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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240205BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240205BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20240205BHJP
   H01L 21/301 20060101ALN20240205BHJP
【FI】
H01L21/304 631
H01L21/304 601Z
H01L21/302 105Z
B24B7/04 A
H01L21/78 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019151803
(22)【出願日】2019-08-22
(65)【公開番号】P2021034498
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】山銅 英之
(72)【発明者】
【氏名】山端 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田渕 智隆
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-056502(JP,A)
【文献】特開2015-216234(JP,A)
【文献】特開2018-026398(JP,A)
【文献】特開2019-114712(JP,A)
【文献】特開2009-283802(JP,A)
【文献】特開2015-095509(JP,A)
【文献】特開2019-009198(JP,A)
【文献】特開2018-137405(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/3065
B24B 7/04
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが表面側に形成されるとともに複数の該デバイスを覆う保護層が形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞し該保護層が形成されていない外周余剰領域と、を備え、該外周余剰領域に含まれる外周縁が曲面状に形成されたウェーハを所定の厚さに薄化するウェーハの加工方法であって、
複数の該デバイスを形成する工程で該ウェーハの表面側に形成されたフォトレジスト膜である該保護層をマスクとして該ウェーハの表面側にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、該外周縁を含む該外周余剰領域を除去し、該外周余剰領域の除去された領域の深さを該所定の厚さよりも大きくするプラズマエッチングステップと、
該プラズマエッチングステップの実施後、該ウェーハの表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着ステップと、
該保護部材を介して該ウェーハを研削装置のチャックテーブルによって保持し、該ウェーハを裏面側から研削して該所定の厚さに薄化する研削ステップと、を備えることを特徴とするウェーハの加工方法。
【請求項2】
該保護層は、該ウェーハの隣接する該デバイス間に位置する領域が露出するように形成され、
該プラズマエッチングステップでは、プラズマ状態の該エッチングガスを供給することにより、該外周余剰領域を除去するとともに、該デバイス領域に該所定の厚さよりも深い溝を該デバイス間に位置する領域に沿って形成することを特徴とする請求項1に記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハを所定の厚さに薄化するウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスチップの製造工程では、格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)によって区画された複数の領域の表面側にそれぞれIC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが形成されたウェーハが用いられる。このウェーハを分割予定ラインに沿って分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。デバイスチップは、携帯電話やパーソナルコンピュータに代表される様々な電子機器に搭載される。
【0003】
近年では、電子機器の小型化、薄型化に伴い、デバイスチップにも薄型化が求められている。そこで、ウェーハの分割前にウェーハの裏面側を研削することによって、ウェーハを薄化する工程が実施される。ウェーハの研削加工には、ウェーハを保持するチャックテーブルと、ウェーハを複数の研削砥石で研削する研削ユニットとを備える研削装置が用いられる。
