囲内の波長を有する前記光子を生成することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記光子ビームを制御することは、光源及び光変調デバイスのうちの少なくとも1つを制御することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記電子ビームの前記放出電流を測定することと、対応する放出電流測定値を生成することと、を更に含み、前記光源及び前記光変調デバイスのうちの少なくとも1つを制御することは、前記放出電流測定値に応じて制御信号を生成することと、前記光源及び前記光変調デバイスのうちの1つに前記制御信号を伝送することと、を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1次電子ビームを生成するように構成された電子源を含むデバイスであって、前記電子源は、
対向する第1面と第2面を有するシリコン基板、並びに前記シリコン基板に一体的に接続された基部
を有するエミッタ突出部、前記第1面から延在する本体部分、及び前記本体部分の遠位端に配設された放出先端を有する電界エミッタカソードと、
開口部を有し、前記電界エミッタカソードに対して正電圧に維持されている電極であって、前記電極は、前記放出先端から放出された電子が前記開口部を通過する電子ビームを形成するように構成されている、電極と、
約1μmよりも短い波長を有する光子を含んで、前記光子のうちの少なくとも一部が前記電界エミッタカソードによって吸収されるように前記エミッタ突出部上に誘導されている光子ビームを生成するように構成された光子ビーム源と、
前記光子ビーム源から伝送されて、前記電界エミッタカソードによって受取られる前記光子ビームの強度を制御することによって、前記電子ビームの放出電流を変調させるように構成された制御回路と、
前記電界エミッタ突出部に隣接する前記第1面上に配設された誘電体層と、
を備え、前記電極は、前記誘電体層上に配設され前記電界エミッタカソードに対して約30V乃至約200Vの正電圧に維持される抽出器と、前記放出先端から少なくとも1mmの離隔距離に配設され前記電界エミッタカソードに対して少なくとも500Vの正電圧に維持されるアノードと、
を備え、
デバイスは、試料まで前記1次電子ビームを誘導するように構成された電子光学系を更に備え
、
前記制御回路は、前記光子ビームが第1期間中に第1強度で生成され、第2期間中に第2強度で生成されるように前記光子ビーム源を制御するように構成され、前記第2強度は、前記第1強度よりも高い、
デバイス。
【請求項15】
前記デバイスは、走査型電子顕微鏡(SEM)であり、前記電子光学系は、前記試料上に前記1次電子ビームを縮小して集束させるように構成され、前記デバイスは、後方散乱電子及び前記試料からの2次電子のうちの少なくとも1つを検出する検出器を更に備えている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記デバイスは、電子ビームリソグラフィシステムであり、前記電子光学系は、前記試料上に前記1次電子ビームを縮小して集束させるように構成されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記デバイスは、X線源であり、前記電子光学系は、アノードまで前記1次電子ビームを誘導するように構成されている、請求項14に記載のデバイス。
【請求項18】
光変調式電子源であって、
対向する第1面と第2面を有するシリコン基板、並びに前記シリコン基板に一体的に接続された基部
を有するエミッタ突出部、前記第1面から延在する本体部分、及び前記本体部分の遠位端に配設された放出先端を含む電界エミッタカソードと、
前記電界エミッタ突出部に隣接する前記第1面上に配設された誘電体層と、前記誘電体層上に配設され、前記電界エミッタカソードに隣接して固定的に配置された抽出器であり、前記放出先端に向かって前記シリコン基板内の電子を誘引する電界を生成するように構成された抽出器と、
前記放出先端から少なくとも1mmの離隔距離に配設されて開口部を備え、前記放出先端から放出された電子が、前記開口部を通過する電子ビームを形成するように構成されたアノードと、
約1μmよりも短い波長を有する光子を含む光子ビームを生成するように構成され、前記光子の少なくとも一部が前記電界エミッタカソードによって吸収されるように、前記エミッタ突出部上に前記光子ビームを誘導するように構成された光子ビーム源と、
前記光子ビーム源から伝送されて、前記電界エミッタカソードによって受取られる前記光子ビームの強度を制御することによって、前記電子ビームの放出電流を変調させるように構成された制御回路と、
を備え、
前記第1面より上の前記抽出器の公称高さは、前記放出先端の前記高さの約±300nmであり、
前記抽出器は、前記電界エミッタカソードに対して第1の正電圧に維持され、前記アノードは、前記電界エミッタカソードに対して第2の正電圧に維持され、前記第2の正電圧は前記第1の正電圧よりも大き
く、
前記制御回路は、前記光子ビームが第1期間中に第1強度で生成され、第2期間中に第2強度で生成されるように前記光子ビーム源を制御するように構成され、前記第2強度は、前記第1強度よりも高い、
光変調式電子源。
【請求項19】
前記放出先端は、1nm乃至50nmの横方向の寸法を有し、
前記電子源は、前記放出先端を全体的に連続的に覆うように前記シリコン基板上に配設された酸化防止被覆層を更に備え、
前記酸化防止被覆層は、ホウ素、ホウ化物、及び炭化物のうちの1つを含み、1nm乃至10nmの厚さを有する、
請求項18に記載の電子源。
【請求項20】
前記抽出器は、前記電界エミッタカソードに対して少なくとも30Vに維持され、前記アノードは、前記電界エミッタカソードに対して少なくとも500Vに維持される、請求項19に記載の電子源。
【請求項21】
前記光子ビーム源は、250nmよりも長い波長を有する光子を生成するように構成された光源を備える、請求項18に記載の電子源。
【請求項22】
前記光子ビーム源は、前記光源と前記電界エミッタカソードとの間の前記光子ビームの経路内に配設された集束装置及び光変調デバイスのうちの少なくとも1つを更に備える、請求項21に記載の電子源。
【請求項23】
前記集束装置は、前記抽出器内に形成された開口部を通して前記光子ビームを誘導するように構成された少なくとも1つのミラーを備えている、請求項22に記載の電子源。
【請求項24】
前記制御回路は、前記光源及び前記光変調デバイスのうちの少なくとも1つを制御することによって、前記光子ビームの強度を制御するように構成されている、請求項22に記載の電子源。
【請求項25】
前記電子ビームの前記放出電流を測定して、対応する放出電流測定値を生成するように構成された少なくとも1つのモニタを更に備え、
前記制御回路は、前記放出電流測定値に従って制御信号を生成するように更に構成され、
前記光源及び前記光変調デバイスのうちの少なくとも1つは、前記制御信号によって制御される、請求項24に記載の電子源。
【請求項26】
光変調式電子源であって、
対向する第1面と第2面を有するシリコン基板、前記シリコン基板に一体的に接続された基部を有する
エミッタ突出部、前記第1面から延在する本体部分、及び前記本体部分の遠位端に配設された放出先端を含む電界エミッタカソードと、
前記
エミッタ突出部に隣接する前記第1面上に配設された誘電体層と、前記誘電体層上に配設され、前記電界エミッタカソードに隣接して固定的に配置され、前記シリコン基板内の電子を前記放出先端に向けて誘因する電界を生成する抽出器と、
前記放出先端から少なくとも1mmの離隔距離に配設されて開口部を備え、前記放出先端から放出された電子が、前記開口部を通過する電子ビームを形成するように構成されたアノードと、
約1μmよりも短い波長を有する光子を含む光子ビームを生成するように構成され、前記光子の少なくとも一部が前記電界エミッタカソードによって吸収されるように、前記エミッタ突出部上に前記光子ビームを誘導するように構成された光子ビーム源と、
前記光子ビーム源から伝送されて、前記電界エミッタカソードによって受取られる前記光子ビームの強度を制御することによって、前記放出先端から放出された電子を含む電子ビームの放出電流を変調させるように構成された制御回路と、
を備え、
前記制御回路は、前記光子ビームが第1期間中に第1強度で生成され、第2期間中に第2強度で生成されるように前記光子ビーム源を制御するように構成され、前記第2強度は、前記第1強度よりも高く、
前記シリコン基板は、pドープシリコンを含み、
前記アノードは、さらに、前記電界エミッタカソードの電位バリアが前記放出先端において前記電界エミッタカソードのフェルミ準位より上に維持されるように、前記放出先端において電界を生成するように構成され、
前記制御回路は、前記光子ビームの前記第1強度が最小化され、これによって前記第1期間中に放出先端からの電子の放出を最小化するように、及び、前記第2強度が前記第2期間中に前記第1強度よりも実質的に高く、それによって十分な数の前記光子が前記電界エミッタカソードによって吸収されることにより、前記放出先端からの前記電子ビームの光利用電界放出を生じさせるように、前記光子ビーム源を制御するように構成されている、光変調式電子源。
【請求項27】
前記電界エミッタカソードは、前記シリコン基板の前記第1面に一体的に接続され、2次元周期性パターンに配列された複数の電界エミッタ突出部を備えている、請求項18に記載の電子源。
【請求項28】
電子ビームを生成するように構成された電子源を備えるデバイスであって、
前記電子源は、
対向する第1面と第2面を有するシリコン基板、並びに前記シリコン基板に一体的に接続された基部
を有するエミッタ突出部、前記第1面から延在する本体部分、及び前記本体部分の遠位端に配設された放出先端を有する電界エミッタカソードと、
第1開口部を有し、電界を生成して前記電界エミッタカソードに印加し、前記放出先端から放出された電子が電子ビームを形成し、前記電子ビームが前記第1開口部を通過するように構成されている、抽出器と、
第2開口部を有し、前記放出先端から少なくとも1mmの離隔距離に配設され、前記電子ビームが前記第2開口部を通過するように構成されたアノードと、
約1μmよりも短い波長を有する光子を含んで、前記光子のうちの少なくとも一部が前記電界エミッタカソードによって吸収されるように前記エミッタ突出部上に誘導されている光子ビームを生成するように構成された光子ビーム源と、
前記光子ビーム源から伝送されて、前記電界エミッタカソードによって受取られる前記光子ビームの強度を制御することによって、前記電子ビームの放出電流を変調させるように構成された制御回路と、
を備え、
デバイスは、試料まで1次電子ビームを誘導するように構成された電子光学系を更に備え、
前記第1面より上の前記抽出器の公称高さは、前記放出先端の前記高さの約±300nmであり、
前記抽出器は、前記電界エミッタカソードに対して第1の正電圧に維持され、前記アノードは、前記電界エミッタカソードに対して第2の正電圧に維持され、前記第2の正電圧は前記第1の正電圧よりも大き
く、
前記制御回路は、前記光子ビームが第1期間中に第1強度で生成され、第2期間中に第2強度で生成されるように前記光子ビーム源を制御するように構成され、前記第2強度は、前記第1強度よりも高い、
デバイス。
【請求項29】
前記デバイスは、走査型電子顕微鏡(SEM)であり、前記電子光学系は、前記試料上に前記1次電子ビームを縮小して集束させるように構成され、前記デバイスは、後方散乱電子及び前記試料からの2次電子のうちの少なくとも1つを検出する検出器を更に備えている、請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
前記デバイスは、電子ビームリソグラフィシステムであり、前記電子光学系は、前記試料上に前記1次電子ビームを縮小して集束させるように構成されている、請求項28に記載のデバイス。
【請求項31】
前記デバイスは、X線源であり、前記電子光学系は、アノードまで前記1次電子ビームを誘導するように構成されている、請求項28に記載のデバイス。
【請求項32】
さらに、前記電界エミッタ突出部に隣接する前記第1面上に配設された誘電体層、
を備え、
