(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20240202BHJP
C09D 175/02 20060101ALI20240202BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240202BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240202BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240202BHJP
C08G 18/10 20060101ALI20240202BHJP
C08G 18/32 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D175/02
C09D7/63
C09D7/61
C09D7/65
C08G18/10
C08G18/32 050
C08G18/32 037
(21)【出願番号】P 2019234988
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】506416400
【氏名又は名称】シーカ テクノロジー アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(72)【発明者】
【氏名】猪股 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 剛
【審査官】仁科 努
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-529509(JP,A)
【文献】特開2013-151645(JP,A)
【文献】国際公開第2010/012389(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0298335(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0378611(US,A1)
【文献】国際公開第2013/098186(WO,A1)
【文献】特表2012-532968(JP,A)
【文献】国際公開第2011/006606(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0178847(US,A1)
【文献】特表2010-513691(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0141903(US,A1)
【文献】国際公開第2008/076714(WO,A1)
【文献】特開2019-172941(JP,A)
【文献】特開2005-297200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 175/04
C09D 175/02
C09D 7/63
C09D 7/61
C09D 7/65
C08G 18/10
C08G 18/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレタンプレポリマーを含む主剤と、下記式(1)で表されるジアミンを含む硬化剤とを有
し、
前記硬化剤は、更に、ジエチルトルエンジアミンを含み、
前記ジエチルトルエンジアミンが有するアミノ基と下記式(1)で表されるジアミンが有する-NH-のモル比(アミノ基/-NH-)が、90/10~50/50である、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【化1】
式(1)中、L
1は3価以上の炭化水素基であり、
L
2は2価の炭化水素基であり、
L
1の炭素数の割合は、L
1の炭素数とL
2の炭素数の合計量の50%未満であり、
A、R
1、R
2はそれぞれ独立に、有機基であり、
nは、1以上である。
【請求項2】
前記硬化剤が、更に、可塑剤、溶剤、フィラー及び樹脂系中空体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含み、
前記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート化合物が、トルエンジイソシアネートを含み、
前記ウレタンプレポリマー全量中、未反応のトルエンジイソシアネートの含有量が1質量%以下であり、
前記式(1)において、L
1
及び/又はL
2
が、直鎖状の炭化水素基である、請求項1に記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防水材用組成物として、ウレタンプレポリマーを含有する主剤に、ポリアミンを含有する硬化剤を混合したものが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、「ポリイソシアナートとポリオールからなるイソシアナート基末端プレポリマーおよび硬化促進剤として酸無水物を含む主剤と、芳香族ポリアミン、脂肪族または脂環族ポリアミン、可塑剤および無機充填剤を含む硬化剤とからなる手塗り用ウレタン防水材組成物であって、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含む、手塗り用ウレタン防水材組成物。」が記載されている([請求項1])。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防水材用組成物には、硬化性、作業性(可使時間の確保)等が求められるところ、硬化性と可使時間の確保とは、トーレドオフの関係にある。
特に、低温環境下での硬化性と、高温多湿環境下での可使時間の確保とを優れたレベルでバランスさせることは非常に困難である。
このようななか、本発明者らは特許文献1を参考にして、硬化剤において、芳香族ポリアミンがジエチルトルエンジアミンを含む組成物を調製し、可使時間、硬化性を評価したところ、このような組成物は、可使時間が確保できたとしても、低温環境下での硬化性が低くなる場合、又は可使時間が確保できない場合があることが明らかとなった。
また、本発明者らは上記のような組成物の上にトップコートを付与する場合、上記のような組成物とトップコートとの密着性(トップコート密着性)が低くなる場合があることを見出した。
【0006】
そこで、本発明は、低温環境下での硬化性、トップコート密着性に優れ、高温多湿環境下で可使時間を確保できる、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、硬化剤が特定の構造を有するジアミンを含むことによって所望の効果が得られることを見出し、本発明に至った。
本発明は上記知見等に基づくものであり、具体的には以下の構成により上記課題を解決するものである。
【0008】
[1] ウレタンプレポリマーを含む主剤と、下記式(1)で表されるジアミンを含む硬化剤とを有する、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【化1】
式(1)中、L
1は3価以上の炭化水素基であり、
L
2は2価の炭化水素基であり、
L
