(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】電磁誘導式エンコーダ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/245 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
G01D5/245 110Q
(21)【出願番号】P 2019231719
(22)【出願日】2019-12-23
【審査請求日】2022-11-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】久保園 紘士
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-137362(JP,A)
【文献】特開2003-121206(JP,A)
【文献】特開2009-186200(JP,A)
【文献】特開平10-213408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/243-5/249
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置され、測定軸方向に相対移動する検出ヘッドおよびスケールを備え、
前記検出ヘッドは、第1トラックおよび第2トラックのそれぞれについて、磁束を発生する送信コイルを備え、
前記スケールは、前記第1トラックおよび前記第2トラックのそれぞれについて、前記測定軸方向に周期的に配置されかつ導体からなる複数の周期的要素を備え、
前記検出ヘッドは、前記第1トラックおよび前記第2トラックにわたって連続して配線され、前記第1トラックおよび前記第2トラックについて前記複数の周期的要素が発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルを備え、
前記第1トラックおよび前記第2トラックのそれぞれについて、前記複数の周期的要素は、導体によって接続され、
前記第1トラックおよび前記第2トラックのそれぞれについて、前記送信コイルは、前記複数の周期的要素のそれぞれに対して、互いに逆向きの2以上の渦電流を発生させるように配線されていることを特徴とする電磁誘導式エンコーダ。
【請求項2】
前記第1トラックおよび前記第2トラックの前記送信コイルに送信信号を送信する送信信号生成部と、
前記受信コイルからの信号に応じて前記検出ヘッドと前記スケールとの間の相対変位量を測定する変位量測定部と、を備え、
前記送信信号生成部は、前記第1トラックの前記送信コイルに前記送信信号を送信する場合には前記第2トラックの前記送信コイルには前記送信信号を送信せず、前記第2トラックの前記送信コイルに前記送信信号を送信する場合には前記第1トラックの前記送信コイルには前記送信信号を送信しないことを特徴とする請求項
1に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項3】
前記第1トラックと前記第2トラックとで、前記複数の周期的要素が前記測定軸方向に沿って配置されている周期が異なるか、前記測定軸方向に沿って配置されている位置が異なることを特徴とする請求項
1または2に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【請求項4】
前記受信コイルは、前記2以上の渦電流をそれぞれ検出する2以上のコイルを備えることを特徴とする請求項
1から3のいずれか一項に記載の電磁誘導式エンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、電磁誘導式エンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
検出ヘッドとスケールとの間の電磁結合を利用した電磁誘導式エンコーダが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電磁誘導式エンコーダでは、最も精度の良いトラックに対し、ABS(アブソリュート)用のトラックを設け、その後の信号処理によって、絶対位置を計算している。センサ基板のそれぞれのトラックには駆動用の信号線が2本以上、受信コイル用の信号線が4本以上備わっている。ABS長を伸ばすためにトラックを増やすと、これらの引出配線もトラック数倍に増えていく。しかしながら、センサ基板の面積は限られており、受信コイルの引出配線が増えるとセンサ基板の小型化が困難になる。また、信号処理ICへの入力ポート数も増えるため、ICの小型化が難しくなる。小型で、かつ長いABS長を実現するエンコーダを実現するには、受信コイルの引出配線数を少なくする技術が重要である。
【0005】
