(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】成膜装置、成膜方法、及び電子デバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/04 20060101AFI20240201BHJP
C23C 14/50 20060101ALI20240201BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20240201BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20240201BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240201BHJP
H01L 21/68 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C23C14/04 A
C23C14/50 F
H05B33/14 A
H05B33/10
H01L21/68 N
H01L21/68 F
H01L21/68 K
(21)【出願番号】P 2022012903
(22)【出願日】2022-01-31
(62)【分割の表示】P 2018179194の分割
【原出願日】2018-09-25
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】10-2017-0144133
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 博
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-031181(JP,A)
【文献】特開2012-140671(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0061230(KR,A)
【文献】特開2006-176809(JP,A)
【文献】特開2005-258848(JP,A)
【文献】国際公開第2005/087969(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/100867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/04
C23C 14/50
H10K 50/10
H05B 33/10
H01L 21/683
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクを通じて基板に蒸着材料を成膜するための成膜装置であって、
蒸着工程が行われる空間を定義する真空チャンバと、
前記チャンバ内に設置され、基板を保持する基板保持ユニットと、
前記真空チャンバ内に設置されて、マスクを保持して搬送するためのマスク保持ユニットと、
前記真空チャンバ内の前記基板の成膜面の反対側に配置され、前記基板の成膜面の反対側から前記マスクが
磁力による引力を受けることにより前記基板と前記マスクとを密着させるための密着手段と、
前記基板保持ユニット
及び/又は前記マスク保持ユニットを第1方向及び第1方向と直交する第2方向に移動させるか前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向を軸とした回転方向に回転させるためのアライメントステージと、
前記アライメントステージから分離して独立的に設置されて、前記密着手段を前記第3方向に移動させるとともに、前記第1方向、前記第2方向及び前記回転方向に移動しない密着手段第3方向駆動機構と、
を含む成膜装置。
【請求項2】
前記密着手段第3方向駆動機構は、前記真空チャンバに対して前記第1方向、前記第2方向、及び前記回転方向に固定されるように設置される請求項1に記載の成膜装置。
【請求項3】
マスクを通じて基板に蒸着材料を蒸着するための成膜方法であって、
請求項1又は請求項2に記載の成膜装置の真空チャンバ内に搬入されたマスクをマスク保持ユニットに載置する段階と、
前記マスク保持ユニットに載置された状態のマスクを密着手段に対して第1方向、前記第1方向と直交する第2方向、並びに、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向を軸とした回転方向に位置調整するマスクアライメント段階と、
位置調整されたマスクを前記真空チャンバに固定されたマスク台上に載置する段階と、
前記成膜装置の前記真空チャンバ内に基板を搬入して基板保持ユニットに載置する段階と、
前記基板保持ユニットに載置された基板を前記マスク台上に載置された状態のマスクに対して前記第1方向、前記第2方向及び前記回転方向に位置調整する基板アライメント段階と、
前記マスク台上に載置された状態のマスクに対して位置調整された基板をマスク上に載置する段階と、
前記密着手段を前記第3方向に移動させて基板に接触させる段階と、
マスクを通じて基板上に蒸着材料を成膜する段階と、
を含む成膜方法。
【請求項4】
