(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】コンクリートの製造管理方法
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240201BHJP
C04B 7/28 20060101ALI20240201BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B7/28
G01N33/38
(21)【出願番号】P 2020062667
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】針貝 貴浩
(72)【発明者】
【氏名】清水 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】桜田 道博
(72)【発明者】
【氏名】下坂 建一
【審査官】田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-196346(JP,A)
【文献】特開2015-151318(JP,A)
【文献】特開平09-225441(JP,A)
【文献】特開2018-192703(JP,A)
【文献】特開2017-116267(JP,A)
【文献】特開平09-002848(JP,A)
【文献】特開2007-217244(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0286312(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 - 32/02
G01N 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントクリンカ粉末、石膏粉末、第1の石炭灰、骨材及び水を混練して第1のコンクリートを製造するにあたり、
前記第1のコンクリート1m
3当たりに含まれる前記セメントクリンカ粉末及び前記石膏粉末の合計質量をX、当該合計質量に対する前記第1のコンクリート1m
3当たりに含まれる前記第1の石炭灰の質量の百分率をY、前記第1の石炭灰1kg当たりのメチレンブルー吸着量をZと定義した場合の指標式「XYZ/100≦定数A」において、
前記定数Aとして、前記第1のコンクリート1m
3当たりに含まれる空気量が所定範囲内になるような、前記第1のコンクリート1m
3当たりに含まれる前記第1の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値を設定し、
前記Xとして、予め定めておいた前記合計質量を代入し、
前記Zとして、前記第1の石炭灰1kg当たりのメチレンブルー吸着量を測定して代入することにより、
前記Yの数値範囲を算出す
るコンクリートの製造管理方法
であって、
セメントクリンカ粉末、石膏粉末、第2の石炭灰、骨材及び水を混練して第2のコンクリートを複数製造し、
各々の前記第2のコンクリート1m
3
当たりに含まれる前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量である第1の値と、前記各々の第2のコンクリート1m
3
当たりに含まれる空気量である第2の値とを算出し、
前記各々の第2のコンクリートにおける前記第1の値と前記第2の値との相関を散布図においてプロットにより示し、
複数の前記プロットに基づいて、前記第2のコンクリート1m
3
当たりに含まれる前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量と空気量との相関を、前記散布図において、前記相関を示す直線により示し、
前記散布図において、前記第2のコンクリート1m
3
当たりに含まれる前記空気量が前記所定範囲内になるような、前記第2のコンクリート1m
3
当たりに含まれる前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値を前記直線によって導出し、
前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値を、前記第1の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値とすることを特徴とするコンクリートの製造管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの製造を管理する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、結合材(セメントクリンカ粉末及び石膏粉末)、骨材、水及びAE剤が混練されることにより製造される。コンクリート1m3当たりには、所定範囲内の量(例えば、コンクリートが普通コンクリートである場合には、コンクリートの体積に対して4.5%±1.5%)の空気が含まれている必要がある。コンクリートが製造される製造ラインにおいては、基本的には結合材、骨材、水及びAE剤が一定の割合で混練されることにより、所定範囲内の量の空気を含むコンクリートが継続的に製造されている。
