IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人大阪大学の特許一覧 ▶ NTN株式会社の特許一覧

特許7430317余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム
<>
  • 特許-余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム 図1
  • 特許-余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム 図2
  • 特許-余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム 図3
  • 特許-余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム 図4
  • 特許-余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム 図5
  • 特許-余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01M 13/04 20190101AFI20240205BHJP
   G06N 7/01 20230101ALI20240205BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20240205BHJP
【FI】
G01M13/04
G06N7/01
G06N20/00 130
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019180226
(22)【出願日】2019-09-30
(65)【公開番号】P2021056123
(43)【公開日】2021-04-08
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】福井 健一
(72)【発明者】
【氏名】北井 正嗣
【審査官】松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-194341(JP,A)
【文献】特開2005-233657(JP,A)
【文献】特開2018-004473(JP,A)
【文献】特開2010-257227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0274833(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0003588(US,A1)
【文献】特開2019-045487(JP,A)
【文献】特開2019-045241(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0069775(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045、99/00
G06N 3/00-3/12、7/08-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材、および第二部材が相対的に動作する動作機構の動作限界までの時間である余寿命を予測する余寿命予測システムであって、
学習用動作機構を動作限界まで動作させ、動作限界までの各時刻における学習用第一部材、および学習用第二部材の少なくとも一方における動作により生じる劣化の量を示す学習劣化量情報、および前記学習劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である学習余寿命を取得する学習情報取得部と、
複数の前記学習用動作機構に対し学習情報生成装置を用いて生成し、前記学習情報取得部が取得した学習劣化量情報、および前記学習余寿命を用いて前記学習用動作機構に共通する共通パラメータ、個体差パラメータ、超パラメータ、および誤差パラメータのそれぞれの事前分布に基づき、階層ベイズ回帰により共通パラメータ、超パラメータ、前記学習用動作機構それぞれの個体差パラメータ、および誤差パラメータの事後分布を含む階層ベイズによる第一回帰モデルを育成する第一回帰モデル育成部と、
前記学習用動作機構と同種の評価用動作機構の動作により生じる劣化の量を示す評価劣化量情報、および前記評価劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である評価余寿命であって、前記評価用動作機構の動作から得られる特徴に基づき第二回帰モデルまたはエキスパートシステムによって推定される評価余寿命を示す第一評価余寿命を取得する評価情報取得部と、
前記評価劣化量情報、前記第一評価余寿命、前記共通パラメータの事後分布、および前記超パラメータの事後分布を用いて前記評価用動作機構に固有の個体差パラメータの事後分布を、前記第一回帰モデルを用いて推定し、前記共通パラメータの事後分布、前記個体差パラメータの事後分布から得られる値を前記第一回帰モデルに適用し、前記評価劣化量情報を入力として前記評価用動作機構の評価余寿命を示す第二評価余寿命を導出する余寿命導出部と、
を備える余寿命予測システム。
【請求項2】
前記学習情報取得部は、
動作限界までの各時刻における前記学習用動作機構の動作から得られる学習特徴量ベクトル、および前記学習特徴量ベクトルを取得した時刻から動作限界までの時間である学習余寿命を取得し、
