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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】パッケージおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/02 20060101AFI20240205BHJP
   H01L 23/08 20060101ALI20240205BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20240205BHJP
   H03H 3/02 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
H01L23/02 C
H01L23/08 C
H03H9/02 A
H03H3/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020106036
(22)【出願日】2020-06-19
(65)【公開番号】P2022000876
(43)【公開日】2022-01-04
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】西川 勝裕
(72)【発明者】
【氏名】松岡 浩介
(72)【発明者】
【氏名】河口 英世
(72)【発明者】
【氏名】長廣 雅則
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-152585(JP,A)
【文献】特開2007-027592(JP,A)
【文献】特開2012-174814(JP,A)
【文献】特開2014-229866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/02
H01L 23/08
H03H 9/02
H03H 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティが設けられたパッケージであって、
前記キャビティの底面をなす基板部分と、厚み方向において前記基板部分に積層され、前記基板部分に面する第1面と前記第1面と反対の第2面と前記キャビティを囲む第3面とを有する枠部分と、を含み、セラミックからなる基部と、
前記枠部分の前記第3面上に配置された枠配線部と、
を備え、前記枠配線部は、
前記第2面と同一平面上にある面を有する非金属部分と、
前記第1面と前記第2面とをつなぎ、前記非金属部分によって前記キャビティから隔てられた導体部分と、
を含み、前記導体部分は、前記厚み方向に垂直な面内方向において、仮想的な第1楕円の外周部に欠損部分を有する断面形状を有している、パッケージ。
【請求項2】
前記非金属部分はセラミックからなる、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記導体部分の前記欠損部分は、前記第1楕円に対して、仮想的な第2楕円が重なる部分である、請求項1または2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記第2楕円は円である、請求項3に記載のパッケージ。
【請求項5】
平面レイアウトにおいて、前記非金属部分の形状は、前記第2楕円の一部からなる凸部と、前記キャビティの角部をなす凹部と、によって構成される三日月形である、請求項3または4に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記第1楕円は円である、請求項1からのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記導体部分に電気的に接続され、前記基板部分中に設けられたビア電極をさらに備え、前記ビア電極は前記面内方向において、楕円の断面形状を有している、請求項1からのいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項8】
キャビティが設けられたパッケージの製造方法であって、
前記キャビティの底面をなす基板部分と、厚み方向において前記基板部分に積層され、前記基板部分に面する第1面と前記第1面と反対の第2面と前記キャビティを囲む第3面とを有する枠部分と、を含み、セラミックからなる基部と、
前記枠部分の前記第3面上に配置された枠配線部と、
を備え、前記枠配線部は、
非金属部分と、
前記第1面と前記第2面とをつなぎ、前記非金属部分によって前記キャビティから隔てられた導体部分と、
を含み、前記導体部分は、前記厚み方向に垂直な面内方向において、仮想的な第1楕円の外周部に欠損部分を有する断面形状を有しており、前記欠損部分は、前記第1楕円に対して、仮想的な第2楕円が重なる部分であり、
前記製造方法は、
焼成されることによって前記枠部分となる部分を含むグリーンシートを形成する工程と、
前記グリーンシートに、前記第1楕円に対応する形状を有する第1穴を形成する工程と、
前記第1穴を導体ペーストで埋める工程と、
前記グリーンシートと、前記導体ペーストで埋められた前記第1穴と、にまたがり、前記第2楕円に対応する形状を有する第2穴を形成する工程と、
