(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】研削装置及び研削方法
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20240205BHJP
B24B 49/10 20060101ALI20240205BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20240205BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B49/10
B24B7/04 A
H01L21/304 631
H01L21/304 622R
(21)【出願番号】P 2020016990
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】須藤 雄二郎
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-104952(JP,A)
【文献】特開2015-150642(JP,A)
【文献】特開2018-140457(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 49/10
B24B 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を研削する研削装置であって、
該被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルの下方に配置され、該チャックテーブルを回転可能に支持するベアリングと、
該ベアリングの下方に配置された支持板と、
該支持板の下方に配置され、該チャックテーブルを支持する板状のテーブルベースと、
スピンドルを有し、該スピンドルの一端部に装着された研削ホイールにより、該チャックテーブルで保持された該被加工物を研削可能な研削ユニットと、
該支持板と、該テーブルベースと、の間に配置され、且つ、該チャックテーブルの回転軸の周りに互いに離れて配置されている第1の荷重測定器、第2の荷重測定器、及び、第3の荷重測定器を有し、該研削ユニットから該テーブルベースにかかる荷重を検出する荷重検出ユニットと、
該テーブルベースを支持し、該テーブルベースの傾きを調整可能な傾き調整ユニットと、
該テーブルベースにかかる荷重と荷重による該テーブルベースの傾き変化量との相関関係を記憶する記憶部と、
プロセッサを有し、該荷重検出ユニットで検出した荷重と該相関関係とに基づいて、該傾き調整ユニットを制御して、検出した荷重に対応する該テーブルベースの傾き変化量を相殺する様に該テーブルベースの傾きを調整する制御部と、を備えることを特徴とする研削装置。
【請求項2】
該傾き調整ユニットは、固定支持機構及び複数の可動支持機構を有し、
該相関関係は、該固定支持機構と各可動支持機構とにかかる荷重と、荷重がかかった場合の該固定支持機構及び各可動支持機構のそれぞれの収縮量に起因する該テーブルベースの傾き変化量との相関関係であり、
該制御部は、該相関関係に基づいて、各可動支持機構の長さを調整することで、該テーブルベースの傾きを調整することを特徴とする請求項1記載の研削装置。
【請求項3】
該固定支持機構と該複数の可動支持機構との各々は、該テーブルベースの下面に対して固定され該下面よりも下方に突出している上部支持体と、所定長さの支柱と、を有し、
該固定支持機構の該支柱の上部は、該固定支持機構の該上部支持体に固定されており、
各可動支持機構の該支柱の上部は、対応する可動支持機構の該上部支持体に回転可能に連結されていることを特徴とする請求項2記載の研削装置。
【請求項4】
被加工物を研削する研削方法であって、
ホイール基台の一面側で該一面の周方向に沿って配置された砥石部を有する研削ホイールの該砥石部の下面により規定される研削面と、該砥石部とチャックテーブルで保持された該被加工物との接触領域に重なる該チャックテーブルの保持面の一部の領域と、が平行となる様に、該チャックテーブルを支持するテーブルベースの傾きを調整する第1の傾き調整ステップと、
該第1の傾き調整ステップの後、該研削ホイールで該被加工物を研削すると共に、該テーブルベースにかかる荷重を検出する第1の研削ステップと、
該第1の研削ステップの後、該テーブルベースにかかる荷重と荷重による該テーブルベースの傾き変化量との相関関係と、該第1の研削ステップで検出した荷重とに基づいて、該第1の研削ステップで検出した荷重に対応する該テーブルベースの傾き変化量を相殺する様に該テーブルベースの傾きを調整する第2の傾き調整ステップと、
該第2の傾き調整ステップの後、該被加工物を所定の仕上げ厚さまで研削する第2の研削ステップと、を備えることを特徴とする研削方法。
【請求項5】
該相関関係は、該テーブルベースの傾きを調整するための固定支持機構及び複数の可動支持機構にかかる荷重と、荷重がかかった場合の該固定支持機構及び各可動支持機構のそれぞれの収縮量に起因する該テーブルベースの傾き変化量との相関関係であり、
該第2の傾き調整ステップでは、
該固定支持機構及び各可動支持機構にかかる荷重と該相関関係とに基づいて、各可動支持機構の長さを調整することを特徴とする請求項
4記載の研削方法。
【請求項6】