【0003】
現在、コンクリートの材料として、セメントクリンカ粉末の一部に代えて石炭灰が積極的に使用されている。ただし、石炭灰がコンクリートに含まれると、石炭灰に含まれる未燃カーボンに起因してコンクリート1m3当たりの空気量が減少するおそれがある。そこで、石炭灰をコンクリートの材料として利用するにあたっては、下記特許文献1に記載の技術のように、石炭灰を加熱処理して石炭灰に含まれる未燃カーボンを燃焼させる(石炭灰から未燃カーボンを除去する)ことが行われる。
【0004】
しかし、下記特許文献1に記載のような技術には、石炭灰の加熱処理に多くのコストを要するという問題、さらには、石炭灰の加熱処理に伴って発生する二酸化炭素により環境負荷が生じるという問題がある。このような問題を生じさせないためには、石炭灰から未燃カーボンを除去せずに石炭灰をコンクリートの材料として利用することが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、コンクリートを製造するにあたって、このコンクリートの材料として使用可能な石炭灰の量を明らかにする手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一項目に係る方法は、セメントクリンカ粉末、石膏粉末、第1の石炭灰、骨材及び水を混練して第1のコンクリートを製造するにあたって次のことを行うものである。前記第1のコンクリート1m3当たりに含まれる前記セメントクリンカ粉末及び前記石膏粉末の合計質量をX、当該合計質量に対する前記第1のコンクリート1m3当たりに含まれる前記第1の石炭灰の質量の百分率をY、前記第1の石炭灰1kg当たりのメチレンブルー吸着量をZと定義した場合の指標式「XYZ/100≦定数A」において、前記定数Aとして、前記第1のコンクリート1m3当たりに含まれる空気量が所定範囲内になるような、前記第1のコンクリート1m3当たりに含まれる前記第1の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値を設定する。前記Xとして、予め定めておいた前記合計質量を代入する。前記Zとして、前記第1の石炭灰1kg当たりのメチレンブルー吸着量を測定して代入する。これらにより、前記Yの数値範囲を算出する。
【0008】
上記第一項目によれば、第1のコンクリート1m3当たりに含まれる空気量が所定範囲内になるような上記Yの数値範囲を算出することができる。なお、上記Yは、第1のコンクリート1m3当たりに含まれるセメントクリンカ粉末及び石膏粉末の合計質量に対する第1の石炭灰の質量の百分率、すなわち、第1のコンクリート製造時におけるセメントクリンカ粉末及び石膏粉末に対する第1の石炭灰の混練質量比率を示している。そして、上記Xの値と上記Yの数値範囲とに基づき、第1のコンクリート1m3当たりに含まれる空気量が所定範囲内になるように、第1のコンクリートの材料として使用するセメントクリンカ粉末、石膏粉末、第1の石炭灰、骨材及び水の量を、従来技術であるコンクリートの配合設計によって決定することができる。このように、上記第一項目によれば、第1のコンクリートを製造するにあたって、この第1のコンクリートの材料として使用可能な第1の石炭灰の量を明らかにすることができる。
【0009】
本発明の第二項目に係る方法は、上記第一項目において次の内容を含むものである。セメントクリンカ粉末、石膏粉末、第2の石炭灰、骨材及び水を混練して第2のコンクリートを複数製造する。各々の前記第2のコンクリート1m3当たりに含まれる前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量である第1の値と、前記各々の第2のコンクリート1m3当たりに含まれる空気量である第2の値とを算出する。前記各々の第2のコンクリートにおける前記第1の値と前記第2の値との相関を散布図においてプロットにより示す。複数の前記プロットに基づいて、前記第2のコンクリート1m3当たりに含まれる、前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量と空気量との相関を前記散布図において直線により示す。前記散布図において、前記第2のコンクリート1m3当たりに含まれる前記空気量が前記所定範囲内になるような、前記第2のコンクリート1m3当たりに含まれる前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値を前記直線によって導出する。前記第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値を、前記第1の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値とする。
