(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-01
(45)【発行日】2024-02-09
(54)【発明の名称】検査装置、リソグラフィ装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G03F 9/00 20060101AFI20240202BHJP
G01B 21/02 20060101ALI20240202BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20240202BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G01B21/02 A
G01B21/00 A
(21)【出願番号】P 2021545703
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(86)【国際出願番号】 EP2020051998
(87)【国際公開番号】W WO2020173641
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ロゼット,バス,ヨハネス,ペトルス
(72)【発明者】
【氏名】ムイユデルマン,ヨハネス,ヘンドリック,エヴァハルダス,アルデゴンダ
(72)【発明者】
【氏名】スミーツ,ベンジャミン,クネゴンダ,ヘンリカス
【審査官】菅原 拓路
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-200122(JP,A)
【文献】特表2017-517757(JP,A)
【文献】国際公開第2016/041741(WO,A2)
【文献】中国特許出願公開第104236407(CN,A)
【文献】Hans Butler,Position Control in Lithographic Equipment - An Enabler for Current-Day Chip Manufacturing,IEEE CONTROL SYSTEMS MAGAZINE,Volume 31, Issue 5, October 2011,米国,IEEE,2011年09月16日,28-47,DOI: 10.1109/MCS.2011.941882
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/00
9/00
G01B 11/02
21/00
H01L 21/68
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オブジェクトを検査するための検査装置であって、
前記オブジェクトの関心領域にわたって前記オブジェクトの第1のパラメータを測定すると共に、前記オブジェクト上の複数の場所において、前記第1のパラメータとは異なる、前記オブジェクトの第2のパラメータを測定するように構成された測定システムと、
前記第1のパラメータの測定の際に前記測定システムに対して前記オブジェクトを位置決めするように構成されたステージ装置と、を備え、
前記測定システムは、前記第1のパラメータの前記測定の際に、複数の異なる場所において前記第2のパラメータを測定するように構成されており、
前記ステージ装置は、前記ステージ装置のコンプライアンス特性に基づいて、前記測定システムに対して前記オブジェクトを位置決めするように構成されている、検査装置。
【請求項2】
前記オブジェクトは、基板を備える、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記基板は、前記複数の場所にそれぞれ配設された複数のマークを備える、請求項2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記オブジェクトの前記第1のパラメータは、前記関心領域の高さプロファイルを備え、
前記第2のパラメータは、前記複数のマークの位置を備える、請求項3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記関心領域は、露光プロセスの際に放射ビームによって露光される複数のターゲット領域を含む、請求項
1から4
の何れか一項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記ステージ装置は、
前記オブジェクトを保持するように構成されたオブジェクトテーブルと、
前記オブジェクトテーブルの位置を表すステージ位置信号を生成するように構成されたステージ位置測定システムと、
前記測定システムに対して前記オブジェクトテーブルを変位させるために前記オブジェクトテーブルに力を及ぼすように構成された位置決めデバイスと、
前記ステージ位置信号に基づいて前記位置決めデバイスを制御するように構成されるとともに、前記オブジェクトテーブルのコンプライアンス特性に基づいて前記位置決めデバイスを制御するように構成された制御システムと、
を備える、請求項1
から5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記制御システムは、前記測定システムに対する前記オブジェクトの軌道を表す設定点信号を受信するように構成されている、請求項6に記載の検査装置。
【請求項8】
前記軌道は、前記測定システムの測定場所に対する前記オブジェクトの所望位置を表す、請求項7に記載の検査装置。
【請求項9】
前記制御システムは、前記位置決めデバイスに必要な力を表す力信号を生成するように構成されており、
前記力信号は、前記設定点信号と前記オブジェクトテーブルのコンプライアンス特性とに基づく、請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記ステージ位置測定システムは、前記ステージ位置信号を生成するために1つ以上のセンサターゲットと協働するように構成された1つ以上のセンサを備える、請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
前記測定システムは、前記第1のパラメータを前記オブジェクトの第1の関心点で測定するように構成されると共に、前記第2のパラメータを前記オブジェクトの第2の関心点で測定するように構成されている、請求項10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記第1の関心点と前記第2の関心点とは、略一致する、請求項11に記載の検査装置。
【請求項13】
前記1つ以上のセンサは、前記ステージ装置に取り付けられ、
前記コンプライアンス特性は、基準に対する前記1つ以上のセンサの変形及び/又は変位を表す、請求項11又は12に記載の検査装置。
【請求項14】
請求項1から13の何れか一項に記載の検査装置を備える、リソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001] 本願は2019年2月26日に提出された欧州出願第19159362.3号の優先権を主張するものであり、同出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
[0002] 本発明は、リソグラフィの分野、とりわけリソグラフィ装置によって実施される露光プロセスの準備における半導体基板の特性の測定の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] リソグラフィ装置は、基板に所望のパターンを適用するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造において使用可能である。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)のパターン(「設計レイアウト」又は「設計」と称されることも多い)を、基板(例えばウェーハ)上に提供された放射感応性材料(レジスト)層に投影し得る。
【0004】
[0004] 半導体製造プロセスが進み続けるにつれ、回路素子の寸法は継続的に縮小されてきたが、その一方で、デバイス毎のトランジスタなどの機能素子の量は、「ムーアの法則」と通称される傾向に従って、数十年にわたり着実に増加している。ムーアの法則に対応するために、半導体産業はますます小さなフィーチャを作り出すことを可能にする技術を追求している。基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を用い得る。この放射の波長が、基板上にパターン形成されるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている典型的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm及び13.5nmである。例えば193nmの波長を有する放射線を使用するリソグラフィ装置よりも小さなフィーチャを基板上に形成するためには、4nm~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置が用いられ得る。
【0005】
[0005] 典型的には、半導体回路の製造プロセスは、半導体基板上への複数の異なる層の正確なパターニングを必要とする。半導体回路の適切な動作を保証するためには、層のシーケンスが適切に位置合わせされることが必要である。これを達成するために、基板には、例えばアライメントマーカと称される、複数のマーカが設けられ得る。これらのマークの位置は、典型的にはパターニングされた放射ビームの投影の前に判定され、パターニングされた放射ビームを適切に位置決めするために用いられる。
【0006】