前記余寿命予測システムはさらに、
前記学習特徴量ベクトル、および前記学習余寿命に基づき第二回帰モデルを育成する第二回帰モデル育成部を備え、
前記評価情報取得部は、
育成された前記第二回帰モデルに前記評価用動作機構の動作から得られる評価特徴量ベクトルを入力して得られる第一評価余寿命を取得する
請求項1に記載の余寿命予測システム。
【請求項3】
前記学習情報取得部は、
動作限界までの各時刻における前記学習用動作機構の動作から得られる学習特徴量ベクトル、および前記学習特徴量ベクトルを取得した時刻における前記学習劣化量情報を取得し、
前記余寿命予測システムはさらに、
前記学習特徴量ベクトル、および前記学習劣化量情報に基づき第三回帰モデルを育成する第三回帰モデル育成部を備え、
前記評価情報取得部は、
育成された前記第三回帰モデルに前記評価用動作機構の動作から得られる評価特徴量ベクトルを入力して得られる評価劣化量情報を取得する
請求項1または2に記載の余寿命予測システム。
【請求項4】
前記階層ベイズの回帰式は、
前記共通パラメータをα、βとし、
誤差パラメータをεとし、
前記個体差パラメータδiとし、
前記第二評価余寿命をy
前記評価劣化量情報をxとした場合、
下記式で表される
y=δi(α+β/x)+ε
請求項1から3のいずれか一項に記載の余寿命予測システム。
【請求項5】
第一部材、および第二部材が相対的に動作する動作機構の動作限界までの時間である余寿命を予測する余寿命予測装置であって、
前記動作機構の動作により生じる劣化の量を示す評価劣化量情報、および前記評価劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である評価余寿命であって、前記動作機構の動作から得られる特徴に基づき第二回帰モデルまたはエキスパートシステムによって推定される評価余寿命を示す第一評価余寿命を取得する評価情報取得部と、
前記動作機構と同種の複数の学習用動作機構に対し学習情報生成装置を用いて生成し、学習情報取得部が取得した学習用動作機構を動作限界まで動作させ、動作限界までの各時刻における学習用第一部材、および学習用第二部材の少なくとも一方における動作により生じる劣化の量を示す学習劣化量情報、および前記学習劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である学習余寿命を用いて前記学習用動作機構に共通する共通パラメータ、個体差パラメータ、超パラメータ、および誤差パラメータのそれぞれの事前分布に基づき、階層ベイズ回帰により共通パラメータ、超パラメータ、前記学習用動作機構それぞれの個体差パラメータ、および誤差パラメータの事後分布を含む階層ベイズにより育成された第一回帰モデルを用い、前記評価劣化量情報、前記第一評価余寿命、前記共通パラメータの事後分布、および前記超パラメータを用いて前記動作機構に固有の個体差パラメータの事後分布を推定し、前記共通パラメータの事後分布、および前記個体差パラメータの事後分布からそれぞれ得られる値を前記第一回帰モデルに適用し、前記評価劣化量情報を入力として前記動作機構の評価余寿命を示す第二評価余寿命を導出する余寿命導出部と、を備える余寿命予測装置。
【請求項6】
第一部材、および第二部材が相対的に動作する動作機構の動作限界までの時間である余寿命を予測する余寿命予測プログラムであって、
前記動作機構の動作により生じる劣化の量を示す評価劣化量情報、および前記評価劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である評価余寿命であって、前記動作機構の動作から得られる特徴に基づき第二回帰モデルまたはエキスパートシステムによって推定される評価余寿命を示す第一評価余寿命を取得する評価情報取得部と、
前記動作機構と同種の複数の学習用動作機構に対し学習情報生成装置を用いて生成し、学習情報取得部が取得した学習用動作機構を動作限界まで動作させ、動作限界までの各時刻における学習用第一部材、および学習用第二部材の少なくとも一方における動作により生じる劣化の量を示す学習劣化量情報、および前記学習劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である学習余寿命を用いて前記学習用動作機構に共通する共通パラメータ、個体差パラメータ、超パラメータ、および誤差パラメータのそれぞれの事前分布に基づき、階層ベイズ回帰により共通パラメータ、超パラメータ、前記学習用動作機構それぞれの個体差パラメータ、および誤差パラメータの事後分布を含む階層ベイズにより育成された第一回帰モデルを用い、前記評価劣化量情報、前記第一評価余寿命、前記共通パラメータの事後分布、および前記超パラメータを用いて前記動作機構に固有の個体差パラメータの事後分布を推定し、前記共通パラメータの事後分布、および前記個体差パラメータの事後分布からそれぞれ得られる値を前記第一回帰モデルに適用し、前記評価劣化量情報を入力として前記動作機構の評価余寿命を示す第二評価余寿命を導出する余寿命導出部と、を機能させるための余寿命予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材が接触状態で相対的に動作する動作機構の動作限界までの時間を予測する余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
