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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】カメラを有する医療用デバイス
(51)【国際特許分類】
   G16H 20/17 20180101AFI20240206BHJP
   A61M 5/20 20060101ALI20240206BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240206BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G16H20/17
A61M5/20
A61M5/315 550
A61M5/315 550G
A61M5/24
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021528935
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 EP2019081296
(87)【国際公開番号】W WO2020104284
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-09-20
(31)【優先権主張番号】18306559.8
(32)【優先日】2018-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ヘルマー
【審査官】今井 悠太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0249530(US,A1)
【文献】国際公開第2005/089833(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0063692(US,A1)
【文献】特開2015-187870(JP,A)
【文献】特表2016-512442(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0316405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61M 5/20
A61M 5/24
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイスであって:
注射デバイスから薬剤を排出するための排出機構を含む注射デバイスと;
ディスプレイと;
立体カメラとを含み、電子デバイスは:
該立体カメラを使用して立体画像を取り込み;
取り込まれた立体画像が1つまたはそれ以上の食品を含むかどうかを判定し;
含むと判定された場合、取り込まれた立体画像に応じて、1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定し;
栄養素含有量の推定値に関する情報を、ディスプレイを介して表示し、
立体カメラを使用して、処方箋に関連付けられた視覚的コードの画像を取り込み;
視覚的コードの取込み画像に応じて、注射デバイスの医薬品の投与方針を構成し;
排出機構によって注射デバイスから排出予定の薬剤の量を調整するように構成され、
排出機構によって注射デバイスから排出予定の薬剤の量は、1つまたはそれ以上の食品の推定された栄養素含有量と医薬品の投与方針に基づいて設定される、
前記電子デバイス。
【請求項2】
注射デバイスの1つまたはそれ以上の設定を構成することは:
視覚的コードの取込み画像に応じて、注射デバイスをネットワークに接続すること;および
ネットワークを介して、注射デバイスにデータを転送すること
を含む、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
1つまたはそれ以上の設定は:
ユーザ識別情報;
ユーザ詳細情報;
医療従事者の識別情報;
医薬品バッチの登録番号;
医薬品の識別情報;
医薬品の投与方針;および/または
ユーザ履歴
のうちの少なくとも1つを含む、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項4】
薬剤を含んだ薬剤カートリッジを含む、請求項のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
薬剤に関連付けられた視覚的コードを取り込み;
取り込まれた視覚的コードに応じて、利用可能な薬剤の量を登録する
ようにさらに構成される、請求項1~のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項6】
取り込まれた立体画像が1つまたはそれ以上の食品を含むかどうかを判定することは、
立体画像を、該立体画像の視覚的および/または空間的な特性に基づいて、複数のセグメントに区分けすることを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項7】
1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定することは、食品のうちの1つまたはそれ以上を識別することを含む、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項8】
食品のうちの1つまたはそれ以上を識別することは、画像認識アルゴリズムを使用することを含む、請求項に記載の電子デバイス。
【請求項9】