[0006] 半導体基板の正確なパターニングは、正確なパターニングを得るために、パターニングされた放射ビームが投影される基板の表面が、実質的にパターニングされた放射ビームの焦点面内に維持されることも必要とする。これを達成するために、パターニングされた放射ビームの投影の前に、基板の高さプロファイルが判定され得る。この高さプロファイルは、その後、パターニングされた放射ビームの投影の際に、基板の位置を制御するために用いられ得る。
【0007】
[0007] より小さく且つより複雑な半導体回路の需要が高まり続けるにつれ、パターニングされる基板に関する情報の需要にも高まりがある。とりわけ、パターニングされた放射ビームのより正確な投影を可能にするために、より多くのアライメントマーク位置を判定する需要が高まっている。
【0008】
[0008] また、リソグラフィ装置のスループット、すなわち、単位時間当たりの処理される基板の数を増加させる需要も高まり続けている。
【0009】
[0009] 情報の需要の増加に起因して、この情報、例えば基板の高さプロファイル及び複数のアライメントマークの位置を得るのに必要とされる時間は、装置のスループットが増加するのではなく低下し得る程度にまで増加する傾向にある。
【発明の概要】
【0010】
[00010] 本発明の目的は、基板などのオブジェクトの状態についての必要な情報をより時間効率的な手法で得ることを可能にする装置を提供することである。
【0011】
[00011] 発明の第1の態様によれば、
オブジェクトの関心領域にわたってオブジェクトの第1のパラメータを測定すると共に、オブジェクト上の複数の場所において、第1のパラメータとは異なる、オブジェクトの第2のパラメータを測定するように構成された測定システムと、
第1のパラメータの測定の際に測定システムに対してオブジェクトを位置決めするように構成されたステージ装置と、
を備える、オブジェクトを検査するための検査装置が提供され、
測定システムは、第1のパラメータの測定の際に、複数の異なる場所において第2のパラメータを測定するように構成されており、
ステージ装置は、ステージ装置のコンプライアンス特性に基づいて、測定システムに対してオブジェクトを位置決めするように構成されている。
【0012】
[00012] 本発明による検査装置は、オブジェクトの第1のパラメータ及び第2のパラメータの組み合わせ測定シーケンスを実施することを可能にし、第1のパラメータの測定の際に、オブジェクトを位置決めするステージ装置のコンプライアンス特性を勘案しながら、オブジェクトが測定システムに対して位置決めされる。コンプライアンス特性を勘案することによって、測定シーケンスは、より迅速に実施され得ると共により正確になり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
[00013] 本発明の実施形態を、添付の概略図を参照して、単なる例示として以下に説明する。
【0014】
【
図2】
図1のリソグラフィ装置の一部の詳細図を図示する。
【
図4】本発明による検査装置において適用可能な測定システムを図示する。
【
図6】本発明において適用可能なオブジェクトテーブルの上面図を図示する。
【
図7】本発明による検査装置によって適用可能な制御スキームを図示する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[00014] 本文献では、「放射」及び「ビーム」という用語は、特に明記しない限り、紫外線(例えば、波長が365nm、248nm、193nm、157nm又は126nmの波長)及びEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含む、すべてのタイプの電磁放射を包含するために使用される。
【0016】
[00015] 「レチクル」、「マスク」、又は「パターニングデバイス」という用語は、本文で用いる場合、基板のターゲット部分に生成されるパターンに対応して、入来する放射ビームにパターン付き断面を与えるため使用できる汎用パターニングデバイスを指すものとして広義に解釈され得る。また、この文脈において「ライトバルブ」という用語も使用できる。古典的なマスク(透過型又は反射型マスク、バイナリマスク、位相シフトマスク、ハイブリッドマスク等)以外に、他のそのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイ及びプログラマブルLCDアレイを含む。
【0017】
[00016]
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。リソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射、又はEUV放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに連結されたマスクサポート(例えばマスクテーブル)MTと、基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構築された第2のポジショナPWに連結された基板サポート(例えばウェーハテーブル)WTと、パターニングデバイスMAによって放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ以上のダイを含む)上に投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0018】
[00017] 動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して放射源SOから放射ビームを受ける。照明システムILは、放射を誘導し、整形し、及び/又は制御するための、屈折型、反射型、磁気型、電磁型、静電型、及び/又はその他のタイプの光学コンポーネント、又はそれらの任意の組み合わせなどの様々なタイプの光学コンポーネントを含むことができる。イルミネータILを使用して放射ビームBを調節し、パターニングデバイスMAの平面において、その断面にわたって所望の空間及び角度強度分布が得られるようにしてもよい。
【0019】
[00018] 本明細書で用いられる「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、及び/又は液浸液の使用や真空の使用のような他のファクタに合わせて適宜、屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁気光学システム、及び/又は静電気光学システム、又はそれらの任意の組み合わせを含む様々なタイプの投影システムを包含するものとして広義に解釈するべきである。本明細書で「投影レンズ」という用語が使用される場合、これは更に一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0020】
[00019] リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wとの間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を例えば水のような比較的高い屈折率を有する液体で覆うことができるタイプでもよい。これは液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技法に関する更なる情報は、参照により本願に含まれる米国特許6952253号明細書に与えられている。
【0021】
[00020] リソグラフィ装置LAは、2つ以上の基板サポートWTを有するタイプである場合もある(「デュアルステージ」とも呼ばれる)。こうした「マルチステージ」機械において、基板サポートWTを並行して使用するか、及び/又は、一方の基板サポートWT上の基板Wにパターンを露光するためこの基板を用いている間に、他方の基板サポートWT上に配置された基板Wに対して基板Wの以降の露光の準備ステップを実行することができる。そのようなデュアルステージリソグラフィ装置は、例えば本発明による検査装置を装備していてもよく、検査装置の測定システムは、露光プロセスの準備において、基板についての測定プロセスを実施するように構成されており、その測定プロセスは、例えば、基板の高さプロファイルを判定すること及び基板上に存在する複数のマークの位置を判定することを伴う。したがって、そのような実施形態においては、本発明による検査装置のステージ装置は、基板サポートWTとして具現化され得る。一実施形態においては、本発明による検査装置において適用される位置決めデバイスは、例えば以下で説明されるような第2のポジショナPWと同じように具現化され得る。とりわけ、適用される位置決めデバイスは、ロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを備え得る。
【0022】
[00021] 基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは測定ステージを含むことができる。測定ステージは、センサ及び/又はクリーニングデバイスを保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性又は放射ビームBの特性を測定するよう配置できる。測定ステージは複数のセンサを保持することができる。クリーニングデバイスは、例えば投影システムPSの一部又は液浸液を提供するシステムの一部のような、リソグラフィ装置の一部をクリーニングするよう配置できる。基板サポートWTが投影システムPSから離れている場合、測定ステージは投影システムPSの下方で移動することができる。
【0023】
