(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】ウレタン樹脂組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 75/08 20060101AFI20240201BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240201BHJP
C08G 18/75 20060101ALI20240201BHJP
C08L 1/16 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08L75/08
C08G18/48 054
C08G18/75 080
C08L1/16
(21)【出願番号】P 2020067026
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515261446
【氏名又は名称】株式会社三和技巧
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】安藤 義人
(72)【発明者】
【氏名】サファラル ビン ムスタファ
【審査官】宮内 弘剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-044096(JP,A)
【文献】特開2017-128664(JP,A)
【文献】特開2018-009116(JP,A)
【文献】国際公開第2019/098331(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/172058(WO,A1)
【文献】特開平04-096917(JP,A)
【文献】特開2013-194162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
C08K
C08L
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中で、リン酸エステル化ナノセルロース
(ただし、リン酸基の一部又は全てにポリエーテルアミンが結合したものを除く)と、脂肪族系ポリオールと
を混合した後に、脂肪族系ポリイソシアネー
トを混合することを特徴とするウレタン樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
前記リン酸エステル化ナノセルロースが、ナノセルロースとリン酸化合物とを含む水溶液を超音波処理することでリン酸エステル化されたものであることを特徴とする請求項1記載のウレタン樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
脂肪族系ポリオールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであることを特徴とする請求項
1又は
2記載のウレタン樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
脂肪族系ポリイソシアネートが、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートであることを特徴とする請求項
1~
3のいずれか記載のウレタン樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノセルロースを含むウレタン樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、最も豊富な再生可能な物質であり、古い時代から近代技術社会に至るまで継続して使用されている。植物由来の繊維であるセルロースは、環境負荷が小さく、かつ持続型資源であるとともに、高弾性率、高強度、低線膨張係数などの優れた特性を有する。そのため、幅広い用途、例えば、紙、フィルムやシートなどの材料、樹脂の複合材料(例えば、樹脂の補強剤)などとして利用されている。特に、微細化したナノセルロース(ナノファイバーなど)は、樹脂の補強剤として有用であり、樹脂との複合化に向けて多くの試みがなされている。
【0003】
一方、ポリウレタンは、塗料や建築補強材として多く利用されている。しかしながら、ポリウレタンは、一般的に強度が低く、特に脂肪族系のポリウレタンは、強度が低いため、建築材等への利用は難しい。強度を高めるために、ポリウレタンの構造内に芳香族系の分子を挿入することや、フィラーとしてナノセルロースを配合することが行われている。しかしながら、この場合、透明性が低くなるという問題がある。
【0004】
ナノセルロースをフィラーとしてポリウレタンへ配合し複合化する技術としては、例えば、TEMPO酸化セルロースナノファイバーと、ポリウレタンとを含むウレタン樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
また、ナノセルロースと芳香族系ポリイソシアネートとを含むウレタン樹脂組成物が提案されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Macromolecules 2011, 44, 4422-4427
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような従来のウレタン樹脂組成物は、高い強度及び高い透明性の両者を満足するものではなかった。
【0008】
本発明の課題は、高い強度及び高い透明性の両者を満足するウレタン樹脂組成物、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、ナノセルロース表面をリン酸エステル化することにより、ナノセルロースをポリウレタン原料により均一分散させて複合化することが可能となり、これによって上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りのものである。
[1]リン酸エステル化ナノセルロース及び脂肪族系ポリウレタンを含むことを特徴とするウレタン樹脂組成物。
【0011】
