(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-31
(45)【発行日】2024-02-08
(54)【発明の名称】粘着剤組成物、粘着フィルム、粘着剤層付き光学フィルム、液晶パネル
(51)【国際特許分類】
C09J 133/04 20060101AFI20240201BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240201BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20240201BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C09J133/04
C09J11/06
C09J7/38
B32B27/00 M
(21)【出願番号】P 2022168423
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2021087526の分割
【原出願日】2017-04-28
【審査請求日】2022-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】長倉 毅
(72)【発明者】
【氏名】吉田 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】大津賀 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 史恵
(72)【発明者】
【氏名】菱沼 昌世
【審査官】小久保 敦規
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-024157(JP,A)
【文献】特開2017-066236(JP,A)
【文献】国際公開第2018/034230(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00 - 201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数C1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、
(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
(C)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマー(N-ビニル基含有ラクタム系モノマーを含有する(メタ)アクリル系ポリマーを除く。)であり、
前記アクリル系ポリマーが、0℃以下のガラス転移温度を有してなり、
前記(D)架橋剤が、3官能以上のイソシアネート化合物、及び2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選ばれた1種以上の架橋剤であり、
前記粘着剤組成物が、可塑剤を含有せず、かつ、(H)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ、もしくはオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなり、
前記帯電防止剤が、カチオンとアニオンとからなる融点25℃以上のイオン性化合物であり、前記アニオンが、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフルオロブタンスルホナートアニオン、からなる群から選択された1種であり、
前記カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種であり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記帯電防止剤を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることを特徴とする粘着剤組成物。
【請求項2】
前記(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが、水酸基を含有する共重合可能なモノマー、及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種以上であり、
前記水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘着剤組成物。
【請求項3】
樹脂フィルムの片面に、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項4】
光学フィルムの少なくとも一方の面に、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルム。
【請求項5】
請求項3に記載の粘着フィルムが用いられた、偏光板用粘着フィルム。
【請求項6】
離形フィルムの片面に、請求項1又は2に記載の粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層が、厚みが1μm~25μmで積層されてなり、離形フィルム/粘着剤層/離形フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルム。
【請求項7】
請求項4に記載の粘着剤層付き光学フィルムが用いられていることを特徴とする液晶パネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止剤を含有する粘着剤組成物、及び粘着フィルムに関する。さらに詳細には、帯電防止剤として、ノナフルオロブタンスルホナート等の、特定のスルホナートアニオンを有するイオン性化合物を含有する粘着剤組成物であり、それにより優れた粘着性能を含めた耐久性、及び帯電防止性能を有する粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板、位相差板などの光学部材を、粘着剤層を介して、液晶セルなどの被着体に貼合するための、種々の粘着フィルムが提案されている(例えば特許文献1~2参照)。
特許文献1には、ブチルアクリレートなどを主成分のモノマーとし、アクリルアミド化合物などを共重合させたアクリル系ポリマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献2には、炭素数4~8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主成分のモノマーとし、カルボキシル基含有モノマー、及び窒素含有ビニルモノマーを共重合させたアクリル系ポリマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-177022号公報
【文献】特開2012-201734号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光学フィルムの表面が、シリコーン化合物などを含有する組成物で防汚処理や低反射表面処理が施されている場合には、このような光学フィルムに使用された粘着フィルムを、被着体から剥離する時の剥離帯電圧が高くなる。
【0005】