前記抽出器は、前記誘電層上に配設されて前記誘電体層は前記抽出器と前記基板との間に配設され、前記放出先端は、1nm乃至50nmの横方向の寸法を有し、前記電子源は、前記放出先端を全体的に連続的に覆うように前記シリコン基板上に配設された酸化防止被覆層を更に備え、前記酸化防止被覆層は、ホウ素、ホウ化物、及び炭化物のうちの1つを含み、1nm乃至10nmの厚さを有する、請求項28に記載のデバイス。
【請求項33】
電子ビームを生成するように構成された電子源を備えるデバイスであって、
前記電子源は、
対向する第1面と第2面を有するシリコン基板、並びに前記シリコン基板に一体的に接続された基部
を有するエミッタ突出部、前記第1面から延在する本体部分、及び前記本体部分の遠位端に配設された放出先端を有する電界エミッタカソードと、
第1開口部を有し、電界を生成して前記電界エミッタカソードに印加し、前記放出先端から放出された電子が電子ビームを形成し、前記電子ビームが前記第1開口部を通過するように構成されている、抽出器と、
第2開口部を有し、前記放出先端から少なくとも1mmの離隔距離に配設され、前記電子ビームが前記第2開口部を通過するように構成されたアノードと、
約1μmよりも短い波長を有する光子を含んで、前記光子のうちの少なくとも一部が前記電界エミッタカソードによって吸収されるように前記エミッタ突出部上に誘導されている光子ビームを生成するように構成された光子ビーム源と、
前記光子ビーム源から伝送されて、前記電界エミッタカソードによって受取られる前記光子ビームの強度を制御することによって、前記電子ビームの放出電流を変調させるように構成された制御回路と、
を備え、
デバイスは、試料まで1次電子ビームを誘導するように構成された電子光学系を更に備え、
前記抽出器は、前記電界エミッタカソードに対して少なくとも30Vに維持され、前記アノードは、前記電界エミッタカソードに対して少なくとも500Vに維持され
、
前記制御回路は、前記光子ビームが第1期間中に第1強度で生成され、第2期間中に第2強度で生成されるように前記光子ビーム源を制御するように構成され、前記第2強度は、前記第1強度よりも高い、
デバイス。
【請求項34】
前記光子ビーム源は、250nmよりも長い波長を有する光子を生成するように構成された光源を備える、請求項28に記載のデバイス。
【請求項35】
前記光子ビーム源は、前記光源と前記電界エミッタカソードとの間の前記光子ビームの経路内に配設された集束装置及び光変調デバイスのうちの少なくとも1つを更に備える、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記電界エミッタカソードは、前記シリコン基板の前記第1面に一体的に接続され、2次元周期性パターンに配列された複数の電界エミッタ突出部を備えている、請求項28に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、電子源を利用するシステム/デバイス(例えば、走査型電子顕微鏡、電子ビームリソグラフィシステム、及びX線源)に関する。特に、本開示は、フォトマスク、レチクル、及び半導体ウェーハを再調査及び/又は検査するのに適している様々な半導体検査、計測、及び再調査システムに使用するのに適した電子源に関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年9月26日に出願された、「ELECTRON SOURCE」と題する米国仮特許出願第62/906,095号の優先権を主張し、この出願は参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
集積回路産業は、数十ナノメートル(nm)以下のサイズのより小さい欠陥及び粒子を検出するために、ますますより高い感度を有する検査ツールを必要とする。これらの検査ツールは、高速で動作することにより、フォトマスク、レチクル、又はウェーハの面積の大部分若しくは100%さえ短時間で検査しなければならない。例えば、検査時間は、製造中の検査のためには1時間以下であってもよく、或いはR&D又はトラブルシューティングのためにはせいぜい数時間であってもよい。そのように速く検査するために、検査ツールは、関心の欠陥及び粒子の寸法よりも大きい画素又はスポットサイズを用いて、欠陥又は粒子によって生じた信号のわずかな変化を検出する。高速検査が、UV光によって動作する検査ツールを使用して製造において最も一般的に実行される。R&Dでの検査が、UV光又は電子によって実行されてもよい。
【0004】
欠陥又は粒子が高速検査によって発見されると、より高解像度画像を作成すること、及び/又は、粒子又は欠陥の由来又はタイプを決定するための材料分析を行うことがしばしば必要である。このプロセスは、一般に再調査と呼ばれる。再調査は、通常、走査型電子顕微鏡(SEM)によって実行される。半導体製造に使用される再調査SEMは、典型的に、1日当たり数千の潜在的欠陥又は粒子を再調査するために必要とされ、そして再調査のために標的毎に多くとも数秒を有することがある。
【0005】
再検査SEMを含む電子顕微鏡は、電子源(aka、電子エミッタ、又は電子銃)を利用して、標的試料を照明するのに役立つ加速化された電子のビームを生成し、それによって、標的試料の表面上の潜在的欠陥の再調査を容易にする。電子源は、2つの大まかなグループ、すなわち、熱(高温)によって励起された電子を放出する熱電子源と、高電圧を利用して電子を放出する電界放出源と、に分けられ得る。熱電子源は、最も一般的な商業的に入手可能な電子エミッタであり、通常、タングステン又は六ホウ化ランタン(LaB6)でできている。熱電子放出において、電子は、電子熱エネルギが表面電位障壁を克服するのに十分に高い場合、材料表面から沸騰させられる。熱電子エミッタは、典型的には、動作するために高温(LaB6について>1300K、及びタングステンについて>2500K)を必要とし、そして非効率的な電力消費、広いエネルギ拡散、短い寿命、低い電流密度、及び制限された輝度等のいくつかの欠点を有する。より効率的な電子源に対する需要が、ショットキーエミッタ及び電子電界エミッタ等の冷電子源の研究開発を推進してきた。
【0006】
ショットキーエミッタでは、熱電子放出が、印加された外部電界下での撮像電荷効果による効果的なポテンシャル障壁低下によって増強される。ショットキーエミッタは、典型的には、ずっとより低い仕事関数(約2.9eV)を示す酸化ジルコニウム(ZrOX)の層によって被覆された先端を有するタングステンワイヤからできている。熱利用ショットキーエミッタは、高温(>1000°K)及び高真空(約10-9mbar)で動作させられる必要があり、作動温度が高いことに起因して所望の電子放出エネルギ拡散よりも広いそれを有する。より低いエネルギ拡散、より高い輝度(放射輝度)、及びショットキーエミッタよりも高い電流密度を有する電子源が、より高速で、より費用効果の高い検査、再調査、及びリソグラフィを可能にするので、半導体ウェーハ及びマスクの検査、再調査、及びリソグラフィにとって望ましい。
【0007】
冷電子源、特に電子電界エミッタが、別の用途の中でも、電界放出ディスプレイ、ガスイオナイザ、X線源、電子ビームリソグラフィ、及び電子顕微鏡において使用されてきた。冷電子源は、フィラメントによって電気的に加熱されない電界エミッタカソードを利用する(すなわち、カソードは、熱電子放出のみによって供給され得るよりも多くの電子を放出する)けれども、低温では必ずしも動作しない、つまり、それは、電界放出の電子電流(すなわち、カソードから放出される電子)によって室温以上の動作温度まで加熱されることが多い。典型的な電界エミッタは、円錐状先端を有するエミッタカソードと、低圧(真空)環境内に配設されている円形ゲート開口部(抽出器)と、から構成される。電位差が、印加された外部電界下でエミッタカソードとゲートとの間に確立されて、先端の表面に高い電界を生じさせる。電界放出は、印加電界が先端-真空界面におけるポテンシャル障壁を減少させるのに十分な高さであるときに起こり、その結果、電子は、室温に近い動作温度でこの障壁を通ってトンネリングすることができる(すなわち、量子力学的トンネル効果)。この態様で先端から放出された電子は、ゲートよりも高い正電位でバイアスをかけられた正電界源(例えば、アノード)に向かって移動する。放出電流密度は、電界エミッタによる電界増強因子を考慮に入れるFowler-Nordheim理論の修正版によって推定され得る。
【0008】
電界エミッタは、室温付近で動作し得るので、ショットキー及び熱電子エミッタよりも低いエネルギ拡散を有し、熱電子エミッタよりも高い輝度及び電子電流を有し得る。しかし、実用において、電界エミッタの出力電流は、安定性が低く、その理由は、汚染物質がエミッタの先端に容易に付着し、その仕事関数を変化(増加又は減少)させ、これが、輝度及び電流を変化(増加又は減少)させるとともに、電子が放出させられる領域の形状を変化させることになるからである。周期的なフラッシング(すなわち、先端温度を一時的に上昇させること)が、これらの汚染物質を除去するために必要である。この機器は、フラッシング工程中、動作不可であり、そのため、先端を加熱し、次いでそれを冷却して安定化させる両方のために、かなりの時間(すなわち数十秒乃至数分)を要する。半導体産業では、機器は、長期間中断することなく連続的に安定して動作する必要があり、それで、通常は、ショットキーエミッタが、冷電界エミッタに優先して使用される。
【0009】
初期の努力は、金属製の電界エミッタを開発することに集中されてきた。とりわけ、Spindt型モリブデン電界エミッタは、モリブデンが低抵抗率(20℃で53.4nΩm)及び高融点(2896K)を有するので、おそらく最もよく知られた金属電界エミッタである。それにもかかわらず、金属エミッタは、金属堆積技術による均一性の欠如等のいくつかの欠点、より厳密には、主として酸化による放出電流の低下を被る。
【0010】
最新の半導体製造技術の出現とともに、半導体電界エミッタの研究がなされ、特に、金属ナノ先端に対する代替としてのシリコン電界エミッタが、(例えば、非特許文献1)のシリコン電界エミッタである。シリコンは、大規模な電界エミッタ構造を製造する際に、実用的な利点を有する。単一結晶(単結晶)シリコンは、電界エミッタ用の魅力的な材料である。非常に純度が高く、結晶欠陥が非常に少ないシリコン結晶が、成長させられ得る。シリコンの導電率は、ドーピング及び/又は電圧印加によって変更され得る。より重要なことは、シリコンは、十分に発達した技術ベースを有する(すなわち、シリコン電界エミッタは、標準的なCMOS製造技術によって作製され得る)。
【0011】
近年、シリコン電界エミッタが有望であることが示されているが、それらは、まだ商業的に入手可能ではない。電界エミッタを形成するためにシリコンを使用することに伴う一つの重大な問題は、シリコンが非常に反応性であり、10-10ミリバール付近の圧力で数時間以内に汚染され得ることである。シリコンは、その表面に自然酸化物を非常に容易に形成する。真空中であっても、真空中に存在する少量の酸素及び水が、シリコンの表面と反応するので、自然酸化物が最終的に形成することになる。シリコンと二酸化ケイ素との界面は、電子再結合の確率が非常に高い欠陥(ダングリングボンドに起因する)を有する。更に、二酸化ケイ素の禁制帯は、酸化物が非常に薄い場合であっても、大きく(約9eV)、電子が回避するために克服すべき仕事関数よりも高い追加の障壁を生成する。例えば、平滑なシリコン表面上の自然酸化物は、典型的には約2nmの厚さである。いくつかの状況では、酸化もまた、電界エミッタの形状を変化させ得る。これらの上記の問題は、低い輝度及び電流だけでなく、放出の低い安定性、信頼性、スケーラビリティ及び均一性の欠如をもたらすことがあり、それでシリコン電界エミッタの商業的使用を妨げてきた。
【0012】
研究努力が、電界エミッタ用の表面処理及び被覆を探す際に、より低い電圧上昇、より高い放出電流密度、より低いノイズ、及び改善された安定性についてそれらの性能を改善するために拡大されてきた。これらの処理は、エミッタ先端を耐火金属、ケイ化物、炭化物、ダイヤモンド等で被覆することを含んでもよい。しかしながら、これらの被覆材料は、通常、平滑で均一な被覆表面を形成する際に製造プロセスによって制限され、及び/又は被覆表面上に形成された酸化物層の影響を受けて、追加のエネルギ障壁を形成することが多い。これらの理由から、被覆されたシリコン電界エミッタは、冷電子源として未だ実用化されていない。
