(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20240206BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240206BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240206BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/02 C
H01L21/304 631
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2020022228
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克彦
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207386(JP,A)
【文献】特開2007-019379(JP,A)
【文献】特開2009-141023(JP,A)
【文献】特開2017-079291(JP,A)
【文献】国際公開第2017/078045(WO,A1)
【文献】特開2015-167206(JP,A)
【文献】特開2007-019461(JP,A)
【文献】特開2017-112158(JP,A)
【文献】国際公開第2015/056303(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
H01L 21/02
H01L 21/304
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面におけるストリートによって区画された領域に複数のデバイスが形成されているウェーハの加工方法であって、
ウェーハの一方の面に、その全面を耐熱性の樹脂で被覆することによって保護部材を形成する保護部材形成工程と、
該ウェーハの他方の面の中央を研削することによって、凹部および該凹部の外周に沿った環状凸部を形成する研削工程と、
真空室内で、該保護部材を介して該ウェーハを静電チャックによって保持し、該凹部の底面に金属層を形成する金属層形成工程と、
該金属層形成工程の後、該ウェーハの該金属層の表面をダイシングテープで保護し、
該ウェーハの該保護部材側が上向きとなるように、該ダイシングテープを介して該ウェーハをダイシングテーブルによって保持する保持工程と、
該ダイシングテーブルに保持された該ウェーハの該底面の外周に沿って、該保護部材側から、該保護部材と該ウェーハとに、環状の分割加工を施す環状加工工程と、
該環状加工工程の後、
該ダイシングテーブルに保持されている該ウェーハから
、該環状凸部
、および、該環状加工工程において分割加工された該保護部材における該環状凸部を被覆している部分を除去する環状凸部除去工程と、
該環状凸部除去工程の後、
該ダイシングテーブルに保持されている該環状凸部が除去された該ウェーハから該保護部材を除去する保護部材除去工程と、
該保護部材除去工程の後、該ストリートに沿って
該ダイシングテーブルに保持されている該ウェーハを切断することによって、該ウェーハを小片化する切断工程と、を含み、
該保護部材形成工程において該ウェーハに形成した該保護部材を、該研削工程から該環状加工工程までの工程にも用いる、
ウェーハの加工方法。
【請求項2】
該樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いる、
請求項1記載のウェーハの加工方法。
【請求項3】
該保護部材形成工程は、
該ウェーハの該一方の面の全面に液状樹脂を行きわたらせること、および、
該液状樹脂に外的刺激を加えて該液状樹脂を硬化させること、を含む、
請求項1記載のウェーハの加工方法。
【請求項4】
該保護部材形成工程は、シート状の樹脂を該ウェーハの一方の面に配置すること、および、
該シート状の樹脂に熱を加えて該ウェーハに密着させること、を含む、
請求項1記載のウェーハの加工方法。
【請求項5】
該保護部材除去工程は、
該保護部材の外周よりも外側から、該保護部材の外周に向かってエアを噴射することにより、該保護部材と該ウェーハの一方の面との間にエアを介入させて、該保護部材を吹き飛ばして該ウェーハから除去すること、を含む、
