(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】ウエーハの処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240205BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240205BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H01L21/304 622J
H01L21/78 Q
H01L21/68 N
H01L21/78 M
(21)【出願番号】P 2019201191
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】陳 曄
【審査官】湯川 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-113395(JP,A)
【文献】特開2019-169727(JP,A)
【文献】特開2002-231854(JP,A)
【文献】特開2015-144263(JP,A)
【文献】特開2008-140940(JP,A)
【文献】米国特許第05650667(US,A)
【文献】特開2000-068401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起状の電極を備えたデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に複数形成され
、該表面には、合成樹脂からなるアンダーフィル材が被覆されることにより該電極が埋設された状態となっているウエーハの処理方法であって、
ウエーハの裏面をチャックテーブルの保持面に保持し該保持面と平行に旋回するバイトによって
アンダーフィル材と共に突起状の電極の頭
の一部を切削して高さを揃え
て平坦面を形成すると共に
該アンダーフィル材から金属面を露出させる切削工程と、
熱圧着シートをウエーハの表面に敷設する熱圧着シート敷設工程と、
熱圧着シートを加熱すると共に押圧して熱圧着する熱圧着工程と、
ウエーハを個々のデバイスチップに分割
する前に該熱圧着シートを剥離し、その後、個々のデバイスチップに分割して該電極を配線基板にボンディングす
る剥離工程と、
を含むウエーハの処理方法。
【請求項2】
該切削工程の後、該熱圧着工程を実施する前に該電極の頭に形成された金属面にメッキを形成するメッキ工程を含む請求項1に記載のウエーハの処理方法。
【請求項3】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートであり、
該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであり、
該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかである請求項1、又は2に記載のウエーハの処理方法。
【請求項4】
該熱圧着工程において熱圧着シートを加熱する際の加熱温度は、該熱圧着シートとしてポリエチレンシートが選択された場合は120℃~140℃であり、ポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃であり、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃であり、ポリエチレンテレフタレートシートが選択された場合は250℃~270℃であり、ポリエチレンナフタレートが選択された場合は160℃~180℃である請求項3に記載のウエーハの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突起状の電極を備えたデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に複数形成されたウエーハの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは研削装置によって裏面が研削されて所定の厚みに形成された後、ダイシング装置、レーザー加工装置等によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
また、突起状の電極を備えたデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に複数形成されたウエーハは、電極の頭の高さを揃えると共に表面の酸化膜や汚れを落とすために切削装置に搬送され、ウエーハの裏面がチャックテーブルの保持面に保持され、該保持面と平行に旋回するバイトによって突起状の電極(バンプ)の頭が切削される(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように切削装置に搬送されて突起状の電極の頭が切削されて高さが揃えられ金属面が露出したウエーハは、ボンディングに適した状態とはなるものの、必ずしも電極の頭が切削された後、すぐに個々のデバイスチップに分割されてボンディング工程に実施されるとは限らず、時間の経過と共に電極の該金属面に酸化膜が形成され、保管状況によっては汚れも付着してしまい、後工程のボンディングを阻害するという問題がある。