該第2の研削ステップの後、各可動支持機構の長さを該第2の傾き調整ステップで調整した長さにそれぞれ調整した状態で、該被加工物とは別の被加工物を該チャックテーブルで保持し、該研削ホイールで該別の被加工物を研削する第3の研削ステップを更に備えることを特徴とする請求項
5記載の研削方法。
【請求項7】
該第3の研削ステップでは、該研削ホイールで該別の被加工物を研削すると共に、該テーブルベースにかかる荷重を検出し、
該第3の研削ステップで検出した荷重と該相関関係とに基づいて、該第3の研削ステップで検出した荷重に対応する該テーブルベースの傾き変化量を相殺する様に該テーブルベースの傾きを調整する第3の傾き調整ステップを更に備えることを特徴とする請求項
6記載の研削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を研削する研削装置及び被加工物を研削する研削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスチップの製造プロセスでは、半導体ウェーハの一面側を研削するために研削装置が用いられる。研削装置は、半導体ウェーハの一面とは反対側に位置する他面側を保持するチャックテーブルを備えている。
【0003】
チャックテーブルの下部には、チャックテーブルを回転させるモーター等の回転駆動源が設けられている。回転駆動源の回転軸はチャックテーブルの下部に連結されている。チャックテーブルの上面は円錐状の凸面となっており、この上面は、半導体ウェーハを吸引する保持面として機能する。
【0004】
チャックテーブルの上方には、研削ユニットが設けられている。研削ユニットは、円柱状のスピンドルを有する。スピンドルの下端部には、円盤状のマウントの上面側が固定されており、マウントの下面側には、環状の研削ホイールが装着される。
【0005】
研削ホイールは、金属で形成された環状の基台と、基台の下面側に環状に配列された複数の研削砥石とを備える。各研削砥石はブロック状であり、複数の研削砥石の下面により規定される平面は、半導体ウェーハに対して研削を施す研削面となる。
【0006】
研削装置で半導体ウェーハの一面側を研削するときには、半導体ウェーハの他面に樹脂製の保護テープを貼り付ける。そして、保護テープを介して半導体ウェーハの他面側を保持面で吸引保持する。
【0007】
このとき、半導体ウェーハは、保持面の形状に倣って凸状に変形する。また、チャックテーブルの回転軸は、研削ホイールの研削面と半導体ウェーハの一面側の一部の領域とが略平行になる様に、スピンドルに対して所定の角度に傾けられる。
【0008】
半導体ウェーハの一面側を研削するときには、チャックテーブル及び研削ホイールをそれぞれ所定の方向に回転させた状態で研削ホイールを下方に加工送りする。研削面が半導体ウェーハの一面側の一部(円弧状の領域)に接触することで、一面側は研削される。
【0009】
ところで、研削後の半導体ウェーハは、保護テープの種類、ウェーハの直径等に応じて厚さばらつきが異なる場合がある。そこで、保護テープの種類等に応じて厚さばらつきのデータを予め収集しておき、研削時に当該データに基づいて、チャックテーブルの回転軸に対するスピンドルの角度を自動で調整する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0010】
しかし、通常の研削装置では、スピンドルは鉛直方向に略平行に配置されており、スピンドルは鉛直方向に対して傾けられない構造になっている。そこで、スピンドルを傾けることに代えて、チャックテーブルの回転軸の傾きが調整される。
【0011】
チャックテーブルの下方には、チャックテーブルの回転軸の傾きを調整するための傾き調整ユニットが設けられている。傾き調整ユニットは、例えば、固定支持機構と、第1可動支持機構と、第2可動支持機構を含み、チャックテーブルを三点で支持している。
【0012】
研削時には、円弧状の被研削領域が、固定支持機構と第1可動支持機構との間の上方に位置するので、固定支持機構及び第1可動支持機構には、比較的大きな荷重がかかる。しかし、第2可動支持機構にかかる荷重は、固定支持機構及び第1可動支持機構に比べて比較的小さい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
それゆえ、研削時にチャックテーブルの傾きが変化し、半導体ウェーハの厚さばらつきが大きくなるという問題がある。本発明は係る問題点に鑑みてなされたものであり、チャックテーブルに対して部分的に大きな研削荷重がかかっても、被加工物の厚さばらつきの悪化を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様によれば、被加工物を研削する研削装置であって、該被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルの下方に配置され、該チャックテーブルを回転可能に支持するベアリングと、該ベアリングの下方に配置された環状の支持板と、該支持板の下方に配置され、該チャックテーブルを支持する板状のテーブルベースと、スピンドルを有し、該スピンドルの一端部に装着された研削ホイールにより、該チャックテーブルで保持された該被加工物を研削可能な研削ユニットと、該支持板と、該テーブルベースと、の間に配置され、且つ、該チャックテーブルの回転軸の周りに互いに離れて配置されている第1の荷重測定器、第2の荷重測定器、及び、第3の荷重測定器を有し、該研削ユニットから該テーブルベースにかかる荷重を検出する荷重検出ユニットと、該テーブルベースを支持し、該テーブルベースの傾きを調整可能な傾き調整ユニットと、該テーブルベースにかかる荷重と荷重による該テーブルベースの傾き変化量との相関関係を記憶する記憶部と、プロセッサを有し、該荷重検出ユニットで検出した荷重と該相関関係とに基づいて、該傾き調整ユニットを制御して、検出した荷重に対応する該テーブルベースの傾き変化量を相殺する様に該テーブルベースの傾きを調整する制御部と、を備える研削装置が提供される。