請求項1記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、TAIKOウェーハは、円板状のウェーハの中央部分を研削することによって形成され、中央部に凹部を有するとともに、その周囲に環状凸部を有している。この文献に記載の技術では、真空チャンバー内で、TAIKOウェーハの凹部の反対面を静電チャックによって吸着保持し、真空室内で凹部の底面に金属層を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
TAIKOウェーハでは、およそ700μmのウェーハを研削することによって、凹部が、150μm以下の厚みを有するように薄化されている。よって、凹部と環状凸部との境では、厚みが急激に変化している。このようなTAIKOウェーハを静電チャックによって吸着保持して、凹部の底面に金属層を形成すると、凹部と環状凸部との境で、TAIKOウェーハが割れることがある。
この割れの要因として、たとえば、以下の(1)~(4)に示す事実が考えられる。
【0005】
(1)TAIKOウェーハは、凹部を形成するための研削により、研削され薄くなった凹部の底面と環状凸部との境は僅かに平坦さを失う場合がある。静電チャックは、平坦な吸着面により、強い吸着力でTAIKOウェーハの凹部の底面の反対面(下面)を吸着するため、平坦でないTAIKOウェーハの凹部と環状凸部との境が、吸着によって割れる。
【0006】
(2)真空チャンバーの内壁の微細な成膜屑が、静電チャック上面におちて、静電チャック上面とTAIKOウェーハ下面との間に挟み込まれた状態で、TAIKOウェーハが強い吸着力で吸着面に吸着されて、TAIKOウェーハが割れる。
【0007】
(3)金属層の形成などの後、静電チャックの吸着面からTAIKOウェーハを離間させるために、TAIKOウェーハを突き上げピンで突き上げている。この突き上げによる衝撃で、TAIKOウェーハが割れる。
【0008】
(4)凹部を形成するためにTAIKOウェーハに貼着した保護テープを、金属層の形成前に剥離する。保護テープは、研削加工時の研削水の進入を防止するために強い貼着力で貼着されている。その強い貼着力の保護テープを剥離するためにTAIKOウェーハに強い力が加わって、TAIKOウェーハが割れる。
また、TAIKOウェーハが薄化された部分と薄化されない部分との境が発生するためにテープ剥離の際に衝撃が加わって、TAIKOウェーハが割れる。
【0009】
したがって、本発明の目的は、金属層の形成に際して、TAIKOウェーハが割れることを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかるウェーハの加工方法(本加工方法)は、一方の面におけるストリートによって区画された領域に複数のデバイスが形成されているウェーハの加工方法であって、ウェーハの一方の面に、その全面を耐熱性の樹脂で被覆することによって保護部材を形成する保護部材形成工程と、該ウェーハの他方の面の中央を研削することによって、凹部および該凹部の外周に沿った環状凸部を形成する研削工程と、真空室内で、該保護部材を介して該ウェーハを静電チャックによって保持し、該凹部の底面に金属層を形成する金属層形成工程と、該金属層形成工程の後、該ウェーハの該金属層の表面をダイシングテープで保護し、該ウェーハの該保護部材側が上向きとなるように、該ダイシングテープを介して該ウェーハをダイシングテーブルによって保持する保持工程と、該ダイシングテーブルに保持された該ウェーハの該底面の外周に沿って、該保護部材側から、該保護部材と該ウェーハとに、環状の分割加工を施す環状加工工程と、該環状加工工程の後、該ダイシングテーブルに保持されている該ウェーハから、該環状凸部、および、該環状加工工程において分割加工された該保護部材における該環状凸部を被覆している部分を除去する環状凸部除去工程と、該環状凸部除去工程の後、該ダイシングテーブルに保持されている該環状凸部が除去された該ウェーハから該保護部材を除去する保護部材除去工程と、該保護部材除去工程の後、該ストリートに沿って該ダイシングテーブルに保持されている該ウェーハを切断することによって、該ウェーハを小片化する切断工程と、を含み、該保護部材形成工程において該ウェーハに形成した該保護部材を、該研削工程から該環状加工工程までの工程にも用いる。
【0011】
本加工方法では、該樹脂として、紫外線硬化性樹脂を用いてもよい。
【0012】
本加工方法では、該保護部材形成工程は、該ウェーハの該一方の面の全面に液状樹脂を行きわたらせること、および、該液状樹脂に外的刺激を加えて該液状樹脂を硬化させること、を含んでもよい。
