(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ソケット付き電線、電線の接続構造、電線の接続方法、及びソケット付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01R 4/20 20060101AFI20240206BHJP
H01R 4/72 20060101ALI20240206BHJP
H01R 13/187 20060101ALI20240206BHJP
H01R 4/60 20060101ALI20240206BHJP
H01R 43/048 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01R4/20
H01R4/72
H01R13/187 B
H01R4/60
H01R43/048 Z
(21)【出願番号】P 2020004340
(22)【出願日】2020-01-15
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000117010
【氏名又は名称】古河電工パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭介
(72)【発明者】
【氏名】富田 一成
(72)【発明者】
【氏名】森 澄人
(72)【発明者】
【氏名】関野 潔
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-096532(JP,A)
【文献】特開2013-251101(JP,A)
【文献】特表2015-535140(JP,A)
【文献】特開2019-153578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0273669(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00- 4/22
H01R 4/58- 4/72
H01R13/00-13/08
H01R13/15-13/35
H01R43/027-43/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体部と前記本体部に隣接する端部とを有する電線と、
ソケットと、を備え、
前記本体部は、
筒状に束ねられた複数の導線を有する導体と、
前記導体の中空部に配置された円筒状の心材と、
前記導体を被覆する絶縁被覆と、
前記心材の内側に形成された中空と、を有し、
前記端部は、
前記導体と、
前記心材と別体であり、前記導体の中空部に配置された
円柱状の中子と、
を有し、
前記ソケットは、
前記導体と電気的に接続されており、且つ
前記
端部の前記導体が、前記導体の軸方向に挿入される第1挿入部と、
接続用ピンが挿入可能な第2挿入部と、を有し、
前記
端部の前記導体は、前記ソケットと前記中子とによって前記導体の径方向に圧縮される、ソケット付き電線。
【請求項2】
請求項1に記載のソケット付き電線であって、
前記第2挿入部の内面に沿って配置された筒状の多点接触子をさらに備え、
前記多点接触子の内径は、前記中子が前記中空部に配置された前記
端部の前記導体の外径以上である、ソケット付き電線。
【請求項3】
請求項2に記載のソケット付き電線と、
前記第2挿入部に挿入される前記接続用ピンと、
を備える、電線の接続構造。
【請求項4】
請求項3に記載の電線の接続構造であって、
前記ソケットの外周面に螺合すると共に、前記接続用ピンの前記ソケットからの離脱方向への移動を規制する袋ナットをさらに備える、電線の接続構造。
【請求項5】
請求項4に記載の電線の接続構造であって、
前記ソケット、前記接続用ピン、及び前記袋ナットを被覆する収縮チューブをさらに備える、電線の接続構造。
【請求項6】
筒状に束ねられた複数の導線を有する導体と、前記導体を被覆する絶縁被覆と、を備える電線の接続方法であって、
前記導体の端部において前記導体の中空部に中子を配置する工程と、
前記中子が配置された前記導体の端部を、ソケットの第1挿入部に前記導体の軸方向に沿って挿入する工程と、
前記第1挿入部に挿入された前記導体の端部を、前記ソケットと前記中子とによって前記導体の径方向に圧縮する工程と、