【0013】
最近、光子利用電子放出が研究されている。ランプ及びレーザ等の光源由来の光子エネルギは、電子放出を更に向上させ得、これは、高いビーム電流、高い輝度、経時的に一定である強度、及びビーム内での電子運動エネルギ分布の小さいFWHM(半値全幅)をもたらすことがある。更に、光ビームの変調が用いられて、結果として生じる電子ビームを変調させてもよい。ほとんどの研究は、これまで金又はタングステン等の金属ナノ先端からのレーザ駆動放出に集中されてきた(例えば、非特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】米国特許出願公開第2006/0001360号
【文献】米国特許出願公開第2004/0124365号
【文献】国際公開第2017/031004号
【非特許文献】
【0015】
【文献】P.D.Keathley、A.Sell、W.P.Putnam、S.Guerrera、L.Velasquez-Garcia、及びF.X.Kartner、「Strong-field photoemission from silicon field emitter arrays」、Ann.Phys. 525、144-150、2013
【文献】M.R.Bionta、S.J.Weber、I.Blum、J.Mauchain、B.Chatel、及びB.Chalopin、「Wavelength and shape dependent strong-field photoemission from silver nanotips」、New J.Phys.18、103010、2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
そのため、必要なものは、従来技術の限界のうちの一部又は全部を克服する電子源である。特に、必要とされるものは、シリコンベースの電界エミッタ構造の広範な商業的使用を以前から妨げてきた負の側面のうちの少なくともいくつかを回避しつつ、シリコンベースの電界エミッタの有望な態様(すなわち、小さいエミッタサイズ、低い電力消費、高い輝度、高い電流密度、高い速度、及び長いエミッタ寿命)を提供する電子源である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、光子ビームを利用して、シリコン型電界エミッタカソードを有する電界エミッタから放出された電子ビームの放出電流を制御する光変調式電子源を目的とする。電界エミッタカソードは、出力(第1)面上でエッチング又は別方法で処理されることにより、放射先端を有する一体的突出部を提供するpドープ又はnドープシリコン基板を含む。電界エミッタは、また、電界エミッタカソードに隣接して配置され、開口部を含む少なくとも1つの電極(例えば、抽出器、及びサプレッサ、ゲート/制御電極、集束電極のうちのゼロ以上)を含む。いくつかの実施形態では、抽出器は、放出先端の高さの約±300nm以内の高さに配置され、電界エミッタカソードに対して約30V乃至200Vの正電圧に維持され、それにより、ドープシリコン基板内の電子が、電界エミッタカソードと抽出器との間に生成される印加電界によって放出先端に向かって誘引される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の追加電極は、放出先端の下流に動作可能に配列されていることにより、放出された電子(すなわち、量子力学的トンネル効果によって放出先端面/界面でのポテンシャル障壁を克服するのに十分なエネルギを有する電子)が、これらの追加電極の開口部を通過する電子ビームに集束させられるか、又は別方法でそれを形成する。本発明の一態様に従うと、光子ビーム源(例えば、レーザ又は別の光源、任意選択の変調器及び任意選択の光光学システム)が、シリコンの禁制帯よりも大きいエネルギを有する光子ビーム(すなわち、約1μmよりも短い波長を有する光子)を生成し、そして光子を放出先端に隣接する(すなわち、その直上の及び/又はその近傍の)電界エミッタカソード上に誘導するように構成されており、それにより、光子のうちの少なくともいくつかは、電界エミッタカソードの関連するシリコン原子によって吸収され、それで電界エミッタカソードの伝導帯内の電子数を増加させることによって、(すなわち、光利用電界放出によって)電子ビームの放出電流を増強する。すなわち、シリコンによって吸収された光子は、光電気効果に従って電子-正孔対を生成し、これにより、放出先端付近の電界エミッタカソード内に追加の自由電子(すなわち、光電子)を生成する。これらの光電子は、印加電界によって生成された自由電子と結合し(すなわち、それに付加され)、これにより、電界エミッタの伝導帯の自由電子の総数を(すなわち、光子ビームが存在しない場合に存在するであろう自由電子の数と比較して)増加させることによって電子ビームの放出電流を増大させる。本発明の別の一態様に従うと、電子源はまた、制御回路を含み、該制御回路は、電子ビーム源から電界エミッタカソードまで伝送された光子ビームの強度を制御する(例えば、選択的に増加又は減少させる)ことによって、電界エミッタカソードによって生成された電子ビームの放出電流量を変調させるように構成されている。例えば、放出電流を増加(又は減少)させるために、制御回路は、光子ビーム源を制御して、(例えば、対応する光子ビーム源制御信号によって)光子ビームの強度を増加(又は減少)させ、これにより電界エミッタカソードから放出される電子数を増加(又は減少)させる。この配列によって、本発明は、シリコンベースの電界エミッタ構造の広範な商業的使用を以前から妨げてきた負の態様のうちの少なくともいくつかを回避しながら、シリコンの有用な性質(すなわち、高純度/低欠陥材料、長い電子再結合時間、及び成熟したシリコンベースの製造プロセス)及び電界エミッタの魅力的特徴(すなわち、小さいエミッタサイズ、低消費電力、高輝度、高電流、高速、及び長エミッタ寿命)を有する電子源を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、1つ又は複数の酸化防止被覆層が、1つ又は複数の被覆層が少なくとも放出先端を全体的に連続的に覆うように電界エミッタカソードの少なくとも一部分上に配設され、これによって、従来のシリコンベースの電界エミッタ上での酸化物の形成に関連する問題を低減又は排除する。好適な実施形態では、従来のシリコンベースの電界エミッタと関連する問題は、電界エミッタカソード及び1つ又は複数の被覆層を作製するための十分に確立された半導体製造(例えば、標準CMOS)技術を利用することによって更に軽減される。一実施形態では、シリコン基板は、約10nm乃至数百μmの範囲内の厚さを有する本質的に欠陥のない単結晶(単一結晶)シリコンである。二酸化ケイ素又は窒化ケイ素マスク材料は、頂/出力(第1)面上のPECVDによって堆積させられ、次いでフォトリソグラフィを使用してパターン化される。ドライエッチング(RIE、ICP、及びECR等)、ウェットエッチング、又はドライエッチングとウェットエッチングの組合せが使用されて突出部を形成し、これは、丸みを帯びたウィスカ(丸みを帯びた先端を有する円筒状柱)、丸みを帯びた円錐、又は角錐等の様々な形状を取り得て、この場合、それぞれのケースにおいて、突出部の放出先端は、1nm乃至50nmの範囲内の横方向寸法を有する。保護層は、次いで、標準的なCMOS堆積技術を使用して、突出部の少なくとも放出先端部分を覆って全体的に形成される。一実施形態では、被覆層は、実質的に純粋なホウ素、ホウ化物(例えば、六ホウ化ランタン)、又は炭化物(例えば、炭化珪素、炭化ハフニウム、又は炭化ホウ素)等の酸化防止材料を含み、そして1nm乃至10nmの厚さを有する。別の実施形態では、被覆層は、窒化ホウ素、窒化チタン、窒化タンタル、又は金属シリサイド等の別の材料を含む。標準的なCMOSプロセスを使用して一体型電界エミッタ突出部及び被覆層を作製することは、エミッタの出力面を形成してもよい突出部の放出先端及び周囲部分を連続的に覆うように被覆層を確実に形成することを容易にし、これによって、電界エミッタカソードが、下にあるシリコン材料の酸化を最小化又は防止するための被覆層を含む電界エミッタによる電界増強を利用することによって、二酸化シリコンの比較的広い禁制帯及び低い導電率を回避することを可能にする。
【0019】
一実施形態では、光子ビーム源は、可視又はUV波長範囲(すなわち、250nm乃至700nm)内の波長で光子ビームを形成する光子を生成するように構成された光源(例えば、レーザ又は別の照明デバイス)を含み、それによって、光子ビーム内の光子のかなりの部分が、放出先端の表面付近に(すなわち、その約1μm以内に)位置するシリコン原子によって吸収され、これにより、電界エミッタカソードからの放出に利用可能な電子の数を更に向上させる。いくつかの実施形態では、光子ビーム源はまた、集束装置(例えば、レンズ及び/又はミラーを含む集束光学系)と、光源と電界エミッタカソードとの間の光子ビームの経路内に配設されている任意選択の光変調デバイスと、を含む。集束光学系(例えば、レンズ、ミラー又はそれらの組合せ等の1つ又は複数の光学要素)は、光源から放出された光子を誘導して集束させることによって光子ビームの経路を効果的に画定することにより、光子のうちの少なくとも一部がエミッタ突出部に当たる。一実施形態では、集束装置は、曲線(例えば、放物線)ミラーを含み、該ミラーは、電界エミッタの電極の少なくとも1つに形成された開口部を通して光子ビームを誘導するように(すなわち、光子ビームが、光源から電界エミッタカソードまで、電界エミッタカソードから放出された電子ビームの実質的に同じ経路に沿っているが、方向は反対に方向転換されるように)構成されている(すなわち、配置及び整形されている)。光変調デバイス(例えば、電気光学変調器又は音響光学変調器)は、光子ビームの経路内に配設され、そして、例えば、印加された光変調器制御信号に従って放出された光子束の一部を遮断することによって、光子ビームを変調させるように機能する。
【0020】
上記のように、制御回路(コントローラ)は、選択された変調方式に従って、光子ビーム強度を調整する(例えば、増加又は減少させる)ために光子ビーム源を制御することによって、シリコン型電界エミッタカソードから放出された電子ビームを変調させるように構成されている。好ましい実施形態では、電子源は、モニタ(すなわち、測定デバイス又はセンサ)を更に含み、該モニタは、動作中のそれぞれの時点において電子ビームの放出電流を感知又は別方法で測定することと、対応する放出電流測定値を生成して制御回路に伝送することと、を行うように構成されている。一実施形態では、モニタは、電子ビームに隣接して(すなわち、電界エミッタカソードの下流に、例えば、集束電極の開口部に隣接して又はアノード上のいずれかで)配設されている。いくつかの変調方式では、制御回路は、電子ビーム電流を調整又は維持するためのフィードバック信号として放出電流測定値を利用する。例えば、変調方式が、特定の電子ビーム電流で電子ビームを維持することを含む場合、放出電流測定値の変化は、例えば、電界エミッタ表面での酸化物の形成に起因したエミッタの仕事関数の変化に起因して、電界エミッタの固有の電流変動を反映することがある。かかる固有の電流変動が生じる場合、制御回路は、放出電流測定値に対する対応する変化を検出して、1つ又は複数の光子ビーム源制御信号によって光子ビーム強度に対する補正調整に影響を与える。例えば、放出電流測定値が、目標レベルからの電子ビーム電流の偏差(増加又は減少)を示す場合、制御回路は、電子ビームの放出電流が目標レベルに戻ったことを放出電流測定値が示すまで、光子ビーム強度の対応する調節(減少及び/又は増加)に影響を及ぼすように光源又は光変調デバイスのいずれかを制御することによって補償する。偏差が検出される毎にこの工程を反復することによって、制御回路は、光子ビーム源を利用して、放出電流をほぼ一定レベル(すなわち、目標レベル)に維持する。制御回路によって実施される別の変調方式が、例えば、異なる時点で放出電流を異なる値に調整する(例えば、高速走査のためのより高い電流レベルと低速走査のためのより低い電流レベルとの間で周期的に切り替える)、又は電子ビームの送受を制御する(すなわち、電子ビームをオン/オフする)ことを含んでもよい。高/低又はオン/オフ変調方式のいずれにおいても、制御回路によって動作可能に制御される切替え可能(調整可能)光源を提供することによって、電子源は、電子ビームの放出電流の変調を促進することにより、切り替えられた光子ビーム強度と時間的に合せて追従する。