1の炭素数の割合は、L
1の炭素数とL
2の炭素数の合計量の50%未満であり、
A、R
1、R
2はそれぞれ独立に、有機基であり、
nは、1以上である。
[2] 上記硬化剤は、更に、ジエチルトルエンジアミンを含む、[1]に記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
[3] 上記ジエチルトルエンジアミンが有するアミノ基と上記式(1)で表されるジアミンが有する-NH-のモル比(アミノ基/-NH-)が、90/10~50/50である、[2]に記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
[4] 上記硬化剤が、更に、可塑剤、溶剤、フィラー及び樹脂系中空体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
[5] 上記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート化合物が、トルエンジイソシアネートを含む、[1]~[4]のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
[6] 上記ウレタンプレポリマー全量中、未反応のトルエンジイソシアネートの含有量が1質量%以下である、[5]に記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
[7] 上記式(1)において、L
1及び/又はL
2が、直鎖状の炭化水素基である、[1]~[6]のいずれかに記載の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、低温環境下での硬化性、トップコート密着性に優れ、高温多湿環境下で可使時間を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について以下詳細に説明する。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリルまたはメタクリルを表す。
また、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、特に断りのない限り、各成分はその成分に該当する物質をそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。成分が2種以上の物質を含む場合、成分の含有量は、2種以上の物質の合計の含有量を意味する。
本明細書において、上記硬化性、トップコート密着性、及び可使時間の確保のうちの少なくとも1つがより優れることを、本発明の効果がより優れるということがある。
【0011】
[2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物]
本発明の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(本発明の組成物)は、
ウレタンプレポリマーを含む主剤と、下記式(1)で表されるジアミンを含む硬化剤とを有する、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物である。
【化2】
式(1)中、L
1は3価以上の炭化水素基であり、
L
2は2価の炭化水素基であり、
L
1の炭素数の割合は、L
1の炭素数とL
2の炭素数の合計量の50%未満であり、
A、R
1、R
2はそれぞれ独立に、有機基であり、
nは、1以上である。
【0012】
本発明の組成物はこのような構成をとるため、所望の効果が得られるものと考えられ、その理由はおよそ以下のとおりと推測される。
本発明の組成物において、硬化剤に含有されるジアミンは式(1)で表される構造を有する。
式(1)において、2つの-NH-の間に、-L1-L2-が存在する。L1の炭素数の割合は、L1の炭素数とL2の炭素数の合計量の50%未満である。つまり、L1の炭素数はL2の炭素数よりも小さい。そして、n個のAがL1に結合する。
このように、L1の炭素数がL2の炭素数よりも小さく、AがL1に結合することによって、式(1)中、Aが結合したL1と、L2とは、上記2つの-NH-の間の構造において非対称となり、このため、Aを有するL1に結合する-NH-の、ウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基に対する反応性は、L2に結合する-NH-の反応性よりも低いと考えられる。
以上のように、式(1)における2つの-NH-が有する上記イソシアネート基に対する反応性の違いによって、低温環境下における硬化性と高温多湿環境下における可使時間の確保とを高いレベルでバランスさせることができ、上記反応性の違いが本発明の組成物の上に付与されるトップコートとの密着性(トップコート密着性)にも寄与すると推測される。
以下、本発明の組成物に含有される各成分について詳述する。
【0013】
〔主剤〕
本発明の組成物が有する主剤は、ウレタンプレポリマーを含有する。
【0014】
<ウレタンプレポリマー>
本発明の組成物の主剤に含有するウレタンプレポリマーは、分子内に複数のイソシアネート基を分子末端に含有するポリマーである。
このようなウレタンプレポリマーとしては、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、ヒドロキシ基(OH基)に対してイソシアネート基(NCO基)が過剰となるように反応させることにより得られる反応生成物等を用いることができる。
ウレタンプレポリマーは、0.5~5質量%のNCO基を含有することができる。
【0015】
(ポリオール化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物は、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリオール化合物としては、例えば、ポリエーテルポリオール;ポリエステルポリオール;ポリマーポリオール、ポリカーボネートポリオール;ポリブタジエンポリオール;水素添加されたポリブタジエンポリオール;(メタ)アクリルポリオール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオールのような低分子量のポリオールが挙げられる。
【0016】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリプロピレンエーテルジオール(ポリプロピレングリコール:PPG)、ポリプロピレンエーテルトリオールのようなポリプロピレンエーテルポリオールが挙げられる。
【0017】
このようなポリオール化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、このウレタンプレポリマーを含む主剤の取り扱いが容易となり、この主剤を用いて得られる本発明の組成物からなるウレタン塗膜防水材の引張物性が適当となるという観点から、ポリプロピレンエーテルポリオールが好ましく、ポリプロピレンエーテルジオール、ポリプロピレンエーテルトリオールがより好ましい。
【0018】
(ポリイソシアネート化合物)
ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリイソシアネート化合物は、分子内にイソシアネート基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
ポリイソシアネート化合物に使用されるイソシアネートとしては、具体的には、例えば、TDI(トリレンジイソシアネート。トルエンジイソシアネートともいう。具体的には例えば、2,4-トリレンジイソシアネート(2,4-TDI。下記構造)
【0019】
【化3】
2,6-トリレンジイソシアネート(2,6-TDI))、MDI(例えば、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′-MDI)、2,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′-MDI))、1,4-フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H
6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H
12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられる。
【0020】
このようなポリイソシアネート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
なかでも、上記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート化合物は、得られるウレタンプレポリマーが低粘度となり、このウレタンプレポリマーを含む主剤の取り扱いが容易となるという観点から、トリレンジイソシアネート(トルエンジイソシアネート)、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、又はヘキサメチレンジイソシアネートを含むことが好ましく、トリレンジイソシアネート(トルエンジイソシアネート)を含むことがより好ましい。
【0021】
本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との組み合わせとしては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびヘキサメチレンジイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1種と、ポリプロピレンエーテルジオールおよび/またはポリプロピレンエーテルトリオールとの組み合わせが挙げられる。
【0022】
また、本発明においては、ウレタンプレポリマーを製造する際のポリイソシアネート化合物とポリオール化合物との量は、NCO基/OH基(当量比。インデックスともいう)が1.2~2.5となる量であることが好ましく、1.5~2.2となる量であることがより好ましい。当量比がこのような範囲である場合、得られるウレタンプレポリマーの粘度が適当となり、また、このウレタンプレポリマーを含有する主剤の貯蔵安定性が良好となる。
【0023】
更に、本発明においては、ウレタンプレポリマーの製造方法は特に限定されず、例えば、上述した当量比のポリオール化合物とポリイソシアネート化合物とを、50~130℃で加熱し撹拌することによって製造することができる。また、必要に応じて、例えば、有機錫化合物、有機ビスマス、アミンのようなウレタン化触媒を用いることができる。
【0024】
上記ウレタンプレポリマーを構成するポリイソシアネート化合物がトルエンジイソシアネートを含む場合、上記ウレタンプレポリマー全量中、未反応のトルエンジイソシアネートの含有量は、本発明の効果により優れるという観点から1質量%以下であることが好ましい。
【0025】
ウレタンプレポリマーは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0026】
上記主剤は、上記ウレタンプレポリマーの他に更に、可塑剤を含んでもよい。
可塑剤としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリス(クロロエチル)フォスフェート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
これらのうち、フタル酸系の可塑剤であることが好ましい。
【0027】
主剤中の可塑剤の含有量は、上記ウレタンプレポリマー100質量部に対して、1~30質量部であることが好ましい。
【0028】
〔硬化剤〕
本発明の組成物が有する硬化剤は、下記式(1)で表されるジアミンを含む。
【化4】
式(1)中、L
1は3価以上の炭化水素基であり、
L
2は2価の炭化水素基であり、
L
1の炭素数の割合は、L
1の炭素数とL
2の炭素数の合計量の50%未満であり、
A、R
1、R
2はそれぞれ独立に、有機基であり、
nは、1以上である。
なお、式(1)で表されるジアミンは、上記式(1)に表された2つの-NH-以外に、-NH-又は-NH
2を有さないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。
【0029】
本明細書において、上記式(1)で表されるジアミンを「特定ジアミン」と称する場合がある。
特定ジアミンは、式(1)で表されている2つの-NH-において、上記ウレタンプレポリマーが有するイソアネート基と反応することができる。しかし、上記2つの-NH-は、これらの間に存在するL1及びAとL2とによって上記2つの-NH-の間の構造が非対称となるため、上記イソアネート基に対する反応性が異なると考えられる。
本発明の組成物は、上記特定ジアミンを含有することによって、低温環境下での硬化性、トップコート密着性に優れ、高温多湿環境下で可使時間を確保できる。
【0030】
<式(1)で表されるジアミン>
・L1
上記式(1)中、L1は3価以上の炭化水素基である。
L1としての3価以上の炭化水素基としては、例えば、直鎖状の炭化水素基、環状の炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。
L1としての3価以上の炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、直鎖状の炭化水素基が好ましい。
L1の価数は、本発明の効果により優れるという観点から、4価以下が好ましく、3価がより好ましい。
L1としての3価以上の炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、本発明の効果により優れるという観点から、1~4が好ましい。
なお、本発明において、L1としての3価以上の炭化水素基の炭素数は、後述するL1の炭素数の割合に関連して、L2としての2価の炭化水素基の炭素数よりも小さくなる。
L1としての3価以上の炭化水素基としては、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタンから3個以上の水素原子を除いた残基が挙げられる。
【0031】
・L2
上記式(1)中において、L2は2価の炭化水素基である。