前記導体の圧縮後に、前記ソケットの第2挿入部に接続用ピンを挿入する工程と、
を備える、電線の接続方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電線の接続方法であって、
前記接続用ピンの前記ソケットからの離脱方向への移動を規制する袋ナットを前記接続用ピンに挿通する工程と、
前記袋ナットを前記ソケットの外周面に螺合する工程と、
をさらに備える、電線の接続方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電線の接続方法であって、
前記ソケット、前記接続用ピン、及び前記袋ナットを収縮チューブで被覆する工程をさらに備える、電線の接続方法。
【請求項9】
筒状に束ねられた複数の導線を有する導体と、前記導体を被覆する絶縁被覆と、前記導体と電気的に接続されたソケットと、を備えるソケット付き電線の製造方法であって、
前記導体の端部において前記導体の中空部に中子を配置する工程と、
前記中子が配置された前記導体の端部を、前記ソケットの第1挿入部に前記導体の軸方向に沿って挿入する工程と、
前記第1挿入部に挿入された前記導体の端部を、前記ソケットと前記中子とによって前記導体の径方向に圧縮する工程と、
を備える、ソケット付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ソケット付き電線、電線の接続構造、電線の接続方法、及びソケット付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波送電用の電線として、エナメル線をより合わせたリッツ線が従来用いられている。また、リッツ線に代えて、中心に芯材を配置した電線(以下、「非リッツ線」ともいう。)を高周波送電に使用することも提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波送電用の電線同士の接続構造においては、リッツ線であるか非リッツ線であるかにかかわらず、一般には電線の導体を径方向に圧縮することで接続用の端子(つまり接続用ピン又はソケット)が形成される。
【0005】
しかし、導体をこのように圧縮すると導体径が小さくなる。そのため、電線の表皮効果による抵抗増加が発生し、高周波通電時に導体の温度上昇が発生する。このような温度上昇が許容値を超えると、通電が妨げられる。
【0006】
本開示の一局面は、表皮効果による抵抗増加を抑制できるソケット付き電線を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、筒状に束ねられた複数の導線を有する導体と、導体を被覆する絶縁被覆と、導体の端部において導体の中空部に配置された中子と、導体と電気的に接続されたソケットと、を備えるソケット付き電線である。ソケットは、導体の端部が導体の軸方向に挿入される第1挿入部と、接続用ピンが挿入可能な第2挿入部と、を有する。導体の端部は、ソケットと中子とによって導体の径方向に圧縮される。
【0008】
このような構成によれば、中子によって導体の圧縮時に導体径が小さくなることが抑制される。その結果、ソケットに接続される導体の端部において、表皮効果による抵抗増加を抑制できる。
【0009】
本開示の一態様は、第2挿入部の内面に沿って配置された筒状の多点接触子をさらに備えてもよい。多点接触子の内径は、中子が中空部に配置された導体の端部の外径以上であってもよい。このような構成によれば、ソケットと接続用ピンとが接続される第2挿入部における温度上昇を抑制できる。
【0010】
本開示の別の態様は、上記ソケット付き電線と、第2挿入部に挿入される接続用ピンと、を備える電線の接続構造である。
【0011】
本開示の一態様は、ソケットの外周面に螺合すると共に、接続用ピンのソケットからの離脱方向への移動を規制する袋ナットをさらに備えてもよい。袋ナットによって、接続用ピンのソケットからの脱落が抑制できる。その結果、電線間の接続信頼性を高めることができる。
【0012】
本開示の一態様は、ソケット、接続用ピン、及び袋ナットを被覆する収縮チューブをさらに備えてもよい。このような構成によれば、収縮チューブによって、ソケット及び接続用ピンを保護しつつ、袋ナットの緩みを抑制できる。そのため、電線間の接続信頼性をさらに高めることができる。