また、帯電防止性能を備えた粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムの、帯電防止性能と、被着体への粘着性能を含めた耐久性との関係はトレードオフの関係であり、帯電防止性能を維持したまま、粘着性能を含めた耐久性を改善することは困難であった。
このため、光学フィルムの表面がシリコーン化合物などを含有する組成物で表面処理が施されている場合でも、粘着フィルムを前記光学フィルムから剥離する時の、剥離帯電圧を低く抑え、且つ、粘着性能を含めた耐久性を有する粘着剤組成物が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、優れた帯電防止性能と、粘着性能を含めた耐久性とを両立することが可能な粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムを提供するという新規な課題を解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、粘着剤組成物のアクリル系ポリマーを構成するアルキル(メタ)アクリレートのアルキル基の炭素数を特定の範囲に限定し、特定の組み合わせの2種以上のアルキル(メタ)アクリレートを共重合させた共重合体と、ノナフルオロブタンスルホナート等の、特定のスルホナートアニオンを有する融点25℃以上のイオン性化合物からなる帯電防止剤とを含有した新たな粘着剤組成物を作成した。このことにより、従来の粘着フィルム用粘着剤組成物と比べて、優れた粘着性能を含めた耐久性を有し、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する粘着剤組成物が得られることを見つけ出し、本発明を完成した。
特に、本発明に係わる粘着フィルムは、従来技術に比べて、優れた粘着性能を含めた耐久性を有し、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有することから、帯電防止性能と、粘着性能を含めた耐久性との両立に効果があることが判明した。
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、
前記アクリル系ポリマーが、0℃以下のガラス転移温度を有してなり、
前記(D)架橋剤が、3官能以上のイソシアネート化合物、及び2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選ばれた1種以上の架橋剤であり、
前記粘着剤組成物が、さらに、(H)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ、もしくはオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなり、
前記帯電防止剤が、カチオンとアニオンとからなる融点25℃以上のイオン性化合物であり、前記アニオンが、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフルオロブタンスルホナートアニオン、からなる群から選択された1種であり、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記帯電防止剤を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることを特徴とする粘着剤組成物を提供する。
【0009】
前記アクリル系ポリマーが、
(A)アルキル基の炭素数C1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、
(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、
(C)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種と、を共重合させた共重合体のアクリル系ポリマーであり、
前記アクリル系ポリマーのうち、前記(A)と前記(C)との合計100重量部に対して、前記(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種の合計を0.1~5重量部の割合で含有してなり、
前記粘着剤組成物を架橋させた厚みが20μmの粘着剤層を、総厚みが80μmの偏光板に貼り合せた試験片において、厚みが20μmの前記粘着剤層の無アルカリガラスに対する粘着力が6N/25mm以下であり、かつ、105℃×500hrの耐久性試験後にも発泡、及びハガレのないことが好ましい。
【0010】
前記カチオンが、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種であることが好ましい。
【0011】
前記粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層の、表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましい。
【0012】
前記(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーが、水酸基を含有する共重合可能なモノマー、及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーからなる群から選択された少なくとも1種以上であり、
前記水酸基を含有する共重合可能なモノマーが、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であり、
前記カルボキシル基を含有する共重合可能なモノマーが、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸からなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、樹脂フィルムの片面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されていることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0014】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、上記の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記樹脂フィルムの片面の、前記粘着剤層が積層された側とは反対面に、帯電防止処理および防汚処理が施されている粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、上記の粘着フィルムが用いられた、偏光板用粘着フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、離形フィルムの片面に、上記の粘着剤組成物を架橋させてなる粘着剤層が、厚みが1μm~25μmで積層されてなり、離形フィルム/粘着剤層/離形フィルムの構成であることを特徴とする粘着フィルムを提供する。
【0018】