前記第2穴をセラミックペーストで埋める工程と、
を備える、パッケージの製造方法。
【請求項9】
前記非金属部分は、前記第2面と同一平面上にある面を有している、請求項8に記載のパッケージの製造方法。
【請求項10】
平面レイアウトにおいて、前記非金属部分の形状は、前記第2楕円の一部からなる凸部と、前記キャビティの角部をなす凹部と、によって構成される三日月形である、請求項8または9に記載のパッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージおよびその製造方法に関し、特に、キャビティが設けられたパッケージおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な水晶振動子は、水晶ブランクと、水晶ブランクが収められるキャビティを有するパッケージと、キャビティを封止するための蓋とを有している。パッケージは、キャビティの底面をなす基板部分と、キャビティを囲む枠部分と、この枠部分上に設けられたメタライズ層とを有している。メタライズ層に蓋が接合材を用いて接合される。接合材は、典型的にはAu-Sn系のろう材である。ろう材を用いた接合工程において、キャビティ内への接合材の意図しない流れ込みによって、接合材が水晶ブランクに接触することがある。この接触は水晶振動子の性能に悪影響を及ぼす。よってキャビティ内への接合材の流れ込みを抑える技術が求められている。たとえば特開2006-294743号公報に開示された技術によれば、蓋の、Au-Sn系ろう材が融着される面の表面粗さが、特定の範囲内とされる。これにより、ろう材の流れが安定化され、よって、不規則な流れに起因してろう材がパッケージ内へ流れ込むことが抑制される旨が、当該公報において主張されている。
【0003】
パッケージの枠部分上のメタライズ層は、通常、接地電位用の電極パッドに電気的に短絡されている。ここで、パッケージの小型化の進展にともなって枠部分の材料幅(枠部分の内周面と外周面との間の寸法)が小さくなってきており、その結果、枠部分にビア電極を形成することが困難となってきている。そこで、たとえば特開2007-27592号公報に開示された技術によれば、ビア電極に代わって、キャビティの側壁に、略三日月状の形状を有するキャスタレーション電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-294743号公報
【文献】特開2007-27592号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らの検討によれば、特開2006-294743号公報の技術だけでは、ろう材のキャビティ中への流れ込みを十分に抑制することができないことがある。特に、パッケージサイズが小さいことを勘案して、特開2007-27592号公報の技術のようにビア電極に代わってキャスタレーション電極がキャビティの側壁に設けられている場合、ろう材を用いた接合工程において、ろう材がキャビティ中へキャスタレーション電極に沿って流れ込みやすい。流れ込んだろう材と水晶ブランクとが接触することによって、上述したように、水晶振動子の性能に悪影響が生じることがある。なお、ろう材の流れ込みによる機械的特性への悪影響は、パッケージに実装される素子が水晶ブランクの場合に特に懸念されるが、他の圧電素子の場合にも生じることがある。さらに、パッケージに実装される素子が電気的素子である限り、たとえば意図しない短絡のような、電気的特性への悪影響が懸念される。
【0006】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、キャビティ中へのろう材の流れ込みを抑制することができる小型パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のパッケージにはキャビティが設けられている。パッケージは、セラミックからなる基部と、枠配線部とを有している。基部は基板部分と枠部分とを含む。基板部分はキャビティの底面をなす。枠部分は厚み方向において基板部分に積層されている。枠部分は、基板部分に面する第1面と、第1面と反対の第2面と、キャビティを囲む第3面とを有している。枠配線部は枠部分の第3面上に配置されている。枠配線部は、非金属部分と、導体部分とを含む。導体部分は、第1面と第2面とをつないでおり、非金属部分によってキャビティから隔てられている。導体部分は、厚み方向に垂直な面内方向において、仮想的な第1楕円の外周部に欠損部分を有する断面形状を有している。
【0008】
なお本明細書においては、幾何学上の定義に沿って、円は楕円の一種であるとみなす。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、枠部分の第1面と第2面とを電気的に接続する導体部分はパッケージの面内方向において、仮想的な第1楕円の外周部に欠損部分を有する断面形状を有しており、これにより、導体部分が欠損部分のない円形の断面形状を有している場合に比して、枠部分が薄くても容易に形成しやすい。また、導体部分が非金属部分によってキャビティから隔てられており、これにより、導体部分に沿ってのキャビティ中へのろう材の流れ込みが防止される。以上から、小型パッケージのキャビティ中へのろう材の流れ込みを抑制することができる。