1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定することは、1つまたはそれ以上の食品を識別するための選択可能な複数の選択肢を提供することを含む、請求項のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定することは、ルックアップテーブルを使用することを含む、請求項のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【請求項11】
栄養素情報は、1つまたはそれ以上の食品の炭水化物含有量の推定値を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、カメラを有する医療用デバイスに関する。特に、本出願は、立体カメラを有する注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
注射デバイスは、様々な用量の薬剤をユーザに供給するために使用可能である。いくつかの状況においては、自らが摂取した食品の栄養素含有量に基づいて、供給予定の薬剤の用量をユーザが設定する。たとえば、ユーザは、摂取した食品の炭水化物または糖質の含有量に基づいて、インスリン用量を設定することができる。しかし、自らが摂取した食品の栄養素含有量をユーザが推定することは不正確な場合があり、結果的に、ユーザが間違ったまたは不適切な薬剤用量を設定してしまうことがある。
【0003】
さらに、注射デバイスは、ユーザの要件または好みに応じて構成することができる複数のユーザ設定を含むことができる。しかし、注射デバイスを構成することは、一部のユーザにとって困難なことがわかる場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の態様によれば、本明細書は、電子デバイスであって:ディスプレイと;立体カメラとを含み、電子デバイスは:立体カメラを使用して立体画像を取り込み;取り込まれた立体画像が1つまたはそれ以上の食品を含むかどうかを判定し;含むと判定された場合、取り込まれた立体画像に応じて、1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定し;栄養素含有量の推定値に関する情報を、ディスプレイを介して表示するように構成される、電子デバイスについて記載する。
【0005】
取り込まれた立体画像が1つまたはそれ以上の食品を含むかどうかを判定することは、立体画像を、この立体画像の視覚的および/または空間的な特性に基づいて、複数のセグメントに区分けすることを含んでよい。
【0006】
1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定することは、食品のうちの1つまたはそれ以上を識別することを含んでよい。食品のうちの1つまたはそれ以上を識別することは、画像認識アルゴリズムを使用することを含んでよい。
【0007】
1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定することは、1つまたはそれ以上の食品を識別するための選択可能な複数の選択肢を提供することを含んでよい。
【0008】
1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値を判定することは、ルックアップテーブルを使用することを含んでよい。
【0009】
栄養素情報は、1つまたはそれ以上の食品の炭水化物含有量の推定値を含んでよい。
【0010】
電子デバイスは、注射デバイスから薬剤を排出するための排出機構を含む注射デバイスであってよい。電子デバイスは、排出機構によって注射デバイスから排出予定の薬剤の量を調整するようにさらに構成されてよい。排出機構によって注射デバイスから排出予定の薬剤の量は、1つまたはそれ以上の食品の推定された栄養素含有量に基づいて設定可能である。
【0011】
デバイスは:立体カメラを使用して、処方箋に関連付けられた視覚的コードの画像を取り込み;視覚的コードの取込み画像に応じて、注射デバイスの1つまたはそれ以上の設定を構成するようにさらに構成することができる。注射デバイスの1つまたはそれ以上の設定を構成することは:視覚的コードの取込み画像に応じて、注射デバイスをネットワークに接続すること;およびネットワークを介して、注射デバイスにデータを転送することを含んでよい。1つまたはそれ以上の設定は:ユーザ識別情報;ユーザ詳細情報;医療従事者の識別情報;医薬品バッチの登録番号;医薬品の識別情報;医薬品の投与方針;および/またはユーザ履歴のうちの少なくとも1つを含んでよい。
【0012】
電子デバイスは:薬剤に関連付けられた視覚的コードを取り込み;取り込まれた視覚的コードに応じて、利用可能な薬剤の量を登録するようにさらに構成することができる。
【0013】
電子デバイスは、薬剤を含んだ薬剤カートリッジを含んでよい。
【0014】
例示的な実施形態を、添付図面を参照しながら非限定的な例としてここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1a】注射デバイスの正面図である。
図1b】注射デバイスの背面図である。
図1c】薬剤カートリッジが取り外された状態の注射デバイスの正面図である。
図1d】交換可能なカートリッジホルダを有する注射デバイスの例の正面図である。
図2】内部構成を含む注射デバイスの概略図である。
図3】注射デバイスの電子機器システムの概略図である。
図4】注射デバイスを使用する方法のフロー図である。
図5図5aおよび図5bは、取込み画像内の食品を識別するための方法の例を示す図である。
図6】注射デバイスを使用して薬剤を登録する方法を示す図である。