【0010】
上記第二項目によれば、上記第1の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値を、コンクリート製造業者の経験のみに基づいて決定するのではなく、第2のコンクリート1m3当たりに含まれる第2の石炭灰のメチレンブルー吸着量と空気量との関係に基づいて決定することができる。これにより、上記第一項目における指標式をより正確に利用することができ、第1のコンクリートの材料として使用可能な第1の石炭灰の量をより正確に導出することができる。
【0011】
なお、第2の石炭灰としては、製造する第2のコンクリートごとに組成や比表面積が異なるものを使用してもよく、全ての第2のコンクリートの製造に組成や比表面積が同一のものを使用してもよい。また、第1及び第2のコンクリートの組成が互いに同一(あるいは略々同一)になるように第2のコンクリートを製造すれば、上記第二項目に係る方法によって上記第1の石炭灰のメチレンブルー吸着量の最大値をさらに正確に決定することができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明によれば、コンクリートを製造するにあたって、このコンクリートの材料として使用可能な石炭灰の量を明らかにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法を示すフローチャートである。
【
図2】本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法における実施例を示す散布図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法における実施例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法を示すフローチャートである。
図1に示すように、この製造管理方法は、試験工程S1、算出工程S2及び製造工程S3を有するものである。
【0015】
試験工程S1においては、セメントクリンカ粉末、石膏粉末、第2のフライアッシュ(第2の石炭灰)、細骨材、粗骨材、水及びAE剤を混練して第2のコンクリートを複数製造する。各々の第2のコンクリートの製造については、各々の第2のコンクリート1m3当たりに含まれる第2のフライアッシュのメチレンブルー吸着量が互いに異なるように行い、かつ、製造工程S3において製造する予定の第1のコンクリートと各々の第2のコンクリートとの組成(コンクリート1m3当たりに含まれる、セメントクリンカ粉末、石膏粉末及びフライアッシュの合計質量、細骨材及び粗骨材の合計質量、水の質量、並びに、AE剤の質量)が互いに同一(あるいは略々同一)になるように行う。なお、各々の第2のコンクリートの製造においては、互いに異なる組成及び比表面積を有する第2のフライアッシュを使用しても、互いに同一の組成及び比表面積を有する第2のフライアッシュを使用してもよい。
【0016】
続けて、試験工程S1において、各々の第2のコンクリート1m3当たりに含まれる第2のフライアッシュのメチレンブルー吸着量である第1の値と、各々の第2のコンクリート1m3当たりに含まれる空気量である第2の値とを算出する。この第2の値は、例えば、フライアッシュを含まずにセメントクリンカ粉末及び石膏粉末を含むコンクリート1m3当たりに含まれる空気の体積をα、各々の第2のコンクリート1m3当たりに含まれる空気の体積をβとした場合における「β-α」を示すものである。
【0017】
さらに続けて、試験工程S1において、各々の第2のコンクリートにおける前記第1の値と前記第2の値との相関を散布図(後述する
図2に示すもの)においてプロットにより示す。複数の前記プロットに基づいて、第2のコンクリート1m
3当たりに含まれる、第2のフライアッシュのメチレンブルー吸着量と空気量との相関を前記散布図において直線により示す。前記散布図において、第2のコンクリート1m
3当たりに含まれる空気量が所定範囲内(第1のコンクリート1m