【0013】
本開示の別の態様は、筒状に束ねられた複数の導線を有する導体と、導体を被覆する絶縁被覆と、を備える電線の接続方法である。電線の接続方法は、導体の端部において導体の中空部に中子を配置する工程と、中子が配置された導体の端部を、ソケットの第1挿入部に導体の軸方向に沿って挿入する工程と、第1挿入部に挿入された導体の端部を、ソケットと中子とによって導体の径方向に圧縮する工程と、導体の圧縮後に、ソケットの第2挿入部に接続用ピンを挿入する工程と、を備える。
【0014】
このような構成によれば、中子によって導体の圧縮時に導体径が小さくなることが抑制される。その結果、ソケットに接続される導体の端部において、表皮効果による抵抗増加を抑制できる。
【0015】
本開示の一態様は、接続用ピンのソケットからの離脱方向への移動を規制する袋ナットを接続用ピンに挿通する工程と、袋ナットをソケットの外周面に螺合する工程と、をさらに備えてもよい。このような構成によれば、袋ナットによって、ソケット及び接続用ピンを保護しつつ、接続用ピンのソケットからの脱落が抑制できる。その結果、電線間の接続信頼性を高めることができる。
【0016】
本開示の一態様は、ソケット、接続用ピン、及び袋ナットを収縮チューブで被覆する工程をさらに備えてもよい。このような構成によれば、収縮チューブによって、袋ナットの緩みを抑制できる。そのため、電線間の接続信頼性をさらに高めることができる。
【0017】
本開示の別の態様は、筒状に束ねられた複数の導線を有する導体と、導体を被覆する絶縁被覆と、導体と電気的に接続されたソケットと、を備えるソケット付き電線の製造方法である。ソケット付き電線の製造方法は、導体の端部において導体の中空部に中子を配置する工程と、中子が配置された導体の端部を、ソケットの第1挿入部に導体の軸方向に沿って挿入する工程と、第1挿入部に挿入された導体の端部を、ソケットと中子とによって導体の径方向に圧縮する工程と、を備える。
【0018】
このような構成によれば、中子によって導体の圧縮時に導体径が小さくなることが抑制される。その結果、ソケットに接続される導体の端部において、表皮効果による抵抗増加が抑制されたソケット付き電線が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態における電線の接続構造の模式的な断面図である。
【
図2】
図2Aは、
図1のIIA-IIA線での模式的な断面図であり、
図2Bは、
図1のIIB-IIB線での模式的な断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態における電線の接続方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す電線の接続構造(以下、単に「接続構造」ともいう。)1は、電線同士を電気的に接続するための構造である。
【0021】
接続構造1が接続する電線の種類は特に限定されない。接続構造1は、特に高周波電流の伝送に用いられる電線に好適に使用できる。具体的には、接続構造1は、移動体(例えば、鉄道車両、自動車、工場内の搬送装置等)への非接触給電用のコイル、電気高炉における電源内配線又は給電路などにおいて使用できる。
【0022】
接続構造1は、ソケット付き電線10と、接続用ピン付き電線20と、袋ナット30と、収縮チューブ40とを備える。
【0023】
<ソケット付き電線>
ソケット付き電線10は、第1導体11と、第1絶縁被覆12と、第1心材13と、第1中子14と、ソケット15とを備える。
【0024】
(導体)
第1導体11は、
図2Aに示すように、筒状に束ねられた複数の導線から構成されている。第1導体11を構成する導線は、金属製である。複数の導線は、第1導体11の周方向に旋回するように螺旋状に撚られている。
【0025】
(絶縁被覆)
第1絶縁被覆12は、第1導体11の外周面を被覆する絶縁体である。第1絶縁被覆12は、例えば絶縁性の樹脂によって形成される。第1絶縁被覆12は、第1導体11の長手方向において、端部11Aを除いた残りの部分を被覆している。
【0026】
(心材)
