(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-02
(45)【発行日】2024-02-13
(54)【発明の名称】安定剤組成物、これを含有する塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体
(51)【国際特許分類】
C09K 15/06 20060101AFI20240205BHJP
C09K 15/32 20060101ALI20240205BHJP
C09K 15/08 20060101ALI20240205BHJP
C09K 15/18 20060101ALI20240205BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20240205BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20240205BHJP
C08K 5/098 20060101ALI20240205BHJP
【FI】
C09K15/06
C09K15/32 Z
C09K15/32 C
C09K15/08
C09K15/18
C08L27/06
C08L63/00 Z
C08K5/098
(21)【出願番号】P 2020571192
(86)(22)【出願日】2020-02-03
(86)【国際出願番号】 JP2020003982
(87)【国際公開番号】W WO2020162414
(87)【国際公開日】2020-08-13
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019018292
(32)【優先日】2019-02-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100096714
【氏名又は名称】本多 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124121
【氏名又は名称】杉本 由美子
(74)【代理人】
【識別番号】100176566
【氏名又は名称】渡耒 巧
(74)【代理人】
【識別番号】100180253
【氏名又は名称】大田黒 隆
(72)【発明者】
【氏名】宇野 翔太
(72)【発明者】
【氏名】原田 庸平
(72)【発明者】
【氏名】石塚 勇人
(72)【発明者】
【氏名】田中 一暢
(72)【発明者】
【氏名】西村 大
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-332748(JP,A)
【文献】特開平04-202452(JP,A)
【文献】特開昭52-072746(JP,A)
【文献】特開昭59-020342(JP,A)
【文献】特公昭45-030577(JP,B1)
【文献】特表2008-524366(JP,A)
【文献】特開2015-000880(JP,A)
【文献】特公昭42-003314(JP,B1)
【文献】特開平04-332746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K15/00-15/34
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分100質量部に対して、(B)成分を5~2500質量部含有する安定剤組成物であって、
(A)成分が、有機酸の亜鉛塩の1種以上、
(B)成分が、グリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物の1種以上、
であ
り、
前記有機酸が、芳香族カルボン酸であることを特徴とする安定剤組成物。
【請求項2】
(A)成分100質量部に対して、(C)成分として、β-ジケトン化合物の1種以上を5~300質量部含有する請求項1記載の安定剤組成物。
【請求項3】
(A)成分100質量部に対して、(D)成分として、亜リン酸エステル化合物の1種以上を5~700質量部含有する請求項1または2記載の安定剤組成物。
【請求項4】
(A)成分100質量部に対して、(E)成分として、フェノール系酸化防止剤の1種以上を5~200質量部含有する請求項1~3のうちいずれか1項記載の安定剤組成物。
【請求項5】
(A)成分100質量部に対して、(F)成分として、糖アルコールの1種以上を1~1000質量部含有する請求項1~4のうちいずれか1項記載の安定剤組成物。
【請求項6】
(A)成分100質量部に対して、(G)成分として、ヒンダードアミン系光安定剤の1種以上を5~200質量部含有する請求項1~5のうちいずれか1項記載の安定剤組成物。
【請求項7】
(B)成分のエポキシ化合物のオキシラン酸素濃度が、3.0~15.0質量%の範囲内である請求項1~6のうちいずれか1項記載の安定剤組成物。
【請求項8】
有機スズ系化合物を含有しない請求項1~7のうちいずれか1項記載の安定剤組成物。
【請求項9】
透明製品用である請求項1~8のうちいずれか1項記載の安定剤組成物。
【請求項10】
塩化ビニル系樹脂と、請求項1~9のうちいずれか1項記載の安定剤組成物と、を含有することを特徴とする塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項11】
前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記安定剤組成物が0.3~15.0質量部である請求項10記載の塩化ビニル系樹脂組成物。
【請求項12】
請求項10または11記載の塩化ビニル系樹脂組成物から得られることを特徴とする成形体。
【請求項13】
厚さ6mmにおけるHaze値が、20.0以下である請求項12記載の成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定剤組成物、これを含有する塩化ビニル系樹脂組成物(以下、単に「組成物」および「樹脂組成物」とも称す)およびその成形体に関し、詳しくは、塩化ビニル系樹脂に優れた熱安定性、耐着色性、耐熱着色性等を付与することができ、さらに塩化ビニル系樹脂を透明性が必要とされる用途に使用する場合、塩化ビニル系樹脂に優れた透明性を付与することができる安定剤組成物、これを含有する塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル系樹脂は難燃性、耐薬品性、機械的安定性、透明性、接着性、印刷性等に優れ、また、可塑剤を添加することにより硬質から軟質まで容易に硬さを変えられることから、様々な用途で用いられている。特に可塑剤を全く含有しない硬質、或いは少量の可塑剤を含有する半硬質の塩化ビニル系樹脂組成物は剛性に優れるため、建材等に広く使用されている。したがって、それらは高温高圧に曝される加工時はもとより、成形品としても、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性、耐候性等において、より高度な性能が要求される。
【0003】
また、硬質透明成形品の場合には、ガラス様の透明性が必要とされる容器類、工業板、化粧板、フィルムやシート等にも使用され、非常に汎用性の高い樹脂となっている。一方、塩化ビニル系樹脂は光や熱に対する安定性が不十分であることに加え、加熱成型加工時や製品の使用時に、主として脱ハロゲン化水素に起因する分解を起こしやすいという欠点を有していることが知られている。
【0004】
以上のような性能要求を満たし、欠点を改善するために、従来から、有機酸の金属塩、有機スズ化合物、有機ホスファイト化合物、エポキシ化植物油、β-ジケトン化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の種々の安定剤を配合して、塩化ビニル系樹脂の安定性を改善することが試みられている(特許文献1および2)。このような安定剤としては、従来、鉛、カドミウム等の重金属系安定剤が、コスト面の優位性等の観点から使用されてきた。また、透明性を高めることができる安定剤として、スズ系の安定剤が提案されている(特許文献3および4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平8-183891号公報
【文献】特開平10-158449号公報
【文献】特開平7-62181号公報
【文献】特開2008-1840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、環境問題への関心が高まり、重金属等の毒性や環境に対する影響が問題となっている。これにともない、バリウム-亜鉛系の複合系安定剤やハイドロタルサイト亜鉛系の安定剤が使用されるようになっている。しかしながら、これらの安定剤を使用した場合、成形加工時に成形体に発泡等の成形不良が起こるおそれや、成形体が応力白化する問題を有していた。また、スズも、環境に与える影響や毒性の観点から好ましくない。さらに、多くのスズ系安定剤は液状であるため、これを用いた場合には、成形加工時における溶融樹脂の滑性が低下するだけでなく、成形体の熱変形温度(軟化点)が低下するという問題があった。このように、鉛、カドミウム、スズ系の安定剤を使用することなく、塩化ビニル樹脂組成物の、加熱や加工、使用に伴う品質低下を防止する技術が求められている。
【0007】
そこで、本発明の目的は、塩化ビニル系樹脂に優れた熱安定性、耐着色性、耐熱着色性等を付与することができ、さらに塩化ビニル系樹脂を透明性が必要とされる用途に使用する場合、塩化ビニル系樹脂に優れた透明性を付与することができる安定剤組成物、これを含有する塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記組成を有する組成物が、塩化ビニル系樹脂に優れた熱安定性、耐着色性、耐熱着色性等を付与することができ、さらに、塩化ビニル系樹脂に優れた透明性を付与することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の安定剤組成物は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を5~2500質量部含有する安定剤組成物であって、
(A)成分が、有機酸の亜鉛塩の1種以上、
(B)成分が、グリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物の1種以上、
であることを特徴とするものである。
【0010】
本発明の組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(C)成分として、β-ジケトン化合物の1種以上を5~300質量部含有することが好ましい。また、本発明の組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(D)成分として、亜リン酸エステル化合物の1種以上を5~700質量部含有することが好ましい。さらに、本発明の組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(E)成分として、フェノール系酸化防止剤の1種以上を5~200質量部含有することが好ましい。さらにまた、本発明の組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(F)成分として、糖アルコールの1種以上を1~1000質量部含有することが好ましい。また、本発明の組成物においては、(A)成分100質量部に対して、(G)成分として、ヒンダードアミン系光安定剤の1種以上を5~200質量部含有することが好ましい。さらに、本発明の組成物においては、(B)成分のエポキシ化合物のオキシラン酸素濃度が、3.0~15.0質量%の範囲内であることが好ましい。さらにまた、本発明の組成物においては、有機スズ系化合物を含有しないことが好ましい。本発明の組成物は、透明製品用の塩化ビニル系樹脂として好適に用いることができる。
【0011】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、本発明の安定剤組成物と、を含有することを特徴とするものである。
【0012】
本発明の樹脂組成物においては、前記塩化ビニル系樹脂100質量部に対し、前記安定剤組成物が0.3~15.0質量部であることが好ましい。
【0013】
