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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】基台付きブレード
(51)【国際特許分類】
   B24D 5/02 20060101AFI20240205BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20240205BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
B24D5/02 B
B24D5/12 Z
H01L21/78 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020009239
(22)【出願日】2020-01-23
(65)【公開番号】P2021115647
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【弁理士】
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】石井 隆博
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 圭一
(72)【発明者】
【氏名】矢口 善規
【審査官】小川 真
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-35764(JP,U)
【文献】特開2008-302435(JP,A)
【文献】特開2012-135833(JP,A)
【文献】特開2002-346935(JP,A)
【文献】実開昭62-110862(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 5/02
B24D 5/12
B24B 27/06
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円盤状の基台と、中央に開口部を備える環状のブレードと、を有し、
該基台は、該基台の表面から突出する環状の凸部を有し、
該ブレードは、該開口部で露出する側面から外周縁側に向かって形成された凹部を有し、
該基台と該ブレードとは、該凸部が該開口部に嵌め込まれた状態で、該基台の該表面に付着した第1の接着剤を介して貼り合わされ、該凹部に充填され該凸部と該側面との隙間に浸透した第2の接着剤によって接合され
該第2の接着剤は該第1の接着剤よりも粘度が低いことを特徴とする基台付きブレード。
【請求項2】
該基台の該表面側のうち該凸部が形成されていない領域に、該第1の接着剤が充填される溝が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の基台付きブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の切削に用いられる基台付きブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが複数形成された半導体ウェーハを分割することにより、デバイスをそれぞれ備える複数のデバイスチップが製造される。また、基板上に実装された複数のデバイスチップを樹脂でなる封止材(モールド樹脂)で被覆して形成されたパッケージ基板を分割することにより、モールド樹脂で覆われたデバイスチップをそれぞれ備える複数のパッケージデバイスが製造される。デバイスチップやパッケージデバイスは、携帯電話やパーソナルコンピュータに代表される様々な電子機器に搭載される。
【0003】
半導体ウェーハやパッケージ基板の分割には、切削装置が用いられる。切削装置は、被加工物を保持する保持テーブルと、環状のブレードで被加工物を切削する切削ユニットとを備える。ブレードを回転させ、保持テーブルによって保持された被加工物に切り込ませることにより、被加工物が切削、分割される。
【0004】
被加工物の切削に用いられるブレードとしては、ダイヤモンド等でなる砥粒がニッケルめっき等によって固定された切刃を備えるハブタイプのブレードや、砥粒が金属、セラミックス、樹脂等でなるボンド材によって固定された環状の切刃からなるワッシャータイプのブレードが用いられる。被加工物を切削する際には、被加工物の材質等に応じて適切なブレードが適宜選択される。
【0005】