請求項3に記載の成膜方法を用いて電子デバイスを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜装置及び成膜方法に関するもので、冷却板/マグネット板の駆動機構をアライメントステージから分離して独立させた構造を持つ成膜装置及びこれを用いた成膜方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、フラットパネル表示装置として有機EL表示装置が脚光を浴びている。有機EL表示装置は自発光ディスプレイであり、応答速度、視野角、薄型化などの特性が液晶パネルディスプレイより優れており、モニタ、テレビ、スマートフォンに代表される各種携帯端末などで既存の液晶パネルディスプレイを早いスピードで代替している。また、自動車用ディスプレイ等にも、その応用分野を広げている。
【0003】
有機EL表示装置の素子は2つの向かい合う電極(カソード電極、アノード電極)の間に発光を起こす有機物層が形成された基本構造を持つ。有機ELディスプレイ素子の有機物層と電極金属層は真空チャンバ内で、画素パターンが形成されたマスクを介して基板に蒸着物質を蒸着させることで製造されるが、マスク上の画素パターンを高精度で基板に転写するためには、基板への蒸着が行われる前にマスクと基板の相対的位置を精密に整列させなければならない。
【0004】
このために、基板を保持する基板保持ユニットが搭載されたアライメントステージを駆動して、基板保持ユニット上に保持された基板をマスク台上のマスクに対して位置調整するアライメント工程を遂行する。ところが、従来のアライメントステージ上には、基板保持ユニットの昇降機構以外に冷却板/マグネット板の昇降機構も一緒に搭載されるため、基板保持ユニット上の基板の位置をマスク台上のマスクの位置に対して調整させるためにアライメントステージをX方向又はY方向に移動させたりθ方向に回転させたりすると、基板だけではなく冷却板/マグネット板も一緒に移動及び/又は回転するようになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
搬送ロボットによって基板が成膜装置内に搬入される過程で、基板が搬送ロボットのハンド上で動いて、搬送ロボットのハンド上の基板の位置が決まった位置からずれる場合がある。この場合、搬送ロボットのハンドから基板を受け取った基板保持ユニット上の基板の位置も搬送ロボットによる基板の搬送誤差によって決まった位置からずれるようになる。
【0006】
このような搬送ロボットによる基板の搬送誤差に起因した基板のマスクに対する位置ずれは基板保持ユニットが繋がっているアライメントステージをXYθ方向に駆動させることで補正する。例えば、搬送ロボットの問題で基板が決まった位置よりZ軸を中心に5゜回転した状態で基板保持ユニット上に置かれるようになれば(すなわち、基板保持ユニット上の基板とマスク台上のマスクがZ軸を中心に5゜ずれるようになれば)、基板保持ユニットが繋がっているアライメントステージを5゜反対方向に回転させることで、マスク台上のマスクに対する基板の位置ずれを補正する。
【0007】
ところが、アライメントステージ上には冷却板/マグネット板昇降機構が基板保持ユニット昇降機構とともに設置されるので、基板の位置補正のためにアライメントステージを反対方向に5゜回転させれば、冷却板/マグネット板も同じく5゜位反対方向に回転をするようになる。従って、アライメントステージの駆動によって、基板の搬送誤差による基
板とマスク間の位置ずれは解消できるが、冷却板/マグネット板と基板との間の位置ずれや冷却版/マグネット板とマスクとの間の位置ずれが残るようになる。
【0008】
このような搬送ロボットによる基板の搬送誤差の程度は搬送ロボットの搬送動作毎に異なるので、冷却板/マグネット板と基板と間の位置ずれ、冷却板/マグネット板とマスクと間の位置ずれの程度にばらつきが生じる。これは成膜の時に接触する冷却板と基板の間の最終的な位置決めの精度を低下させて(これは基板に対する冷却板の冷却作用にばらつきをもたらす)、マグネット板によって密着される基板とマスクの密着状態にばらつきをもたらす。
【0009】
このような、基板の搬送誤差による冷却板/マグネット板と基板/マスクとの間の位置ずれ及びその位置ずれ量のばらつきは成膜ボケ、成膜位置ずれなど、製品不良や歩留まりの低下などの問題を招く。
【0010】
本発明は、搬送ロボットによる基板の搬送誤差が生じる場合にも、冷却板/マグネット板と基板/マスクとの間の位置ずれが生じることを抑制する成膜装置、成膜方法、電子デバイス製造方法を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1態様による成膜装置は、蒸着工程が行われる空間を定義する真空チャンバと、前記チャンバ内に設置され、基板を保持する基板保持ユニットと、前記真空チャンバ内に設置されて、マスクを保持して搬送するためのマスク保持ユニットと、前記真空チャンバ内の前記基板の成膜面の反対側に配置され、前記基板の成膜面の反対側から前記マスクが磁力による引力を受けることにより前記基板と前記マスクとを密着させるための密着手段と、前記基板保持ユニット及び/又は前記マスク保持ユニットを第1方向及び第1方向と直交する第2方向に移動させるか前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向を軸とした回転方向に回転させるためのアライメントステージと、前記アライメントステージから分離して独立的に設置されて、前記密着手段を前記第3方向に移動させるとともに、前記第1方向、前記第2方向及び前記回転方向に移動しない密着手段第3方向駆動機構と、を含む。
