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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】水中構造物撮影装置
(51)【国際特許分類】
   B63C 11/48 20060101AFI20240205BHJP
   G01B 11/24 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
B63C11/48 Z
B63C11/48 D
G01B11/24 K
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019224875
(22)【出願日】2019-12-12
(65)【公開番号】P2021091371
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504196300
【氏名又は名称】国立大学法人東京海洋大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591102497
【氏名又は名称】東京湾横断道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 逸人
(72)【発明者】
【氏名】桑澤 庄次郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 浩平
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206131(JP,A)
【文献】特開2015-214335(JP,A)
【文献】特開2019-033348(JP,A)
【文献】特表2015-505278(JP,A)
【文献】国際公開第2017/208288(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/48
G01B 11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中を移動するための推進機構を有する本体と、
前記本体の側面に設けられ、水中構造物の検査対象面を照らす照明部と、
レンズが前記側面を向くように前記本体内に設けられ、前記照明部により照らされた前記検査対象面に係る写真を撮影する撮影部と、
を備え
前記本体は、前記側面が前面、後面、上面および下面に比べて大きい縦長の扁平形状に構成されており、
前記推進機構は、前記本体の前後方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する第1のスラスタ群を有し、
前記複数のスラスタは、前記側面に設けられた取水口と吐出口を接続する流路と、前記流路に設けられたインペラとを有し、前記インペラが回転することで前記取水口から吸入された水が前記吐出口から吐出され、前記吐出口は前記本体の前面または後面に向かって開口していることを特徴とする水中構造物撮影装置。
【請求項2】
前記照明部は、前記本体の移動方向に沿って延びる少なくとも1本の線状光源を有することを特徴とする請求項1に記載の水中構造物撮影装置。
【請求項3】
前記照明部は、前記本体の側面視で前記撮影部のレンズの周辺に設けられ、前記本体の移動方向に合わせて線状に点灯する面状光源を有することを特徴とする請求項1に記載の水中構造物撮影装置。
【請求項4】
記推進機構は、前記撮影部が前記検査対象面の写真を撮影する前に前記側面が前記検査対象面と平行になるように前記本体の姿勢制御を行うことを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の水中構造物撮影装置。
【請求項5】
前記本体は、前記本体の上面視で前方および後方にいくにつれて幅狭になる流線形状を有することを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の水中構造物撮影装置。
【請求項6】
前記本体は、前記本体の前面視で上方および下方にいくにつれて幅狭になる流線形状を有することを特徴とする請求項に記載の水中構造物撮影装置。
【請求項7】
前記本体は、前記本体の側面視で前方および後方にいくにつれて幅狭になる形状を有することを特徴とする請求項またはに記載の水中構造物撮影装置。
【請求項8】
前記第1のスラスタ群の各スラスタについて、前記吐出口から前記本体の前方または後方に向かって延在しつつ前記本体の中心軸に向かって傾斜するように形成された整流部が設けられていることを特徴とする請求項に記載の水中構造物撮影装置。
【請求項9】
前記推進機構は、前記本体の幅方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する第2のスラスタ群をさらに備えることを特徴とする請求項1~8のいずれかに記載の水中構造物撮影装置。
【請求項10】
前記推進機構は、前記本体の上下方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する第3のスラスタ群をさらに備えることを特徴とする請求項のいずれかに記載の水中構造物撮影装置。
【請求項11】
線状のレーザ光を前記検査対象面に照射するレーザ照射部をさらに備え、
前記撮影部は、前記線状のレーザ光が照射された前記検査対象面に係る写真を撮影し、
前記推進機構は、前記写真から把握された前記本体の姿勢に基づいて前記本体の姿勢制御を行うことを特徴とする請求項10のいずれかに記載の水中構造物撮影装置。
【請求項12】
前記線状のレーザ光は前記本体の移動方向と平行であることを特徴とする請求項11に記載の水中構造物撮影装置。
【請求項13】
本体と、
前記本体の側面に設けられ、前記本体の移動方向に沿って発光して水中構造物の検査対象面を照らす照明部と、
レンズが前記側面を向くように前記本体内に設けられ、前記照明部により照らされた前記検査対象面に係る写真を撮影する撮影部と、を備え、
前記照明部は、
前記本体の側面視で前記撮影部のレンズを中心に挟むように互いに平行に設けられ、前記本体の前後方向に延びる第1の線状光源および第2の線状光源と、
前記本体の側面視で前記撮影部のレンズを中心に挟むように互いに平行に設けられ、前記本体の上下方向に延びる第3の線状光源と第4の線状光源とを有し、
前記本体が前後方向に移動しているときは、前記第1および第2の線状光源は点灯し、前記第3および第4の線状光源は消灯し、
前記本体が上下方向に移動しているときは、前記第1および第2の線状光源は消灯し、前記第3および第4の線状光源は点灯することを特徴とする水中構造物撮影装置
【請求項14】
本体と、
前記本体の側面に設けられ、前記本体の移動方向に沿って発光して水中構造物の検査対象面を照らす照明部と、
レンズが前記側面を向くように前記本体内に設けられ、前記照明部により照らされた前記検査対象面に係る写真を撮影する撮影部と、を備え、
前記照明部は、前記撮影部により撮影される前記検査対象面の前記移動方向に沿う明るさが一定になるように前記移動方向の照明強度が調整された光を発光することを特徴とする水中構造物撮影装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水中構造物撮影装置および水中構造物撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
東京湾アクアラインのアクアブリッジなど、水中部分を有する構造物の点検・保守作業は、現状、ダイバーにより行われている。例えば、ダイバーは、海水中での電気的な腐食を防ぐために設置されている犠牲陽極が脱落していないかを目視点検したり、犠牲電極の水中における電位を測定することで構造物が保護されていることなどを確認している。
【0003】
このようなダイバーによる潜水作業は、危険を伴うものであり、潜水時間の制限もある。また、作業は水温、潮流、水の濁り等の影響を受けやすい。このため、安全かつ効率的に点検作業を行うことが難しい。また、少子高齢化が進む中で、将来にわたる点検・保守を考慮すると、このような点検作業を水中ロボットにより行うことが望まれる。そのための第一歩として、構造物を詳細に画像撮影するための技術を開発する必要がある。
【0004】
ところで、従来、構造物の複数の写真(画像)から当該構造物の三次元モデルを生成する技術として、フォトグラメトリが知られている。フォトグラメトリにより三次元モデルを生成するためには、構造物の同じ部分について複数枚の写真を撮影する必要がある。