【0021】
特定の一実施形態では、電子源は、オン/オフ変調方式を実施するように構成されており、電子ビームの変調が、最小/ゼロ(オフ)電流レベルと選択された非ゼロ(オン)電流レベルとの間で電界エミッタカソードからの電子放出を切り替えるために、光子ビーム源をトグルして電子放出をトグルすることを含む。光子ビームがオフにされたときにゼロ(又はゼロ付近)の電子放出を達成するために、電界エミッタカソードは、pドープシリコン基板上に作製され、被覆層は、p型材料(例えば、ホウ素)であり、電極は、放出が生じる電界強度直下に維持されている放出先端(すなわち、電界エミッタカソードと電極/アノードとの間)での電界を生成するように(すなわち、電界が、放出先端付近のエミッタカソードの伝導帯がカソードのフェルミレベルよりちょうど上に維持されて、電界エミッタカソードからの電子の放出を防止又は最小化されるように)構成されている。具体的には、電界は、第1期間中、電界エミッタカソードの放出先端付近の伝導帯が、電界エミッタカソードのフェルミレベルよりも高い電圧レベルに維持されるように生成され、これにより、光子ビームがオフ又は最小化されたときに、放出先端からの電子の放出を最小化する。これとは対照的に、第2期間中(すなわち、光子ビーム源が作動させられるとき)、少なくともいくつかの光子が、電界エミッタカソードの関連するシリコン原子によって吸収され、これによって放出先端に向かって強く誘引されている、キャリアバンド内の光電子を生成し、それにより、これらの光電子のうちの多くは、放出先端から放出されて、比較的高い(第2)電流で放出先端からの電子ビームの光利用電界放出を生じさせる。このように、この実施形態は、光子ビーム源をオン/オフすることによって(すなわち、抽出器によって印加される電界の変化を必要とせずに)完全にゼロ(又は実質的にゼロ)の電子電流と非ゼロの電子電流との間で迅速に切り替えられ得る電流源を提供し、これにより切換え工程を大幅に簡略化する。勿論、オン/オフ変調方式は、モニタ(上記の)を利用することによって更に向上されることにより、非ゼロ電子電流が所望のレベルに維持されることを保証してもよい。対照的に、高/低変調方式を実施する電子源は、ゼロ電流放出の必要性を排除することによって別の構成を利用してもよい(例えば、カソードシリコンはn型ドープされているので、光子ビームが存在しない場合であっても、多数の電子が放出電流を形成するのに利用可能である)。
【0022】
本開示の様々な代替実施形態に従うと、様々な追加の層及び構造が、開示された電子源におけるエミッタ構造の有利な品質を更に高めるために利用される。いくつかの実施形態では、抽出器は、基板の頂/出力面上に配設されて電界エミッタ突出部を取り囲むように(すなわち、抽出器は、誘電体層によって基板の頂/出力面から分離されるように)パターン化されている誘電体(電気絶縁性)層上に形成されている。一実施形態では、誘電体層は、基板面より上の放出先端の高さよりも小さい厚さで形成され、それによって、その後に形成された抽出器の公称高さは、放出先端高さの所望の約±300nmの範囲内に確実に配置される。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のゲート層又は制御電極が抽出器を覆って形成されることにより、放出先端における電界を更に制御し、放出電流の高速で正確な制御を達成する。複数のゲート層が実施される場合、絶縁層が、それぞれのゲート層同士の間のスペーサとしてを使用される。更に別の一実施形態では、多重電子ビーム源(例えば、電界エミッタアレイFEA)が、エミッタの出力面上に2次元周期性パターンで配列された多重電界エミッタ突出部を有するシリコン電界エミッタカソードを含み、この場合、それぞれの電界エミッタ突出部は、電界の存在下で電子を放出し、上記の方法で光子ビームを受取るように構成されている。
【0023】
単一結晶シリコン基板上に形成された電界エミッタと、電界エミッタの頂部に配設された第1層と、電界エミッタに向かって誘導される光子ビームと、を使用することによって、本開示は、シリコンの有利な品質(すなわち、高純度/低欠陥材料、長電子再結合時間、及び成熟したシリコンベースの製造プロセス)を提供し、シリコンベースの電界エミッタ構造の広範な商業的使用を以前から妨げてきた負の態様のうちの少なくともいくつかを回避しながら、電界エミッタの魅力的特徴(すなわち、小エミッタサイズ、低消費電力、高輝度、高電流、高速、及び長エミッタ寿命)を可能にすることができる。特に、かかるエミッタからの電子放出の安定性が、放出電流を制御するために光を使用することによって改善され得る。
【0024】
本開示の実施形態に従うと、本明細書に開示された電子源は、検査、計測、及び再調査走査電子顕微鏡(SEM)に組み込まれる。SEMは、電子源と、電子光学系と、検出器とを含む。電子光学系は、1次電子ビームを試料上に縮小して集束させるように構成され得、検出器は、試料から後方散乱電子及び2次電子の少なくとも1つを検出するように構成され得る。電子源は、試料に向かって誘導される1次電子ビームを生成する。電子光学系は、試料上に1次電子ビームを縮小して集束させる。電子光学系はまた、試料の領域を横切って1次電子ビームを走査し得る偏向器を含む。1次電子ビームが試料に当たると、試料は、1次電子ビームからの電子のうちの多くを吸収するが、電子のうちの一部(後方散乱電子)を散乱させる。吸収されたエネルギは、X線及びオージェ電子と共に試料から2次電子を放出させる。2次電子は、2次電子検出器によって収集される。後方散乱電子は、後方散乱電子検出器によって収集されてもよい。
【0025】
本開示は、添付図面の図に例として示されているが、限定として示されていない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一例示的実施形態に従う例示的な光変調式電子源を示す簡略斜視図である。
【
図2】本発明の一例示的実施形態に従う、シリコン基板上に形成された被覆シリコン電界エミッタカソードを示す断面側面図である。
【
図3】本開示の一代替的実施形態に従う簡略型電子源を示すブロック/回路図である。
【
図4】本開示の別の一代替的実施形態に従う部分簡略型電子源を示すブロック/回路図である。
【
図5A】本発明の別の一実施形態に従う、オン/オフ変調方式を実施する電子源の動作中の電界エミッタカソードを示す断面側面図である。
【
図5B】本発明の別の一実施形態に従う、オン/オフ変調方式を実施する電子源の動作中の電界エミッタカソードを示す断面側面図である。
【
図6】本発明の別の一例示的実施形態に従う、シリコン基板上に形成された多重電界エミッタカソードを示す断面側面図である。
【
図7】本発明の別の一例示的実施形態に従う電子源を示す図である。
【
図8】本発明の一実用的実施形態に従う、電子源、電子光学系、後方散乱型電子検出器、及び2次電子検出器の一実施形態を組み込む例示的SEMを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
特許請求された主題が、特定の実施形態に関して説明されるけれども、本明細書に記載された利点及び特徴の全てを提供しない実施形態を含む別の実施形態もまた、本開示の範囲内にある。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造的、論理的、プロセスステップ、及び電子的変更がなされてもよい。従って、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ規定される。
【0028】
以下の説明は、当業者が、特定の用途及びその要件に関連して提供されるような開示内容を作成し、使用することを可能にするために提示される。本明細書で使用されるように、「頂部」、「底部」、「上に」、「下に」、「上の」、「上へ」、「下へ」、「下向きに」等の方向性用語は、説明目的のために相対位置を表し、絶対座標系を示すことを目的としない。好ましい実施形態への様々な修正が、当業者には明らかであり、本明細書で規定された一般原理は、別の実施形態に適用されてもよい。そのため、本開示は、図示され説明された実施形態に限定されることを意図されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴と整合する最も広い範囲に一致されるべきである。
【0029】
図1は、本発明の例示的な実施形態に従う、電子ビーム112を生成する例示的な光変調式電子源100を示す。電子源100は、概して、電界エミッタカソード120と、抽出器(電極)130と、光子ビーム源140と、制御回路150と、を含むシリコンベースの電界エミッタ110を含む。図に描かれた様々な要素(例えば、
図1の電界エミッタカソード120及び抽出器130)を表す構造の特定の形状及び比率は、単に説明のために選択され、特定の形状又は寸法を伝えることは意図されない。
【0030】
電界エミッタカソード120が、シリコン基板121上に作製され、一体的エミッタ突出部124を含む。シリコン基板121は、頂/出力(第1)面122及び反対側の底部(第2)面123を有するp型又はn型ドープシリコンの層を含む。シリコン基板121からシリコン材料を除去することによって形成/作製されたエミッタ突出部124は、頂面122に一体的に接続された基部125と、頂面122から離れる方に延在する本体部分126と、本体部分124の遠位端に配設された放出先端127と、を含む。
【0031】
抽出器(電極)130は、電界エミッタカソード120に隣接して固定的に配設されており、シリコン基板121内の自由電子(例えば、電子113-1)を放出先端127に向かって誘引するように機能する電界Eを生成するように構成されている。抽出器130は、電界エミッタカソード120に対して(例えば、電圧源V
DCによって示されるように)正電圧に維持されて、源100の動作中に電界Eを生成する導電構造132を含む。放出先端面/界面におけるポテンシャル障壁を克服するのに十分なエネルギを有する所定の自由電子113-1が放出先端127に到達すると、それは、表面/界面を(例えば、量子力学的トンネリングによって)通過し、電界エミッタカソード120から出て(から放出されて)、放出電子113-3になる。電子ビーム112は、放出電子113-3が十分に高い速度で生成されたときに生成され、電子ビーム112の放出電流Ieは、単位時間当たりの放出電子113-3の数によって規定される。抽出器130は、中央開口部134を画定する環形状導電構造132を有し、そして、中央開口部134の内縁が電子ビーム112の放出経路又は突出部124の部分のいずれかを囲むように配列されるように、例示目的で示されている。すなわち、抽出器130は、放出先端127の下流に(すなわち、
図1に示すように、頂面122から放出先端127よりも更に遠く離れて)配置されることにより、
図1の一点鎖線矢印によって描かれた電子ビーム112の経路は、開口部134を通過する。逆に、抽出器130が、放出先端127と等しい距離に又はそれよりも頂面122により近くに(例えば、
図2に示し、以下に論じるように)配置されると、放出先端127は、開口部134とほぼ同一平面にあってもよく、又は開口部134を通って突出してもよく、この場合、自由電子113-1及び113-2は、依然として突出部124内に収容されながら、開口部134を通過する(すなわち、放出先端127から出る前に、放出電子113-3になる)。
【0032】
光子ビーム源140は、電界エミッタカソード120上に強度Ipを有する光子ビーム142を生成して誘導するように構成されている。本発明の一態様に従うと、光子ビーム142は、シリコンの禁制帯よりも大きいエネルギを有する(すなわち、光子ビーム142を形成する光子143が、約1μmよりも短い波長λpを有するような)光子143を含み、それにより、少なくともいくつかの光子143が、電界エミッタカソード120の関連するシリコン原子によって吸収される。光子ビーム142は、(例えば、以下で説明する光学要素を使用して)放出先端127に隣接している(すなわち、その直上及び/又はその付近にある)電界エミッタカソード120の表面部分に誘導され、それによって、光子143の少なくともいくつかは、電界エミッタカソード120の関連するシリコン原子によって吸収される。