【0004】
なお、デバイスチップの製造に用いられるウェーハには、ウェーハの外周部を研削してウェーハの外周縁(側面)の断面形状を円弧状にする、所謂面取り加工が施されている。この面取り加工が施されたウェーハを研削して薄化すると、ウェーハの外周部が、ウェーハの半径方向外側に向かって鋭く尖った形状、所謂ナイフエッジ形状となる。
【0005】
ウェーハの外周部がナイフエッジ形状になると、ウェーハの外周部に欠けや割れ等の損傷が生じやすくなる。そして、ウェーハの外周部に生じた損傷は、ウェーハの内側に向かって進行し、デバイスが形成された領域に到達することがある。この場合、ウェーハの分割によって得られるデバイスチップに損傷が残存し、デバイスチップの品質が低下する恐れがある。
【0006】
そこで、ウェーハを研削して薄化する前に、ウェーハの外周縁を表面側から切削ブレードによって環状に切削し、ウェーハの外周部に段差部を形成する、エッジトリミングと称される加工が行われる(特許文献1参照)。このエッジトリミングを施すと、その後にウェーハの裏面側を研削してウェーハを薄化した際に、ウェーハの外周部がナイフエッジ形状とならない。これにより、ウェーハの外周部の損傷が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-158239号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、エッジトリミングは切削ブレードでウェーハの外周部を切削することによって行われる。しかしながら、切削ブレードでウェーハの外周部を切削すると、切削によって大量の屑(切削屑)が発生し、ウェーハに付着する。このウェーハに付着した切削屑は、デバイスの動作不良やボンディング不良の原因となる。
【0009】
そのため、エッジトリミングが行われた後には、ウェーハを洗浄して切削屑を洗い流す洗浄工程が実施される。しかしながら、ウェーハに大量の切削屑が固着していると、ウェーハの洗浄に要する時間が長くなり、ウェーハの加工効率が低下する。
【0010】
また、切削ブレードを用いてウェーハの外周部に段差部を形成する場合、切削ブレードは、その一方の側面のみがウェーハに接触した状態でウェーハを切削する。その結果、切削ブレードには、一方の側面側が優先的に摩耗する偏摩耗が生じる。
【0011】
そのため、エッジトリミングを実施する際には、切削ブレードの偏摩耗を予め考慮に入れて適切な加工条件(切削ブレードの切り込み深さ等)を選定する必要がある。また、切削ブレードに偏摩耗が生じた場合には、偏摩耗を解消するように切削ブレードを整形する特別なドレス工程が必要となる。これにより、エッジトリミングに要する手間と時間が増大し、ウェーハの加工効率が低下する。
【0012】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、加工効率の低下を抑制することが可能なウェーハの加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によれば、複数のデバイスが表面側に形成されるとともに複数の該デバイスを覆う保護層が形成されたデバイス領域と、該デバイス領域を囲繞し該保護層が形成されていない外周余剰領域と、を備え、該外周余剰領域に含まれる外周縁が曲面状に形成されたウェーハを所定の厚さに薄化するウェーハの加工方法であって、複数の該デバイスを形成する工程で該ウェーハの表面側に形成されたフォトレジスト膜である該保護層をマスクとして該ウェーハの表面側にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、該外周縁を含む該外周余剰領域を除去し、該外周余剰領域の除去された領域の深さを該所定の厚さよりも大きくするプラズマエッチングステップと、該プラズマエッチングステップの実施後、該ウェーハの表面側に保護部材を貼着する保護部材貼着ステップと、該保護部材を介して該ウェーハを研削装置のチャックテーブルによって保持し、該ウェーハを裏面側から研削して該所定の厚さに薄化する研削ステップと、を備えるウェーハの加工方法が提供される。
【0014】
なお、該保護層は、該ウェーハの隣接する該デバイス間に位置する領域が露出するように形成されていてもよく、該プラズマエッチングステップでは、プラズマ状態の該エッチングガスを供給することにより、該外周余剰領域を除去するとともに、該デバイス領域に該所定の厚さよりも深い溝を該デバイス間に位置する領域に沿って形成してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様に係るウェーハの加工方法では、ウェーハの表面側にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、外周余剰領域を除去する。すなわち、切削ブレードによる切削加工に代えてプラズマエッチングを用いることにより、ウェーハにエッジトリミング加工を施す。