[00022] 動作中、放射ビームBは、マスクサポートMT上に保持されている、例えばマスクのようなパターニングデバイスMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(設計レイアウト)によってパターンが付与される。パターニングデバイスMAを横断した放射ビームBは投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分Cに集束させる。第2のポジショナPW及び位置測定システムIFを用いて、例えば、放射ビームBの経路内の集束し位置合わせした位置に様々なターゲット部分Cを位置決めするように、基板サポートWTを正確に移動させることができる。同様に、第1のポジショナPMと、場合によっては別の位置センサ(
図1には明示的に図示されていない)を用いて、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めすることができる。パターニングデバイスMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を用いて位置合わせすることができる。図示されている基板アライメントマークP1、P2は専用のターゲット部分を占有するが、それらをターゲット部分間の空間に位置付けることも可能である。基板アライメントマークP1、P2は、これらがターゲット部分C間に位置付けられている場合、スクライブラインアライメントマークとして知られている。
【0024】
[00023] 本発明を明確にするために、デカルト座標系が用いられる。デカルト座標系は、3つの軸、すなわちx軸、y軸、及びz軸を有する。3つの軸のそれぞれは、他の2つの軸と直交する。x軸を中心とする回転は、Rx回転と呼ばれる。y軸を中心とする回転は、Ry回転と呼ばれる。z軸を中心とする回転は、Rz回転と呼ばれる。x軸及びy軸は水平面を定義するのに対して、z軸は垂直方向にある。デカルト座標系は本発明を限定しているのではなく、明確化のためにのみ用いられる。代わりに、円筒座標系などの別の座標系を用いて本発明を明確にすることもある。デカルト座標系の向きは、例えばz軸が水平面に沿った成分を有するように異なることがある。
【0025】
[00024]
図2は、
図1のリソグラフィ装置LAの一部のより詳細な図を示す。リソグラフィ装置LAは、基礎フレームBFと、バランス・マスBMと、メトロロジフレームMFと、振動絶縁システムISと、を備え得る。メトロロジフレームMFは投影システムPSを支持する。また、メトロロジフレームMFは、位置測定システムPMSの一部を支持し得る。メトロロジフレームMFは、振動絶縁システムISを介して基礎フレームBFによって支持されている。振動絶縁システムISは、振動が基礎フレームBFからメトロロジフレームMFへと伝搬するのを防止又は低減するために配置される。
【0026】
[00025] 第2のポジショナPWは、基板サポートWTとバランス・マスBMとの間に駆動力を提供することによって基板サポートWTを加速させるために配置される。駆動力は基板サポートWTを所望の方向に加速させる。運動量保存により、駆動力はバランス・マスBMにも、同じ規模で、しかし所望の方向とは反対の方向で、付与される。典型的には、バランス・マスBMの質量は、第2のポジショナPW及び基板サポートWTの移動部の質量よりも有意に大きい。
【0027】
[00026] 一実施形態においては、第2のポジショナPWはバランス・マスBMによって支持される。例えば、その場合第2のポジショナPWは、基板サポートWTをバランス・マスBMの上方に浮揚させるための平面モータを含む。別の一実施形態においては、第2のポジショナPWは基礎フレームBFによって支持される。例えば、その場合第2のポジショナPWはリニアモータを含み、その場合第2のポジショナPWは基板サポートWTを基礎フレームBFの上方に浮揚させるためのガスベアリングのようなベアリングを含む。
【0028】
[00027] 位置測定システムPMSは、基板サポートWTの位置を判定するのに適した任意のタイプのセンサを備えていてもよい。位置測定システムPMSは、マスクサポートMTの位置を判定するのに適した任意のタイプのセンサを含んでいてもよい。センサは、干渉計又はエンコーダなどの光学センサであってもよい。位置測定システムPMSは、干渉計とエンコーダとの複合システムを備えていてもよい。センサは、磁気センサ、静電容量センサ、又は誘導センサなど、別のタイプのセンサであってもよい。位置測定システムPMSは、基準、例えばメトロロジフレームMF又は投影システムPSに対して位置を判定し得る。位置測定システムPMSは、位置を測定することによって又は速度若しくは加速など位置の時間微分を測定することによって、基板テーブルWT及び/又はマスクサポートMTの位置を判定してもよい。
【0029】
[00028] 位置測定システムPMSはエンコーダシステムを備えていてもよい。エンコーダシステムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、2006年9月7日に提出された米国特許出願第2007/0058173A1号明細書から既知である。エンコーダシステムは、エンコーダヘッドと、格子と、センサとを備える。エンコーダシステムは第1放射ビーム及び第2放射ビームを受け得る。第1放射ビーム並びに第2放射ビームはいずれも、同じ放射ビーム、すなわち原放射ビームに由来し得る。第1放射ビームと第2放射ビームとのうち少なくとも一方は、原放射ビームを格子で回折することによって生成される。第1放射ビームと第2放射ビームとの両方が原放射ビームを格子で回折することによって生成される場合には、第1放射ビームは第2放射ビームとは異なる回折次数を有する必要がある。異なる回折次数とは、例えば、+1次、-1次、+2次、及び-2次である。エンコーダシステムは第1放射ビームと第2放射ビームとを光学的に組み合わせて複合放射ビームにする。エンコーダヘッド内のセンサが、複合放射ビームの位相又は位相差を判定する。センサは、その位相又は位相差に基づいて信号を生成する。信号は、格子に対するエンコーダヘッドの位置を表す。エンコーダヘッドと格子とのうち一方は、基板構造WT上に配置されてもよい。エンコーダヘッドと格子とのうち他方は、メトロロジフレームMF又は基礎フレームBF上に配置されてもよい。例えば、複数のエンコーダヘッドがメトロロジフレームMF上に配置され、その一方で1つの格子が基板サポートWTの上面に配置される。別の一例においては、1つの格子が基板サポートWTの底面に配置され、1つのエンコーダヘッドが基板サポートWTの下方に配置される。
【0030】
[00029] 位置測定システムPMSは干渉計システムを含んでいてもよい。干渉計システムは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる、1998年7月13日に提出された米国特許第6,020,964号明細書から既知である。干渉計システムは、ビームスプリッタと、ミラーと、基準ミラーと、センサとを含み得る。放射ビームはビームスプリッタによって基準ビームと測定ビームとに分割される。測定ビームはミラーへ伝搬し、ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。基準ビームは基準ミラーへ伝搬し、基準ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。ビームスプリッタでは、測定ビームと基準ビームとが組み合わされて複合放射ビームにされる。複合放射ビームはセンサに入射する。センサは複合放射ビームの位相又は周波数を判定する。センサは、その位相又は周波数に基づいて信号を生成する。信号はミラーの変位を表す。一実施形態においては、ミラーは基板サポートWTに接続される。基準ミラーはメトロロジフレームMFに接続されてもよい。一実施形態においては、測定ビームと基準ビームとは、ビームスプリッタではなく追加的な光学コンポーネントによって組み合わされて複合放射ビームにされる。
【0031】
[00030] 第1のポジショナPMはロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを含んでいてもよい。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対して高精度で小さな移動範囲にわたってマスクサポートMTを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対して比較的低精度で大きな移動範囲にわたってショートストロークモジュールを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールとの組み合わせによって、第1のポジショナPMは、投影システムPSに対して高精度で大きな移動範囲にわたってマスクサポートMTを移動させることができる。同様に、第2のポジショナPWはロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを含んでいてもよい。ショートストロークモジュールは、ロングストロークモジュールに対して高精度で小さな移動範囲にわたって基板サポートWTを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールは、投影システムPSに対して比較的低精度で大きな移動範囲にわたってショートストロークモジュールを移動させるように配置される。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールとの組み合わせによって、第2のポジショナPWは、投影システムPSに対して高精度で大きな移動範囲にわたって基板サポートWTを移動させることができる。
【0032】