転がり軸受の外輪と転動体、内輪と転動体のように、第一部材と第二部材が相対的に動作する動作機構について、使用限界までの時間、いわゆる寿命の推定が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、振動センサから得られる特徴量をもとに軸受の欠損レベル、残存寿命を推定する手法が記載されている。また特許文献2には、センサの出力データから算出される状態変数を故障度合いと関連付けて機械学習による訓練を行い、故障予知を行う手法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-219469号公報
【文献】特許第6148316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、劣化進展の初期から末期で劣化の進展速度が変化するような条件下においては、また、学習用の動作機構毎に余寿命のばらつきがあるようなデータに対しては振動特徴量から直接余寿命を推定することは困難である。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、劣化の進展速度が変化するような動作機構でも動作限界までの寿命を高い精度で推定できる余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の1つである余寿命予測システムは、第一部材、および第二部材が相対的に動作する動作機構の動作限界までの時間である余寿命を予測する余寿命予測システムであって、学習用動作機構を動作限界まで動作させ、動作限界までの各時刻における学習用第一部材、および学習用第二部材の少なくとも一方における動作により生じる劣化の量を示す学習劣化量情報、および前記学習劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である学習余寿命を取得する学習情報取得部と、複数の前記学習用動作機構から得られる学習劣化量情報、および前記学習余寿命を用いて学習用動作機構に共通する共通パラメータの事後分布、および各学習用動作機構の個体差のばらつきを示す超パラメータ、および個体差パラメータを含む階層ベイズによる第一回帰モデルを育成する第一回帰モデル育成部と、前記学習用動作機構と同種の評価用動作機構の動作により生じる劣化の量を示す評価劣化量情報、および前記評価劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である評価余寿命であって、前記評価用動作機構の動作から得られる特徴に基づき推定される評価余寿命を示す第一評価余寿命を取得する評価情報取得部と、前記評価劣化量情報、前記第一評価余寿命、前記共通パラメータの事後分布、および前記超パラメータを用いて前記評価用動作機構に固有の個体差パラメータの事後分布を、前記第一回帰モデルを用いて推定し、前記共通パラメータの事後分布、および前記個体差パラメータの事後分布からそれぞれ得られる値を前記第一回帰モデルに適用し、前記評価劣化量情報を入力として前記評価用動作機構の評価余寿命を示す第二評価余寿命を導出する余寿命導出部と、を備える。
【0008】
また上記目的を達成するために、本発明の他の1つである余寿命予測装置は、第一部材、および第二部材が相対的に動作する動作機構の動作限界までの時間である余寿命を予測する余寿命予測装置であって、前記動作機構の動作により生じる劣化の量を示す評価劣化量情報、および前記評価劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である評価余寿命であって、前記動作機構の動作から得られる特徴に基づき推定される評価余寿命を示す第一評価余寿命を取得する評価情報取得部と、前記動作機構と同種の複数の学習用動作機構から得られる学習劣化量情報、および前記学習用動作機構の学習余寿命を用いて学習用動作機構に共通する共通パラメータの事後分布、および各学習用動作機構の個体差のばらつきを示す超パラメータを含む階層ベイズによる第一回帰モデルを用い、前記評価劣化量情報、前記第一評価余寿命、前記共通パラメータの事後分布、および前記超パラメータを用いて前記動作機構に固有の個体差パラメータの事後分布を推定し、前記共通パラメータの事後分布、および前記個体差パラメータの事後分布からそれぞれ得られる値を前記第一回帰モデルに適用し、前記評価劣化量情報を入力として前記動作機構の評価余寿命を示す第二評価余寿命を導出する余寿命導出部と、を備える。
【0009】
また上記目的を達成するために、本発明の他の1つである余寿命予測プログラムは、第一部材、および第二部材が相対的に動作する動作機構の動作限界までの時間である余寿命を予測する余寿命予測プログラムであって、前記動作機構の動作により生じる劣化の量を示す評価劣化量情報、および前記評価劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である評価余寿命であって、前記動作機構の動作から得られる特徴に基づき推定される評価余寿命を示す第一評価余寿命を取得する評価情報取得部と、前記動作機構と同種の複数の学習用動作機構から得られる学習劣化量情報、および前記学習用動作機構の学習余寿命を用いて学習用動作機構に共通する共通パラメータの事後分布、および各学習用動作機構の個体差のばらつきを示す超パラメータを含む階層ベイズによる第一回帰モデルを用い、前記評価劣化量情報、前記第一評価余寿命、前記共通パラメータの事後分布、および前記超パラメータを用いて前記動作機構に固有の個体差パラメータの事後分布を推定し、前記共通パラメータの事後分布、および前記個体差パラメータの事後分布からそれぞれ得られる値を前記第一回帰モデルに適用し、前記評価劣化量情報を入力として前記動作機構の評価余寿命を示す第二評価余寿命を導出する余寿命導出部と、をコンピュータに機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、劣化の進展速度が変化するような動作機構でも動作限界までの余寿命を動作機構の動作から得られる特徴量ベクトルに基づき高い精度で推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施の形態1において用いられる学習情報生成装置の主要部を示す図であり、(a)部に示す図は学習情報生成装置の正面図、(b)部に示す図は(a)部に対応する断面側面図である。