【0005】
例えば、フォトグラメトリの代表的な手法の一つとして、Structure from Motion(SfM)が挙げられる。SfMでは、各写真を撮影した際におけるカメラの三次元空間の位置と姿勢を、複数の写真から抽出された共通の特徴点に基づいて推定し、推定された位置と姿勢および撮影された写真に基づいて三次元測量を行う。高精度の三次元モデルを生成するためには、複数の写真間で共通の特徴点を正確に且つ多数抽出する必要がある。特徴点としては、例えば、撮影された写真のピクセルごとの色情報の並びのパターンなどが挙げられる。
【0006】
なお、特許文献1には、水中構造物の壁面を調査するための水中調査装置が記載されている。この水中調査装置は、調査用カメラ、水中移動用プロペラスラスタ、超音波距離センサおよび前方照明用ライトを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-206131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
陸上構造物については、従来、ドローン等により空撮された写真を用いて三次元モデルを生成することが行われている。陸上構造物の場合、通常、撮影対象である陸上構造物が太陽光により照らされており、撮影の間、太陽の位置や照度等の照明条件(照明環境)はほとんど一定である。このため、フォトグラメトリ用の写真を撮影することが比較的容易である。
【0009】
これに対して水中構造物の場合、通常、水中構造物を照らすための照明装置が必要である。そして、照明装置はカメラと一緒に移動するため、照明条件は時々刻々変化する。このため、水中構造物についてはフォトグラメトリで高精度な三次元モデルを生成するための写真を撮影することが陸上に比べて格段に困難である。この点について以下により詳しく説明する。
【0010】
陸上構造物の撮影では、カメラが移動するのに対して、太陽等の照明は移動しないことが一般的である。このため、撮影対象物は同じ照明条件で照らされており、カメラのみが異なる視点に移動して、当該物を撮影することになる。すなわち、カメラの移動中、陸上構造物に対する照明条件は一定であるため、撮影された複数の写真から同じ特徴点を抽出することが容易である。
【0011】
これに対して、水中構造物の撮影では、浅海等の一部の環境を除き、照明装置で水中構造物を照らしながら写真を撮影しなければならない。このため、水中構造物の規模に比して極端に近視眼的な撮影を行うこととなる。まして水に濁りがある等の場合には、照明装置が照らすことのできる範囲はかなり狭くなる。さらに、照明装置はカメラと一緒に移動するため、水中構造物に対する照明条件はカメラの移動に合わせて時々刻々変化することとなる。このため、フォトグラメトリ用に撮影された複数の写真は、画像的に異なる特徴を有するものとなってしまい、これら複数の写真から同じ特徴点を抽出することが困難となる。
【0012】
上記のように、水中構造物の場合、フォトグラメトリで高精度な三次元モデルを生成するための写真を撮影することが陸上に比べて格段に困難である。
【0013】
本発明は、上記の技術的認識に基づいてなされたものであり、その目的は、水中構造物の三次元モデルを精度良く生成するための写真を撮影できる水中構造物撮影装置および水中構造物撮影方法を提供することである。
【0014】
また、撮影対象が水中構造物である場合、水流の影響等により、安定した姿勢で撮影を行うことが困難である。
【0015】
そこで本発明は、安定した姿勢で水中構造物の写真を撮影できる水中構造物撮影装置を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る水中構造物撮影装置は、
本体と、
前記本体の側面に設けられ、前記本体の移動方向に沿って発光して水中構造物の検査対象面を照らす照明部と、
レンズが前記側面を向くように前記本体内に設けられ、前記照明部により照らされた前記検査対象面に係る写真を撮影する撮影部と、
を備えることを特徴とする。
【0017】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記照明部は、前記移動方向に沿って延びる少なくとも1本の線状光源を有するようにしてもよい。
【0018】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記照明部は、前記本体の側面視で前記撮影部のレンズを中心に挟むように互いに平行に設けられ、前記本体の前後方向に延びる第1の線状光源および第2の線状光源を有するようにしてもよい。
【0019】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記照明部は、前記本体の側面視で前記撮影部のレンズを中心に挟むように互いに平行に設けられ、前記本体の上下方向に延びる第3の線状光源と第4の線状光源をさらに有し、
前記本体が前後方向に移動しているときは、前記第1および第2の線状光源は点灯し、前記第3および第4の線状光源は消灯し、
前記本体が上下方向に移動しているときは、前記第1および第2の線状光源は消灯し、前記第3および第4の線状光源は点灯するようにしてもよい。
【0020】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記照明部は、前記本体の側面視で前記撮影部のレンズの周辺に設けられ、前記移動方向に合わせて線状に点灯する面状光源を有するようにしてもよい。
【0021】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、水中を移動するための推進機構を有し、前記推進機構は、前記撮影部が前記検査対象面の写真を撮影する前に前記側面が前記検査対象面と平行になるように前記本体の姿勢制御を行うようにしてもよい。
【0022】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記照明部は、前記撮影部により撮影される前記検査対象面の前記移動方向に沿う明るさが一定になるように前記移動方向の照明強度が調整された光を発光するようにしてもよい。
【0023】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、前記本体の上面視で前方および後方にいくにつれて幅狭になる流線形状を有するようにしてもよい。
【0024】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、前記本体の前面視で上方および下方にいくにつれて幅狭になる流線形状を有するようにしてもよい。
【0025】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、前記本体の側面視で前方および後方にいくにつれて幅狭になる形状を有するようにしてもよい。
【0026】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、水中を移動するための推進機構を有してもよい。
【0027】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記推進機構は、前記本体の前後方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する第1のスラスタ群を備えるようにしてもよい。
【0028】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記第1のスラスタ群の各スラスタについて、吐出口から前記本体の前方または後方に向かって延在しつつ前記本体の中心軸に向かって傾斜するように形成された整流部が設けられているようにしてもよい。
【0029】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記推進機構は、前記本体の幅方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する第2のスラスタ群をさらに備えるようにしてもよい。
【0030】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記推進機構は、前記本体の上下方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する第3のスラスタ群をさらに備えるようにしてもよい。