図7】視覚的コードを使用して注射デバイスを構成する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書で使用するとき、「食品」という用語は、好ましくは、食品と飲料の両方を暗示するために使用される。
【0017】
図1aおよび図1bは、立体カメラを有する注射デバイスの例を示す。機能は、注射デバイスに関して説明されるが、代替的な実施形態では、以下で説明する機能のうちの一部を実行するために、他の電子デバイス、たとえばスマートフォンおよび/またはタブレットを使用することができる。
【0018】
注射デバイス1は、薬剤カートリッジ10を保持するための薬剤カートリッジホルダ12を含む。薬剤カートリッジ10は、注射デバイス1の消耗部材である。薬剤カートリッジ10は、薬剤カートリッジホルダ12内に保持され、この薬剤カートリッジホルダ12から薬剤カートリッジ10を取り外し、異なる薬剤カートリッジ10を挿入することができる。(たとえば以下の図2に関して説明するように)排出機構は、起動信号に応答して、薬剤カートリッジ10からニードルハブ/先端14を介して薬剤を放出するように作用する。薬剤カートリッジ10は、薬剤を収容している。
【0019】
注射デバイスは、注射ボタン16をさらに含む。注射ボタン16を使用して起動信号を提供し、排出機構による薬剤カートリッジ10からの薬剤の排出を開始することができる。示してある実施形態などの他の実施形態では、注射ボタン16は、別個のボタンとして提供される。
【0020】
注射デバイス1は、ディスプレイ18をさらに含む。場合により、ディスプレイ18は、タッチスクリーン機能を有する。ディスプレイ18は、装置のモード、バッテリ状態、および/または電源が接続されているかどうかなど、装置の状態の視覚的標示を提供することができる。また、ディスプレイを使用して、ユーザにメッセージを通信することもできる。ディスプレイは、液晶ディスプレイ(LCD)または発光ダイオード(LED)またはOLEDスクリーンなどの形態とすることができる。
【0021】
いくつかの実施形態において、ディスプレイ18はタッチスクリーン機能を含み、ディスプレイ18がユーザ入力を受けられるようにしてもよい。タッチスクリーン機能を使用して、インストールおよびトラブルシューティングの手順を支援することができる。代替的または追加的に、ディスプレイには、1つまたはそれ以上の押しボタンもしくはキーが、ディスプレイの近傍に付属して、ユーザが、たとえばディスプレイ上のメニューおよび選択肢の集まりの中でカーソルを動かすことにより、注射デバイス1と対話できるようにしてもよい。
【0022】
注射デバイスは、立体カメラ20をさらに含む。示してある例において、立体カメラ20は、図1bに示すように、ディスプレイ18に対して注射デバイス1の反対面に設けられる。しかし、他の実施形態において、カメラは、注射デバイス1の任意の他の面に設けることができる。立体カメラ20は、深度情報を含む画像を取り込むことができる。取込み画像は、ディスプレイ18を介して表示することができる。いくつかの実施形態では、捕捉工程中にディスプレイ18に画像が表示されて、ユーザを案内する。示してある実施形態において、立体カメラ20は2つのカメラレンズを含むが、全体的に他のタイプの立体カメラ20を使用してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、立体カメラ20には、低輝度レベルにおいて場面を照らすためのカメラライト/フラッシュ22が設けられる。カメラライト22は、立体カメラ20から独立して動作することができる。カメラライト22は、継続的な短い照明を提供することができる。
【0024】
注射デバイス1のユーザは、立体カメラ20を使用して、自らが摂取しようとする食品および/または飲料の画像を取り込むことができる。注射デバイスは、取込み画像において、1つまたはそれ以上の食品および/または飲料を認識するように構成される。注射デバイス1は、識別された1つまたはそれ以上の食品および/または飲料の栄養素含有量を推定するようにさらに構成される。栄養素含有量は、1つまたはそれ以上の食品の炭水化物含有量を含むことができる。栄養素含有量は、代替的または追加的に、脂肪含有量;コレステロール含有量;ビタミン含有量;ミネラル含有量;および/または繊維含有量:のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。他の例も可能である。
【0025】
立体カメラ20を使用して、食品および/または飲料の画像を取り込むことにより、食品および/または飲料の栄養素含有量をより正確に判定できるようになる。たとえば、深度情報を使用することにより、食品および/または飲料の体積を、より正確に判定することができる。さらに、食品および/または飲料の立体画像により、食品および/または飲料をより正確に識別することが可能になる。
【0026】
推定された栄養素含有量を、注射デバイス1のディスプレイ18を介してユーザに表示することができる。いくつかの実施形態において、ディスプレイ18は、推定された栄養素含有量に基づいて、推奨される薬剤用量をさらに表示することができる。いくつかの実施形態において、注射デバイス1は、推定された栄養素含有量に応じて、注射デバイスから排出すべき薬剤の用量を変更することもできる。
【0027】
いくつかの実施形態において、代替として、栄養素含有量を推定する機能は、立体カメラを備えた電子デバイス上で実行されるアプリケーションによって提供される。このようなデバイスの例は:スマートフォン;タブレット;および/またはラップトップを含む。
【0028】