【0012】
本発明の第2態様による成膜方法は、上記の成膜装置の真空チャンバ内に搬入されたマスクをマスク保持ユニットに載置する段階と、前記マスク保持ユニットに載置された状態のマスクを密着手段に対して第1方向、前記第1方向と直交する第2方向、並びに、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向を軸とした回転方向に位置調整するマスクアライメント段階と、位置調整されたマスクを前記真空チャンバに固定されたマスク台上に載置する段階と、前記成膜装置の前記真空チャンバ内に基板を搬入して基板保持ユニットに載置する段階と、前記基板保持ユニットに載置された基板を前記マスク台上に載置された状態のマスクに対して前記第1方向、前記第2方向及び前記回転方向に位置調整する基板アライメント段階と、前記マスク台上に載置された状態のマスクに対して位置調整された基板をマスク上に載置する段階と、前記密着手段を前記第3方向に移動させて基板に接触させる段階と、マスクを通じて基板上に蒸着材料を成膜する段階と、を含む。
【0013】
本発明の第3態様による電子デバイス製造方法は本発明の第2態様による成膜方法を用いて電子デバイスを製造する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、冷却板/マグネット板昇降機構をアライメントステージから分離して独立させることで、搬送ロボットによる基板の搬送誤差の補正のためにアライメントステージをXYθ方向に移動させても、冷却板及びマグネット板はXYθ方向に移動しなくな
る。これによって、アライメントステージのXYθ方向の移動によって冷却板/マグネット板と基板/マスクと間の相対的な位置ずれが生じることを抑制することができ、成膜不良による製品不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は有機EL表示装置の製造ラインの一部の模式図である。
【
図3】
図3は実施例のアライメントステージの構成を示す模式図である。
【
図4】
図4はマスクアライメントを説明するための模式図である。
【
図5】
図5は有機EL表示装置の全体図及び有機EL表示装置の素子の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特に特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
本発明は、基板の表面に真空蒸着によってパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用することができる。基板の材料では硝子、高分子材料のフィルム、金属などの任意の材料を選択することができるし、また、蒸着材料としても有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL表示装置、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、有機EL表示装置の製造装置において蒸着材料を蒸発させて有機EL表示素子を形成するのは、本発明は好ましい適用例の一つである。
【0018】
<電子デバイス製造ライン>
図1は、電子デバイスの製造ラインの構成の一部を模式的に示す上視図である。
図1の製造ラインは、例えば、スマートフォン用の有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。スマートフォン用の表示パネルの場合、例えば約1800mm×約1500mmのサイズの基板に有機ELの成膜を行った後、該基板をダイシングして複数の小サイズのパネルが作製される。
【0019】
電子デバイスの製造ラインは、一般に、
図1に示すように、複数の成膜室11、12と、搬送室13とを有する。搬送室13内には、基板10を保持し搬送する搬送ロボット14が設けられている。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板を保持するロボットハンドが取り付けられた構造を持つロボットであり、各成膜室への基板10の搬入/搬出を行う。
【0020】
各成膜室11、12にはそれぞれ成膜装置(蒸着装置ともよぶ)が設けられている。搬送ロボット14との基板10の受け渡し、基板10とマスクの相対位置の調整(アライメント)、マスク上への基板10の固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置によって自動で行われる。
【0021】
以下、成膜室の成膜装置の構成に対して説明する。
【0022】
<成膜装置>
図2は、成膜装置2の構成を概略的に示す断面図である。以下の説明においては、鉛直
方向をZ方向とするXYZ直交座標系を使う。成膜時に基板が水平面(XY平面)と平行に固定されると仮定し、基板の短辺に平行な方向をX方向、長辺に平行な方向をY方向とする。またZ軸周りの回転角をθで表示する。
【0023】
成膜装置2は、成膜工程が行われる空間を定める真空チャンバ20を具備する。真空チャンバ20の内部は、真空雰囲気、或いは、窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気で維持される。
【0024】