【0031】
また、前記水中構造物撮影装置において、
線状のレーザ光を前記検査対象面に照射するレーザ照射部をさらに備え、
前記撮影部は、前記線状のレーザ光が照射された前記検査対象面に係る写真を撮影し、
前記推進機構は、前記写真から把握された前記本体の姿勢に基づいて前記本体の姿勢制御を行うようにしてもよい。
【0032】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記線状のレーザ光は前記移動方向と平行であるようにしてもよい。
【0033】
本発明に係る水中構造物撮影方法は、
水中構造物撮影装置による水中構造物の撮影方法であって、
前記水中構造物撮影装置は、
本体と、
前記本体の側面に設けられた照明部と、
レンズが前記側面を向くように前記本体内に設けられた撮影部と、
を備え、
前記照明部が、前記本体の移動方向に沿って発光して、水中構造物の検査対象面を照らし、
前記撮影部が、前記照明部により照らされた前記検査対象面に係る写真を撮影することを特徴とする。
【0034】
本発明に係る水中構造物撮影装置は、
水中を移動するための推進機構を有する本体と、
レンズが前記本体の側面を向くように前記本体内に設けられ、水中構造物の検査対象面に係る写真を撮影する撮影部と、
を備え、
前記本体は、前記本体の前後方向に対して扁平形状であることを特徴とする。
【0035】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、前記本体の上面視で前方および後方にいくにつれて幅狭になる流線形状を有してもよい。
【0036】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、前記本体の前面視で上方および下方にいくにつれて幅狭になる流線形状を有してもよい。
【0037】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体は、前記本体の側面視で前方および後方にいくにつれて幅狭になる形状を有してもよい。
【0038】
また、前記水中構造物撮影装置において、
前記本体には、前記本体の前方または後方に水流を吐出する複数のインペラが設けられており、前記複数のインペラの回転軸が前記本体の中心軸と平行であるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】実施形態に係る水中構造物撮影ロボットの斜視図である。
図2】実施形態に係る水中構造物撮影ロボットの側面図である。
図3】実施形態に係る水中構造物撮影ロボットの前面図である。
図4】実施形態に係る水中構造物撮影ロボットの後面図である。
図5】実施形態に係る水中構造物撮影ロボットの上面図である。
図6】実施形態に係る水中構造物撮影ロボットの下面図である。
図7】第1のスラスタ群を用いたピッチング制御の一例を説明するための図である。
図8】第2のスラスタ群を用いたヨーイング制御の一例を説明するための図である。
図9】第3のスラスタ群を用いたピッチング制御の一例を説明するための図である。
図10】第1のスラスタ群および整流部を用いたローリング制御の一例を説明するための図である。
図11】実施形態に係る水中構造物の撮影方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図12】水中構造物を撮影する際における水中構造物撮影ロボットの移動経路の一例を示す図である。
図13】水中構造物を撮影する際の水中構造物撮影ロボットを後方より見たときの図である。
図14】水中構造物を撮影する際の水中構造物撮影ロボットを上方より見たときの図である。
図15】水中構造物(斜面)を撮影する際の水中構造物撮影ロボットを後方より見たときの図である。
図16】実施形態の変形例1に係る照明部について説明するための図である。
図17】実施形態の変形例2に係る照明部について説明するための図である。
図18】実施形態の変形例2に係る照明部の動作例を示す図である。
図19】実施形態の変形例2に係る照明部の動作例を示す図である。
図20】実施形態の変形例2に係る照明部の動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、各図においては、同等の機能を有する構成要素に同一の符号を付している。
【0041】
<<水中構造物撮影ロボット>>
本実施形態に係る水中構造物撮影ロボットについて、図1図6を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る水中構造物撮影ロボット1の斜視図である。図2は水中構造物撮影ロボット1の側面図である。図3は水中構造物撮影ロボット1の前面図である。図4は水中構造物撮影ロボット1の後面図である。また、図5は水中構造物撮影ロボット1の上面図であり、図6は水中構造物撮影ロボット1の下面図である。
【0042】
図1において、本体10の前後方向はX軸と平行であり、本体10の左右方向(幅方向)はY軸と平行であり、本体10の上下方向はZ軸と平行である。図2図6中に記載した座標軸は図1に示す座標軸に対応している。
【0043】
本実施形態に係る水中構造物撮影ロボット1は、橋脚等の水中構造物の三次元モデルを生成するための写真を撮影するように構成されている。なお、水中構造物撮影ロボット1は、動画を撮影する(すなわち、短い時間間隔で写真を連続撮影する)ことも可能である。
【0044】
水中構造物撮影ロボット1は、本体10と、この本体10の側面11に設けられた照明部20と、水中構造物を撮影する撮影部30と、制御部40と、音響通信部41と、ソーナー部42と、ドップラ式速度計43と、レーザ照射部45,46とを備えている。
【0045】
本体10内には、撮影部30、制御部40、および図示しないバッテリやセンサ(例えば深度センサ)等が配置されている。
【0046】
制御部40は、本体10内部に設けられている。この制御部40は、マイクロプロセッサやメモリ等により構成されており、照明部20および撮影部30に対する制御の他、推進機構(インペラ51~62)の制御などを行う。また、制御部40は、水中構造物撮影ロボット1の移動や姿勢制御を行うために、三次元計測に係る情報処理を行う。
【0047】
音響通信部41は、音波を用いて無線通信を行うよう構成されている。これにより、水中構造物撮影ロボット1は外部の装置と通信することができる。
【0048】
ソーナー部42は、音波によって水中構造物撮影ロボット1の周辺の物体(障害物等)を探知するよう構成されている。なお、必要に応じて、本体10の各面に距離計測用のソーナーを設けてもよい。
【0049】
ドップラ式速度計(Doppler Velocity Log:DVL)43は、図2および図6に示すように、本体10の下面15の内側に設けられている。このドップラ式速度計43は、本体10の下方向および検査対象面に向けて音響ビーム(音波)を放射できるように、本体10内に設けられた可動式の台(図示せず)に固定されてもよい。ドップラ式速度計43は、海底等に向けて音響ビームを放射し、反射波等のドップラシフト量から対地速度などを計測する。また、検査対象面に向けて音響ビームを放射することで、ドップラ式速度計43は、検査対象面を基準とした速度や距離等を計測する。これらの計測値は、水中構造物撮影ロボット1の運動制御に用いられる。
【0050】
なお、音響ビームの放射方向については、本体10の下面15から音響ビームが当たる面(例えば海底や水中構造物のフーチング等)までの距離が比較的小さい場合、または、本体10の側面方向に位置する検査対象面との距離が比較的に大きい場合は、ドップラ式速度計43から放射されて拡がる音響ビームが本体10の直下の面以外の側面等で多重反射する影響がないことから、ドップラ式速度計43は下向きに音響ビームを放射する。一方、本体10から検査対象面が近く、かつ本体10から下面15の直下の面までの距離が比較的大きい場合は、音響ビームが検査対象面で多重反射するおそれがあることから、ドップラ式速度計43の計測が不安定になることを避けるため、ドップラ式速度計43は側面方向に音響ビームを放射する。
【0051】
レーザ照射部45,46は、水中構造物撮影ロボット1と水中構造物の検査対象面との間の距離を計測するために設けられている。このレーザ照射部45,46は、レーザ光源と、レーザ光源から出力されたレーザ光を線状の光に変換して外部に投光する投光光学系とを有する。
【0052】