【0010】
この発明の目的、特徴、局面、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態1における水晶振動子の構成を概略的に示す平面図である。
図2図1の線II-IIに沿う概略的な断面図である。
図3図1の水晶振動子の製造方法の一工程を概略的に示す平面図である。
図4図3の線IV-IVに沿う概略的な断面図である。
図5】本発明の実施の形態1におけるパッケージの構成を概略的に示す平面図である。
図6図5の線VI-VIに沿う概略的な断面図である。
図7図5におけるメタライズ層および枠部分の図示を省略した平面図である。
図8図7における基板部分およびビア電極を、パッケージ電極パッドを破線で示しつつ、概略的に示す平面図である。
図9図5における枠部分上のメタライズ層の図示を省略した平面図である。
図10図9の線X-Xに沿う概略的な断面図である。
図11図9の一部拡大図である。
図12】本発明の実施の形態1におけるパッケージの製造方法を概略的に示すフロー図である。
図13図12のステップST120を概略的に示す部分平面図である。
図14図12のステップST130を概略的に示す部分平面図である。
図15図12のステップST140を概略的に示す部分平面図である。
図16図12のステップST150を概略的に示す部分平面図である。
図17図12のステップST160を概略的に示す部分平面図である。
図18図12のステップST200を概略的に示す部分断面図である。
図19】第1比較例における水晶振動子の構成を示す部分断面図である。
図20】第2比較例におけるパッケージの構成を図11と同様の視野で示す部分平面図である。
図21】第3比較例におけるパッケージの構成を図11と同様の視野で示す部分平面図である。
図22】本発明の実施の形態2におけるパッケージの構成を図11と同様の視野で概略的に示す部分平面図である。
図23】本発明の実施の形態3におけるパッケージの製造方法を概略的に示すフロー図である。
図24図23のステップST160を概略的に示す部分平面図である。
図25】本発明の実施の形態4におけるパッケージの構成を水晶ブランクと共に概略的に示す平面図である。
図26図25の線XXVI-XXVIに沿う概略的な断面図である。
図27】実施例におけるパッケージを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
<実施の形態1>
図1は、本実施の形態1における水晶振動子900(電気的部品)の構成を概略的に示す平面図である。図2は、図1の線II-IIに沿う概略的な断面図である。図3は、水晶振動子900(図1)の製造方法における、水晶ブランク890(電気的素子)が実装された直後の構成を概略的に示す平面図である。図4は、図3の線IV-IVに沿う概略的な断面図である。
【0014】
水晶振動子900は、パッケージ701と、水晶ブランク890と、ろう材960と、蓋980とを有している。パッケージ701にはキャビティCVが設けられている。水晶ブランク890は、キャビティCV内に収められており、パッケージ701の素子電極パッド211および素子電極パッド212の上に実装されている。蓋980は、ろう材960によってパッケージ701のメタライズ層600に接合されており、これによりキャビティCVが封止されている。ろう材960は、典型的には、金を含む合金からなることが好ましく、たとえば、金およびスズを含む合金、言い換えればAu-Sn系合金、からなる。蓋980は、金属からなり、例えば、鉄およびニッケルを含む合金からなる。なお本明細書において、合金は金属の一種とみなす。
【0015】
メタライズ層600は、例えば、モリブデンおよびタングステンの少なくともいずれかを含む金属からなる。メタライズ層600の表面(ろう材960に面する面)には、めっき層が設けられていてよく、典型的には金めっき層が設けられている。また金めっき層の下地としてニッケルめっき層が設けられていてよい。本実施の形態においては、パッケージ701の枠部分(セラミック部分)に直接設けられたメタライズ層600と、蓋980との間が、ろう材960のみによって接合されている。
【0016】
図5は、パッケージ701の構成を概略的に示す平面図である。図6は、図5の線VI-VIに沿う概略的な断面図である。パッケージ701は、基部100と、素子電極パッド211と、素子電極パッド212と、パッケージ電極パッド301~304とを有している。また詳しくは後述するが、パッケージ701は、基部100に設けられた、電気的配線のための構成を有している。
【0017】
基部100は、セラミックからなり、好ましくは酸化物を主成分として有しており、より好ましくはアルミナを主成分として有しており、例えば実質的にアルミナからなる。基部100は基板部分110と枠部分120とを含む。基板部分110はキャビティCVの底面をなす。枠部分120は厚み方向(図6における縦方向)において基板部分110に積層されている。枠部分120は、基板部分110に面する下面SF1(第1面)と、上面SF2(第1面と反対の第2面)と、キャビティCVを囲む内周面SF3(第3面)とを有している。内周面SF3はキャビティCVの側壁をなす。