ハブタイプのブレードは、円盤状の基台と、基台の外周縁に沿って形成された切刃とが一体となって構成されており、切削ユニットが備える回転軸(スピンドル)の先端部に固定されたブレードマウントに装着される。また、ワッシャータイプのブレードは、ブレードマウントが備えるフランジ部(固定フランジ)と、固定フランジとともにブレードを挟み込む脱着フランジとによって、回転軸の先端部に装着される。
【0006】
上記のように、ハブタイプのブレードとワッシャータイプのブレードとでは回転軸への装着方法が異なり、回転軸に固定されるブレードマウントの形状、寸法等もブレードの種類に応じて異なる。そのため、例えば回転軸の先端部に装着されたハブタイプのブレードをワッシャータイプのブレードに交換する際には、ブレードマウントも交換する必要があり、ブレードの交換作業が煩雑になる。
【0007】
そこで、近年では、ワッシャータイプのブレードが円盤状の基台に接着された基台付きブレードが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この基台付きブレードを用いると、ハブタイプのブレード用のブレードマウントにワッシャータイプのブレードを装着することが可能となり、ブレードの交換作業が簡易化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2012-135833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の基台付きブレードは、個別に形成された基台とブレードとを一体化させることによって製造される。具体的には、基台の一方の面に接着剤を塗布した後、基台の一方の面とブレードの一方の面とを対向させ、基台とブレードとを接着剤を介して互いに貼り合わせる。これにより、基台とブレードとが接合されて一体化する。
【0010】
上記の工程を経て得られた基台付きブレードでは、ブレードが基台の一方の面のみに貼付されるが、この状態では基台とブレードとの接合の強度が不十分な場合がある。特に、基台に厚いブレードが固定される場合には、ブレードを基台の一方の面に塗布された接着剤のみによって基台とブレードとを強固に一体化させることが困難な場合が多い。
【0011】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、基台とブレードとが強固に結合された基台付きブレードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によれば、円盤状の基台と、中央に開口部を備える環状のブレードと、を有し、該基台は、該基台の表面から突出する環状の凸部を有し、該ブレードは、該開口部で露出する側面から外周縁側に向かって形成された凹部を有し、該基台と該ブレードとは、該凸部が該開口部に嵌め込まれた状態で、該基台の該表面に付着した第1の接着剤を介して貼り合わされ、該凹部に充填され該凸部と該側面との隙間に浸透した第2の接着剤によって接合され、該第2の接着剤は該第1の接着剤よりも粘度が低い基台付きブレードが提供される。
【0013】
なお、好ましくは、該基台の該表面側のうち該凸部が形成されていない領域に、該第1の接着剤が充填される溝が形成されている
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様に係る基台付きブレードでは、基台とブレードとが、基台の表面に付着した第1の接着剤を介して貼り合わされるとともに、ブレードの凹部に充填され基台の凸部とブレードの側面との隙間に浸透した第2の接着剤によって接合される。これにより、基台とブレードとが強固に結合された基台付きブレードが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】基台付きブレードを示す分解断面図である。
図2】基台とブレードとが結合される様子を示す断面図である。
図3】基台とブレードとが結合された基台付きブレードを示す断面図である。
図4】ブレードの凹部に接着剤が充填された基台付きブレードを示す断面図である。
図5】溝が形成された基台とブレードとが結合された基台付きブレードを示す断面図である。
図6】切削装置を示す斜視図である。
図7】切削ユニットを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。まず、本実施形態に係る基台付きブレードの構成例について説明する。図1は、基台付きブレード2を示す分解斜視図である。
【0017】