レーザ照射部45,46は、図1および図2に示すように、本体10の側面11に設けられる。レーザ照射部45,46の配置は、撮影部30のカメラの画角や、水中構造物を撮影する際における側面11と検査対象面との間の距離(設定値)等に基づいて調整される。本実施形態では、レーザ照射部45,46は本体10に内蔵されており(すなわち、側面11の内側に設けられており)、レーザ光の出射口が側面11に開いている。
【0053】
本実施形態では、外部に投光される線状のレーザ光は線状光源21,22と平行である。これにより、検査対象面の、移動方向の起伏(凹凸)に関する情報を多く得ることができる。このように得られた豊富な起伏情報から、検査対象面の細かい凹凸をフィルタリングして主となる平面を求めることができる。このように求められた平面に基づいて姿勢制御を行うことで、検査対象面の凹凸や障害物等に起因する水中構造物撮影ロボット1のふらつき動作等を防止することができる。
【0054】
次に、本体10、照明部20および撮影部30についてそれぞれ詳しく説明する。
【0055】
<本体>
まず、水中構造物撮影ロボット1の本体10について説明する。
【0056】
本体10は、外形を構成する面として、側面11と、前面12と、後面13と、上面14と、下面15と、側面11の反対側の側面16とを有している。
【0057】
なお、下面15については、少なくともドップラ式速度計43のトランスデューサ面(音響ビーム放射面)に対向する部分に開口が設けられている。また、検査対象面に向けて音響ビームを放射可能とする場合は、側面11の下端部分に下面15の開口に接続するように、トランスデューサの幅以上の大きさの切り欠きを設けることで、トランスデューサ面が検査対象面に対向できるようにする。
【0058】
本体10は、水中構造物撮影ロボット1(本体10)の前後方向に対して扁平形状である。 すなわち、本体10は、図1図5および図6に示すように、側面11,16が前面12、後面13、上面14および下面15に比べて大きい。これにより、水中構造物撮影ロボット1は水中構造物の検査対象面に沿って流れる水流をいなしつつ、水流に沿って容易に移動することができるようになる。また、水中構造物撮影ロボット1は検査対象面と平行な姿勢を取りやすくなる。
【0059】
さらに、本実施形態では、本体10の幅(Y軸方向の長さ)が前面12および後面13に向かうにつれて狭くなる扁平型の流線形状を有する。このように本体10の上面視で側面11,16から前方(前面12側)および後方(後面13側)にいくにつれて幅狭になる形状を有することで、水中構造物を撮影する際に、水中構造物に沿って流れる水に対する抵抗を減らすことができる。その結果、水中構造物撮影ロボット1は、水中構造物の検査対象面に沿って流れる水流をいなしつつ、水流に沿ってさらに容易に移動することができる。
【0060】
また、本実施形態では、図3に示すように、本体10は、Y軸方向の長さが上面14および下面15に向かうにつれて狭くなる形状を有する。このように、水中構造物撮影ロボット1は、本体10の前面視(正面視)で上方および下方にいくにつれて幅狭になる形状を有してもよい。これにより、水に対する抵抗(流体抵抗)をさらに減らすことができる。その結果、水中構造物撮影ロボット1のエネルギー消費量を低減させることができるとともに、本体10の小型化を図ることができる。
【0061】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、本体10は、Z軸方向の長さが前面12および後面13に向かうにつれて狭くなる形状を有する。このように、水中構造物撮影ロボット1は、本体10の側面視で前方および後方にいくにつれて幅狭になる形状を有してもよい。これにより、流体抵抗をさらに減らすことができ、その結果、水中構造物撮影ロボット1のエネルギー消費量を低減させることができるとともに、本体10の小型化を図ることができる。
【0062】
なお、本体10は、側面11と側面16が本体10の前端および後端で直接接続し、前面12および後面13を有しない形状であってもよい。また、本体10は、側面11と側面16が本体10の上端および下端で直接接続し、上面14および下面15を有しない形状であってもよい。
【0063】
本体10はそれ自体が耐水構造を有している必要はない。本実施形態では、本体10内部に配置される装置(撮影部30、制御部40および図示しないバッテリやセンサ等)が各々耐水構造を有しており、本体10内部に水が浸入することを許容している。
【0064】
側面11には、図1および図2に示すように、開口11aが設けられており、この開口11aに透明板11tが嵌め込まれている。透明板11tは、例えば樹脂製であるが、ガラス製であってもよい。撮影部30は、撮影用のレンズ31が透明板11tに向くように本体10内部に設置されており、透明板11tを介して水中構造物の撮影を行う。
【0065】
本実施形態では、側面11の反対側の側面16にも開口11aと同形状の開口が設けられている。この開口には、つや消し黒等で塗装された板部材が嵌め込まれている。これにより、外部からの光の侵入を防ぎ、透明板11tの内側での光の反射を抑制することができる。その結果、撮影部30が透明板11tを介して外部の撮影を明瞭に行うことができる。なお、側面16に開口を設けなくてもよい。
【0066】
側面11には、複数の取水口11bと複数の吐出口11cが設けられている。本実施形態では、4つの取水口11bと4つの吐出口11cが設けられている。各取水口11bは、異物の流入を防止するために網状部材で覆われている。なお、吐出口11cでは水流が吸入されず吐出されるのみであることから、吐出口11cに網状部材を設けなくてもよい。
【0067】
取水口11bと吐出口11cを接続する流路(図示せず)にはインペラが設けられている。このインペラが回転することで、取水口11bから吸入された水が吐出口11cから吐出される。図2図4から分かるように、インペラによる水流は本体10の前方および後方に向けて吐出される。各インペラは制御部40により独立して制御され、それにより、水中構造物撮影ロボット1の移動や姿勢制御が行われる。
【0068】
本体10は、フレーム板17A,17B,17C,17Dと、各吐出口11cに設けられた整流部18と、上面14に設けられた係合部19とをさらに有している。
【0069】
フレーム板17A,17B,17C,17Dは板状の部材であり、フレーム板17A,17B,17C,17Dが井桁のように組み合わされることで本体10の骨格が構成される。フレーム板17A,17Bは互いに平行に水平方向に配置され、フレーム板17C,17Dは互いに平行に垂直方向に配置されている。
【0070】
本実施形態では、図1等に示すように、フレーム板17A,17Bの一部が側面11,16から突出している。この突出部分に沿って、照明部20を構成する線状光源21,22が設けられている。すなわち、線状光源21はフレーム板17Aの突出部分に沿うように設けられ、線状光源22はフレーム板17Bの突出部分に沿うように設けられている。
【0071】
整流部18は、図1および図3図6に示すように、各吐出口11cの内側開口端に接続するように設けられている。整流部18は、吐出口11cから前方または後方に向かって延在しつつ本体10の中心軸CAに向かって傾斜するように形成されている。より詳しくは、本体10の前面12側に設けられた整流部18は、吐出口11cから前面12側に向かって延在しつつ本体10の中心軸CAに向かって傾斜するように形成されている。本体10の後面13側に設けられた整流部18は、吐出口11cから後面13側に向かって延在しつつ本体10の中心軸CAに向かって傾斜するように形成されている。
【0072】
上記の整流部18を設けることで、吐出口11cから吐出された水流は、コアンダ効果により整流部18の表面に沿って流れる。すなわち、吐出口11cから吐出された水流はコアンダ効果により整流部18により本体10の中心軸CA側に引き寄せられる。その結果、インペラ51~58の回転軸が中心軸CAと平行に設けられていながらも、X軸方向の推力だけでなく、Y軸方向(本体10の左右方向)の推力も得ることができる。
【0073】
係合部19は、本体10の上面14に設けられている。水中構造物撮影ロボット1は自律的に移動可能であるが、水中撮影の前に係合部19にフックを掛けて水中に沈めたり、水中撮影後に水上に引き上げるために用いる。なお、本実施形態では、図1に示すように、側面11(16)にも係合部を設けている。図示しないが、前面12や後面13にも係合部を設けてもよい。