図2図2は、実施の形態1に係る余寿命予測システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1に係る回帰式により得られるグラフである。
図4図4は、実施の形態2において用いられる学習情報生成装置の主要部を示す図であり、(a)部に示す図は学習情報生成装置の正面図、(b)部に示す図は(a)部に対応する断面側面図である。
図5図5は、実施の形態2に係る余寿命予測システムの構成を示すブロック図である。
図6図6は、実施の形態3に係る余寿命予測システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る余寿命予測システム、余寿命予測装置、および余寿命予測プログラムの実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の位置関係、および接続状態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下では複数の発明を一つの実施の形態として説明する場合があるが、請求項に記載されていない構成要素については、その請求項に係る発明に関しては任意の構成要素であるとして説明している。また、図面は、本発明を説明するために適宜強調や省略、比率の調整を行った模式的な図となっており、実際の形状や位置関係、比率とは異なる場合がある。
【0013】
(実施の形態1)
余寿命予測システム100は、動作機構が機械要素としての所定の機能が発揮できなくなる動作限界までの時間である余寿命を予測するシステムである。動作機構の種類は、第一部材、および第二部材が接触状態で相対的に動作する機構であれば特に限定されるものではない。本実施の形態1の場合、動作機構として転がり軸受を例示している。また、第一部材として転がり軸受の転動体を、第二部材として転がり軸受の内輪を例示している。なお、転がり軸受は、転動体、および内輪の他に外輪、および保持器など複数の部材を備えており、第一部材、および第二部材として採用する部材の組み合わせは任意であるが、動作機構の動作によって劣化を示す欠損が顕著に現れ、欠損の量の測定が容易な部材の組み合わせを採用することが好ましい。この点において、転がり軸受の内輪は、外周面に欠損が発生し欠損の量の測定が容易であるため、第二部材として好適である。
【0014】
余寿命予測システム100は、人工知能を用いて余寿命を予測するものであるため、モデルを育成する学習段階と、学習済みのモデルを用いて余寿命を予測する予測段階が存在する。そこで、学習に用いる動作機構を学習用動作機構200、学習用動作機構200が備える第一部材を学習用第一部材201、第二部材を学習用第二部材202と記載する。また、予測対象の動作機構を評価用動作機構(不図示)、評価用動作機構が備える第一部材を評価用第一部材、第二部材を評価用第二部材と記載する。
【0015】
次に、学習段階においてモデルを育成するための学習劣化量情報、および学習余寿命を取得する学習情報生成装置300を説明する。図1は、実施の形態1に係る学習情報生成装置の主要部を示す図であり、(a)部に示す図は学習情報生成装置の正面図、(b)部に示す図は(a)部に対応する断面側面図である。
【0016】
同図に示すように、学習情報生成装置300は学習用第二部材202を保持、固定する固定部材305と、軸体301からなる。軸体301は駆動装置302および駆動制御装置330と、を備える。
【0017】
固定部材305は、学習用第二部材202を支持する構造であり、軸体301とは独立している。
【0018】
軸体301は、学習用動作機構200の内輪に適合する形状であれば、材質や長さなど特に限定されるものでは無いが、評価用動作機構の実際の使用態様にできる限り合致させることが好ましい。
【0019】
学習用動作機構200は、測定対象の転がり軸受である。学習用動作機構200は、前述の通り限定されるものでは無いが、本実施の形態1の場合、学習用動作機構200は、ころ軸受である。
【0020】
本明細書、および特許請求の範囲において「劣化」とは、動作機構を使用したことにより発生し、動作機構の余寿命に関連する事象を意味するものとして用いており、「欠損」は「劣化」の1つであるとして記載している。具体的に劣化とは、例えば疲労はく離、疲労損傷、潤滑油劣化、シール不具合による面荒れなどを挙示することができる。
【0021】
また、「劣化量」とは、剥離、摩耗、圧痕、フレーキング、焼き付きなど、第一部材と第二部材との摺動、転がり摺動などにより第一部材表面、または第二部材表面に発生する不具合を定量的に示すものである。具体的には欠損が発生している領域の長さ、幅などの一次元の情報、面積などの二次元の情報、大きさなどの三次元の情報、またはこれらと関連する情報である。また、第一部材と第二部材との摺動に基づき劣化していくグリースなどの動作機構以外の部材の劣化も、劣化度合いが定量化でき、動作機構の劣化と相関があるものは「劣化量」の文言に含まれるものとしている。