【0013】
あるいは、本加工方法では、該保護部材形成工程は、シート状の樹脂を該ウェーハの一方の面に配置すること、および、該シート状の樹脂に熱を加えて該ウェーハに密着させること、を含んでもよい。請求項1記載のウェーハの加工方法。
【0014】
また、本加工方法では、該保護部材除去工程は、該保護部材の外周よりも外側から、該保護部材の外周に向かってエアを噴射することにより、該保護部材と該ウェーハの一方の面との間にエアを介入させて、該保護部材を吹き飛ばして該ウェーハから除去すること、を含んでもよい。
【発明の効果】
【0015】
本加工方法では、保護部材形成工程においてウェーハに形成した保護部材を、研削工程から環状加工工程までの工程にも用いている。これにより、保護部材によってウェーハが補強および保護された状態で、研削工程から環状加工工程までの工程を実施することができる。したがって、金属層の形成に際して、ウェーハが割れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図17】他の態様の保護部材形成工程を示す説明図である。
【
図18】他の態様の保護部材形成工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示すように、本実施形態にかかるウェーハの加工方法の加工対象物であるウェーハ100は、円板状の半導体ウェーハである。ウェーハ100の一方の面である表面101には、格子状のストリート102が形成されている。ストリート102によって区画された領域には、複数のデバイス103が形成されている。ウェーハ100の他方の面である裏面104は、デバイス103を有していない。
【0018】
本実施形態では、このウェーハ100を分割して、それぞれ1つのデバイス103を含む複数のチップを形成する。
このために、本実施形態では、ウェーハ100に対して、保護部材形成工程、研削工程、金属層形成工程、保持工程、環状加工工程、環状凸部除去工程、保護部材除去工程および切断工程を実施する。
【0019】
(1)保護部材形成工程
保護部材形成工程では、ウェーハ100の表面101に、その全面を耐熱性の樹脂で被覆することによって、保護部材を形成する。
【0020】
この工程では、
図2に示すように、ウェーハ100を、保護膜形成装置10にセットする。保護膜形成装置10は、ウェーハ100を保持面14によって保持する保持テーブル11を備えている。保持テーブル11は、ウェーハ100よりも小さい円板状に形成されている。保持面14は、ポーラス材から形成されており、図示しない吸引源に連通されることにより、ウェーハ100を吸着保持することが可能である。ウェーハ100は、表面101が上向きとなるように、保持テーブル11の保持面14によって保持される。
【0021】
また、保護膜形成装置10は、保持テーブル11に保持されたウェーハ100に液状樹脂200を供給する液状樹脂供給ノズル12と、保持テーブル11の回転軸であり、その保持面14に垂直な方向に延びるスピンドル13とを備えている。本実施形態では、液状樹脂200は、熱硬化性樹脂である。
【0022】
スピンドル13は、保持テーブル11の下側に配設されており、図示しないモータによって、たとえば矢印301方向に回転駆動される。これにより、スピンドル13とともに、保持テーブル11が回転される。
【0023】
液状樹脂供給ノズル12は、図示しない液状樹脂供給源に連通されており、保持面14に保持されて保持テーブル11とともに回転するウェーハ100の表面101に、その上方から液状樹脂200を供給する。これにより、ウェーハ100の表面101の全面に、液状樹脂200が行きわたる。
【0024】
その後、液状樹脂200に外的刺激を加えることにより、液状樹脂200を硬化させる。本実施形態では、図示しない加熱装置により液状樹脂200を加熱することによって、液状樹脂200を硬化させる。これにより、
図3に示すように、ウェーハ100の表面101に、その全面を覆うように、液状樹脂200からなる保護部材105が形成される。
【0025】
なお、液状樹脂200は、紫外線硬化性樹脂であってもよい。この場合、液状樹脂200は、たとえば、主材としてのポリエステル系樹脂、および、希釈材としてのアクリル系樹脂を含み、200度程度の耐熱温度を有する。
【0026】
液状樹脂200として紫外線硬化性樹脂を用いる場合、液状樹脂200をウェーハ100の表面101の全面に行きわたらせた後、液状樹脂200に紫外線を照射することによって、表面101に保護部材105を形成する。