【0074】
<照明部>
次に、照明部20について説明する。
【0075】
照明部20は、水中構造物撮影ロボット1の移動方向に沿って発光して水中構造物の検査対象面を照らすように構成されている。本実施形態では、照明部20は線状光源により構成される。より正確には、照明部20は、水中構造物撮影ロボット1(本体10)の移動方向に沿って延びる少なくとも1本の線状光源を有する。水中構造物を撮影する際における水中構造物撮影ロボット1の移動方向(撮影方向)は、例えば水平方向である(後述の図12参照)。
【0076】
より詳しくは、本実施形態の照明部20は、本体10の前後方向(X軸方向)に延び、同じ明るさの線状光源21,22を有する。線状光源21,22は、長手方向に沿って同じ明るさで発光する。
【0077】
線状光源21,22により照らされた検査対象面における移動方向の明るさの均一性を向上させるために、線状光源21,22の長さは、撮影部30による撮影範囲(撮影幅)よりも十分長い。すなわち、線状光源21,22は、撮影部30で撮影される写真の端部に陰影による不均一が生じない程度に長い必要がある。
【0078】
線状光源21,22は、例えば、LED等からなる複数の発光素子を撮影方向に沿って配線基板上に配置したものである。より詳しくは、線状光源21,22は、長尺の配線基板上に所定間隔で複数の発光素子を実装したものを透明管に挿入したものとして構成されている。
【0079】
線状光源21,22は、図示しない電源ケーブルにより本体10内部のバッテリから電力を供給される。線状光源21,22の点灯制御は制御部40により行われる。
【0080】
図2に示すように、線状光源21,22は、本体10の側面視で撮影部30のレンズ31を中心に挟むように互いに平行に設けられている。すなわち、レンズ31が線状光源21,22から等距離の位置にあるように線状光源21,22は設けられている。これにより、線状光源21,22により照らされた検査対象面の明るさを可及的に上下対称にすることができる。
【0081】
本実施形態では、図1および図2に示すように、側面11から突出したフレーム板17Aに沿うようにして線状光源21が配置されている。同様に、側面11から突出したフレーム板17Bに沿うようにして線状光源22が配置されている。なお、光量が不足する場合には、フレーム板17Aおよびフレーム板17B側のそれぞれに複数本の線状光源を追加で設けてもよい。
【0082】
なお、本実施形態では2本の線状光源を用いたが、照明条件を一定にするためには1本の線状光源のみであってもよい。本実施形態のように2本の線状光源を用いることで、移動方向と垂直な方向に対する明るさの変化(減衰)を抑えることができる。
【0083】
また、線状光源21,22は、各発光素子の発光強度を個別に制御可能に構成されてもよい。すなわち、制御部40は、撮影部30により撮影される検査対象面の移動方向に沿う明るさが一定になるように、各発光素子の発光強度を調整してもよい。例えば、撮影部30で撮影された検査対象面の写真に基づいて、比較的暗い箇所に対応する発光素子の発光強度を増やし、比較的明るい箇所に対応する発光素子の発光強度を減少させる。
【0084】
<撮影部>
次に、撮影部30について説明する。
【0085】
撮影部30は、図2に示すように、レンズ31を有し、このレンズ31が側面11(透明板11t)を向くように本体10内に設けられている。本実施形態では、撮影部30は、フレーム板17Bの上に固定される。撮影部30は、側面11の開口11aに嵌め込まれた透明板11tを通して水中構造物を撮影する。
【0086】
撮影部30は、水中構造物撮影ロボット1が移動している間に、照明部20により照らされた水中構造物の検査対象面(壁面等)の写真を撮影する。より詳しくは、撮影部30は、移動方向に沿って撮影領域をずらしながら所定の時間間隔で写真撮影を行う。フォトグラメトリの精度を上げるために、写真間のオーバラップ領域が大きくなるようにできるだけ短い時間間隔で写真を撮影することが好ましい。
【0087】
なお、図12に示すような移動経路に沿って検査対象面の全面を順次撮影する場合は、水平方向だけでなく、垂直方向にも十分なオーバラップ領域が写真間で確保されるようにすることが望ましい。すなわち、ある1枚の写真(画像)についてみた場合、当該画像の上下左右のいずれの方向についても、隣接画像との間で十分なオーバラップ領域が確保されることが望ましい。
【0088】
<推進機構>
ここで、水中構造物撮影ロボット1の推進機構について説明する。
【0089】
水中構造物撮影ロボット1は、水中を所望の方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に移動したり、各軸(X軸、Y軸、Z軸)まわりに回転するための推進機構を有している。この推進機構は、第1~第3のスラスタ群により構成される。
【0090】
より詳しくは、推進機構は、本体10を前後方向(X軸方向)に駆動するための第1のスラスタ群と、本体10を左右方向(Y軸方向)に駆動するための第2のスラスタ群と、本体10を上下方向(Z軸方向)に駆動するための第3のスラスタ群とを有する。以下、各スラスタ群について詳しく説明する。
【0091】
まず、第1のスラスタ群について説明する。第1のスラスタ群は、本体10の前後方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する。第1のスラスタ群が有する各スラスタは、取水口11bと吐出口11cを接続する流路と、その内部に設けられたインペラとにより構成される。
【0092】
図3に示すように、前面12側には、4つのインペラ51,52,53,54が設けられている。また、図4に示すように、後面13側には、4つのインペラ55,56,57,58が設けられている。各インペラは、制御部40により回転制御される。
【0093】
インペラ51~58の回転軸は本体10の中心軸CAと平行になるように設けられている。これにより、本体10の薄型化を図ることができ、その結果、水中構造物に沿って流れる水に対する抵抗を減らすことができる。前述したように、整流部18を設けることで、回転軸が中心軸CAと平行でありながらも、本体10のY軸方向の推力を得ることができる。
【0094】
インペラ51~58を制御することで水中構造物撮影ロボット1を前後方向(X軸方向)に移動させることが可能である。例えば、インペラ51~54を動作させてX軸正方向の水流を吐出させると、水中構造物撮影ロボット1は後進する。反対に、インペラ55~58を動作させてX軸負方向の水流を吐出させると、水中構造物撮影ロボット1は前進する。
【0095】
なお、インペラ51~58による吐出水量(推力)を個別に制御することで水中構造物撮影ロボット1のピッチング制御(Y軸まわりの制御)を行うこともできる。図7の例では、各々同じ水量を吐出するインペラ51およびインペラ53の合計水量W1と、各々同じ水量を吐出するインペラ56およびインペラ58の合計水量W2とを等しくすることで、Y軸まわりのモーメントMyが水中構造物撮影ロボット1に付与される。その結果、水中構造物撮影ロボット1はその場で静止しつつY軸まわりに回転する。
【0096】
また、水中構造物撮影ロボット1が前進しながらY軸方向に回転するようにすることも可能である。例えば、4つのインペラ55~58のうち、各々同じ水量を吐出するインペラ55およびインペラ57の合計水量と、各々同じ水量を吐出するインペラ56およびインペラ58の合計水量との間に差を設けることで、水中構造物撮影ロボット1に前進しながらY軸まわりのモーメントを付与することができる。例えば、インペラ56およびインペラ58の合計水量がインペラ55およびインペラ57の合計水量よりも大きい場合、水中構造物撮影ロボット1は前進しながら船首が持ち上がるように移動する。
【0097】
また、側面11側のインペラ51,52,55,56による吐出量を各々同じとすることで(すなわち、同じ速度で回転させることで)、整流部18によりY軸方向の推力を生じさせて、水中構造物撮影ロボット1をY軸負方向に水平に移動させることができる。同様に、側面16側のインペラ53,54,57,58を同じ速度で回転させることで、水中構造物撮影ロボット1をY軸正方向に水平に移動させることができる。このような制御は、第2のスラスタ群(後述)の冗長機能として利用可能である。例えば、第2のスラスタ群によるY軸方向の推力が不足し、かつ前後方向の推力に余力がある場合に上記制御を行うようにしてもよい。