L2としての2価の炭化水素基としては、例えば、直鎖状の炭化水素基、環状の炭化水素基、又はこれらの組合せが挙げられる。
L2としての2価の炭化水素基は、本発明の効果により優れるという観点から、直鎖状の炭化水素基が好ましい。
L2としての2価の炭化水素基の炭素数は、特に制限されないが、本発明の効果により優れるという観点から、2~5が好ましい。
L2としての2価の炭化水素基としては、例えば、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンから2個の水素原子を除いた残基が挙げられる。
【0032】
上記式(1)において、L1及び/又はL2は、本発明の効果により優れるという観点から、直鎖状の炭化水素基であることが好ましく、L1及びL2が、直鎖状の炭化水素基であることがより好ましい。
【0033】
・A(A基)
上記式(1)中において、A(これを「A基」ともいう)は有機基である。
ただし、A基は、-NH-(イミノ基)又は-NH2(アミノ基)を有さない。
上記A基は、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であることが好ましい態様として挙げられる。
上記A基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの組合せを含む。飽和又は不飽和のいずれをも含む。)、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せを構成する炭素原子が、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子に置き換えられて、上記窒素原子等が、第3級の窒素原子、エーテル結合、スルフィド結合を形成してもよい(ただし、-NH-、-NH2を除く)。あるいは、上記脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せを構成する炭素原子又は水素原子が、上記のヘテロ原子と水素原子若しくは炭素原子との組合せによって構成される置換基(例えば、エステル結合、カルボニル基、ウレタン結合、ウレア結合などの2価の連記基;ヒドロキシ基、チオール基のような1価の置換基。ただし、-NH-、-NH2を除く。)に置き換えられてもよい。
【0034】
上記A基は、本発明の効果により優れるという観点から、ヘテロ原子を有さない(つまり、炭素原子と水素原子のみで構成される)、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基、これらの組合せが好ましく、ヘテロ原子を有さない脂肪族炭化水素基がより好ましく、ヘテロ原子を有さない飽和の脂肪族炭化水素基が更に好ましい。
【0035】
上記A基の鎖の長さ(A基の主骨格としての鎖の長さ)は、特に制限されないが、本発明の効果により優れるという観点から、炭素原子及び有してもよいヘテロ原子を含めて、炭素原子及び有してもよいヘテロ原子の合計の個数として、1~5が好ましく、1~3がより好ましい。
【0036】
上記A基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基が挙げられる。
【0037】
上記A基は、L1としての3価の炭化水素基を形成するいずれの炭素原子に結合してもよい。
上記A基は、本発明の効果により優れるという観点から、L1に結合する-NH-との位置関係において、上記-NH-に対して、L1において、α、β又はγ位の炭素原子に結合することが好ましく、α又はβ位の炭素原子に結合することがより好ましい。
【0038】
・n
上記式(1)中において、nは、1以上である。
nは、本発明の効果により優れるという観点から、1~3が好ましく、1がより好ましい。なお、nと、L1としての炭化水素基の価数について、例えば、nが1のとき、L1としての炭化水素基は3価となり、nが2のとき、L1としての炭化水素基は4価となる。
【0039】
・L1の炭素数とL2の炭素数の合計量
L1の上記炭素数とL2の上記炭素数の合計量は、特に制限されないが、本発明の効果により優れるという観点から、3~10が好ましい。
【0040】
・L1の炭素数の割合
本発明において、上記式(1)中において、L1の炭素数の割合は、L1の炭素数とL2の炭素数の合計量の50%未満である。
このため、本発明において、L1としての3価以上の炭化水素基の炭素数は、L2としての2価の炭化水素基の炭素数よりも小さい。L1の上記炭素数は、L2の上記炭素数よりも少なくとも1小さければよい。なお、L1の上記炭素数とL2の上記炭素数の合計が偶数である場合、L1の上記炭素数は、L2の上記炭素数よりも少なくとも2小さければよい。
【0041】
・・L1と、L2の関係
上記A基が、L1としての3価の炭化水素基を形成するいずれの炭素原子に結合してもよい場合、上記のように、L1の上記炭素数は、L2の上記炭素数よりも少なくとも1小さければよい。L1の上記炭素数とL2の上記炭素数の合計が偶数である場合も上記と同様である。
上記A基がL1としての3価の炭化水素基を形成するいずれの炭素原子に結合してもよい場合において、L1とL2との区別の観点から、L1の上記炭素数を、例えば、L2の上記炭素数よりも1小さい数とできる。上記合計が偶数である場合、L1の上記炭素数を、例えば、L2の上記炭素数よりも2小さい数とできる。
【0042】
・・・L1、L2が直鎖状の炭化水素基であり、nが1である場合
また、式(1)で表されるジアミンについて、L1、L2がそれぞれ上記直鎖状の炭化水素基であり(このとき-L1-L2-は全体として直鎖状の炭化水素基となる。以下同様)、nが1である(A基が1つである)場合、
上記L1において、R1に結合する窒素原子(式(1)中の、R1とL1の間の窒素原子を指す。以下同様)に直接結合する炭素原子から、1つのA基が結合する炭素原子までの炭化水素基を、L1とすることができ、
上記1つのA基が結合する炭素原子に対して、-NH-R2の方向に隣接して結合する炭素原子から、R2に結合する窒素原子に結合する炭素原子までの炭化水素基をL2とすることができる。
【0043】
式(1)において、L1、L2がそれぞれ上記直鎖状の炭化水素基であり、nが1である場合として、例えば、下記式(1X)で表される化合物が挙げられる。
R1-NH-(CH2)m-C*H(A)-(CH2)n-NH-R2 (1X)
式(1X)中、C*はA基が結合する炭素原子を表し、-(CH2)m-C*H-が式(1)中のL1に該当するとでき、-(CH2)n-が式(1)中のL2に該当するとでき、R1、R2、Aは式(1)と同様である。
【0044】
・・・L1、L2が直鎖状の炭化水素基であり、nが2以上である場合
次に、式(1)で表されるジアミンについて、L1、L2がそれぞれ上記直鎖状の炭化水素基であり、nが2以上である場合、
上記L1において、R1に結合する窒素原子に直接結合する炭素原子から、複数のA基のなかで最もL2に近い位置にあるA基が結合する炭素原子までの炭化水素基をL1とすることができ、
上記最もL2に近い位置にあるA基が結合する炭素原子に対して、-NH-R2の方向に隣接して結合する炭素原子から、R2に結合する窒素原子に結合する炭素原子までの炭化水素基をL2とすることができる。