基台付きブレード2は、円盤状の基台4と、環状のブレード6とを備える。基台4は、例えばアルミニウム合金等の金属でなり、互いに概ね平行な第1面(表面)4a及び第2面(裏面)4bと、外周縁(外周面)4cとを備える。また、基台4の中央には、基台4を第1面4aから第2面4bまで貫通する円柱状の開口部4dが設けられている。
【0018】
基台4の第1面4a側には、第1面4aからブレード6側に突出する環状の凸部4eが、開口部4dを囲むように設けられている。凸部4eは、開口部4dの輪郭に沿って所定の幅で形成されており、第1面4aと概ね垂直な外周面4fを備える。
【0019】
ブレード6は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒を、金属、セラミックス、樹脂等でなるボンド材で固定することによって環状に形成される。なお、ブレード6に含まれる砥粒やボンド材の材質は、基台付きブレード2の仕様等に応じて適宜選択される。
【0020】
ブレード6は、互いに概ね平行な第1面(表面)6a及び第2面(裏面)6bと、第1面6a及び第2面6bに接続された外周縁(外周面)6cとを備える。また、ブレード6の中央には、ブレード6を第1面6aから第2面6bまで貫通する円柱状の開口部6dが設けられている。開口部6dは、開口部6dで露出するブレード6の側面(内周面)6eを画定している。
【0021】
また、ブレード6は、ブレード6の側面6eから外周縁6c側に向かって形成された複数の凹部6fを有する。複数の凹部6fは、ブレード6の第1面6aから第2面6bに至るように形成され、側面6eの周方向に沿って概ね等間隔に配置されている。図1では、ブレード6に6つの凹部6fが形成されている例を示している。
【0022】
基台4とブレード6とを結合することにより、基台4とブレード6とが一体化した基台付きブレード2が得られる。図2は、基台4とブレード6とが結合される様子を示す断面図である。
【0023】
基台4とブレード6とを結合する際は、まず、基台4の第1面4aに第1の接着剤(貼り合わせ用接着剤)を付着させる。具体的には、基台4の第1面4aのうち凸部4eよりも基台4の半径方向外側に位置する領域に、第1の接着剤を付着させる。例えば、第1面4aにシート状の接着剤(接着シート)を貼付してもよいし、第1面4aにエポキシ樹脂系の接着剤等を塗布してもよい。なお、第1の接着剤はブレード6に付着させてもよい。
【0024】
その後、基台4の第1面4aとブレード6の第1面6aとを対向させ、基台4とブレード6とを第1の接着剤を介して貼り合わせる。これにより、基台4とブレード6とが接合される。
【0025】
ここで、基台4の凸部4eは、ブレード6の開口部6dに対応する形状を有する。具体的には、凸部4eは、凸部4eの外周面4fの直径とブレード6の側面6eの直径とが概ね等しく、外周面4fの形状と側面6eの形状とが概ね一致するように形成されている。そして、基台4とブレード6とは、基台4の凸部4eがブレード6の開口部6dに嵌め込まれるように貼り合わされる。これにより、基台4とブレード6とが互いに同心円状に配置され、基台4とブレード6との位置合わせが行われる。
【0026】
なお、凸部4eがブレード6の開口部6dに円滑に挿入されるように、凸部4eの外周面4fの直径は、ブレード6の側面6eの直径よりも僅かに小さく設定される。ただし、基台4とブレード6との高精度な位置合わせのため、凸部4eの外周面4fの直径とブレード6の側面6eの直径との差は100μm以下であることが好ましい。
【0027】
図3は、基台4とブレード6とが結合された基台付きブレード2を示す断面図である。基台4の凸部4eがブレード6の開口部6dに嵌め込まれた状態で、基台4とブレード6とが接合されて一体化することにより、基台付きブレード2が得られる。なお、ブレード6の外周縁6cの直径は、基台4の外周縁4cの直径よりも大きい。そのため、基台4とブレード6とを接合させると、ブレード6の外周縁6cは基台4の外周縁4cよりも基台4の半径方向外側に配置され、外周縁4cから突出した状態となる。
【0028】
なお、凸部4eの高さ(第1面4aからの突出量)は、ブレード6の厚さ以下であることが好ましい。この場合、凸部4eをブレード6の開口部6dに挿入しても、凸部4eがブレード6の第2面6b側から突出しない。これにより、回転軸40に固定されたブレードマウント44(図7参照)に基台付きブレード2を装着する際、凸部4eがブレードマウント44と接触して基台付きブレード2の装着が妨げられることを防止できる。
【0029】