【0016】
好ましくは、該傾き調整ユニットは、固定支持機構及び複数の可動支持機構を有し、該相関関係は、該固定支持機構と各可動支持機構とにかかる荷重と、荷重がかかった場合の該固定支持機構及び各可動支持機構のそれぞれの収縮量に起因する該テーブルベースの傾き変化量との相関関係であり、該制御部は、該相関関係に基づいて、各可動支持機構の長さを調整することで、該テーブルベースの傾きを調整する。また、好ましくは、該固定支持機構と該複数の可動支持機構との各々は、該テーブルベースの下面に対して固定され該下面よりも下方に突出している上部支持体と、所定長さの支柱と、を有し、該固定支持機構の該支柱の上部は、該固定支持機構の該上部支持体に固定されており、各可動支持機構の該支柱の上部は、対応する可動支持機構の該上部支持体に回転可能に連結されている。
【0017】
本発明の他の態様によれば、被加工物を研削する研削方法であって、ホイール基台の一面側で該一面の周方向に沿って配置された砥石部を有する研削ホイールの該砥石部の下面により規定される研削面と、該砥石部とチャックテーブルで保持された該被加工物との接触領域に重なる該チャックテーブルの保持面の一部の領域と、が平行となる様に、該チャックテーブルを支持するテーブルベースの傾きを調整する第1の傾き調整ステップと、該第1の傾き調整ステップの後、該研削ホイールで該被加工物を研削すると共に、該テーブルベースにかかる荷重を検出する第1の研削ステップと、該第1の研削ステップの後、該テーブルベースにかかる荷重と荷重による該テーブルベースの傾き変化量との相関関係と、該第1の研削ステップで検出した荷重とに基づいて、該第1の研削ステップで検出した荷重に対応する該テーブルベースの傾き変化量を相殺する様に該テーブルベースの傾きを調整する第2の傾き調整ステップと、該第2の傾き調整ステップの後、該被加工物を所定の仕上げ厚さまで研削する第2の研削ステップと、を備える研削方法が提供される。
【0018】
好ましくは、該相関関係は、該テーブルベースの傾きを調整するための固定支持機構及び複数の可動支持機構にかかる荷重と、荷重がかかった場合の該固定支持機構及び各可動支持機構のそれぞれの収縮量に起因する該テーブルベースの傾き変化量との相関関係であり、該第2の傾き調整ステップでは、該固定支持機構及び各可動支持機構にかかる荷重と該相関関係とに基づいて、各可動支持機構の長さを調整する。
【0019】
また、好ましくは、当該研削方法は、該第2の研削ステップの後、各可動支持機構の長さを該第2の傾き調整ステップで調整した長さにそれぞれ調整した状態で、該被加工物とは別の被加工物を該チャックテーブルで保持し、該研削ホイールで該別の被加工物を研削する第3の研削ステップを更に備える。
【0020】
また、好ましくは、該第3の研削ステップでは、該研削ホイールで該別の被加工物を研削すると共に、該テーブルベースにかかる荷重を検出し、当該研削方法は、該第3の研削ステップで検出した荷重と該相関関係とに基づいて、該第3の研削ステップで検出した荷重に対応する該テーブルベースの傾き変化量を相殺する様に該テーブルベースの傾きを調整する第3の傾き調整ステップを更に備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の一態様に係る研削装置は、テーブルベースにかかる荷重と荷重によるテーブルベースの傾き変化量との相関関係を記憶する記憶部を備える。また、研削装置は、荷重検出ユニットで検出した荷重と記憶部に記憶された相関関係とに基づいて、傾き調整ユニットを制御する制御部を備える。
【0022】
制御部は、検出した荷重に対応するテーブルベースの傾き変化量を相殺する様にテーブルベースの傾きを調整する。これにより、テーブルベースの傾きを調整しない場合に比べて、被加工物の厚さばらつきの悪化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】チャックテーブル等の一部断面側面図である。
【
図3】
図3(A)はチャックテーブル等の一部断面側面図であり、
図3(B)は研削時のチャックテーブルの上面図である。
【
図4】荷重と収縮量との対応関係の一例を示すグラフである。
【
図5】チャックテーブル等の一部断面側面図である。
【
図6】
図6(A)は研削荷重30Nで研削された被加工物の裏面側の断面プロファイルであり、
図6(B)は研削荷重60Nで研削された被加工物の裏面側の断面プロファイルである。
【
図8】第1の実施形態に係る研削方法のフロー図である。
【
図9】
図9(A)は別の被加工物を研削する様子を示す図であり、
図9(B)はテーブルベースの傾きを更に調整する様子を示す図である。
【
図10】第2の実施形態に係る研削方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
