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  • 特許-天然ガス液化装置及びその起動方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】天然ガス液化装置及びその起動方法
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
F25J1/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020087207
(22)【出願日】2020-05-19
(65)【公開番号】P2021181851
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2023-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】入澤 真
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-504509(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154181(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/188957(WO,A1)
【文献】特許第5795003(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25J 1/00- 5/00
F25B 1/00-11/04
F25B 43/00-43/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素と、メタンと、炭素数2~3の炭化水素のうち少なくとも1種と、炭素数4以上の炭化水素のうち少なくとも1種とを、それぞれ成分として含む混合冷媒によって天然ガスを液化する天然ガス液化装置において、
前記混合冷媒を循環する冷媒循環経路に、
混合冷媒を圧縮する冷媒圧縮機と、
該冷媒圧縮機に圧縮された混合冷媒を冷却するアフタークーラーと、
該アフタークーラーの冷却によって液化された混合冷媒を気相と液相とに分離する気液分離器と、
該気液分離器によって分離された混合冷媒の気相と液相とを合流させた混合冷媒及び天然ガス供給源から供給される天然ガスを温端から導入する熱交換器と、
該熱交換器の冷端から導出された混合冷媒を減圧する減圧弁と、が設けられ、
前記熱交換器は、前記減圧弁によって冷却された混合冷媒を冷端から導入することにより、前記天然ガスを液化し、
前記気液分離器には、常温で液体となる炭素数4以上の冷媒成分を液体で供給可能な高沸点冷媒貯槽が接続され、前記冷媒循環経路の、前記減圧弁と前記熱交換器との間には、低温で液体となる炭素数2~3の冷媒成分を液体で供給可能な低沸点冷媒貯槽が接続されていることを特徴とする天然ガス液化装置。
【請求項2】
前記冷媒循環経路から、前記冷媒圧縮機の上流側と前記アフタークーラーの下流側とをつなぐ接続経路が分岐され、前記接続経路にバッファータンクが設けられ、
前記接続経路の前記バッファータンクの上流側に第1仕切弁が、下流側に第2仕切弁が、それぞれ取り付けられていることを特徴とする請求項1記載の天然ガス液化装置。
【請求項3】
前記冷媒循環経路の、前記減圧弁の下流側に、混合冷媒を気相と液相とに分離するフラッシュボトルが設けられるとともに、該フラッシュボトルに前記低沸点冷媒貯槽及び前記高沸点冷媒貯槽が接続されており、
前記フラッシュボトルの混合冷媒の気相を導出する経路と、液相を導出する経路とが合流して、前記冷媒循環経路に接続し、
前記液相を導出する経路に第3仕切弁が取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の天然ガス液化装置。
【請求項4】
請求項1に記載された天然ガス液化装置の起動方法であって
記天然ガス液化装置の起動前に、前記天然ガス液化装置の定常運転の条件と、前記天然ガス液化装置の冷媒系統の全容積とから混合冷媒の各成分の必要量を算出し、
混合冷媒の各成分の必要量を算出した後に、前記冷媒系統に窒素ガスを充填するとともに、算出した窒素ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定し、
窒素ガスが必要量充填された後に、前記冷媒系統に天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定し、
天然ガスが必要量充填された後に、前記気液分離器に炭素数4以上の冷媒成分を液体で充填するとともに、算出した炭素数4以上の冷媒成分の必要量が充填されたか否かを前記気液分離器内の液面又は重量の変化若しくは導入量の積算値から判定し、
炭素数4以上の冷媒成分が必要量充填された後に、前記冷媒圧縮機を作動させるとともに、前記減圧弁を開いて混合冷媒を冷端から導入させることにより前記熱交換器を冷却し、