1つの側面では、本発明は、受信コイルの引出配線数の低減化が可能な電磁誘導式エンコーダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様では、本発明に係る電磁誘導式エンコーダは、対向配置され、測定軸方向に相対移動する検出ヘッドおよびスケールを備え、前記検出ヘッドは、第1トラックおよび第2トラックのそれぞれについて、磁束を発生する送信コイルを備え、前記スケールは、前記第1トラックおよび前記第2トラックのそれぞれについて、前記測定軸方向に周期的に配置されかつ導体からなる複数の周期的要素を備え、前記検出ヘッドは、前記第1トラックおよび前記第2トラックにわたって連続して配線され、前記第1トラックおよび前記第2トラックについて前記複数の周期的要素が発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルを備えることを特徴とする。
【0007】
上記電磁誘導式エンコーダは、前記第1トラックおよび前記第2トラックの前記送信コイルに送信信号を送信する送信信号生成部と、前記受信コイルからの信号に応じて前記検出ヘッドと前記スケールとの間の相対変位量を測定する変位量測定部と、を備え、前記送信信号生成部は、前記第1トラックの前記送信コイルに前記送信信号を送信する場合には前記第2トラックの前記送信コイルには前記送信信号を送信せず、前記第2トラックの前記送信コイルに前記送信信号を送信する場合には前記第1トラックの前記送信コイルには前記送信信号を送信しなくてもよい。
【0008】
上記電磁誘導式エンコーダにおいて、前記第1トラックと前記第2トラックとで、前記複数の周期的要素が前記測定軸方向に沿って配置されている周期が異なるか、前記測定軸方向に沿って配置されている位置が異なっていてもよい。
【0009】
上記電磁誘導式エンコーダにおいて、前記第1トラックおよび前記第2トラックのそれぞれについて、前記複数の周期的要素は、導体によって接続され、前記第1トラックおよび前記第2トラックのそれぞれについて、前記送信コイルは、前記複数の周期的要素のそれぞれに対して、互いに逆向きの2以上の渦電流を発生させるように配線されていてもよい。
【0010】
上記電磁誘導式エンコーダにおいて、前記受信コイルは、前記2以上の渦電流をそれぞれ検出する2以上のコイルを備えていてもよい。
【0011】
本発明に係る電磁誘導式エンコーダの使用方法は、対向配置されて測定軸方向に相対移動する検出ヘッドおよびスケールを備え、前記検出ヘッドは、第1トラックおよび第2トラックのそれぞれについて、磁束を発生する送信コイルを備え、前記スケールは、前記第1トラックおよび前記第2トラックのそれぞれについて、前記測定軸方向に周期的に配置されかつ導体からなる複数の周期的要素を備え、前記検出ヘッドは、前記第1トラックおよび前記第2トラックにわたって連続して配線され、前記第1トラックおよび前記第2トラックについて前記複数の周期的要素が発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルを備える電磁誘導式エンコーダにおいて、前記第1トラックの前記送信コイルに送信信号を送信する場合には前記第2トラックの前記送信コイルには前記送信信号を送信せず、前記第2トラックの前記送信コイルに前記送信信号を送信する場合には前記第1トラックの前記送信コイルには前記送信信号を送信しないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信コイルの配線数の低減化が可能な電磁誘導式エンコーダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は第1実施形態に係る電磁誘導式エンコーダの構成を例示する図であり、(b)は検出される正弦波信号を例示する図である。
【
図2】(a)~(c)は比較例に係る受信コイルを例示する図である。
【
図3】比較例に係る受信コイルを例示する図である。
【
図4】(a)~(c)は第1実施形態に係る受信コイルの詳細を例示する図である。
【
図5】第1実施形態に係る受信コイルの詳細を例示する図である。
【
図6】(a)および(b)は電磁誘導式エンコーダの使用方法を例示する図である。
【
図7】(a)~(c)は3トラックに適用される受信コイルの詳細を例示する図である。
【
図8】(a)~(d)は第2実施形態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。
【0015】
(第1実施形態)
図1(a)は、検出ヘッドとスケールとの間の電磁結合を利用した電磁誘導式エンコーダ100の構成を例示する図である。電磁誘導式エンコーダ100は、測定軸方向に相対移動する検出ヘッド10とスケール20とを有する。検出ヘッド10およびスケール20は、それぞれ略平板形状を有し、所定の隙間を介して対向配置されている。また、電磁誘導式エンコーダ100は、送信信号生成部30、変位量測定部40などを備えている。
図1(a)において、X軸は、検出ヘッド10の変位方向(測定軸)を表している。なお、スケール20が構成する平面において、X軸と直交する方向をY軸とする。
【0016】
検出ヘッド10には、送信コイル11、受信コイル12などが設けられている。送信コイル11は、X軸方向に長さ方向を有する矩形コイルを構成している。
図1(a)で例示するように、受信コイル12は、送信コイル11の内側に配置されている。受信コイル12の形状については後述する。