取込み画像に存在する食品、および食品の栄養素含有量を判定する方法が、図4図5a、および図5bに関して以下でさらに詳細に説明される。
【0029】
注射デバイスは、制御パネル24をさらに含む。制御パネルは、電力スイッチ(すなわち、オン/オフスイッチ);カートリッジホルダ12用の解放スイッチ;用量設定ボタン;ディスプレイ18用の制御部および/またはカメラ20用の制御部:のうちの1つまたはそれ以上を含んでよい。
【0030】
注射デバイス1は、可聴信号を音の形態でユーザに伝達するためのスピーカ26をさらに含むことができる。注射デバイスは、ユーザ入力を音の形態で受け取るためのマイクロフォン(図示せず)をさらに含むことができる。
【0031】
注射デバイス1は、バッテリ28によって給電することができる。バッテリ28は、再充電可能バッテリの形態で提供可能である。注射デバイス1に外部電力を供給するために、注射デバイス1に電力ポート30を設けることもできる。電力ポート30は、いくつかの実施形態において、バッテリ28を再充電するためにも使用することができる。
【0032】
いくつかの実施形態において、注射デバイスは、ニードルハブ4を保護するための取外し可能キャップ32を含む。
【0033】
図1cは、薬剤カートリッジ10が取り外された状態の注射デバイスの例の正面図を示す。
【0034】
薬剤カートリッジ10は、カートリッジホルダ12から取り外すことができる。カートリッジホルダ12は、図1cに示してあるように、注射デバイス1の本体からヒンジ連結させることができる。これにより、容易にかつ都合よく、薬剤カートリッジ10を注射デバイスに保持し、注射デバイスから取り外すことができるようになる。カートリッジホルダ12は、ラッチ38によって定位置に保持可能である。
【0035】
注射デバイス1は、薬剤カートリッジ10内のストッパ35を変位させて注射デバイスから薬剤を排出するためのプランジャ34をさらに含む。プランジャ34は、排出機構の一部を形成してよい。
【0036】
いくつかの実施形態において、注射デバイス1は、スキャナ36をさらに含む。スキャナ36は、光学CCDMユニットの形態であってよい。スキャナ36は、薬剤カートリッジ10の光学コードを監視して、個々の薬剤カートリッジを登録するように構成される。たとえば、スキャナ36は、薬剤カートリッジ10のLOT番号を記録することができる。このことは、個々の薬剤カートリッジ10を再使用するために重要になる場合がある。いくつかの実施形態では、スキャナ36を使用して、薬剤の色;および/または薬剤カートリッジ10の薬剤レベル:のうちの1つまたはそれ以上を監視することもできる。
【0037】
図1dは、交換可能なカートリッジホルダを有する注射デバイスの例の正面図を示す。いくつかの実施形態において、注射デバイス1は、交換可能なカートリッジホルダ12を有する。これにより、注射デバイス1を、異なる種類の薬剤カートリッジ10とともに使用することができるようになる。たとえば、注射デバイス1を、処置使用時間中に、短時間作用型インスリンおよび/または長時間作用型インスリンのどちらとも使用することができる。注射デバイス1は、たとえばスキャナ36を使用して正しいカートリッジホルダを評価する。示してある実施形態において、カートリッジホルダ12は、ラッチ38と相互作用してカートリッジホルダ12を注射デバイス1とともに保持するための複数の「ラッチスナップ」39を含む。取外し可能なカートリッジホルダを使用することにより、薬剤カートリッジ10の装着中に薬剤カートリッジ10を保護することができる。たとえば、薬剤カートリッジ10がガラスカートリッジの場合、取外し可能なカートリッジホルダ12は、装着中のガラス破損を低減するように作用することができる。
【0038】
図2は、内部構成を含む注射デバイスの概略図を示す。
【0039】
示してある実施形態において、排出機構は、注射デバイス1のスリット40内に保持されたダブテールを含むプランジャ34を含む。排出機構は、プランジャ34を駆動するための遊びのないタイミングベルトドライブ42を含む。モータ44が、遊びのないタイミングベルトドライブ42の駆動を行う。回転方向へのピストンロッドの案内が、ダブテール案内スリット40を使用してハウジングを介して行われる。モータ44は、モータ44の回転数を制御するための絶対回転センサおよび/またはステッパモータを含むことができる。いくつかの実施形態において、カートリッジに対するプランジャ34のピストン位置は、モータ44の回転数から判定可能である。いくつかの実施形態において、プランジャの絶対位置は、カートリッジが装着されたときにスキャナユニット36によって判定される。いくつかの実施形態において、スキャナユニット36は、薬剤カートリッジ10の薬剤レベルを測定することにより、必要なプランジャストロークを判定する。モータ44は、必要なプランジャストロークを使用して、そのプランジャストロークを実現することになる回転数を提供し、それにより薬剤カートリッジ10において必要なプランジャ位置に到達させる。モータシステムには、注射デバイスが最初に使用される前に、プランジャ34からストッパ35までの距離について絶対値を提供することもできる。これにより、必要な薬剤量を排出するための正しい距離だけ、モータがプランジャを確実に変位させることができ、排出される薬剤が少なすぎることまたは多すぎることを防止しやすくすることができる。
【0040】