【0016】
上記のウェーハの加工方法を用いると、切削ブレードを用いてエッジトリミング加工を実施する場合に問題となる、ウェーハへの大量の切削屑の固着が生じない。そのため、エッジトリミング後のウェーハの洗浄工程が簡略化される。また、切削ブレードの偏摩耗を考慮した加工条件の選定や、偏摩耗が生じた切削ブレードを整形するドレス工程の実施等が不要となり、ウェーハの加工効率の低下が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(A)はウェーハを示す斜視図であり、図1(B)はウェーハを示す断面図である。
図2図2(A)はプラズマエッチングステップにおけるウェーハを示す断面図であり、図2(B)はプラズマエッチング後のウェーハを示す断面図である。
図3】保護部材貼着ステップにおけるウェーハを示す断面図である。
図4】研削ステップにおけるウェーハを示す一部断面正面図である。
図5】研削加工後のウェーハを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。まず、本実施形態に係るウェーハの加工方法によって加工することが可能なウェーハの構成例について説明する。図1(A)はウェーハ11を示す斜視図であり、図1(B)はウェーハ11を示す断面図である。
【0019】
ウェーハ11は、例えば円盤状に形成されたシリコンウェーハであり、表面11aと、裏面11bと、表面11a及び裏面11bと接続された外周縁(側面)11cとを備える。ウェーハ11は、互いに交差するように格子状に配列された複数の分割予定ライン(ストリート)13によって複数の矩形状の領域に区画されており、この領域の表面11a側にはそれぞれ、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイス15が形成されている。ウェーハ11を分割予定ライン13に沿って分割することにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが得られる。
【0020】
なお、ウェーハ11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えばウェーハ11は、シリコン以外の半導体(GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、セラミックス、樹脂、金属等の材料によって、任意の形状及び大きさに形成されていてもよい。また、デバイス15の種類、数量、形状、構造、大きさ、配置等にも制限はない。
【0021】
ウェーハ11には、ウェーハ11の外周縁11cに形成された角部を除去する、面取り加工が施されている。そのため、ウェーハ11の外周縁11cは、ウェーハ11の表面11aから裏面11bに向かって曲面状に形成されている。図1(B)には、ウェーハ11の外周縁11cが、外周縁11cよりもウェーハ11の半径方向内側に中心を持つ円弧状に形成されている例を示している。
【0022】
また、ウェーハ11は、複数のデバイス15が形成された平面視で円形のデバイス領域11dと、デバイス領域11dを囲繞し、デバイス15が形成されていない環状の外周余剰領域11eとを備える。外周余剰領域11eは、最終的にウェーハ11が複数のデバイスチップに分割された後に除去される領域に相当し、ウェーハ11の外周縁11cを含んでいる。図1(A)では、デバイス領域11dと外周余剰領域11eとの境界を破線で示している。なお、デバイス領域11d及び外周余剰領域11eの形状は、デバイス15の形状や配列によって異なる。
【0023】
ウェーハ11の分割前には、デバイスチップの薄型化を目的として、ウェーハ11を薄化する加工が行われる。ウェーハ11の薄化は、研削装置を用いてウェーハ11の裏面11b側を研削することによって実施される。
【0024】
ここで、図1(B)に示すように、ウェーハ11の表面11a側には保護層(マスク層)17が形成されている(図1(A)では図示を省略)。保護層17は、デバイス領域11d(複数のデバイス15)を覆うように、ウェーハ11の表面11a側に形成されている。なお、外周余剰領域11eには保護層17が形成されておらず、外周余剰領域11eの表面11a側は露出している。
【0025】
保護層17は、デバイス領域11d(複数のデバイス15)を覆って保護するとともに、後のプラズマエッチングステップにおいてウェーハ11にプラズマエッチングを施す際のマスクとして機能する。この保護層17としては、複数のデバイス15の形成工程において形成された層を用いることができる。
【0026】
例えば、複数のデバイス15を形成する工程において、複数のデバイス15を保護するパッシベーション膜がデバイス領域11dを覆うように形成されることがある。また、デバイス15を構成する導電膜や絶縁膜をパターニングするためのフォトレジスト膜が、デバイス領域11dを覆うように形成されることがある。