添付図面を参照して、本発明の一態様に係る実施形態について説明する。
図1は、研削装置2の構成例を示す斜視図である。なお、
図1では、研削装置2の構成要素の一部を機能ブロックで示す。
【0025】
また、
図1等に示す、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向(鉛直方向、上下方向、研削送り方向)は、互いに直交する方向である。研削装置2は、各構成要素が搭載される基台4を備える。
【0026】
基台4の上面にはX軸方向に沿って長手部を有する開口4aが形成されている。開口4aの内部には、ボールネジ式のX軸移動機構8が配置されている。X軸移動機構8は、X軸方向に沿って配置された一対のガイドレール(不図示)を有する。
【0027】
一対のガイドレールの間には、X軸方向に沿ってボールネジ(不図示)が配置されている。ボールネジの一端には、ボールネジを回転させるためのパルスモーター(不図示)が連結されている。
【0028】
ボールネジには、X軸移動テーブル(不図示)の下面側に設けられているナット部(不図示)が回転可能な態様で連結されている。パルスモーターでボールネジを回転させれば、X軸移動テーブルはX軸方向に沿って移動する。
【0029】
X軸移動テーブル上には、テーブルカバー8aが設けられている。また、テーブルカバー8a上には、チャックテーブル(保持テーブル)10が設けられている。ここで、
図2を参照してチャックテーブル10の構成について説明する。
図2は、チャックテーブル10等の一部断面側面図である。
【0030】
チャックテーブル10は、セラミックスで形成された円盤状の枠体12を有する。枠体12には、円盤状の凹部が形成されている。凹部の底部には、吸引路(不図示)が形成されている。吸引路の一端は、凹部の底面に露出しており、吸引路の他端は、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0031】
凹部には、ポーラス板14が固定されている。ポーラス板14の下面は略平坦であるが、ポーラス板14の上面は中心部が外周部に比べて僅かに突出した円錐状に形成されている。吸引源を動作させると、ポーラス板14の上面(保持面14a)には負圧が生じる。
【0032】
チャックテーブル10の下部には、円柱状の回転軸16の上部が連結されている。回転軸16は、サーボモーター等の回転駆動源(不図示)の出力軸である。回転駆動源を動作させると、回転軸16の周りにチャックテーブル10が回転する。
【0033】
チャックテーブル10の下方且つ回転軸16の周りには、チャックテーブル10を回転可能な態様で支持する環状のベアリング18が設けられている。ベアリング18の下方且つ回転軸16の周りには、環状の支持板20が固定されている。
【0034】
支持板20の下方且つ回転軸16の周りには、板状且つ環状のテーブルベース22が設けられている。また、支持板20の平坦な下面とテーブルベース22の平坦な上面との間には、荷重検出ユニット24が配置されている。
【0035】
荷重検出ユニット24は、3つの荷重測定器24aを有する。3つの荷重測定器24aは、テーブルベース22の上面の周方向に沿って互いに離れる態様で設けられている。各荷重測定器24aの上面は、支持板20の下面に接している。荷重測定器24aは、例えば、ダイヤフラム型のロードセルである。
【0036】
但し、荷重測定器24aは、コラム型のロードセルであってもよい。ロードセルは、荷重を電気信号に変換するセンサを含む。ロードセルは、例えば、圧電素子を有する圧電式センサを備えるが、これに代えて、ひずみゲージ式センサ又は静電容量式センサ等を備えてもよい。
【0037】
チャックテーブル10は、ベアリング18、支持板20及び荷重検出ユニット24を介してテーブルベース22で支持されるので、保持面14aが押圧された場合、テーブルベース22にかかる荷重(研削荷重)が荷重検出ユニット24で測定される。
【0038】
テーブルベース22の下面側には、テーブルベース22の周方向に沿って互いに離れる様に、3つの支持機構(固定支持機構26a、第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26c)が設けられている。各支持機構は、荷重測定器24aの直下に配置されている。なお、本明細書では、これら3つの支持機構をまとめて、傾き調整ユニット26と称する。
【0039】
テーブルベース22の一部は、固定支持機構26aで支持されている。固定支持機構26aは、所定長さの支柱(固定軸)を有している。支柱の上部は、テーブルベース22の下面に固定された上部支持体に固定されており、支柱の下部は、支持ベースに固定されている。
【0040】
これに対して、テーブルベース22の他の二箇所は、第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cで支持されている。第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cの各々は、先端部に雄ネジが形成された支柱(可動軸)28を有している。
【0041】
支柱28の先端部(上部)は、テーブルベース22の下面に固定された上部支持体30に回転可能な態様で連結されている。より具体的には、上部支持体30はネジ穴を有するロッド等の金属製柱状部材であり、支柱28の雄ネジは、上部支持体30のネジ穴に回転可能な態様で連結されている。