【0018】
素子電極パッド211および素子電極パッド212(図5)はキャビティCVに面して基部100(図6)に配置されている。具体的には、素子電極パッド211および素子電極パッド212は、基板部分110(図6)の上面(キャビティCVに面する面)上に配置されている。パッケージ電極パッド301~304(図5)はキャビティCV外において基部100(図6)に配置されている。具体的には、パッケージ電極パッド301~304は、基板部分110(図6)の下面(キャビティCVに面する面とは反対の面)上に配置されている。
【0019】
中継電極220(図5)は、基板部分110(図6)の、キャビティCVに面する面上に配置されている。中継電極220は、図5に示されているように、枠部分120に覆われた部分と、枠部分120には覆われずにキャビティCVの底面に配置された部分とを有している。よって中継電極220は枠部分120に部分的にのみ覆われている。
【0020】
図7は、メタライズ層600(図5)および枠部分120(図6)の図示を省略した平面図である。図8は、図7における基板部分110およびビア電極411~414を、パッケージ電極パッド301~304を破線で示しつつ、概略的に示す平面図である。
【0021】
基部100の基板部分110にはその上面近傍において配線層401~403が埋め込まれている。配線層401は素子電極パッド211に接触しており、配線層402は素子電極パッド212に接触しており、配線層403は中継電極220に接触している。これらの接触を阻害しない範囲で配線層401~403は、基板部分110の一部としての絶縁膜110i(図10参照)に被覆されていてよく、特に素子電極パッド211と配線層403との間は、絶縁膜110iによって絶縁されている。
【0022】
パッケージ701は、基部100の基板部分110中に埋め込まれたビア電極411~414を有している。ビア電極411~414は面内方向において、好ましくは楕円の断面形状を有しており、より好ましくは円形の断面形状を有している。ビア電極411は配線層402とパッケージ電極パッド301とを互いに接続している。ビア電極412は配線層403とパッケージ電極パッド302とを互いに接続している。ビア電極413は配線層401とパッケージ電極パッド303とを互いに接続している。ビア電極414は配線層403とパッケージ電極パッド304とを互いに接続している。
【0023】
以上の構成から、素子電極パッド211はパッケージ電極パッド303に電気的に接続されており、素子電極パッド212はパッケージ電極パッド301に電気的に接続されており、中継電極220はパッケージ電極パッド302およびパッケージ電極パッド304に電気的に接続されている。
【0024】
図9は、図5におけるメタライズ層600の図示を省略した平面図である。図10は、図9の線X-Xに沿う概略的な断面図である。
【0025】
パッケージ701は、枠配線部500を有している。枠配線部500は、枠部分120の内周面SF3上に配置されており、好ましくは、図9に示されているように、内周面SF3の角部に配置されている。枠配線部500は、非金属部分510と、導体部分520とを含む。
【0026】
導体部分520は下面SF1と上面SF2とをつないでいる。導体部分520の、下面SF1に近い端部は、中継電極220に接している。前述したように、中継電極220は配線層403に接触しており、配線層403にはビア電極412およびビア電極414が接続されている。よってビア電極412およびビア電極414は、導体部分520に電気的に接続されている。さらに、導体部分520の、上面SF2に近い端部は、メタライズ層600に接している。よってメタライズ層600は、ビア電極412およびビア電極414のそれぞれを介して、パッケージ電極パッド302およびパッケージ電極パッド304に電気的に接続されている。
【0027】
導体部分520は、非金属部分510によってキャビティCVから隔てられている。導体部分520および非金属部分510は、枠部分120の上面SF2とほぼ同一平面上にある面を有しており、メタライズ層600(図11)は当該面上にも設けられている。非金属部分510は、本実施の形態においてはセラミックからなり、好ましくは酸化物を主成分として有しており、より好ましくはアルミナを主成分として有しており、例えば実質的にアルミナからなる。
【0028】
図11は、図9の一部拡大図である。導体部分520は、厚み方向に垂直な面内方向において、仮想的な第1楕円EP1の外周部に欠損部分LCを有する断面形状を有している。第1楕円EP1に対する欠損部分LCの面積割合は、2%以上96%以下であることが好ましい。第1楕円EP1に対する欠損部分LCの面積割合が、2%未満では非金属部分510を設けることが困難になり、96%を超えると導体部分520における断線リスクが高まる。導体部分520の断面形状は、本実施の形態においては、図11に示すように三日月形状である。