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、突起状の電極の頭が切削された後に時間が経過しても、その後に実施されるボンディングを阻害しないウエーハの処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、突起状の電極を備えたデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に複数形成され、該表面には、合成樹脂からなるアンダーフィル材が被覆されることにより該電極が埋設された状態となっているウエーハの処理方法であって、ウエーハの裏面をチャックテーブルの保持面に保持し該保持面と平行に旋回するバイトによってアンダーフィル材と共に突起状の電極の頭の一部を切削して高さを揃えて平坦面を形成すると共に該アンダーフィル材から金属面を露出させる切削工程と、熱圧着シートをウエーハの表面に敷設する熱圧着シート敷設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に押圧して熱圧着する熱圧着工程と、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する前に該熱圧着シートを剥離し、その後、個々のデバイスチップに分割して該電極を配線基板にボンディングする剥離工程と、を含むウエーハの処理方法が提供される。
【0008】
該切削工程の後、該熱圧着工程を実施する前に該電極の頭に形成された金属面にメッキを形成するメッキ工程を含むことができる。
【0009】
該熱圧着シートは、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートであり、該ポリオレフィン系シートは、ポリエチレンシート、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかであり、該ポリエステル系シートは、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかであることが好ましい。さらに、熱圧着工程において熱圧着シートを加熱する際の加熱温度は、該熱圧着シートとしてポリエチレンシートが選択された場合は120℃~140℃とし、ポリプロピレンシートが選択された場合は160℃~180℃とし、ポリスチレンシートが選択された場合は220℃~240℃とし、ポリエチレンテレフタレートシートが選択された場合は250℃~270℃とし、ポリエチレンナフタレートが選択された場合は160℃~180℃とすることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のウエーハの加工方法は、突起状の電極を備えたデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に複数形成され、該表面には、合成樹脂からなるアンダーフィル材が被覆されることにより該電極が埋設された状態となっているウエーハの処理方法であって、ウエーハの裏面をチャックテーブルの保持面に保持し該保持面と平行に旋回するバイトによってアンダーフィル材と共に突起状の電極の頭の一部を切削して高さを揃えて平坦面を形成すると共に該アンダーフィル材から金属面を露出させる切削工程と、熱圧着シートをウエーハの表面に敷設する熱圧着シート敷設工程と、熱圧着シートを加熱すると共に押圧して熱圧着する熱圧着工程と、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する前に該熱圧着シートを剥離し、その後、個々のデバイスチップに分割して該電極を配線基板にボンディングする剥離工程と、を含んでいることから、電極の頭が切削された後、ウエーハが個々のデバイスチップに分割されボンディングされるまでの間、電極が外気から遮断されて、該電極の金属面が酸化したり、汚れたりすることがなく、ボンディングが阻害されるという問題が解消する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態の切削工程を実施するのに好適な切削装置の全体斜視図である。
【
図2】(a)切削工程の実施態様を示す平面図及び一部拡大断面図、(b)切削工程後のウエーハの平面図及び一部拡大断面図である。
【
図3】熱圧着シート敷設工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図4】(a)熱圧着工程の実施態様を示す斜視図、(b)(a)に示すウエーハ10の一部拡大断面図、(c)(b)の別実施形態の一部拡大断面図である。
【
図5】外周除去工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図6】裏面研削工程の実施態様を示す斜視図である。
【
図7】(a)剥離工程の実施態様を示す斜視図、(b)分割工程の実施態様を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明のウエーハの処理方法に係る実施形態について添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0013】
図1には、本実施形態の切削工程を実施するのに好適な切削装置1の全体斜視図が示されている。切削装置1は、装置ハウジング2を備えている。装置ハウジング2は、略直方体形状の主部21と、主部21の後端部(