【0042】
第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cの各支柱28の外周には、所定の外径を有するリング状のベアリング34が固定されている。ベアリング34の一部は、階段状の支持板36で支持されている。つまり、第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cは、支持板36で支持されている。
【0043】
支柱28の下部には、支柱28を回転させるパルスモーター32が連結されている。パルスモーター32を動作させて支柱28を一方向に回転させることで、上部支持体30が上昇する。
【0044】
また、パルスモーター32で支柱28を他方向に回転させることで、上部支持体30が下降する。この様に、上部支持体30を上昇又は下降させることで、テーブルベース22(即ち、チャックテーブル10)の傾きが調整される。
【0045】
なお、テーブルベース22が受ける荷重に応じて、固定支持機構26a、第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cのZ軸方向の長さが収縮することがある。例えば、固定支持機構26aの支柱と上部支持体との距離が縮まり、第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cの各支柱28と上部支持体30との距離が縮まることで、各支持機構が弾性的に収縮する。
【0046】
ここで、
図1に戻り、研削装置2の他の構成要素について説明する。開口4aには、X軸方向でテーブルカバー8aを挟む様に、X軸方向で伸縮可能な蛇腹状の防塵防滴カバー40が設けられている。
【0047】
開口4aのX軸方向の一端近傍には、研削条件等を入力するための操作パネル42が設けられている。また、開口4aのX軸方向の他端近傍には、上方に延伸する直方体状の支持構造6が設けられている。
【0048】
支持構造6の前面側(即ち、操作パネル42側)には、Z軸移動機構44が設けられている。Z軸移動機構44は、Z軸方向に沿って配置された一対のZ軸ガイドレール46を備える。
【0049】
一対のZ軸ガイドレール46には、Z軸移動プレート48がZ軸方向に沿ってスライド可能な態様で取り付けられている。Z軸移動プレート48の後面側(裏面側)にはナット部(不図示)が設けられている。
【0050】
このナット部には、Z軸方向に沿って配置されたZ軸ボールネジ50が、回転可能な態様で結合している。Z軸方向におけるZ軸ボールネジ50の一端部には、Z軸パルスモーター52が連結されている。
【0051】
Z軸パルスモーター52によってZ軸ボールネジ50を回転させると、Z軸移動プレート48はZ軸ガイドレール46に沿ってZ軸方向に移動する。Z軸移動プレート48の前面側には、支持具54が設けられている。
【0052】
支持具54は、研削ユニット56を支持している。研削ユニット56は、支持具54に固定された円筒状のスピンドルハウジング58を有する。スピンドルハウジング58には、Z軸方向に沿う円柱状のスピンドル60の一部が、回転可能な状態で収容されている。
【0053】
スピンドル60の上端部には、スピンドル60を回転させるためのサーボモーター62が連結されている。スピンドル60の下端部(一端部)は、スピンドルハウジング58から露出しており、この下端部には、ステンレス鋼等の金属材料で形成された円盤状のホイールマウント64の上面が固定されている。
【0054】
ホイールマウント64の下面には、ホイールマウント64と略同径に構成された環状の研削ホイール66が装着されている。
図2に示す様に、研削ホイール66は、ステンレス鋼等の金属材料で形成された環状のホイール基台68を有する。
【0055】
ホイール基台68の下面(一面)側には、当該下面の周方向に沿って複数の研削砥石70(即ち、砥石部)が離散的に配置されている。複数の研削砥石70の下面は、Z軸方向において略同じ高さ位置にあり、当該下面により被加工物11を研削する研削面70aが規定される。
【0056】
研削ホイール66を用いて、保持面14aで吸引保持された被加工物11が研削される。
図1に示す様に、被加工物11は、例えば、主として炭化ケイ素(SiC)で形成された直径約150mmの半導体ウェーハである。被加工物11の表面11a側には、IC(Integrated Circuit)等のデバイスが形成されている。
【0057】
但し、被加工物11は、炭化ケイ素以外の材料で形成されていてもよい。被加工物11は、ガリウムヒ素(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、シリコン(Si)、サファイア等で形成されていてもよい。
【0058】
被加工物11の表面11a側には、デバイスを保護する目的で保護テープ(不図示)が貼り付けられる。被加工物11の裏面11bを研削する場合には、表面11a側を保持面14aで吸引して保持する。このとき、被加工物11は保持面14aの形状に倣って変形する。
【0059】
研削時には、保持面14aの一部が研削面70aと平行になる様に、回転軸16が傾けられる。
図3(A)は、研削面70aと保持面14aの一部の領域14bとが略平行な状態で被加工物11を研削する様子を示す、チャックテーブル10等の一部断面側面図である。