【0045】
・・L1の炭素数の割合の好適範囲
L1の炭素数の割合は、本発明の効果により優れるという観点から、L1の炭素数とL2の炭素数の合計量の10~40%であることが好ましい。
上記L1の炭素数の割合の好適範囲は、上記の、式(1)で表されるジアミンについて、L1、L2がそれぞれ上記直鎖状の炭化水素基であり、nが1又は2以上である場合も同様である。
【0046】
・L2の炭素数の割合
上記式(1)中において、L2の炭素数の割合は、L1の炭素数とL2の炭素数の合計量の50%超となる。
【0047】
上記A基が、L1としての3価の炭化水素基を形成するいずれの炭素原子に結合してもよい場合、L1の上記炭素数がL2の上記炭素数よりも少なくとも1小さければよいこと等は上述のとおりである。
【0048】
上記L2の炭素数の割合は、本発明の効果により優れるという観点から、L1の炭素数とL2の炭素数の合計量の60~90%であることが好ましい。
上記L2の炭素数の割合の好適範囲は、上記の、式(1)で表されるジアミンについて、L1、L2がそれぞれ上記直鎖状の炭化水素基であり、nが1又は2以上である場合も同様である。
【0049】
・R1、R2
上記式(1)中において、R1、R2はそれぞれ独立に、有機基である。
上記R1又はR2としての有機基は、ヘテロ原子を有してもよい炭化水素基であることが好ましい態様として挙げられる。
上記炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基(直鎖状、分岐状、環状、又はこれらの組合せを含む。飽和又は不飽和のいずれをも含む。)、芳香族炭化水素基、これらの組合せが挙げられる。
上記炭化水素基を構成する炭素原子が、例えば、窒素原子、酸素原子、硫黄原子のようなヘテロ原子に置き換えられて、上記窒素原子等が、第3級の窒素原子、エーテル結合、スルフィド結合を形成してもよい(ただし、-NH-、-NH2を除く)。あるいは、上記炭化水素基を構成する炭素原子又は水素原子が、上記のヘテロ原子と水素原子若しくは炭素原子との組合せによって構成される置換基(例えば、エステル結合、カルボニル基、ウレタン結合、ウレア結合などの2価の連記基;ヒドロキシ基、チオール基のような1価の置換基。ただし、-NH-、-NH2を除く。)に置き換えられてもよい。
【0050】
R1としては、例えば、ヘテロ原子を有さない(つまり、炭素原子と水素原子のみで構成される)炭化水素基;
エステル結合、カルボニル基、ウレタン結合、ウレア結合などの2価の連記基を有する炭化水素基が挙げられる。
R2も上記R1と同様である。
【0051】
式(1)において、R
1、R
2がヘテロ原子を有さない(つまり、炭素原子と水素原子のみで構成される)炭化水素基である場合の具体例としては、例えば、以下式[1-3]~[1-5]で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0052】
式(1)において、R
1、R
2がエステル結合を有する炭化水素基である場合の具体例としては、例えば、以下式(2)で表される化合物が挙げられる。
【化6】
上記式(2)中、L
1、L
2、A、nは、式(1)のL
1、L
2、A、nとそれぞれ同じである。
式(2)中、R
3~R
6は、それぞれ独立に、炭化水素基を表す。
R
3~R
6としての炭化水素基は特に制限されない。例えば炭素数1~6のアルキル基が挙げられる。
【0053】
上記特定ジアミンは、本発明の効果により優れるという観点から、上記式(2)で表される化合物又は上記式(1X)表される化合物を含むことが好ましく、
上記式(2)において、2つのNHの間の構造が、上記式(1X)のように、-(CH
2)
m-C
*H(A)-(CH
2)
n-を有する化合物を含むことがより好ましく、
下記式[1-1]で表される化合物を含むことが更に好ましい。
【化7】
【0054】
上記式(1)で表される化合物の製造方法は特に制限されない。例えば従来公知の方法が挙げられる。具体的には例えば、式:NH2-L1(A)n-L2-NH2で表される第1級ジアミン(上記式中のL1、L2、A、nは、式(1)中のL1、L2、A、nとそれぞれ同じである。)と、式:R7OOC-CH=CH-COOR8で表されるマレイン酸ジエステル又はフマル酸ジエステル(上記式中のR7~R8はそれぞれ独立に炭化水素基を表し、式(2)中のR3~R6に対応する。)とを、上記第1級ジアミン1モルに対して、上記マレイン酸ジエステル等を2モル以上で用いて、これらを0~100℃の温度条件で反応させることによって製造することができる。
上記反応は、無溶媒下で、又は例えばメタノール、エタノールのような溶剤中で行うことができる。
過剰の出発物質等は、反応後、蒸留等によって除去できる。
【0055】
(その他の硬化剤成分)
本発明において、上記硬化剤は、低温環境下での硬化性だけでなく、室温程度の環境下(例えば5℃超35℃未満)における硬化性にも優れるという観点から、上記特定ジアミン以外に、1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物(活性水素基含有化合物)を更に含むことが好ましい。ただし、上記活性水素基含有化合物は、上記特定ジアミンを含まない。
【0056】
<活性水素基含有化合物>
本発明の組成物の硬化剤に更に含有しうる活性水素基含有化合物は、1分子中に2個以上の活性水素基を有する化合物であり、上述した主剤に含有する上記ウレタンプレポリマーを硬化させる成分(狭義の硬化剤成分)に該当する。
このような活性水素基含有化合物としては、例えば、1分子中に2個以上のヒドロキシ基(水酸基)を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のアミノ基および/またはイミノ基を有するポリアミン化合物などが好適に挙げられる。
【0057】
(ポリオール化合物)
硬化剤に用いられうるポリオール化合物は、ウレタンプレポリマーの製造の際に使用されるポリオール化合物と同様、ヒドロキシ基を2個以上有するものであれば特に限定されない。
【0058】
本発明においては、硬化剤に用いられうるポリオールは、2官能ポリオール(1分子中に水酸基を2個有する化合物)および/または3官能ポリオールで(1分子中に水酸基を3個有する化合物)あることが好ましく、2官能ポリオールおよび3官能ポリオールを併用することがより好ましい。
【0059】
2官能ポリオールは、ポリオキシアルキレンジオール、および/または、ひまし油系ジオールであることが好ましく、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシエチレンジオール、および、ひまし油系ジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0060】
3官能ポリオールは、ポリオキシアルキレントリオールであることが好ましく、ポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオールであることがより好ましい。
【0061】
2官能ポリオールの重量平均分子量は、5,000以下であることが好ましく、2,000~4,000であることがより好ましい。