図1において右上端)に設けられ実質上鉛直に上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール312、312が設けられている。この一対の案内レール312、312に切削手段としての切削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0014】
切削ユニット3は、移動基台31と移動基台31に装着されたスピンドルユニット32を備えている。移動基台31は、上記した一対の案内レール312、312と摺動可能に係合する被案内溝が形成されている。直立壁22に設けられた一対の案内レール312、312に摺動可能に装着された移動基台31の前面には支持部材313が装着され、この支持部材313にスピンドルユニット32が取り付けられる。
【0015】
スピンドルユニット32は、支持部材313に装着されたスピンドルハウジング321と、スピンドルハウジング321に回転自在に配設された回転スピンドル322と、回転スピンドル322を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ323とを備えている。回転スピンドル322の下端部はスピンドルハウジング321の下端を越えて下方に突出させられ、その下端部には円板形状のバイト工具装着部材324が設けられている。
【0016】
バイト工具装着部材324には、回転軸芯から偏芯した外周部の一部に上下方向に貫通するバイト取り付け穴324aが設けられている。バイト取り付け孔324aにバイト工具33を構成するバイト331を挿入し、バイト工具装着部材324の側方に形成された雌ねじ穴から締め付けボルト330を螺合して締め付け固定する。なお、バイト331は、図示の実施形態においては超鋼合金等の工具鋼によって棒状に形成され、バイト331の下方先端部には、ダイヤモンド等で形成された切れ刃が備えられている。このように構成されバイト工具装着部材324に装着されるバイト工具33は、上記回転スピンドル322が回転することにより、バイト工具装着部材324と共に矢印R1で示す方向に回転させられる。
【0017】
図示の切削装置1は、切削ユニット3を上記一対の案内レール312、312に沿って上下方向(矢印Zで示す方向)に移動させる切り込み送り機構4を備えている。この切り込み送り機構4は、直立壁22の前側に配設され実質上鉛直に延びる雄ねじロッド41を備えている。この雄ねじロッド41は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材によって回転自在に支持されている。雄ねじロッド41の上端部には、直立壁22に固定された雄ねじロッド41を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ44が配設されており、このパルスモータ44の出力軸が雄ねじロッド41に連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部に形成された雌ねじ穴に上記雄ねじロッド41が螺合させられている。従って、パルスモータ44が正転すると移動基台31と共に切削ユニット3が下降させられ、パルスモータ44が逆転すると移動基台31と共に切削ユニット3が上昇させられる。
【0018】
ハウジング2の主部21の上面にはチャックテーブル機構5が配設されている。チャックテーブル機構5は、回転自在に配設された円板形状のチャックテーブル52を含んでいる。チャックテーブル52の上面には、通気性を有する吸着チャック52aによって保持面が構成されており、図示しない吸引源に接続されて、該吸引源を作動させることで、該保持面に負圧を作用させる。チャックテーブル機構5は、主部21の内部に収容された図示しない移動機構を備えており、矢印X1で示す方向においてチャックテーブル52をカバー部材54と共に移動させることができ、チャックテーブル52が
図1において位置付けられている被加工物搬入・搬出領域と、スピンドルユニット32の下方における加工領域との間で往復移動させることができる。
【0019】
図1に示された切削装置1は、概ね以上のように構成されており、以下に、上記した切削装置1を使用して実施される本実施形態のウエーハの加工方法における切削工程について説明する。
【0020】
本実施形態における被加工物は、例えば、
図1に示すように、複数個のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面10aに形成された半導体からなるウエーハ10である。図中上方にウエーハ10の一部を拡大して示すように、デバイス12には、それぞれ複数個の突起状の電極120が形成されている。
【0021】
図2(a)には、切削加工が施される前であって、被加工物搬入・搬出領域に位置付けられたチャックテーブル52上に載置され吸引保持された状態のウエーハ10と、バイト工具装着部材324とが、それぞれ平面図で示されている。
図2(a)のウエーハ10の下方に、ウエーハ10の一部拡大断面図を示す。図に示すように、各デバイス12が形成されたウエーハ10の表面には合成樹脂からなるアンダーフィル材16が被覆され、デバイス12に形成された突起状の電極120が埋設された状態となっている。
【0022】
チャックテーブル52上にウエーハ10が吸引保持されたならば、