本発明の成形体は、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物から得られることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の成形体としては、厚さ6mmにおけるHaze値が、20.0以下であるものが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、塩化ビニル系樹脂に優れた熱安定性、耐着色性、耐熱着色性等を付与することができ、さらに塩化ビニル系樹脂を透明性が必要とされる用途に使用する場合、塩化ビニル系樹脂に優れた透明性を付与することができる安定剤組成物、これを含有する塩化ビニル系樹脂組成物およびその成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<1.安定剤組成物>
まず、本発明の安定剤組成物について説明する。本発明の組成物は、(A)成分100質量部に対して、(B)成分を5~2500質量部含有する組成物であって、(A)成分は、有機酸の亜鉛塩の1種以上、(B)成分は、グリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物の1種以上である。
【0017】
<(A)成分>
本発明の組成物の(A)成分は、有機酸の亜鉛塩の1種以上である。かかる有機酸の亜鉛塩としては、有機カルボン酸、フェノール類または有機リン酸類等の亜鉛塩が挙げられる。
【0018】
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2-エチルヘキシル酸(オクチル酸)、ネオデカン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、イソウンデシル酸、ラウリン酸、イソラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、バーサチック酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、o-トルイル酸、m-トルイル酸、p-トルイル酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、2,4-ジメチル安息香酸、3,5-ジメチル安息香酸、2,4,6-トリメチル安息香酸、エチル安息香酸、2-エチル安息香酸、3-エチル安息香酸、4-エチル安息香酸、2,4,6-トリエチル安息香酸、4-イソプロピル安息香酸、n-プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p-第三オクチルサリチル酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エレオステアリン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リシノール酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等の1価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヒドロキシフタル酸、クロルフタル酸、アミノフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸等の2価カルボン酸或いはこれらのモノエステルまたはモノアマイド化合物;ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の3価または4価カルボン酸のジまたはトリエステル化合物が挙げられる。
【0019】
フェノール類としては、例えば、第三ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、n-ブチルフェノール、イソアミルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、イソオクチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、第三オクチルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクタデシルフェノール、ジイソブチルフェノール、メチルプロピルフェノール、ジアミルフェノール、メチルイソヘキシルフェノール、メチル第三オクチルフェノール等が挙げられる。
【0020】
有機リン酸類としては、例えば、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ-(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステル等が挙げられる。
【0021】
本発明の組成物の(A)成分である有機酸の亜鉛塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩或いは塩基性塩の塩基の一部または全部を炭酸で中和した過塩基性錯体であってもよい。また、本発明の組成物の(A)成分である有機酸の亜鉛塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸による亜鉛塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価の亜鉛と塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価の亜鉛と塩を形成していてもよい。
【0022】
(A)成分の有機酸の亜鉛塩は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、有機カルボン酸の亜鉛塩が好ましく、安息香酸亜鉛、トルイル酸亜鉛、4-tert-ブチル安息香酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、バーサチック酸亜鉛、オクチル酸亜鉛、オレイン酸亜鉛、パルミチン亜鉛、ミリスチン亜鉛が好ましい。これらの中でも、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、芳香族カルボン酸の亜鉛塩がより好ましく、具体的には、安息香酸亜鉛、トルイル酸亜鉛、4-tert-ブチル安息香酸亜鉛がより好ましい。また、透明性を要する用途においては、芳香族カルボン酸の亜鉛塩が好ましく、具体的には安息香酸亜鉛、トルイル酸亜鉛、4-tert-ブチル安息香酸亜鉛がより好ましい。なお、(A)成分の有機酸の亜鉛塩は、1種のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0023】
<(B)成分>
本発明の組成物の(B)成分は、グリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物の1種以上である。
【0024】
グリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ピロカテコール、フロログルクシノール等の単核多価フェノール化合物のポリグリシジルエーテル化合物またはジグリシジルエーテル化合物;ジヒドロキシナフタレン、ビフェノール、メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、メチレンビス(オルトクレゾール)、エチリデンビスフェノール、イソプロピリデンビスフェノール(ビスフェノールA)、水素添加ビスフェノールA、イソプロピリデンビス(オルトクレゾール)、テトラブロモビスフェノールA、1,3-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,4-ビス(4-ヒドロキシクミルベンゼン)、1,1,3-トリス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,2,2-テトラ(4-ヒドロキシフェニル)エタン、チオビスフェノール、スルホビスフェノール、オキシビスフェノール、フェノールノボラック、オルソクレゾールノボラック、エチルフェノールノボラック、ブチルフェノールノボラック、オクチルフェノールノボラック、レゾルシンノボラック、テルペンフェノール等の多核多価フェノール化合物のポリグリジルエーテル化合物またはジグリシジルエーテル化合物;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリグリコール、チオジグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ビスフェノールA-エチレンオキシド付加物、ジシクロペンタジエンジメタノール等の多価アルコール類のポリグリシジルエーテルまたはジグリシジルエーテル;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、コハク酸、グルタル酸、スベリン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、トリマー酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸等の脂肪族、芳香族または脂環族多塩基酸のグリシジルエステル類およびポリグリシジルメタクリレート等のグリシジルメタクリレートの単独重合体または共重合体等が挙げられる。
【0025】
さらにグリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物の例を挙げると、n-ブチルグリシジルエーテル、C12~C14のアルキルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテル、p-sec-ブチルフェニルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、および3級カルボン酸グリシジルエステル等が挙げられ、さらには、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられ、さらには、例えば、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、およびグリセリントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0026】
(B)成分のグリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、グリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物が好ましく、グリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、炭素原子数12~13のアルキルグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルが好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルがより好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルがさらにより好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルがさらにより好ましい。
【0027】
また、透明性を要する用途において、透明性については、グリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物が好ましく、グリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルが好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、クレジルグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルがより好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルがさらにより好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテルがさらにより好ましく、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテルが最も好ましい。
【0028】
熱安定性、耐着色性、耐熱着色性、さらに透明性、これらすべてを考慮した場合、グリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物が好ましく、グリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2-フェニルフェノールグリシジルエーテルが好ましく、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテルがより好ましく、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテルが最も好ましい。