3官能ポリオールの重量平均分子量は、3,000以上が好ましく、粘度や強度、接着性に優れるという観点から、5,000~10,000がより好ましい。
本発明において、ポリオールの重量平均分子量は、GPC法(溶媒:テトラヒドロフラン(THF))により得られたポリスチレン換算値である。
【0062】
(ポリアミン化合物)
硬化剤に用いられうるポリアミン化合物としては、具体的には、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,2-プロパンジアミン、イミノビスプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン(MPMD、デュポン・ジャパン社製)などの脂肪族ポリアミン;
4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジアミノビフェニル、2,4-ジアミノフェノール、2,5-ジアミノフェノール、o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,3-トリレンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,5-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、3,4-トリレンジアミン、メチルチオトルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミンなどの芳香族ポリアミン;等が挙げられ、これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
これらのうち、上記硬化剤は、本発明の効果により優れるという観点から、特定ジアミン以外に、更に、芳香族ポリアミンを含むことが好ましく、ジエチルトルエンジアミン(DETDA)を含むことがより好ましい。
【0063】
上記硬化剤が特定ジアミン以外に更に芳香族ポリアミンを含む場合、上記芳香族ポリアミンが有しうるアミノ基及びイミノ基と上記式(1)で表されるジアミンが有する-NH-のモル比(芳香族ポリアミンのアミノ基及びイミノ基の合計/特定ジアミンの-NH-)は、本発明の効果により優れるという観点から、90/10~50/50であることが好ましい。
【0064】
上記硬化剤が特定ジアミン以外に更にジエチルトルエンジアミンを含む場合、上記ジエチルトルエンジアミンが有するアミノ基と特定ジアミンが有する-NH-のモル比(アミノ基/-NH-)は、本発明の効果により優れるという観点から、90/10~50/50であることが好ましく、80/20~60/40がより好ましい。
【0065】
本発明の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物は、環境面の観点から、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を実質的に含有しないことが好ましい態様の1つとして挙げられる。本発明の2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物が3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)を実質的に含有しないとは、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(MOCA)の含有量が、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物全量中、0~0.1質量%であることを意味する。
【0066】
本発明において、硬化剤中の特定ジアミンの含有量(又は、硬化剤が更に上記活性水素基含有化合物を含有する場合の、特定ジアミン及び上記活性水素基含有化合物の合計含有量)は、主剤中のウレタンプレポリマーが有するイソシアネート基と、硬化剤中の特定ジアミンが有する-NH-(又は、硬化剤が更に上記活性水素基含有化合物を含有する場合、特定ジアミンが有する-NH-と上記活性水素基含有化合物の活性水素含有基(例えば、-NH-、-NH2、ヒドロキシ基)の合計量)とのモル比(NCO/活性水素含有基)が1.00~1.50となる量であることが好ましく、1.05~1.15となる量であることがより好ましい。
【0067】
上記硬化剤は、更に、可塑剤、溶剤、フィラー及び樹脂系中空体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0068】
<可塑剤>
本発明の組成物の硬化剤に更に含有しうる可塑剤は、特に限定されず、従来公知の可塑剤を用いることができる。
可塑剤としては、具体的には、例えば、アジピン酸ジイソノニル(DINA)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジラウリルフタレート(DLP)、ジブチルベンジルフタレート(BBP)、ジオクチルアジペート(DOA)、ジイソデシルアジペート(DIDA)、トリオクチルフォスフェート(TOP)、トリス(クロロエチル)フォスフェート(TCEP)、トリス(ジクロロプロピル)フォスフェート(TDCPP)、アジピン酸プロピレングリコールポリエステル、アジピン酸ブチレングリコールポリエステル等が挙げられる。
【0069】
これらのうち、フタル酸系の可塑剤であることが好ましい。
また、比重が1.0未満の可塑剤であることが好ましく、比重が0.95以上1.00未満の可塑剤であることがより好ましい。
【0070】
本発明においては、硬化剤中の可塑剤の含有量は、主剤100質量部に対して、70質量部以下であることが好ましく、20.0~60.0質量部であることがより好ましい。
【0071】
<溶剤>
本発明の組成物の硬化剤に更に含有しうる溶剤は、特に限定されず、従来公知の溶剤を用いることができる。
溶剤としては、例えば、アセテート系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、イソパラフィン系溶剤等が挙げられ、中でも、イソパラフィン系溶剤を用いることが好ましい。
ここで、イソパラフィン系溶剤とは、1分子内にイソパラフィンに由来する構造を含む溶媒であり、具体的には、例えば、IPソルベント(登録商標、出光興産社製)、メルベイユ(登録商標、昭石インターナショナル社製)、アイソパー(登録商標、エクソンモービル社製)が挙げられる。
【0072】
本発明においては、硬化剤中の溶剤の含有量は、主剤100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましく、5.0~25.0質量部であることがより好ましく、7.5~15.0質量部であることが更に好ましい。
【0073】
<樹脂系中空体>
本発明の組成物の硬化剤に更に含有しうる樹脂系中空体は、特に限定されず、従来公知の溶剤を用いることができる。
樹脂系中空体としては、例えば、中空球体の外殻が樹脂によって構成された、比重が0.05より大きく0.35未満のものが挙げられる。
【0074】