前記熱交換器の冷却後に、前記低沸点冷媒貯槽から前記冷媒循環経路に炭素数2~3の冷媒成分を液体で充填するとともに、算出した炭素数2~3の冷媒成分の必要量が充填されたか否かを前記低沸点冷媒貯槽内の液面又は重量の変化若しくは導入量の積算値から判
定し、
炭素数2~3の冷媒成分が必要量充填された後に、前記天然ガス液化装置の定常運転を開始することを特徴とする天然ガス液化装置の起動方法。
【請求項5】
請求項2に記載された天然ガス液化装置の起動方法であって
記天然ガス液化装置の起動前に、前記天然ガス液化装置の定常運転の条件と、前記天然ガス液化装置の冷媒系統の全容積とから混合冷媒の各成分の必要量を算出し、
混合冷媒の各成分の必要量を算出した後に、前記冷媒系統に窒素ガスを充填するとともに、算出した窒素ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定し、
窒素ガスが必要量充填された後に、前記冷媒系統に天然ガスを所定量充填し、充填された天然ガスの量を冷媒系統の圧力及び温度から判定し、前記第1仕切弁及び前記第2仕切弁を閉じた状態で前記バッファータンクに天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量から前記冷媒系統に充填した天然ガスの量を引いた量が充填されたか否かを前記バッファータンクの圧力及び温度から判定し、
天然ガスが必要量充填された後に、前記気液分離器に炭素数4以上の冷媒成分を液体で充填するとともに、算出した炭素数4以上の冷媒成分の必要量が充填されたか否かを前記気液分離器内の液面又は重量の変化若しくは導入量の積算値から判定し、
炭素数4以上の冷媒成分が必要量充填された後に、前記冷媒圧縮機を作動させるとともに、前記減圧弁を開いて混合冷媒を冷端から導入させることにより前記熱交換器を冷却し、
前記熱交換器の冷却後に、前記低沸点冷媒貯槽から前記冷媒循環経路に炭素数2~3の冷媒成分を液体で充填するとともに、算出した炭素数2~3の冷媒成分の必要量が充填されたか否かを前記冷媒貯槽内の液面又は重量の変化若しくは導入量の積算値から判定し、
炭素数2~3の冷媒成分が必要量充填された後に、前記天然ガス液化装置の定常運転を開始することを特徴とする天然ガス液化装置の起動方法。
【請求項6】
請求項3に記載された天然ガス液化装置の起動方法であって
記天然ガス液化装置の起動前に、前記天然ガス液化装置の定常運転の条件と、前記天然ガス液化装置の冷媒系統の全容積とから混合冷媒の各成分の必要量を算出し、
混合冷媒の各成分の必要量を算出した後に、前記冷媒系統に窒素ガスを充填するとともに、算出した窒素ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定し、
窒素ガスが必要量充填された後に、前記冷媒系統に天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定し、
天然ガスが必要量充填された後に、前記気液分離器に炭素数4以上の冷媒成分を液体で充填するとともに、算出した炭素数4以上の冷媒成分の必要量が充填されたか否かを前記気液分離器内の液面又は重量の変化若しくは導入量の積算値から判定し、
炭素数4以上の冷媒成分が必要量充填された後に、前記冷媒圧縮機を作動させるとともに、前記熱交換器において、前記減圧弁を開いて混合冷媒を冷端から導入させることにより温端から導入される混合冷媒を冷却し、
該冷却された混合冷媒を減圧弁によりさらに低温とすることで前記フラッシュボトルを冷却し、
前記フラッシュボトルの冷却後に、前記低沸点冷媒貯槽から前記フラッシュボトルに、前記第3仕切弁を閉じた状態で炭素数2~3の冷媒成分を液体で充填するとともに、算出した炭素数2~3の冷媒成分の必要量が充填されたか否かを前記フラッシュボトル内の液
面又は重量の変化、若しくは導入量の積算値から判定し、
炭素数2~3の冷媒成分が必要量充填された後に、前記天然ガス液化装置の定常運転を開始することを特徴とする天然ガス液化装置の起動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス液化装置及びその起動方法に関し、詳しくは、天然ガスを混合冷媒との熱交換によって冷却して液化する装置及びその装置の起動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス液化装置は、生産効率を追求した大型のものが一般的であるが、近年では、ガス源やガス利用方法の多様化に伴って、より小型化した装置の需要が高まっている。
【0003】
液化天然ガス(LNG)を生産する方法としては、複数の成分が混合された混合冷媒を用いて天然ガスを冷却・液化するものが主流である。この方法における混合冷媒の成分は、窒素と数種類の炭化水素とからなり、炭化水素は、炭素数1~5のもの(例えば、メタン、エタン、エチレン、プロパン、ブタン、ペンタン)であることが多い。