また、本発明は、上記の粘着剤層付き光学フィルムが用いられていることを特徴とする液晶パネルを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、優れた帯電防止性能と、粘着性能を含めた耐久性とを両立することが可能な粘着剤組成物、及び粘着フィルムを提供することができる。
本発明に係わる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムは、被着体である光学フィルムの表面が、シリコーン化合物などを含有する組成物で表面処理が施されている場合であっても、従来技術に比べて、優れた粘着性能を含めた耐久性を有し、且つ、経時劣化しないで優れた剥離帯電防止性能を有する。
すなわち、本発明に係わる粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着フィルムは、優れた帯電防止性能と、優れた粘着性能を含めた耐久性とを備えているため、産業上の利用価値が極めて大である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
本実施形態の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーと、帯電防止剤と、架橋剤とを含有する粘着剤組成物であって、前記アクリル系ポリマーが、0℃以下のガラス転移温度を有してなり、前記(D)架橋剤が、3官能以上のイソシアネート化合物、及び2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選ばれた1種以上の架橋剤であり、前記粘着剤組成物が、さらに、(H)エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基からなる群から選ばれた少なくとも1種以上の官能基を含有するモノマータイプ、もしくはオリゴマータイプのシランカップリング剤を含有してなり、前記帯電防止剤が、カチオンとアニオンとからなる融点25℃以上のイオン性化合物であり、前記アニオンが、トリフルオロメタンスルホナートアニオン、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン、ノナフルオロブタンスルホナートアニオン、からなる群から選択された1種であり、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記帯電防止剤を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなることを特徴とする。
また、前記帯電防止剤は、温度25℃において固体の融点25℃以上のイオン性化合物であることが好ましく、さらに、前記帯電防止剤の融点が450℃以下であることが好ましい。
【0021】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、0℃以下のガラス転移温度を有する。また、アクリル系ポリマーは、(A)アルキル基の炭素数C1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種を主成分とする共重合体が好ましい。
【0022】
また、(A)アルキル基の炭素数C1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。
【0023】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種を、任意成分として共重合させることができる。(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、水酸基を含有する共重合可能なモノマー(ヒドロキシル基含有モノマー)、及びカルボキシル基を含有する共重合可能なモノマー(カルボキシル基含有モノマー)からなる群から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。すなわち、ヒドロキシル基含有モノマー、又はカルボキシル基含有モノマーのいずれか一方のみを選択して共重合させてもよく、ヒドロキシル基含有モノマー、及びカルボキシル基含有モノマーの両方を共重合させてもよい。
アクリル系ポリマーのうち、前記(A)と前記(C)との合計100重量部に対して、(B)水酸基及び/又はカルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種の合計を0.1~5重量部の割合で含有してなることが好ましく、0.1~4.2重量部の割合で含有してなることがより好ましく、0.1~2.8重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。
【0024】
また、ヒドロキシル基含有モノマーとしては、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミドなどからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。本実施形態の粘着剤組成物に含有させるヒドロキシル基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーのうち、前記(A)と前記(C)との合計100重量部に対して、0.1~5重量部の割合であることが好ましく、0.1~4.2重量部の割合であることがより好ましく、0.1~2.8重量部の割合で含有してなることが特に好ましい。
【0025】
また、カルボキシル基含有モノマーとしては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸などからなる化合物群の中から選択された少なくとも1種以上が挙げられる。本実施形態に係わる粘着剤組成物におけるカルボキシル基含有モノマーの割合は、アクリル系ポリマーのうち、前記(A)と前記(C)との合計100重量部に対して、0~5.0重量部である(カルボキシル基含有モノマーを共重合させない場合も許容される)ことが好ましく、カルボキシル基含有モノマーを共重合させる場合には、0.1~5重量部の割合であることがより好ましく、0.1~2.4重量部の割合であることが特に好ましく、0.1~1.2重量部の割合であることが最も好ましい。
【0026】
本実施形態の粘着剤組成物に用いられるアクリル系ポリマーは、(C)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーを、任意成分として共重合させてもよい。(C)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2-(1-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(2-ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(1-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(2-ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8-(1-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8-(2-ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーとして、芳香族基を含有する(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合には、アルキル(メタ)アクリレートモノマーとの共重合性に優れるので、好ましい。