【0027】
(2)研削工程
研削工程(TAIKO研削工程)では、ウェーハ100の裏面104の中央を研削することによって、裏面104に、凹部、および、凹部の外周に沿った環状凸部を形成する。
【0028】
この工程では、
図4に示すように、保護部材105が形成されたウェーハ100を、研削装置20にセットする。研削装置20は、ウェーハ100を保持面22によって保持するチャックテーブル21を備えている。保持面22は、ポーラス材から形成されており、図示しない吸引源に連通されることにより、ウェーハ100を吸着保持することが可能である。ウェーハ100は、裏面104が上向きとなるように、チャックテーブル21の保持面22によって、保護部材105を介して保持される。
【0029】
また、研削装置20は、チャックテーブル21の上方に、ウェーハ100の裏面104を研削するための研削手段23を有している。研削手段23は、保持面22に垂直な方向に延びるスピンドル24、スピンドル24の先端に取り付けられたマウント25、および、マウント25の下面に環状に配置された複数の研削砥石26を備えている。
【0030】
研削工程では、研削手段23がウェーハ100の上方に配置されている状態で、研削砥石26の外縁が、ウェーハ100の外周よりも所定距離401だけ内側に配置される。この状態で、スピンドル24が、図示しないモータによって、たとえば矢印303に示すように回転駆動されることにより、スピンドル24の下端に取り付けられたマウント25および研削砥石26が回転される。
【0031】
その後、研削手段23が、保持面22に保持されているウェーハ100に向かって、下方に研削送りされる。また、チャックテーブル21が、図示しない駆動源によって回転される。これにより、回転する研削砥石26が、回転するチャックテーブル21の保持面22に保持されているウェーハ100の裏面104に接触し、この裏面104を研削する。
【0032】
この研削では、研削砥石26の外縁が、ウェーハ100の外周よりも所定距離401だけ内側に配置されている。したがって、研削砥石26によって、ウェーハ100の裏面104の中央が研削される。これにより、
図5に示すように、ウェーハ100の裏面104に、底面111を有する凹部(円凹部)110が形成される。さらに、凹部110の外周に沿って、環状凸部112が形成される。
【0033】
このように、ウェーハ100の裏面104に、凹部110および環状凸部112を形成することにより、ウェーハ100をTAIKOウェーハとすることができる。すなわち、中央が薄化されたウェーハ100が、外周の環状凸部112によって補強される。したがって、たとえば、凹部110の底面111に金属層を形成する装置にウェーハ100を搬送する際に、ウェーハ100が破損することを抑制することができる。
【0034】
(3)金属層形成工程
金属層形成工程では、ウェーハ100の裏面104に形成された凹部110の底面111に、金属層を形成する。
この工程では、
図6に示すように、凹部110および環状凸部112が形成されたウェーハ100を、減圧成膜装置30にセットする。
【0035】
この減圧成膜装置30では、真空室であるチャンバー31の内部に、静電チャック32が備えられている。この静電チャック32が、静電式にて、保護部材105を介してウェーハ100を保持する。静電チャック32の上方の、静電チャック32に対向する位置には、金属からなるスパッタ源34が、励磁部材33に支持された状態で配設されている。このスパッタ源34には、高周波電源35が接続されている。
【0036】
また、チャンバー31の一方の側部には、スパッタガス導入口36が設けられている。このスパッタガス導入口36を介して、チャンバー31の内部に、矢印305によって示すように、アルゴンガスなどのスパッタガスが導入される。チャンバー31の他方の側部には、図示しない減圧源に連通される減圧口37が設けられている。
【0037】
減圧成膜装置30では、静電チャック32によって保護部材105を介してウェーハ100が静電式にて保持されることにより、ウェーハ100の凹部110の底面111が、スパッタ源34に対向される。また、ウェーハ100の環状凸部112には、マスキング(図示せず)が施される。
【0038】
そして、励磁部材33によって磁化されたスパッタ源34に、高周波電源35から、たとえば13.56MHz程度の高周波電力を加えるとともに、減圧口37を介して、チャンバー31の内部を、10-2Pa~10-4Pa程度に減圧し、さらに、スパッタガス導入口36からスパッタガスを導入する。