図1に示すように、電界エミッタカソード120によって吸収されたそれぞれの光子143は、光電効果に従って電子正孔対EHPを作成し、それによって、電界エミッタカソード120内の光電子113-2を放出し、電界エミッタの伝導帯内の自由電子の数を増加させ、それによって放出された電子の数を増加させて、電子ビーム112の放出電流Ieの対応する増加を生じさせる。すなわち、光子ビーム142が存在しない状態で、電界エミッタの伝導帯内の自由電子113-1の数は比較的少なく、これにより、電子ビーム112は、比較的低い放出電流Ieを有する。十分な強度Ipによって生成される場合、光子ビーム142は、電界エミッタの伝導帯内の自由電子の数を増加させることによって(すなわち、光電子113-2を有する伝導帯内に自由電子113-1を補充することによって)、光利用電界放出(すなわち、強化/増加放出電流Ieによる電子ビーム112の生成)を促進する。
【0033】
本発明の別の一態様に従うと、制御回路150は、光子ビーム142の強度Ipを調整するように光子ビーム源140の動作を制御することによって、電子ビーム112の放出電流Ieを変調させるように構成されている。いくつかの実施形態では、制御回路150は、公知の技術に従って作成されて構成されたプロセッサ、電界プログラマブルデバイス、又は特定用途向け集積回路であることにより、それは、選択された電子ビーム変調方式を実施するように機能し、選択された変調方式に従って1つ又は複数の光子ビーム源制御信号PBSCを生成し、光子ビーム源制御信号PBSCを光子ビーム源140に送信するように機能する。様々な変調方式が以下に記載されており、そのうちの1つが、高電流レベルと低電流レベルとの間で電子ビーム112の放出電流Ieを周期的に切り換えることを含む。この例では、低電流レベルから高電流レベルに放出電流Ieを増加させるために、制御回路150は、光子ビーム源140に光子ビーム142の強度Ipを増加させる第1値を有する光子ビーム源制御信号PBSCを生成/伝送し、それによって、上記態様で放出電流Ieのそれに対応する増加を生じさせる。逆に、高電流レベルから低電流レベルに放出電流Ieを減少させるために、制御回路150は、光子ビーム源140に光子ビーム強度Ipを減少させる第2値を有する光子ビーム源制御信号PBSCを生成する。
【0034】
図2は、例示的な実施形態に従う、電子源の電界エミッタ110Aの断面図である。電界エミッタ110(
図1に示す)と本質的に同じである電界エミッタ110Aの特徴は、同じ参照番号を用いて特定される、つまり、
図1及び2の両方を参照して言及された対応する特徴の詳細が、電界エミッタ110及び110Aの両方に適用可能であることに留意されたい。参照番号の最後の接尾辞「A」は、関連する特徴が異なり得ることを示す。この規則は、
図3~8を参照して以下に説明する別の実施形態において使用され、この場合、異なる添え字は、先に説明した実施形態との1つ又は複数の相違を示す。
【0035】
電界エミッタカソード120Aは、上向き出力(頂)面122上に配設された電界エミッタ突出部124を有するシリコン基板121上に形成されている。好ましい実施形態では、シリコン基板121は、約100nm乃至数百μmの範囲内の厚さTsを有する本質的に無欠陥の単結晶シリコン(すなわち、シリコンの単結晶)である。いくつかの実施形態では、シリコン基板121は、約1019cm-3未満(すなわち、約0.005Ωcm以上の抵抗率)のドーピングレベルでドープしたp型である。ドーパント濃度の増加に伴って少数キャリア寿命及び拡散距離が減少するので、シリコンが非常に薄い場合(例えば、基板厚さTsが約1μmより薄い場合)には、約1019cm-3よりも高いドーパント濃度が使用されてもよく、一方、基板厚さTsが約1μmよりも大きい場合には、約1019cm-3よりも低いドーパント濃度が選ばれてもよい。10μm以上の厚さTs等の数ミクロンよりも厚いシリコンについては、長いキャリア寿命及び低い暗電流を確保するために、約1014cm-3未満等のずっと低いドーパント濃度が選ばれてもよい。一代替的実施形態では、シリコンは、約1015cm-3以上のドーパント濃度でドープしたn型であってもよい。例えば、シリコンは、約1015cm-3乃至1019cm-3のドーパント濃度でドープしたn型であってもよい。n型ドーピングを有するシリコンは、pドープ基板よりも伝導帯においてより多い利用可能な電子を有し、これは放出先端127に向かって誘引されて所望の放出電流を形成してもよい。nドープ及びpドープ基板の両方において、以下に説明するように、光によって電界エミッタを照明することによって、伝導帯内の電子の数を増加させることがある。pドープ基板は、光子ビーム強度がゼロ又は低い場合に、伝導帯内の電子の数が非常に低いものであるので、変調が大きいことが望ましいとき好ましいことがあり、光子ビーム強度が増加させられるときに、伝導帯内の電子の数が相対的に増加することになる。nドープ基板は、伝導帯内の電子の数が多いので、高い電子放出電流が望ましいときに好ましいことがある。この場合、達成可能な電流調整の相対範囲は、pドープシリコンに対するよりも小さいことがあるけれども、電流制御の範囲は、一般に、電子放出におけるノイズを低減又は相殺するのに十分である。
【0036】
一実施形態では、電界エミッタ突出部124は、54.7°に近い傾斜角θを生じさせる異方性エッチングによって、ピラミッド形状(例えば、
図1に示すような)で形成されるが、その理由は、その角が単結晶シリコン内の(100)面と(111)面との交差に対応するからである。鋭利な電界放出先端が望まれる場合、低温から中程度の温度(約950℃未満)までで実行されてもよい酸化先鋭化が、連続被覆層129を堆積又は形成する前に、使用されてもよい。一例示的実施形態では、例示的な突出部124が、2乃至5μmの範囲内の基部幅Wbと、2乃至10μmの範囲内の基部先端間の高さH1とを有する。鋭利な突出部124の遠位端(頂点)に形成された放出先端127は、原子スケール長で、例えば(100)面に実質的に平行なシリコン結晶基板121の結晶面に実質的に平行な面等の実質的に平坦な領域を含んでもよい。
図2では、放出先端127の、直径等の特徴的な横寸法が、Detによって示されている。好ましい一実施形態では、Detは、約1nm乃至約50nmであってもよい。例えば、Detは、約50nm未満又は約20nm未満であってもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、電界エミッタ突出部124が、丸みを帯びたウィスカ(丸みを帯びた先端を有する円筒柱)又は丸みを帯びた円錐(図示せず)等の非角錐形状を使用して形成されてもよい。ほぼゼロ度の半角を有する丸みを帯びたウィスカ又は丸みを帯びた円錐が、0度よりもずっと大きい半角を有する丸みを帯びた円錐又は角錐と比較して、より高い電界増強を提供する。しかし、丸みを帯びたウィスカは、同様の高さの丸みを帯びた円錐又は角錐よりも劣る熱伝導体である。したがって、通常、電界増強と熱安定性との間のトレードオフが存在する。
【0038】
電界エミッタカソード120Aは、少なくとも放出先端127を全体的に連続的に被覆する(すなわち、開き又は孔がない完全な層を形成する)酸化防止被覆層129を含む。
図2の例示的な実施形態では、被覆層129は、本体部分126及び放出先端127の全表面が被覆層129によって全体的に連続的に被覆されるように、突出部124の全体を覆って配設された連続層として描かれている。別の実施形態(図示せず)では、被覆層129は、突出部124の遠位端のみを覆って(すなわち、突出部124の遠位端に隣接して位置する本体部分126の少なくとも一部分で放出先端127の全体を覆って)選択的に形成されてもよい。更に別の実施形態(例えば、
図3に示すものような)において、被覆層129は、頂/出力面122を覆って延在してもよい。例示的な実施形態では、隣接する抗酸化被覆層129は、実質的に純粋なホウ素、炭化ケイ素、ホウ化物材料(六ホウ化ランタン等)、炭化物材料(炭化ハフニウム等)、金属シリサイド(チタンシリサイド等)、半金属窒化物(窒化チタン又は窒化タンタル等)、及び半電導性窒化物(窒化ホウ素等)のうちの1つを含む。放出先端127を連続的に覆うように被覆層129を形成することは、被覆層129が、放出先端127を酸化に対して気密に封止することを意味する。被覆層129が電子放出に対する強い障壁を形成することなく良好な気密封止を確実に提供するために、被覆層129は、約1nm乃至10nmの厚さTclで形成される。全ての自然酸化物は、例えば、被覆層129を堆積させる前に、湿式洗浄、続いてインサイチュでの熱水素洗浄を行うことによって、シリコン表面から除去されてもよい。ホウ素によってシリコンを被覆する方法の詳細が、Sarubbiらの「Chemical vapor deposition of a-boron layers on silicon for controlled nanometer-deep p
+-n junction formation」(J.Electron.Material,vol.39,pp.162-173,2010)、並びにChuangらへの米国特許第10,133,181号及び同第10,748,730号に記載されており、これらのすべては、参照により本明細書に組み込まれる。炭化ケイ素によってシリコンエミッタを被覆する方法の詳細が、M.Nagaoらの「Damageless vacuum sealing of Si field emitters with CHF
3 plasma treatment」(J.Vac.Sci.Technol.B,Vol.19,No.3,May/Jun 2001,pp.920-924)、J.Liuらの「Modification of Si field emitter surfaces by chemical conversion to SiC」(J.Vac.Sci.Technol.B,Vol.12,No.2,Mar/Apr 1994,pp.717-721)、及び2019年9月11日にChuangらによって出願された、「Electron Gun and Electron Microscope」と題する米国特許出願公開第2020/0118783号(代理人整理番号KLA-076(P5403))に見られ得る。これらの文献の全てが、参照により本明細書に組み込まれる。別の材料が、必要に応じて、CVD、プラズマ強化CVD又はPVDプロセスによってシリコン上に被覆されてもよい。
【0039】
現時点で好ましい実施形態に従うと、電界エミッタ120Aは、標準的なCMOS製造プロセスを使用して製造される。例えば、基板121は、PECVDによって堆積させられたマスク材料として、二酸化シリコン又は窒化シリコンを用いるエッチングについて調製されてもよく、フォトリソグラフィが、次いでマスク材料をパターン化するために使用され得る。次いで、ドライエッチング(RIE、ICP、ECR等)、ウェットエッチング、又はドライエッチングとウェットエッチングの組合せが使用されて、エミッタ突出部124を形成し得る。通常、鋭利な電界エミッタ先端が望まれる場合、低温から中程度の温度(例えば、約950℃未満)で行われる酸化鮮鋭化が被覆層129を形成する前に使用されてもよい。被覆層129は、次いで標準的なCMOS堆積プロセスを使用して、エミッタ突出部124の露出部分を覆って堆積させられてもよい。
【0040】
再び
図2を参照すると、電界エミッタカソード120Aは、抽出電極(又はゲート電極)130Aを含み、該電極は、放出先端127の高さ付近に維持され、誘電体層128によって基板121に取り付けられ、そして放出電流Ieの高速で正確な制御を容易にするように構成されている。好ましくは、頂面122上方の抽出器130Aの公称高さH2は、放出先端127の基部先端間の高さH1に対して約±300nmである。したがって、誘電体層128は、およそ放出先端127の高さ以下である。好ましくは、誘電体層128の厚さT
Dは、放出先端127の高さH1の約1/10よりも大きい。好ましくは、エミッタ先端127と、開口部134Aを画定する抽出器130Aの内側縁との間の水平離隔距離D3は、約100nm乃至1μmである。誘電体層128は、SiO
2又はSi