[00031] 第1のポジショナPM及び第2のポジショナPWは、各々が、マスクサポートMT及び基板サポートWTをそれぞれ移動させるためのアクチュエータを備えている。アクチュエータは、単軸、例えばy軸に沿って駆動力を提供するためのリニアアクチュエータであってもよい。複数の軸に沿って駆動力を提供するために、複数のリニアアクチュエータが適用されてもよい。アクチュエータは、複数の軸に沿って駆動力を提供するための平面アクチュエータであってもよい。例えば、平面アクチュエータは、基板サポートWTを6自由度で移動させるように配置されてもよい。アクチュエータは、少なくとも1つのコイルと少なくとも1つの磁石とを含む電磁アクチュエータであってもよい。アクチュエータは、少なくとも1つのコイルに電流を印加することによって少なくとも1つのコイルを少なくとも1つの磁石に対して移動させるように配置される。アクチュエータは可動磁石式アクチュエータであってもよく、これはそれぞれ基板サポートWT及びマスクサポートMTに連結された少なくとも1つの磁石を有する。アクチュエータは可動コイル式アクチュエータであってもよく、これはそれぞれ基板サポートWT及びマスクサポートMTに連結された少なくとも1つのコイルを有する。アクチュエータは、ボイスコイルアクチュエータ、リラクタンスアクチュエータ、ローレンツアクチュエータ、若しくはピエゾアクチュエータ、又は任意の他の適当なアクチュエータであってもよい。
【0033】
[00032] リソグラフィ装置LAは、
図3に概略的に図示されるような位置制御システムPCSを備える。位置制御システムPCSは、セットポイントジェネレータSPと、フィードフォワードコントローラFFと、フィードバックコントローラFBとを備える。位置制御システムPCSは、駆動信号をアクチュエータACTに提供する。アクチュエータACTは、第1のポジショナPMのアクチュエータであってもよく、又は第2のポジショナPWのアクチュエータであってもよい。アクチュエータACTは、基板サポートWT又はマスクサポートMTを備え得るプラントPを駆動する。プラントPの出力は、位置又は速度又は加速などの位置量である。位置量は位置測定システムPMSによって測定される。位置測定システムPMSは信号を生成し、この信号はプラントPの位置量を表す位置信号である。セットポイントジェネレータSPは信号を生成し、この信号はプラントPの所望の位置量を表す基準信号である。例えば、基準信号は基板サポートWTの所望の軌道を表す。基準信号と位置信号との差は、フィードバックコントローラFBのための入力を形成する。その入力に基づいて、フィードバックコントローラFBは、アクチュエータACTのための駆動信号の少なくとも一部を提供する。基準信号はフィードフォワードコントローラFFのための入力を形成し得る。その入力に基づいて、フィードフォワードコントローラFFは、アクチュエータACTのための駆動信号の少なくとも一部を提供する。フィードフォワードFFは、質量、堅牢性、ダンピング、共振モード、及び固有振動数など、プラントPの力学的特性についての情報を利用し得る。
【0034】
[00033] 例えば上述したリソグラフィ装置によって実施される半導体回路の製造プロセスは、半導体基板上への複数の異なる層の正確なパターニングを必要とする。創出される半導体回路の適切な動作を保証するためには、層のシーケンスが適切に位置合わせされること、並びに基板の表面が露光プロセスの際に適用される放射ビーム、例えばパターニングされた放射ビームの焦点面内に位置決めされることが必要である。
【0035】
[00034] これを達成するために、基板には測定シーケンス又はプロセスが行われてもよく、その際に基板の高さマップが判定されると共に、その際に複数のマーカ、例えばアライメントマーカの位置が判定される。
【0036】
[00035] 半導体デバイスにおけるより小さな構造の高まり続ける需要を満たすために、露光プロセスの前に利用可能な基板の状態についてより多くの情報を有することへの需要も高まり続けている。その結果、露光プロセスの前に実施される測定シーケンスの持続時間は増加する傾向にある。これが起こると、リソグラフィ装置のスループット、すなわち、単位時間当たりに処理可能な基板の数に悪影響を及ぼし得る。
【0037】
[00036] 本発明は、リソグラフィ装置のスループットに悪影響を及ぼさない又は既知の解決策よりもスループットに対する負荷が小さいかスループットを増加させる、より詳細な測定シーケンスへの高まる需要を満たすための解決策を提供する。
【0038】
[00037] 本発明によれば、
オブジェクトの関心領域にわたってオブジェクトの第1のパラメータを測定すると共に、オブジェクト上の複数の場所において、第1のパラメータとは異なる、オブジェクトの第2のパラメータを測定するように構成された測定システムと、
第1のパラメータの測定の際に測定システムに対してオブジェクトを位置決めするように構成されたステージ装置と、
を備える、オブジェクトを検査するための検査装置が提供され、
測定システムは、第1のパラメータの測定の際に、複数の異なる場所において第2のパラメータを測定するように構成されており、
ステージ装置は、ステージ装置のコンプライアンス特性に基づいて、測定システムに対してオブジェクトを位置決めするように構成されている。
【0039】
[00038] 概して、本発明において適用される測定システムは、複数のパラメータを同時に又は組み合わせ測定シーケンスの際に測定するように構成可能である。そのようにすることによって、第1のパラメータ及び第2のパラメータが順次測定される測定シーケンス、すなわち第1のパラメータの測定が全て第2のパラメータの測定の前に実施される測定シーケンスと比較して、第1のパラメータ及び第2のパラメータの測定がより迅速に実施可能である。一実施形態においては、第1のパラメータは例えばオブジェクトの高さプロファイルを表してもよく、その一方で第2のパラメータは例えばオブジェクト上の複数のマークの位置を表してもよい。したがって、そのような実施形態においては、測定システムは、オブジェクトの高さプロファイルの測定中にオブジェクト上の複数のマークの位置を判定するように構成され得る。
【0040】
[00039]
図4は、本発明による検査装置400の一実施形態を概略的に示す。
図4はオブジェクト410を検査するための検査装置400を概略的に図示しており、検査装置はオブジェクト410の様々なパラメータ又は特性を測定するための測定システム420を備えている。図示される実施形態において、測定システムはオブジェクト410の第1のパラメータ及びオブジェクト410の第2のパラメータを測定するように構成されており、第2のパラメータは第1のパラメータとは異なる。図示される実施形態において、測定システム420は、第1のパラメータを測定するために、第1の測定ビーム420.11をオブジェクト410上に投影するように構成された放射源420.1と、第1の反射測定ビーム420.21を受けるように構成されたディテクタ420.2とを備えており、第1の反射測定ビームは第1の測定ビーム420.11のオブジェクト410からの反射に相当する。図示される実施形態において、第1の測定ビーム420.11は、オブジェクト410の第1の関心点410.1上に投影される。本発明の意味において、関心点とは、プロセス、例えば測定プロセス又は検査プロセス又は露光プロセスが実施される、オブジェクト上の場所を指す。なお、そのような場所は単一の点である必要はなく、オブジェクト上の領域、例えば測定ビームによって検査されている又は放射ビームによって露光されている正方形、円形、又はスリット形状の領域であってもよい。よって、図示される実施形態において、放射源420.1及びディテクタ420.2は、第1の関心点410.1において第1のパラメータを測定するように構成されている。図示される実施形態において、測定システム420は更に、第2のパラメータを測定するために、第2の測定ビーム420.31をオブジェクト100上に投影するように構成された放射源420.3と、第2の反射測定ビーム420.41を受けるように構成されたディテクタ420.4とを備えており、第2の反射測定ビームは第2の測定ビーム420.31のオブジェクト410からの反射に相当する。図示される実施形態において、第2の測定ビーム420.31は、オブジェクト410の第2の関心点410.2上に投影される。測定システム420に対してオブジェクト100を位置決めするために、オブジェクトは、例えば検査装置400のステージ装置に取り付けられ得る。本発明によれば、以下で更に詳細に説明するように、オブジェクトのそのような位置決めはステージ装置のコンプライアンス特性を勘案し得る。
【0041】
[00040] 更に指摘できるのは、本発明の一実施形態において、測定システムは、第1のパラメータを複数の関心点において同時に測定するように構成可能であるという点である。そのような実施形態においては、放射源420.1及びディテクタ420.2はそれぞれ、複数の第1の測定ビーム420.11を複数の関心点に同時に投影するように及び複数の第1の反射測定ビーム420.21を受けるように構成され得る。そのような実施形態においては、複数の関心点は、例えばアレイ状に、例えば一次元アレイ状又は二次元アレイ状に配列されてもよく、したがって関心領域にわたって第1のパラメータのより緻密又は詳細な判定が可能になる。
【0042】
[00041] 本発明による検査装置の一実施形態において適用される測定システム400に関しては、更に以下のことに言及できる。
図4に示される実施形態では、第1のパラメータ及び第2のパラメータを測定するために適用される測定原理は、放射源と反射放射ビームを受けるように構成されたディテクタとを利用する。他の測定原理も適用可能であることが指摘できる。一実施形態においては、測定システム400によって判定される第1のパラメータは、オブジェクトの高さ又は高さプロファイルを含む。高さプロファイルを測定するためには、容量測定、エアゲージ測定、反射及び/又は回折光学測定などを含め、様々な測定原理が適用可能である。一実施形態においては、測定システム400によって判定される第2のパラメータは、オブジェクト410上に位置する1つ以上のマークの位置を含む。マークの位置を判定することは、例えば、反射及び/又は回折光学測定あるいは画像ベースの測定に基づいて確立することができる。図示される実施形態においては、第1の関心点は第2の関心点とは異なる。一実施形態においては、第1の関心点は第2の関心点と略一致し得る。