【0039】
これにより、プラズマが発生されて、プラズマ中のイオンがスパッタ源34に衝突して金属粒子がはじき出されて、はじき出された金属粒子が、ウェーハ100の凹部110の底面111に堆積される。このようにして、
図7に示すように、凹部110の底面111に、金属層113が形成される。この金属層113は、たとえば、30~60nm程度の厚さを有する。
なお、この金属層形成工程では、蒸着あるいはCVD等が用いられることにより、ウェーハ100の凹部110の底面111に金属層113が形成されてもよい。
【0040】
その後、静電チャック32に設けられた図示しないリフトピンにて、下側から、ウェーハ100に形成された保護部材105が突き上げられる。これにより、保護部材105およびウェーハ100が、静電チャック32から取り外される。
【0041】
(4)保持工程
保持工程は、金属層形成工程の後に実施される。保持工程では、まず、
図8に示すように、ウェーハ100における金属層113が形成されている面である裏面104側に、ダイシングテープ122が貼着される。さらに、ダイシングテープ122の外周に、リングフレーム121が貼着される。
【0042】
これにより、ウェーハ100が、保護部材105を露出した状態で、リングフレーム121と、ダイシングテープ122を介して一体化される。これにより、ウェーハ100、ダイシングテープ122およびリングフレーム121を含むワークセット120が形成される。また、ウェーハ100の凹部110の底面111に形成された金属層113の表面が、ダイシングテープ122によって保護される。
【0043】
その後、ウェーハ100を含むワークセット120は、
図9に示すように、切削装置40にセットされる。切削装置40は、ダイシングテープ122を介してウェーハ100を保持面42によって保持するダイシングテーブル41を備えている。保持面42は、ポーラス材から形成されており、図示しない吸引源に連通されることにより、ウェーハ100を吸着保持することが可能である。
【0044】
また、ダイシングテーブル41の周囲には、ワークセット120のリングフレーム121を保持するクランプ43が備えられている。ワークセット120は、保持面42およびクランプ43により、ダイシングテーブル41に保持される。
【0045】
(5)環状加工工程
環状加工工程(環状溝形成工程)では、ダイシングテーブル41に保持されたウェーハ100の凹部110の底面111の外周、すなわち、凹部110と環状凸部112との境界に沿って、保護部材105の側から、保護部材105とウェーハ100とに、環状の分割加工(サークルカット)を施す。
【0046】
図9に示すように、ダイシングテーブル41の下面には、保持面42に垂直な方向に延びるダイシングテーブルスピンドル44が設けられている。ダイシングテーブルスピンドル44は、図示しないモータによって駆動されることにより、ダイシングテーブル41を回転させる。
【0047】
また、ダイシングテーブル41の上方には、切削機構45が配置されている。切削機構45は、保持面42と平行な水平方向に延びるブレードスピンドル46、および、ブレードスピンドル46の先端に備えられた、保持面42に垂直な面に平行に延びる切削ブレード47を備えている。
【0048】
環状加工工程では、切削ブレード47を、ダイシングテーブル41に保持されたウェーハ100における凹部110と環状凸部112との境界上に配置する。そして、
図10に示すように、ダイシングテーブルスピンドル44により、ダイシングテーブル41を、たとえば矢印307に示すように回転させる。さらに、ブレードスピンドル46により、切削ブレード47を、たとえば矢印309に示すように回転させながら、切削機構45を、保持面42に保持されているウェーハ100に向けて降下させる。
【0049】
これにより、凹部110と環状凸部112との境界に沿って、保護部材105の側から、保護部材105とウェーハ100とに、環状の分割加工が施される。このような分割加工により、
図11に示すように、凹部110と環状凸部112との境界に沿って分割溝125が形成され、環状凸部112が、ウェーハ100から切断される。
【0050】
(6)環状凸部除去工程
環状凸部除去工程は、環状加工工程の後に実施される。環状凸部除去工程では、ウェーハ100から、環状凸部112を除去する。