【0029】
好ましくは、導体部分520の欠損部分LCは、第1楕円EP1に対して、仮想的な第2楕円EP2が重なる部分である。好ましくは第1楕円EP1の離心率は1未満である。より好ましくは、第1楕円EP1の離心率は実質的にゼロであり、言い換えれば第1楕円EP1は実質的に円である。好ましくは第2楕円EP2の離心率は1未満である。より好ましくは、第2楕円EP2の離心率は実質的にゼロであり、言い換えれば第2楕円EP2は実質的に円である。図11においては、第1楕円EP1および第2楕円EP2の各々が円である場合について例示されている。
【0030】
図11に示された平面レイアウトにおいて、仮想線IMは、第1楕円EP1の中心C1と、第2楕円EP2の中心C2とを通っている。この平面レイアウトにおいて、キャビティCVは、枠配線部500が設けられた角部を有しており、当該角部へ向かってキャビティCVの縁は第1直線部(図中、縦方向の直線部)および第2直線部(図中、横方向の直線部)を有しており、第1直線部と第2直線部との仮想的な交点C4は仮想線IM上にあることが好ましい。キャビティCVの上記角部の曲率半径の中心C3は仮想線IM上にあることが好ましい。枠部分120の外縁は角部を有しており、当該角部へ向かって枠部分120の縁は第3直線部(図中、縦方向の直線部)および第4直線部(図中、横方向の直線部)を有しおり、第3直線部と第4直線部との仮想的な交点C5は仮想線IM上にあることが好ましい。仮想線IM上において、第1楕円EP1の中心C1に対し、欠損部分LCは枠部分120の外縁の角部ではなくキャビティCVの角部の側に位置している。このため、導体部分520がキャビティCVへ露出することなく第1楕円EP1をキャビティCVの角部に近づけることができる。その結果、導体部分520と枠部分120の外縁との距離が大きくなり、その部分の機械的強度を高めることができる。
【0031】
材料幅WDは、枠部分120の、導体部分520から十分離れた箇所での、面内方向における内周面SF3と外周面(内周面SFの反対面)との間の最小寸法として定義される。パッケージ701は小型パッケージであり、よって材料幅WDは比較的小さく、たとえば、20μm以上110μm以下である。第1楕円EP1の長軸方向における大きさ(第1楕円EP1が円の場合は直径の大きさ)は、たとえば、材料幅WDの5%以上80%以下である。第1楕円EP1の長軸方向における大きさ(第1楕円EP1が円の場合は直径の大きさ)が、材料幅WDの5%未満では非金属部分510を形成することが困難になり、80%を超えると枠部分120の端部までの幅が狭くなり強度が持たない。
【0032】
なお第1楕円EP1の形状は、幾何学的に厳密な楕円形状から、製造誤差に起因して若干異なっていてもよい。また第2楕円EP2の形状は、幾何学的に厳密な楕円形状から、製造誤差に起因して若干異なっていてもよい。これら製造誤差は、たとえば、後述する製造方法における打ち抜き加工の誤差に起因する。
【0033】
図12は、本実施の形態1におけるパッケージ701の製造方法を概略的に示すフロー図である。
【0034】
図13を参照して、ステッST110にて、焼成されることによって枠部分120となる部分を含むグリーンシート120Gが形成される。ステップST120にて、グリーンシート120Gに、第1楕円EP1(図11)に対応する形状を有する第1穴HL1が、打ち抜き工程によって形成される。図14を参照して、ステップST130にて、第1穴HL1が導体ペースト520Gで埋められる。
【0035】
図15を参照して、ステップST140にて、グリーンシート120Gと、導体ペースト520Gで埋められた第1穴HL1と、にまたがり、第2楕円EP2(図11)に対応する形状を有する第2穴HL2が、打ち抜き工程によって形成される。図16を参照して、ステップST150にて、第2穴HL2がセラミックペースト510Gで埋められる。
【0036】
図17を参照して、ステップST160にて、キャビティCV(図11)となる第3穴HL3が、打ち抜き工程によって形成される。
【0037】
図18を参照して、ステップST170にて、メタライズ層600(図10)となる上面ペースト層600Gが形成される。なおステップST170が行われるタイミングは、ステップST150とステップST300との間の任意のタイミングであってよい。
【0038】
以上により、枠部分グリーン体120Sが形成される(図12:ステップS100)。基板部分グリーン体110Sが形成される。基板部分グリーン体110Sは、パッケージ701(図10)のうち、枠部分グリーン体120Sに対応する部分以外の部分に対応するグリーン体である。ステップST200にて、枠部分グリーン体120Sと基板部分グリーン体110Sとが積層される。それによって得られた積層体が、ステップST300にて焼成される。その後、必要に応じて、めっき工程が行われる(図12において図示せず)。これによりパッケージ701が得られる。
【0039】