樹脂系中空体の外殻の材料としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、熱可塑性樹脂などが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、アクリロニトリル共重合体、塩化ビニリデン重合体などが挙げられ、中でも、アクリロニトリル共重合体が好ましく、より具体的には、アクリロニトリルとメタクリロニトリルとの共重合体、アクリロニトリルとビニル系モノマー(例えば、ブタジエン、スチレンなど)との共重合体などが挙げられる。
【0075】
樹脂系中空体の平均粒子径は、20μm以上であることが好ましく、20~60μmであることがより好ましい。
また、樹脂系中空体の比重は、0.09~0.15であることが好ましい。
このような樹脂系中空体の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法により製造することができる。
【0076】
本発明においては、硬化剤中の樹脂系中空体の含有量は、ウレタン塗膜防水材の耐久性、軽量化に優れるという観点から、硬化剤の総質量に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.5~10質量%であることがより好ましい。
【0077】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、補強剤(フィラー)、触媒(硬化触媒)、分散剤、酸化防止剤、老化防止剤、顔料などの添加剤を含有することができる。
添加剤は、主剤および/または硬化剤に添加することができる。
添加剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して使用することができる。
【0078】
補強剤(フィラー)としては、例えば、炭酸カルシウム(例えば重質炭酸カルシウム)、酸化チタン、酸化ケイ素、タルク、クレー、生石灰、カオリン、ゼオライト、けいそう土、微粉末シリカ、疎水性シリカ、カーボンブラック等が挙げられる。
補強剤の量は、ウレタン塗膜防水材の破断伸びに優れ、破断強度を補うという観点から、主剤100質量部に対して、40~160質量部であるのが好ましく、50~150質量部であるのがより好ましい。
【0079】
本発明においては、上記主剤と上記硬化剤との混合物の比重が、1.00~1.40であることが好ましく、1.20~1.29であることがより好ましい。
【0080】
本発明の組成物は、主剤と硬化剤とを十分に混合して使用することができる。
本発明の組成物は特定ジアミンを含有するので、例えば35℃、70%RH(相対湿度)のような高温多湿の環境下であっても、可使時間を確保することができ、作業性に優れる。
本発明の組成物は、例えば、0~80℃程度の温度条件下で硬化させることができる。
本発明の組成物は特定ジアミンを含有するので、例えば5℃以下のような低温の環境下であっても、硬化性に優れる。
本発明の組成物は、例えば、コンクリート、モルタル、金属のような基材に適用することができる。
本発明の組成物を上記基材に適用し、硬化させて、防水材を形成することができる。
本発明の組成物を施工する前に、プライマーを使用することができる。上記プライマーは特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0081】
本発明の組成物を用いて形成された防水材の上に、更に、トップコートを施してもよい。
本発明の組成物は特定ジアミンを含有するので、本発明の組成物から得られる防水材とトップコートとの密着性(トップコート密着性)に優れる。例えば5℃以下のような低温の環境下であってもトップコート密着性に優れる。
また、トップコートの上に本発明の組成物を適用してもよい。このため、本発明の組成物を建築物の新築、改修用途として使用することができる。
本発明の組成物に適用しうるトップコート層は特に制限されない。例えば、ウレタン変性されたポリ(メタ)アクレート、シリコーン変性されたポリ(メタ)アクリレート等によって形成されるトップコート層が挙げられる。
【実施例】
【0082】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0083】
〔ウレタンプレポリマーの調製〕
数平均分子量3000のポリプロピレンエーテルトリオール24g(T3000、旭硝子社製)と、数平均分子量2000のポリプロピレンエーテルジオール35g(D2000、旭硝子社製)と数平均分子量1000のポリプロピレンエーテルジオール15g(D1000、旭硝子社製)を反応容器に入れて、粘度調節のために可塑剤としてフタル酸ジイソノニル12.5g(DINP、ジェイ・プラス社製)を加え、110℃に加熱し、6時間脱水処理した。次いで、ここにトリレンジイソシアネート(トルエンジイソシアネート。コスモネートT80、三井武田ケミカル社製)をNCO基/OH基の当量比が1.90となるように加え、これを80℃に加熱し、窒素雰囲気下で12時間混合、かくはんし、ウレタンプレポリマー及び上記可塑剤を含む混合物を調製した。得られたウレタンプレポリマーのNCO基の含有量は、ウレタンプレポリマー全量中、3.3質量%であった。上記ウレタンプレポリマー中の未反応トリレンジイソシアネート(トルエンジイソシアネート)の含有量は0.78質量%であった。
上記のとおり得られた混合物を主剤として使用した。主剤中における上記ウレタンプレポリマー、上記可塑剤の割合は、主剤1000質量部中、ウレタンプレポリマーが875質量部、可塑剤が125部であった。
【0084】
〔式(1)で表されるジアミン[1-1]の製造方法〕
2-メチルペンタンジアミン1モル(分子量116。東京化成工業社製)を撹拌しながら、ここに、マレイン酸ジエチルエステル2モル(分子量172。東京化成工業社製)を、50℃以下の条件下で、滴下した。その後、混合物を窒素雰囲気、60℃の条件下で24時間撹拌し、精製し、生成物を得た。
得られた生成物を
1H-NMRによって分析し、上記生成物が下記式[1-1]で表される化合物であることを確認した。
下記式[1-1]中、2つの-NH-の間の構造:-C
*1H
2-C
*2H(CH
3)-(CH
2)
3-において、-C
*1H
2-C
*2H―がL
1(3価以上の炭化水素基)に該当し、C
*2に結合する-CH
3がA(n=1)に該当し、-(CH
2)
3-がL
2(2価の炭化水素基)に該当し、L
1の炭素数の割合は、L
1の炭素数とL
2の炭素数の合計量の40%であるので、下記式[1-1]で表される化合物は、本発明における式(1)で表されるジアミンに該当する。
上記のとおり得られた生成物を本発明における式(1)で表されるジアミンとして使用し、これを下記表1に「式(1)で表されるジアミン[1-1]」と表示した。
【化8】
【0085】
〔実施例および比較例〕
下記表1の硬化剤欄に示す成分を同表に示す量比(質量部)で使用し、これらを十分に混合して硬化剤を調製した。
次に、先に調製した上記主剤1000質量部と、上記のとおり調製した硬化剤(全量)と十分に混合して、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を調製した。