装置をネットワークに接続するために、装置にネットワークインターフェース46も設けられる。インターフェースは、たとえば、Wi-Fiインターフェース;イーサネットインターフェース;Bluetooth送受信機;および/またはUSBインターフェース:のうちの1つまたはそれ以上によって提供可能である。装置は、ネットワークインターフェース46を介してローカルエリアネットワーク(LAN)および/またはインターネットに接続することができ、ネットワークの他のメンバとのデータ交換を可能にしてよい。装置は、たとえばBluetooth接続を使用して、追加的なデバイスと直接接続するために、ネットワークインターフェースを使用することもできる。
【0041】
装置は、ネットワークインターフェース46を介してデータサーバに接続可能である。データサーバは、栄養素データベースを含むことができる。この接続を介して、装置は、データサーバと双方向にデータを共有することができる。データサーバは、装置から遠隔に、たとえば医薬品サプライヤまたはデバイス製造業者によって制御されるデータセンタに位置してよい。代替として、データセンタは、「クラウド」などの分散型コンピュータシステムの一部とすることができる。いくつかの実施形態において、データサーバは、同じローカルエリアネットワーク上で、装置に対してローカルに位置してよい。
【0042】
たとえばモータ44、ネットワークインターフェース46、立体カメラ20、ディスプレイ18、スピーカ/マイクロフォン26、および制御部24など、注射デバイスの構成要素は、制御システム(図示せず)によって制御される。制御システムは、接続された構成要素との間で電子信号を送受信することができる。
【0043】
注射デバイス1は、プロセッサ装置48を含む電子機器システムをさらに含む。電子機器システムは、以下に記載するように注射デバイス1の機能を制御および実行するために使用される。上述した制御システムは、プロセッサ装置48および関連メモリ50、52を含む電子機器システムの構成要素のうちのいくつかを含む。
【0044】
図3に関して、注射デバイスの電子機器システムの例の概略図が示してある。電子機器システムは、プロセッサ装置48を含む。プロセッサ装置48と他のハードウェア構成要素は、システムバス(図示せず)を介して接続可能である。各ハードウェア構成要素を、直接またはインターフェースを介してシステムバスに接続可能である。電源28は、電子機器システムに電力を供給するために配置される。いくつかの実施形態では、主電源に対する電力接続なしに装置を使用可能にするために、バッテリを提供することもできる。前記バッテリは、再充電可能であってよい。
【0045】
プロセッサ装置48は、電子機器システムの他のハードウェア構成要素の動作を制御する。プロセッサ装置48は、任意の種類の集積回路であってよい。プロセッサ装置48は、たとえば汎用プロセッサであってよい。プロセッサ装置は、シングルコアデバイスまたはマルチコアデバイスであってよい。プロセッサ装置48は、中央処理装置(CPU)または汎用処理ユニット(GPU)であってよい。代替として、プロセッサ装置は、より専門的なユニット、たとえばRISCプロセッサ、またはファームウェアが組み込まれたプログラム可能なハードウェアであってよい。複数のプロセッサを含むことができる。プロセッサ装置48は、処理手段と呼ぶことができる。
【0046】
電子機器システムは、作業メモリまたは揮発性メモリ50を含む。プロセッサ装置48は、データを処理するために揮発性メモリ50にアクセスしてよく、メモリへのデータの記憶を制御してもよい。揮発性メモリ50は、任意のタイプのRAM、たとえばスタティックRAM(SRAM)、ダイナミックRAM(DRAM)であってもよく、またはフラッシュメモリ(たとえばSDカード)であってもよい。複数の揮発性メモリを含むことができるが、図では省略されている。
【0047】
電子機器システムは、不揮発性メモリ52を含む。不揮発性メモリ52は、プロセッサ装置48の通常動作を制御するための動作命令54のセットを記憶する。不揮発性メモリ52は、読取り専用メモリ(ROM)、フラッシュメモリ、または磁気ドライブメモリなど、任意の種類のメモリであってよい。他の不揮発性メモリを含むことができるが、図では省略されている。
【0048】
プロセッサ装置48は、動作命令54の制御下で動作する。動作命令54は、電子機器システムのハードウェア構成要素に関するコード(すなわちドライバ)、ならびに装置の基本動作に関するコードを含んでよい。動作命令54は、不揮発性メモリ52に記憶された1つまたはそれ以上のソフトウェアモジュールを起動させることもできる。一般的に、プロセッサ装置48は、不揮発性メモリ52に恒久的または半恒久的に記憶された動作命令54のうちの1つまたはそれ以上の命令を、その動作命令の実行中に生成されたデータを一時的に記憶するために揮発性メモリ50を使用しながら実行する。
【0049】
プロセッサ装置48、揮発性メモリ50、および不揮発性メモリ52は、オフチップバスによって接続された別個の集積回路チップとして提供されるか、または単一の集積回路チップに提供することができる。プロセッサ装置48、揮発性メモリ50、および不揮発性メモリ52は、マイクロコントローラとして提供することができる。
【0050】
電子機器システムは、クロック56を含む。クロック56は、クロック水晶、たとえばクォーツ水晶発振器であってよい。クロック56は、プロセッサ装置48にクロック信号を提供するように構成された、プロセッサ装置48とは別個の構成要素であってよい。プロセッサ装置48は、クロック56からの信号に基づいて、リアルタイムクロックを提供するように構成可能である。代替として、クロック56は、単一の集積回路チップにプロセッサ装置48とともに設けられたクロック水晶であってよい。他の可能性は、無線制御されたクロックまたは時間の調整を、インターネット接続によって実装することであってよい。