成膜装置2の真空チャンバ20内の上部には、基板を保持して搬送する基板保持ユニット21、マスクを保持して搬送するマスク保持ユニット22、基板を冷却するための冷却板23、金属材質のマスクに磁力を印加するためのマグネット板24、位置調整されたマスクを置くマスク台25などが設けられ、成膜装置の真空チャンバ20内の下部には、蒸着材料が収納される蒸着源26などが設けられる。
【0025】
基板保持ユニット21は、搬送室13の搬送ロボット14から受け取った基板10を保持し、搬送する手段であり、基板ホルダとも呼ぶ。
【0026】
マスク保持ユニット22は、成膜装置2の真空チャンバ20内に搬入されたマスクをマスク台25上に載置するまでマスクを保持及び搬送する手段である。
【0027】
基板保持ユニット21の下には、真空チャンバ20に固定されたフレーム状のマスク台25が設置され、マスク台25には、基板10上に形成される薄膜パターンに対応する開口パターンを有するマスク251が置かれる。特に、スマートフォン用の有機EL素子を製造するのに使われるマスクは、微細な開口パターンが形成された金属製のマスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも呼ぶ。
【0028】
冷却板23は、基板保持ユニット21の支持部上方に設置されて、成膜時に基板10のマスク251とは反対側の面に密着され、成膜時の基板10の温度の上昇を抑制することで有機材料の変質や劣化を抑制する役目をする板型部材である。
【0029】
冷却板23の上には、金属製のマスク251に磁力を印加してマスクの撓みを防止し、マスク251と基板10とを密着させるためのマグネット板24が設けられる。マグネット板24は、永久磁石又は電磁石からなることができ、複数のモジュールに区画されることができる。また、マグネット板24は、冷却板23と一体に形成されることもできる。
【0030】
蒸着源26は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸着源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸着源26は、点蒸着源、線形蒸着源、リボルバ蒸着源など、用途によって多様な構成を持つことができる。
【0031】
図2に図示しなかったが、成膜装置2は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び、膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0032】
成膜装置2の真空チャンバ20の外部上面には、基板保持ユニット21、マスク保持ユニット22、冷却板23/マグネット板24などを鉛直方向(Z方向、第3方向)に昇降させるための昇降機構、及び基板のマスクに対するアライメント又は、マスクの冷却板/マグネット板に対するアライメントのために水平面に平行に(X方向、Y方向、θ方向に)基板保持ユニット21及び/又はマスク保持ユニット22を移動させるための駆動機構(アライメントステージ)などが設置される。
【0033】
本実施例においては、
図3を参照して後述するところのように、冷却板23及びマグネット板24をZ方向に昇降させるための昇降機構を、基板保持ユニット21をXYθ方向に移動させるためのアライメントステージから分離/独立させることで、アライメントステージのXYθ移動によってそれに繋がっている基板保持ユニット21がXYθ移動をする場合にも、冷却板/マグネット板昇降機構はXYθ移動をしないでXYθ方向に固定されるようにする。
【0034】
また、本実施例の成膜装置2には、マスクと基板のアライメントのために、真空チャンバ20の天井に設けられた窓を通じて基板及びマスクに形成されたアライメントマークを撮影するアライメント用カメラ(不図示)も設けられる。
【0035】
以下、本実施例の成膜装置で行われる成膜プロセスの各ステップを説明する。
【0036】
まず、成膜装置の真空チャンバ20内に新しいマスクが搬入されて、マスク保持ユニット22上に載置されると、マスク保持ユニット22に置かれたマスクの位置を冷却板23の位置に対して調整するマスクアライメント工程が行われる。冷却板23に対して位置調整されたマスクは、マスク保持ユニット22によって下降され、マスク台25上に置かれる。
【0037】
搬送室13の搬送ロボット14によって基板が、真空チャンバ20内に搬入されて基板保持ユニット21に置かれる。続いて、基板10とマスク251の相対的位置の測定及び調整を行う基板アライメント工程が行われる。基板アライメント工程が完了すると、基板保持ユニット21が昇降機構によって降りて基板10をマスク251上に置き、その後、冷却板23とマグネット板24が昇降機構によって降りることで基板10とマスク251を密着させる。
【0038】
この状態で、蒸着源26のシャッタが開かれて、蒸着源26のるつぼから蒸発された蒸着材料が、マスクの微細パターン開口を通して基板に蒸着される。
【0039】
基板に蒸着された蒸着材料の膜厚が所定の厚さに到逹すると、蒸着源26のシャッタが閉じ、その後、搬送ロボット14が、基板を真空チャンバ20から搬送室13に搬出する。
【0040】
所定の枚数の基板に対して、基板搬入から基板搬出までの工程を繰り返して行った後、蒸着材料が堆積されてこれ以上使うことができなくなったマスクを、成膜装置から搬出して、新しいマスクを成膜装置に搬入する。