図19は、第1比較例における水晶振動子991の構成を示す部分断面図である。水晶振動子991のパッケージ791は、本実施の形態1のパッケージ701(図10)とは異なり、非金属部分510を有していない。よって、キャビティCV内において導体部分520が露出されている。この場合、ろう材960によって蓋980が接合される際に、図中破線矢印で示されているように、ろう材960が導体部分520に沿ってキャビティCV内へ流れ込みやすい。流れ込んだろう材960が水晶ブランク890と接触すると、水晶振動子991の性能(たとえば周波数精度)に悪影響を及ぼす。
【0040】
図20は、第2比較例におけるパッケージ792の構成を図11と同様の視野で示す部分平面図である。パッケージ792においては、導体部分520の断面形状が円であり、欠損部分LC(図11)は設けられていない。この場合、導体部分520周辺において枠部分120の強度が確保しにくくなる。また、製造における導体部分520の配置誤差に起因して、導体部分520がキャビティCVへ露出してしまいやすい。また導体部分520と枠部分120の外周面との距離DSを小さくしにくいことから、図中破線矢印で示す経路でリークパスが形成されやすい。
【0041】
図21は、第3比較例におけるパッケージ793の構成を図11と同様の視野で示す部分平面図である。パッケージ792(図20:第2比較例)の場合に比して、パッケージ793の導体部分520は小さなサイズを有している。これにより、上述した、第2比較例の短所が回避される。しかしながら、材料幅WDが小さい場合、それと比較して十分に小さい導体部分520を形成するためには、高度な加工技術が求められる。その結果、製造コストが増大してしまう。また、導体部分520のサイズが過小であることに起因して、導体部分520の電気抵抗が過大となり、よって導体部分520の、配線としての機能が、不十分となりやすい。
【0042】
本パッケージ701によれば、枠部分120の下面SF1と上面SF2とを電気的に接続する導体部分520(図11)はパッケージ701の面内方向において、仮想的な第1楕円EP1の外周部に欠損部分LCを有する断面形状を有しており、これにより、導体部分520が欠損部分LCのない円形の断面形状を有している場合に比して、枠部分120が薄くても容易に形成しやすい。また、導体部分520が非金属部分510によってキャビティCVから隔てられている。これにより、第1比較例(図19)とは異なり、導体部分520に沿ってのキャビティCV中へのろう材960(図2)の流れ込みが防止される。以上から、小型パッケージ701のキャビティCV中へのろう材の流れ込みを抑制することができる。
【0043】
導体部分520の欠損部分LC(図11)は、第1楕円EP1に対して、仮想的な第2楕円EP2が重なる部分である。これにより、導体部分520の形状を、第1楕円EP1の形状での暫定的な形成後に、第2楕円EP2に含まれる領域を除去することによって、容易に得ることができる。
【0044】
第1楕円EP1が円である場合、導体部分520の形状を、より容易に得ることができる。第2楕円EP2が円である場合、導体部分520の形状を、より容易に得ることができる。
【0045】
非金属部分510はセラミックからなる。これにより、非金属部分510と基部100とが共にセラミックからなる。よって、非金属部分510と基部100とを、共通のセラミック焼成工程によって形成することができる。その結果、非金属部分510が枠部分120から剥離することを低減できる。
【0046】
ビア電極411~414(図7)は、面内方向において薄い部分である枠部分120(図9)ではなく、面内方向において比較的十分な広がりを有する基板部分110(図9)に形成されている。よって、枠配線部500の導体部分520(図9)とは異なり、サイズの制約が小さい。よってビア電極411~414は、導体部分520とは異なり、面内方向において単純に楕円の形状を有していてよい。
【0047】
本製造方法によれば、キャビティCV中へのろう材の流れ込みを抑制することができる小型パッケージ701を、容易に製造することができる。第1穴HL1および第2穴HL2が共に楕円形状を有している場合、第1穴HL1および第2穴HL2の加工が特に容易となる。たとえば、打ち抜き工程を金属ピンで行う場合は、グリーンシートにクラック不良が生じにくくなる。また打ち抜き工程をレーザー照射で行う場合、楕円形状は最も形成しやすい形状である。さらに、第1穴HL1および第2穴HL2が同一形状を有している場合、第1穴HL1の加工技術と第2穴HL2の加工技術とが同様のものであってよいことから、これらの加工がより容易となる。
【0048】
<実施の形態2>
図22は、本実施の形態2におけるパッケージ702の構成を図10と同様の視野で概略的に示す部分平面図である。パッケージ701の形状を例示した図11においては第1楕円EP1が円として描かれているが、前述した実施の形態1でも述べたように第1楕円EP1は必ずしも円である必要はなく、本実施の形態においては第1楕円EP1は、円ではなく、よって長軸ALおよび短軸ASを有している。図示されているように、短軸ASを含む直線はキャビティCVに重なる一方で、長軸ALを含む直線はキャビティCVから離れていることが好ましい。さらに、短軸ASは、前述した仮想線IM(図11参照)と重なっていることが好ましい。