【0051】
電子機器システムは、1つまたはそれ以上のネットワークインターフェース46を含む。ネットワークインターフェース46は、1つまたはそれ以上のコンピュータネットワークに対する注射デバイスの接続、および注射デバイスとネットワークの他のメンバとの間の双方向の情報交換を容易にする。これらのネットワークは、インターネット、ローカルエリアネットワーク、または装置がデータセンタおよび/もしくはコンタクトセンタと通信するのに必要な任意の他のネットワークを含むことができる。ネットワークインターフェース46は、イーサネットアダプタ、Wi-Fiアダプタ、および/またはBluetoothアダプタなどのネットワークインターフェースコントローラを含む。ネットワークインターフェース46は、ネットワーク上で注射デバイスを識別するための1つまたはそれ以上のネットワークアドレスに関連付けられる。1つまたはそれ以上のネットワークアドレスは、IPアドレス、MACアドレス、および/またはIPXアドレスの形態であってよい。
【0052】
いくつかの実施形態において、電子機器システムは、マイクロフォン26を含む。マイクロフォン26は、音の形態の入力を受け、前記音を、デジタルドメインにおいて処理可能な可聴電子信号に変換するように動作することができる。
【0053】
プロセッサ装置48は、いくつかの実施形態において、マイクロフォンによって検出された可聴信号においてコマンドを検出するように構成可能である。プロセッサ48は、可聴信号を自然言語ストリームに変換するために、音声テキスト化アルゴリズムを実装してよい。このようなアルゴリズムは、隠れマルコフモデル、動的時間伸縮法、またはニューラルネットワークを含むことができる。プロセッサ装置48は、自然言語データストリームを分析して、その自然言語データストリームに音声コマンドが存在するかどうかを判定するように、さらに構成することができる。プロセッサ装置48は、自然言語データストリーム内の潜在的な音声コマンドを識別し、それぞれの潜在的な音声コマンドに信頼度レベルを割り当てることによって、これを実現することができる。
【0054】
電子機器システムは、スピーカ26も含む。スピーカ26は、オーディオ変換器の一例である。スピーカ26は、話し言葉の形態、またはより一般的な任意の音の形態でオーディオ出力を提供するように動作可能である。プロセッサ装置は、医療データベースから受け取った応答および/またはプロセッサ装置の動作指示に存在する条件に基づいて、可聴出力を提供するように、スピーカを操作する。
【0055】
電子機器システムは、ディスプレイドライバを含んでよい。ディスプレイドライバは、オフチップバスによって接続された別個の集積回路チップとして、プロセッサ装置に提供することができる。代替として、ディスプレイドライバは、単一の集積回路チップにプロセッサ装置とともに設けることができる。
【0056】
電子機器システムは、ユーザインターフェースを表示するためのディスプレイ18を含む。ディスプレイ18は、ディスプレイドライバを介してプロセッサ装置48によって操作されて、1つまたはそれ以上の視覚的通知をユーザに提供することができる。ディスプレイ18は、注射デバイスがどのモードであるか、バッテリ状態、および/または電源が接続されているかどうかなど、注射デバイスの状態の視覚的標示を提供することができる。ディスプレイ18は、カメラ20によって取り込まれた画像を表示することもできる。
【0057】
プロセッサ装置48は、1つまたはそれ以上のバッテリの充電状態を確認してよい。充電状態が少ないと判定された場合、ディスプレイは、バッテリ不足の警告を示すように動作可能である。
【0058】
いくつかの実施形態において、注射デバイスのプロセッサ装置48は、本明細書に記載の機能のうちの1つまたはそれ以上を実行するのに充分なほど高性能でない可能性がある。その代わりに、プロセッサ装置48は、それ自体にとって利用可能なより高いコンピューティング性能を有する付加的なコンピュータシステムと、ネットワークインターフェース46を介して通信するように構成される。プロセッサ装置48は、装置からのデータを付加的なコンピュータシステムに送信することができ、ここでデータは、付加的なコンピュータシステムの付加的なコンピューティング性能を使用して処理することができる。付加的なコンピュータシステムは、この処理の結果を、さらなる処理のためにプロセッサ装置48に戻すことができる。付加的なコンピュータシステムは、たとえばリモートコンピュータシステム、分散型コンピュータシステム、またはデータセンタの一部分とすることができる。
【0059】
図4は、取込み画像を分析して栄養素情報を判定する方法のフロー図を示す。
【0060】
作動方法4.1において、注射デバイス1の立体カメラ20により立体画像が取り込まれる。いくつかの実施形態では、低輝度条件において、カメラ20によって取り込まれる場面を照明するために、フラッシュ22を使用することができる。
【0061】
作動方法4.2において、取込み画像が1つまたはそれ以上の食品を含むかどうかが判定される。画像認識アルゴリズムを使用して、取込み画像中の食品および/または飲料を識別することができる。
【0062】
作動方法4.3において、取込み画像が1つまたはそれ以上の食品を含んでいると判定された場合、取込み画像内の1つまたはそれ以上の食品の栄養素含有量の推定値が判定される。いくつかの実施形態において、栄養素含有量は、取込み画像内の食品の炭水化物含有量である。他の例は、脂肪含有量;コレステロール含有量;繊維含有量;ビタミン含有量;ミネラル含有量;および/または塩類含有量:のうちの1つまたはそれ以上を含む。
【0063】