【0041】
<アライメントステージ>
以下、
図3を参照して本実施例のアライメントステージ30の構成を説明する。
【0042】
真空チャンバ20の外部上面(第1外部面)には、基板10のマスクに対する位置調整及びマスクの冷却板/マグネット板に対する位置調整のために基板保持ユニット21及びマスク保持ユニット22をXYθ方向に移動させるためのアライメントステージ30、基板保持ユニット21をZ軸方向に昇降させるための基板Z軸昇降機構31(基板第3方向駆動機構)、及び冷却板23及び/又はマグネット板24をZ軸方向に昇降させるための冷却板Z軸昇降機構32(冷却板第3方向駆動機構)、マスク251をZ軸方向に昇降させるためのマスクZ軸昇降機構33(マスク第3方向駆動機構)が設置される。
【0043】
アライメントステージ30は、真空チャンバの外部上面に固定されたアライメントステージ駆動用モータ301(第1モータ)からリニアガイド(第1駆動力伝達機構)を通じ
てXYθ方向への駆動力を受ける。すなわち、真空チャンバ外側上面にガイドレール(不図示)が固定されて設置され、ガイドレール上にリニアブロックが移動可能に設置される。リニアブロック上にアライメントステージベース板302(第1ベースプレート)が搭載される。真空チャンバの外側上面に固定されたアライメントステージ駆動用モータ301からの駆動力によってリニアブロックをXYθ方向に移動させることで、リニアブロック上に搭載されたアライメントステージベース板302を、すなわちアライメントステージ30全体をXYθ方向に移動させることができる。
【0044】
基板保持ユニット21を昇降させるための昇降機構及びマスク保持ユニット22を昇降させるための昇降機構は後述するようにアライメントステージ30に搭載されるので、基板保持ユニット21及びマスク保持ユニット22は、アライメントステージがXYθ方向に移動するにつれて、これらそれぞれに保持された基板及びマスクとともにXYθ方向に移動する。
【0045】
基板Z軸昇降機構31は、基板保持ユニット21をZ軸方向に昇降させる機構であり、アライメントステージベース板302上に設置される。真空チャンバ20内の基板保持ユニット21は、真空チャンバ20の外部上面を通して基板Z軸昇降機構31に繋がる。基板Z軸昇降機構31は、基板昇降駆動用モータ311(第3モータ)と基板昇降駆動用モータ311の駆動力を基板保持ユニット21に伝達するための基板昇降駆動力伝達機構(第3駆動力伝達機構)としてリニアガイド312を含む。本実施例では、基板昇降駆動力伝達機構としてリニアガイド312を使っているが、本発明はここに限定されず、ボールねじなどを使うこともできる。
【0046】
冷却板Z軸昇降機構32は、冷却板23及び/又はマグネット板24をZ方向に駆動させるための冷却板昇降駆動用モータ321(第2モータ)及び冷却板昇降駆動力伝達機構(第2駆動力伝達機構)としてボールねじ322を含み、真空チャンバの外部上面に固定された冷却板Z軸昇降機構ベース板323(第2ベースプレート)上に設置される。本実施例では、冷却板昇降駆動力伝達機構としてボールねじ322を使っているが、本発明はここに限定されず、リニアガイドなどを使うこともできる。
【0047】
このように、本実施例では、冷却板Z軸昇降機構32が従来のように、アライメントステージベース板302に設置されるのではなく、アライメントステージ30から分離/独立されて真空チャンバ20の外部上面に固定された冷却板Z軸昇降機構ベース板323に設置されるので、アライメントステージ30がXYθ方向に移動しても、冷却板Z軸昇降機構32はXYθ方向には移動せずXYθ方向には固定される。本明細書において、冷却板Z軸昇降機構32がアライメントステージ30から分離して独立に設置されるということは、広い意味では、冷却板Z軸昇降機構32がアライメントステージ30上に設置されず、アライメントステージ30からXYθ方向への移動のための駆動力を受けないという意味であり、狭い意味では、冷却板Z軸昇降機構32がアライメントステージ30上に設置されず、XYθ方向において真空チャンバ20の外部上面に固定されるように設置される(すなわち、XYθ方向には移動或いは回転しないで固定される)という意味である。
【0048】
マスクZ軸昇降機構33は、マスク保持ユニット22をZ軸方向に昇降させるための機構であり、アライメントステージ30に搭載される。真空チャンバ20内のマスク保持ユニット22は、真空チャンバ20の外部上面を通してマスクZ軸昇降機構33に繋がっている。マスクZ軸昇降機構33は、マスク昇降駆動用モータ331(第4モータ)とボールねじ332(第4駆動力伝達機構)を含み、マスク交換の時に使用済みのマスクを搬送ロボットで排出して、新しいマスクを受け取り、マスクアライメント工程を経ってマスクをマスク台25上に載せるまでマスク保持ユニット22を昇降させる機能を遂行する。
【0049】
<マスクアライメント>
図4を参照してマスクの冷却板23/マグネット板24に対するアライメント工程を説明する。
【0050】
マスクの交換時期になれば、マスクZ軸昇降機構33は、マスク保持ユニット22をZ軸方向に駆動させて、使用済みのマスクを、マスク台25上の蒸着位置から搬送ロボットがマスクを受け取りすることができる排出位置に上昇させる。搬送ロボットは、使用済みのマスクをマスク保持ユニット22から受け取って、真空チャンバ外に排出し、新しいマスクを真空チャンバ内に搬入して、排出位置にとどまっているマスク保持ユニット22に新しいマスクを渡す。