【0017】
スケール20においては、複数の結合導体21が、X軸方向に沿って、基本周期λで配列されている。基本周期λは、X軸方向において、2つの隣接する結合導体21の中心同士の間隔に相当する。各結合導体21は、閉じられた閉ループコイルまたは孔が無い板状の導体である。各結合導体21は、送信コイル11と電磁結合するとともに、受信コイル12と電磁結合する。
【0018】
送信信号生成部30は、単相交流の送信信号を生成し、送信コイル11に供給する。この場合、送信コイル11に磁束が発生する。それにより、複数の結合導体21に起電流が発生する。当該複数の結合導体21は、送信コイル11が発生する磁束と電磁結合することで、X軸方向に所定の空間周期で変化する磁束を発生する。結合導体21が発生する磁束は、受信コイル12に起電流を生じさせる。検出ヘッド10の変位量に応じて結合導体21と受信コイル12との間の電磁結合が変化する。それにより、
図1(b)で例示するように基本周期λと同じ周期の正弦波信号が得られる。したがって、受信コイル12は、複数の結合導体21が発生する磁束の位相を検出する。変位量測定部40は、この正弦波信号を電気的に内挿することによって最小分解能のデジタル量として用いることができ、検出ヘッド10の変位量を測定する。なお、
図1(b)において、横軸は検出ヘッド10の変位量を表し、縦軸は受信コイル12の出力電圧を表す。
【0019】
なお、互いに電磁結合する送信コイル11、受信コイル12および結合導体21が1つのトラックを構成する。本実施形態においては、電磁誘導式エンコーダ100は、第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bを備えている。第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bは、Y軸方向において所定の間隔を空けて配列されている。トラック間で、基本周期λが異なっている。それにより、電磁誘導式エンコーダ100は、アブソリュート(ABS)式エンコーダとして機能する。
【0020】
図2(a)~
図2(c)および
図3は、比較例に係る受信コイル200を例示する図である。
図2(a)は、受信コイル200に含まれる第1コイル201を例示する図である。
図2(b)は、受信コイル200に含まれる第2コイル202を例示する図である。第1コイル201は、X軸のマイナス方向に向かって正弦波状に進み、折り返し、X軸のプラス方向に向かって正弦波状に進む形状を有している。X軸のマイナス方向に向かう正弦波と、X軸のプラス方向に向かう正弦波とは、Y軸について反転させた位置関係にある。
図2(b)で例示するように、第2コイル202も、第1コイル201と同様の構造を有している。
図2(c)で例示するように、第1コイル201と第2コイル202とは、正弦波形状の周期の1/4だけX軸方向にずらすように重なっている。
【0021】
第1コイル201について、2本の引出配線が必要となる。また、第2コイル202について、2本の引出配線が必要となる。したがって、受信コイル200について、4本の引出配線が必要になる。送信コイル11についても、2本の引出配線が必要となる。したがって、
図3で例示するように、第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bにおいて、合計で12本の引出配線が必要となる。ABS長を伸ばすためにトラック数を増やすと、これらの配線もトラック数倍に増えていく。受信コイルを三相構造にすると、さらに引出配線が増える。しかしながら、検出ヘッドの面積は限られており、受信コイルの配線が増えると検出ヘッドの小型化が困難になる。また、信号処理ICへの入力ポート数も増えるため、ICの小型化が難しくなる。小型で、かつ長いABS長を実現するエンコーダを実現するには、受信コイルの配線数を少なくする技術が重要である。
【0022】
そこで、本実施形態に係る電磁誘導式エンコーダ100は、受信コイルの配線数の低減化が可能な構造を有している。
図4(a)~
図4(c)および
図5は、受信コイル12の詳細を例示する図である。受信コイル12は、第1コイル12aおよび第2コイル12bを備えている。第1コイル12aおよび第2コイル12bは、それぞれ、第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bについて共通に備わっている。
【0023】
図4(a)で例示するように、第1コイル12aは、第1トラックTr_Aにおいて、X軸のマイナス方向に向かって正弦波状に進み、折り返し、X軸のプラス方向に向かって正弦波状に進み、第2トラックTr_Bへと延び、X軸のマイナス方向に向かって正弦波状に進み、折り返し、X軸のプラス方向に向かって正弦波状に進み、第1トラックTr_Aへと戻る形状を有している。したがって、第1コイル12aは、第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bにわたって連続して配線されている。第1コイル12aにおいて、X軸のマイナス方向に向かう正弦波と、X軸のプラス方向に向かう正弦波とは、Y軸方向に反転させた位置関係にある。