次に、基台4に貼付されたブレード6の凹部6fに第2の接着剤(充填用接着剤)を充填する。図4は、ブレード6の凹部6fに第2の接着剤8が充填された基台付きブレード2を示す断面図である。第2の接着剤8としては、例えばアクリル樹脂系やエポキシ樹脂系の接着剤が用いられる。
【0030】
なお、第2の接着剤8の材料は、基台4とブレード6との貼り合わせに用いた第1の接着剤の材料と同一であってもよいし、異なっていてもよい。第1の接着剤と第2の接着剤とで材料が異なる場合には、第2の接着剤8として、第1の接着剤よりも粘度が低く流動性が高い接着剤を用いることが好ましい。
【0031】
ここで、基台4の凸部4eとブレード6の側面6eとの間には、例えば50μm以下の僅かな隙間が形成されている。そして、凹部6fに第2の接着剤8を充填すると、第2の接着剤8が毛細管現象によって凸部4eの外周面4fとブレード6の側面6eとの隙間を流動し、該隙間に第2の接着剤8が浸透する。その結果、外周面4fと側面6eとの隙間に充填された第2の接着剤8によって、外周面4fと側面6eとが接合される。
【0032】
第2の接着剤8が凸部4eと側面6eとの隙間に浸透すると、基台4の第1面4aとブレード6の第1面6aとが第1の接着剤によって接合されるのみでなく、さらに、凸部4eと側面6eとが第2の接着剤8によって接合される。これにより、基台4とブレード6とが強固に接合される。
【0033】
特に、ブレード6が厚い場合には、ブレード6の厚さに応じて基台4の凸部4eの高さ(突出量)を増やすことにより、外周面4fと側面6eとの接合領域を広くすることができる。これにより、基台4とブレード6とがより強固に接合される。例えば、凸部4eの高さはブレード6の厚さと概ね同一に設定される。
【0034】
第2の接着剤8が充填される凹部6fの数、位置(間隔)、形状、大きさ等は、凹部6fに充填された第2の接着剤8が毛細管現象によって凸部4eと側面6eとの隙間の全域に渡って浸透するように設定される。ただし、凹部6fが過度に大きいと、ブレード6の強度に影響を及ぼす恐れがある。そのため、凹部6fの深さは、ブレード6の幅(外周縁6cと側面6eとの距離)の1/4以下であることが好ましい。
【0035】
上記のように、本実施形態に係る基台付きブレード2では、基台4とブレード6とが、基台4の第1面4aに付着した第1の接着剤を介して貼り合わされるとともに、ブレード6の凹部6fに充填され基台4の凸部4eとブレード6の側面6eとの隙間に浸透した第2の接着剤によって接合される。これにより、基台4とブレード6とが強固に結合された基台付きブレード2が得られる。
【0036】
なお、上記では、基台4とブレード6とが第1の接着剤を介して貼り合わされた後に、ブレード6の凹部6fに第2の接着剤8が充填される場合について説明したが、基台4とブレード6との接合の方法はこれに限定されない。例えば、基台4とブレード6とが貼り合わされた際に、ブレード6の凹部6fに接着剤が充填されてもよい。
【0037】
具体的には、基台4とブレード6とを貼り合わせる際、基台4の第1面4aのうちブレード6の凹部6fと重なる領域(第1領域)には、第1面4aの他の領域(第2領域)よりも多量の第1の接着剤が塗布される。この状態で基台4とブレード6とが貼り合わされると、第1領域に塗布された第1の接着剤がブレード6の凹部6fに充填される。そして、凹部6fに充填された第1の接着剤が毛細管現象によって凸部4eの外周面4fとブレード6の側面6eとの隙間を流動し、該隙間に第1の接着剤が浸透する。
【0038】
上記の方法を用いる場合、第1の接着剤の一部が図4に示す第2の接着剤8に相当する。そのため、第1の接着剤の材料と第2の接着剤8の材料とが同一となる。なお、第1の接着剤が凸部4eの外周面4fとブレード6の側面6eとの隙間に浸透しやすくするため、第1の接着剤として流動性が高い接着剤(例えば、アクリル樹脂系やエポキシ樹脂系の接着剤)を用いることが好ましい。また、基台4の第1面4aの第1領域に塗布される第1の接着剤の量は、ブレード6の凹部6fに第1の接着剤が充填されるように適宜調整される。
【0039】
また、上記では、基台4とブレード6とを貼り合わせる際、平面状に形成された基台4の第1面4aに第1の接着剤が塗布される例について説明した。ただし、基台4には第1の接着剤が充填される溝が形成されていてもよい。図5は、溝4gが形成された基台4とブレード6とが結合された基台付きブレード2を示す断面図である。
【0040】
図5において、基台4の第1面4a側には、環状の溝4gが形成されている。例えば溝4gは、凸部4eを囲むように、第1面4aから第2面4b側に向かって形成されている。溝4gの外周縁(溝4gの幅方向における一端部)は基台4の外周縁4cに達しておらず、溝4gの内周縁(溝4gの幅方向における他端部)は、凸部4eの外周面4fに達している。