3N
4等の1つ又は複数の誘電体材料を含んでもよい。誘電体層128は、電界エミッタ突出部124Aを囲む頂面122上に配設されているけれども、必ずしも電界エミッタ突出部124を覆う必要がない。別の一例では、誘電体層128は、部分的に電界エミッタ突出部124を覆っている。好ましい実施例では、抽出器130A及び誘電体層128は、PVD、CVD、又はALD堆積法を使用する等の標準的なCMOS製造技術によって製造される。抽出器130Aは、金属又はポリシリコンを含んでもよい。最も簡単なエミッタ設計は、抽出器130Aとして構成された1つのみのゲート電極が使用される3極管構成であるが、別の構成も可能である。抽出器130Aは、典型的には誘電体層128の頂面上に形成され、そして基板121上に堆積させられた1つ又は複数の絶縁層を含む。2つ以上のゲート層(図示せず)が、より複雑なエミッタ設計に利用されてもよく、この場合、多重誘電体層が順次形成されたゲート層同士の間のスペーサとして使用される。かかる実施形態では、それぞれのゲート電極は、異なる機能を有する。一方の電極のみが抽出器として作用し、別のゲート(又は複数のゲート)が、例えば、電子ビームの発散角を制御するために使用され得る。抽出器130Aを放出先端127に近接して設置することは、低電圧(約30V乃至約200Vの電圧等)から十分に強い電界を生じさせることを可能にし、これは、エミッタの寿命を減少させ得る高エネルギ性イオンによるエミッタのバックボンバードメントを最小化するという利点を有する。抽出器130Aは、放出先端127に近接して配置されているので、抽出器130A内に画定された開口部134Aは、放出先端127に正確に整列させられるはずである。例えば、開口部134Aの中心は、開口部134Aの直径の約5%以下の範囲内で放出先端127に整列させられてもよい。1つ又は複数のゲート(電極)を含む電界エミッタカソード構造、及びかかる構造を製造する方法の詳細が、H.shimawakiらの「Laser-induced Electron Emission from p-type Silicon Emitters」(Technical Digest,2014 27
th International Vacuum Nanoelectronics Conference,P2-27)、A.Koikeらの「Field Emitter Equipped with a Suppressor to Control Emission Angle」(IEEE Electron Device Letters,Vol.34,No.5,May 2013,pp.704-706)、及びM.Nagaoらの「Fabrication of a Field Emitter Array with a Built-in Einzel Lens」(Japanese Journal of Applied Physics,Vol.48,2009,06FK02)に見ることができる。これらの文献の全ては、参照により本明細書に組み込まれる。
【0041】
図3は、本発明の別の一実施形態に従う電子源100Bを示す。電子源100Bは、電界エミッタ110Bと、光子ビーム源140Bと、制御回路150Bと、を収容するハウジング111を含む。
【0042】
ハウジング111は、低圧チャンバ114の周囲に形成され、イオンポンプ又はゲッタポンプ等の真空ポンプ115を含み、該真空ポンプは、ハウジング111の外側よりも高い真空状態(すなわち、より低い圧力)の下にチャンバ114を維持するように構成されている。電界エミッタ110Bは、チャンバ114内に配設され、そしてエミッタカソード120Bと、開口部134B-1を有する抽出器130B-1と、開口部134B-2を有するアノード130B-2と、を含む。電界エミッタカソード120Bは、出力(頂)面122上に配設された電界エミッタ突出部124を有するシリコン基板121上に形成され、被覆層129が、突出部124の表面を少なくとも覆って形成されている。抽出器130B-1が、頂面122を覆って配置され、そして
図2を参照して上記したように動作するように構成されている。アノード130B-2は、放出先端127から少なくとも1mmのオフセット距離Dtaのところに配設され、そして電界エミッタカソード120Bに対して少なくとも500Vの正電圧V
DC2に維持される。電子源100Bは、関連する開口部134B-3を有する1つ又は複数の追加の任意選択の電極130B-3を更に含んでもよい。任意選択の電極130B-3は、1つ又は複数の集束電極、1つ又は複数の偏向器、非点補正装置、及び/又はビームブランカを含んでもよい。追加の電極130B-3は、アノード130B-2よりも上流(すなわち、電界エミッタカソード120B付近)に配置されているとして示されているけれども、所望の機能及び性能を達成するために必要に応じてアノード130B-2の上流又は下流に配置されてもよい。抽出器130B-1、アノード130B-2及び任意選択の電極130B-3は、放出された電子113-3が、開口部134B-1、134B-2、134B-3及び出口チャンバ114を通過して、小さい開き116を通ってチャンバ114から出る電子ビーム112Bを形成するように構成されており、該小さい開きは、それがガスのチャンバ114内への拡散を制限して、ポンプ115がチャンバ114を所望の低圧に維持することを可能にするようなサイズである。いくつかの実施形態では、電子源100Bは、電子ビーム112を集束及び/又は偏向させるように機能する磁気レンズ(図示せず)を含む。
【0043】
光子ビーム源140Bは、光源(例えば、レーザ又は別の照明デバイス)141Bと、任意選択の集束装置144Bと、任意選択の光変調デバイス145Bと、を含む。この構成において、光源141B及び光変調デバイス145Bは、ハウジング111の外側に配設されているように描かれ、集束装置144Bは、チャンバ114内に描かれている。別の実施形態では、集束装置144Bの1つ又は複数の要素が、ハウジング111の外側に配置されてもよく、又は光源141B及び光変調デバイス145Bの一方又は両方がチャンバ114内に装着されてもよい。光源141Bは、電界エミッタカソード120Bを照明する光子ビームを生成する。説明のために、光子ビームは、光子ビーム経路を画定する3つの区間を含み、該区間は、光源141Bから光変調デバイス145Bまで延在する第1光子ビーム区間142-1と、光変調デバイス145Bから窓117(又はハウジング111の壁内の別の光透過性特徴)を通って光光学系144Bまで延在する第2光子ビーム区間142-2と、光光学系144Bから電界エミッタカソード120Bまで延在する第3/終端光子ビーム区間142-3と、を備えている。一実施形態では、光源141Bは、可視又はUV波長範囲内(すなわち、250nm乃至700nm)の波長の光子143を生成するように構成され、それによって、終端光ビーム部分142-3に沿って電界エミッタカソード120B上に誘導される光子143のかなりの部分が、放出先端127の表面付近に配置されたシリコン原子によって吸収され、これにより、所定の光子ビーム強度Ipについての光電子の生成を更に向上させる。集束装置144Bは、レンズ及び/又はミラー等の1つ又は複数の光学要素と、終端光子ビーム区間142-3が電界エミッタカソード120B上に誘導されるように光子ビーム経路に沿って、光源141Bによって生成された光子143を集束及び/又は誘導する集束光学系を形成するように集合的に構成された関連する配置構造と、によって実装される。集束装置144Bは、全ての必要な集束及び誘導機能が、光源141Bによって実行される場合に省略されてもよい。光変調(LM)デバイス145B(例えば、電気光学変調器又は音響光学変調器)は、例えば、光変調制御信号LMCに応じて光源141Bと電界エミッタカソード120Bとの間で伝送される光子束を全て遮断又は迂回させることなく、或いはそれらの一部又は全部を選択的に遮断又は迂回させることによって、光子ビームを変調させる(すなわち、終端光子ビーム区間142-3が選択された強度Ip3を有する)ように構成されている。例えば、光変調制御信号LMCが「不活性化」値を有する場合、光変調デバイス145Bは、実質的に全ての光子143を電界エミッタカソード120Bへと通過させるように構成されている(すなわち、ビーム区間142-1の強度Ip1は、ビーム区間142-2の強度Ip2と実質的に等しく、これは、順にビーム区間142-2の強度Ip2と実質的に等しい)。逆に、光変調制御信号LMCが「完全活性化」値を有する場合、光変調デバイス145Bは、実質的に全ての光子143が電界エミッタカソード120Bに到達することを遮断する(すなわち、強度Ip2及びIp3が実質的にゼロである)ように構成されている。光変調制御信号LMCが「部分的活性化」値を有する場合、光変調デバイス145Bは、光源141Bによって生成された光子143の対応する部分を遮断する(すなわち、強度Ip2が光変調デバイス145Bの部分活性化レベルによって決定された量だけ強度Ip1よりも低い)ように構成されている。光変調デバイス145Bは、以下に説明するような態様で、全ての必要な光変調機能が光源141Bによって実行される場合には、省略されてもよい。電気光学又は音響光学変調器を使用する光変調の利点は、かかる変調器が数百MHz又は数GHzの周波数で変調され得ることにより、電子ビームの高速変調又は切替えを可能にすることである。これとは対照的に、1つ又は複数の電極の電気的変調が、数MHz又は数十MHzに実質的に制限されてもよく、その理由は、電極の大容量がそれらの電圧を高速で変化させるために非常に高い駆動電流を必要とするからである。
【0044】
制御回路150Bは、終端光子ビーム区間142-3の強度Ip3を制御することによって、電子源100Bから放出される電子ビーム112Bの放出電流Ieを変調させるように構成されており、これは、次に光源141B(例えば、光源制御信号LSCを用いて)及び光変調デバイス145B(例えば、光変調制御信号LMCを用いて)のうちの少なくとも1つを制御することによって達成される。一実施形態では、制御回路150Bは、上記の態様で、変調器145Bを通過した光子束の量を制御することによって、光子ビーム強度Ip3を制御する。例えば、制御回路150Bは、(例えば、変調器145Bによって遮断された光子の割合が光変調器制御信号LMCの電圧レベルに比例するような)所望の強度レベルに対応する値(例えば、電圧レベル)を有する光変調器制御信号LMCを生成して伝送する。別の実施形態では、光源141Bは、オフ(ゼロ)とフル(最大)強度レベルとの間の光源制御信号LSCに応じて調整可能である強度Ip1を有する第1光子ビーム区間142-1を生成するように構成され、制御回路150Bは、光源141Bの動作電力レベルを変更することによって光子ビーム強度Ip3を制御する(例えば、制御回路150Bは、光源制御信号LSCの電圧レベルを増加/減少させることによって光源141Bに強度Ip3を増加又は減少させる)。
【0045】
電子源100Bは、電子ビーム112Bの放出電流Ieを測定するように動作可能に配設されている少なくとも1つのモニタ160B-1及び/又は160B-2を含む。例示的な電流モニタ160B-1は、アノード130B-2に電気的に接続され、これにより、例示的なモニタ160B-1は、アノード130B-2に衝突して開口部134B-2を通過しない放出電流Ieの一部を測定するように動作可能に配設されている。アノード130B-2は、開口部134B-2が、電子源から出る電子ビーム112Bの角広がり及び直径を制限するビームストップ開口部として機能するように構成されてもよい。この場合、電界エミッタ110Bによって放出される電流の50%超等の有意な部分が、アノード130B-2によって止められてもよい。このため、160B-1によって監視される電流は、放出電流全体ではないけれども、全放出電流と強く相関しており、そして全放出電流を制御して安定化させるために使用され得る。その代替又は追加として、電流モニタ160B-2は、電界エミッタカソード120Bからの放出電流を監視する。別の実施形態では、モニタは、別の電極(例えば、電極130B-3又は開き116の下流に配設されたビームストップ電極)に接続されてもよい。モニタ160B-1及び160B-2は、放出電流Ieの測定された量によって決定される電流測定値165Bを生成するように動作可能に(公知の技術を使用して)構成されている。制御回路150Bは、上記の態様で光源141B又は光変調デバイス145Bのいずれかを制御することによって、選択された変調方式(以下で論じる)に従って、光子ビーム終端区間142-3の強度Ip3を調整するためのフィードバック信号として放出電流測定値165Bを受取って利用するように構成されている。