[2]有機溶媒中で、リン酸エステル化ナノセルロースと、脂肪族系ポリオールと、脂肪族系ポリイソシアネートとを混合することを特徴とするウレタン樹脂組成物の製造方法。
[3]リン酸エステル化ナノセルロースと、脂肪族系ポリオールとを混合した後に、脂肪族系ポリイソシアネートを混合することを特徴とする上記[2]記載のウレタン樹脂組成物の製造方法。
[4]脂肪族系ポリオールが、ポリテトラメチレンエーテルグリコールであることを特徴とする上記[2]又は[3]記載のウレタン樹脂組成物の製造方法。
[5]脂肪族系ポリイソシアネートが、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートであることを特徴とする上記[2]~[4]のいずれか記載のウレタン樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウレタン樹脂組成物は、高い強度及び高い透明性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例に係るウレタン樹脂組成物(シート)についての引張り強さの結果を示す図である。左から、実施例1~9を示す。
【
図2】比較例に係るウレタン樹脂組成物(シート)についての引張り強さの結果を示す図である。左から、比較例1~11を示す。
【
図3】実施例6に係るウレタン樹脂組成物(シート)及び比較例8に係るウレタン樹脂組成物(シート)の透明性を比較した図である。右側の長方形のシートが実施例6に係るウレタン樹脂組成物であり、左側の楕円のシートが比較例8に係るウレタン樹脂組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のウレタン樹脂組成物は、リン酸エステル化ナノセルロース及び脂肪族系ポリウレタンを含むことを特徴とする。
【0015】
本発明のウレタン樹脂組成物は、ナノセルロースを脂肪族系ポリウレタンのハードセグメントとして利用する。このハードセグメントとして、リン酸エステル化したナノセルロースを用いることにより、ナノセルロースの分散性を向上させて、高い強度及び高い透明性を両立する。すなわち、リン酸エステル化ナノセルロースを高分散でナノコンポジット化し、高い強度及び高い透明性を両立する。この得られたウレタン樹脂組成物(複合体)は、高い透明性を有しながら、引張強度が50MPa程度といった脂肪族系ポリウレタンとしては非常に高い強度も実現が可能である。
【0016】
(リン酸エステル化ナノセルロース)
本発明におけるリン酸エステル化ナノセルロースは、ナノセルロースの水酸基の少なくとも一部がリン酸で置換されたものである。本発明のリン酸エステル化ナノセルロースは、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等のリン酸エステル化ナノセルロースの塩であってもよい。
【0017】
ナノセルロースは、天然セルロース、合成セルロースを微小化して調製することができる。天然セルロースとしては、植物由来のセルロースを挙げることができ、具体的に、広葉樹系パルプ、針葉樹系パルプ、竹、油やし等を例示することができる。
【0018】
天然セルロース等を微小化してナノセルロースとする方法としては、公知の種々の方法を挙げることができる。具体的には、高圧ホモジナイザー法、ボールミル粉砕法、グラインダー摩砕法、強剪断力混練法、凍結粉砕法、超音波解繊法等の機械的解繊方法を例示することができる。
【0019】
ここで、ナノセルロースとしては、セルロースナノファイバー、セルロースナノクリスタル、セルロースマイクロクリスタル、セルロースナノウィスカー等を挙げることができ、セルロースナノファイバーが好ましい。なお、本発明においては、リグノセルロース等のナノセルロースと他の物質の混合物を用いてもよい。
【0020】
ナノセルロースの重合度(粘度法)としては、100~3000であることが好ましく、200~1500であることがより好ましく、200~1000であることがさらに好ましく、500~750であることが特に好ましい。具体的には、例えば、IMa-100、BMa-100、WFo-100、AFo-100、FMa-100(株式会社スギノマシン製)を挙げることができる。
【0021】
ナノセルロースにリン酸基を導入する(リン酸エステル化する)ためのリン酸化合物としては、リン酸基を有する化合物であれば特に制限するものではなく、リン酸又はその塩、脱水縮合リン酸又はその塩、無水リン酸等を挙げることができる。本発明のリン酸化合物としては、リン酸、リン酸ナトリウム塩、リン酸カリウム塩、リン酸アンモニウム塩が好ましく、具体的に例えば、リン酸、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸三アンモニウム等を挙げることができる。本発明のリン酸化合物としては、安価かつ工業的に利用しやすい点から、リン酸が好ましい。
【0022】
本発明のリン酸化ナノセルロースは、ナノセルロースにリン酸化合物を反応させることにより得ることができる。例えば、ナノセルロース又はその懸濁液(スラリー)にリン酸化合物の水溶液を混合して反応させた後に、脱水・乾燥(加熱処理)することにより得ることができる。なお、混合する際に、超音波処理等の解繊処理することが好ましい。これにより、セルロースの凝集を防止することができる。また、反応後、上記脱水・加熱処理に代えて、反応溶媒である水と有機溶媒とを置換させて有機溶媒中に保存してもよい。これにより、後述の脂肪族系ポリウレタンとの反応を連続して行うことが可能となる。有機溶媒としては、特に制限されるものではなく、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を挙げることができる。
【0023】
ウレタン樹脂組成物中のリン酸エステル化ナノセルロースの配合量としては、0.1~50質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましく、5~35質量%であることがさらに好ましい。
【0024】
(脂肪族系ポリウレタン)