【0027】
デバイス領域11dに形成されたパッシベーション膜又はフォトレジスト膜が、後のプラズマエッチングの際にウェーハ11とのエッチング選択比が適切に確保される材質でなる場合には、このパッシベーション膜又はフォトレジスト膜を保護層17として用いることができる。これにより、保護層17を別途形成する必要がなくなり、工程数及びコストの削減を図ることができる。例えば、酸化シリコン(SiO)、窒化シリコン(SiN)等の無機材料でなるパッシベーション膜や、感光性の樹脂でなるフォトレジスト膜が、保護層17として用いられる。
【0028】
そして、上記の保護層17をマスクとして、ウェーハ11の表面11a側にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、外周余剰領域11eにエッチングを施し、外周縁11cを含む外周余剰領域11eを除去する(プラズマエッチングステップ)。図2(A)は、プラズマエッチングステップにおけるウェーハ11を示す断面図である。
【0029】
プラズマエッチングは、エッチングガス10をプラズマ化させてウェーハ11に供給するプラズマエッチング装置を用いて実施される。プラズマエッチング装置は、ウェーハ11を保持面で保持するチャックテーブル(保持テーブル)を収容したチャンバー(処理室)を備える。このチャンバーの内部でエッチングガス10がプラズマ化され、チャックテーブルによって保持されたウェーハ11に供給される。又は、チャンバーの外部でプラズマ化されたエッチングガス10がチャンバーの内部に導入され、チャックテーブルによって保持されたウェーハ11に供給される。
【0030】
例えば、ウェーハ11がシリコンウェーハである場合には、CF、SF等のフッ素系のガスを含むエッチングガス10が、プラズマエッチング装置によってプラズマ化されてウェーハ11に供給される。そして、プラズマ化されたエッチングガス10がウェーハ11に作用し、ウェーハ11にプラズマエッチングが施される。ただし、エッチングガス10の成分はウェーハ11及び保護層17の材質等に応じて適宜選択される。
【0031】
プラズマエッチングを実施する際は、まず、ウェーハ11が、裏面11b側がチャックテーブルの保持面に対向し、表面11a側が上方に露出するように、保持テーブルによって保持される。そして、ウェーハ11の上方からプラズマ状態のエッチングガス10が、ウェーハ11の表面11a側に供給される。
【0032】
このときウェーハ11は、デバイス領域11dが保護層17によって覆われ、外周余剰領域11eが保護層17によって覆われずに露出した状態となっている。そのため、エッチングガス10は外周余剰領域11eの表面11a側に作用し、これによって外周余剰領域11eが除去される。すなわち、保護層17をマスクとしてウェーハ11にプラズマエッチングが施される。
【0033】
図2(B)は、プラズマエッチング後のウェーハ11を示す断面図である。ウェーハ11にプラズマエッチングを施すと、外周余剰領域11eの一部が外周縁11cとともに除去され、外周余剰領域11eに段差部(切り欠き部)19が形成される。この段差部19は、ウェーハ11の表面11a及び裏面11bと概ね平行で、表面11aの下方に位置する環状の底面(底部)19aと、ウェーハ11の厚さ方向と概ね平行で、デバイス領域11dと外周余剰領域11eとの境界と重なる位置にウェーハ11の表面11aから底面19aに向かって形成された環状の側面19bとを含む。
【0034】
なお、段差部19の形状は、必ずしも図2(B)に示す形状と同一でなくてもよい。例えば、プラズマエッチングの条件によっては、底面19aと側面19bとが互いに連続的に連結された曲面状の段差部19が形成されることがある。
【0035】
プラズマエッチング後のウェーハ11の表面11aと段差部19の底(底面19a)との高さの差が、プラズマエッチングによって除去された領域の深さ、すなわち外周余剰領域11eの除去量に相当する。そして、プラズマエッチングステップでは、外周余剰領域11eの除去量が、後の研削ステップ(図4参照)における研削加工によって薄化された後のウェーハ11の厚さ(ウェーハ11の仕上げ厚さ)よりも大きくなるように、外周余剰領域11eの除去量が制御される。
【0036】
プラズマエッチングステップでは、ウェーハ11の等方性エッチング、保護膜の形成、ウェーハ11の異方性エッチングを繰り返す、所謂ボッシュ法によって段差部19を形成してもよい。これにより、外周余剰領域11eの除去量が大きい場合にも、段差部19をウェーハ11の厚さ方向に沿って深く形成できる。
【0037】
次に、ウェーハ11の表面11a側に保護部材を貼着する(保護部材貼着ステップ)。図3は、保護部材貼着ステップにおけるウェーハ11を示す断面図である。保護部材貼着ステップでは、例えば直径がウェーハ11と同等の円形に形成された保護部材21が、保護層17を介してウェーハ11の表面11a側に貼着される。