図4(b)で例示するように、第2コイル12bも、第1コイル12aと同様の構造を有している。
図4(c)で例示するように、第1コイル12aと第2コイル12bとは、正弦波形状の周期の1/4だけX軸方向にずらすように重なっている。
【0024】
この構成では、受信コイル12の引出配線は4本となる。送信コイル11については、それぞれ2本の引出配線が必要となる。したがって、
図5で例示するように、第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bにおいて、引出配線の合計数は8本となる。以上のことから、本実施形態に係る受信コイル12の引出配線数は、比較例に係る受信コイル200の引出配線数と比較して低減される。
【0025】
第1トラックTr_Aの信号を取得するときは、
図6(a)で例示するように、送信信号生成部30は、第2トラックTr_Bの送信コイル11には送信信号を送信せずに、第1トラックTr_Aの送信コイル11に送信信号を送信する。一方、第2トラックTr_Bの信号を取得するときは、
図6(b)で例示するように、送信信号生成部30は、第1トラックTr_Aの送信コイル11には送信信号を送信せずに、第2トラックTr_Bの送信コイル11に送信信号を送信する。各トラックの送信コイル11を異なるタイミングで駆動することで、取得するトラックの信号を選択することができる。
【0026】
なお、上記例では、送信コイル11が、第1トラックおよび第2トラックのそれぞれについて、磁束を発生する送信コイルの一例である。結合導体21が、第1トラックおよび第2トラックのそれぞれについて、測定軸方向に周期的に配置されかつ導体からなる複数の周期的要素の一例である。受信コイル12が、第1トラックおよび第2トラックにわたって連続して配線され、第1トラックおよび第2トラックについて複数の周期的要素が発生する磁束と電磁結合して当該磁束の位相を検出する受信コイルの一例である。送信信号生成部30が、第1トラックおよび第2トラックの送信コイルに送信信号を送信する送信信号生成部の一例である、変位量測定部40が、受信コイルからの信号に応じて検出ヘッドとスケールとの間の相対変位量を測定する変位量測定部の一例である。
【0027】
(変形例)
図5の例では、トラック数を2としたが、それに限られない。トラック数は3以上であってもよい。
図7(a)~
図7(c)は、3トラックに適用される受信コイル12の詳細を例示する図である。本変形例においては、第1コイル12aおよび第2コイル12bは、それぞれ、第1トラックTr_A、第2トラックTr_Bおよび第3トラックTr_Cについて共通に備わっている。送信コイル11も、第1トラックTr_A~第3トラックTr_Cのそれぞれについて備わっている。
【0028】
図7(a)で例示するように、第1コイル12aは、第1トラックTr_Aにおいて、X軸のマイナス方向に向かって正弦波状に進み、折り返し、X軸のプラス方向に向かって正弦波状に進み、第2トラックTr_Bへと延び、X軸のマイナス方向に向かって正弦波状に進み、折り返し、X軸のプラス方向に向かって正弦波状に進み、第3トラックTr_Cへと延び、X軸のマイナス方向に向かって正弦波状に進み、折り返し、X軸のプラス方向に向かって正弦波状に進み、第1トラックTr_Aへと戻る形状を有している。すなわち、第1コイル12aは、第1トラックTr_A~第3トラックTr_Cにわたって連続して配線されている。第1コイル12aにおいて、X軸のマイナス方向に向かう正弦波と、X軸のプラス方向に向かう正弦波とは、Y軸方向について反転させた位置関係にある。
図7(b)で例示するように、第2コイル12bも、第1コイル12aと同様の構造を有している。
図7(c)で例示するように、第1コイル12aと第2コイル12bとは、正弦波形状の周期の1/4だけX軸方向にずらすように重なっている。
【0029】
この構成においても、受信コイル12の引出配線は4本となる。送信コイル11については、それぞれ2本の引出配線が必要となる。したがって、
図7(c)で例示するように、第1トラックTr_A~第3トラックTr_Cにおいて、引出配線の合計数は10本となる。以上のことから、本実施形態に係る受信コイル12の引出配線数は、各トラックについて受信コイルに2本の引出配線を設ける場合と比較して低減される。
【0030】
第1トラックTr_Aの信号を取得するときは、送信信号生成部30は、第2トラックTr_Bおよび第3トラックTr_Cの送信コイル11には送信信号を送信せずに、第1トラックTr_Aの送信コイル11に送信信号を送信する。第2トラックTr_Bの信号を取得するときは、送信信号生成部30は、第1トラックTr_Aおよび第3トラックTr_Cの送信コイル11には送信信号を送信せずに、第2トラックTr_Bの送信コイル11に送信信号を送信する。第3トラックTr_Cの信号を取得するときは、送信信号生成部30は、第1トラックTr_Aおよび第2トラックTr_Bの送信コイル11には送信信号を送信せずに、第3トラックTr_Cの送信コイル11に送信信号を送信する。各トラックの送信コイル11を異なるタイミングで駆動することで、取得するトラックの信号を選択することができる。