【0022】
駆動装置302は、軸体301を回転駆動させる装置である。駆動装置302の種類などは特に限定されるものでは無いが、本実施の形態1の場合、駆動装置302は、サーボモータであり、サーボモータの回転軸体は継手を介して軸体301に接続されている。駆動装置302は、駆動制御装置330により制御されている。
【0023】
学習用動作機構200は、固定部材305を介して外部から負荷を与えられる。負荷は評価用動作機構の使用態様に近づけることが好ましい。
【0024】
図2は、実施の形態1に係る余寿命予測システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、余寿命予測システム100は、学習情報取得部110、第一回帰モデル育成部120、評価情報取得部130、および余寿命導出部140を備えている。また、学習情報取得部110、および第一回帰モデル育成部120は、学習装置101として機能し、評価情報取得部130、および余寿命導出部140は、余寿命予測装置109として機能している。
【0025】
学習情報取得部110は、例えば新品の学習用動作機構200を動作限界まで動作させ、動作限界までの各時刻における学習用第一部材201、および学習用第二部材202の少なくとも一方における動作により生じる劣化の量を示す学習劣化量情報、および前記学習劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である学習余寿命を取得する。
【0026】
学習劣化量情報は、学習情報生成装置300を用いて新品の学習用動作機構200を所定の時間動作させた後、学習用第二部材202である内輪を取り出して、作業者が測定した劣化量を入力することにより学習情報取得部110が取得する。本実施の形態の場合、欠損の周方向の長さを学習劣化量情報としている。また、学習余寿命を算出させるために、学習情報生成装置300を動作させた時間を時刻として学習劣化量情報と対応付けて学習情報取得部110に入力する。
【0027】
次に学習用動作機構200を学習情報生成装置300に戻して所定の時間動作させ、学習劣化量情報と時刻を同様に学習情報取得部110に入力する。このような所定時間の動作と入力とを動作限界まで繰り返すことにより、学習情報取得部110は、各時刻の学習劣化量情報を取得する。なお、動作限界に達した時刻も学習情報取得部110に入力しておく。
【0028】
明細書、および特許請求の範囲で用いる「時刻」とは、実際の時の流れの中の各瞬間を意味するのではなく、動作機構が実際に動作している時間の累積の中の各瞬間(例えば動作中断直前の瞬間)を意味している。
【0029】
学習余寿命は、作業者により入力された動作限界に達した時刻と学習劣化量情報の入力と対応して入力された時刻との差分を学習余寿命として学習情報取得部110が算出することにより取得する。
【0030】
第一回帰モデル育成部120は、複数の学習用動作機構200に対し前述のとおり学習情報生成装置300を用いて生成し、学習情報取得部110が取得した学習劣化量情報、および学習余寿命を用いて学習用動作機構200に共通する共通パラメータ、個体差パラメータ、超パラメータ、および誤差パラメータのそれぞれの事前分布に基づき、階層ベイズ回帰により共通パラメータ、超パラメータ、各学習用動作機構200の個体差パラメータ、および誤差パラメータの事後分布を含む階層ベイズによる第一回帰モデルを育成する。
【0031】
本実施の形態1において用いた階層ベイズの回帰式は、下記式1である。
【0032】
y=δi(α+β/x)+ε・・・式1
y:余寿命情報
x:劣化量情報
δi:動作機構の個体差のバラツ
α、β:動作機構に共通する共通パラメー
ε:誤差パラメー
【0033】
δiはすべての学習用動作機構に共通する超パラメータσδにもとづいて、学習用動作機構ごとに個別に算出されるものであり、学用動作機構ごとに固有の分布を持つ。
【0034】
なお、式1は、動作機構の余寿命を推定するために、発明者が見出した最適な階層ベイズの回帰式である。
【0035】
評価情報取得部130は、学習用動作機構200と同種の評価用動作機構の動作により生じる劣化の量を示す評価劣化量情報、および評価劣化量情報を取得した時刻から動作限界までの時間である評価余寿命であって、評価用動作機構の動作から得られる特徴に基づき推定される評価余寿命を示す第一評価余寿命を取得する。
【0036】
本実施の形態1の場合、評価用動作機構は転がり軸受であり、所定の時間動作している評価用動作機構から評価用第二部材である内輪を取り出して、作業者が欠損を実測している。評価情報取得部130は、作業者からの入力により欠損の実測値を評価劣化量情報として取得する。また、評価用動作機構の動作から得られる特徴、例えば評価劣化量情報の他、評価用動作機構が取り付けられている装置の動作により発生する音、振動、評価用動作機構の温度などに基づきエキスパートシステムによって推定される第一評価余寿命を評価情報取得部130が取得する。エキスパートシステムとは、例えば、熟練者の経験や勘に基づく情報が蓄積されたデータベースに基づき、音、振動、温度などの情報を手掛かりとして最適な解である評価余寿命を抽出するシステムである。