【0041】
なお、溝4gの具体的な形状に制限はない。例えば基台4には、1本の帯状の溝4gが基台4の周方向に沿って連続的に形成されてもよいし、複数の溝4gが基台4の周方向に沿って概ね等間隔に形成されてもよい。
【0042】
基台4とブレード6とを貼り合わせる際(図2参照)、溝4gには第1の接着剤(貼り合わせ用接着剤)10が充填される。第1の接着剤10の量は溝4gの体積に合わせて調整され、溝4gに充填された第1の接着剤10の表面は、基台4の第1面4aと概ね同一平面上に位置付けられる。
【0043】
ここで、溝4gのうちブレード6の凹部6fと重なる領域には、第1の接着剤10が基台4の第1面4aから突出するように塗布される。この領域に塗布される第1の接着剤10の量は、基台4の第1面4aから突出する第1の接着剤10の体積が、ブレード6の凹部6fの体積以上となるように調整される。
【0044】
この状態で、基台4の第1面4a側とブレード6の第1面6a側とを貼り合わせると、基台4とブレード6とが第1の接着剤10を介して接合されるとともに、基台4の第1面4aから突出する第1の接着剤10がブレード6の凹部6fに充填される。そして、凹部6fに充填された第1の接着剤10が毛細管現象によって凸部4eの外周面4fとブレード6の側面6eとの隙間を流動し、該隙間に第1の接着剤10が浸透する。
【0045】
上記のように、溝4gの内部に第1の接着剤10を充填すると、溝4gが形成されていない基台4の第1面4aに第1の接着剤10を塗布する場合と比較して、第1の接着剤10と基台4との接触面積が増大する。これにより、第1の接着剤10の基台4に対する接着力を強めることができる。また、第1の接着剤10を溝4gに充填することにより、基台4とブレード6とを貼り合わされた際、第1の接着剤10が押しつぶされて広がり、基台4の外周縁4cの外側にはみ出ることを防止できる。
【0046】
ただし、溝4gが形成される領域は適宜変更できる。例えば溝4gは、溝4gの内周縁がブレード6の凹部6fと重ならないように形成されてもよい。この場合には、溝4gに第1の接着剤10を充填して基台4とブレード6とを貼り合わせた後、別途ブレードの凹部6fに第2の接着剤8を充填する。
【0047】
上記の基台付きブレード2は、切削装置に装着され、被加工物を切削する。以下、基台付きブレード2を用いて被加工物を切削する切削装置の構成例について説明する。図6は、被加工物11を切削する切削装置20を示す斜視図である。
【0048】
切削装置20によって切削される被加工物11の例としては、IC(Integrated Circuit)、LSI(Large Scale Integration)等のデバイスが複数形成された半導体ウェーハや、CSP(Chip Size Package)基板、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)基板等のパッケージ基板が挙げられる。ただし、被加工物11の種類、材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば、被加工物11はガラス、サファイア、セラミックス、樹脂、金属等でなる円盤状又は直方体状の基板等であってもよい。
【0049】
切削装置20は、切削装置20を構成する各構成要素を支持する基台22を備え、基台22の上方には基台22の上面側を覆うカバー24が設けられている。カバー24の内部には、被加工物11の加工が行われる空間(処理空間)が形成されており、この空間には、基台付きブレード2が装着される切削ユニット26が配置されている。切削ユニット26には移動機構(不図示)が接続されており、この移動機構は切削ユニット26をY軸方向(割り出し送り方向、前後方向)及びZ軸方向(鉛直方向、上下方向)に沿って移動させる。
【0050】
切削ユニット26の下方には、被加工物11を保持する保持テーブル(チャックテーブル)28が設けられている。保持テーブル28の上面は被加工物11を保持する保持面を構成しており、この保持面は、保持テーブル28の内部に形成された吸引路(不図示)を介してエジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。被加工物11を保持テーブル28の保持面上に配置した状態で、保持面に吸引源の負圧を作用させると、被加工物11が保持テーブル28によって吸引保持される。