本発明における脂肪族系ポリウレタンは、ウレタン結合を有する重合体であり、脂肪族系ポリオールと脂肪族系ポリイソシアネートとの縮合反応により得ることができる。
【0025】
脂肪族系ポリオールとしては、複数のアルコール性ヒドロキシル基を有し、脂肪族又は脂環族の構造を有する脂肪族系ポリオールを用いることができ、例えば、脂肪族ポリオール、脂環族ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオール、ポリカーボネート系ポリオール等を挙げることができる。具体的に、脂肪族ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等を挙げることができる。脂環族ポリオールとしては、例えば、シクロヘキサンジオール、メチルシクロヘキサンジオール、イソホロンジオール、ジシクロヘキシルメタンジオール、ジメチルジシクロヘキシルメタンジオール等を挙げることができる。ポリエステル系ポリオールとしては、例えば、多塩基酸と多価アルコールとを脱水縮合して得られる重合体、ラクトンを開環重合して得られる重合体、ヒドロキシカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等を挙げることができる。ポリエーテル系ポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等を挙げることができる。ポリラクトン系ポリオールとしては、例えば、ポリプロピオラクトングリコール、ポリカプロラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコール等を挙げることができる。ポリカーボネート系ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの水酸基含有化合物と、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオール等を挙げることができる。これらの脂肪族系ポリオールは、2種以上併用してもよい。本発明の脂肪族系ポリオールは、ポリエーテル系ポリオールが好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールが特に好ましい。
【0026】
ポリイソシアネートとしては、分子中にイソシアネート基を2個以上有し、脂肪族又は脂環族の構造を有する脂肪族系ポリイソシアネートを用いることができ、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等を挙げることができる。これらの脂肪族系ポリイソシアネートは、2種以上併用してもよい。本発明の脂肪族系ポリイソシアネートとしては、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナートが好ましい。
【0027】
(触媒)
本発明のウレタン樹脂組成物には、ウレタン化反応を促進し、硬化するための触媒が含まれていてもよい。触媒としては、通常ウレタン化に用いられる触媒であれば特に制限されるものではなく、例えば、アミン系触媒、金属触媒を挙げることができ、2種以上併用してもよい。アミン系触媒としては、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、N,N-ジメチルアミノエタノール、N,N´,N´-トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチレンジアミン等を挙げることができる。金属触媒としては、ジラウリン酸ジブチルスズ等のスズ触媒や、2-エチルヘキサン酸鉛、オクテン酸鉛等の鉛触媒や、ナフテン酸金属塩や、プロピオン酸フェニル水銀塩を挙げることができる。
【0028】
<ウレタン樹脂組成物の製造方法>
本発明のウレタン樹脂組成物の製造方法は、有機溶媒中で、リン酸エステル化ナノセルロースと、脂肪族系ポリオールと、脂肪族系ポリイソシアネートとを混合することを特徴とする。本発明の製造方法においては、3種を同時に混合してさせてもよく、2種を混合した後に、さらに残りの1種を混合してもよいが、特に、有機溶媒中で、リン酸エステル化ナノセルロースと、脂肪族系ポリオールとを混合した後に、脂肪族系ポリイソシアネートを混合することが好ましい。これにより、リン酸化ナノセルロースの分散性がより向上する。
【0029】
本発明の製造方法によれば、リン酸エステル化ナノセルロースの脂肪族系ポリウレタン樹脂への分散性を向上させることができ、従来にない高い強度及び透明性を有するポリウレタン樹脂組成物を簡便に製造することができる。
【0030】
反応条件は、通常のポリウレタン製造の条件を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン等を用いることができる。反応温度としては、通常0℃~100℃程度であり、還流温度が好ましい。反応時間としては、例えば、1~24時間程度であり、1~12時間程度が好ましい。
【0031】
反応の際又は反応終了後に、必要に応じて添加剤を一種類以上配合してもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、充填剤、強化剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、離型剤、難燃剤、界面活性剤、顔料、防菌剤等を挙げることができる。
【0032】
得られたポリウレタン樹脂組成物は、塗布施工する用途に好適に用いられる。また、プレス成形や型成形により、所望の形状とすることができる。本発明のポリウレタン樹脂組成物は、高い強度及び透明性を有しており、例えば、建築材料、自動車材料、船舶材料、塗装材料、接着材料、発泡材料、電気絶縁材料、難燃化材料に利用することができる。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0034】
[リン酸エステル化ナノセルロースの製造]