【0027】
本実施形態に係わる粘着剤組成物に含有させるアクリル系ポリマーの製造方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。本実施形態に係わる粘着剤組成物は、用いられるアクリル系ポリマーの共重合体の重量平均分子量が、100~300万であることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、帯電防止性能を得るために、(G)帯電防止剤を含有する。(G)帯電防止剤は、カチオンとアニオンとからなる融点25℃以上のイオン性化合物であって、そのアニオンが、トリフルオロメタンスルホナートアニオン(CF3SO3
-)、ペンタフルオロエタンスルホナートアニオン(CF3CF2SO3
-)、ヘプタフルオロプロパンスルホナートアニオン(CF3CF2CF2SO3
-)、ノナフルオロブタンスルホナートアニオン(CF3CF2CF2CF2SO3
-)、からなる群から選択された1種である。本実施形態に係わる粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(G)帯電防止剤を0.01~10重量部の割合で必須成分として含有してなるのが好ましく、さらに粘着剤層の帯電防止性能を高めて表面抵抗率の下限値を1.0×10+10Ω/□以下にまで低減させることが必要な場合には、(G)帯電防止剤を0.01~15重量部の割合で含有するのがより好ましい。
【0029】
また、イオン性化合物に含有されるカチオンとしては、ピリジニウム、イミダゾリウム、ホスホニウム、スルホニウム、ピロリジニウム、グアニジニウム、アンモニウム、イソウロニウム、チオウロニウム、ピペリジニウム、ピラゾリウム、メチリウム、リチウム、モルホリニウムからなる群から選択された1種が挙げられる。
また、(G)帯電防止剤の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ノナフルオロブタンスルホン酸リチウム、1-メチル-3-オクチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホナート塩、3-メチル-1-オクチルピリジニウム トリフルオロメタンスルホナート塩、1-メチル-4-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート塩、4-メチル-1-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート塩、ジメチルジオクチルアンモニウム ペンタフルオロエタンスルホナート塩、1-メチル-3-オクチルピリジニウム ヘプタフルオロプロパンスルホナート塩、3-メチル-1-オクチルピリジニウム ヘプタフルオロプロパンスルホナート塩、1-メチル-3-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート塩、3-メチル-1-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート塩、1-オクチル-3-メチルイミダゾリウム ノナフルオロブタンスルホナート塩などが挙げられる。
【0030】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、(D)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物、及び2官能以上のエポキシ化合物からなる群から選択された少なくとも1種以上の架橋剤を含有する。(D)架橋剤として、3官能以上のイソシアネート化合物と、2官能以上のエポキシ化合物とが併用されてもよい。(D)架橋剤の少なくとも1種以上の合計の含有割合としては、例えば、アクリル系ポリマーの100重量部に対して0.01~5重量部が好ましく、0.01~2重量部がより好ましく、0.03~0.8重量部が特に好ましい。
【0031】
また、3官能以上のイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。
また、2官能以上のエポキシ化合物としては、グリコール類のジグリシジルエーテル、ビスフェノール類のジグリシジルエーテル、トリオール類のトリグリシジルエーテル、ジカルボン酸のジグリシジルエステル、ジグリシジル置換のアミン類、テトラグリシジル置換のジアミン類などが挙げられる。
【0032】
本実施形態に係わる粘着剤組成物は、さらに、(H)シランカップリング剤を含有する。(H)シランカップリング剤としては、1分子中に、少なくとも1つの有機官能基と、少なくとも1つの加水分解性基を有し、前記加水分解性基が、ケイ素原子に結合したアルコキシ基等である化合物が挙げられる。(H)シランカップリング剤は、エポキシ基、メルカプト基、酸無水物基からなる群から選択された少なくとも1種以上の官能基を含有する。(H)シランカップリング剤は、モノマータイプ又はオリゴマータイプの一方又は両方を、少なくとも1種以上用いることができる。シランカップリング剤の含有割合は、例えば、アクリル系ポリマーの100重量部に対して、0.01~2.0重量部が好ましく、0.01~1.0重量部がより好ましく、0.01~0.5重量部が特に好ましい。
【0033】
また、エポキシ基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジメトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルメチルジエトキシシラン、5,6-エポキシヘキシルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、メルカプト基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシランなどが挙げられる。
また、酸無水物基を有するシランカップリング剤としては、例えば、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-ジメチルエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3-トリメトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物、3-ジメチルメトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物、3-ジメチルエトキシシリルプロピルシクロヘキシルジカルボン酸無水物、3-トリメトキシシリルプロピルフタル酸無水物、3-トリエトキシシリルプロピルフタル酸無水物などが挙げられる。
また、オリゴマー化したアルコキシオリゴマー(アルコキシル基を含有するシリコーンアルコキシオリゴマー)なども、シランカップリング剤として用いることができる。