【0049】
なお図22においては第2楕円EP2が円として描かれているが、変形例として、第2楕円EP2も円でなくてよい。この場合における第2楕円EP2の好適な配置は、上述した第1楕円EP1の好適な配置と同様である。他の変形例として、第1楕円EP1が円であり、かつ第2楕円EP2が円でないレイアウトが用いられてもよい。
【0050】
<実施の形態3>
前述した実施の形態1においては、非金属部分510(図9および図10)がセラミックからなるが、本実施の形態3においては非金属部分510が樹脂からなる。図23は、本実施の形態3におけるパッケージの製造方法を概略的に示すフロー図である。図24を参照して、本実施の形態3においては、ステップST100において、ステップST150(図12)が行わることなくステップST160が行われる。その後、ステップST300の後のステップST400にて、第2穴HL2が樹脂で埋められることによって非金属部分510が形成される。なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1または2の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0051】
<実施の形態4>
図25は、本実施の形態4におけるパッケージ704の構成を水晶ブランク890と共に概略的に示す平面図である。図26は、図25の線XXVI-XXVIに沿う概略的な断面図である。
【0052】
パッケージ704は、キャビティCVに面して基部100上に突起部290を有している。突起部290の周りにおいて基部100は平坦面を有しており、突起部290は当該平坦面から突出している。突起部290の厚み(図26における寸法)は、30μm以下であることが好ましい。突起部290は絶縁体からなり、好ましくはセラミックからなり、より好ましくは酸化物を主成分として有しており、さらに好ましくはアルミナを主成分として有しており、例えば実質的にアルミナからなる。
【0053】
図示された例においては、内周面SF3の平面レイアウトは、角部における面取りを無視すれば、4つの辺を有する矩形形状を有している。図中、突起部290は4つの辺のうち右辺に最も近く配置されている。素子電極パッド211および素子電極パッド212は、右辺からは遠く離れて配置されている。言い換えれば、素子電極パッド211および素子電極パッド212は、右辺に比して左辺に近く配置されている。枠配線部500は、右辺につながる角部である右下角部に配置されている。
【0054】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1~3の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0055】
本実施の形態によれば、水晶ブランク890の一方端部が素子電極パッド211および素子電極パッド212によって支持されている際に、水晶ブランク890の他方端部を突起部290によって一時的または恒常的に支持することができる。よって、水晶ブランク890が意図せず基板部分110に接触することが避けられる。よって、当該接触が水晶振動子の性能に悪影響を及ぼすことが避けられる。
【0056】
(実施例)
上述した実施の形態1に基づき、図27の写真に示すパッケージ701を作製した。このパッケージ701において、第1楕円EP1および第2楕円EP2(図11)は、直径60μmの円とした。よって、導体部分520の断面形状は、図11に示すように三日月形状であった。また、材料幅WD(図11)は、85μmとした。
【0057】
上記パッケージ701に水晶ブランク890が実装された。続いて、パッケージ701のメタライズ層600に、ろう材960によって蓋980を取り付けた。その後、パッケージ701の内部を観察したところ、ろう材960はキャビティCV中へほとんど流れ込んでいなかった。この理由は、導体部分520(図11参照)が非金属部分510(図27)によってキャビティCVから隔てられていたので、ろう材960が導体部分520に沿って流れることが避けられたためと考えられる。
【0058】
この発明は詳細に説明されたが、上記した説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【符号の説明】
【0059】
100 :基部
110 :基板部分
120 :枠部分
211,212 :素子電極パッド
220 :中継電極
290 :突起部
301~304 :パッケージ電極パッド
401~403 :配線層
411~414 :ビア電極
500 :枠配線部
510 :非金属部分
520 :導体部分
600 :メタライズ層
701,702,704:パッケージ
890 :水晶ブランク
900 :水晶振動子
960 :ろう材
980 :蓋
991 :水晶振動子
図1
図2
図3
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図5
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