【0046】
上記のように、制御回路(コントローラ)150Bは、選択された変調方式(方法)に従って光子ビーム源140Bを制御することによって、電子ビーム112Bを変調させるように構成されている。1つのかかる変調方式に従って、制御回路150Bは、電子ビーム112Bを維持又は調整して、選択された目標放出電流レベルを維持するためのフィードバック信号として放出電流測定値165Bを利用する。電子源100Bを使用してこの変調方式を実施するために、制御回路150Bは、放出電流測定値165Bによって放出電流Ieを連続的に監視し、そして光子ビーム源制御信号(例えば、光源制御信号LSC又は光変調制御信号LMCのいずれか)を調整して、終端光子ビーム区画142-3の強度Ip3に補正変更を生じさせるように構成されている。このように、放出電流Ieは、例えば、放出先端127上の汚染物質によって生じたエミッタ仕事関数の変化に起因する固有の電流変動を受けることがある。例示的な一実施形態では、放出電流測定値165Bのレベル/値の減少が、かかる変化が発生したことを示す場合、制御回路150Bが、次いで放出電流測定値165Bを利用して、光源141Bに光源の出力電力を増加させる値(例えば、電圧レベル)に光源制御信号LSCを修正し、それによって、光源141Bから放出された光子ビーム区間142-1の強度Ip1を増加させ、これが、次に電子ビーム112Bの放出電流Ieを増加させる。別の例示的な一実施形態では、制御回路150Bは、減少した放出電流測定値165Bを利用して、光変調デバイス145Bに光子ビーム区間142-1の大部分が通過することを可能にさせる値に、光変調制御信号LMCを修正し、それによって強度Ip2を増加させる。両方の場合、増加した光子ビーム強度が、電界エミッタカソード120Bを通過させられ、それに対応して電子ビーム112Bの放出電流Ieを増加させる。放出電流測定値165Bに生じる変化を監視して、その後の制御信号の変化を光子ビーム源140Bに伝送するプロセスが、電子ビーム112Bの放出電流Ieが目標レベルに戻るまで反復される。
【0047】
図4は、別の一実施形態に従う部分的な電子源100Cを示す。電子源100Cは、低圧チャンバ114内に配設された電界エミッタ110Cを含み、また、
図3を参照して上記した態様で動作するように構成されている光子ビーム源(図示せず)及び制御回路(図示せず)を含む点で、電子源100B(
図3)と同様である。電界エミッタ110B(
図3)と同様に、電界エミッタ110Cは、突出部124を有するカソード120Cと、放出先端127に隣接して配設された抽出器130C-1と、放出先端127から距離Dtaのところに配置されたアノード130C-2と、上記のような態様で放出電流測定値165Cを生成する一対のモニタ160C-1及び160C-2を含む。電子源100Cは、アノード130C-2がハウジング111の下側壁に取り付けられることにより、開口部134B-2が別個の差動ポンピング開口部(すなわち、
図3に示す開き116)を必要としない点において、電子源100Bとは異なる。すなわち、開口部134C-2は、差動ポンピング開口部として、及びハウジング111から電子ビーム112Cを透過させるように、その両方で機能する。アノード130C-2を、ハウジング111の電位とは異なる電位に維持することを容易にするために、アノード130C-2は、絶縁体137によってハウジング111の下側壁に取り付けられ、これがまた、低圧チャンバ114が所望の低圧に維持されることを可能にする真空封止を維持するように機能する。
図3を参照して説明した電子源100Bと同様に、電子源100Cは、追加の電極又は磁気レンズ(図示せず)を含むように任意選択で更に構成されてもよい。
【0048】
図5A及び5Bは、別の例示的な一実施形態に従う電子源100Dの部分を示す図であり、該図において、電子ビーム112Dは、高/低又はオン/オフ変調方式に従って変調される。前出の実施形態と同様に、電界エミッタカソード120Dは、シリコン基板121D上に形成され、一体的な突出部124Dの放出先端127Dを連続的に覆う被覆層129Dを含み、アノード(電極)130Dは、放出先端127Dに電界E
Cを生じさせる正電圧レベルで電圧源V
DC3によって維持され、光子ビーム源140Dが、制御回路150D(図示せず)から受取られた制御信号に従って放出先端127D付近の突出部124D上に誘導される光子ビーム142Dを生成するように構成されている。この実施形態では、電子源100Dは、2つの異なる電子ビーム放出電流目標レベルに対応する2つの動作状態の間で周期的に切り替わり、これらは、
図5A及び5Bにそれぞれ示す2つの連続する異なる時間期間中に生じる。具体的には、
図5Aは、電子ビーム112Dが相対的に低い(第1)放出電流レベルIe0によって生成される第1期間T0中の第1動作状態の電子源100Dを示し、
図5Bは、電子ビーム112Dが比較的高い(第2)放出電流Ie1によって生成される第2期間T1中の電子源100Dを示し、放出電流Ie1は、放出電流Ie0よりも強い(大きい)。
図5A及び5Bは、第1期間T0中、比較的低い放出電流Ie0がゼロ又は実質的にゼロであることを示すことによって、オン/オフ変調方式の実施中の電子源100Dを具体的に示す。電子源100Dが高/低変調方式を実施するように構成されている場合、比較的低い放出電流Ie0は、ゼロよりも実質的に強くてもよいが、放出電流Ie1未満である。
【0049】
図5A及び5Bに示す高/低又はオン/オフ変調方式を実施するために、制御回路150Dは、光子ビーム源140Dを制御することによって電子ビーム112Dを変調させるように構成されることにより、光子ビーム142Dを、比較的低い(第1)強度(例えば、
図5Aに示すようにIp0≒0)と比較的高い(第2)強度(例えば、
図5Bに示すようにIp1>>0)との間で周期的に切り替える。具体的には、
図5Aは、制御回路150Dが、期間T0中に第1光子ビーム源制御信号(例えば、PBSC=0)を生成して光子ビーム源140Dまで伝送することを示し、
図5Bは、制御回路150Dが、期間T1中に異なる(第2)光子ビーム源制御信号(例えば、PBSC=1)を生成して光子ビーム源140Dまで伝送することを示す。
図5Aに示すように、第1光子ビーム源制御信号(PBSC=0)に応じて、光子ビーム源140Dは、比較的低い強度Ip0の光子ビーム142Dを生成することにより、比較的少数(例えば、ゼロ)の光子がエミッタカソード120D上に伝送され、それによって比較的少量(例えば、ゼロ又は最小量)の光利用電界放出を生じさせ、それによって、電子ビーム112Dが、比較的低い放出電流Ie0でエミッタカソード120Dによって生成される。換言すれば、ゼロ光子が、期間T0中にエミッタカソード120D上に伝送される場合、エミッタカソード120Dは、電界E
Cによって提供される抽出電界のみによって電子ビーム112Cを生成し、これにより、放出電流Ie0が相対的に低くなる。対照的に、
図5Bに示すように、光子ビーム源140Dは、第2光子ビーム源制御信号(PBSC=1)に応じて比較的高い強度Ip1で光子ビーム142Dを生成することにより、比較的多数の光子が、第2期間T1中にエミッタカソード120Dに伝送され、これにより、エミッタカソード120Dは、電界E
Cによって提供された抽出電界によって生成された電流と、光子ビーム142Dによって生じさせられたエネルギ/電子との組合せを用いて、電子ビーム112Dを生成し、これは、順に、電子ビーム112Dに時間T1中、比較的(すなわち、時間T0中の放出電流Ie0と比較して)高い放出Ie1を有するようにさせる。
【0050】
一実施形態では、
図5A及び5Bに示す変調方式が使用されて、先端127Dから汚染物質を洗浄する。従来の冷陰極電界エミッタでは、先端温度が上昇させられて、汚染物質を先端から蒸発(フラッシング)させ得る。このプロセスは、低速であり、その理由は、先端が加熱するのに数秒を要し、次いで先端が、汚染物質が先端から離れるのに十分長い間、より高い温度に維持される必要があり、これは、数ミリ秒又は数秒を要することがあり、次いで先端は、数秒乃至数分を要して冷却される必要があるからである。更に、先端及びそれを支持する構造の機械的寸法は、熱膨張及び熱収縮に起因して温度と共に変化する。寸法及び先端位置の変化が放出電流を変化させるので、先端放射がフラッシング後に安定することを可能にするために典型的に追加の時間が必要とされる。本発明の一実施形態では、高電流が使用されて、先端127Dから汚染物質を排除する。電流が高い(1μA又は数μA等)場合、電子が汚染物質と頻繁に衝突してそれを除去し得る。これは、数マイクロ秒未満、又は数ナノ秒程度の短い時間内に起こり得る。この短時間の後に、光子ビーム強度がより低い値にまで減少させられてもよく、そして通常のシステム動作が再開されてもよい。洗浄に要する時間が非常に短いので、システム性能への影響は、最小又はゼロであることがある。例えば、洗浄のための高電流は、短時間の間にデータが収集されない場合に、走査線又は走査フレームの端部で実装されてもよく、その結果、洗浄は、画像を取得するための時間内で変化を生じさせることがない。先端127Dが非常に高温になり得、変形することがあるので、1μAを超える等の高電流が、延長された期間の間に使用される場合、先端127Dを損傷させることがある。しかし、高電流が数マイクロ秒又はより短い時間の間しか存在しない場合、加熱効果は最小となり、先端損傷は生じない。
【0051】
電子源100Dがオン/オフ変調方式を実施するように構成されている特定の一実施形態に従うと、方式は以下の特徴を利用する。第1は、エミッタカソード120Dがpドープ基板121D上に作製され、被覆層129Dがp型材料(例えば、ホウ素)であり、アノード130Dは、電界エミッタカソード120Dのポテンシャル障壁高さ(伝導帯)が、放出先端127Dにおいて電界エミッタカソード120Dのフェルミ準位より上のレベルに維持されるように電界エミッタカソード120Dの放出先端127Dにおいて電界E
Cを生成し、それによって、第1期間T0中、放出先端127Dからの電子の放出を最小化するか又は排除する(すなわち、光子ビーム142Dの強度Ip0が最小化される場合、電子ビーム112Dの放出電流Ie0が0又はほぼ0である)ように構成されている。電子濃度が局所ドーピングレベル及びポテンシャルによって決定される半導体において、p-nダイオードにおけるように逆バイアスモードで動作させられるように電界エミッタを構成することが可能であり、そこに空乏層がエミッタ面での高い電界のために生成される。真空とp型ドープ電界エミッタとの間の界面は、p-n接合を形成し得、このp-n接合では、真空がn型媒体であると考えられる。この場合、伝導帯及び価電子帯は、表面において下方に屈曲する。電界が、伝導帯の底部をフェルミエネルギ準位より下にするのに十分である場合には、放出先端の頂点に多量の電子が存在することになり、nA乃至μAのオーダーの電流が生じさせられる。
図5A及び5Bに示すオン/オフ変調方式に従うと、電界E
Cは、フェルミエネルギ準位よりちょうど上に維持されることにより、光子ビーム142Dが省略された場合(例えば、
図5Aに示すように、光子ビーム源140Dがオフにされた場合)には電子が放出されない。
図5Bに示すように、電界E
Cはまた、期間T1中、この準位に維持されるが、この場合、エネルギ準位/波長λpを有する入射光子143が電子-正孔対EHPを生成するときに生成される光電子113-2が、放出先端127Dに向かって強く誘引され、これらの光電子の多くは、電子ビーム112Dに所望の放出電流Ie1を提供するために放出されることになる。
【0052】
図6は、断面図で、更なる別の一代替実施形態に従う電界エミッタアレイ(FEA)多重電子ビーム源のためのシリコン電界エミッタ110Eを示す。