【0038】
保護部材21は、少なくともウェーハ11のデバイス領域11d及び保護層17の全体を覆うように、保護層17上に貼着される。これにより、後の研削ステップで研削加工が実施される際、ウェーハ11の表面11a側及び複数のデバイス15が保護される。なお、保護部材21は、ウェーハ11から保護層17を除去した後、ウェーハ11の表面11a側に貼着してもよい。
【0039】
保護部材21としては、例えば柔軟な樹脂でなる保護テープが用いられる。具体的には、保護部材21は、円形の基材と、基材上に設けられた粘着層(糊層)とを備える。基材は、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタラート等の樹脂でなり、粘着層は、エポキシ系、アクリル系、又はゴム系の接着剤等でなる。また、粘着層には、紫外線の照射によって硬化する紫外線硬化型の樹脂を用いることもできる。
【0040】
ただし、保護部材21は、ウェーハ11の表面11a側及び複数のデバイス15を保護可能であれば、その材料に制限はない。例えば、保護部材21は、シリコン、ガラス、セラミックス等でなり板状に形成された高剛性の基板であってもよい。
【0041】
次に、ウェーハ11を裏面11b側から研削して所定の厚さに薄化する(研削ステップ)。図4は、研削ステップにおけるウェーハ11を示す一部断面正面図である。研削ステップでは、ウェーハ11に研削加工を施す研削装置20が用いられる。研削装置20は、ウェーハ11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)22と、チャックテーブル22によって保持されたウェーハ11を研削する研削ユニット24とを備える。
【0042】
チャックテーブル22の上面は、ウェーハ11を保持する保持面22aを構成する。保持面22aは、ウェーハ11の表面11a側(保護層17側、保護部材21側)の全体を保持可能な大きさ及び形状に形成される。例えば、円盤状のウェーハ11が研削される場合には、保持面22aはウェーハ11に対応して、ウェーハ11よりも直径が大きい円形に形成される。この保持面22aは、チャックテーブル22の内部に形成された吸引路(不図示)等を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0043】
また、チャックテーブル22は、モータ等の回転駆動源(不図示)と接続されており、この回転駆動源はチャックテーブル22を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。さらに、チャックテーブル22は移動機構(不図示)と接続されており、この移動機構はチャックテーブル22を水平方向に沿って移動させる。
【0044】
チャックテーブル22の上方には、研削ユニット24が配置されている。研削ユニット24は、移動機構(昇降機構、不図示)によって鉛直方向に移動する円筒状のハウジング(不図示)を備え、このハウジングには回転軸となる円筒状のスピンドル26が収容されている。スピンドル26の下端部はハウジングの下端部から突出しており、このスピンドル26の下端部には円盤状のマウント28が固定されている。
【0045】
マウント28の下面側には、マウント28と概ね同径の研削ホイール30が装着される。研削ホイール30は、ステンレス、アルミニウム等の金属材料で形成された円環状の基台32を備える。また、基台32の下面側には、直方体状に形成された複数の研削砥石34が、基台32の外周に沿って概ね等間隔に固定されている。この複数の研削砥石34の下面がウェーハ11に接触することにより、ウェーハ11が研削される。
【0046】
スピンドル26の上端側(基端側)には、モータ等の回転駆動源(不図示)が接続されている。研削ホイール30は、この回転駆動源からスピンドル26及びマウント28を介して伝達された回転力によって、鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りで回転する。
【0047】
また、研削ユニット24の近傍には、チャックテーブル22によって保持されたウェーハ11と複数の研削砥石34とに純水等の研削液38を供給するノズル36が設けられている。ウェーハ11が複数の研削砥石34によって研削される際、ノズル36からウェーハ11及び複数の研削砥石34に研削液38が供給される。
【0048】
研削装置20によってウェーハ11を研削する際は、まず、ウェーハ11をチャックテーブル22によって保持する。具体的には、ウェーハ11を、表面11a側が保持面22aと対向し、裏面11b側が上方に露出するように、チャックテーブル22上に配置する。この状態で、チャックテーブル22の保持面22aに吸引源の負圧を作用させると、ウェーハ11が保護層17及び保護部材21を介してチャックテーブル22によって吸引保持される。