【0037】
余寿命導出部140は、評価情報取得部130が取得した評価劣化量情報、および第一評価余寿命、第一回帰モデル育成部120が生成した共通パラメータ、および超パラメータの事後分布を用いて第一回帰モデルにより評価用動作機構に固有の個体差パラメータ、誤差パラメータの事後分布を推定する。以上により下記式2が形成される。
【0038】
y=δi(α+β/x)+ε・・・式2
【0039】
そして、共通パラメータの事後分布(α、β)、および個体差パラメータの事後分布(δi)からそれぞれ得られる値を第一回帰モデル(式2)に適用し、評価劣化量情報を入力として評価用動作機構の評価余寿命を示す第二評価余寿命を導出する。
【0040】
事前に推定され鵜評価余寿命および上記で導出される第二評価余寿命からベイズ推定により第二評価余寿命の事後分布を計算する。この結果として得られる余寿命の予測誤差が式(2)における誤差パラメータεとして表現される。
【0041】
第一評価余寿命を用いて第二評価余寿命を推定することで、高い精度で余寿命を推定でき、動作限界ぎりぎりまで動作機構を使用することができる。
【0042】
また、ベイズ推定手法を用いることで、余寿命の事後分布を推定することができ、図3の破線のグラフで示すような第二評価余寿命の予測誤差も得ることができる。したがって、動作限界に至る前の動作機構の最適な交換時期を予測することも可能となる。
【0043】
特に、転がり軸受である動作機構が回転精度を要求されない使用条件下においては、動作機構は欠損が発生した後も継続して使用される場合がある。欠損発生後の使用による欠損の進展に伴い第一部材と第二部材の変位は増加し、変位が許容値を超えると、動作機構が取り付けられている装置自体が破壊されるような動作限界に達する。本実施の形態1に係る余寿命予測システム100では、劣化の進展の形態が変化する場合でも劣化進展の初期段階から、使用限界に近い劣化進展末期までの全域において余寿命を正確に推定することが可能となる。
【0044】
また、余寿命に個体差がある場合であっても、階層ベイズを利用して余寿命の個体差を考慮した回帰モデルを作成するため、個々の評価用動作機構に対してそれぞれ高い精度で余寿命を推定できる。
【0045】
また、簡易な回帰モデルで表現しているため、入力データの変動に対してロバストな余寿命の予測が可能になる。
【0046】
また、余寿命の推定値を確率分布として表現することが可能である。
【0047】
(実施の形態2)
余寿命予測システム100の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と同様の作用や機能、同様の形状や機構や構造を有するもの(部分)には同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下では実施の形態1と異なる点を中心に説明し、同じ内容については説明を省略する場合がある。
【0048】
図4は、実施の形態2において用いられる学習情報生成装置を示す図である。同図に示すように、実施の形態2に係る学習情報生成装置300は、実施の形態1に係る学習情報生成装置300に加えてセンサと、記録装置306とを備えている。
【0049】
センサは、特に限定されるものではなく、音を測定するセンサなどでもかまわないが、本実施の形態の場合、センサは、軸体301の回転により学習用動作機構200に起因する振動(振動加速度)を測定するセンサである。ただし、学習用動作機構200にセンサを直接取り付けることは、一般的に困難であると考えられるため、本実施の形態の場合、振動センサは固定部材305に取り付けられており、学習用動作機構200の振動ばかりでなく、他の要因により発生する振動も測定する。
【0050】
センサの種類は、特に限定されるものでは無く、実機400に取り付けられるセンサと同種のセンサを採用することが好ましい。本実施の形態の場合、センサは一軸方向の振動加速度を測定するセンサが採用されている。また、センサを学習情報生成装置300に取り付ける個数、場所も限定されるものではないが、本実施の形態の場合、軸体301の軸方向に対する放射方向であって学習用動作機構200に加えられる負荷の方向(図中Z軸方向)の振動を測定する第一センサ321と、放射方向であって第一センサ321が測定する振動の方向と直交する方向であって、水平面内であり装置外部からの拘束力が弱い方向(図中Y軸方向)の振動を測定する第二センサ322とを備えている。
【0051】
本実施の形態2の場合、評価用動作機構を含む動作機構がころ軸受であるため、軸方向(図中Z軸方向)の振動と余寿命とに強い相関がないと考え、軸体301の軸方向の振動を取得するセンサを配置していないが、例えば動作機構が球軸受、クロスローラーベアリング等の場合、軸方向の振動を取得する第三センサを設置してもかまわない。
【0052】
記録装置306は、センサからの信号を記録する装置である。本実施の形態の場合、第一センサ321、第二センサ322からの信号を個別に記録している。具体的に例えば、記録装置306は、センサからのアナログ信号をサンプリング周波数50kHzでデジタル化し記録している。また、記録装置306は、駆動制御装置330が駆動装置302を制御するための指令値など駆動装置302の出力トルクを示す値なども記録している。
【0053】
学習情報取得部110は、動作限界までの各時刻における学習用動作機構200の動作から得られる学習特徴量ベクトル、および学習特徴量ベクトルを取得した時刻から動作限界までの時間である学習余寿命を取得する。