【0029】
(B)成分のエポキシ化合物は、その構造中の、グリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基の数は、一つでも、二つ以上でもよい。また、(B)成分のエポキシ化合物は、1種のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0030】
(B)成分の、グリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物は、例えば、フェノール性水酸基またはアルコール性水酸基を有する化合物とエピクロロヒドリンを反応させることで得ることができる。もちろん市販品を使用してもよい。また(B)成分の、グリシジルエステル基を有する化合物は、例えば、カルボキシル基を有する化合物とエピクロロヒドリンを反応させることで得ることができる。もちろん市販品を使用してもよい。
【0031】
ちなみに、従来、塩化ビニル系樹脂の安定剤や可塑剤として使用されている、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油等のエポキシ化植物油は、構造中に、グリシジルエーテル基、グリシジルエステル基のいずれをも含まないため、本発明の(B)成分のグリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物には含まれない。本発明の組成物においては、エポキシ化植物油とは、植物油脂の二重結合を酸化してオキシラン環を形成せしめたものであるため、その構造中にグリシジルエーテル基、グリシジルエステル基のいずれをも含まないものである。
【0032】
(B)成分のグリシジルエーテル基および/またはグリシジルエステル基を有するエポキシ化合物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性、さらには透明性を要する用途の透明性の点から、そのオキシラン酸素濃度が、3.0~15.0質量%の範囲内であることが好ましく、4.0~14.0質量%の範囲内であることがより好ましく、5.0~13.0質量%の範囲内であることがさらに好ましく、6.0~12.0質量%の範囲内であることが特に好ましく、7.0~11.0質量%の範囲内であることが最も好ましい。
【0033】
なお、本発明の組成物において、オキシラン酸素濃度は、ASTMD1652-11e1に準拠して測定されたものである。
【0034】
本発明の組成物中の(B)成分の含有量は、(A)成分の有機酸の亜鉛塩の100質量部に対して、5~2500質量部であり、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性、さらには透明性を要する用途の透明性の点から、10質量部以上が好ましく、50質量部以上がより好ましく、100質量部以上がさらに好ましく、150質量部以上がさらに好ましく、200質量部以上がさらに好ましく、250質量部以上が特に好ましく、300質量部が最も好ましい。上限については、2500質量部以上だと効果とコストの観点から好ましくなく、好ましくは2000質量部以下であり、より好ましくは1400質量部以下であり、800質量部以下がさらに好ましい。
【0035】
<(C)成分>
本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、さらに(C)成分として、β-ジケトン化合物の1種以上を、(A)成分の100質量部に対し、5~300質量部含有することが好ましく、10~250質量部含有することがより好ましく、20~200質量部含有することがさらにより好ましい。
【0036】
(C)成分のβ-ジケトン化合物としては、例えば、アセチルアセトン、トリアセチルメタン、2,4,6-ヘプタトリオン、ブタノイルアセチルメタン、ラウロイルアセチルメタン、パルミトイルアセチルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、パルミトイルベンゾイルメタン、ジステアロイルメタン、ステアロイルアセチルメタン、フェニルアセチルアセチルメタン、ジシクロヘキシルカルボニルメタン、ベンゾイルホルミルメタン、ベンゾイルアセチルメタン、ジベンゾイルメタン、オクチルベンゾイルメタン、ビス(4-オクチルベンゾイル)メタン、ベンゾイルジアセチルメタン、4-メトキシベンゾイルベンゾイルメタン、ビス(4-カルボキシメチルベンゾイル)メタン、2-カルボキシメチルベンゾイルアセチルオクチルメタン、デヒドロ酢酸、アセト酢酸エチル、シクロヘキサン-1,3-ジオン、3,6-ジメチル-2,4-ジオキシシクロヘキサン-1カルボン酸メチル、2-アセチルシクロヘキサノン、ジメドン、2-ベンゾイルシクロヘキサン等が挙げられ、これらの金属塩も同様に使用することができる。金属塩の例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩が挙げられる。好ましい金属塩の例としては、アセチルアセトンカルシウム塩、アセチルアセトン亜鉛塩等が挙げられる。
【0037】
(C)成分のβ-ジケトン化合物は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのβ-ジケトン化合物の中でも、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、ジベンゾイルメタン、ステアロイルベンゾイルメタン、アセチルアセトン亜鉛塩が好ましい。
【0038】
<(D)成分>
本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、さらに(D)成分として、亜リン酸エステル化合物の1種以上を、(A)成分の100質量部に対し、5~700質量部含有することが好ましく、50~600質量部含有することがより好ましく、100~500質量部含有することがさらに好ましい。
【0039】
(D)成分の亜リン酸エステル化合物としては、亜リン酸トリアルキルエステル、亜リン酸ジアルキルエステル、亜リン酸ジアルキルモノアリルエステル、亜リン酸アルキルアリルエステル、亜リン酸モノアルキルジアリルエステル、亜リン酸ジアリルエステル、亜リン酸トリアリルエステル等が挙げられる。本発明の組成物においては、トリエステルでもジエステルでも使用することができるが、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、トリエステルを使用することが好ましい。また、チオエステルも使用することができる。
【0040】
亜リン酸エステル化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ-およびジ-混合ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-第三ブチルフェニル)ホスファイト、ジフェニルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-2-エチルヘキシルホスファイト、2,2’-メチレンビス(4,6-第三ブチルフェニル)-オクタデシルホスファイト、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイト、ジフェニル(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジフェニルトリデシルホスファイト、ジフェニル(C12~C15混合アルキル)ホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルビス(イソトリデシル)ホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(デシル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、ビス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、ジオレイルホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイト、ビス(ネオペンチルグリコール)-1,4-シクロヘキサンジメチルジホスファイト、ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ第三ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6-トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニル-4,4’-イソプロピリデンジフェノール・ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(C12~15混合アルキル)-4,4’-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、水素化-4,4’-イソプロピリデンジフェノールポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス〔4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)〕・1,6-ヘキサンジオール・ジホスファイト、テトラ(トリデシル)-4,4’-n-ブチリデンビス(2-第三ブチル-5-メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)-1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、ヘキサ(トリデシル)・1,1,3-トリス(2-メチル-5-第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ブタン・トリホスファイト、9,10-ジハイドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナンスレン-10-オキサイド、2-ブチル-2-エチルプロパンジオール・2,4,6-トリ第三ブチルフェノールモノホスファイト、トリス〔2-第三ブチル-4-(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニルチオ)-5-メチルフェニル〕ホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラキス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスファイト、トリス(2-〔(2,4,8,10-テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン-6-イル)オキシ〕エチル)アミン、2-エチル-2-ブチルプロピレングリコールと2,4,6-トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。
【0041】
本発明の組成物において、(D)成分として使用する亜リン酸エステル化合物は、1種のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。これらの亜リン酸エステル化合物の中でも、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、炭素原子数12~80の亜リン酸エステル化合物を使用することが好ましく、炭素原子数12~46の亜リン酸エステル化合物を使用することがより好ましく、炭素原子数12~36の亜リン酸エステル化合物を使用することがさらに好ましく、炭素原子数18~30の亜リン酸エステル化合物を使用することが特に好ましい。
【0042】
<(E)成分>
本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、さらに(E)成分として、フェノール系酸化防止剤の1種以上を、(A)成分の100質量部に対し、5~200質量部含有することが好ましく、10~150質量部含有することがより好ましく、15~100質量部含有することがさらに好ましい。
【0043】