【0043】
[00042] 本発明による検査装置400は、本発明によるリソグラフィ装置において有利に用いられ得る。そのようなリソグラフィ装置は、例えばデュアルステージ装置であり得る。そのような装置は、例えば、検査装置400の測定システム420の動作範囲とリソグラフィ装置の投影システム、例えば上述した投影システムPLの動作範囲との両方において基板を変位させると共に位置決めするように構成可能な2つのステージ又は基板サポートを装備することができる。有利なことには、測定システム420は、第1のパラメータとして、基板の高さプロファイル又は高さマップを判定するように構成されていてもよい。そのような高さマップは、例えば、測定システムに対して、例えば測定ビーム420.11に対してオブジェクトを変位させることによって得られ得る。そうすることによって、測定ビーム420.11が基板の表面をスキャンし得ると共に、そのスキャンの際に高さ測定データがディテクタ420.2によって集められ得る。一実施形態においては、測定システム420は、基板の関心領域にわたって基板、一般的にはオブジェクトの高さプロファイル又は高さマップを判定するように構成される。放射ビーム、例えばパターニングされた放射ビームに曝露される半導体基板の場合には、高さプロファイル又は高さマップが判定される関心領域は、好適には、放射ビームによって曝露されるターゲット領域を含むべきである。概して、本発明による検査装置は、2つのパラメータが両パラメータの順次測定の際ではなく組み合わせ測定シーケンスの際に評価される測定プロセス又は検査プロセスを実施するために用いられ得る。測定プロセス又は検査プロセスは基板の露光プロセスと平行して実施されてもよいことが指摘できる。特に、露光プロセスの際に実施され又は必要とされる測定は、露光されている基板を保持するオブジェクトテーブルのコンプライアンス特性に基づいて補正され得る。本発明の適用の一例として、オブジェクトの略全面の高さプロファイルを得るようにオブジェクトの略全面がスキャンされ得る測定プロセスが実施され得る。そのような実施形態においては、検査装置400の測定システム420は更に、第2のパラメータとして、基板上に存在する複数のマーク又はマーカの位置を判定するように構成されていてもよい。そのようなマーカは、例えば、基板上のターゲット領域の場所を判定するために用いられ得るアライメントマーカであってもよい。その場所に基づいて、露光プロセスの際に放射ビーム及びターゲット領域の適切なアライメントを実現することができる。上述のように測定システムが第1のパラメータを複数の関心点において同時に測定するように構成されている本発明の一実施形態においては、複数の関心点は、例えばアレイ状に配列可能であり、そのアレイは、測定プロセスの際にオブジェクトがスキャンされる方向に略垂直な方向に延伸している。
【0044】
[00043] 上記のように、本発明による検査装置において用いられる測定システムは、オブジェクトの第1のパラメータを測定するように構成されると共に、第1のパラメータの測定の際に第2のパラメータも測定するように構成されている。第1のパラメータの測定の際に第2のパラメータが測定されるそのような測定シーケンスは、組み合わせ測定又は組み合わせ測定シーケンスとも称され得る。そのような組み合わせ測定又は組み合わせ測定シーケンスを実施することによって、第1のパラメータ及び第2のパラメータの測定結果は、第1のパラメータと第2のパラメータとが順次、すなわち一方が他方の後で測定されるときよりも迅速に利用可能になり得る。
【0045】
[00044] 概して、第1のパラメータを測定するのに必要又は好適な測定条件は、第2のパラメータを測定するのに必要又は好適な測定条件とは異なり得るということが起こり得る。また、典型的には、(第1又は第2のパラメータのいずれかの)測定の持続時間と要求される測定の精度との間にはトレードオフがあるであろう。概して、測定は、要求される又は所望の精度の制約の中で可能な限り迅速に実施されるように手配されるであろう。
【0046】
[00045] 第2のパラメータの測定が第1のパラメータの測定の際に実施される場合には、両方のパラメータに必要な測定条件を勘案することが望ましいであろう。
【0047】
[00046] 第1のパラメータが基板、一般的にはオブジェクトの高さマップ又は高さプロファイルに対応する場合には、オブジェクト400を測定システム420に対して一定のスピード又は速度で変位させ、それによってオブジェクトの関心領域を測定ビームでスキャンするのが有利であり得る。オブジェクト又はオブジェクトの関心領域を完全にスキャンするためには、複数のそのようなスキャンが必要とされるであろう。高さマップの測定の持続時間を可能な限り短く保つために、オブジェクトがスキャンされる一定の速度は、好適には可能な限り高く選択される。上述のように測定システムが第1のパラメータを複数の関心点において同時に測定するように構成されている本発明の一実施形態においては、複数の関心点は、例えばアレイ状に配列可能であり、そのアレイは、測定プロセスの際にオブジェクトがスキャンされる方向に略垂直な方向に延伸している。
【0048】
[00047] 第2のパラメータが基板上の複数のマークの場所に対応する場合には、高さマップが判定されるスピードと比べて比較的低いスピードが必要とされ得る。そのような低いスピードは、例えば、マークの場所を判定することが可能な、要求される精度を得るのに必要とされるであろう。
【0049】
[00048] 第1のパラメータ及び第2のパラメータの組み合わせ測定の際の様々な測定条件又は要件に合わせるために、測定パラメータ又は条件は、組み合わせ測定シーケンスの際に変更されなければならないかもしれない。特に、第1のパラメータが基板の高さマップ又は高さプロファイルに対応し、第2のパラメータが基板上の複数のマークの場所に対応する場合には、組み合わせ測定シーメンスの際に測定システム420に対するオブジェクトの変位、とりわけ速度を制御することが必要とされ得るか又は望ましいであろう。そのような実施形態においては、例えば、マークを含まない1つ以上の関心点が測定されるときには比較的高いスピードでオブジェクトをスキャンすること、並びに位置を判定されるマークを含む関心点が測定されるときには比較的低いスピードでオブジェクトをスキャンすることが好適であり得る。そのような位置依存的な速度を達成するために、本発明による検査装置は更に、測定システムに対してオブジェクトを変位させ、移動させ、又は位置決めするためのステージ又はステージ装置を備えていてもよい。その場合、測定システムに対するオブジェクトの位置又は速度が、ステージ装置又は検査装置の適当な制御ユニットによって制御され得る。そのようなステージ又はステージ装置は、例えば、測定シーケンスの際にオブジェクトを保持するためのサポート又はオブジェクトテーブルを備えていてもよい。そのようなサポート又はオブジェクトテーブルは、上述したサポートMT又はWTに類似のものであってもよい。
【0050】
[00049] 本発明のそのような一実施形態を、
図5を参照して、以下でより詳細に説明する。
【0051】
[00050] 第1のパラメータ及び第2のパラメータの組み合わせ測定の際の位置依存的な速度の適用に関しては、オブジェクトを保持するオブジェクトテーブルは、典型的には、組み合わせ測定シーケンスの際に辿られる軌道の際に加速及び減速するであろうことが指摘できる。しかしながら、そのような測定シーケンスの際の加速又は減速の適用は第1のパラメータ又は第2のパラメータのいずれかの測定精度に悪影響を及ぼし得ることが、発明者たちによって観察されている。上述した組み合わせ測定シーケンスのような測定シーケンスの際にオブジェクトテーブルが加速又は減速される場合には、オブジェクトテーブルは、及ぼされる加速力又は減速力に起因して、変形し得ることが観察されている。この変形により、関心点の位置情報は不正確になり得、より精度の低い測定結果がもたらされる。
【0052】
[00051] 本発明の意味において、例えば及ぼされる力に起因する、オブジェクトテーブルなどの構造の変形は、コンプライアンスと称され得る。構造のコンプライアンスは、構造の機械的堅牢性の逆とも考えられ得る。例えばnm/Nで表すことができ、オブジェクトに及ぼされる単位Nの力に起因する、単位nmの構造の変形を示す。同様に、構造は、1つ又は複数のトルクの適用に起因して変形するものと考えることができる。そのような場合には、同様のコンプライアンス検討が当てはまる。トルクの適用に起因するコンプライアンス又は変形は、例えばnm/Nmで表され得る。なお、変形は、構造の基準点、例えば構造の重心(CoG)に対して、又は構造において考慮される点、例えば関心点の剛性体位置と比較して検討されてもよい。そのような場合には、変形又はコンプライアンスは、CoG又は構造において考慮される点の剛性体位置に対するオブジェクト上の特定の点若しくは場所の変位も表し得る。
【0053】
[00052] 本発明の一実施形態においては、このように、オブジェクトを保持するサポート又はオブジェクトテーブルのコンプライアンスが、第1のパラメータの測定の際に第2のパラメータが測定される組み合わせ測定シーケンスのような測定シーケンスの際に勘案される。そのような一実施形態においては、検査装置は更に、測定システムに対してオブジェクトを変位させるためのステージ装置を備えていてもよく、ステージ装置は、ステージ、例えばステージのオブジェクトテーブルのコンプライアンスを勘案するコントローラ又は制御ユニットによって制御される。そのような一実施形態が
図5に概略的に示されている。
【0054】
[00053]