また、シリコーンアルコキシオリゴマーは、例えぱ、分子末端がSi-ORで表されるアルコキシシリル基で封鎖された、テトラアルコキシシロキサン、トリアルコキシシロキサン、ジアルコキシシロキサンなどの、分子量が600以上3000未満の比較的に分子量の小さいシリコーンアルコキシオリゴマーを用いるのが好ましい。
【0034】
本実施形態の粘着剤組成物は、上述の添加剤に限らず、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤が適宜に配合されてもよい。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いることができる。
【0035】
本実施形態の粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層は、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であることが好ましく、表面抵抗率が5.0×10+11Ω/□以下であることがより好ましく、表面抵抗率が2.0×10+11Ω/□以下であることが特に好ましい。表面抵抗率が大きいと、粘着剤層を被着体から剥離する時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣る。このため、粘着剤層の表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体から剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体に影響することを抑制できる。
【0036】
本実施形態の粘着剤組成物は、粘着剤組成物を架橋させた厚みが20μmの粘着剤層を、総厚みが80μmの偏光板に貼り合せた試験片において、厚みが20μmの粘着剤層の無アルカリガラスに対する粘着力が6N/25mm以下であり、かつ、105℃×500hrの耐久性試験後にも発泡、及びハガレのないものとなる。前記厚みが20μmの粘着剤層の無アルカリガラスに対する粘着力は、1N/25mm以上6N/25mm以下であることが好ましく、1.5N/25mm以上6N/25mm以下であることがより好ましい。
【0037】
本実施形態に係わる粘着剤層は、本実施形態の粘着剤組成物を樹脂フィルムや離形フィルム等の基材に塗布した後、粘着剤組成物を架橋することで得ることができる。
【0038】
本実施形態に係わる粘着剤層を、光学部材の貼合に用いる場合、粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させる必要がある。つまり、光学部材と粘着剤層との屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。このため、粘着剤層の屈折率が1.47~1.50であることが好ましい。
【0039】
本実施形態に係わる粘着フィルムは、本実施形態に係わる粘着剤層を、樹脂フィルムや離形フィルム等の基材の片面上に形成することで製造することができる。樹脂フィルムや離形フィルム(セパレーター)の基材としては、ポリエステルフィルムなどを用いることができる。離形フィルムには、粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離形剤などにより離形処理が施されてもよい。本実施形態に係わる粘着フィルムの基材となる樹脂フィルムには、樹脂フィルムの粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離形剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。また、本実施形態に係わる粘着フィルムの粘着剤層の厚みとしては、例えば、1μm~25μmの厚みが好ましく、3μm~20μmの厚みがより好ましく、5μm~20μmの厚みが特に好ましい。
【0040】
本実施形態に係わる粘着フィルムは、1つの粘着剤層の両面に、それぞれ離形フィルムの離形処理が施された面を合わせることで、「離形フィルム/粘着剤層/離形フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離形フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。光学部材が適用される機器としては、液晶パネル、有機ELパネル、タッチパネル等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に係わる粘着フィルムは、偏光板用粘着フィルムとして好適である。上記の光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。また、偏光板の片面に、上記の粘着フィルムを用いることにより、粘着剤層付き偏光板を提供することができる。上記の粘着剤層付き光学フィルムを用いて、液晶パネルを提供することができる。
このような、粘着剤層付き光学フィルムの積層構成の具体例としては、「離形フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「離形フィルム/粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層/離形フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/粘着剤層」、「粘着剤層/光学フィルム/粘着剤層」等が挙げられる。粘着剤層付き偏光板の積層構成の具体例として、「離形フィルム/粘着剤層/偏光板」、「離形フィルム/粘着剤層/偏光板/粘着剤層/離形フィルム」、「偏光板/粘着剤層」、「粘着剤層/偏光板/粘着剤層」等が挙げられる。液晶パネル等の部分構造として、これらの粘着剤層付き光学フィルム、又は粘着剤層付き偏光板が組み込まれてもよい。
なお、「離形フィルム/粘着剤層/光学フィルム」、「離形フィルム/粘着剤層/偏光板」などのように、離形フィルムを積層構成に含まれる場合には、離形フィルムを剥がした後、粘着剤層を介して、光学フィルム又は偏光板が被着体に貼合される。
【実施例】
【0042】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0043】
<アクリル系ポリマーの製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にブチルアクリレート50重量部、メチルアクリレート10重量部、2-エチルヘキシルアクリレート20重量部、6-ヒドロキシヘキシルアクリレート1.0重量部、4-ヒドロキシブチルアクリレート0.5重量部、ベンジルアクリレート20重量部とともに、溶剤(酢酸エチル)を100部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で8時間反応させ、実施例1のアクリル系ポリマー溶液を得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
モノマーの組成を各々、表1の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル系ポリマー溶液と同様にして、実施例2~6及び比較例1~3に用いるアクリル系ポリマー溶液を得た。
【0044】