(E)成分のフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ第三ブチル-p-クレゾール、2,6-ジフェニル-4-オクタデシロキシフェノール、ステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオネート、ジステアリル(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ホスホネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサメチレンビス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’-チオビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-第三ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-第三ブチルフェノール)、ビス〔3,3-ビス(4-ヒドロキシ-3-第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、4,4’-ブチリデンビス(6-第三ブチル-m-クレゾール)、2,2’-エチリデンビス(4,6-ジ第三ブチルフェノール)、2,2’-エチリデンビス(4-第二ブチル-6-第三ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-第三ブチルフェニル)ブタン、ビス〔2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5-トリス(2,6-ジメチル-3-ヒドロキシ-4-第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドルキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5-トリス(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2,4,6-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリス〔(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ第三ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2-第三ブチル-4-メチル-6-(2-アクリロイルオキシ-3-第三ブチル-5-メチルベンジル)フェノール、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3-第三ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート〕、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0044】
(E)成分のフェノール系酸化防止剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらのフェノール系酸化防止剤の中でも、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]が好ましい。
【0045】
<(F)成分>
本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性、特に透明性の点から、さらに(F)成分として、糖アルコールの1種以上を、(A)成分の100質量部に対し、1~1000質量部含有することが好ましく、2~200質量部含有することがより好ましく、6~100質量部含有することがさらに好ましく、10~60質量部含有することが特に好ましい。
【0046】
(F)成分の糖アルコールとしては、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、イノシトールが挙げられる。(F)成分の糖アルコールは、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの糖アルコールの中でも、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性、特に透明性の点から、マンニトール、マルチトール、ラクチトール、ソルビトールが好ましく、ソルビトールが特に好ましい。
【0047】
<(G)成分>
本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、さらに(G)成分として、ヒンダードアミン系光安定剤の1種以上を、(A)成分の100質量部に対し、5~200質量部含有することが好ましく、10~150質量部含有することがより好ましく、20~100質量部含有することがさらに好ましく、30~80質量部含有することが特に好ましい。
【0048】
(G)成分のヒンダードアミン系光安定剤としては、従来公知のヒンダードアミン系光安定剤であれば、特に限定されず、例えば、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、1,2,3,4-ブタンカルボン酸/2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール/3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパナール/1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルエステル重縮合物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート/メチル=1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=セバカート混合物、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1-(2-ヒドロキシエチル)-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、ビス(1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート等が挙げられる。(G)成分のヒンダードアミン系光安定剤は、1種のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
また、(G)成分としては、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、好ましくは、下記一般式(1)で表される基を有する化合物が挙げられる。
【0050】
【0051】
ここで、一般式(1)中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、炭素原子数1~30のアルキル基、炭素原子数1~30のアルコキシ基、炭素原子数1~30のヒドロキシアルキル基、炭素原子数1~30のヒドロキシアルコキシ基、炭素原子数2~30のアルケニル基、またはオキシラジカルを表し、これらのアルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基、アルケニル基は、酸素原子、カルボニル基で単数若しくは複数中断されていてもよい。また、一般式(1)の基は、一般式(1)中、*の箇所で結合する。一般式(1)の基は、化合物中に、1個または2個以上の複数個を有していてもよい。
【0052】
一般式(1)のR1がとり得る、炭素原子数1~30のアルキル基としては、直鎖アルキル基または分岐アルキル基が挙げられる。直鎖アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル基等が挙げられ、分岐アルキル基は、上記直鎖アルキル基の1つ若しくは2つ以上を炭素原子数1~9のアルキル基で置換した基が挙げられる。
【0053】
一般式(1)のR1がとり得る、炭素原子数1~30のアルコキシ基としては、上述のアルキル基に対応するアルコキシ基が挙げられる。
【0054】
一般式(1)のR1がとり得る、炭素原子数1~30のヒドロキシアルキル基としては、上述のアルキル基に対応するヒドロキシアルキル基が挙げられる。
【0055】
一般式(1)のR1がとり得る、炭素原子数1~30のヒドロキシアルコキシ基としては、上述のアルコキシ基に対応するヒドロキシアルコキシ基が挙げられる。
【0056】
一般式(1)のR1がとり得る、炭素原子数2~30のアルケニル基としては、例えば、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基、ペンタコセニル基、ヘキサコセニル基、ヘプタコセニル基、オクタコセニル基、ノナコセニル基、トリアコンテニル基が挙げられ、アルカジエニル基およびアルカトリエニル基も含む。
【0057】
一般式(1)で表される基としては、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、R1が、水素原子または炭素原子数1~30のアルキル基が好ましく、炭素原子数1~30のアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基がさらに好ましく、メチル基であるものが最も好ましい。
【0058】
一般式(1)で表される基を有する(G)成分の例を挙げると、一般式(1)のR1が水素原子のものとしては、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルステアレート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-モルホリノ-s-トリアジン重縮合物、1,6-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4-ジクロロ-6-第三オクチルアミノ-s-トリアジン重縮合物、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート等が挙げられ、一般式(1)のR1がメチル基のものとしては、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルステアレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、テトラキス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)・ビス(トリデシル)-1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)-2-ブチル-2-(3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンジル)マロネート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルメタクリレート、1,2,3,4-ブタンカルボン酸/2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール/3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロパナール/1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニルエステル重縮合物、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)=デカンジオアート/メチル=1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル=セバカート混合物、1,5,8,12-テトラキス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イル]-1,5,8,12-テトラアザドデカン、1,6,11-トリス[2,4-ビス(N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ)-s-トリアジン-6-イルアミノ]ウンデカン、3,9-ビス〔1,1-ジメチル-2-{トリス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル〕-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルヘキサデカノエート、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルオクタデカノエート等が挙げられ、一般式(1)のR1が炭素原子数1~30のアルコキシ基のものとしては、ビス(1-オクトキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-ウンデシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル)カーボネート等が挙げられる。これらのなかでも、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、一般式(1)で表される基のR1が、水素原子またはメチル基のものが好ましく、メチル基のものがより好ましい。