【0049】
次に、ウェーハ11を保持したチャックテーブル22を研削ユニット24の下方に移動させる。そして、チャックテーブル22と研削ホイール30とをそれぞれ所定の方向に所定の回転数で回転させながら、研削ホイール30をチャックテーブル22に向かって下降させる。このときの研削ホイール30の下降速度は、複数の研削砥石34が適切な力でウェーハ11の裏面11b側に押し当てられるように調整される。
【0050】
回転する複数の研削砥石34がウェーハ11の裏面11b側に接触すると、ウェーハ11の裏面11b側が削り取られる。これにより、ウェーハ11に研削加工が施され、ウェーハ11が薄くなる。そして、ウェーハ11が所定の厚さ(仕上げ厚さ)になるまで薄化されると、ウェーハ11の研削が停止される。
【0051】
また、ウェーハ11が複数の研削砥石34によって研削される際、ノズル36からウェーハ11及び複数の研削砥石34に研削液38が供給される。この研削液38によって、ウェーハ11及び複数の研削砥石34が冷却されるとともに、ウェーハ11の研削によって生じた屑(研削屑)が洗い流される。
【0052】
図5は、研削加工後のウェーハ11を示す断面図である。ウェーハ11の厚さが仕上げ厚さとなるまでウェーハ11が研削されると、面取り加工が施された外周縁11cを含む外周余剰領域11eが除去される。そして、研削加工後のウェーハ11の外周縁(側面)11fは、ウェーハ11の表面11a及び裏面11bと概ね垂直な平坦面となる。
【0053】
仮に、前述のプラズマエッチングステップが実施されず、ウェーハ11に段差部19(図2(B)参照)が形成されない場合、研削ステップでウェーハ11の裏面11b側を研削すると、研削加工後のウェーハ11には外周余剰領域11eが残存する。そして、残存した外周余剰領域11eは、ウェーハ11の半径方向外側に向かって鋭く尖った形状、所謂ナイフエッジ形状となる。
【0054】
ウェーハ11の外周余剰領域11eがナイフエッジ形状になると、外周余剰領域11eで欠けや割れ等の損傷が生じやすくなる。また、外周余剰領域11eで発生した損傷がウェーハ11の内側に向かって進行し、デバイス領域11dに到達することがある。その結果、ウェーハ11の分割によって得られるデバイスチップに損傷が残存し、デバイスチップの品質が低下する恐れがある。
【0055】
一方、ウェーハ11の外周部に沿って段差部19を形成する、所謂エッジトリミングが施されていると、図5に示すように、研削加工後のウェーハ11の外周縁11fはナイフエッジ形状とならず、平坦になる。これにより、ウェーハ11の外周部における損傷が防止されるとともに、その損傷がデバイス領域11dに伝達されることによるデバイスチップの品質低下が防止される。
【0056】
研削ステップの後、ウェーハ11は分割予定ライン13(図1(A)参照)に沿って分割される。これにより、デバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。そして、研削ステップによって薄化されたウェーハ11を分割することにより、薄型化されたデバイスチップが得られる。
【0057】
なお、ウェーハ11の分割方法に制限はない。例えば、ウェーハ11の分割には切削装置を用いることができる。切削装置は、ウェーハ11を保持する保持面を備えるチャックテーブル(保持テーブル)と、ウェーハ11を切削する環状の切削ブレードが装着される切削ユニットとを備える。切削ブレードは、例えばダイヤモンド等でなる砥粒をボンド材で固定して形成される。ボンド材としては、例えばメタルボンド、レジンボンド、ビトリファイドボンドなどが用いられる。
【0058】
切削ユニットに装着された切削ブレードを回転させ、チャックテーブルによって保持されたウェーハ11に切り込ませることにより、ウェーハ11が切削、分割される。そして、全ての分割予定ライン13に沿って切削ブレードをウェーハ11に切り込ませると、ウェーハ11が複数のデバイスチップに分割される。
【0059】
また、ウェーハ11の分割にはレーザー加工装置を用いることもできる。レーザー加工装置は、ウェーハ11を保持する保持面を備えるチャックテーブル(保持テーブル)と、ウェーハ11にレーザービームを照射するレーザー照射ユニットとを備える。レーザー照射ユニットは、パルスレーザービームを発信するレーザー発振器と、レーザー発振器によって発振されたレーザービームを所定の位置で集光させる集光器とを備える。
【0060】
レーザー加工装置によって、例えばウェーハ11の内部に改質された領域(改質層)が形成される。具体的には、レーザービームの照射条件(波長、パワー、スポット径、繰り返し周波数等)が、多光子吸収によってウェーハ11の内部に改質層が形成されるように設定される。また、レーザービームの集光点が、ウェーハ11の内部(表面11aと裏面11bとの間)に位置付けられる。
【0061】