【0051】
この工程では、
図12に示すように、分割溝125が形成されたウェーハ100を保持しているダイシングテーブル41の上方に、搬送手段48が配置される。搬送手段48は、水平方向に延びる基体49、および、基体49の両端に備えられ、上下方向に延びる一対の下支持部50を備えている。さらに、搬送手段48は、基体49および下支持部50を上下方向に移動させる上下移動手段51、ならびに、基体49、下支持部50および上下移動手段51を水平方向に移動させる水平移動手段52を備えている。
【0052】
搬送手段48では、上下移動手段51によって、一対の下支持部50が、ウェーハ100における環状凸部112の上方に配置されるように、基体49、下支持部50および上下移動手段51を水平方向に移動させる。その後、上下移動手段51によって基体49および下支持部50が降下されて、下支持部50の鉤状の先端が、環状凸部112の下面を外側から支持する。この状態で、上下移動手段51によって基体49および下支持部50が、上方に移動される。これにより、
図13に示すように、環状凸部112が、ウェーハ100から除去される。
【0053】
(7)保護部材除去工程
保護部材除去工程は、環状凸部除去工程の後に実施される。保護部材除去工程では、ウェーハ100から、保護部材105を除去する。
【0054】
この工程では、
図14に示すように、環状凸部112が除去された状態でダイシングテーブル41の保持面42に保持されているウェーハ100および保護部材105の外側部に、エア噴射装置55が配置される。エア噴射装置55は、エア噴射ノズル56、および、エア噴射ノズル56に連通されるエア供給源57を備えている。
【0055】
エア噴射装置55は、保護部材105の外周よりも外側から、保護部材105の外周に向かって、エア噴射ノズル56を用いてエアを噴射する。これにより、エア噴射装置55は、保護部材105とウェーハ100の裏面104との間にエアを介入させて、
図15に示すように、保護部材105を吹き飛ばして、ウェーハ100から保護部材105を除去する。
【0056】
(8)切断工程
切断工程は、保護部材除去工程の後に実施される。切断工程では、ウェーハ100を、ストリート102(
図1参照)に沿って切断することによって、ウェーハ100を小片化する。
【0057】
この工程では、
図16に示すように、保護部材105が除去された状態でダイシングテーブル41の保持面42に保持されているウェーハ100の上方に、切削機構45が配置される。
【0058】
切削機構45では、切削ブレード47を、ウェーハ100におけるストリート102に沿うように配置する。そして、切削ブレード47を、ブレードスピンドル46により、たとえば矢印311に示すように回転させる。この状態で、切削ブレード47の下端がワークセット120のダイシングテープ122に触れるまで、切削ブレード47を降下させた後、切削ブレード47を、矢印313に示すように、ストリート102に沿って水平方向に移動させる。これにより、ウェーハ100を、ストリート102に沿って切断することができる。
【0059】
このようにして、全てのストリート102に沿ってウェーハ100を切断することにより、ウェーハ100を小片化することができる。小片化されたウェーハ100をダイシングテープ122から剥がすことにより、1つのデバイス103(
図1参照)を含む複数のチップを得ることができる。
【0060】
以上のように、本実施形態では、保護部材形成工程においてウェーハ100に形成した保護部材105を、研削工程から環状加工工程までの工程にも用いる。これにより、保護部材105によってウェーハ100が補強および保護された状態で、研削工程から環状加工工程までの工程を実施することができる。したがって、金属層113の形成に際して、ウェーハ100が割れることを抑制することができる。
【0061】
すなわち、本実施形態では、金属層形成工程において、ウェーハ100が、保護部材105を介して、静電チャック32(
図6参照)に吸着保持される。したがって、ウェーハ100が僅かに平坦さを失った状態、あるいは、静電チャック32上に成膜屑が存在する状態で、ウェーハ100が強い吸着力で静電チャック32に吸着された場合でも、保護部材105によってウェーハ100が補強および保護されているため、ウェーハ100が割れることを抑制することができる。
【0062】