【0059】
<(H)成分>
また、本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性を考慮して、さらに(H)成分として、有機酸のバリウム塩を含有させることもできる。有機酸のバリウム塩を含有させる場合は、(A)成分の100質量部に対し、5~700質量部含有させることが好ましく、25~600質量部含有させることがより好ましく、50~500質量部含有させることがさらに好ましい。
【0060】
有機酸のバリウム塩としては、有機カルボン酸、フェノール類または有機リン酸類等のバリウム塩が挙げられる。
【0061】
有機カルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、2-エチルヘキシル酸、ネオデカン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、イソウンデシル酸、ラウリン酸、イソラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸、ベヘニン酸、モンタン酸、バーサチック酸、安息香酸、モノクロル安息香酸、4-tert-ブチル安息香酸、ジメチルヒドロキシ安息香酸、3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシ安息香酸、o-トルイル酸、m-トルイル酸、p-トルイル酸、トルイル酸、ジメチル安息香酸、2,4-ジメチル安息香酸、3,5-ジメチル安息香酸、2,4,6-トリメチル安息香酸、エチル安息香酸、2-エチル安息香酸、3-エチル安息香酸、4-エチル安息香酸、2,4,6-トリエチル安息香酸、4-イソプロピル安息香酸、n-プロピル安息香酸、アミノ安息香酸、N,N-ジメチルアミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、サリチル酸、p-第三オクチルサリチル酸、エライジン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、エレオステアリン酸、エイコセン酸、エイコサジエン酸、エイコサトリエン酸、エイコサテトラエン酸、アラキドン酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リシノール酸、チオグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、オクチルメルカプトプロピオン酸等の1価カルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヒドロキシフタル酸、クロルフタル酸、アミノフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メタコン酸、イタコン酸、アコニット酸、チオジプロピオン酸等の2価カルボン酸或いはこれらのモノエステルまたはモノアマイド化合物;ブタントリカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘミメリット酸、トリメリット酸、メロファン酸、ピロメリット酸等の3価または4価カルボン酸のジまたはトリエステル化合物が挙げられる。
【0062】
フェノール類としては、例えば、第三ブチルフェノール、ノニルフェノール、ジノニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、フェニルフェノール、オクチルフェノール、フェノール、クレゾール、キシレノール、n-ブチルフェノール、イソアミルフェノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、イソオクチルフェノール、2-エチルヘキシルフェノール、第三ノニルフェノール、デシルフェノール、第三オクチルフェノール、イソヘキシルフェノール、オクタデシルフェノール、ジイソブチルフェノール、メチルプロピルフェノール、ジアミルフェノール、メチルイソヘキシルフェノール、メチル第三オクチルフェノール等が挙げられる。
【0063】
有機リン酸類としては、例えば、モノまたはジオクチルリン酸、モノまたはジドデシルリン酸、モノまたはジオクタデシルリン酸、モノまたはジ-(ノニルフェニル)リン酸、ホスホン酸ノニルフェニルエステル、ホスホン酸ステアリルエステル等が挙げられる。
【0064】
有機酸のバリウム塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸によるバリウム塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価のバリウムと塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価のバリウムと塩を形成していてもよい。
【0065】
本発明の組成物においては、有機酸のバリウム塩は、1種のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、有機酸のバリウム塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩でもよい。
【0066】
<(I)成分>
また、本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性を考慮して、さらに(I)成分として、有機酸のカルシウム塩を含有させることもできる。有機酸のカルシウム塩を含有させる場合は、(A)成分の100質量部に対し、5~700質量部含有させることが好ましく、25~600質量部含有させることがより好ましく、50~500質量部含有させることがさらに好ましい。
【0067】
有機酸のカルシウム塩としては、有機カルボン酸、フェノール類または有機リン酸類等のカルシウム塩が挙げられる。
【0068】
有機カルボン酸としては、例えば、上述のバリウム塩で例示したものが挙げられる。またフェノール類としては、やはり、上述のバリウム塩で例示したものが挙げられる。また有機リン酸類としては、やはり、上述のバリウム塩で例示したものが挙げられる。
【0069】
有機酸のカルシウム塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸によるカルシウム塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価のカルシウムと塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価のカルシウムと塩を形成していてもよい。
【0070】
本発明の組成物においては、有機酸のカルシウム塩は、1種のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。また、有機酸のカルシウム塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩でもよい。
【0071】
<その他>
また、本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性を考慮して、さらに、過塩基性炭酸バリウム塩を含有させることもできる。
【0072】
過塩基性炭酸バリウム塩を含有させる場合は、(A)成分の100質量部に対し、5~700質量部含有させることが好ましく、25~600質量部含有させることがより好ましく、50~500質量部含有させることがさらに好ましい。ただし、過塩基性炭酸バリウム塩を、組成物に配合した場合は、成形加工時に成形体が発泡を起こす可能性があるため注意が必要である。
【0073】
過塩基性炭酸バリウム塩とは、バリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体である。この錯体は、バリウムのカルボン酸正塩と炭酸バリウムとの単純な混合物とは異なり、これらが何等かのインタラクションにより錯体となっているものであり、高い金属含有量を有しながら、有機溶媒中で均一な液状を示すという特徴を有している。この錯体は、バリウムのカルボン酸正塩、炭酸バリウム、およびバリウムのカルボン酸と炭酸との複合塩を構成成分として構成されており、炭酸バリウムを中心にバリウムのカルボン酸正塩およびバリウムのカルボン酸と炭酸との複合塩がその周辺に存在し、言わばミセルのようなものが形成されることによって、有機溶媒中で均一な液状を示すものである。これら、バリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、例えば特開2004-238364号公報に示す製造方法によって製造することができる。
【0074】
バリウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、種々の市販されている錯体をそのまま使用することもできる。市販されている錯体の代表的なものとしては、例えば、米国AM STABILZERS社製の「PlastistabTM 2116」(過塩基性バリウムオレート/カーボネート錯体:比重1.42~1.53、Ba=33~36%)、「PlastistabTM 2513」(過塩基性バリウムオレート/カーボネート錯体:比重1.41~1.52、Ba=33~36%)、「PlastistabTM 2508」(過塩基性バリウムオレート/カーボネート錯体:比重1.39~1.51、Ba=33~36%)等が挙げられる。
【0075】
本発明の組成物においては、これら過塩基性炭酸バリウム塩は、1種のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0076】
また、本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性を考慮して、さらに、過塩基性炭酸カルシウム塩を含有させることもできる。過塩基性炭酸カルシウム塩を含有させる場合は、(A)成分の100質量部に対し、5~700質量部含有させることが好ましく、25~600質量部含有させることがより好ましく、50~500質量部含有させることがさらに好ましい。ただし、過塩基性炭酸カルシウム塩を、安定剤組成物に配合した場合は、成形加工時に成形体が発泡を起こす可能性があるため注意が必要である。
【0077】
過塩基性炭酸カルシウム塩とは、カルシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体である。この錯体は、カルシウムのカルボン酸正塩と炭酸カルシウムとの単純な混合物とは異なり、これらが何等かのインタラクションにより錯体となっているものであり、高い金属含有量を有しながら、有機溶媒中で均一な液状を示すという特徴を有している。この錯体は、カルシウムのカルボン酸正塩、炭酸カルシウム、およびカルシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩を構成成分として構成されており、炭酸カルシウムを中心にカルシウムのカルボン酸正塩およびカルシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩がその周辺に存在し、言わばミセルのようなものが形成されることによって、有機溶媒中で均一な液状を示すものである。
【0078】
カルシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、上述のバリウムの液状過塩基性液状カルボキシレート/カーボネート錯体と同様の方法で製造することができる。また、種々の市販されている錯体をそのまま使用することもできる。市販されている錯体の代表的なものとしては、例えば、米国AM STABILZERS社製の、「PlastistabTM 2265」(過塩基性カルシウムオレート/カーボネート錯体:比重1.04~1.09、Ca=10%)が挙げられる。
【0079】
本発明の組成物においては、これら過塩基性炭酸カルシウム塩は、1種のみ使用しても、2種類以上を併用してもよい。
【0080】