図1に基づいて説明したスピンドルユニット32のサーボモータ323を駆動して、バイト工具装着部材324を矢印R1で示す方向に回転させ、且つ切り込み送り機構4を作動して、ウエーハ10上のアンダーフィル材16及び電極120の頭の一部を切削する所定の高さに下降させる。図示しない移動手段を作動してチャックテーブル機構5を、
図2に矢印X1で示す方向に移動し、ウエーハ10を保持したチャックテーブル52をバイト工具装着部材324の下方の加工領域を通過させる。このようにしてウエーハ10を保持したチャックテーブル52が加工領域を通過することにより、
図2(b)の上方に示すように、ウエーハ10がチャックテーブル52の保持面と平行に旋回するバイト331によって切削される。その結果、
図2(b)の下方に示すように、突起状の電極120の頭の高さが揃えられて金属面122が形成されると共に、同時に切削されたアンダーフィル材16の表面に露出される。以上により切削工程が完了する。
【0023】
上記したように、切削工程を施したならば、次いで、熱圧着シート敷設工程を実施する。
図3を参照しながら、以下に、熱圧着シート敷設工程について説明する。
【0024】
熱圧着シート敷設工程を実施するに際し、切削工程により切削加工が施されたウエー10を、
図3に示す熱圧着装置70(一部のみ示している)に搬送する。熱圧着装置70には、吸引テーブル72が備えられ、吸引テーブル72の上面には、通気性を有する吸着チャック74が構成されている。熱圧着装置70に搬送されたウエーハ10は、吸着チャック74の中央に、裏面10b側を下方に向けて載置される。次いで、
図3の最下段に示すように、熱圧着シート60を、少なくとも吸着チャック74の全体を覆う様に上方から敷設する。なお、熱圧着シート60は、少なくとも吸着チャック74の外径よりも大きい寸法で設定され、好ましくは、
図3に示すように、チャックテーブル72の外径よりも僅かに小さい寸法に設定される。
【0025】
熱圧着シート60は、ポリオレフィン系シート、又はポリエステル系シートが好適である。ポリオレフィン系シートを採用する場合は、ポリエチレン(PE)シート、ポリプロピレン(PP)シート、ポリスチレン(PS)シートのいずれかから選択され、ポリエステル系シートを採用する場合は、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート、ポリエチレンナフタレート(PEN)シート、のいずれかから選択されることが好ましい。なお、本実施形態においては、熱圧着シート60として、ポリエチレンシートが選択されているものとして以下に説明する。なお、熱圧着シート60のウエーハ10と対向する貼着面には糊層は形成されていない。以上により熱圧着シート敷設工程が完了する。
【0026】
上記したように熱圧着シート敷設工程を実施したならば、次いで、熱圧着工程を実施する。
図4を参照しながら、以下に、熱圧着工程について説明する。
【0027】
上記したように、吸引テーブル72上に熱圧着シート60を敷設したならば、図示しない吸引源を作動して、吸引テーブル72に負圧Vmを作用させて、吸着チャック74上に載置されたウエーハ10、及び熱圧着シート60を吸引する。次いで、
図4(a)に示すように、熱圧着シート60上に、熱圧着手段80(一部のみを示している)を位置付ける。熱圧着手段80は、回転軸82を中心に矢印R2で示す方向に回転可能に保持された加熱ローラ84を備える。加熱ローラ84の表面には、熱圧着シート60が加熱されて粘着力を発揮しても付着しないように、フッ素樹脂がコーティングされている。加熱ローラ84の内部には、電気ヒータ及び温度センサが内蔵(図示は省略する)されており、別途用意される制御装置によって、加熱ローラ84の表面が所望の温度に調整される。
【0028】
熱圧着手段80を熱圧着シート60上に位置付けたならば、熱圧着シート60を加熱ローラ84で加熱しながら押圧し、
図4(a)に示すように、加熱ローラ84を矢印R2で示す方向に回転させながら、熱圧着シート60の表面に沿って矢印R3で示す方向に移動させる。加熱ローラ84によって熱圧着シート60を加熱する際の加熱温度は、120℃~140℃の範囲に設定される。この加熱温度は、熱圧着シート40を構成するポリエチレンシートの融点近傍の温度であり、熱圧着シート60が過度に溶融せず、且つ軟化して粘着性を発揮する温度である。熱圧着シート60が押圧される際には、上記したように吸引テーブル72を介して吸着チャック74上に負圧Vmが作用しており、ウエーハ10の表面10aと熱圧着シート60との間に残存していた空気が完全に吸引除去されて、
図4(b)に示すように、ウエーハ10上において電極120の金属面122が露出した面と熱圧着シート60とが密着して熱圧着され、ウエーハ10の表面が外気と遮断された状態で一体とされる。以上により、熱圧着工程が完了する。
【0029】
本実施形態では、ウエーハ10に対して熱圧着シート60が熱圧着されていることにより、デバイス12に形成されている突起状の電極120の金属面122が直接外気に触れることが回避され、熱圧着シート60を剥離するまでの間、電極120の金属面122に酸化膜が形成されることが抑制される。加えて、熱圧着シート60が熱圧着されていることにより、デバイス12の電極120の金属面122に直接汚れが付着したりすることも防止される。
【0030】
なお、本発明は、上記した実施形態には限定されず、例えば、上記した切削工程の後、熱圧着工程を実施する前のいずれかのタイミングで、