図3(B)は、研削時のチャックテーブル10の上面図である。
【0060】
研削ホイール66とチャックテーブル10とを所定の方向(例えば、上面視で反時計周り)に回転させた状態で、研削ホイール66を研削送りする。これにより、被加工物11の裏面11bのうち、保持面14aの一部の領域14b上に位置する円弧状の一部の領域(即ち、一部の領域14bに重なる裏面11bの一部の領域)が、研削面70aに接触して研削される。
【0061】
図3(B)では、研削面70aと、被加工物11の裏面11bとの接触領域13(即ち、被研削領域)を円弧状の太い破線で示す。また、
図3(B)では、荷重測定器24aを破線の丸で示す。
【0062】
図3(B)の上面図に示す様に、接触領域13は、固定支持機構26aと第1可動支持機構26bとの間の直上に位置している。それゆえ、研削ホイール66で被加工物11を押圧すると、固定支持機構26aと第1可動支持機構26bとには、第2可動支持機構26cに比べて大きな荷重がかかる。
【0063】
図4は、支持機構にかかる荷重と支持機構の収縮量との対応関係の一例を示すグラフである。なお、
図4では、便宜上、各支持機構において当該対応関係は同じとしているが、当該対応関係は支持機構ごとに異なっていてもよい。当該対応関係は、例えば、デバイスが形成されていないテスト加工用のウェーハを研削することで取得できる。
【0064】
研削ホイール66を研削送りすると、被加工物11は研削ホイール66で押圧される。上述の様に、接触領域13は、固定支持機構26a及び第1可動支持機構26bの間の上方に位置するので、固定支持機構26a及び第1可動支持機構26bにかかる荷重(
図4に示すA
1)は、第2可動支持機構26cにかかる荷重(
図4に示すA
2)に比べて大きくなる。
【0065】
それゆえ、固定支持機構26a及び第1可動支持機構26bの収縮量(
図4に示すB
1)は、第2可動支持機構26cの収縮量(
図4に示すB
2)に比べて大きくなり、テーブルベース22が研削直前の状態から傾く。この様に、各支持機構の収縮量に起因してテーブルベース22の傾きが変化する。
【0066】
例えば、被加工物11が研削ホイール66で押圧されると、荷重により、固定支持機構26a及び第1可動支持機構26bがそれぞれZ軸方向に2μm収縮し、第2可動支持機構26cがZ軸方向に1μm収縮する。この場合、テーブルベース22は、研削直前の状態から変化して、第1の傾きとなる。
【0067】
また、例えば、荷重により、固定支持機構26aがZ軸方向に1μm収縮し、第1可動支持機構26bがZ軸方向に2μm収縮する場合、テーブルベース22は、研削直前の状態から変化して、第2の傾きとなる。この様に、テーブルベース22の傾き変化量は、各支持機構の収縮量に起因して異なる。
【0068】
そこで、研削中に生じるテーブルベース22の傾きの変化を調べるために、各支持機構にかかる荷重を上述の荷重測定器24aで測定する。測定した荷重に対応する情報は、制御装置72へ送られる(
図1参照)。
【0069】
制御装置72は、例えば、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサ等の処理装置と、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等の主記憶装置と、フラッシュメモリ、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ等の補助記憶装置と、を含むコンピュータによって構成されている。
【0070】
例えば、補助記憶装置に記憶されるソフトウェアに従い処理装置等を動作させることによって、制御装置72の機能が実現される。補助記憶装置の一部は、荷重測定器24aで検出した荷重と各支持機構の収縮量との対応関係(即ち、検出した荷重とテーブルベース22の傾き変化量との相関関係)を記憶する記憶部74としても機能する。荷重と各支持機構の収縮量との対応関係は、数式、テーブル等の形態で記憶部74に記憶される。
【0071】
但し、記憶部74は、制御装置72が有する読み取り装置(不図示)により情報が読み取られる記憶媒体であってもよい。当該記憶媒体は、例えば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、磁気抵抗メモリ等である。
【0072】
制御装置72は、各動作機構等を制御する制御部76を有する。制御部76は、X軸移動機構8、チャックテーブル10用の吸引源及び回転駆動源、傾き調整ユニット26、Z軸移動機構44、サーボモーター62等の動作を制御する。
【0073】
制御部76は、荷重測定器24aからの測定信号を受信した後、所定のタイミングで記憶部74にアクセスする。そして、制御部76は、記憶部74に記憶されている荷重と収縮量との対応関係から、荷重に対応する収縮量を読み出して又は収縮量を算出する。
【0074】
その後、制御部76は、研削面70aと保持面14aの一部の領域14bとが平行となる様に、傾き調整ユニット26における第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cの各々のパルスモーター32の動作を制御する。
【0075】
次に、
図3(A)及び
図5から
図8を用いて、研削装置2により被加工物11を研削する研削方法について説明する。なお、
図8は、第1の実施形態に係る研削方法のフロー図である。