本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性を考慮して、さらにハイドロタルサイト化合物を含有させることもできる。ハイドロタルサイト化合物を含有させる場合は、(A)成分の100質量部に対し、10~500質量部含有させることが好ましく、30~400質量部含有させることがより好ましく、50~300質量部含有させることがさらに好ましい。ただし、ハイドロタルサイト化合物を組成物に配合した場合は、成形加工時に成形体が発泡を起こす可能性と、成形体が応力白化を起こす可能性があるため注意が必要である。
【0081】
ハイドロタルサイト化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0082】
【0083】
一般式(2)中、x1、x2およびy1は各々下記式、0≦x2/x1<10、2≦x1+x2<20、0≦y1≦2で表される条件を満足する数を示し、mは0または任意の整数を示す。
【0084】
ハイドロタルサイト化合物としては、マグネシウムとアルミニウム、または亜鉛、マグネシウムおよびアルミニウムからなる複塩化合物が好ましく用いられる。また、結晶水を脱水したものであってもよい。また、過塩素酸で処理されたものでもよい。このようなハイドロタルサイト化合物は、天然物であってもよく、また合成品であってもよい。上記ハイドロタルサイト化合物の結晶構造、結晶粒子径等に制限はない。
【0085】
また、ハイドロタルサイト化合物として、その表面をステアリン酸等の高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属塩等の高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩等の有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックス等で被覆したものも使用することができる。
【0086】
本発明の組成物においては、ハイドロタルサイト化合物は1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0087】
本発明の組成物は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性を考慮して、さらに、(F)成分の糖アルコール以外の、多価アルコール化合物を含有させることもできる。多価アルコール化合物を含有させる場合は、(A)成分の100質量部に対し、0.01~100質量部含有させることが好ましく、0.1~75質量部含有させることがより好ましく、1~50質量部含有させることがさらに好ましい。
【0088】
多価アルコール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリペンタエリスリトール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ジトリメチロールプロパン、1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ポリエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、キシロース、スクロース(シュクロース)、トレハロース、イノシトール、フルクトース、マルトース、ラクトース等が挙げられる。多価アルコール化合物は1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0089】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、溶剤を含有させることもできる。溶剤は、安定剤成分の溶解性の点から、有機溶剤が好ましく、沸点が100℃以上の有機溶剤がより好ましく、沸点が120℃以上の有機溶剤がさらに好ましく、150℃以上の有機溶剤が特に好ましい。好ましい有機溶剤の例を挙げると、3-メトキシ-n-ブタノール、2-エチルヘキサノール、ウンデカノール、トリデカノール等のアルコール系有機溶剤、メチルジグリコール、ブチルジグリコール、メチルプロピレングリコール等のグリコール系有機溶剤、流動パラフィン、ナフテン系溶剤、ノルマルパラフィン系溶剤、イソパラフィン系溶剤、脂肪族系炭化水素溶剤、芳香族系炭化水素溶剤、鉱油等の炭化水素系溶剤等が挙げられる。溶剤は1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0090】
溶剤を使用する場合の配合量は、(A)成分の100質量部に対し、5~700質量部含有することが好ましく、10~600質量部含有することがより好ましく、15~500質量部含有することがさらに好ましい。
【0091】
本発明の安定剤組成物は、好適には、塩化ビニル系樹脂に配合し、塩化ビニル系樹脂組成物として用いることができる。
【0092】
本発明の組成物を得るためには、必須成分の(A)および(B)成分、必要に応じて、好ましい任意の成分の(C)~(I)成分、さらに必要に応じて配合可能な成分、さらに必要に応じて溶剤、を混合すればよく、混合には各種混合機を用いることができる。混合時には加熱してもよい。使用できる混合機の例を挙げると、タンブラーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンブレンダー、V型混合機、W型混合機、スーパーミキサー、ナウターミキサー等が挙げられる。また、塩化ビニル系樹脂に、直接、上記成分を、個別にあるいは2種類以上同時に配合し、塩化ビニル系樹脂組成物として調製してもよい。
【0093】
<2.塩化ビニル系樹脂組成物>
続いて、塩化ビニル系樹脂組成物について説明する。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と、本発明の安定剤組成物と、を含有するものである。
【0094】
塩化ビニル系樹脂としては、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等その重合方法には特に限定されず、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニリトル共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩化ビニル系樹脂、およびそれら相互のブレンド品或いは他の塩素を含まない合成樹脂、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等とのブレンド品、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができる。これら塩化ビニル系樹脂は2種以上の混合物でもよく、他の合成樹脂との混合物でもよい。使用される塩化ビニル系樹脂は、熱安定性、耐着色性、耐熱着色性の点から、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0095】
本発明の組成物を塩化ビニル系樹脂に添加する際には、加工性を考慮してさらに滑剤を添加することが好ましい。滑剤は、塩化ビニル系樹脂に配合するまえに、組成物中に配合しておいてもよい。滑剤の例を挙げると、低分子ワックス、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、塩素化炭化水素、フルオロカーボン等の炭化水素系滑剤;カルナバワックス、キャンデリラワックス等の天然ワックス系滑剤;ラウリン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸、またはヒドロキシステアリン酸のようなオキシ脂肪酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリルアミド、ラウリルアミド、オレイルアミド等の脂肪族アミド化合物またはメチレンビスステアリルアミド、エチレンビスステアリルアミドのようなアルキレンビス脂肪族アミド等の脂肪族アミド系滑剤;ステアリルステアレート、ブチルステアレート、ジステアリルフタレート等の脂肪酸1価アルコールエステル化合物または、グリセリントリステアレート、ソルビタントリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ジペンタエリスリトールヘキサステアレート、ポリグリセリンポリリシノレート、硬化ヒマシ油等の脂肪酸多価アルコールエステル化合物、または、ジペンタエリスリトールのアジピン酸・ステアリン酸エステルのような1価脂肪酸および多塩基性有機酸と多価アルコールの複合エステル化合物等の脂肪酸アルコールエステル系滑剤;ステアリルアルコール、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール等の脂肪族アルコール系滑剤;金属石鹸類;部分ケン化モンタン酸エステル等のモンタン酸系滑剤;アクリル系滑剤;シリコーンオイル等が挙げられる。これらの滑剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0096】
滑剤を使用する場合の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01~5.0質量部が好ましく、加工性の点から0.05~4.0質量部であることがより好ましく、0.1~3.0質量部がさらに好ましい。
【0097】
本発明の組成物を塩化ビニル系樹脂に添加する際には、加工性を考慮してさらに加工助剤を添加することが好ましい。加工助剤は、塩化ビニル系樹脂に配合するまえに、本発明の組成物中に配合しておいてもよい。加工助剤は公知の加工助剤の中から適宜選択することができる。加工助剤の例を挙げると、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のアルキルメタクリレートの単独重合体または共重合体;上記アルキルメタクリレートと、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアルキルアクリレートとの共重合体;上記アルキルメタクリレートと、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物との共重合体;上記アルキルメタクリレートと、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルシアン化合物等との共重合体等を挙げることができる。これらの加工助剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0098】
加工助剤を使用する場合の添加量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部であることが好ましく、0.05~5質量部であることがより好ましい。
【0099】
塩化ビニル系樹脂には、さらに本発明の組成物の他に、通常塩化ビニル系樹脂に用いられる他の添加剤、例えば、硫黄系酸化防止剤、(B)成分以外のエポキシ化合物、可塑剤、紫外線吸収剤、衝撃改良剤、強化材、充填剤、ゼオライト化合物、過塩素酸塩類、有機酸のマグネシウム塩、過塩基性炭酸マグネシウム塩、発泡剤、難燃剤、難燃助剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。これら各種添加剤は、塩化ビニル系樹脂に配合するまえに、組成物中に配合しておいてもよい。
【0100】
硫黄系酸化防止剤の例を挙げると、チオジプロピオン酸のジラウリル、ジミリスチル、ミリスチルステアリル、ジステアリルエステル等のジアルキルチオジプロピオネート類およびペンタエリスリトールテトラ(β-ドデシルメルカプトプロピオネート)等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類等が挙げられる。これらの硫黄系酸化防止剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0101】
本発明の(B)成分以外のエポキシ化合物の例を挙げると、エポキシ化大豆油、エポキシ化亜麻仁油、エポキシ化桐油、エポキシ化ひまし油、エポキシ化サフラワー油等のエポキシ化植物油が挙げられる。これらのエポキシ化植物油は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0102】