【0098】
また、インペラ51~58を全て同じ回転速度で回転させることで本体10の前方および後方の両方に水流を吐出させてもよい。これにより、静水中において水中構造物撮影ロボット1がX軸の所定の位置に留まるようにすることができる。なお、本体10の前後方向に流れ等の外乱がある場合には、インペラ55~58のそれぞれの回転速度を調節して、本体10が所定の位置に留まるようにすることもできる。
【0099】
次に、第2のスラスタ群について説明する。第2のスラスタ群は、本体10の幅方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する。
【0100】
第2のスラスタ群が有する各スラスタは、本体10を幅方向に貫通する流路と、その内部に設けられたインペラとにより構成される。図1図4に示すように、本体10には、側面11から側面16に貫通する筒部11d,11eが設けられている。筒部11d,11eが前記流路を構成する。図2に示すように、筒部11d内にはインペラ59が設けられ、筒部11eにはインペラ60が設けられている。なお、筒部11d,11eの開口部は、異物の流入を防止するために網状部材(図示せず)で覆われている。
【0101】
インペラ59,60を制御することで水中構造物撮影ロボット1を左右方向(すなわちY軸方向)に移動させることが可能である。例えば、インペラ59,60を回転させて側面11側から水を吸入して側面16側から吐出することで、水中構造物撮影ロボット1をY軸負方向に移動させることができる。
【0102】
なお、インペラ59とインペラ60の回転速度(水量、推力)に差を設けたり、回転方向を反対にすることで、水中構造物撮影ロボット1のヨーイング制御(Z軸まわりの制御)を行うこともできる。例えば、インペラ59とインペラ60を同じ方向に回転させ、かつインペラ59が吐出する水量をインペラ60よりも小さくすることで、水中構造物撮影ロボット1にZ軸まわりのモーメントを付与することができる。その結果、水中構造物撮影ロボット1は、Y軸方向に移動しながらZ軸まわりに回転する。図8の例では、インペラ59による吐出水量W3をインペラ60による吐出水量W4よりも小さくすることで、Z軸まわりのモーメントMzが水中構造物撮影ロボット1に付与される。この場合、水中構造物撮影ロボット1は、Z軸まわりに回転しつつY軸方向に移動する。インペラ59とインペラ60の回転方向を互いに反対方向とすることでヨーイング制御を行ってもよい。この場合は、水中構造物撮影ロボット1はその場に留まった状態でZ軸まわりに回転する。
【0103】
次に、第3のスラスタ群について説明する。第3のスラスタ群は、本体10の上下方向に水流を吐出する複数のスラスタを有する。
【0104】
第3のスラスタ群が有する各スラスタは、本体10を上下方向に貫通する流路と、その内部に設けられたインペラとにより構成される。図5および図6に示すように、本体10には、上面14から下面15に貫通する筒部11f,11gが設けられている。筒部11f,11gが前記流路を構成する。筒部11f内にはインペラ61が設けられ、筒部11gにはインペラ62が設けられている。なお、筒部11f,11gの開口部は、異物の流入を防止するために網状部材(図示せず)で覆われている。
【0105】
インペラ61,62を制御することで水中構造物撮影ロボット1を上下方向(すなわちZ軸方向)に移動させることが可能である。例えば、インペラ61,62を回転させて上面14側から水を吸入して下面15側から吐出することで、水中構造物撮影ロボット1をZ軸負方向に移動させることができる。
【0106】
なお、インペラ61とインペラ62の回転速度(水量、推力)に差を設けることで、水中構造物撮影ロボット1のピッチング制御(Y軸まわりの制御)を行うこともできる。例えば、インペラ61とインペラ62を同じ方向に回転させ、かつインペラ61による吐出水量をインペラ62よりも大きくすることで、水中構造物撮影ロボット1にY軸まわりのモーメントを付与することができる。図9の例では、インペラ61による吐出水量W5をインペラ62による吐出水量W6よりも大きくすることで、Y軸まわりのモーメントMyが水中構造物撮影ロボット1に付与される。この場合、水中構造物撮影ロボット1はY軸まわりに回転しつつZ軸方向に移動する。インペラ61とインペラ62の回転方向を互いに反対方向とすることでピッチング制御を行ってもよい。この場合、水中構造物撮影ロボット1は、その場に留まった状態でY軸まわりに回転する。
【0107】
以上、第1~第3のスラスタ群について説明した。なお、第1~第3のスラスタ群を構成するインペラ51~62はいずれも、本体10から露出していないため、ロープやワイヤ等を巻き込むことを防止することができる。
【0108】
本実施形態の推進機構では、整流部18によりY軸方向(本体幅方向)の推力成分が得られることを利用して、水中構造物撮影ロボット1のローリング制御(X軸まわりの制御)を行うこともできる。例えば、各々同じ水量を吐出するインペラ51およびインペラ55の合計水量と、各々同じ水量を吐出するインペラ54およびインペラ58の合計水量とを等しくすることで、水中構造物撮影ロボット1にX軸まわりのモーメントを付与することができる。その結果、水中構造物撮影ロボット1はその場に静止しつつX軸方向に回転する。図10の例では、インペラ51およびインペラ55の合計水量W7をインペラ54およびインペラ58の合計水量W8に等しくすることで、X軸まわりのモーメントMxが水中構造物撮影ロボット1に付与される。
【0109】
また、整流部18によりY軸方向の推力成分が得られることを利用して、水中構造物撮影ロボット1のヨーイング制御(Z軸まわりの制御)を行うこともできる。例えば、各々同じ水量を吐出するインペラ51およびインペラ52の合計水量と、各々同じ水量を吐出するインペラ55およびインペラ56の合計水量とを等しくすることで、水中構造物撮影ロボット1にZ軸まわりのモーメントを付与することができる。その結果、水中構造物撮影ロボット1はその場に静止しつつZ軸まわりに回転する。なお、水中構造物撮影ロボット1をZ軸まわりに回転させつつ前後方向に移動させたい場合には、インペラ55,56の吐出量を増加(例えば2倍にする)させるとともに、インペラ57,58を駆動してインペラ51およびインペラ52の合計水量と同じ水量を吐出させることで、X軸方向の推力を付加する。
【0110】
なお、その場に静止して回頭を行う場合や、前後方向の移動速度が低速の場合は、第2のスラスタ群によりヨーイング制御を行い、補助的に第1のスラスタ群を用いるようにしてもよい。一方、前後方向の移動速度がある程度高速の場合には、第2のスラスタ群の水流によりZ軸まわりのモーメントを十分に発生できなくなるおそれがあることから、前後方向の運動に寄与する第1のスラスタ群のY軸方向の推力差でZ軸まわりのモーメントを発生させるようにしてもよい。前後方向の速度がある程度大きい場合には、本体10が横方向(Y軸方向)に向き始めると、本体10に働く流体力により、大きな回転モーメントが生じる。このようなモーメントを利用することが高速移動時には有効である。
【0111】
上記の推進機構によれば、各スラスタの推力(吐出水量)を調整することで、水中構造物撮影ロボット1を所望の方向(X軸方向、Y軸方向、Z軸方向)に移動させたり、各軸(X軸、Y軸、Z軸)まわりに回転させることができる。もちろん、これらの運動を同時に行うこともできる。
【0112】
また、次に説明する姿勢把握処理を行うことで得られる姿勢情報(各軸まわりの角度)に基づいて、水中構造物撮影ロボット1を所望の姿勢に制御することができる。これにより、例えば、推進機構は、側面11が水中構造物の検査対象面から所定の距離であり且つ平行になるように本体10の姿勢を維持しつつ本体10を所定の方向に移動させる制御を行う。
【0113】
<姿勢把握処理>
ここで、水中構造物撮影ロボット1の姿勢把握処理について説明する。
【0114】
まず、レーザ照射部45,46が水中構造物の検査対象面に線状のレーザ光を照射する。次に、撮影部30はレーザ光が照射された検査対象面の写真を撮影する。その後、制御部40は、撮影された写真を用いていわゆる「光切断法」による三次元計測を行う。これにより、検査対象面に対する本体10のZ軸まわりの角度、X軸まわりの角度および検査対象面との距離などが算出される。
【0115】