図4(c)に示すように、切削後の各電極120の金属面122に対してメッキ工程(例えば電
解メッキ法等)を施し、メッキ18を形成してもよい。このようにすることで、追って実施されるボンディングの際に配線基板との間で確実に回路が形成され、ボンディングが阻害されることがより抑制される。
【0031】
上記した熱圧着工程が実施されたならば、好ましくは、
図5に示すように、熱圧着シート60がウエーハ10からはみ出す外周領域60aを除去する外周除去工程を実施する。この外周除去工程は、例えば、図に示す切削手段90(一部のみを示している)を使用して実施される。切削手段90は、スピンドルユニット92を備え、スピンドルユニット92によって回転スピンドル94が支持されており、回転スピンドル94の先端部に円盤状の切削ブレード96が装着されている。スピンドルユニット92の後端部には、図示しない駆動モータが配設されており、回転スピンドル94と共に切削ブレード96を矢印R4で示す方向に所望の回転速度で回転駆動する。
【0032】
外周除去工程を実施するには、
図5に示すように、吸引テーブル72を、切削手段90の下方に位置付け、熱圧着シート60において、ウエーハ10から外側にはみ出す外周領域と、その内側領域との境界に切削ブレード96を位置付け、切削ブレード96を矢印R4の方向に回転させると共に上方から熱圧着シート60の厚さだけ切り込み送りし、吸引テーブル72を矢印R5で示す方向に回転させて、ウエーハ10の外周に沿って切削溝62(太線で示す)を形成する。切削溝62をウエーハ10の外周に沿って全周に形成したならば、熱圧着シート60の外周領域が内側領域から切り離されて除去される。熱圧着シート60の外周領域が除去されたならば、吸引テーブル72に負圧Vmを作用させていた図示しない吸引源を停止する。この結果、
図5に示すように、熱圧着シート60と一体にされたウエーハ10が熱圧着装置70から搬出される。
【0033】
上記したように、熱圧着工程、及び必要に応じて実施される外周除去工程を実施したならば、熱圧着シート60と一体にされたウエーハ10を所望の厚さに加工すべく、裏面研削工程を施してもよい。裏面研削工程を実施するには、
図6に示すように、熱圧着シート60と一体にされたウエーハ10を研削装置100に搬送する。
【0034】
図6に示す研削装置100(一部のみ示されている)に搬送されたウエーハ10は、表面10a側に貼着された熱圧着シート60側が下方になるように反転されて、研削装置100のチャックテーブル110上に載置される。チャックテーブル110の上面には、図示しない吸引手段に接続された通気性を有する吸着面が配設されており、該吸引手段を作動させることで、チャックテーブル110上にウエーハ10が吸引保持される。研削装置100は、チャックテーブル110に加え、図示しない電動モータによって回転させられるホイールマウント102と、ホイールマウント102の下面に装着される研削ホイール104と、研削ホイール104の下面に環状に配設された複数の研削砥石106とを備えている。
【0035】
ウエーハ10をチャックテーブル110上に吸引保持したならば、
図6に示すように、研削ホイール102を図中矢印R6で示す方向に、例えば6000rpmで回転させ、チャックテーブル110を矢印R7で示す方向に例えば300rpmで回転させ、これと同時に、図示しない研削送り手段を作動して、研削砥石106をウエーハ10の裏面10bの上方から接触させ、例えば1μm/秒の研削送り速度で、矢印Z1で示す方向に研削送りする。この際、図示しない測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら研削を進めて、ウエーハ10を所望の厚さに研削する。以上により、裏面研削工程が完了する。なお、本実施形態では、上記したように、ウエーハ10の表面10aに予め熱圧着シート60を貼着しており、この熱圧着テープ60が貼着された面をチャックテーブル110上に載置して吸引保持することから、上記した裏面研削工程を実施するに際して改めて保護テープ等を貼着する必要がない。
【0036】
上記したように、熱圧着シート60と一体にされたウエーハ10は、ウエーハ10上に形成されたデバイス12を個々のデバイスチップに分割して所定の配線基板上にボンディングする。よって、デバイス12の電極120を配線基板にボンディングする際に、ウエーハ10を個々のデバイスチップに分割するための分割工程が実施される。
【0037】
分割工程を実施するに際しては、
図7(a)に示すように、環状のフレームFを用意し、ウエーハ10を収容可能な開口部の中央にウエーハ10の表面10a側を上方に向けて位置付けて、ウエーハ10を粘着テープTに貼着させると共にフレームFに保持させる。このようにしてフレームFに粘着テープTを介してウエーハ10を保持させた後、分割工程を実施する前に、
図7(a)に示すように、熱圧着シート60を剥離する。熱圧着シート60をウエーハ10の表面10aから剥離したならば、
図7(b)に示す切削装置140(一部のみを示す)に搬送する。
【0038】