【0054】
学習特徴量ベクトルは、学習情報生成装置300に取り付けられたセンサの値などに基づき学習情報取得部110が生成することにより取得する。本実施の形態の場合、学習情報取得部110は、記録装置306に記録されている第一センサ321、第二センサ322などから得られる特徴量に基づき学習特徴量ベクトルを生成する。具体的には、劣化量を測定するために学習情報生成装置300を停止させる直前の所定時間(例えば20秒間)における第一センサ321、および第二センサ322から得られる振動を示す波形に基づき、測定値である時間領域情報、エンベロープ処理された時間領域情報を高速フーリエ変換して得られる周波数領域情報、エンベロープ処理された周波数領域情報をそれぞれ高速フーリエ変換して得られるケフレンシ領域情報の3種類の情報に基づき学習情報取得部110は特徴量を生成している。
【0055】
具体的な特徴量の種類、および生成する個数は、特に限定されるものでは無い。例えば、各種統計量などを選定して用いることができる。統計量の具体的な特徴量としては、実効値、最大値、波高率、尖度、歪度などである。また、時間領域情報をバンドパスフィルタなどを用いて複数の周波数帯域に区分し、それぞれの区分について周波数領域情報、ケフレンシ領域情報を生成し、これらそれぞれについて算出された統計量を特徴量としてもかまわない。
【0056】
なお、第一センサ321、および第二センサ322から得られる情報ばかりでなく、駆動制御装置330から得られるトルクを示す電流値など、動作機構の動作に関連する情報を特徴量として採用してもかまわない。
【0057】
図5は、実施の形態2に係る余寿命予測システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施の形態2に係る余寿命予測システム100は、学習装置101の一つの構成として機能する第二回帰モデル育成部150を備えている。
【0058】
第二回帰モデル育成部150は、学習情報生成装置300によって各時刻において学習用動作機構200の動作から得られる特徴量ベクトルである学習特徴量ベクトル、および学習余寿命に基づき第二回帰モデルを育成する。
【0059】
第二回帰モデルは、特に限定されるものではないが、例えば、k近傍法(KNN)、ランダムフォレスト(RandomForest)を例示することができる。
【0060】
評価情報取得部130は、第二回帰モデル育成部150において育成された第二回帰モデルに、評価特徴量ベクトルを入力することにより、第一評価余寿命を取得する。
【0061】
評価特徴量ベクトルは、実機400に搭載された評価用動作機構を動作させることにより取得する。具体的には、学習情報生成装置300に取り付けられた第一センサ321、および第二センサ322と同じ種類のセンサを実機400の対応する位置に取り付けて測定値を得る。取得した測定値に基づき評価特徴量ベクトルを取得する。評価特徴量ベクトルを構成する特徴量の種類は、第二回帰モデルの育成に用いた特徴量の種類と同じである。
【0062】
評価情報取得部130は、取得した評価特徴量ベクトルを第二回帰モデルに入力することにより第一評価余寿命を取得する。また、評価情報取得部130は、実施の形態1と同様にして評価劣化量情報を作業者からの入力により取得する。
【0063】
余寿命導出部140は、評価情報取得部130が取得した評価劣化量情報、および第二回帰モデルにより得られた第一評価余寿命等を用いて個体差パラメータの事後分布(δi)を、第一回帰モデルを用いて推定する。そして、式2のxに評価劣化量情報を入力することにより第二評価余寿命の事後分布を得る。
【0064】
本実施の形態2に係る余寿命予測システム100は、エキスパートシステムなどにより得られる第一評価余寿命よりも高い精度の第一評価余寿命を用い第二回帰モデルで第二評価余寿命を推定するためより高い精度で余寿命を推定することができる。
【0065】
(実施の形態3)
余寿命予測システム100の実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1、2と同様の作用や機能、同様の形状や機構や構造を有するもの(部分)には同じ符号を付して説明を省略する場合がある。また、以下では実施の形態1、2と異なる点を中心に説明し、同じ内容については説明を省略する場合がある。
【0066】
学習情報取得部110は、実施の形態2の場合と同様に、学習情報生成装置300を用いて、動作限界までの各時刻における学習用動作機構200の動作から得られる学習特徴量ベクトル、および学習特徴量ベクトルを取得した時刻における学習劣化量情報を取得する。
【0067】
なお、実施の形態2で取得した、学習特徴量ベクトルの特徴量の種類、および数と実施の形態3で取得する学習特徴量ベクトルの特徴量の種類、および数とは同じであっても良く、異なってもかまわない。
【0068】
図6は、実施の形態3に係る余寿命予測システムの構成を示すブロック図である。同図に示すように、実施の形態3に係る余寿命予測システム100は、実施の形態2の余寿命予測システム100に加えて、学習装置101の一つの構成として機能する第三回帰モデル育成部160を備えている。
【0069】
第三回帰モデル育成部160は、学習情報生成装置300によって各時刻において学習用動作機構200の動作から得られる特徴量ベクトルである学習特徴量ベクトル、および学習劣化量情報に基づき第三回帰モデルを育成する。
【0070】