3当たりに最低限含まれている必要がある空気量の範囲内)になるような、第2のコンクリート1m
3当たりに含まれる第2のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の最大値を前記直線によって導出する。
【0018】
算出工程S2においては、製造工程S3においてセメントクリンカ粉末、石膏粉末、第1のフライアッシュ(第1の石炭灰)、細骨材、粗骨材、水及びAE剤を混練して第1のコンクリートを製造するにあたって次のことを行う。第1のコンクリート1m3当たりに含まれるセメントクリンカ粉末及び石膏粉末の合計質量をX、この合計質量に対する第1のコンクリート1m3当たりに含まれる第1のフライアッシュの質量の百分率をY、この第1のフライアッシュ1kg当たりのメチレンブルー吸着量をZと定義した場合の指標式「XYZ/100≦定数A」において、前記定数Aとして、第1のコンクリート1m3当たりに含まれる空気量が上記所定範囲内になるような、第1のコンクリート1m3当たりに含まれる第1のフライアッシュのメチレンブルー吸着量の最大値を設定する。この最大値を、試験工程S1において算出した上記最大値とする。
【0019】
さらに、前記Xとして、予め定めておいた上記合計質量を代入する。前記Zとして、製造工程S3において第1のコンクリートの材料として使用する予定の第1のフライアッシュ1kg当たりのメチレンブルー吸着量を測定して代入する。これにより、上記Yの数値範囲を算出する。
【0020】
製造工程S3においては、セメントクリンカ粉末、石膏粉末、第1のフライアッシュ、細骨材、粗骨材、水及びAE剤を混練して第1のコンクリートを製造する。第1のコンクリートの製造においては、予め定めてある上記Xの値と算出工程S2において算出した上記Yの数値範囲とに基づいてコンクリートの配合設計を行い、この配合設計によりセメントクリンカ粉末、石膏粉末、フライアッシュ、細骨材、粗骨材、水及びAE剤の具体的な混練量を決定する。
【0021】
なお、上記指標式は、次の知見を定式化したものである。コンクリート1m3当たりに含まれる空気量は、コンクリート1m3当たりに含まれる石炭灰のメチレンブルー吸着量の増加に伴って減少するものであり、かつ、コンクリート1m3当たりに含まれるセメントクリンカ粉末及び石膏粉末の合計質量の増加に伴って減少するものである。
【0022】
上記実施の形態においては、第1のコンクリート及び第2のコンクリートの材料としてフライアッシュを使用したが、第1のコンクリート及び第2のコンクリートの材料としてはフライアッシュ以外の石炭灰(例えば、ボトムアッシュ)を使用することもできる。
【0023】
次に、本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法における実施例について説明する。
【0024】
[試験工程S1]
まず、結合材、骨材(細骨材、第1の粗骨材及び第2の粗骨材)、水及びAE減水剤(AE剤の一種)を混練してコンクリートA、B1~B13(B群)及びC1~C13(C群)を製造した。結合材としては、コンクリートAの製造においてはセメント(セメントクリンカ粉末及び石膏粉末)のみを使用し、コンクリートB1~B13及びC1~C13の製造においてはセメント及びフライアッシュを使用した。なお、これらコンクリートA、B1~B13及びC1~C13は、製品用コンクリートではなく試験用コンクリートである。
【0025】
表1は、コンクリートA、B1~B13及びC1~C13における1m3当たりの、結合材の質量(kg)、セメント(セメントクリンカ粉末及び石膏粉末の混合物)の質量(kg)、フライアッシュの質量(kg)、細骨材の質量(kg)、第1の粗骨材の質量(kg)、第2の粗骨材の質量(kg)、水の質量(kg)、AE剤の質量(kg)、結合材に対するAE剤の割合(質量%)、 第1の粗骨材及び第2の粗骨材の合計かさ容積(m3)、結合材に対する水の割合(質量%)を示している。
【0026】
表1に示すように、各々のコンクリートの製造については、結合材の質量(セメントの質量とフライアッシュの質量との合計値)、細骨材の質量、第1の粗骨材の質量、第2の粗骨材の質量、水の質量、AE剤の質量、結合材に対するAE剤の割合 、第1の粗骨材及び第2の粗骨材の合計かさ容積、結合材に対する水の割合が、各々のコンクリート同士において互いに同一(結合材の質量については略々同一)になり、かつ、製品として製造する予定の製品用コンクリートとも互いに同一になるように行った。
【0027】
【0028】