【0004】
例えば、特許文献1には、冷媒の成分として窒素、メタン、エタン、プロパンを用い、混合冷媒の圧縮機の上流側から冷媒の各成分を個別に調整して供給可能に構成された天然ガス液化装置が記載されている。これらの冷媒成分の大気圧における沸点は、約-40~-200℃なので、容量を確保できるように液体のまま貯留するには、低温の貯槽を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6286812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、混合冷媒の圧縮機は、常温のガスを圧縮するものなので、特許文献1では、図示されていないが、圧縮機の入り口の前に、液化されている各冷媒を気化させる蒸発器を設ける必要があった。
【0007】
また、炭素数4~5の冷媒成分(例えば、イソペンタン、ノルマルペンタン、イソブタン、ノルマルブタン)は、圧縮機の入口圧力(例えば400kPaA)の下では、沸点が+30~+70℃なので、これらの成分を混合冷媒に含める場合、十分に気化した状態で混合されるようにするには、攪拌機や噴霧器を用いて徐々に圧縮機に送る必要があった。
【0008】
加えて、混合冷媒は、圧縮機のアフタークーラーの出口において常温で凝縮し一部液化するので、気液分離装置を設けて液化した成分を分離し、次の工程に送る必要があった。
【0009】
さらに、装置を起動する際には、安全のため冷媒の配管系統に不活性ガスとして窒素を流して酸素を追い出してから炭化水素を導入した後、充満した窒素を天然ガスで置換してから圧縮機を起動し再度窒素を導入するという冗長な手順が必要であった。
【0010】
したがって、特許文献1に記載された天然ガス液化装置では、混合冷媒の各成分を混合可能に処理するために必要な設備の肥大化が避けられず、小型化が難しい上に起動に手間がかかるという問題があった。
【0011】
そこで本発明は、冷媒の成分を混合・充填する設備を簡素化でき、起動が短時間で簡易に行える天然ガス液化装置及びその起動方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の第1の天然ガス液化装置は、窒素と、メタンと、炭素数2~3の炭化水素のうち少なくとも1種と、炭素数4以上の炭化水素のうち少なくとも1種とを、それぞれ成分として含む混合冷媒によって天然ガスを液化する天然ガス液化装置において、前記混合冷媒を循環する冷媒循環経路に、混合冷媒を圧縮する冷媒圧縮機と、該冷媒圧縮機に圧縮された混合冷媒を冷却するアフタークーラーと、該アフタークーラーの冷却によって液化された混合冷媒を気相と液相とに分離する気液分離器と、該気液分離器によって分離された混合冷媒の気相と液相とを合流させた混合冷媒及び天然ガス供給源から供給される天然ガスを温端から導入する熱交換器と、該熱交換器の冷端から導出された混合冷媒を減圧する減圧弁と、が設けられ、前記熱交換器は、前記減圧弁によって冷却された混合冷媒を冷端から導入することにより、前記天然ガスを液化し、前記気液分離器には、常温で液体となる炭素数4以上の冷媒成分を液体で供給可能な高沸点冷媒貯槽が接続され、前記冷媒循環経路の、前記減圧弁と前記熱交換器との間には、低温で液体となる炭素数2~3の冷媒成分を液体で供給可能な低沸点冷媒貯槽が接続されていることを特徴としている。
また、本発明の第2の天然ガス液化装置は、前記冷媒循環経路から、前記冷媒圧縮機の上流側と前記アフタークーラーの下流側とをつなぐ接続経路が分岐され、前記接続経路にバッファータンクが設けられ、前記接続経路の前記バッファータンクの上流側に第1仕切弁が、下流側に第2仕切弁が、それぞれ取り付けられていることを特徴としている。
さらに、本発明の第3の天然ガス液化装置は、前記冷媒循環経路の、前記減圧弁の下流側に、混合冷媒を気相と液相とに分離するフラッシュボトルが設けられるとともに、該フラッシュボトルに前記低沸点冷媒貯槽及び前記高沸点冷媒貯槽が接続されており、
前記フラッシュボトルの混合冷媒の気相を導出する経路と、液相を導出する経路とが合流して、前記冷媒循環経路に接続し、前記液相を導出する経路に第3仕切弁が取り付けられていることを特徴としている。
【0013】
また、上記目的を達成するため、本発明の天然ガス液化装置の起動方法は、上記の第1の天然ガス液化装置の起動方法であって、前記天然ガス液化装置の起動前に、前記天然ガス液化装置の定常運転の条件と、前記天然ガス液化装置の冷媒系統の全容積とから混合冷媒の各成分の必要量を算出し、混合冷媒の各成分の必要量を算出した後に、前記冷媒系統に窒素ガスを充填するとともに、算出した窒素ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定し、窒素ガスが必要量充填された後に、前記冷媒系統に天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定し、天然ガスが必要量充填された後に、前記気液分離器に炭素数4以上