【0076】
第1の実施形態に係る研削方法では、まず、保持面14aで表面11a側を保持した状態で、研削面70aと一部の領域14bとが平行となる様に、テーブルベース22の傾きを調整する(第1の傾き調整ステップ(S10))。
【0077】
第1の傾き調整ステップ(S10)の後、研削ユニット56をZ軸方向に沿って加工送りし、
図3(A)に示す様にテーブルベース22を傾けた状態で、研削ホイール66で裏面11b側を研削する(第1の研削ステップ(S20))。例えば、スピンドル60を4000rpmで、回転軸16を300rpmでそれぞれ回転させ、0.2μm/sの加工送り速度で研削ユニット56を加工送りする。
【0078】
第1の研削ステップ(S20)では、裏面11b側を研削すると共に、荷重検出ユニット24でテーブルベース22に係る荷重を検出する。研削が進むにつれて、サーボモーター62の負荷電流は変化しないが、研削ユニット56からチャックテーブル10にかかる荷重が増加する場合がある。
【0079】
この場合、裏面11b上で研削砥石70の滑りが生じており、スピンドル60の回転数は変化しないが、接触領域13にかかる荷重が増加する。接触領域13にかかる荷重が増加すると、固定支持機構26aと第1可動支持機構26bとには、第2可動支持機構26cに比べて大きな荷重がかかる。
【0080】
これにより、固定支持機構26a及び第1可動支持機構26bの収縮量は、第2可動支持機構26cの収縮量に比べて大きくなり、例えば、
図5に示す様に、研削面70aとテーブルベース22の上面とが略平行となる様に、テーブルベース22の傾きが変化する。
図5は、研削面70aとテーブルベース22の上面とが略平行となった状態を示すチャックテーブル10等の一部断面側面図である。
【0081】
テーブルベース22の上面が研削面70aと略平行な状態で研削を続けると、保持面14aが円錐状の凸面であることに起因して、被加工物11の中心部の厚さが減少する。中心部の厚さが減少する例を、実験例を用いて説明する。
【0082】
図6(A)は、研削荷重30Nで研削された被加工物11の裏面11b側の断面プロファイルであり、
図6(B)は、研削荷重60Nで研削された被加工物11の裏面11b側の断面プロファイルである。なお、
図6(A)及び
図6(B)での研削荷重は、チャックテーブル10にかかる荷重である。
【0083】
図6(A)及び
図6(B)において、横軸は、裏面11bの中心を通る被加工物11の断面での被加工物11の径方向の位置であり、縦軸は、研削装置2に設けられた厚さ測定ゲージで測定された裏面11b側の高さ(μm)である。なお、縦軸のゼロ点は、保持面14aから所定の高さに位置する。
【0084】
図6(A)に示す様に、研削荷重が30Nの場合には、被加工物11の外周部に比べて、中心部が高くなった。
図6(A)の断面プロファイルでは、裏面11b側の最高点と最低点との差が0.94μmであった。
【0085】
これに対して、
図6(B)に示す様に、研削荷重が60Nに上昇すると接触領域13直下の一部の領域14bが沈み込むことにより、
図6(A)に比べて中心部が低くなった。
図6(B)の断面プロファイルでは、裏面11b側の最高点と最低点との差が0.64μmであった。
【0086】
この様に、保持面14aへの荷重の増加と共に、被加工物11の中心部の厚さが減少した。これは、
図5に示す様に、研削面70aに対してテーブルベース22の上面が略水平になったことに起因すると考えられる。
【0087】
この様な中心部における厚さの部分的な減少を防ぐために、本実施形態では、第1の研削ステップ(S20)の後、第1の研削ステップ(S20)で検出した荷重に基づいて、テーブルベース22の傾きを調整する(第2の傾き調整ステップ(S30))。
【0088】
第2の傾き調整ステップ(S30)では、制御部76が、記憶部74に記憶された相関関係を利用して、第1の研削ステップ(S20)で検出した荷重に対応する各支持機構の収縮量を算出する又は読み出す。
【0089】
その後、制御部76は、テーブルベース22の傾き変化量を相殺する様に、パルスモーター32を制御して各支持機構の長さを相対的に調整する。これにより、テーブルベース22の傾きを調整し、第1の傾き調整ステップ(S10)時のテーブルベース22の傾きに戻す。
【0090】
例えば、荷重により、固定支持機構26a及び第1可動支持機構26bがそれぞれZ軸方向に2μm収縮し、第2可動支持機構26cがZ軸方向に1μm収縮する場合、パルスモーター32を動作させて第2可動支持機構26cを更にZ軸方向に1μm収縮させる。
【0091】
また、例えば、荷重により、固定支持機構26aがZ軸方向に1μm収縮し、第1可動支持機構26bがZ軸方向に2μm収縮する場合、第1可動支持機構26bをZ軸方向に1μm伸ばし、第2可動支持機構26cをZ軸方向に1μm収縮させる。
【0092】
なお、第2の傾き調整ステップ(S30)では、研削しながら、研削を止めた状態で、又は、研削ホイール66を被加工物11から離した状態で、第1可動支持機構26b及び第2可動支持機構26cのZ軸方向の長さを調整してよい。
【0093】
第2の傾き調整ステップ(S30)の後、第1の研削ステップ(S20)と同じ条件で裏面11b側を研削し、被加工物11を所定の仕上げ厚さとする(第2の研削ステップ(S40))。
【0094】