図5は、本発明による検査装置500の更なる一実施形態を概略的に示す。検査装置500は、オブジェクト510、例えば半導体基板又はウェーハの第1のパラメータ及び第2のパラメータを測定するように構成された測定システム520を備えている。図示される実施形態においては、測定システム520は、オブジェクト510の第1のパラメータ及びオブジェクトの第2のパラメータを測定するように構成されていてもよい。第1のパラメータの測定は、例えば、第1の測定ビーム520.1をオブジェクト510上、特にオブジェクト510上の関心点(PoI)上に投影すること及び関心点(PoI)で反射された反射測定ビーム520.2を受けることによって実現され得る。上述したのと同様に、測定システム520は、第1のパラメータを複数の関心点において同時に測定するように構成可能である。そのような実施形態においては、測定システム520は、複数の第1の測定ビーム520.1を複数の関心点に同時に投影するように及び複数の関心点で反射された複数の反射測定ビーム520.2を受けるようにそれぞれ構成された放射源及びディテクタを備えていてもよい。そのような実施形態においては、複数の関心点は、例えばアレイ状に、例えば一次元アレイ状又は二次元アレイ状に配列されてもよく、したがって関心領域にわたって第1のパラメータのより緻密又は詳細な判定が可能になる。第2のパラメータの測定は、例えば、オブジェクト510、特にオブジェクト510上の関心点(PoI)の画像をキャプチャすることによって実現され得る。画像のキャプチャは矢印520.3によって模式的に示されている。
【0055】
なお、上記で言及したように、第1のパラメータが測定される関心点は、第2のパラメータが測定される関心点とは異なり得る。本発明の一実施形態においては、第1のパラメータの関心点は第2のパラメータの関心点と略一致する。
【0056】
[00054] 検査装置は更に、測定システム520に対してオブジェクト510を変位させるように構成されたステージ装置530を備えている。そうするために、ステージ装置530は、オブジェクト510を支持するように構成されたオブジェクトテーブル又はサポート532を備えている。ステージ装置530は更に、オブジェクトテーブル又はサポート532を位置決めするための位置決めデバイス534を備えている。そのような位置決めデバイス534は、例えば、上述した第2のポジショナPWと同じように具現化され得る。そのような位置決めデバイス534は、例えばロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを備え得る。ショートストロークモジュールは、オブジェクト510を保持するオブジェクトテーブル532を、ロングストロークモジュールに対して高精度で小さな移動範囲にわたって移動させるように配置される。なお、
図5にはショートストロークモジュールは図示されていない。ロングストロークモジュールは、ショートストロークモジュールをオブジェクトテーブル532と共に、測定システム520に対して比較的低精度で大きな移動範囲にわたって移動させるように配置される。
図5においては、参照番号534.1及び534.2が、例えばロングストロークモジュールの協働部材を参照し得る。参照番号534.1は、例えば、オブジェクトテーブル532を比較的大きな距離にわたって変位させるべくコイルアレイ534.2と協働するように構成された磁石又は磁石アレイを参照し得る。図示される実施形態においては、コイルアレイ534.2、例えば一次元又は二次元アレイは、基礎フレーム又はバランス・マス560に取り付けられている。代替的には、参照番号534.2が例えば磁石又は磁石アレイを参照してもよく、その一方で参照番号534.1が例えば磁石アレイ534.2と協働するコイルアレイを参照してもよい。後者の配置は、例えば移動コイル配置と称されてもよく、前者の配置は移動磁石配置と称されてもよい。ロングストロークモジュールとショートストロークモジュールとの組み合わせによって、位置決めデバイス534は、オブジェクトテーブル532を測定システム520に対して高精度で大きな移動範囲にわたって移動させることができる。
【0057】
[00055] 位置決めデバイスはオブジェクトテーブル532上の様々な場所で力を及ぼすように構成され得る。それらの力の組み合わせは、オブジェクトテーブルの重心(CoG)に作用する結果力F及び結果トルクTの組み合わせとして表され又は提示され得る。
【0058】
[00056] 図示される実施形態においては、ステージ装置530は更に、基準フレーム550に対するオブジェクトテーブル532の位置を測定するように構成されたステージ位置測定システム540を備えている。図示される実施形態においては、ステージ位置測定システム540は、オブジェクトテーブル532に取り付けられると共に基準フレーム550に取り付けられた1つ以上のセンサターゲット540.2と協働するように構成された複数のセンサ540.1を備えている。一実施形態においては、ステージ位置測定システム540は、エンコーダベースの測定システムを備えることができる。そのような実施形態では、1つ以上のセンサターゲット540.2は一次元格子又は二次元格子を備えていてもよく、センサ540.1は、基準フレームに対するオブジェクトテーブル532の位置を1以上の自由度(DOF)で判定するために、それらの格子と協働するように構成されていてもよい。一実施形態においては、ステージ位置測定システム540は、オブジェクトテーブル532の位置又は変形を6自由度(6DOF)又はさらに大きな自由度で判定するように構成され得る。なお、図示される実施形態では、測定システム520も前記した基準フレーム550に取り付けられる。したがって、ステージ位置測定システム540は、測定システム520に対するオブジェクトテーブル532の位置を測定すると考えることもできる。本発明によれば、オブジェクトテーブル532の位置が判定されるオブジェクトテーブル532上の1つ又は複数の場所は、制御点(又は複数の制御点)(PoC)と称される。したがって、
図5に示される実施形態では、制御点(PoC)は、ステージ位置測定システム540のセンサ540.1の位置に対応するであろう。概して、参照される制御点は、オブジェクトテーブル532上のどこにでもあり得る。一実施形態においては、センサ540.1によって測定される位置は、変換マトリクスを用いて、制御したいオブジェクト上の位置に変換され得る。この位置は、例えば、測定を実施するためにオブジェクトテーブル532が位置決めされるべき所期の点であり得る。
【0059】
[00057] 検査装置500は更に、位置決めデバイスを制御するように構成された制御ユニット570を備えており、それによって測定システムに対するオブジェクト510の位置を制御する。制御ユニット570は、例えばマイクロコントローラ、FPGA、コンピュータ、又は同様のものとして具現化され得る。図示される実施形態においては、制御ユニット570は、位置決めデバイス530の位置を制御するために制御ユニットによって用いられ得る1つ以上の入力信号572を受信するように構成された入力端末570.1を備えている。制御ユニット570は更に、例えば位置決めデバイスを制御するための1つ以上の制御信号574を提供するように構成された出力端末570.2を備えている。一実施形態においては、制御ユニット570は、入力端末570.1において、例えば以下の入力信号572を受信し得る。
オブジェクトテーブル532によって辿られる位置設定点又は軌道を表す第1の入力信号。
オブジェクトテーブル532の測定位置を表す第2の入力信号、例えばステージ位置測定システム540、特にステージ位置測定システム540のセンサ540.1から得られる測定信号。
【0060】
これらの入力信号572に基づいて、制御ユニット570は、例えば、位置設定点又は軌道に従ってオブジェクトテーブル532を変位するために、位置決めデバイス534によって生成される1つ又は複数の力を制御するための制御信号を生成するように構成されていてもよい。
【0061】
オブジェクトテーブルに取り付けられるオブジェクトの位置を制御する制御ユニットによって適用される典型的な制御ループは、例えば、オブジェクトテーブルの測定位置と設定点との差に基づいて制御信号が生成されるフィードバックループと、位置設定点又は軌道、特に位置設定点又は軌道を得るために必要とされる必要な加速/減速に基づいて制御信号が生成されるフィードフォワードループとを備え得る。
【0062】
[00058] 当業者には理解されるであろう通り、そのような典型的な制御ループは、ステージ位置測定システム540の1つ又は複数の信号が関心点PoIの位置、すなわち第1のパラメータ及び第2のパラメータが測定されるオブジェクト上の点又は場所を正確に判定するために使用可能であるという仮定に依拠している。これは、オブジェクトテーブル532が剛性体として作用する又は挙動すると仮定する。言い換えれば、剛性体の挙動の場合、関心点の位置、すなわち検査/測定/露光されているオブジェクト510上の場所は、ステージ位置測定システムの測定信号と測定されたパラメータとに基づいて正確に判定することができる、すなわち、第1及び第2のパラメータはオブジェクト上の正しい場所に帰せられることができる。しかしながら、オブジェクトテーブル532が測定プロセスの際に変形した場合には、センサの位置(PoC)と関心点PoIとの位置関係は、変形しない状況と比較して異なるであろう。その結果、第1及び第2のパラメータの測定結果は、もはやオブジェクト上の正しい場所には帰せられないであろう。一例として、オブジェクトの高さマップ又はプロファイルは、もはや測定された高さをオブジェクト上の正しい場所に関連付けないであろう。
【0063】
[00059] この影響を軽減又は緩和するために、本発明は、一実施形態において、検査装置であってその装置の位置決めデバイスを制御するための制御ユニットを有する検査装置を提供し、制御ユニットは、オブジェクトを保持するオブジェクトテーブルのコンプライアンスに基づいて位置デバイスを制御するように構成されている。上記で言及したように、構造又はオブジェクトテーブルのコンプライアンスとは、構造への1つ又は複数の力及びトルクの適用に起因する構造の変形を指す。