第三回帰モデルは、特に限定されるものではないが、例えば、Random Forest、Support Vector Machine、Kernel Ridge、およびDeepNeural Networkなどを例示することができる。またこれらを組み合わせてもかまわない。第三回帰モデルの種類は、第二回帰モデルの種類と同じでも良く、異なってもかまわない。
【0071】
評価情報取得部130は、第三回帰モデル育成部160において育成された第三回帰モデルに、評価特徴量ベクトルを入力することにより、評価劣化量情報を取得する。
【0072】
評価特徴量ベクトルは、実機400に搭載された評価用動作機構を動作させることにより取得する。具体的には、学習情報生成装置300に取り付けられた第一センサ321、および第二センサ322と同じ種類のセンサを実機400の対応する位置に取り付けて測定値を得る。取得した測定値に基づき評価特徴量ベクトルを取得する。評価特徴量ベクトルを構成する特徴量の種類は、第三回帰モデルの育成に用いた特徴量の種類と同じである。
【0073】
評価情報取得部130は、実施の形態2と同様に、取得した評価特徴量ベクトルを第二回帰モデルに入力することにより第一評価余寿命を取得する。
【0074】
余寿命導出部140は、第三回帰モデルにより得られた評価劣化量情報、および第二回帰モデルにより得られた第一評価余寿命等を用いて個体差パラメータの事後分布(δi)を、第一回帰モデルを用いて推定する。そして、式2のxに評価劣化量情報を入力することにより第二評価余寿命の事後分布を得る。
【0075】
本実施の形態3に係る余寿命予測システム100によれば、評価用動作機構については実機400から取り出し、分解して評価用第二部材に発生する欠損を測定することなく、センサなどを用いた測定により得られた評価特徴量ベクトルを用いるだけで評価用動作機構の余寿命を推定することができる。従って、余寿命をリアルタイムで監視することができ、動作機構を動作限界ぎりぎりまで稼働させることも可能となる。
【0076】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、本明細書において記載した構成要素を任意に組み合わせて、また、構成要素のいくつかを除外して実現される別の実施の形態を本発明の実施の形態としてもよい。また、上記実施の形態に対して本発明の主旨、すなわち、請求の範囲に記載される文言が示す意味を逸脱しない範囲で当業者が思いつく各種変形を施して得られる変形例も本発明に含まれる。
【0077】
例えば、学習情報生成装置300は、実施の形態1、2に示すものに限定されものではなく、余寿命を予測する対象の動作機構が取り付けられる実機400や実機400を模したモデルであっても良い。
【0078】
また、特徴量ベクトルを構成する特徴量は、実施の形態2、3で示した全てを備えなくともよい。例えば、余寿命の推定に強く寄与する特徴量を選定して特徴量ベクトルを構成してもかまわない。寄与度の高い特徴量を抽出する方法は、特に限定されるものでは無いが、人工知能により各特徴量の寄与度を算出し、寄与度の上位から所定個数(例えば10個)を抽出などしてもよい。また、特徴量には駆動装置302の出力トルクやこれに関連する電流値、電力値、その他グリース内の異物混入量などが含まれていても良い。
【0079】
また、動作機構は、転がり軸受に限定されるものではなく、ボールねじや、直動ガイドなどでもかまわない。
【0080】
また、余寿命予測システム100として説明したが、学習装置101と余寿命予測装置109とは別体の装置として存在してもかまわない。
【0081】
また、学習装置101が実行する内容は、動作機構の余寿命を推定するための育成された第一回帰モデルの製造方法である。
【0082】
また、余寿命予測システム100、および余寿命予測装置109が備える各処理部は、コンピュータにプログラムを実行させることにより実現することが可能である。
【0083】
また、センサにより測定される信号は、振動加速度に限定されるものではなく、振動の変位、振動の速度などでもかまわない。また、振動ばかりでなく、音などを測定して信号としてもよい。
【0084】
また、抽出する周波数帯域も任意に選定してもよく、抽出した周波数帯域が重複してもかまわない。
【0085】
また、フーリエ変換を必ずしも実行する必要は無く、周波数領域情報はケフレンシ領域情報を作成することのみに用い、周波数領域であることを特徴量に含めなくてもかまわない。
【0086】
また、実施の形態3において、第二回帰モデル育成部150がなくてもよい。この場合、第一評価余寿命は、エキスパートシステムなどにより取得すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
軸受、ボールねじ、直動機構、減速機など第一部材、および第二部材が相対的に動作するあらゆる種類の動作機構の余寿命推定に利用可能である。
【符号の説明】
【0088】
100 余寿命予測システム
101 学習装置
109 余寿命予測装置
110 学習情報取得部
120 第一回帰モデル育成部
130 評価情報取得部
140 余寿命導出部
150 第二回帰モデル育成部
160 第三回帰モデル育成部
200 学習用動作機構
201 学習用第一部材
202 学習用第二部材
300 学習情報生成装置
301 軸体
302 駆動装置
305 固定部材
306 記録装置
321 第一センサ
322 第二センサ
330 駆動制御装置
400 実機
図1
図2
図3
図4
図5
図6