【0014】
また、本発明の第2の天然ガス液化装置の起動方法は、窒素ガスが必要量充填された後に、前記冷媒系統に天然ガスを所定量充填し、充填された天然ガスの量を冷媒系統の圧力及び温度から判定し、前記第1仕切弁及び前記第2仕切弁を閉じた状態で前記バッファータンクに天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量から前記冷媒系統に充填した天然ガスの量を引いた量が充填されたか否かを前記バッファータンクの圧力及び温度から判定することを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明の第3の天然ガス液化装置の起動方法は、炭素数4以上の冷媒成分が必要量充填された後に、前記冷媒圧縮機を作動させるとともに、前記熱交換器において、前記減圧弁を開いて混合冷媒を冷端から導入させることにより温端から導入される混合冷媒を冷却し、該冷却された混合冷媒を減圧弁によりさらに低温とすることで前記フラッシュボトルを冷却し、前記フラッシュボトルの冷却後に、前記冷媒貯槽から前記フラッシュボトルに、前記第3仕切弁を閉じた状態で炭素数2~3の冷媒成分を液体で充填するとともに、算出した冷媒成分の必要量が充填されたか否かを前記フラッシュボトル内の液面又は重量の変化、若しくは導入量の積算値から判定することを特徴としている。
【発明の効果】
【0016】
本発明の天然ガス液化装置によれば、冷媒圧縮機の動作前には、冷媒系統に液体のまま高沸点冷媒を供給でき、冷媒圧縮機の動作後は、冷媒系統に液体のまま低沸点冷媒及び高沸点冷媒を供給できるので、高沸点冷媒や低沸点冷媒を冷媒圧縮機に導入するための蒸発器や攪拌機を不要とすることができ、冷媒の成分を混合・充填する設備を簡素化できる。
【0017】
また、本発明の天然ガス液化装置の起動方法によれば、混合冷媒の各成分の必要量をあらかじめ算出し、算出した必要量を目標として、各冷媒成分が必要量充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度や導入量の積算値といった所定の手段によって判定するので、混合冷媒の組成を確認しながら各冷媒成分を冷媒系統に徐々に導入するよりも短時間で必要量を充填できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1形態例を示す天然ガス液化装置の系統図である。
図2】本発明の第2形態例を示す天然ガス液化装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1形態例を示す天然ガス液化装置11の系統図である。使用する混合冷媒は、一部に冷却対象であるメタン(CH4)を主成分とする天然ガスを流用しており、窒素(N2)、エタン(C2H6)、イソペンタン(i‐C5H12)を冷媒原料としている。
【0020】
図1に示されるように、天然ガス液化装置11は、導入された混合冷媒を圧縮する冷媒圧縮機12(12a,12b,12c)と、冷媒圧縮機12によって圧縮された混合冷媒を冷却して凝縮・液化させるインタークーラー13(13a,13b)及びアフタークーラー14と、インタークーラー13及びアフタークーラー14の冷却によって液化された混合冷媒を気相と液相とに分離する気液分離器15と、高圧のガスを一時貯留可能なバッファータンク16と、コールドボックス17内に納められ、熱交換によって天然ガスを冷却・液化する熱交換器18とを備えている。
【0021】
冷媒圧縮機12は、混合冷媒を大気温度下において約3~6MPaまで圧縮することができ、熱交換器18は、常温の温端18aと約-160℃の冷端18bを有している。
【0022】
また、天然ガス液化装置11は、被冷却物である天然ガスを供給する天然ガス供給源19と、液化天然ガス(LNG)を貯留するLNG貯槽20と、液化窒素を貯留する窒素貯槽21と、常温で液体である炭素数4以上の冷媒を貯留する高沸点冷媒貯槽22と、低温で液体である炭素数2~3の冷媒を貯留する低沸点冷媒貯槽23と、混合冷媒を循環させる冷媒循環経路L1~L5と、バッファータンク16を冷媒循環経路L1に繋げる接続経路L6,L7と、混合冷媒又はその成分を供給する冷媒供給経路L8~L12と、液化対象となる天然ガスを流す天然ガス液化経路L13とを備えている。
【0023】
本実施形態では、高沸点冷媒貯槽22には、沸点28℃のイソペンタンが常温で液体のまま貯留されており、低沸点冷媒貯槽23には、沸点-89℃のエタンが低温で液化した状態で貯留されている。
【0024】
なお、各経路L1~L13は、内部に気体又は液体を流通可能な適切な配管によって構成されている。
【0025】
冷媒循環経路L1は、窒素貯槽21から延びる冷媒供給経路L8と冷媒循環経路とを連結する連結部J1から気液分離器15まで接続されており、連結部J1を上流側として、経路内に、上流から冷媒圧縮機12a、インタークーラー13a、冷媒圧縮機12b、インタークーラー13b、冷媒圧縮機12c、アフタークーラー14が、この順に設けられている。