<粘着剤組成物及び粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル系ポリマー溶液に対して、架橋剤としてD-110Nを0.1重量部及びT-Xを0.01重量部、帯電防止剤として1-メチル-3-オクチルピリジニウム ノナフルオロブタンスルホナート塩を1.5重量部、シランカップリング剤としてKBM-403を0.1重量部及びX-41-1805を0.1重量部の割合で加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、シリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離形フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去し、厚みが20μmの粘着剤層を得た。その後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を架橋させた粘着剤層を、離形フィルムの片面上に有し、離形フィルム/粘着剤層/離形フィルムの構成である、実施例1の粘着フィルムを得た。
[実施例2~6及び比較例1~3]
添加剤の組成を各々、表1の記載のようにした以外は、上記の実施例1の粘着フィルムと同様にして、実施例2~6及び比較例1~3の粘着フィルムを得た。
【0045】
【0046】
表1において、各成分の重量部は、(A)アルキル基の炭素数C1~C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種と、(C)芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマーの少なくとも1種との合計を100重量部として求めた。
なお、表1において、(D)、(H)、(G)の各欄では、アクリル系ポリマーを100重量部として、各成分の含有割合(重量部)を括弧( )内の数値として示した。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。G-1~G-7はすべて融点が25℃以上で、25℃において固体のイオン性化合物である。
【0047】
【0048】
なお、コロネート(登録商標)HX、同HL及び同Lは東ソー株式会社の商品名であり、D-110N、D-127N、タケネート(登録商標)D-140Nは三井化学株式会社の商品名であり、TETRAD(登録商標)-Xは三菱ガス化学株式会社の商品名である。また、HDIはヘキサメチレンジイソシアネートを意味し、IPDIはイソホロンジイソシアネートを意味し、XDIはキシリレンジイソシアネートを意味し、TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、TMPはトリメチロールプロパンを意味する。また、KBM-403、X-12-967C、X-41-1805は、いずれも、信越化学工業株式会社の商品名である。
【0049】
<試験方法及び評価>
実施例1~6及び比較例1~3における粘着フィルムを、それぞれ23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングしてから、以下の試験方法により評価した。
【0050】
<粘着力の試験方法>
実施例1~6及び比較例1~3における粘着フィルムから、片方の離形フィルムを剥がして、前記粘着フィルムの粘着剤層の片面を表出させた。その後、厚みが80μmの偏光板(樹脂フィルム;偏光子の保護層がTACである偏光板を使用)の片面に、前記粘着剤層を介して、前記粘着フィルムを貼合して、離形フィルム/粘着剤層/偏光板の構成である、粘着剤層付き偏光板を得た。さらに、粘着剤層付き偏光板の離形フィルムを剥がして、無アルカリガラス(コーニング社製 イーグルXG)のアセトンで洗浄した面に、前記粘着剤層を介して、粘着剤層付き偏光板を圧着ロールで貼合して、試験片を作成した。その後、当該試験片を、50℃、0.5MPa×20分間の条件で、オートクレーブ処理した。その後、23℃×50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過後の粘着剤層付き偏光板の剥離強度を引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に0.3m/minの速度で剥離した時の剥離強度を、無アルカリガラスに対する粘着剤層の粘着力とした。
【0051】
<表面抵抗率の試験方法>
粘着フィルムをエージングした後、被着体に貼り合わせる前に、離形フィルムを剥がして粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP-HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて粘着剤層の表面抵抗率を測定した。
【0052】
<耐久性の試験方法>
粘着力の測定と同様の方法で、10cm角の粘着剤層付き偏光板の離形フィルムを剥がして、無アルカリガラスのアセトンで洗浄した面に貼合して、試験片を作成した。その後、該試験片について、105℃×500hrの試験環境下における耐久性試験をした後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に粘着剤層の状態を目視で観察して、粘着剤層の耐久性を判断した。耐久性の判断基準は、粘着剤層の発泡及びハガレが全く無い場合を「○」、粘着剤層の一部に発泡、ハガレが発生している場合を「△」、粘着剤層の全体に発泡、ハガレが発生している場合を「×」と評価した。
【0053】
表3に、実施例1~6及び比較例1~3における、粘着フィルムについての評価結果を示す。「表面抵抗率」は、「m×10+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0054】
【0055】
実施例1~6の粘着フィルムは、粘着剤層の表面抵抗率が1.0×10+12Ω/□以下であり、20μmの粘着剤層の無アルカリガラスに対する粘着力が6N/25mm以下であり、かつ、105℃×500hrの耐久性試験後にも発泡、及びハガレがなく、粘着性能及び帯電防止性能が優れているのに加えて、耐久性に優れていた。
すなわち、実施例1~6の粘着フィルムについての、表3に示された評価結果では、本発明の課題を解決できたことが実証されている。
【0056】
比較例1の粘着フィルムは、粘着剤組成物に含有されている(G)帯電防止剤として、PF6
-アニオンを有するイオン性化合物が用いられているため、粘着剤層の表面抵抗率が高く、耐久性が悪かった。
比較例2の粘着フィルムは、粘着剤組成物に含有されているアクリル系ポリマーのガラス転移温度が0℃超過(計算値では、+4.8℃)となった。このため、粘着性能が悪く、粘着力が過大となり、粘着剤層の表面抵抗率が高く、耐久性が悪かった。なお、比較例2に用いたアクリル系ポリマーでは、ホモポリマーのガラス転移温度が高い値(0℃超過)であるメチルアクリレート及びアクリル酸の割合が多くされている。
比較例3の粘着フィルムは、粘着剤組成物に(H)シランカップリング剤も、(G)(G)帯電防止剤も配合されていないため、粘着力が過大となり、粘着剤層の表面抵抗率が高く、耐久性が悪かった。
このように、比較例1~3の粘着フィルムでは、本発明の課題を解決することができなかった。