第1心材13は、円筒状の絶縁体である。第1心材13は、第1導体11の内側、つまり第1導体11の中空部に配置されている。第1導体11を構成する複数の導線は、第1心材13の外周面に沿って配置されることで、筒状に束ねられている。
【0027】
図1に示すように、第1心材13は、第1導体11の端部11A(つまり、第1絶縁被覆12に被覆されていない部分)には配置されていない。第1心材13は、例えば、絶縁性の樹脂、セラミック等で形成される。第1導体11、第1絶縁被覆12及び第1心材13は、ソケット付き電線10の電線本体10Aを構成している。
【0028】
(中子)
第1中子14は、第1導体11の端部11Aにおいて第1導体11の中空部に配置された円柱状の部材である。第1中子14の外径は、第1導体11のうちソケット15に挿入され、かつ圧縮処理された部分の外径が、第1絶縁被覆12で被覆された部分の外径と略等しくなる大きさとされる。第1中子14は、ソケット15の外に一部が突出している。ただし、第1中子14は、全体がソケット15の内部に配置されてもよい。
【0029】
第1中子14は、弾性変形及び塑性変形をしない素材で構成されている。第1中子14は、導電性であってもよいし、絶縁性であってもよい。したがって、第1中子14は、金属(例えば銅)、樹脂、セラミック等で形成することができる。第1中子14は、内部に空洞を有してもよい。
【0030】
(ソケット)
ソケット15は、接続用ピン付き電線20の接続用ピン25が挿入される金属製のメス端子である。また、ソケット15は、第1導体11と電気的に接続されている。ソケット15は、第1挿入部15Aと、第2挿入部15Bと、ネジ溝15Cとを有する。
【0031】
第1挿入部15Aは、第1導体11の端部11Aが第1導体11の軸方向に挿入される部位である。第1挿入部15Aは、第1導体11の軸方向と平行な軸を有する円柱状の中空部を有する。第1挿入部15Aの内径(つまり中空部の外径)は、第1導体11の端部11Aの外径と略等しい。
【0032】
第1導体11の端部11Aは、ソケット15と第1中子14とによって第1導体11の径方向に圧縮されている。また、第1導体11の端部11Aは、第1導体11の周方向全体にわたって圧縮されている。
【0033】
具体的には、第1導体11の端部11Aは、第1挿入部15Aの内周面によって、第1中子14の外周面に押圧されている。つまり、ソケット15によって、第1導体11は加締められている。そのため、
図2Bに示すように、第1挿入部15Aと第1導体11とが密着し、両者の電気的接続が確保されている。第1導体11の端部11A、第1中子14及びソケット15は、ソケット付き電線10の端子部10Bを構成している。
【0034】
第2挿入部15Bは、接続用ピン25が軸方向に挿入可能な部位である。第2挿入部15Bは、接続用ピン25の軸方向と平行な軸を有する円柱状の中空部を有する。第2挿入部15Bは、ソケット15の第1導体11の軸方向において、第1挿入部15Aが設けられた端部とは反対側の端部に設けられている。
【0035】
第2挿入部15Bの中空部は、第1挿入部15Aの中空部と隔離されている。ただし、第2挿入部15Bの中空部は、第1挿入部15Aの中空部と連通していてもよい。つまり、第1導体11の端部11Aが挿入される空間と、接続用ピン25が挿入される空間とは連通していてもよい。
【0036】
第1挿入部15Aへの第1導体11の挿入方向と、第2挿入部15Bへの接続用ピン25の挿入方向とは平行である。また、ソケット15内において、第1導体11の中心軸と、接続用ピン25の中心軸とは同一直線上に位置する。
【0037】
ネジ溝15Cは、第2挿入部15Bの外周面に設けられている。ネジ溝15Cには、後述する袋ナット30が螺合している。ネジ溝15Cは、ソケット15の径方向において接続用ピン25と重なる位置に配置されている。
【0038】
<多点接触子>
多点接触子16は、第2挿入部15Bの内周面に沿って配置された筒状の金属部品である。具体的には、多点接触子16は、金属製の網バンドを円筒状に加工したバンドコンタクトである。多点接触子16の内径は、第1中子14が中空部に配置された第1導体11の端部11Aの外径と等しい。なお、多点接触子16の内径は、第1導体11の端部11Aの外径よりも大きくてもよい。