【0051】
保持テーブル28には移動機構(不図示)が接続されており、この移動機構は保持テーブル28をX軸方向(加工送り方向、左右方向)に沿って移動させる。また、保持テーブル28には回転機構(不図示)が接続されており、この回転機構は保持テーブル28をZ軸方向と概ね平行な回転軸の周りで回転させる。
【0052】
基台22の前方の角部には、カセットエレベータ30が設置されている。カセットエレベータ30の上面には、複数の被加工物11を収容可能なカセット32が載置される。カセットエレベータ30は昇降可能に構成されており、カセット32からの被加工物11の搬出又はカセット32への被加工物11の搬入が適切に行われるように、カセット32の高さ(Z軸方向における位置)を調整する。また、カバー24の前面24a側には、ユーザインタフェースとなるタッチパネル式のモニタ34が設けられている。
【0053】
切削装置20を構成する各構成要素(切削ユニット26、切削ユニット26に接続された移動機構、保持テーブル28、保持テーブル28に接続された移動機構及び回転機構、カセットエレベータ30、モニタ34等)は、制御ユニット(不図示)に接続されている。制御ユニットはコンピュータ等によって構成され、切削装置20の構成要素の動作を制御する。
【0054】
図7は、切削ユニット26を示す斜視図である。切削ユニット26は、Y軸方向に沿って配置された円筒状の回転軸(スピンドル)40を備える。回転軸40は、円筒状のハウジング42に収容されている。回転軸40の先端部(一端部)は、ハウジング42の外部に露出しており、回転軸40の先端部にはブレードマウント44が固定されている。また、回転軸40の基端部(他端側)には、回転軸40を回転させるモータ等の回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0055】
ブレードマウント44は、円盤状のフランジ部46と、フランジ部46の表面46aの中央から突出する円筒状の支持軸48とを備える。フランジ部46の外周部の表面46a側には、表面46aから突出する環状の凸部46bが設けられている。凸部46bは、その先端に先端面46cを備えており、先端面46cは表面46aと概ね平行に形成されている。
【0056】
支持軸48の先端部の外周面にはねじ部48aが形成されており、このねじ部48aには環状の固定ナット50が締結される。固定ナット50の中央には、固定ナット50を厚さ方向に貫通する円柱状の開口部50aが形成されている。開口部50aは支持軸48と概ね同径に形成され、開口部50aには支持軸48のねじ部48aに対応するねじ溝が設けられている。
【0057】
基台付きブレード2の基台4の開口部4dに支持軸48を挿入すると、基台付きブレード2がブレードマウント44に装着される。この状態で、支持軸48のねじ部48aに固定ナット50を締結すると、ブレード6が基台4の第1面4a(図1等参照)とフランジ部46の凸部46bの先端面46cとによって挟持される。このようにして、回転軸40の先端部に基台付きブレード2が固定される。
【0058】
切削ユニット26に基台付きブレード2が装着された状態で、回転軸40を回転駆動源によって回転させると、基台付きブレード2が回転軸40の軸心を中心に回転する。そして、保持テーブル28(図6参照)によって保持された被加工物11に、回転する基台付きブレード2のブレード6を切り込ませることにより、被加工物11が切削される。
【0059】
なお、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0060】
2 基台付きブレード
4 基台
4a 第1面(表面)
4b 第2面(裏面)
4c 外周縁(外周面)
4d 開口部
4e 凸部
4f 外周面
4g 溝
6 ブレード
6a 第1面(表面)
6b 第2面(裏面)
6c 外周縁(外周面)
6d 開口部
6e 側面(内周面)
6f 凹部
8 第2の接着剤
10 第1の接着剤(貼り合わせ用接着剤)
20 切削装置
22 基台
24 カバー
24a 前面
26 切削ユニット
28 保持テーブル(チャックテーブル)
30 カセットエレベータ
32 カセット
34 モニタ
40 回転軸(スピンドル)
42 ハウジング
44 ブレードマウント
46 フランジ部
46a 表面
46b 凸部
46c 先端面
48 支持軸
48a ねじ部
50 固定ナット
50a 開口部
11 被加工物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7