【0026】
冷媒循環経路L2は、気液分離器15によって分離された混合冷媒の気相部分を上部から導出可能に配設されており、冷媒循環経路L3は、気液分離器15によって分離された混合冷媒の液相部分を底部から導出可能に配設されている。冷媒循環経路L3には、混合冷媒の液相部分を下流側に送出可能にするポンプ24が設けられている。
【0027】
また、冷媒循環経路L2と冷媒循環経路L3とは、それぞれコールドボックス17内まで延ばされ、コールドボックス17内で、連結部J3にて合流している。なお、連結部J3は、熱交換器18の内部であってもよい。
【0028】
冷媒循環経路L4は、連結部J3から、熱交換器18内を温端18aから冷端18bにかけて通過して、通過した先に減圧弁25が取り付けられており、減圧弁25の下流側の連結部J4にて、後述する冷媒供給経路L10と接続している。
【0029】
冷媒循環経路L5は、連結部J4から、熱交換器18内を冷端18bから温端18aにかけて通過して、熱交換器18の温端18aを通過した先でコールドボックス17外まで延びて連結部J1に接続にされている。
【0030】
接続経路L6は、冷媒循環経路L1の、アフタークーラー14の下流側に設けられた連結部J2から分岐して延びており、第1仕切弁26aを介してバッファータンク16に接続している。接続経路L7は、バッファータンク16から延びており、第2仕切弁26bを介して連結部J7にて冷媒循環経路L5と接続している。
【0031】
したがって、第1仕切弁26aを開くことでアフタークーラー14から導出された混合冷媒の一部が、接続経路L6を通じてバッファータンク16に回収され、第2仕切弁26bを開くことでバッファータンク16内の混合冷媒が、接続経路L7を通じ、連結部J7を介して冷媒循環経路L5に導入される。
【0032】
冷媒供給経路L8は、窒素貯槽21から延びて連結部J1に接続されており、経路内には、上流から減圧弁27、蒸発器28、調節弁29が、この順に取り付けられている。
【0033】
したがって、窒素貯槽21から冷媒供給経路L8に送られた液化窒素は、減圧弁27によって減圧され、蒸発器28によって気化されて窒素ガスとなり、調節弁29によって所定の流量に調整されて、連結部J1を介して冷媒循環経路L1に供給される。
【0034】
窒素貯槽21に蒸発器28が繋げられているのは、窒素を気化させた状態で冷媒系統に導入することで、窒素を冷媒成分のみならず保安用の不活性ガスとしても利用可能にするためである。
【0035】
冷媒供給経路L9は、高沸点冷媒貯槽22から延びて、気液分離器15に接続されており、経路内に減圧弁30が取り付けられている。
【0036】
したがって、高沸点冷媒貯槽22から冷媒供給経路L9に送られたイソペンタンは、減圧弁30によって減圧され、気液分離器15に液体のまま供給される。
【0037】
冷媒供給経路L10は、低沸点冷媒貯槽23から延び、連結部J5を経てコールドボックス17内まで進入して、連結部J4に合流するように接続されており、経路内の低沸点冷媒貯槽23と連結部J5との間には、減圧弁31が取り付けられている。
【0038】
冷媒供給経路L11は、高沸点冷媒貯槽22から延びて、連結部J5に合流するように接続されており、経路内に減圧弁32が取り付けられている。
【0039】
したがって、低沸点冷媒貯槽23から冷媒供給経路L10に送られて、減圧弁31によって減圧されたエタンと、高沸点冷媒貯槽22から冷媒供給経路L11に送られて、減圧弁32によって減圧されたイソペンタンとは、液体のまま冷媒供給経路L10から連結部J4に供給される。
【0040】
冷媒供給経路L12は、天然ガス供給源19から延び、バッファータンク16に天然ガスを導入可能に接続されており、経路内には、減圧弁33が設けられている。
【0041】
したがって、バッファータンク16には、天然ガスの成分(主成分であるメタンの他に、エタン、プロパン、イソブタン等)が貯留される。
【0042】
天然ガス液化経路L13は、冷媒供給経路L12から連結部J6にて分岐され、コールドボックス17内に進入して熱交換器18に達しており、熱交換器18内を温端18aから冷端18bにかけて通過した先に減圧弁34が取り付けられており、減圧弁34の下流側がコールドボックス17外まで延びてLNG貯槽20に接続されている。
【0043】
天然ガス液化装置11の、LNGを製造する定常運転における混合冷媒の循環過程と天然ガスの液化過程とは次の通りである。
【0044】
まず、混合冷媒が冷媒循環経路L1に導入されると、冷媒圧縮機12a、インタークーラー13a、冷媒圧縮機12b、インタークーラー13b、冷媒圧縮機12c、アフタークーラー14に順次、導入されて、圧縮と冷却を繰り返して凝縮・液化して気液分離器15に導入される。
【0045】