5重量%水溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)を用いてリン酸(85%w/v)濃度30重量%になるように調整を行い、40Hzの超音波を用いて3時間処理した。その後、室温にて4時間攪拌を行った。続いて、蒸留水にてpH6-7になるまで遠心分離機で繰り返し液体と沈殿物に分けながら洗浄を繰り返した。緩衝液をアセトンに交換したのち、24時間の攪拌を行い、遠心分離機を用いてリン酸エステル化ナノセルロースCNF-1-Pの回収をおこなった。
【0035】
上記リン酸エステル化ナノセルロースCNF-1-Pの製造において、5重量%水溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)に代えて、5重量%水溶液(重合度650)のセルロースナノファイバー(CNF-2)を用いた以外は同様の方法で行い、リン酸エステル化ナノセルロースCNF-2-Pを得た。
【0036】
上記リン酸エステル化ナノセルロースCNF-1-Pの製造において、5重量%水溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)に代えて、5重量%水溶液(重合度800)のセルロースナノファイバー(CNF-3)を用いた以外は同様の方法で行い、リン酸エステル化ナノセルロースCNF-3-Pを得た。
【0037】
[ウレタン樹脂組成物の製造]
[実施例1]
窒素雰囲気下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG-2000、Mw2000)12g、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2g、及びアセトン250mlを500mlフラスコ内に加え、還流温度で4時間攪拌を行った。その後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)7.9gと触媒量のジラウリン酸ジブチルスズを加えて、さらに4時間攪拌を行った。反応終了後、得られた沈殿物をろ過により洗浄、回収した。回収したウレタン樹脂組成物を型に入れてオーブン(60℃)で3時間乾燥した。続いて、熱プレス機を用いて120℃、30MPaにて30分間かけてシート成型を行い、その後に冷却しながらプレスを45分間行った。
【0038】
[実施例2]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.38gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0039】
[実施例3]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.62gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0040】
[実施例4]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-2-P 0.2gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0041】
[実施例5]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-2-P 0.38gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0042】
[実施例6]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-2-P 0.62gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0043】
[実施例7]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-3-P 0.2gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0044】
[実施例8]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-3-P 0.38gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0045】
[実施例9]
実施例1のウレタン樹脂組成物の製造において、リン酸化ナノセルロースCNF-1-P 0.2gに代えて、リン酸化ナノセルロースCNF-3-P 0.62gを用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。
【0046】
[比較例1]
窒素雰囲気下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG-2000、Mw2000)12g、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)7.9g(0.69mmol)、及び触媒量のジラウリン酸ジブチルスズを500mlフラスコ内に加え、90℃で4時間攪拌を行った。その後、さらに1,4-ブタンジオール(BD)1.4gを加え、90℃で4時間攪拌を行った。反応終了後、得られた沈殿物をろ過により洗浄、回収した。回収したウレタン樹脂を型に入れてオーブン(60℃)で3時間乾燥した。続いて、熱プレス機を用いて120℃、30MPaにて30分間かけてシート成型を行い、その後に冷却しながらプレスを45分間行った。
【0047】
[比較例2]
窒素雰囲気下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG-2000、Mw2000)4.75g、酢酸セルロース0.33g、及びDMF50MLを500mlフラスコ内に加え、90℃で4時間攪拌を行った。その後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)1.8g、及び触媒量のジラウリン酸ジブチルスズを加えて、さらに90℃で4時間攪拌を行った。反応終了後、得られた沈殿物をろ過により洗浄、回収した。回収したウレタン樹脂組成物を型に入れてオーブン(70℃)で3時間乾燥した。続いて、熱プレス機を用いて120℃、30MPaにて30分間かけてシート成型を行い、その後に冷却しながらプレスを45分間行った。