【0051】
続いて、
図4(a)及び
図4(b)に図示したように、真空チャンバ20の外部上面に設置されたラフアライメント用カメラ40を使って、冷却板23の下面又は、マグネット板24の上面に設置されたアライメントマークプレート41のアライメントマーク411とマスク保持ユニット22に載せられているマスク251のアライメントマーク2511を撮影して、これら間の相対的な位置を測定する。本実施例のアライメントマークプレート41は
図4(c)に図示したように凸字状の平面形状を持ち、アライメントマークプレート41に形成されたアライメントマークは円形の開口であるが、本発明はこれに限定されない。
【0052】
アライメントマークの撮影結果に基づき、冷却板23/マグネット板24とマスク保持ユニット22に載せられているマスク251の相対的位置がXYθ方向にずれていることが判明した場合、アライメントステージ30によってマスク保持ユニット22をXYθ方向に移動させて、マスクを冷却板23/マグネット板24に対して位置調整する。この時、冷却板23/マグネット板24が設置された冷却板Z軸昇降機構32は、アライメントステージ30から分離及び独立されて設置されるため、マスク保持ユニット22に保持されたマスクに対して冷却板23/マグネット板24を相対移動させてこれらの位置を調整することができる。
【0053】
マグネット板24の上面にアライメントマークプレート41を設置する場合、マグネット板24への設置が簡単で設置位置を正確にできる。これに比べて、冷却板23の下面にアライメントマークプレート41を設置するためには、冷却板23の下面側にアライメントマークプレート41を埋め込まなければならないので設置が複雑になるが、ラフアライメント用カメラ40の焦点が合わせられているマスク251のアライメントマーク2511にもっと近く設置されることができるため、ラフアライメント用カメラ40によるアライメントマークの認識精度を高めることができる。
【0054】
マスクアライメントが完了すると、マスクZ軸昇降機構33によってマスク保持ユニット22を下降させてマスク251を排出位置からマスク台25上の蒸着位置で下降させた後、マスク台25上にマスク251を載置する。
【0055】
このようなマスクアライメント工程を通じて、マスク251と冷却板23/マグネット板24の位置を相対的に調整することができる。すなわち、従来では、冷却板Z軸昇降機構32がマスク保持ユニット22を昇降させるためのマスクZ軸昇降機構33とともにアライメントステージ30上に搭載されていたので、マスク保持ユニット22に置かれた状態のマスク251を冷却板23/マグネット板24に対して相対的に位置調整することができなかったが、本実施例においては、冷却板Z軸昇降機構32がアライメントステージ30から分離/独立されて設置されるので、マスク保持ユニット22に置かれた状態のマスク251を冷却板23/マグネット板24と相対的に位置移動して調整することができるようになる。
【0056】
<基板アライメント>
成膜装置2の真空チャンバ20内に基板10が、搬送室13の搬送ロボット14によって搬入されて搬入位置に待機した基板保持ユニット21に載置されると、基板Z軸昇降機構31によって基板保持ユニット21がZ軸方向に降りてマスクの上方の決まった高さの計測位置に移動する。続いて、ラフアライメント用カメラ及びファインアライメント用カメラによって基板のアライメントマークとマスク台25に置かれた状態のマスク251のアライメントマークが撮影されて基板とマスクの相対的な位置ずれが測定される。
【0057】
成膜装置2の真空チャンバ20内に基板を搬入する過程で、搬送ロボット14による搬送誤差によって、基板保持ユニット21に基板がずれて置かれた場合、基板とマスク台25に置かれたマスク251との間に相対的な位置ずれが発生する。この場合、基板保持ユニット21が繋がれているアライメントステージ30をXYθ方向に移動させて、基板10とマスク251の相対的な位置を調整する。このように基板をマスク台25上のマスク251に対して位置調整するためにアライメントステージ30をXYθ方向に移動させても、本実施例では、冷却板Z軸昇降機構32がアライメントステージ30から分離して独立に真空チャンバ20の外部上面に固定されているので、冷却板Z軸昇降機構32はXYθ方向に移動せず、マスクアライメント完了時の冷却板23/マグネット板24とマスク251との間の位置調整のされた状態を維持することができる。
【0058】
また、搬送ロボット14による基板の搬送誤差によって、基板10が冷却板23に対して相対的にずれた位置で基板保持ユニット21上に載置された場合、基板10をマスク台25上のマスク251に対して位置調整することで、マスクアライメント工程を通じてマスク台25上のマスク251に対し位置調整されている冷却板23と基板10との間の位置調整もできるようになる。
【0059】
基板のマスクに対するアライメントが完了すると、基板保持ユニット21は基板Z軸昇降機構31によってマスク上に降りてマスク上に基板を下ろす。
【0060】
続いて、冷却板Z軸昇降機構32の駆動によって冷却板23及びマグネット板24が降りて基板10の上面に置かれる。この際、マグネット板24の磁力によって金属性のマスク251が引力を受けるようになり、これにより、基板とマスクが密着状態になる。