気液分離器15に導入された混合冷媒は、気相と液相とに分離され、気相部分が冷媒循環経路L2に、液相部分が冷媒循環経路L3にそれぞれ導出される。このとき、液相部分はポンプ24によって経路内の配管に滞留することなく下流に送り出される。
【0046】
混合冷媒の気相部分と液相部分とは、コールドボックス17内の連結部J3で合流して冷媒循環経路L4に流れ、熱交換器18内に導入されて、温端18aから冷端18bにかけて通過する過程で常温から-160℃まで冷却される。
【0047】
熱交換器18で冷却された混合冷媒は、減圧弁25で減圧されてより低温になり、連結部J4を経て冷媒循環経路L5に導入された後、再び熱交換器18に達し、今度は熱交換器18内を冷端18bから温端18aにかけて通過する過程で、冷媒循環経路L4に流れる混合冷媒と天然ガス液化経路L13を流れる天然ガスとを冷却し、自身は常温に戻って気化する。
【0048】
天然ガス供給源19から天然ガス液化経路L13に導入された天然ガスは、熱交換器18内を温端18aから冷端18bにかけて通過する過程で、この混合冷媒との熱交換によって冷却され液化されたのち、減圧弁34によってさらに低温になってLNG貯槽20に貯留される。
【0049】
また、熱交換器18を再通過して、気化した混合冷媒は、冷媒循環経路L5を流下し、コールドボックス17を出て連結部J1に送られ、再度、冷媒循環経路L1に導入される。
【0050】
また、天然ガス液化装置11の起動方法は次の通りである。
【0051】
まず、天然ガス液化装置11の起動前に、天然ガス液化装置11の定常運転の条件と、天然ガス液化装置11の冷媒系統の全容積(定常運転中に冷媒循環経路L1~L5に繋がっている空間の容積)とから混合冷媒の各成分の必要量を算出する。ここで、混合冷媒の各成分の必要量は、単位消費動力当たりのLNG製造量が最大となる量である。
【0052】
混合冷媒の各成分の必要量を算出した後、天然ガス液化装置11の冷媒系統に、窒素貯槽21から窒素ガスを充填するとともに、算出した窒素ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定する。
【0053】
窒素ガスが必要量充填された後に、冷媒系統に天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定する。
【0054】
あるいは、冷媒系統に、天然ガス供給源19から天然ガスを所定量充填するとともに、充填された天然ガスの量を冷媒系統の圧力及び温度から判定した後、第1仕切弁26a及び第2仕切弁26bを閉じた状態でバッファータンク16に天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量から先に充填した量を引いた量が充填されたか否かをバッファータンク16の圧力及び温度から判定する。
【0055】
天然ガスが必要量充填された後に、気液分離器15に、高沸点冷媒貯槽22から定常運転に必要な量の炭素数4以上の冷媒成分(本形態例においては、イソペンタン)を充填するとともに、算出した冷媒成分の必要量が充填されたか否かを気液分離器15内の液面又は重量の変化若しくは導入量の積算値から判定する。
【0056】
さらに、炭素数4以上の冷媒成分が必要量充填された後に、冷媒圧縮機12(12a,12b,12c)を作動させて、冷媒循環経路L4の減圧弁25を開いて再導入させた混合冷媒により熱交換器18を冷却する。
【0057】
その後、低沸点冷媒貯槽23から連結部J4を介して冷媒循環経路L5に、炭素数2~3の冷媒成分(本形態例においては、エタン)を液体で充填するとともに、算出した冷媒成分(エタン)の必要量が充填されたか否かを低沸点冷媒貯槽23内の液面又は重量の変化若しくは導入した冷媒成分(エタン)の積算値から判定する。
【0058】
そして、炭素数2~3の冷媒成分が必要量充填された後に、天然ガス液化装置11の定常運転を開始する。
【0059】
すなわち、高沸点冷媒成分(イソペンタン)は、天然ガス液化装置11の停止中に、気液分離器15に導入する。このとき、この高沸点冷媒成分についての冷媒系統の内容積と運転中の圧力・温度から算出した必要量を導入すれば、冷媒充填作業を天然ガス液化装置11の起動前に完了できる。
【0060】
導入した液体の冷媒成分は、装置の起動後に冷媒循環経路L3に導出されるので、連結部J3で他の冷媒成分と合流し、攪拌機を用いることなく混合される。
【0061】
一方、天然ガス液化装置11の運転中には、圧力の低い減圧弁25の下流側に位置する連結部J4に液体の低沸点冷媒成分(エタン)を導入する。このとき、冷媒循環経路L4から連結部J4に流れてくる混合冷媒は、熱交換器18によって低沸点冷媒成分(エタン)と同等の温度に冷却されているので、低温で液体の低沸点冷媒成分(エタン)を蒸発させることなく混合できる。
【0062】
しかも、導入される減圧弁25の下流側の位置は、低温になっているので低温の低沸点冷媒成分(エタン)を導入しても熱応力が発生しない。