いくつかの実施形態において、推定される栄養素含有量は、ルックアップテーブルを使用して判定可能である。注射デバイス1は、識別された食品の種類のそれぞれの体積を推定するように構成することができる。食品の体積および種類に基づいて、栄養素含有量を推定することができる。立体画像を使用して食品の体積を推定することにより、平面画像または立体情報を含まない画像と比較したとき、食品の体積(したがって、栄養素含有量)をより正確に推定できるようになる。
【0064】
作動方法4.4において、栄養素含有量の推定値が、注射デバイス1のディスプレイ18を介して出力される。注射デバイスは、推定された栄養素含有量に基づく推奨薬剤用量を、ディスプレイを介してさらに出力することができる。たとえば、インスリン用量を、ディスプレイを介してユーザに提示することができる。インスリン用量は、食品の推定された炭水化物含有量に基づいてよい。インスリン用量は、短期インスリンの用量であってよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、栄養素含有量の推定値を使用して、注射デバイスから排出される薬剤用量を調整することができる。たとえば、インスリン用量は、食品の推定された炭水化物含有量に基づいて設定することができる。
【0066】
図5aおよび図5bは、取込み画像内の食品を識別するための方法の例を示す。いくつかの実施形態において、ユーザが立体カメラで食品の写真を撮るとき、注射デバイスのアプリケーションは、その写真から重量を計算し、データベースを使用して食品の種類を認識することができる。データベースに明瞭な割り当てがない場合、ユーザは、画像の不明瞭な部分を特定することができる。いくつかの実施形態において、デバイスは、オンラインの栄養素表を用いて栄養素含有量を計算することができる。
【0067】
図5aの取込み画像において、立体画像が、セグメント60の視覚的特性に基づいて、複数のセグメントに区分けされる。画像セグメント化アルゴリズムを使用して、画像を区分けすることができる。各セグメントに含まれた食品の体積が推定される。いくつかの実施形態では、プレート62を使用して、画像を位置合わせし、かつ/または画像用の目盛りを提供することができる。
【0068】
図5bでは、各セグメントが、1つまたはそれ以上の食品と関連付けられる。画像認識アルゴリズムを使用して、各セグメント60内の1つまたはそれ以上の食品を識別することができる。いくつかの実施形態において、画像認識アルゴリズムは、セグメントに含まれた食品を識別するために、そのセグメントの画像コンテンツに基づいて食品識別情報に信頼度スコアを割り当てる。食品の種類に関する信頼度スコアが、閾値を超える場合、そのセグメントは、その種類の食品であると識別される。いくつかの実施形態において、複数の食品の種類の信頼度スコアが、閾値を超える場合、注射デバイス1のディスプレイ18に選択可能なリスト63が表示される。ユーザは、リスト63から正しい食品識別情報を選択することができる。
【0069】
信頼度スコアの閾値が満たされない場合、いくつかの実施形態において、食品の種類を識別するための選択可能なリスト62をユーザに提供することができる。
【0070】
画像内の食品の種類の識別情報に基づいて、画像内の食品の栄養素含有量が判定される。いくつかの実施形態において、画像全体に対する栄養素含有量が、ディスプレイ18を介してユーザに表示される。いくつかの実施形態において、代替としてまたは追加的に、セグメントごとの栄養素含有量が、ディスプレイ18を介してユーザに表示される。
【0071】
いくつかの実施形態において、ユーザは、食品の種類の識別情報を無効にして、画像認識プロセスの誤りを修正することができる。
【0072】
追加的にまたは代替として、注射デバイスのカメラ機能を使用して、注射デバイスにさらなる機能を提供することができる。このような機能の例を、図6および図7を参照しながらここで説明する。
【0073】
図6は、注射デバイスのカメラを使用して、薬剤を登録する方法の例を示す。立体カメラ20が注射デバイス1に提供することができる付加的な機能の一例は、ユーザにとって利用可能な医薬品の登録である。1つまたはそれ以上の薬剤カートリッジおよび/または薬剤供給品を収容する容器64に、視覚的コード66を提供することができる。代替的または追加的に、視覚的コード66を、処方箋および/または薬局受領書に提供することができる。
【0074】
カメラ20は、視覚的コード66を読み取るためのコードリーダとして使用可能である。視覚的コードは、容器64の内容物または関連する処方箋に関する情報を含んでよい。たとえば、視覚的コード66は、薬剤の識別情報および/もしくは種類;薬剤バッチ;薬剤使用期限;ならびに/または薬剤量:のうちの1つまたはそれ以上を含んでよい。薬剤量は、利用可能な薬剤を経時的に監視するために使用することができる。たとえば、注射デバイスは、そのデバイスに登録された薬剤量と、そのデバイスによって使用された薬剤量とを、(たとえばスキャナ36を使用して)追跡することができる。注射デバイスは、この情報を使用して、薬剤のさらなる供給をいつ発注すべきかを判定することができる。さらなる薬剤供給を発注するための指示を、注射デバイス1のディスプレイ18を介してユーザに提示することができる。代替的または追加的に、薬剤在庫が少なくなったことを注射デバイス1が検出すると、注射デバイスは、さらなる薬剤供給の発注を自動的に開始してもよい。
【0075】
図7は、注射デバイスのカメラを使用して、注射デバイスを構成する方法の例を示す。立体カメラ20が注射デバイス1に提供することができる付加的な機能のさらなる例は、注射デバイス1の構成を支援することである。