上記のとおり製造された2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を用いて、可使時間、硬化性、トップコート密着性を後述のとおり評価した。結果を下記表1に示す。
【0086】
〔可使時間〕
上記のとおり製造された2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を、5℃、23℃で50%RH(RH:相対湿度。以下同様)、又は35℃で70%RHの環境下に置いて、経時で、B型粘度計(BH粘度計、ローター;♯6、10rpm)を用いて、上記2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)の粘度を測定した。
なお、5℃の条件で低温環境下を、23℃かつ50%RHの条件で室温環境下を、35℃かつ70%RHの条件で高温多湿環境下を設定した(以下同様)。
2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)の製造直後から、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)の粘度が50Pa・sに達するまで時間を計測した。なお、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)の製造直後の粘度は50Pa・s未満であった。
本発明において、上記時間が30分以上であった場合、可使時間を確保できたと評価した。
上記時間が45分以上であった場合、可使時間を非常に長くできたと評価し、これを「◎」と表示した。
上記時間が30分以上45分未満であった場合、可使時間をほぼ確保できたと評価し、これを「〇」と表示した。
一方、上記時間が30分未満であった場合、可使時間を確保できなかったと評価し、これを「×」と表示した。
【0087】
〔硬化性〕
上記のとおり製造された2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を、5℃、23℃で50%RH、又は35℃で70%RHの環境下に24時間置いた。
24時間経過後、2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)が硬化した防水材(厚さ1cm)のアスカーA硬度を、JIS K6253-3:2012(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬さ)に準じてタイプAデュロメータで測定した。
本発明において、上記硬度が10以上であった場合、硬化性に優れるものとする。
上記硬度が20以上であった場合、硬化性が非常に優れたと評価し、これを「◎」と表示した。
上記硬度が10以上20未満であった場合、硬化性が優れたと評価し、これを「〇」と表示した。
一方、上記硬度が10未満であった場合(2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)が硬化しなかった場合を含む)、硬化性が悪かったと評価し、これを「×」と表示した。
【0088】
〔トップコート密着性〕
まず、上記のとおり製造された2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)を、基材の上に塗布し、5℃、23℃で50%RH、又は35℃で70%RHの環境下に24時間養生させた。
上記の、防水材養生48時間経過後、上記2液硬化型ウレタン塗膜防水材組成物(混合物)が硬化した防水材の上に、トップコート(横浜ゴム(株)製アーバントップH)を塗布し、上記の防水材養生と同じ環境下で、更に24時間後養生させた。
トップコートの塗布から24時間経過後に、JIS K5600-5-6 第5部-第6節に準じて、クロスカット試験を行った。
本発明において、上記クロスカット試験の試験結果の分類が、0、1又は2であった場合、トップコート密着性に優れたと評価した。
上記分類が0であった場合、トップコート密着性が非常に優れたと評価し、これを「◎」と表示した。
上記分類が1又は2であった場合、トップコート密着性がやや優れたと評価し、これを「〇」と表示した。
一方、上記分類が3以上であった場合、トップコート密着性が悪かったと評価し、これを「×」と表示した。
【0089】
【0090】
表1に示されている各成分は、以下のとおりである。
〔主剤〕
・ウレタンプレポリマー:上記のとおり製造したウレタンプレポリマー。上記ウレタンプレポリマーは上記のとおり主剤に含まれる。
【0091】
〔硬化剤(広義)〕
(狭義の硬化剤成分)
・芳香族アミン(ジエチルトルエンジアミン) DETDA:アルベマール日本株式会社製。下記構造の化合物の混合物。
【化9】
【0092】
・式(1)で表される化合物[1-1]:上記のとおり製造された、上記式[1-1]で表される構造を有する化合物。本発明における式(1)で表される化合物に該当する。
【0093】
・4,4-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン) MDBA:万華化学ジャパン株式会社製。下記構造。4,4-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン)は、本発明における式(1)で表されるジアミンが有するAを有さず、2つの-NH-の間の構造がメチレン基を挟んで左右で対称なので、本発明における式(1)で表されるジアミンに該当しない。
【化10】
・ポリテトラメチレンエーテルグリコール PTMG650:三菱ケミカル社製
・1,4-ブタンジオール:三菱ケミカル社製
【0094】
・可塑剤:フタル酸ジイソノニル(比重ρ:0.98)
・溶剤:イソパラフィン系溶剤(比重ρ:0.80)(IPソルベント(登録商標、出光興産社製))
【0095】
(フィラー)
・重質炭酸カルシウム(比重ρ:2.70):スーパーSS(丸尾カルシウム社製)
・酸化チタン(比重ρ:4.05):R820(石原産業社製)
【0096】
・樹脂系中空体:アクリロニトリル系(比重ρ:0.15、MFL-60CASK、松本油脂薬品工業社製)
【0097】
第1表に示す結果から明らかなように、式(1)で表されるジアミンを含有せず、代わりにジエチルトルエンジアミン及び4,4-メチレンビス(N-sec-ブチルアニリン)を含有する比較例1~3は、低温環境下における、硬化性及びトップコート密着性が悪かった。
式(1)で表されるジアミンを含有せず、代わりにジエチルトルエンジアミン及びポリテトラメチレンエーテルグリコールを含有する比較例4~6は、低温環境下における、硬化性及びトップコート密着性が悪かった。
式(1)で表されるジアミンを含有せず、代わりにジエチルトルエンジアミン及び1,4-ブタンジオールを含有する比較例7~9は、低温環境下における、硬化性及びトップコート密着性が悪かった。
式(1)で表されるジアミンを含有せず、代わりにジエチルトルエンジアミンを含有する比較例10は、高温多湿条件下において可使時間を確保できず、低温環境下におけるトップコート密着性が悪かった。
【0098】
これに対して、本発明の組成物は、低温環境下での硬化性、トップコート密着性に優れ、高温多湿環境下で可使時間を確保できた。