なお、姿勢把握のために、レーザ照射部に代えてソーナーが用いられてもよい。この場合、例えば、測深機のようなシングルビームのソーナーを本体10に複数設ける。あるいは、マルチナロービーム測深機を用いてもよい。また、ロバスト性を向上させるために、レーザ照射部とソーナーの両方を用いて姿勢把握を行ってもよい。
【0116】
なお、水中構造物撮影ロボット1の姿勢制御や位置制御は、遠隔にある端末からなされてもよいし、水中構造物撮影ロボット1により自律的になされてもよい。
【0117】
<水中構造物撮影ロボット1の作用効果>
以上説明したように、水中構造物撮影ロボット1では、照明部20が撮影部30の設けられた本体10の移動方向に沿って発光して水中構造物の検査対象面を照らす。なお、線状の光がそのまま検査対象面に照射されるわけではなく、拡散した後に面状の光として検査対象面に照射される。これにより、本体10とともに照明部20が移動しても、移動方向(撮影方向)に対する照明条件を可及的に一定に維持することができる。すなわち、照明部20が移動しているにもかかわらず、撮影部30から見て、照明部20が移動していない場合と同じ照明環境を作り出すことができる。このため、水中構造物撮影ロボット1で撮影された写真によれば、写真間における特徴点を容易に抽出することができ、フォトグラメトリにより水中構造物の高精度な三次元モデルを生成することができる。
【0118】
上記のように、水中構造物撮影ロボット1によれば、水中構造物の三次元モデルを精度良く生成するための写真を撮影することができる。
【0119】
さらに、レーザ照射部45,46を用いて把握された姿勢や、深度計等から得られた位置情報に基づいて、制御部40が、推進機構により、水中構造物撮影ロボット1の位置や姿勢を制御する。これにより、水中構造物全体(検査領域)を隙間無く、フォトグラメトリに必要なオーバラップを確保しつつ写真撮影を行うことができる。例えば、水中構造物に沿った流れがある中で、数十センチ程度にまで接近して、一定の距離および一定深度を正確に保ちつつ、写真間のオーバラップを十分に確保した撮影を行うことができる。
【0120】
さらに、水中構造物撮影ロボット1の本体10は、図1等に示すように、前後方向に対して扁平形状に構成されている。これにより、水中構造物撮影ロボット1は、水中構造物の検査対象面に沿って流れる水流をいなしつつ、水流に沿って容易に移動することができるとともに、検査対象面と平行な姿勢を取りやすくすることができる。よって、本実施形態によれば、安定した姿勢で水中構造物の写真を撮影できる水中構造物撮影ロボットを提供することができる。なお、かかる効果が照明部の構成によらずに得られることは言うまでもない。
【0121】
なお、前述の実施形態では本体に推進機構が設けられていたが、本発明はこれに限らない。すなわち、本発明に係る水中構造物撮影装置は、本体に推進機構が設けられていない水中カメラとして構成されてもよい。この場合、本体に移動方向を検知するためのセンサが設けられ、照明部は当該センサにより検知された移動方向に沿って発光し、撮影部は照明部により照らされた検査対象面に係る写真を撮影する。
【0122】
<<水中構造物撮影ロボットによる水中構造物の撮影方法>>
次に、上記の水中構造物撮影ロボット1による水中構造物の撮影方法の一例について、図11のフローチャートに沿って説明する。図12は、水中構造物100の検査対象面Sを撮影する際の、水中構造物撮影ロボット1の移動経路の一例を示している。この例では、撮影方向は水平方向であり、水中構造物撮影ロボット1は、位置P1からスタートして位置P2に到るまで移動経路Rに沿って移動する。なお、図11のフローチャートは、水中構造物撮影ロボット1が所定の撮影方向に沿って移動している間に行われる処理を示している。すなわち、本例の場合、制御部40が第1のスラスタ群(インペラ51~58)を制御して水中構造物撮影ロボット1を水平方向に移動させつつ、以下に説明する処理が行われる。
【0123】
まず、レーザ照射部45,46が、水中構造物100の検査対象面Sにレーザ光を照射する(ステップS1)。本ステップは、制御部40がレーザ照射部45,46のレーザ光源を駆動することにより行われる。
【0124】
次に、撮影部30が、レーザ光が照射された検査対象面Sの写真を撮影する(ステップS2)。本ステップは、制御部40が撮影部30を動作させることにより行われる。
【0125】
次に、制御部40が、ステップS2で撮影された写真を用いて光切断法による三次元計測を行い、水中構造物撮影ロボット1(本体10)の水中構造物100に対する相対的な姿勢を把握する(ステップS3)。本ステップでは、検査対象面Sに対する本体10のZ軸まわりの角度やX軸まわりの角度、本体10と検査対象面Sとの間の距離が算出される。これにより、検査対象面Sに対する本体10の相対姿勢および検査対象面との距離等が把握される。
【0126】
次に、推進機構が、ステップS3で把握された姿勢に基づいて本体10の姿勢制御を行う(ステップS4)。具体的には、本体10の側面11が水中構造物100の検査対象面Sと平行になり、かつ側面11と検査対象面Sとの間の距離が所定の距離となるように姿勢制御が行われる。本ステップは、制御部40が前述の第1~第3のスラスタ群を制御することにより行われる。図13および図14に示すように、側面11(透明板11t)が検査対象面Sと平行になるように、ヨーイング制御やローリング制御が行われる。
【0127】
次に、照明部20が、水中構造物撮影ロボット1の移動方向に沿って発光して、水中構造物100の検査対象面Sを照らす(ステップS5)。本ステップは、制御部40が移動方向に沿って同じ明るさで線状光源21,22を点灯させることにより行われる。なお、本ステップにおいて、照明部20は線状に発光するが、線状の光がそのまま検査対象面Sに照射されるわけではなく、拡散した後に面状の光として検査対象面Sに照射される。
【0128】
次に、撮影部30が、照明部20により照らされた検査対象面Sに係る写真を撮影する(ステップS6)。本ステップは、制御部40が撮影部30を動作させることにより行われる。
【0129】
ステップS6の後、ステップS1に戻る。ステップS1~ステップS6を1サイクルとして、1サイクルは、写真撮影や姿勢制御に係る処理速度や、写真を保存するための記憶容量が許す限り、短時間で行うことが望ましい。例えば、1秒間に数サイクルを行うことを繰り返す。このようにステップS1~S6のサイクルを繰り返して検査対象面Sの左端から右端までの撮影が完了すると、水中構造物撮影ロボット1は下方に移動し、今度は検査対象面Sの右端から左端まで水平移動しつつステップS1~S6のサイクルを繰り返す。このようにして、図12の移動経路Rに沿って水中構造物100全体の撮影が行われる。
【0130】
なお、水中構造物撮影ロボット1の深度を一定に保つために、制御部40は深度センサにより得られた深度に基づいて第3のスラスタ群(具体的には、インペラ61,62)を制御してもよい。また、検査対象面が斜面の場合(図15参照)、第1~第3のスラスタ群をすべて常時制御することで、相対姿勢の保持、検査対象面に沿った一定速度での移動、および深度の保持を同時に行う。
【0131】
なお、図12の移動経路Rから分かるように、水中構造物撮影ロボット1は検査対象面Sの外側で下方に移動する。これは、本実施形態では水平方向の光を検査対象面Sに照射することに起因している。後述の変形例に係る照明部20Aのように垂直方向の光も照射することが可能な場合には、検査対象面Sの内側で水中構造物撮影ロボット1が下方に移動する経路をとり、下方に移動している間も検査対象面Sの撮影を行う。
【0132】
また、検査対象の水中構造物が円柱や四角柱など、外周を一巡できるものの場合、ある一定の深度で水中構造物の周りを一巡してから深度変更を行い、変更された深度で水中構造物の周りを一巡するという動作を繰り返すようにしてもよい。特に水中構造物が角柱のように角部を有する場合、多くの角度から角部を撮影することが、フォトグラメトリで三次元モデルを作成する上で有効である。したがって、上記のように水中構造物の外周全体について写真撮影を行うことで、水中構造物の高精度な三次元モデルを生成することができる。
【0133】
上記の水中構造物の撮影方法では、ステップS5において、本体10の側面11が検査対象面Sから所定の距離であり、かつ検査対象面Sと平行になるように制御され、ステップS6において、検査対象面Sが水中構造物撮影ロボット1の照明部20で照らされる。このため、水中構造物撮影ロボット1の移動前後で照明条件を可及的に維持した状態で検査対象面Sの写真を撮影することができる。このように撮影された写真を用いることで、フォトグラメトリにより、水中構造物100の高精度な三次元モデルを生成することができる。