【0039】
多点接触子16は、第2挿入部15Bの内周面に固定されている。多点接触子16は、接続用ピン25の径方向において、第2挿入部15Bと接続用ピン25との間に配置されている。
【0040】
多点接触子16は、第2挿入部15B及び接続用ピン25のそれぞれに、互いに離間した複数の接触点で接触している。換言すれば、第2挿入部15Bと接続用ピン25との通電経路は、多点接触子16によって接続用ピン25の軸方向及び周方向において複数に分割されている。
【0041】
<接続用ピン付き電線>
接続用ピン付き電線20は、第2導体21と、第2絶縁被覆22と、第2心材23と、第2中子24と、接続用ピン25とを備える。
【0042】
第2導体21、第2絶縁被覆22、第2心材23及び第2中子24は、ソケット付き電線10の第1導体11、第1絶縁被覆12、第1心材13及び第1中子14と同じものである。第2導体21の端部21Aにおいて、第2導体21の中空部に第2中子24が配置されている。
【0043】
接続用ピン25には、第2導体21の端部21Aが挿入されている。また、接続用ピン25は、第2導体21の軸方向に突出している。接続用ピン25は、ソケット15に挿入されることでソケット15と電気的に接続される金属製のオス端子である。接続用ピン25は、先端部25Aと、鍔部25Bと、筒部25Cとを有する。
【0044】
先端部25Aは、ソケット15に挿入される円柱状の部位である。鍔部25Bは、先端部25Aの根元に配置され、先端部25Aよりも接続用ピン25の径方向外側に突出した部位である。筒部25Cは、鍔部25Bの先端部25Aとは反対側に配置され、第2導体21の端部21Aと第2中子24とが収納される内部空間を有する円筒状の部位である。
【0045】
<袋ナット>
袋ナット30は、ソケット15の外周面のネジ溝15Cに螺合した金属製のナットである。袋ナット30は、ソケット15の一部(つまり第2挿入部15B)と、接続用ピン25の一部(つまり先端部25A及び鍔部25B)とを囲うように配置されている。
【0046】
袋ナット30は、ソケット15に螺合したナット本体31と、接続用ピン25のソケット15からの離脱方向への移動を規制する規制部32とを有する。規制部32は、袋ナット30の後端部(つまり、接続用ピン25の挿入方向を前方としたときの後方の端部)に設けられている。
【0047】
規制部32は、ナット本体31よりも径方向内側に突出している。規制部32は、接続用ピン25の鍔部25Bに後方から当接している。そのため、接続用ピン25は、規制部32によって、後方への移動が規制される。なお、袋ナット30は、ソケット15への螺合時に接続用ピン25の挿入方向に送られる。
【0048】
<収縮チューブ>
収縮チューブ40は、ソケット15、接続用ピン25及び袋ナット30を被覆している。収縮チューブ40としては、公知の常温で収縮する樹脂チューブが使用できる。
【0049】
本実施形態では、収縮チューブ40は、ソケット15の全体と、袋ナット30の全体と、接続用ピン25の全体と、第1絶縁被覆12の一部と、第2絶縁被覆22の一部とを被覆している。
【0050】
[1-2.製造方法]
次に、接続構造1の製造方法(つまり、電線の接続方法)について説明する。本実施形態の電線の接続方法は、
図3に示すように、中子配置工程S10と、袋ナット挿通工程S20と、導体挿入工程S30と、圧縮工程S40と、接続用ピン挿入工程S50と、袋ナット螺合工程S60と、収縮チューブ被覆工程S70とを備える。
【0051】
なお、接続構造1の製造方法において、中子配置工程S10と、導体挿入工程S30と、圧縮工程S40とは、ソケット付き電線10の製造方法を構成している。
【0052】
<中子配置工程>
本工程では、電線本体10Aから突出した第1導体11の端部11Aにおいて第1導体11の中空部に第1中子14を配置する。
【0053】
<袋ナット挿通工程>
本工程では、接続用ピン25のソケット15からの離脱方向への移動を規制する袋ナット30を、接続用ピン付き電線20の接続用ピン25に挿通する。なお、本工程は、中子配置工程S10よりも先に行われてもよい。
【0054】
<導体挿入工程>