【0063】
加えて、これにより混合された冷媒成分は、冷媒循環経路L5で熱交換器18に再導入されることで気化され、冷媒循環経路L1を経由して冷媒圧縮機12に送られるので、運転中でも液体の冷媒成分を蒸発器を用いることなく冷媒圧縮機12に導入できる。
【0064】
なお、連結部J4に常温で液体の高沸点冷媒成分(イソペンタン)を導入する場合は、冷媒成分の温度差から、運転の安定性が損なわれたり、導入箇所に熱応力が発生したりする事態を避けるべく、時間を掛けて徐々に導入する必要があるが、これは、定常運転中に混合冷媒の組成を変化させることを目的とする場合に行われるので、本発明によらない従来の場合と同様であり、起動前に算出した必要量の充填は、気液分離器15に液体状態で行われている。
【0065】
このように、本発明の天然ガス液化装置11によれば、冷媒圧縮機12の動作前には、冷媒系統に液体のまま高沸点冷媒(イソペンタン)を供給でき、冷媒圧縮機12の動作後は、冷媒系統に液体のまま低沸点冷媒(エタン)及び高沸点冷媒(イソペンタン)を供給できるので、高沸点冷媒や低沸点冷媒を冷媒圧縮機12に導入するための蒸発器や攪拌機を不要とすることができ、冷媒の成分を混合・充填する設備を簡素化できる。
【0066】
また、天然ガス液化装置11の停止中も運転中も冷媒系統に液体のまま冷媒成分を供給でき、炭化水素に関しては、蒸発器によって液体の冷媒成分を蒸発させたり、蒸発させた冷媒成分を攪拌機によって混合したりする手間が不要となるので、必要な手順が減り、天然ガス液化装置11の起動を短時間で、かつ、簡易に行うことができる。
【0067】
さらに、天然ガスを、第1仕切弁26a及び第2仕切弁26bを閉じた状態でバッファータンク16に供給するので、天然ガス液化装置11の起動前で冷媒系統の圧力が低い状態であっても、バッファータンク16に冷媒成分としての天然ガス(主成分であるメタン)を高い圧力で充填でき、定常運転では低圧の冷媒循環経路L1やL5に、高い圧力で充填することなく導入作業を完了できることから、設備の設計圧力を低く保てるため、設備にかかる費用を低減できる。昇圧用の機器を用いることなくメタンの導入作業を完了させることができることから、冷媒の成分を混合・充填する設備を簡素化できる。
【0068】
また、本発明の天然ガス液化装置11の起動方法によれば、混合冷媒の各成分の必要量をあらかじめ算出し、算出した必要量を目標として、各冷媒成分が必要量充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度や導入量の積算値といった所定の手段によって判定するので、混合冷媒の組成を確認しながら各冷媒成分を冷媒系統に徐々に導入するよりも短時間で必要量を充填できる。
【0069】
また、冷媒系統に炭化水素を導入する前に、酸素と炭化水素が混合するのを避けるために保安用として不活性ガスを充填する必要があるが、不活性ガスとして窒素を充填するので、冷媒系統からの酸素追い出しと、冷媒成分としての窒素の充填を一度に実施でき、天然ガス液化装置11の起動時間を短縮し、起動手順を簡素化できる。
【0070】
しかも、天然ガス液化装置11の起動前に各冷媒成分を充填するので、冷媒成分の充填を天然ガス液化装置11の冷却や整定と並行して行わずに済み、手順を簡略化できる。
【0071】
図2は、本発明の第2形態例を示す天然ガス液化装置41の系統図である。
【0072】
図2に示されるように、図1の天然ガス液化装置11とは、コールドボックス17内の一部構成のみが異なっており、連結部J4に代えて、混合冷媒を気液分離して貯留可能なフラッシュボトル42が設けられるとともに、フラッシュボトル42からは、混合冷媒の気相部分を導出する接続経路L14と、混合冷媒の液相部分を導出する接続経路L15とが延びている。
【0073】
接続経路L14と接続経路L15とは、それぞれ連結部J4’で合流し、下流側で冷媒循環経路L5に接続しており、接続経路L15には、第3仕切弁43が取り付けられている。第3仕切弁43は、天然ガス液化装置41の定常運転中は開放されており、天然ガス液化装置41の起動前(停止中)は、閉鎖されている。
【0074】
また、冷媒供給経路L10は、フラッシュボトル42に接続されており、冷媒循環経路L5は、連結部J4に代えて、連結部J4’から接続している。なお、連結部J4’は、熱交換器18の内部であってもよい。
【0075】
天然ガス液化装置41における混合冷媒の循環過程では、第1形態例の天然ガス液化装置11とは一部異なり、熱交換器18で冷却され、減圧弁25で減圧されてより低温になった混合冷媒が、フラッシュボトル42に導入されて気液分離された後、混合冷媒の気相部分が接続経路L14から導出されるとともに、混合冷媒の液相部分が接続経路L15から導出され、連結部J4’で合流して冷媒循環経路L5に導入される。
【0076】
また、天然ガス液化装置41の起動方法は、次の通りである。
【0077】