なお、第1の粗骨材及び第2の粗骨材の合計かさ容積(m3)は、次のように算出したものである。まず、容器の内部に第1の粗骨材及び第2の粗骨材を自然落下させ、この容器の内部において第1の粗骨材及び第2の粗骨材が充填されている部分の容積を、この容器に付された目盛りを使用して測定した。そして、「この容積/コンクリートの体積」の値を上記合計かさ容積の値とした。コンクリートの体積は、「コンクリートの質量/コンクリートの比重(2.3t/m3)」の値を算出したものである。
【0029】
表2は、コンクリートの種類、コンクリートの材料として使用したフライアッシュ(FA)の種類、このフライアッシュ1kg当たりのメチレンブルー吸着量(MB吸着率)、コンクリートにおけるセメントに対するフライアッシュの質量比(FA比)を示している。また、表2は、コンクリートB1~B13及びC1~C13における1m3当たりの、フライアッシュのメチレンブルー吸着量(第1の値)と空気変動量(第2の値)を示している。
【0030】
この空気変動量は、コンクリートB1~B13及びC1~C13における1m3当たりに含まれる空気の体積(空気量)からコンクリートAにおける1m3当たりに含まれる空気の体積(空気量)を差し引いた値である。なお、これら「空気の体積」は、コンクリートの体積に対するコンクリートに含まれる空気の体積の百分率(%)を示すものである。
【0031】
【0032】
図2は、本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法における実施例を示す散布図である。この散布図は、コンクリート1m
3当たりに含まれるフライアッシュのメチレンブルー吸着量を横軸において示し、コンクリート1m
3当たりにおける空気変動量を縦軸において示すものである。この散布図において、コンクリートB群及びC群の各コンクリートにおける上記第1の値及び上記第2の値をプロットで示した。なお、
図2において、「N単味」とはコンクリートAを意味している。
【0033】
図2に示すように、この散布図に示されている全てのプロットを全体的に観察すると、コンクリート1m
3当たりに含まれるフライアッシュのメチレンブルー吸着量が増加するにつれて、コンクリート1m
3当たりの空気変動量が一定の割合で減少している。
【0034】
そこで、
図2に示すように、この散布図において、コンクリート1m
3当たりにおけるフライアッシュのメチレンブルー吸着量と空気変動量との相関を示す直線を引いた。この直線によれば、コンクリート1m
3当たりの空気変動量が-0.5%(製品としてのコンクリートの品質に実際上影響を与えないような空気変動量の範囲における下限値)である場合においては、コンクリート1m
3当たりに含まれるフライアッシュのメチレンブルー吸着量が3.3gである。
【0035】
[算出工程S2]
製品用コンクリートの材料として使用するフライアッシュ1kg当たりのメチレンブルー吸着量を測定する。ここで、製品用コンクリート1m3当たりに含まれるセメントクリンカ粉末及び石膏粉末の合計質量をX(kg)、当該合計質量に対する製品用コンクリート1m3当たりに含まれるフライアッシュの質量の百分率をY(%)、このフライアッシュ1kg当たりのメチレンブルー吸着量をZ(g)と定義した場合、
指標式「XYZ/100≦3.3」、すなわち指標式「Y≦(330/Z)/X」が成立する。
【0036】
このような指標式に基づいて、予め定めてある製品用コンクリート1m3当たりに含まれるセメントクリンカ粉末及び石膏粉末の合計質量の値を上記Xに代入し、製品用コンクリートの材料として使用するフライアッシュ1kg当たりのメチレンブルー吸着量の測定値を上記Zに代入することにより、上記Yの数値範囲を算出する。
【0037】
[製造工程S3]
上記Xの値と上記Yの数値範囲とに基づいて製品用コンクリートの配合設計を行うことにより、製品用コンクリートの材料として使用するセメントクリンカ粉末、石膏粉末、フライアッシュ、細骨材、粗骨材、水及びAE剤の量を決定する。この量に基づいて製品用コンクリートを製造する。
【0038】
[その他]
図3は、本発明の一実施形態に係るコンクリートの製造管理方法における実施例を示すグラフである。上記指標式「XYZ/100≦3.3」において、このXに予め定めてある製品用コンクリート1m
3当たりに含まれるセメントクリンカ粉末及び石膏粉末の合計質量の値を代入し、上記指標式を
図3に示すような上記Yと上記Zとの関数として示すことにより、1kg当たりのメチレンブルー吸着量が異なる様々なフライアッシュについて、製品用コンクリートの材料として使用することができる量を容易に把握することができる。なお、本実施例においては、上記Yと上記Zとが
図3に示す領域Aに位置するように製品用コンクリートを製造する。