【0061】
本実施例によれば、搬送ロボット14による基板の搬送誤差にもかかわらず冷却板23と基板の位置が互いに調整されるので冷却板23による基板の冷却作用を極大化させることができる。また、搬送ロボット14による基板の搬送誤差が生じる場合にも搬送誤差に起因するばらつきを低減することができるため、冷却板と基板の相対的位置補正のためのオフセットを安定化させることができる。また、マグネット板24とマスク251の相対的な位置も調整されるので、マグネット板24からの磁力により基板とマスクを密着させる場合の密着状態のばらつきを減らすことができる。その結果、成膜不良を効果的に低減することができる。
【0062】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施例の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0063】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図5(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図5(b)は1画素の断面構造を表している。
【0064】
図5(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数
備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組み合わせにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組み合わせで構成されることが多いが、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0065】
図5(b)は、
図5(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施例では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子毎に分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0066】
図5(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、第1電極64と正孔輸送層65との間には、第1電極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、第2電極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0067】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0068】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0069】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0070】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には、正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0071】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、基板保持ユニットにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66R
を成膜する。
【0072】
本実施例によれば、成膜装置の冷却板/マグネット板を昇降させる冷却板Z軸昇降機構32をアライメントステージ30から分離/独立することで、搬送ロボット14による搬送誤差を解消するためにアライメントステージ30を駆動して位置補正をする場合にも冷却板/マグネット板、基板、マスクの間の相対的位置を効果的に調整させることができるし、これによって成膜不良を効果的に低減させることができる。
【0073】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0074】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて第2電極68を成膜する。
【0075】
その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0076】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0077】
上記の実施例は本発明の一例を説明したもので、本発明は上記の実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形しても良い。
【符号の説明】
【0078】
10:基板
14:搬送ロボット
20:真空チャンバ
21:基板保持ユニット
22:マスク保持ユニット
23:冷却板
24:マグネット板
25:マスク台
30:アライメントステージ
31:基板Z軸昇降機構
32:冷却板Z軸昇降機構
33:マスクZ軸昇降機構
41:アライメントマークプレート