【0064】
[00060] 構造の変形又はコンプライアンスは、例えばnm/Nで表されてもよく、概して、ある力が構造に適用されたときの構造における2点間の変形をnm単位で示す。コンプライアンスは、ある構造の機械的堅牢性の逆と考えることができる。ある構造のコンプライアンスは、例えば、その構造の有限要素モデルから求められ得る。したがって、有限要素モデル又は類似の技術を用いて、オブジェクトテーブルのような構造のコンプライアンスを判定又は近似することができる。基板などのオブジェクトがオブジェクトテーブル上にクランプされる場合には、例えば、そのオブジェクトはオブジェクトテーブルと一緒に変形すると仮定することができる。したがって、そのような場合には、オブジェクトテーブルのオブジェクト510の関心点のコンプライアンスを、オブジェクトテーブルに適用される1つ又は複数の力の関数として判定することができる。同様に、オブジェクトテーブルの制御点のコンプライアンスも、オブジェクトテーブルに適用される1つ又は複数の力の関数として判定することができる。オブジェクトテーブルのコンプライアンスは、基準点、例えば力が適用されるオブジェクトテーブル上の場所、又はオブジェクトテーブルの重心若しくは考慮される点の剛性体の場所に対する、オブジェクトテーブル上の点、例えば関心点又は制御点の変形又は変位として表されてもよい。
【0065】
また、概して、オブジェクトテーブル、又は構造一般のコンプライアンスは、力が適用される場所及び方向にも依存するであろうことも言及できる。更に、コンプライアンスは概して、関心点の位置にも依存するであろう。これについては、関心点、すなわち測定が実際に行われるオブジェクト上の場所は、測定シーケンスの際に変位するであろうことも注記できる。したがって、関心点と力が適用される場所との間の距離も変化し、その結果、コンプライアンスも変化する。これは例えば
図6に示されている。
【0066】
[00061]
図6は、オブジェクト610、例えば半導体基板を保持するように構成されたオブジェクトテーブル632の上面図を概略的に示す。図示される実施形態において、オブジェクトテーブルには、矢印によって示される方向に沿ってオブジェクトテーブル632に力を及ぼすように構成された4つのアクチュエータ680が設けられている。オブジェクトテーブル632は更に、オブジェクト610の関心点PoIとも称される場所610.1においてオブジェクト610のパラメータ又は特性を測定するように構成された測定システム(図示しない)に対するオブジェクトテーブル632の位置を測定するように構成された4つの位置センサ640.1を備えている。オブジェクトテーブル632に力が及ぼされると、オブジェクトテーブルは、オブジェクトテーブルのコンプライアンスによって変形し、センサ640.1の公称又は未変形位置に対する変位がもたらされる。同じように、関心点の場所610.1は、変形に起因して変化するであろう。概して、特定の場所、例えばセンサの場所又は関心点の場所の変形又は変位は、その場所と力が適用される場所との間の距離に依存するであろう。力の適用場所とセンサ又は関心点の場所との間の距離が小さいときには、変形も小さくなる。図示される実施形態においては、センサ640.1と力の適用場所、すなわちアクチュエータ680の場所との間の距離は、実質的に固定されている。したがって、図示される実施形態においては、4つのアクチュエータによって及ぼされる力の特定のセンサの変位に対する影響は、オブジェクトテーブル632の位置とは無関係であると考えることができる。しかしながら、関心点610.1に関しては、関心点が様々な力の適用場所までどの程度近い又は離れているかをこの位置が決めるので、力の影響はオブジェクトテーブル632の位置に依存するであろう。これについては、測定システムが複数の関心点において同時に測定を実施するように構成されている場合、力又はトルクの影響は異なる関心点については異なるであろうことが指摘できる。
【0067】
[00062] 一実施形態においては、本発明による検査装置は、測定システムに対してオブジェクトを変位させるためのステージ装置を備えており、ステージ装置は、ステージ装置のコンプライアンスを勘案する制御スキームを適用するように構成された制御ユニットを備えている。
図7は、本発明による検査装置のステージ装置を制御するためのそのような制御スキームを模式的に示す。制御スキームは、本発明において適用可能な制御ユニットCUを概略的に示している。図示される配置においては、制御ユニットCUは、フィードフォワードコントローラFFC及びフィードバックコントローラFBCを備えている。図示される実施形態においては、制御ユニットCUは、入力として設定点信号SPSを受信するように構成されており、設定点信号SPSはオブジェクト上の関心点によって辿られる軌道を表す。図示される実施形態においては、フィードフォワードコントローラFFCは、設定点信号SPSに基づいて、ステージ装置の位置決めデバイスによって生成されるフィードフォワード力を判定するように構成されている。本発明の一実施形態においては、フィードフォワードコントローラは、ステージ装置のコンプライアンス、例えば関心点の軌道を辿るオブジェクトを保持するオブジェクトテーブルのコンプライアンスを勘案したフィードフォワード力を生成するように構成されている。そのようなフィードフォワードコントローラの一例として、スナップフィードフォワードコントローラに言及することができる。そのようなコントローラは、例えば、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/185301号から既知である。設定点信号に基づいて、フィードフォワードコントローラは、必要なフィードフォワード力FFFを次のように生成するように構成され得る。
FFF=FF1+FF2,
FF1=m*s^2*SPS, (1)
FF2=-m
2*s^4*SPS*cpoi
ここで、
m=駆動される質量であり、
s=ラプラス変換の複素引数であり、
したがってs^2*SPSは設定点信号から求められる必要な加速を表し、したがってs^4*SPSは設定点信号から求められる必要なスナップ値を表し、
cpoi=関心点のコンプライアンスである。
【0068】
方程式(1)は、FFFが必要なフィードフォワード力を表すフィードフォワードベクトルを表しSPSが設定点ベクトルを表す行列方程式に一般化され得る。
そのような場合、FFFは次のように判定され得る。
FFF=FF1+FF2,
FF1=M*s^2*SPS, (2)
FF2=-M*Cpoi*M*s^4*SPS
ここで、
M=駆動される質量行列であり、
s=ラプラス変換の複素引数であり、
したがってs^2*SPSは設定点信号から求められる必要な加速を表し、したがってs4*SPSは設定点信号から求められる必要なスナップ値を表し、
Cpoi=関心点のコンプライアンス行列である。
【0069】
[00063] コンプライアンスを勘案することによって、関心点のより正確な位置決めが起こることが期待される。すなわち、関心点の実際の位置が、SPSによって記述される所望の軌道をより良く辿ることが期待される。
図7に示される制御スキームにおいて、ブロックPは、本発明による検査装置の物理的なステージ装置を表す。したがって、ブロックPは、ステージ装置に適用される力、すなわちステージ装置のオブジェクトテーブルに適用される力を、例えばステージ装置のステージ位置測定システムによって測定されるステージ装置の位置に変換すると考えることができる。したがって、ブロックPの出力信号SPは、ステージ位置測定システムによって生成された出力信号、例えばオブジェクトテーブルに取り付けられた1つ以上のセンサの出力信号を表し得る。
【0070】
[00064] 典型的には、ステージ位置測定システムの出力信号は、検査装置のステージ装置の制御システム又は制御ユニットのためのフィードバックとして用いられる。ステージ装置、特にオブジェクトテーブルが剛性体として挙動すると考えることができる場合、ステージ位置測定システムのセンサ信号SPは、関心点の位置を求めるために容易に適用され得る。
図7に示される制御スキームでは、ブロックMSが、ステージ位置測定システムのセンサ信号SPの関心点の位置への変換を表す。
【0071】
[00065] ステージ装置のオブジェクトテーブルのコンプライアンスに起因して、1つ又は複数のセンサ信号SPは、容易に関心点の位置に変換されることができない。本発明の一実施形態においては、オブジェクトテーブルのコンプライアンスは更に、関心点の位置、すなわち本発明による検査装置の測定システムが検査されるオブジェクトのパラメータを測定する位置を判定するときに勘案される。図示される実施形態においては、ステージ位置測定システムから得られたセンサ信号SPは、ブロックMSによって関心点の位置SCに変換される。しかしながら、関心点及び制御点の両方のコンプライアンスに起因して、位置SCは関心点の実際の位置を正確には表さない。図示される実施形態において、関心点及び制御点のコンプライアンスの両方の影響は、判定されたフィードフォワード力FFFに基づいて、コンプライアンス補正CCとして判定される。そうすることによって、より正確な関心点位置、すなわち、関心点及び制御点の両方のコンプライアンスを補正した位置が得られると共にフィードバックとしてフィードバックコントローラFBCに適用される。より具体的には、図示される実施形態において、フィードバックコントローラFBCは、関心点の所望位置と関心点の測定又は判定位置との間の差を表すエラー信号ESを受信する。
【0072】
[00066] したがって、フィードバックコントローラFBCによって適用されるエラー信号ESは、次のように表すことができる。
ES=SPS-MS*SP+(Cpoc-Cpoi)*FFF,又は