まず、天然ガス液化装置41の起動前に、天然ガス液化装置41の定常運転の条件と、天然ガス液化装置41の冷媒系統の全容積(定常運転中に開放されている冷媒循環経路L1~L5及びL14,L15に繋がっている空間の容積)とから混合冷媒の各成分の必要量を算出する。ここで、混合冷媒の各成分の必要量は、単位消費動力当たりのLNG製造量が最大となる量である。
【0078】
混合冷媒の各成分の必要量を算出した後、天然ガス液化装置41の冷媒系統に、窒素貯槽21から窒素ガスを充填するとともに、算出した窒素ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定する。
【0079】
窒素ガスが必要量充填された後に、冷媒系統に天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量が充填されたか否かを冷媒系統の圧力及び温度から判定する。
【0080】
あるいは、冷媒系統に、天然ガス供給源19から天然ガスを所定量充填するとともに、充填された天然ガスの量を冷媒系統の圧力及び温度から判定した後、第1仕切弁26a及び第2仕切弁26bを閉じた状態でバッファータンク16に天然ガスを充填するとともに、算出した天然ガスの必要量から先に充填した量を引いた量が充填されたか否かをバッファータンク16の圧力及び温度から判定する。
【0081】
天然ガスが必要量充填された後に、気液分離器15に、高沸点冷媒貯槽22から定常運転に必要な量の炭素数4以上の冷媒成分(本形態例においては、イソペンタン)を充填するとともに、算出した炭素数4以上の冷媒成分の必要量が充填されたか否かを気液分離器15内の液面又は重量の変化若しくは導入量の積算値から判定する。
【0082】
さらに、炭素数4以上の冷媒成分が必要量充填された後に、冷媒圧縮機12(12a,12b,12c)を作動させて、熱交換器18において、冷媒循環経路L4の減圧弁25を開いて再導入させた混合冷媒により、温端18a側から導入される混合冷媒を冷却する。
【0083】
そして、温端18a側から冷端18b側に導出された混合冷媒は減圧弁25にてより低温となり、下流のフラッシュボトル42を冷却する。
【0084】
フラッシュボトル42の冷却後は、低沸点冷媒貯槽23からフラッシュボトル42に、第3仕切弁43を閉じた状態で炭素数2~3の冷媒成分(本形態例においては、エタン)を液体で充填するとともに、算出した炭素数2~3の冷媒成分の必要量が充填されたか否かをフラッシュボトル42内の液面又は重量の変化、若しくは導入量の積算値から判定する。
【0085】
そして、炭素数2~3の冷媒成分が必要量充填された後に、天然ガス液化装置41の定常運転を開始する。
【0086】
このように、本発明の天然ガス液化装置41によれば、低沸点冷媒成分は、導入の際、第3仕切弁43を閉じた状態でフラッシュボトル42に送られるので、一定量を短時間に導入しても、フラッシュボトル42に溜まって熱交換器18に流入せず、熱交換器18内部の温度分布や温度差が急変しないので、低沸点冷媒成分の必要量の充填を短時間で行うことができ、かつ、天然ガス液化装置41の安定した運転を保つことができる。
【0087】
また、本発明の天然ガス液化装置41の起動方法によれば、低沸点冷媒成分の必要量をあらかじめ算出し、算出した必要量を目標として、この冷媒成分が必要量充填されたか否かをフラッシュボトル42内の液面又は重量の変化、若しくは導入量の積算値によって判定するので、混合冷媒の組成を確認しながら低沸点冷媒成分を冷媒系統に徐々に導入するよりも短時間で必要量を充填できる。
【0088】
なお、本発明は、以上の形態例に限定されることなく、発明の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、本形態例では、混合冷媒として窒素、メタン、エタン、プロパン、イソブタン、イソペンタンを成分として含めているが、必ずしもこの組成に限る必要はなく、他の炭化水素を含めた組成にしてもよい。
【符号の説明】
【0089】
11…天然ガス液化装置、12(12a,12b,12c)…冷媒圧縮機、13(13a,13b)…インタークーラー、14…アフタークーラー、15…気液分離器、16…バッファータンク、17…コールドボックス、18…熱交換器、18a…温端、18b…冷端、19…天然ガス供給源、20…LNG貯槽、21…窒素貯槽、22…高沸点冷媒貯槽、23…低沸点冷媒貯槽、24…ポンプ、25…減圧弁、26a…第1仕切弁,26b…第2仕切弁、27…減圧弁、28…蒸発器、29…調節弁、30…減圧弁、31…減圧弁、32…減圧弁、33…減圧弁、34…減圧弁、41…天然ガス液化装置、42…フラッシュボトル、43…第3仕切弁、L1,L2,L3,L4,L5…冷媒循環経路、L6,L7…接続経路、L8,L9,L10,L11,L12…冷媒供給経路、L13…天然ガス液化経路、L14,L15…接続経路、J1,J2,J3,J4,J4’,J5,J6…連結部
図1
図2