切削装置140は、図示を省略するチャックテーブルを備えると共に、スピンドルユニット142を備えている。スピンドルユニット142は、回転スピンドル144を回転自在に支持しており、回転スピンドル144の先端部には円盤状の切削ブレード146が装着されている。スピンドルユニット142の後端部には、図示しない駆動モータが配設されており、回転スピンドル144と共に切削ブレード146を矢印R8で示す方向に所望の回転速度で回転駆動する。該チャックテーブルは図示しない移動手段により、矢印Xで示すX軸方向に移動させることが可能に構成され、スピンドルユニット142は、図示しない移動手段により、X軸方向と直交する矢印Yで示すY軸方向、並びに、X軸方向及びY軸方向と直交する上下方向に移動可能に構成されている。
【0039】
切削装置140に搬送されたウエーハ10を、フレームFと共に該チャックテーブルに載置して保持し、図示しないアライメント手段により、ウエーハ10の被切削位置(分割予定ライン14)を検出する(アライメント)。該アライメントを実施することにより得た位置情報に基づき、切削ブレード146の先端部を、所定の加工開始位置に位置付けてウエーハ10を切断する深さに位置付ける。切削ブレード146を前記加工開始位置に位置付けたならば、ウエーハ10を保持する該チャックテーブルを、ウエーハ10の分割予定ライン14に沿うようにX軸方向に移動して、ウエーハ10を個々のデバイスに分割するための分割溝130を形成する。さらに、スピンドルユニット142をY軸方向に適宜割り出し送りしながら、該所定の方向に平行な、残余の分割予定ライン14に沿って分割溝130を形成する。そして、該所定の方向に沿った全ての分割予定ライン14に対して分割溝130を形成したならば、該チャックテーブルを90度回転して、該所定の方向に直交する方向に形成された全ての分割予定ライン14に沿って、ウエーハ10を切断する分割溝130を形成する。以上により、ウエーハ10に形成されていた複数のデバイス12がウエーハ10から個々に分割されて、デバイスチップとなる。個々のデバイスチップとされたデバイス12は、ボンディング工程に搬送されて、適宜配線基板にボンディングされる。
【0040】
本実施形態によれば、ウエーハ10を個々のデバイスチップに分割して配線基板にボンディングするまでの間、熱圧着シート60がウエーハ10の表面10aに熱圧着されるため、デバイス12上に露出した電極120の金属面122が外気と遮断される。したがって、電極120の金属面122上に酸化膜が形成されたり、汚れたりすることがなく、ボンディングが阻害されることが防止される。さらに、ボンディングを実施するに際して熱圧着シート60をウエーハ10から剥離することから、デバイス12上の電極120にバリが残っていたとしても、熱圧着シート60と共に除去される。
【0041】
なお、上記した実施形態では、分割工程を実施するに際して、熱圧着シート60をウエーハ10の表面10aから剥離したが、分割工程を実施した後に、個々に分割されたデバイスチップをすぐに配線基板にボンディングせず、ボンディングするまで時間ある場合は、ウエーハ10上に熱圧着シート60が貼着された状態でデバイス12を個々のデバイスチップに分割し、その後、配線基板に対してデバイスチップをボンディングする際に、デバイスチップから熱圧着シート60を剥離するようにしてもよい。
【0042】
また、上記した実施形態では、熱圧着シート60をポリエチレンシートとしたが、本発明はこれに限定されず、ポリオレフィン系のシート、又はポリエステル系のシートから適宜選択することができる。
【0043】
熱圧着シート60を、ポリオレフィン系のシートから選択する場合、上記した実施形態において選択されたポリエチレンシートの他に、ポリプロピレンシート、ポリスチレンシートのいずれかから選択することができる。
【0044】
熱圧着シート60としてポリプロピレンシートを選択した場合は、上記した熱圧着工程を実施する際の加熱温度を160℃~180℃とすることが好ましい。また、熱圧着シート60としてポリスチレンシートを選択した場合は、熱圧着工程を実施する際の加熱温度を220℃~240℃とすることが好ましい。
【0045】
さらに、熱圧着シート60を、ポリエステル系のシートから選択する場合には、ポリエチレンテレフタレートシート、ポリエチレンナフタレートシートのいずれかから選択することができる。
【0046】
熱圧着シート60としてポリエチレンテレフタレートシートを選択した場合は、熱圧着工程を実施する際の加熱温度を250℃~270℃とすることが好ましい。また、熱圧着シート60としてポリエチレンナフタレートシートを選択した場合は、熱圧着工程を実施する際の加熱温度を160℃~180℃とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1:切削装置
2:装置ハウジング
21:主部
22:直立壁
3:切削ユニット
31:移動基台
312:案内レール
32:スピンドルユニット
322:回転スピンドル
323:サーボモータ
324:バイト工具装着部材
33:バイト工具
331:バイト
4:切込み送り機構
41:雄ねじロッド
44:パルスモータ
5:チャックテーブル機構
52:チャックテーブル
52a:吸着チャック
10:ウエーハ
12:デバイス
120:電極
122:金属面
14:分割予定ライン
16:アンダーフィル
60:熱圧着シート
70:熱圧着装置
72:吸引テーブル
74:吸着チャック
80:熱圧着手段
82:回転軸
84:加熱ローラ
90:切削手段
96:切削ブレード
100:研削装置
104:研削ホイール
106:研削砥石
110:チャックテーブル
130:分割溝
140:切削装置
146:切削ブレード