ES=SPS-SC+(Cpoc-Cpoi)*FFF (3)
【0073】
[00067] したがって、方程式(3)において、SC-(Cpoc-Cpoi)*FFFは、制御点及び関心点のコンプライアンスの両方を補正した関心点の位置であると考えられ得る。したがって、このコンプライアンス補正された関心点の位置が、検査装置の測定システムが実際に第1のパラメータ及び/又は第2のパラメータを測定している実際の場所として用いられ得る。これについては、測定システムが測定を複数の関心点において同時に実施するように構成されている場合、測定される複数の関心点の各々に関してコンプライアント補正された位置が判定される必要があることが指摘できる。
【0074】
[00068] したがって、例えば
図7に示されるような提案される制御スキームは、オブジェクトが測定シーケンスの際に加速又は減速に曝されるときであっても、検査装置がオブジェクトのパラメータ又は特性を関心領域にわたって正確に測定することを可能にする。これは、発明者たちによってシミュレーションを用いて示されている。
【0075】
特に、基板の高さマップ及び基板上の複数のマーク位置が判定される、半導体基板の測定シーケンスがシミュレーションされた。シミュレーションにおいて、高さマップの測定は比較的高いスピードで実施されたのに対し、マークの位置測定は低いスピードで実施された。よって、マークの位置測定が実施されたとき、基板を保持するオブジェクトテーブルは、減速力と加速力に交互に曝された。シミュレーション結果の処理、特に上述したようにコンプライアンスを勘案した関心点の場所の処理は、オブジェクトテーブルが加速力又は減速力に曝されないときに生成される高さマップに略対応した高さマップをもたらした。
【0076】
[00069] 本発明は、このように、組み合わせ測定シーケンスの際にオブジェクトの2つのパラメータを判定する迅速で確実な手法を可能にする。
【0077】
[00070] 有利なことには、パラメータは、例えば第1のパラメータとしての半導体基板の高さマップと、第2のパラメータとしての基板上の複数のマークの位置である。もっとも、他のパラメータの組み合わせも考えられ得ることが指摘できる。
【0078】
[00071] 本発明の他の態様は、以下に番号付けられる条項に従って記載される。
1.オブジェクトを検査するための検査装置であって、
オブジェクトの関心領域にわたってオブジェクトの第1のパラメータを測定すると共に、オブジェクト上の複数の場所において、第1のパラメータとは異なる、オブジェクトの第2のパラメータを測定するように構成された測定システムと、
第1のパラメータの測定の際に測定システムに対してオブジェクトを位置決めするように構成されたステージ装置と、を備え、
測定システムは、第1のパラメータの測定の際に、複数の異なる場所において第2のパラメータを測定するように構成されており、
ステージ装置は、ステージ装置のコンプライアンス特性に基づいて、測定システムに対して前記オブジェクトを位置決めするように構成されている、検査装置。
2.ステージ装置は、
オブジェクトを保持するように構成されたオブジェクトテーブルと、
オブジェクトテーブルの位置を表すステージ位置信号を生成するように構成されたステージ位置測定システムと、
測定システムに対してオブジェクトテーブルを変位させるためにオブジェクトテーブルに力を及ぼすように構成された位置決めデバイスと、
ステージ位置信号に基づいて位置決めデバイスを制御するように構成されるとともに、オブジェクトテーブルのコンプライアンス特性に基づいて位置決めデバイスを制御するように構成された制御システムと、
を備える、条項1に記載の装置。
3.オブジェクトは、基板を備える、条項1又は2に記載の検査装置。
4.関心領域は、露光プロセスの際に放射ビームによって露光される複数のターゲット領域を含む、条項3に記載の検査装置。
5.基板は、複数の場所にそれぞれ配設された複数のマークを備える、条項3又は4に記載の検査装置。
6.オブジェクトの第1のパラメータは、関心領域の高さプロファイルを備え、
第2のパラメータは、複数のマークの位置を備える、条項5に記載の検査装置。
7.制御システムは、測定システムに対するオブジェクトの軌道を表す設定点信号を受信するように構成されている、条項6に記載の検査装置。
8.軌道は、測定システムの測定場所に対するオブジェクトの所望位置を表す、条項7に記載の検査装置。
9.制御システムは、位置決めデバイスに必要な力を表す力信号を生成するように構成されており、
力信号は、設定点信号とオブジェクトテーブルのコンプライアンス特性とに基づく、条項8に記載の検査装置。
10.ステージ位置測定システムは、ステージ位置信号を生成するために1つ以上のセンサターゲットと協働するように構成された1つ以上のセンサを備える、条項9に記載の検査装置。
11.測定システムは、第1のパラメータをオブジェクトの第1の関心点で測定するように構成されると共に、第2のパラメータをオブジェクトの第2の関心点で測定するように構成されている、条項10に記載の検査装置。
12.第1の関心点と第2の関心点とは、略一致する、条項11に記載の検査装置。
13.測定システムは、第1のパラメータをオブジェクトの複数の関心点で同時に測定するように構成されると共に、第2のパラメータをオブジェクトの第2の関心点で測定するように構成されている、条項10に記載の検査装置。
14.第2の関心点と複数の関心点のうち1つとは、略一致する、条項13に記載の検査装置。
15.複数の関心点は、第1の方向に延伸するアレイ状に配列されており、
測定システムは、関心領域を第2の方向でスキャンすることによってオブジェクトの第1のパラメータを測定するように構成されており、
第2の方向は、第1の方向に略垂直である、条項13又は14に記載の検査装置。
16.1つ以上のセンサは、ステージに取り付けられ、
コンプライアンス特性は、基準に対する1つ以上のセンサの変形及び/又は変位を表す、条項11から15のいずれかに記載の検査装置。
17.コンプライアンス特性は更に、基準に対する関心点の変形及び/又は変位を表す、条項16に記載の検査装置。
18.コンプライアンス特性は、オブジェクトテーブルに及ぼされる力に起因する変形を表す、条項17に記載の検査装置。
19.条項1から18のいずれかに記載の検査装置を備える、リソグラフィ装置。
20.オブジェクトの第1のパラメータは、関心領域の高さプロファイルを備え、
第2のパラメータは、複数のマークの位置を備える、条項19に記載のリソグラフィ装置。
【0079】
[00072] 本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用ガイダンス及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。
【0080】
[00073] 本明細書ではリソグラフィ装置に関連して本発明の実施形態について具体的な言及がなされているが、本発明の実施形態は他の装置に使用することもできる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又はウェーハ(あるいはその他の基板)若しくはマスク(あるいはその他のパターニングデバイス)などのオブジェクトを測定又は処理する任意の装置の一部を形成してよい。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。このようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0081】
[00074] 以上では光学リソグラフィと関連して本発明の実施形態の使用に特に言及しているが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなど、その他の適用例において使用されてもよく、文脈が許す限り、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。
【0082】
[00075] 文脈上許される場合、本発明の実施形態は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装することができる。本発明の実施形態は、1つ以上のプロセッサにより読み取られて実行され得る、機械可読媒体に記憶された命令として実装することも可能である。機械可読媒体は、機械(例えばコンピューティングデバイス)により読み取り可能な形態で情報を記憶又は伝送するための任意の機構を含むことができる。例えば機械可読媒体は、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気記憶媒体、光記憶媒体、フラッシュメモリデバイス、電気、光、音響又は他の形態の伝搬信号(例えば搬送波、赤外信号、デジタル信号など)、及び他のものを含むことができる。さらに、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令は、特定のアクションを実行するものとして本明細書で説明されることがある。しかしながら、そのような説明は単に便宜上のものであり、そのようなアクションは実際には、ファームウェア、ソフトウェア、ルーチン、命令などを実行するコンピューティングデバイス、プロセッサ、コントローラ、又は他のデバイスから生じ、実行する際、アクチュエータ又は他のデバイスが物質世界と相互作用し得ることを理解すべきである。
【0083】
[00076] 以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることは理解されよう。上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、下記に示す特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。