また、ウェーハ100を静電チャック32から取り外す際には、リフトピンにて、ウェーハ100に形成された保護部材105が突き上げられる。したがって、リフトピンからの衝撃が、直接にウェーハ100に伝わることを回避できるので、ウェーハ100が割れることが抑制される。
【0063】
また、保護部材105が形成されていることにより、ウェーハ100が撓みにくくなっている。したがって、1本のリフトピンでウェーハ100の中心を突き上げた場合でも、撓みによるウェーハ100の割れを抑制することができる。
【0064】
さらに、本実施形態では、保護部材105は、
図14および
図15に示したように、エア噴射装置55からのエア噴射によって、ウェーハ100から除去することができる。
すなわち、保護部材105の粘着力は、一般的な保護テープよりも小さい。したがって、エアの噴射によって、ウェーハ100から、保護部材105を容易に除去(剥離)することができる。したがって、保護部材105をウェーハ100から除去する際に、ウェーハ100の割れを招来するような強い力がウェーハ100に加わることを、回避することができる。また、保護部材105を短時間で除去することができるので、作業効率を高めることができる。
【0065】
また、本実施形態では、ウェーハ100に金属層113を形成した後、保護部材105が形成された状態のウェーハ100に対して、環状加工工程を実施して、凹部110と環状凸部112との境界に沿って、分割溝125を形成している。すなわち、本実施形態では、ウェーハ100の割れを抑制するための保護部材105ごと、環状凸部112をウェーハ100から切断している。したがって、環状凸部112の切断時にウェーハ100の外周となる切断面に発生する可能性のあるチッピングを、小さくすることができる。その結果、ウェーハ100を小片化する切断工程において、ウェーハ100が、外周に形成されたチッピングを起点として割れることを、抑制することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、保護部材形成工程において、
図2に示したように、液状樹脂200を用いて、ウェーハ100に保護部材105を形成している。
これに代えて、保護部材形成工程は、
図17に示すように、熱硬化性樹脂からなるシート状樹脂130をウェーハ100の表面101に配置すること、および、シート状樹脂130に熱を加えてウェーハ100に密着させること、を含むように構成されていてもよい。これによっても、
図18に示すように、シート状樹脂130からなる保護部材131を、ウェーハ100の表面101に形成することができる。また、熱硬化性樹脂からなる粒 または、ペレットをウェーハ100の表面101を覆うように一面に配置して、その粒または、ペレットに熱を加えてウェーハに密着させて保護部材105を形成してもよい。
なお、保護部材105、131を形成する熱硬化性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、塩化系樹脂(塩化ビニル、塩化ビニリデンなど)、アクリル系樹脂などから形成され、金属膜成膜の際の耐熱性と、エア噴射により剥離できる貼着力(剥離性)とを備えている。
なお、保護部材の除去はエア噴射に限らない。エア噴射装置からエアと水とを混合させた混合液を噴射させてもよい。また、エアに粉体を混合させた混合エアを噴射させてもよい。
【符号の説明】
【0067】
10:保護膜形成装置、12:液状樹脂供給ノズル、200:液状樹脂、
11:保持テーブル、13:スピンドル、14:保持面、
20:研削装置、21:チャックテーブル、22:保持面、
23:研削手段、24:スピンドル、25:マウント、26:研削砥石、
30:減圧成膜装置、31:チャンバー、32:静電チャック、
33:励磁部材、34:スパッタ源、35:高周波電源、
36:スパッタガス導入口、37:減圧口、
40:切削装置、41:ダイシングテーブル、42:保持面、43:クランプ、
44:ダイシングテーブルスピンドル、
45:切削機構、46:ブレードスピンドル、47:切削ブレード、
48:搬送手段、49:基体、50:下支持部、
51:上下移動手段、52:水平移動手段、
55:エア噴射装置、56:エア噴射ノズル、57:エア供給源、
100:ウェーハ、101:表面、104:裏面、
102:ストリート、103:デバイス、105:保護部材、
110:凹部、111:底面、112:環状凸部、113:金属層、
120:ワークセット、121:リングフレーム、122:ダイシングテープ、
130:シート状樹脂、131:保護部材