上記のレーザービームを分割予定ライン13に沿って走査すると、ウェーハ11の内部には分割予定ライン13に沿って改質層が形成される。この改質層が形成された領域は、ウェーハ11の他の領域よりも脆くなる。そのため、分割予定ライン13に沿って改質層が形成されたウェーハ11に外力を付与すると、ウェーハ11が分割予定ライン13に沿って破断し、複数のデバイスに分割される。すなわち、改質層はウェーハ11が分割される際の分割起点(分割のきっかけ)として機能する。
【0062】
なお、レーザービームの照射条件は、ウェーハ11にアブレーション加工が施されるように設定されてもよい。この場合、レーザービームを分割予定ライン13に沿って走査することにより、ウェーハ11がアブレーション加工によって分割予定ライン13に沿って分割される。なお、一度のレーザービームの走査によってウェーハ11を分割することが困難な場合は、各分割予定ライン13に沿ってそれぞれレーザービームが複数回照射される。
【0063】
以上の通り、本実施形態に係るウェーハの加工方法では、ウェーハ11の表面11a側にプラズマ状態のエッチングガスを供給することにより、外周余剰領域11eを除去する。すなわち、切削ブレードによる切削加工に代えてプラズマエッチングを用いることにより、ウェーハ11にエッジトリミング加工を施す。
【0064】
上記のウェーハの加工方法を用いると、切削ブレードを用いてエッジトリミング加工を実施する場合に問題となる、ウェーハ11への大量の切削屑の固着が生じない。そのため、エッジトリミング後のウェーハ11の洗浄工程が簡略化される。また、切削ブレードの偏摩耗を考慮した加工条件の選定や、偏摩耗が生じた切削ブレードを整形するドレス工程の実施等が不要となり、ウェーハ11の加工効率の低下が抑制される。
【0065】
なお、本実施形態では、プラズマエッチングステップにおいて、ウェーハ11の外周余剰領域11eのみに対してエッチングを施す形態について説明した。ただし、プラズマエッチングステップでは、外周余剰領域11eを除去するとともに、デバイス領域11dに分割予定ライン13に沿う溝を形成してもよい。以下、プラズマエッチングステップでデバイス領域11dに溝を形成する方法の具体例を説明する。
【0066】
まず、ウェーハ11の表面11a側に形成された保護層17(図1(B)参照)を、複数のデバイス15に合わせてパターニングする。すなわち、保護層17のうち、隣接するデバイス15間の領域(分割予定ライン13)と重なる領域を除去する。これにより、ウェーハ11の外周余剰領域11eに加え、ウェーハ11のうち、隣接するデバイス15間に位置する領域(分割予定ライン13)が露出する。なお、プラズマエッチングのマージンを確保するため、保護層17の除去された領域の幅を、分割予定ライン13の幅よりも狭くしてもよい。
【0067】
次に、プラズマエッチングステップ(図2(A)参照)を実施し、ウェーハ11の表面11a側に保護層17を介してエッチングガス10を供給する。これにより、外周余剰領域11eと、デバイス領域11dの分割予定ライン13と重なる領域とに、プラズマエッチングが施される。その結果、外周余剰領域11eには段差部19(図2(B)参照)が形成され、デバイス領域11dには分割予定ライン13に沿って線状の溝が格子状に形成される。そして、このプラズマエッチングは、外周余剰領域11eの除去量と、デバイス領域11dに形成される溝の深さとが、ウェーハ11の仕上げ厚さよりも大きくなるまで継続される。
【0068】
その後、前述の保護部材貼着ステップと、研削ステップとを実施する。研削ステップでウェーハ11が仕上げ厚さになるまで薄化されると、プラズマエッチングステップにおいてデバイス領域11dに形成された溝が、ウェーハ11の裏面11b側に露出する。これにより、ウェーハ11がデバイス15をそれぞれ備える複数のデバイスチップに分割される。
【0069】
なお、複数のデバイス15を形成する工程において、複数のデバイス15に合わせてパターニングされたパッシベーション膜やフォトレジスト膜が形成されることがある。この場合には、パッシベーション膜又はフォトレジスト膜をそのまま保護層17として用いることができる。
【0070】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0071】
11 ウェーハ
11a 表面
11b 裏面
11c 外周縁(側面)
11d デバイス領域
11e 外周余剰領域
11f 外周縁(側面)
13 分割予定ライン(ストリート)
15 デバイス
17 保護層(マスク層)
19 段差部(切り欠き部)
19a 底面(底部)
19b 側面
21 保護部材
10 エッチングガス
20 研削装置
22 チャックテーブル(保持テーブル)
22a 保持面
24 研削ユニット
26 スピンドル
28 マウント
30 研削ホイール
32 基台
34 研削砥石
36 ノズル
38 研削液
図1
図2
図3
図4
図5