【0048】
[比較例3]
窒素雰囲気下、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG-2000、Mw2000)12g、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)、及びアセトン250mlを500mlフラスコ内に加え、還流温度で4時間攪拌を行った。その後、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)7.9g(0.69mmol)、及び触媒量のジラウリン酸ジブチルスズを加えて、さらに4時間攪拌を行った。反応終了後、得られた沈殿物をろ過により洗浄、回収した。回収したポリウレタンは熱プレス機を用いて120℃、30MPaにて30分間かけてシート成型を行い、その後に冷却しながらプレスを45分間行った。
【0049】
[比較例4]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)7.6g(セルロース分量約0.38g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0050】
[比較例5]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)12.4g(セルロース分量約0.62g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0051】
[比較例6]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%水溶液(重合度650)のセルロースナノファイバー(CNF-2)4g(セルロース分量約0.2g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0052】
[比較例7]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%水溶液(重合度650)のセルロースナノファイバー(CNF-2)7.6g(セルロース分量約0.38g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0053】
[比較例8]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%水溶液(重合度650)のセルロースナノファイバー(CNF-2)12.4g(セルロース分量約0.62g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0054】
[比較例9]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%水溶液(重合度800)のセルロースナノファイバー(CNF-3)4g(セルロース分量約0.2g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0055】
[比較例10]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%水溶液(重合度800)のセルロースナノファイバー(CNF-3)7.6g(セルロース分量約0.38g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0056】
[比較例11]
比較例3において、アセトン置換した5重量%溶液(重合度200)のセルロースナノファイバー(CNF-1)4g(セルロース分量約0.2g)に代えて、アセトン置換した5重量%水溶液(重合度800)のセルロースナノファイバー(CNF-3)12.4g(セルロース分量約0.62g)を用いた以外は、比較例3と同様の方法で行った。
【0057】
上記実施例及び比較例で用いた各成分量の一覧を表1に示す。
【0058】
【0059】
上記実施例及び比較例に係るウレタン樹脂組成物(シート)について、引張り強さを確認した。
具体的には、得られたポリウレタンシートを0.5×4cmの短冊状に切断後、コンパクト引張試験機 IMC-18E0(井元製作所、京都、日本)を用いて測定した。各サンプル5mm/minの引張速度で最低5回試験を行った。
【0060】
実施例の結果を表2及び
図1(左から、実施例1~9を示す。)に示す。また、比較例の結果を表3及び
図2(左から、比較例1~11を示す。)に示す。
【0061】
【0062】
【0063】
表2及び
図1、並びに表3及び
図2に示すように、リン酸エステル化ナノセルロースを用いた実施例1~9に係るウレタン樹脂組成物は、脂肪族系ポリウレタン単独の比較例1に係るウレタン樹脂組成物や、酢酸セルロースを用いた比較例2に係るウレタン樹脂組成物と比較して、引張り強さが格段に優れていた。また、リン酸エステル化ナノセルロースを用いた実施例1~9に係るウレタン樹脂組成物は、未処理のナノセルロースを用いた比較例3~11に係るウレタン樹脂組成物と比較して、引張り強さの向上が見られた。特に、中程度の重合度のナノセルロースを用いた場合には、引張り強さの顕著な差がみられた。
【0064】
(2)外観観察
実施例9に係るウレタン樹脂組成物(シート)及び比較例11に係るウレタン樹脂組成物(シート)の透明性を比較するため、シートを載せて裏側の模様の見え方を比較した。その結果を
図3に示す。右側の長方形のシートが実施例6に係るウレタン樹脂組成物であり、左側の楕円のシートが比較例8に係るウレタン樹脂組成物である。
【0065】
図3に示すように、リン酸エステル化ナノセルロースを用いた実施例6に係るウレタン樹脂組成物(右)は、比較例8に係るウレタン樹脂組成物(左)と比較して、高い透明性を有していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明のウレタン樹脂組成物は、建築材料等の材料として用いることができるものであることから、産業上有用である。