【0031】
(第2実施形態)
図8(a)は、第2実施形態に係る送信コイル11aを例示する図である。送信コイル11aは、X軸方向に長さ方向を有する矩形コイルがY軸方向に2つ並び、各矩形コイルでの電流の向きが逆向きになるように配線されたツイスト構造を有している。すなわち、送信コイル11aは、2段のコイルを有している。
【0032】
本実施形態においては、説明の簡略化のために、
図8(b)で例示するように、受信コイル12を、2つのコイルがX軸方向に2つ並び、各コイルでの電流の向きが逆向きになるように配線されたツイスト構造として表す。受信コイル12のコイルの両方とも、送信コイル11aの両方の矩形コイルにまたがっている。
【0033】
スケール20Aは、第1トラックTr_Aについて、周期的に配置された複数の要素が互いに接続された構造を有している。
図8(c)で例示するように、スケール20Aは、X軸方向に沿って、導体であって矩形状を有する複数の周期的要素21aが基本周期λで配列され、各周期的要素21aが、導体の接続部22で接続された構造を有している。各周期的要素21aは、送信コイル11aと電磁結合するとともに、受信コイル12と電磁結合している。周期的要素21aは、
図8(c)で例示するように、Y軸方向に異なる位置に配置された2つの矩形をX軸方向にずらしつつ接続した形状を有する。2つの矩形の中心同士のX軸方向における距離は、受信コイル12の2つのコイルの中心同士のX軸方向における距離と略同一である。周期的要素21aがこのような形状を有することで、受信コイル12の一方のコイルが周期的要素21aの一方の矩形に位置する場合に、受信コイル12の他方のコイルが周期的要素21aの他方の矩形に位置する。各周期的要素21aは、導体の接続部22で接続されている。Y軸方向において、接続部22の幅は、周期的要素21aの幅よりも小さくなっている。
図8(c)の例では、各周期的要素21aのY軸方向の端部同士が、接続部22で接続されている。
【0034】
第2トラックTr_Bのスケール20Bに備わる周期的要素21aおよび接続部22も、第1トラックTr_Aの周期的要素21aおよび接続部22と同様の構造を有している。周期的要素21aの基本周期は、トラック間で異なっている。トラック間で基本周期が同一であっても、トラック間で周期的要素21aの位置がX軸方向においてずれている。それにより、アブソリュート式エンコーダが実現される。
【0035】
送信信号生成部30から第1トラックTr_Aの送信コイル11aに単相交流の送信信号が供給されると、第1トラックTr_Aの送信コイル11aに磁束が発生する。それにより、第1トラックTr_Aの複数の周期的要素21aに起電流が発生する。
図8(d)で例示するように、第2トラックTr_Bの各周期的要素21aでは、第2トラックTr_Bの送信コイル11aのうち第2トラックTr_Bに最も近い部分の電流の流れと逆向きに、渦電流が流れようとする。しかしながら、本実施形態においては、各周期的要素21aが接続部22によって互いに接続されていることから、第2トラックTr_Bのスケール20Bの広範囲に、略均一な電流が流れることになる。したがって、スケール位置によって第2トラックTr_Bからの影響が強くなったり弱くなったりする状態が緩和される。すなわち、トラック間の影響が抑制される。その結果、測定精度が向上する。
【0036】
また、第1トラックTr_Aの周期的要素21aでは、各矩形領域で反対の電流が発生する。具体的には、第1トラックTr_Aにおいて、各周期的要素21aに、送信コイル11aの各矩形コイルに対応する位置で、互いに逆向きの渦電流が発生する。これを受信コイル12の各コイルで受信することで、信号を検出することができる。このように、Y軸方向につながった領域において、Y軸方向にずれた各箇所で互いに逆向きの渦電流を発生させることで、各周期的要素21aが互いに接続されていても、各渦電流が受信コイル12の各コイルと電磁結合することで、信号を検出することができる。
【0037】
以上のことから、本実施形態によれば、受信コイル12が第1トラックTr_Aと第2トラックTr_Bとで繋がっていても、隣のトラックのスケールを介した信号の混入が抑制される。
【0038】
上記例において、送信コイル11aが、第1トラックおよび第2トラックについて、磁束を発生する送信コイルの一例である。周期的要素21aが、第1トラックおよび第2トラックのそれぞれについて、測定軸方向に周期的に配置されかつ導体からなる複数の周期的要素の一例である。
【0039】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0040】
10 検出ヘッド
11 送信コイル
12 受信コイル
12a 第1コイル
12b 第2コイル
20 スケール
21 結合導体
21a 周期的要素
22 接続部
30 送信信号生成部
40 変位量測定部
100 電磁誘導式エンコーダ