本工程では、第1中子14が配置された第1導体11の端部11Aを、ソケット15の第1挿入部15Aに第1導体11の軸方向に沿って挿入する。
【0055】
<圧縮工程>
本工程では、第1挿入部15Aに挿入された第1導体11の端部11Aを、ソケット15と第1中子14とによって第1導体11の径方向に圧縮する。
【0056】
具体的には、第1導体11の端部11Aを第1中子14と共に第1挿入部15Aに挿入した状態で、第1挿入部15Aを外側から径方向にプレスする。これを第1挿入部15Aの周方向全体に対して繰り返すことで、第1挿入部15Aを縮径させると共に、第1導体11を圧縮する。これにより、ソケット付き電線10が得られる。
【0057】
<接続用ピン挿入工程>
本工程では、第1導体11の圧縮後に、ソケット15の第2挿入部15Bに接続用ピン25を挿入することで、接続用ピン25をソケット15に電気的に接続する。
【0058】
<袋ナット螺合工程>
本工程では、袋ナット30をソケット15の外周面に螺合する。これにより、袋ナット30の規制部32が接続用ピン25の鍔部25Bに当接する。
【0059】
<収縮チューブ被覆工程>
本工程では、ソケット15、接続用ピン25及び袋ナット30を収縮チューブ40で被覆する。具体的には、収縮前の収縮チューブ40をこれらの部材に被せた上で、収縮チューブ40を収縮させる。
【0060】
[1-3.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1中子14によって第1導体11の圧縮時に導体径が小さくなることが抑制される。その結果、ソケット15に接続される第1導体11の端部11Aにおいて、表皮効果による抵抗増加を抑制できる。
【0061】
(1b)内径が第1導体11の端部11Aの外径以上である多点接触子16を第2挿入部15Bに配置することで、ソケット15と接続用ピン25とが接続される第2挿入部15Bにおける温度上昇を抑制できる。
【0062】
(1c)袋ナット30によって、接続用ピン25のソケット15からの脱落が抑制できる。その結果、ソケット付き電線10と接続用ピン付き電線20との間の接続信頼性を高めることができる。
【0063】
(1d)収縮チューブ40によって、ソケット15及び接続用ピン25を保護しつつ、袋ナット30の緩みを抑制できる。そのため、ソケット付き電線10と接続用ピン付き電線20との間の接続信頼性をさらに高めることができる。
【0064】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0065】
(2a)上記実施形態の電線の接続構造1は、必ずしも袋ナット30を備えなくてもよい。また、上記実施形態の電線の接続構造1は、必ずしも収縮チューブ40を備えなくてもよい。
【0066】
(2b)上記実施形態の電線の接続構造1において、多点接触子16の内径は、第1中子14が中空部に配置された第1導体11の端部11Aの外径よりも小さくてもよい。また、ソケット付き電線10は、必ずしも多点接触子16を有しなくてもよい。
【0067】
(2c)上記実施形態の電線の接続構造1において、接続用ピン付き電線20は、必ずしも第2中子24を有しなくてもよい。つまり、接続用ピン付き電線20の第2導体21の端部21Aの外径は、第2導体21の第2絶縁被覆22で被覆された部分の外径よりも小さくてもよい。
【0068】
(2d)上記実施形態の電線の接続構造1において、第1挿入部15Aへの第1導体11の端部11Aの挿入方向と、第2挿入部15Bへの接続用ピン25の挿入方向とは交差していてもよい。
【0069】
(2e)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0070】
1…電線の接続構造、10…ソケット付き電線、10A…電線本体、10B…端子部、
11…第1導体、11A…端部、12…第1絶縁被覆、13…第1心材、
14…第1中子、15…ソケット、15A…第1挿入部、15B…第2挿入部、
15C…ネジ溝、16…多点接触子、20…接続用ピン付き電線、21…第2導体、
21A…端部、22…第2絶縁被覆、23…第2心材、24…第2中子、
25…接続用ピン、25A…先端部、25B…鍔部、25C…筒部、30…袋ナット、
31…ナット本体、32…規制部、40…収縮チューブ。