可塑剤の例を挙げると、ジブチルフタレート、ブチルヘキシルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジオクチルテレフタレート等のフタレート系可塑剤;ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジ(ブチルジグリコール)アジペート等のアジペート系可塑剤;トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリ(ブトキシエチル)ホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等のホスフェート系可塑剤;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコールと、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の二塩基酸を用い、必要により一価アルコール、モノカルボン酸をストッパーとして使用したポリエステル系可塑剤;その他、テトラヒドロフタル酸系可塑剤、アゼライン酸系可塑剤、セバチン酸系可塑剤、ステアリン酸系可塑剤、クエン酸系可塑剤、トリメリット酸系可塑剤、ピロメリット酸系可塑剤、ビフェニレンポリカルボン酸系可塑剤等が挙げられる。これらの可塑剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0103】
紫外線吸収剤の例を挙げると、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、5,5’-メチレンビス(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン)等の2-ヒドロキシベンゾフェノン類;2-(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-5-第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ第三ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’-メチレンビス(4-第三オクチル-6-ベンゾトリアゾリル)フェノール、2-(2-ヒドロキシ-3-第三ブチル-5-カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールのポリエチレングリコールエステル等の2-(2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4-ジ第三ブチルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、2,4-ジ第三アミルフェニル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル-3,5-ジ第三ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2-エチル-2’-エトキシオキザニリド、2-エトキシ-4’-ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル-α-シアノ-β,β-ジフェニルアクリレート、メチル-2-シアノ-3-メチル-3-(p-メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2-(2-ヒドロキシ-4-オクトキシフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-メトキシフェニル)-4,6-ジフェニル-s-トリアジン、2-(2-ヒドロキシ-4-プロポキシ-5-メチルフェニル)-4,6-ビス(2,4-ジ第三ブチルフェニル)-s-トリアジン等のトリアリールトリアジン類等が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0104】
衝撃改良剤の例を挙げると、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、フッ素ゴム、スチレン-ブタジエン系共重合体ゴム、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系共重合体、メタクリル酸メチル-ブタジエン-スチレン系グラフト共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン系共重合体ゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン系グラフト共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体ゴム、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体ゴム、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン共重合体ゴム、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)、シリコーン含有アクリル系ゴム、シリコーン/アクリル複合ゴム系グラフト共重合体、シリコーン系ゴム等を挙げることができる。なお、上記のエチレン-プロピレン-ジエン共重合体ゴム(EPDM)のジエンとしては、1,4-ヘキサンジエン、ジシクロペンタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、プロペニルノルボルネン等を挙げることができる。これらの衝撃改良剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0105】
強化材は、通常合成樹脂の強化に用いられる繊維状、板状、粒状、粉末状のものを用いることができる。具体的には、ガラス繊維、アスベスト繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、金属繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ホウ酸アルミニウムウイスカー、マグネシウム系ウイスカー、珪素系ウイスカー、ワラステナイト、セピオライト、アスベスト、スラグ繊維、ゾノライト、エレスタダイト、石膏繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、窒化硼素繊維、窒化硅素繊維および硼素繊維等の無機繊維状強化材、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、再生セルロース繊維、アセテート繊維、ケナフ、ラミー、木綿、ジュート、麻、サイザル、亜麻、リネン、絹、マニラ麻、さとうきび、木材パルプ、紙屑、古紙およびウール等の有機繊維状強化材、ガラスフレーク、非膨潤性雲母、グラファイト、金属箔、セラミックビーズ、クレー、マイカ、セリサイト、ゼオライト、ベントナイト、ドロマイト、カオリン、微粉ケイ酸、長石粉、チタン酸カリウム、シラスバルーン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、ケイ酸アルミニウム、酸化ケイ素、石膏、ノバキュライト、ドーソナイトおよび白土等の板状や粒状の強化材が挙げられる。これらの強化材は、エチレン/酢酸ビニル共重合体等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂で被覆または集束処理されていてもよく、アミノシランやエポキシシラン等のカップリング剤等で処理されていてもよい。これらの強化材は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0106】
充填剤の例を挙げると、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、アルミナケイ酸ナトリウム、ハイドロカルマイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ゼオライト等のケイ酸金属塩、活性白土、タルク、クレイ、ベンガラ、アスベスト、三酸化アンチモン、シリカ、ガラスビーズ、マイカ、セリサイト、ガラスフレーク、アスベスト、ウオラストナイト、チタン酸カリウム、PMF、石膏繊維、ゾノライト、MOS,ホスフェートファイバー、ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維等が挙げられる。これらの充填剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0107】
ゼオライト化合物は、独特の三次元のゼオライト結晶構造を有するアルカリまたはアルカリ土類金属のアルミノケイ酸塩であり、その代表例としては、A型、X型、Y型およびP型ゼオライト、モノデナイト、アナルサイト、ソーダライト族アルミノケイ酸塩、クリノブチロライト、エリオナイトおよびチャバサイト等を挙げることができ、これらのゼオライト化合物の結晶水(いわゆるゼオライト水)を有する含水物または結晶水を除去した無水物のいずれでもよく、またその粒径が0.1~50μmのものを用いることができ、特に、0.5~10μmのものが好ましい。これらのゼオライト化合物は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0108】
過塩素酸塩類の例を挙げると、過塩素酸金属塩、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸処理珪酸塩等が挙げられる。これらの金属塩を構成する金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、鉛、アルミニウム等が挙げられる。過塩素酸金属塩は、無水物でも含水塩でもよく、また、ブチルジグリコール、ブチルジグリコールアジペート等のアルコール系およびエステル系の溶剤に溶かしたもの、およびその脱水物でもよい。これらの過塩素酸塩類は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0109】
有機酸のマグネシウム塩としては、有機カルボン酸、フェノール類または有機リン酸類等のマグネシウム塩が挙げられる。
【0110】
有機カルボン酸としては、例えば、前述した有機酸のバリウム塩で例示したものが挙げられる。またフェノール類としては、例えば、前述した有機酸のバリウム塩で例示したものが挙げられる。また有機リン酸類としては、例えば、前述した有機酸のバリウム塩で例示したものが挙げられる。有機酸のマグネシウム塩は、2種以上の有機酸から構成されていてもよい。例えば、1価の有機酸によるマグネシウム塩の場合、同一の有機酸がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価のマグネシウムと塩を形成していてもよく、異なる1価の有機酸2種がアニオン部位を形成し、カチオン部位を形成する2価のマグネシウムと塩を形成していてもよい。有機酸のマグネシウム塩は、1種のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。また、有機酸のマグネシウム塩は、酸性塩、中性塩、塩基性塩でもよい。
【0111】
過塩基性炭酸マグネシウム塩とは、マグネシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体である。この錯体は、マグネシウムとカルボン酸正塩と炭酸マグネシウムとの単純な混合物とは異なり、これらが何等かのインタラクションにより錯体となっているものであり、高い金属含有量を有しながら、有機溶媒中で均一な液状を示すという特徴を有している。この錯体は、マグネシウムのカルボン酸正塩、炭酸マグネシウム、およびマグネシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩を構成成分として構成されており、炭酸マグネシウムを中心にマグネシウムのカルボン酸正塩およびマグネシウムのカルボン酸と炭酸との複合塩がその周辺に存在し、言わばミセルのようなものが形成されることによって、有機溶媒中で均一な液状を示すものである。
【0112】
マグネシウムの液状過塩基性カルボキシレート/カーボネート錯体は、前述のバリウムの液状過塩基性液状カルボキシレート/カーボネート錯体と同様の方法で製造することができる。また、市販されている錯体をそのまま使用することもできる。これら過塩基性炭酸マグネシウム塩は、1種のみ使用しても、2種以上を併用してもよい。
【0113】
発泡剤の例を挙げると、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、n,n’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、トリヒドラゾトリアジン等の分解型有機発泡剤および重炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、アジド化合物、ホウ水素化ナトリウム等の分解型無機発泡剤が挙げられる。これらの発泡剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0114】