図2を参照して上記で説明した実施形態と同様に、電界エミッタ110Eは、誘電体層128Eを介してエミッタカソード120E上に固定的に配設された抽出器(電極)130Eを有し、該誘電体層は、シリコン基板121Eの頂面122E上に形成されている。この場合、エミッタカソード120Eは、2次元周期性パターンに配列され、シリコン基板121Eの頂(出力)面122にそれぞれ一体的に接続されている多重電界エミッタ突出部(例えば、突出部124E-1及び124E-2)を含む。電界エミッタ突出部124E-1及び124E-2が、誘電体層128Eに形成された開き内にそれぞれ配設されており、抽出器130Eは、開口部134E-1及び134E-2がエミッタ突出部124E-1及び124E-2をそれぞれ囲むように形成されている。動作中、それぞれのエミッタ突出部124E-1及び124E-2は、抽出器(ゲート)130Eからの印加電界に従属し、そして記載された方法を使用して放出先端127E-1及び127E-2からそれぞれ放出された電子ビームを変調させるために光源(図示せず)から光子を受取る。抽出器130Eは、単一の連続層として描かれているが、それは、個々のエミッタ突出部124E-1、124E-2等に対応する区間へと分割されてもよく、それにより、別個の抽出電圧が、それぞれの放出先端に印加された電界の個々の制御を可能にするようにそれぞれのエミッタ区間に印加されてもよい。電界エミッタカソード100Eの別の材料及び寸法が、
図2に示す電界エミッタカソード110Aのものと同様に構成されてもよく、それはここでは別途説明されない。
【0053】
図7は、本発明の別の例示的な実用的実施形態に従う簡略化された電子源100Fを示す。前出の実施形態と同様に、電界エミッタ110Fは、上記のように動作するカソード120F及び抽出器130F-1を含む。この実施形態では、光子ビーム源140Fは、上述の変調方式のうちのいずれかに従って電子ビーム112Fを変調(制御)させるために、集束装置(光学系)144Fによって電界エミッタ110Fに誘導される少なくとも1つの光子ビーム142Fを生成するように構成された光源141Fを含む。電極130F-2は、約1kV乃至約10kVの加速電圧のような高電圧源によって、電界エミッタ110Fの表面とアノード130Fとの間に加速電界を生成するために電界エミッタ面からある距離に設置される。アノード130F-2は、電子ビーム112Fの一部を通過可能にするビームストップとして構成されてもよい開口部134F-2を有する。すなわち、電界エミッタ110Fから放出する電子は、アノード130F-2内の開口部134F-2を通るように導かれて、電子源100Fを出る電子ビーム112Fの少なくとも一部を形成する。一実施形態では、電子ビーム112Fの一部が、アノード130F-1上に衝突し、モニタ160Fが、アノード130F-1との接触によって動作中のそれぞれの時点における電子ビーム112Fの放出電流を感知又は別途測定し、そして対応する放出電流測定値165Fを生成して制御回路150Fに伝送するように動作可能に構成される。制御回路150Fは、放出電流測定値165F及び選択された変調方式の変化に従って光子ビーム142Fの強度を調整する(例えば、増加又は減少させる)ために、光子ビーム源140Fを制御することによって、電子ビーム112Fを変調させるように構成されている。
【0054】
図7の下側部分を参照すると、追加の電極130F-3は、アノード130F-2の下流に(すなわち、電子ビーム112Fの経路に沿って)配置され、そして電子ビームの終端部分112F-3が通過する開口部134F-3を含む。電極130F-3は、ビームストップとして作用するように構成されてもよく、すなわち、開口部134F-3は、それを通過する電子ビーム部分112F-3の角度範囲を制限するのに十分な程小さくてもよい。或いは、開口部134F-3は、アノード130F-2から受取られた電子ビーム部分112F-2の実質的に全てを通過するのに十分な程大きくてもよい。一実施形態では、電極130F-3は、アルミニウム又は銀等の金属でできており、そして湾曲(例えば、放物線状)ミラー面149(集束装置140Fの一部をコリメートレンズ146と共に形成する)を含む。電極130F-3が、光源141F及び電界エミッタ110Fに対して配置及び配列されることにより、光子ビーム142Fが、曲面ミラー面149によって電界エミッタ110Fの出力面上に方向転換されて集束される(例えば、電界エミッタ110Fの放出先端は、曲面ミラー面149によって形成された放物線の焦点に設置され、光学系146から入来する光ビームは、実質的にコリメートされる)。高電圧源が使用されて、電界エミッタカソード120F及びアノード130Fに対して電極130F-3をバイアスすることにより、電子が、アノード130F-2を通過した後に加速される。一代替的実施形態では、アノード130F-2が省略されてもよく、コントローラ150Fが、電極(ビームストップ)130F-2内を流れる電流を監視してもよい。別の一実施形態では、光子ビーム142Fを誘導及び集束させるための光学系が、任意の電極及び開口部ストップから分離されている。SEMシステムにおいて利用されてもよい別の構造及び要素は、簡潔にするために省略されている。
【0055】
源100Fの動作中、コントローラ150Fは、光子ビーム142Fの強度を制御することによって、電子ビーム112Fの放出電流を変調させ、これは、選択された変調方式に従って光源141Fによって生成され、放物面ミラー149によってエミッタカソード110F上に誘導される。光源141Fは、レーザダイオードと、パルスレーザと、連続波(CW)レーザ又はランプと、を含んでもよい。光源141Fによって生成された光子の波長は、可視又はUV波長範囲内にあってもよい。光子ビーム142Fは、集束装置144F(例えば、コリメートレンズ146)によってコリメートされてもよく、これは、また、放物線ミラー149によって電界エミッタカソード110F上に光子ビーム142を集束/誘導することにより、集束させられた光子ビームがアノード130Fの開口部136Fを通過するように機能する。光子ビーム142Fの光子は、上記の態様で電界エミッタカソード110Fの表面から電子を解放するのを助ける。光子ビーム142Fの強度は、(例えば、光源制御信号LSCを用いて)光源141Fを制御することによって、又は(例えば、光変調器制御信号LMCを用いて)光変調器145Fを制御することによってコントローラ150Fにより調整されてもよい。光変調器145Fは、好ましくは、約100MHz以上の周波数等の、電子放出の高周波制御が必要とされる場合の電気光学変調器である。集束装置140Fを形成するレンズとミラーの組合せは、電界エミッタからの電子放出を制御するように構成され得る光子ビーム源の一例を例示する。レンズ、平面ミラー、及び/又は曲面ミラーの別の組合せが、電界エミッタカソード上に光子ビームを誘導及び集束させるように構成されてもよい。
【0056】
図8は、半導体ウェーハ、レチクル、又はフォトマスク等の試料231を検査、測定、又は再調査するように構成された、例示的な検査、計測、又は再調査走査電子顕微鏡(SEM)システム(デバイス)200を示す。SEMシステム200は、概して、電子銃(電子源)100、上部カラム241、及び下部カラム242を備える電子カラムを含み、1次電子ビーム112を試料231上に集束及び誘導する。
【0057】
電子銃100は、(電界エミッタカソード120及び抽出器130を含む)電界エミッタ110、1つ又は複数の電極132、光ビーム源140、並びにコントローラ(制御回路)150を含む上記の実施形態のうちのいずれかに従って構成される。上記の様に、電界エミッタカソード120は、遠位端に放出先端127が配設された一体的なエミッタ突出部124を有するシリコン基板121を含み、抽出器130は、放出先端127に抽出(電)界Eを生成し、そして放出先端127から放出された電子を開口部134を通って上部カラム241内に通過する1次電子ビーム112へと形成するように構成されている。光子ビーム(PB)源140及びコントローラ150は、上記のように機能して、電子銃100からの1次電子ビーム112の光利用電界放出を促進する。すなわち、コントローラ150は、任意選択で、上記の方法のうちのいずれかを使用して一次電子ビーム112を監視し、そして光子ビーム源制御信号PBSCによってPB源140を制御することにより、光子ビームが、(下記の様に)エミッタカソード120にコンピュータシステム280から受取られた放射Ieで1次電子ビーム112を放出させる強度Ipで、エミッタカソード120上に光子ビーム142を印加する。電極132は、1つ又は複数の集束電極、1つ又は複数の偏向器、非点補正装置、及び/又はビームブランカを含んでもよい。電極132のうちの1つは、電子ビーム112内の電子が放出先端127から抽出された後にそれらを加速するためのアノードとして構成されている。アノードは、ビームストップとして動作するように構成されてもよい。その代替又は追加として、ビームストップが上側カラム241に含まれてもよい。
【0058】
上側カラム241は、1次電子ビーム112を縮小して、下にある試料231上に電子を衝突させる小さいスポットを生成する1つ又は複数の集光レンズ207を含む電子光学系を備えている。1つ又は複数の偏向器(DEF)205が、集光レンズ207の両側に設置されてもよい。上側カラム241は、非点補正装置又はビームブランカ等の別の電子光学系を更に含んでもよい。下側カラム242は、試料231上の小さいスポットに1次電子ビーム112を集束させるための最終レンズ210を含む電子光学系を備えている。下側カラム242は、また、試料231の領域を横切って1次電子ビームを走査するために偏向器205(存在する場合に)との組合せで作用する1つ又は複数の偏向器209を含む。試料231がステージ230上に設置されて、電子カラム下での試料231の様々な領域の移動を容易にする。2次電子及び後方散乱電子が、1次電子ビーム112が試料231に当たると、それから放出される。2次電子が、電極220によって収集され、加速され、そして2次電子検出器221に誘導される。後方散乱電子は、222a及び222bに示すもののような後方散乱電子検出器によって検出されてもよい。
【0059】
コンピュータシステム280は、電子源100並びに上側カラム241及び下側カラム242の電子光学系を制御し、そして2次電子検出器221、後方散乱電子検出器222a、及び後方散乱電子検出器222bのうちの少なくとも1つからデータを受取る。コンピュータシステム280は、また、ステージ230を制御する。コンピュータシステム280は、1つ又は複数の検出器からのデータを使用して、試料231上の1つ又は複数の領域の検査、測定又は再調査を走査電子顕微鏡に実行させる。コンピュータ280は、コントローラ150に指示して、上記の態様で選択された電子ビーム電流を生成する。
【0060】
SEMに統合されるように説明したが、本明細書に開示された電子源は、また、別のデバイス、例えば、電子ビームリソグラフィシステム又はX線源に組み込まれ得る。電子ビームリソグラフィシステムは、標的上に1次電子ビームを縮小して集束させるように構成されている電子光学系と、電子ビームの強度を変調させるための変調器と、を含み得る。X線源は、X線を放出するように構成されたアノードに電子ビームを誘導するように構成された電子光学系を含み得る。
【0061】
記載された実施形態に対する様々な修正は、当業者には明らかであり、本明細書で規定された一般原理は、別の実施形態に適用されてもよい。例えば、追加の電極が、電子エミッタに近接して設置されることにより、放出を制御する、及び/又は放出された電子を集束させて特定の方向に誘導してもよい。本明細書に開示された光変調式電子源は、様々な種類の走査電子顕微鏡及び電子ビームリソグラフィシステムにおいて特に有用であると予想されるが、この源は、安定した高輝度及び/又は高電流電子ビームが高輝度X線発生装置等において必要とされる別の用途において有用であることも想像される。
【0062】
本明細書に記載された電子源及び方法は、図示され説明された実施形態に限定されることが意図されていないけれども、本明細書内に開示された原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲に合致されるべきである。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲及びその合理的な解釈によってのみ限定されるとみなされる。