図7は、テーブルベース22の傾きを調整した後、被加工物11を研削する様子を示す図である。被加工物11が仕上げ厚さまで研削されると、裏面11b側は研削前に比べて例えば10μm除去される。
【0095】
本実施形態では、第1の研削ステップ(S20)で検出した荷重に応じて、第2の傾き調整ステップ(S30)で、傾き変化量を相殺する様にテーブルベース22の傾きを調整する。これにより、第2の傾き調整ステップ(S30)でテーブルベース22の傾きを調整しない場合に比べて、被加工物11の厚さばらつきの悪化を防止できる。
【0096】
ところで、荷重検出ユニット24で測定する荷重とテーブルベース22の傾きの変化量との相関関係は、各支持機構にかかる荷重と各支持機構の収縮量との対応関係に限定されない。例えば、当該相関関係は、各支持機構にかかる荷重と、テーブルベース22の上面の3次元的な傾きとの対応関係であってもよい。
【0097】
テーブルベース22の上面の3次元的な傾きは、例えば、画像を用いてテーブルベース22の傾きを自動的に検出するカメラ内蔵型変位センサ(不図示)、レーザー変位計、接触式変位センサ等を利用して特定できる。
【0098】
次に、
図9(A)、
図9(B)及び
図10を用いて第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、第2の傾き調整ステップ(S30)で調整されたテーブルベース22の傾きを利用して、1つの被加工物11と同様に別の被加工物11を研削する。
【0099】
第2の実施形態では、まず、第1の実施形態と同様に、1つの被加工物11に対して第1の傾き調整ステップ(S10)から第2の研削ステップ(S40)まで行う。その後、第2の研削ステップ(S40)の後、1つの被加工物11をチャックテーブル10から搬出する。
【0100】
そして、各可動支持機構の長さを第2の傾き調整ステップ(S30)で調整された長さにそれぞれ調整した状態のままで、別の被加工物11の表面11a側を、保持面14aで保持する。
【0101】
次いで、研削ホイール66を研削送りし、別の被加工物11の裏面11b側を研削する(第3の研削ステップ(S50))。
図9(A)は、別の被加工物11を研削する様子を示す図である。
【0102】
第2の実施形態では、第2の傾き調整ステップ(S30)で調整された各可動支持機構の長さをそのまま利用できるので、第3の研削ステップ(S50)での傾き調整ユニット26の調整が容易又は不要になる。
【0103】
第3の研削ステップ(S50)では、研削ホイール66で別の被加工物11を研削すると共に、テーブルベース22にかかる荷重を荷重検出ユニット24で検出する。そして、テーブルベース22が第2の傾き調整ステップ(S30)時の傾きから変化したならば、テーブルベース22の傾きを調整する(第3の傾き調整ステップ(S60))。
【0104】
なお、テーブルベース22が第2の傾き調整ステップ(S30)時の傾きから変化していないならば、第3の傾き調整ステップ(S60)を省略してもよい。第3の傾き調整ステップ(S60)でも、荷重とテーブルベース22の傾き変化量との相関関係が利用される。
【0105】
制御部76は、当該相関関係と第3の研削ステップ(S50)で検出した荷重とに基づいて、第3の研削ステップ(S50)で検出した荷重に対応するテーブルベース22の傾き変化量を相殺する様に傾き調整ユニット26を動作させて、テーブルベース22の傾きを調整する。これにより、被加工物11の厚さばらつきの悪化を防止できる。
【0106】
図9(B)は、第3の研削ステップ開始後にテーブルベース22の傾きを更に調整する様子を示す図である。第3の傾き調整ステップ(S60)の後、1つの被加工物11と同じ仕上げ厚さとなるまで別の被加工物11を研削する。なお、
図10は、第2の実施形態に係る研削方法のフロー図である。
【0107】
第2の実施形態でも、第3の傾き調整ステップ(S50)でテーブルベース22の傾きを調整しない場合に比べて、被加工物11の厚さばらつきの悪化を防止できる。その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。例えば、荷重測定器24aの数は、必ずしも3つには限定されず、4つ以上であってもよい。
【符号の説明】
【0108】
2 :研削装置
4 :基台
4a :開口
6 :支持構造
8 :X軸移動機構
8a :テーブルカバー
10 :チャックテーブル
11 :被加工物
11a :表面
11b :裏面
12 :枠体
13 :接触領域
14 :ポーラス板
14a :保持面
14b :領域
16 :回転軸
18 :ベアリング
20 :支持板
22 :テーブルベース
24 :荷重検出ユニット
24a :荷重測定器
26 :傾き調整ユニット
26a :固定支持機構
26b :第1可動支持機構
26c :第2可動支持機構
28 :支柱
30 :上部支持体
32 :パルスモーター
34 :ベアリング
36 :支持板
40 :防塵防滴カバー
42 :操作パネル
44 :Z軸移動機構
46 :Z軸ガイドレール
48 :Z軸移動プレート
50 :Z軸ボールネジ
52 :Z軸パルスモーター
54 :支持具
56 :研削ユニット
58 :スピンドルハウジング
60 :スピンドル
62 :サーボモーター
64 :ホイールマウント
66 :研削ホイール
68 :ホイール基台
70 :研削砥石
70a :研削面
72 :制御装置
74 :記憶部
76 :制御部