難燃剤および難燃助剤の例としては、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、その他無機リン、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、縮合リン酸エステル系難燃剤、イントメッセント系難燃剤、三酸化アンチモン等の酸化アンチモン、その他の無機系難燃助剤、有機系難燃助剤等が挙げられる。
【0115】
トリアジン環含有化合物としては、例えば、メラミン、アンメリン、ベンズグアナミン、アセトグアナミン、フタロジグアナミン、メラミンシアヌレート、ピロリン酸メラミン、ブチレンジグアナミン、ノルボルネンジグアナミン、メチレンジグアナミン、エチレンジメラミン、トリメチレンジメラミン、テトラメチレンジメラミン、ヘキサメチレンジメラミン、1,3-ヘキシレンジメランミン等が挙げられる。
【0116】
金属水酸化物としては、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化亜鉛、キスマー5A(水酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0117】
リン酸エステル系難燃剤の例としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリスイソプロピルフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、t-ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(t-ブチルフェニル)フェニルホスフェート、トリス-(t-ブチルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ビス-(イソプロピルフェニル)ジフェニルホスフェート、トリス-(イソプロピルフェニル)ホスフェート等が挙げられる。
【0118】
縮合リン酸エステル系難燃剤の例としては、1,3-フェニレンビス(ジフェニルホスフェート)、1,3-フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)等が挙げられる。
【0119】
イントメッセント系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ピロリン酸アンモニウム、ピロリン酸メラミン、ピロリン酸ピペラジン等の、(ポリ)リン酸のアンモニウム塩やアミン塩が挙げられる。
【0120】
その他の無機系難燃助剤としては、例えば、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、タルク等の無機化合物、およびその表面処理品が挙げられ、例えば、TIPAQUE R-680(酸化チタン:石原産業(株)製)、キョーワマグ150(酸化マグネシウム:協和化学工業(株)製)、等の種々の市販品を用いることができる。これらの難燃剤および難燃助剤は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0121】
また、本発明の組成物の他に、通常塩化ビニル系樹脂に使用される安定化助剤を本発明の組成物の効果を損なわない範囲内で添加することができる。このような安定化助剤としては、例えば、ジフェニルチオ尿素、アニリノジチオトリアジン、メラミン、安息香酸、ケイヒ酸、p-第三ブチル安息香酸等が用いられる。さらに、必要に応じて、通常塩化ビニル系樹脂に使用される添加剤、例えば、架橋剤、帯電防止剤、防曇剤、プレートアウト防止剤、表面処理剤、蛍光剤、防黴剤、殺菌剤、金属不活性剤、離型剤、二酸化チタン等の白色顔料、ウルトラマリンブルー、フタロシアニンブルー等の青色顔料等の顔料等を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。これらの任意成分は、1種のみ使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これら、安定化助剤や任意成分は、塩化ビニル系樹脂に配合するまえに、本発明の組成物中に配合しておいてもよい。
【0122】
また、塩化ビニル系樹脂に使用される金属系安定剤のうち、鉛系安定剤、(有機)スズ系安定剤、カドミウム系安定剤を添加することは、環境に対する影響や毒性の点から好ましくない。
【0123】
本発明の樹脂組成物は、塩化ビニル系樹脂と本発明の組成物を含有する。塩化ビニル系樹脂組成物中の、本発明の組成物の含有量は、塩化ビニル系樹脂100質量部に対して、0.3~15.0質量部が好ましく、0.3~10.0質量部がより好ましく、0.5~8.0質量部がさらにより好ましく、0.8~6.0質量部がさらにより好ましい。
【0124】
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物には、本発明の組成物以外に、上述した、滑剤、加工助剤、通常塩化ビニル系樹脂に用いられる他の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲で含有させることができる。
【0125】
本発明の樹脂組成物は、例えば、ロール加工、押出成形加工、溶融流延法、加圧成形加工、射出成形加工、カレンダー成形等の、公知の成形方法よって成形することができる。
【0126】
<3.成形体>
本発明の成形体は、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物から得られるものである。本発明の樹脂組成物から得られる成形品は、パイプ、継手、配管部品等の配管材料;壁材、床材、窓枠、波板、雨樋等の建材・構造材;自動車用内外装材;電線用被覆材;農業用資材;食品包装材;パッキン、ガスケット、ホース、シート、トレー、ボトル、玩具等の雑貨、日用品、文具、化粧板、工業板、ICケース等の製品に利用することができる。
【0127】
本発明の樹脂組成物は、特に硬質、または半硬質用途の透明な成形品用に好適であり、ガラス様の透明性が必要とされる容器類、工業板、化粧板、トレー、フィルム、シュリンクフィルム、シート、建材、給排水パイプ、プレート、継手、自動車用材料、ホース、ICケース、ボトル等に用いることができる。
【0128】
成形体の透明性としては、厚さ6mmにおけるHaze値(曇り度)が、20.0以下であるものが好ましく、15.0以下であるものがより好ましく、10.0以下であるものがさらにより好ましく、7.0以下であるものがさらにより好ましく、6.0以下であるものがさらにより好ましい。なお、Haze値の測定は、JIS K 7136に準拠して測定することができる。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例により、具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例により何ら制限されるものではない。
【0130】
〔安定剤組成物の製造〕
表1~12に示す処方で各種成分を配合し、安定剤組成物を調製した。(B)成分のエポキシ化合物は下記に示すエポキシ化合物1~8を使用した。なお、組成物73~80は、下記エポキシ化大豆油を使用した。
【0131】
エポキシ化合物1:水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度7.4質量%)
エポキシ化合物2:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度8.4質量%)
エポキシ化合物3:トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度10.7質量%)
エポキシ化合物4:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度11.4質量%)
エポキシ化合物5:クレジルグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度8.9質量%)
エポキシ化合物6:ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度5.3質量%)
エポキシ化合物7:炭素原子数12~13のアルキルグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度5.0質量%)
エポキシ化合物8:2-フェニルフェノールグリシジルエーテル(オキシラン酸素濃度7.1質量%)
比較エポキシ化合物:エポキシ化大豆油(オキシラン酸素濃度6.7質量%)
【0132】
〔実施例1~82、参考例1、2および比較例1~10〕
表13~27に示す処方で塩化ビニル系樹脂と組成物およびその他の添加剤をヘンシェルミキサーでブレンドして、各塩化ビニル系樹脂組成物を得た。得られた塩化ビニル系樹脂組成物を、カレンダー成形しシートを作製した。ロール混練条件は165℃×30rpm×0.6mmとした。得られたシートを用いて下記試験方法により、動的熱安定性、静的熱安定性、耐着色性、耐熱着色性、透明性を評価した。評価結果を表13~27に併記する。
【0133】
<動的熱安定性試験>
各樹脂組成物を、190℃×40rpmの混練条件のラボプラストミル試験機(4C150型、株式会社東洋精機製作所製)に、65g/60cc投入し、樹脂が分解し混練トルクが上昇するまでの分解時間を測定した。結果を表13~27に併記する。分解時間が長いほど熱安定性に優れているといえる。
【0134】
<静的熱安定性試験>
得られたシートを190℃と、200℃のギヤーオーブンに入れて、黒化時間(分)を測定した。結果を表13~27に併記する。黒化時間が長いほど熱安定性に優れているといえる。
【0135】
<耐着色性試験>
得られた0.6mm厚のシートを張り合わせて190℃で5分プレス加工を行って1mm厚のシートを作製した。このシートの黄色度(YI値)を、JIS K7373に準拠して測定した。結果を表13~27に併記する。黄色度の数値が小さいほど着色がなく、初期着色が少なく耐着色性に優れているといえる。
【0136】
<耐熱着色性試験>
得られた0.6mm厚のシートを張り合わせて190℃で15分プレス加工を行って1mm厚のシートを作製した。また、得られた0.6mm厚のシートを張り合わせて190℃で45分プレス加工を行って1mm厚のシートを作製した。これらのシートの黄色度(YI値)を、JIS K7373に準拠して測定した。結果を表13~27に併記する。黄色度の数値が小さいほど着色がなく耐熱着色性に優れているといえる。黄色度の数値が大きいほど、耐熱着色性に劣るが、さらに悪いものは黒化してしまう。
【0137】
<透明性試験>
180℃で5分プレス加工した6mm厚のシートについて、ヘイズガード2(株式会社東洋精機製作所製)を用いて、JIS K 7136に準拠して、Haze値を測定した。結果を表13~27に併記する。
【0138】
【0139】
*1:デシルジフェニルホスファイト
*2:トリデシルホスファイト
*3:ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](株式会社ADEKA製、製品名アデカスタブAO-60)
*4:ソルビトール
*5:アデカスタブ LA-63P(株式会社ADEKA製)
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【表13】
*6:信越化学工業株式会社製 TK-700(重合度700)
*7:アクリル系加工助剤(株式会社カネカ製 カネエースPA-20)
*8:複合エステル系内部滑剤(エメリーオレオケミカルズジャパン株式会社製 ロキシオールG72)
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
【0162】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
表1~12および表13~27に示す結果から、本発明の組成物は、塩化ビニル系樹脂に、優れた熱安定性、耐着色性および耐熱着色性を付与することができるのが明らかである。さらに、透明性を必要とする透明性用途の場合は、優れた透明性を付与することができるのが明らかである。
【0167】
また、本発明の樹脂組成物は、熱安定性、耐着色性および耐熱着色性に優れた成形体を提供することができるのが明らかである。さらに、透明性を必要とする透明性用途の場合は、透明性に優れた成形体を提供することができるのが明らかである。