【0134】
さらに、前述のように水中構造物撮影ロボット1の本体10は、その幅が前面12および後面13に向かうにつれて、および上面14および下面15に向かうにつれて狭くなる扁平型の流線形状を有する。このため、図14に示すように、水中構造物撮影ロボット1は、水中構造物100に沿って流れる水流をいなしつつ、水流に沿って(すなわち、検査対象面に沿って)前後方向に移動することができる。その結果、安定した姿勢で移動や撮影を行うことができ、フォトグラメトリにより三次元モデルを生成するための高品質な写真を撮影することができる。
【0135】
なお、図15に示すように、検査対象面Sが斜面の場合であっても、図10で説明したローリング制御を行うことにより、側面11が検査対象面Sと平行になるように水中構造物撮影ロボット1の姿勢制御を行うことにより、フォトグラメトリにより三次元モデルを生成するための高品質な写真を撮影することができる。また、図示しないが、検査対象面Sが水平面の場合であっても、推進機構により側面11が検査対象面Sと平行になるように姿勢制御して写真撮影を行うことができる。
【0136】
なお、上記の撮影方法では、水中構造物撮影ロボット1の姿勢制御を行った後に照明部20により検査対象面Sを照らしてからその写真を撮影したが、姿勢制御を行わずに写真撮影を行うことも可能である。例えば、照明部20により検査対象面Sを照らして仮撮影を行い、その後、仮撮影で得られた写真に基づいて、検査対象面Sの移動方向に沿う明るさが一定になるように、線状光源21,22の各発光素子の発光強度を調整するようにしてもよい。すなわち、照明部20は、撮影部30により撮影される検査対象面Sの移動方向に沿う明るさが一定になるように移動方向の照明強度が調整された光を発光してもよい。例えば、撮影部30により撮影された検査対象面Sの画像において、平均よりも暗い部分に対応する照明部20の発光素子の発光強度を増やし、平均よりも明るい部分に対応する照明部20の発光素子の発光強度を減少させる。このように線状光源21,22の調整を行った後に撮影部30は検査対象面Sの撮影を行う。
【0137】
<照明部の変形例>
次に、照明部に係る2つの変形例について説明する。
【0138】
(変形例1)
図16は、変形例1に係る照明部20Aについて説明するための図である。
【0139】
照明部20Aは、図16に示すように、前述の線状光源21,22に加えて、本体10の上下方向に延びる線状光源23,24をさらに有する。
【0140】
線状光源23,24は、本体10の側面視で撮影部30のレンズ31を中心に挟むように互いに平行に設けられている。この場合、例えば、フレーム板17C,17Dが側面11から突出しており、この突出した部分に沿うように線状光源23,24が設けられる。
【0141】
照明部20Aにおいては、水中構造物撮影ロボット1の移動方向と平行な光源のみを点灯させる。すなわち、本体10が前後方向に移動しているときは、線状光源21,22は点灯し、線状光源23,24は消灯する。一方、本体10が上下方向に移動しているときは、線状光源21,22は消灯し、線状光源23,24は点灯する。
【0142】
このように、移動方向と平行な線状光源のみを点灯し他の光源を消灯することで、移動方向が本体10の前後方向であっても上下方向であっても照明条件を一定にすることができる。なお、仮に本体10が前後方向に移動しているときに線状光源21,22だけでなく、線状光源23,24も点灯させた場合、撮影部30により撮影される複数の写真の各々は、左右の端部が最も明るく、中央にいくにつれて暗くなる。したがって、写真間で共通の特徴点を見つけるのに不利になってしまう。
【0143】
変形例1の場合、図16に示すように、水中構造物撮影ロボット1は、側面11に設けられ、線状光源23,24を平行な線状のレーザ光を出力するレーザ照射部47,48をさらに備える。
【0144】
例えば、レーザ照射部47,48は、レーザ照射部45,46と同様に、本体10の内側に設けられ、レーザ光の出射口が側面11に開いている。
【0145】
レーザ照射部47,48の用途はレーザ照射部45,46とほぼ同様である。すなわち、レーザ照射部47,48が水中構造物の検査対象面に、上下方向(Z軸方向)の線状のレーザ光を照射した後、撮影部30は検査対象面の写真を撮影する。そして、制御部40が撮影された写真を用いて光切断法による三次元計測を行うことにより、検査対象面に対する本体10の相対姿勢(相対角度)および検査対象面との距離等が算出される。
【0146】
なお、照明部20Aと同様に、レーザ照射部45,46とレーザ照射部47,48とについても、水中構造物撮影ロボット1の移動方向に応じて両者を切り替えながら使用してもよい。例えば、撮影される写真間でフォトグラメトリに必要なオーバラップを確保しつつ、撮影処理間のフレーム(空き時間)にレーザ照射部45,46で横方向のレーザを照射して検査対象面を撮影し、その後、レーザ照射部47,48で縦方向のレーザを照射して検査対象面を撮影する。これにより、水中構造物撮影ロボット1と水中構造物までの距離等をより正確に算出することができる。
【0147】
変形例1によれば、水中構造物撮影ロボット1(撮影部30)が垂直方向に移動する場合にも照明条件を可及的に一定に維持することができる。よって、水平方向だけでなく、垂直方向に移動している間にも、フォトグラメトリ用の写真を撮影することができる。その結果、水中構造物の撮影をより効率的に、柔軟に行うことができる。
【0148】
(変形例2)
図17は、変形例2に係る照明部20Bについて説明するための図である。
【0149】
照明部20Bは、本体10の側面視で撮影部30のレンズ31の周辺に設けられた面状光源25を有する。面状光源25は、例えば、有機ELパネル、液晶パネル、またはマトリックス状に配置された点光源である。本実施形態では、面状光源25は、図17に示すように、側面11の開口11aの周辺に設けられている。なお、変形例2の場合も、図示しないがレーザ照射部が設けられる。
【0150】
面状光源25は、水中構造物100を撮影する際の移動方向に合わせて線状に点灯するように構成されている。すなわち、面状光源25は、移動方向が水平方向の場合には図18に示すように水平方向に点灯し、移動方向が垂直方向の場合には図19に示すように垂直方向に点灯し、移動方向が斜め方向の場合には図20に示すように斜め方向に点灯する。なお、図18図20において符号Lは面状光源25の点灯部分を示している。
【0151】
変形例2によれば、水中構造物撮影ロボット1(撮影部30)が水平および垂直方向に移動する場合に加えて斜め方向に移動する場合においても照明条件を可及的に一定に維持することができる。よって、水平・垂直方向だけでなく、斜め方向に移動している間にも、フォトグラメトリ用の写真を撮影することができる。その結果、水中構造物の撮影をより効率的に、柔軟に行うことができる。
【0152】
上記の記載に基づいて、当業者であれば、本発明の追加の効果や種々の変形を想到できるかもしれないが、本発明の態様は、上述した実施形態に限定されるものではない。特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0153】
1 水中構造物撮影ロボット
10 本体
11 側面
11a 開口
11b 取水口
11c 吐出口
11d,11e,11f,11g 筒部
11t 透明板
12 前面
13 後面
14 上面
15 下面
16 (反対側の)側面
17A,17B,17C,17D フレーム板
18 整流部
19 係合部
20,20A,20B 照明部
21,22,23,24 線状光源
25 面状光源
30 撮影部
31 レンズ
40 制御部
41 音響通信部
42 ソーナー部
43 ドップラ式速度計
45,46,47,48 レーザ照射部
51~58 (第1のスラスタ群を構成する)インペラ
59,60 (第2のスラスタ群を構成する)インペラ
61,62 (第3のスラスタ群を構成する)インペラ
100 水中構造物
B 水底
CA 中心軸
L 点灯部分
P1,P2 位置
R 移動経路
S 検査対象面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
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図18
図19
図20