【0076】
作動方法7.1において、医療従事者68がユーザをデータベースに登録する。たとえばユーザの詳細情報は、分散型データベース、たとえばクラウド78に記憶することができる。
【0077】
作動方法7.2において、医療従事者68がユーザ処方箋70を準備する。ユーザ処方箋70は、登録済みユーザに関連付けられる。ユーザ処方箋70は、この処方箋をデータベース内のユーザデータにリンクする視覚的コード66に関連付けられる。たとえば、視覚的コードは、ログインコードおよびユーザネームを表してよい。
【0078】
作動方法7.3において、薬剤供給品72が、視覚的コード66とともにユーザに供給される。視覚的コード66は、たとえば、薬剤供給品72および/または処方箋受領書74に印刷することができる。いくつかの例では、ユーザに注射デバイス1も供給される。
【0079】
作動方法7.4において、ユーザは注射デバイス1をネットワークに接続する。たとえば、ユーザは、ルータ76を介して注射デバイス1をインターネットに接続することができる。デバイスをインターネットに接続する他の方法も考えられる。
【0080】
作動方法7.5において、ユーザは、注射デバイス1を使用して、視覚的コード66の画像を取り込む。視覚的コードは、注射デバイス1を、たとえばクラウド78内のデータベースにリンクさせる。視覚的コードの内容に基づいて、データベースと注射デバイス1との間でデータ転送が開始される。注射デバイス1は、視覚的コード66に応じて、データベースから1つまたはそれ以上のデータ項目をダウンロードする。データは、たとえば注射デバイス1の設定を構成するために使用可能である。
【0081】
いくつかの実施形態において、注射デバイス1を構成するためのデータのデータベースからのダウンロードは、ユーザが注射デバイス1を受け取る前に、薬局において実施することができる。
【0082】
視覚的コード66は、いくつかの実施形態において、「バリアフリー」にクラウドに接続するためのデータを含んでよい。たとえば、視覚的コード66は、ユーザネーム;ユーザ識別情報;ユーザログイン;データベースへのリンク;および/またはユーザパスワード:のうちの1つまたはそれ以上を含んでよい。
【0083】
データベースは、ユーザデータを含む。データベースに含まれるユーザデータの例は、ユーザネーム;ユーザの誕生日;ユーザの住所;ユーザに関連する1人もしくはそれ以上の医療従事者の識別情報(たとえば、医師名および/もしくは登録番号);1つもしくはそれ以上の薬剤識別情報;1つもしくはそれ以上の薬剤投与方針(たとえば、長期値/短期値の推奨);ならびに/またはユーザ履歴:のうちの1つまたはそれ以上を含んでよい。
【0084】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書では同義的に用いられ、1つもしくはそれ以上の活性医薬成分またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物と、場合により薬学的に許容可能な担体と、を含む医薬製剤を記述する。活性医薬成分(「API」)とは、最広義には、ヒトまたは動物に対して生物学的効果を有する化学構造体のことである。薬理学では、薬剤または医薬は、疾患の治療、治癒、予防、または診断に使用されるか、さもなければ身体的または精神的なウェルビーイングを向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限定された継続期間で、または慢性障害では定期的に使用可能である。
【0085】
以下に記載されるように、薬物または薬剤は、1つもしくはそれ以上の疾患の治療のために各種タイプの製剤中に少なくとも1つのAPIまたはその組合せを含みうる。APIの例としては、500Da以下の分子量を有する低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえば、ホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(ネイキッドおよびcDNAを含む)、RNA、アンチセンス核酸たとえばアンチセンスDNAおよびRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが挙げられうる。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに取り込み可能である。1つまたはそれ以上の薬物の混合物も企図される。
【0086】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスでの使用に適合化された一次パッケージまたは「薬物容器」に包含可能である。薬物容器は、たとえば、1つもしくはそれ以上の薬物の収納(たとえば、短期または長期の収納)に好適なチャンバを提供するように構成されたカートリッジ、シリンジ、リザーバ、または他の硬性もしくは可撓性のベッセルでありうる。たとえば、いくつかの場合には、チャンバは、少なくとも1日間(たとえば、1日間~少なくとも30日間)にわたり薬物を収納するように設計可能である。いくつかの場合には、チャンバは、約1カ月~約2年間にわたり薬物を収納するように設計可能である。収納は、室温(たとえば、約20℃)または冷蔵温度(たとえば、約-4℃~約4℃)で行うことが可能である。いくつかの場合には、薬物容器は、投与される医薬製剤の2つ以上の成分(たとえば、APIと希釈剤、または2つの異なる薬物)を各チャンバに1つずつ個別に収納するように構成されたデュアルチャンバカートリッジでありうるか、またはそれを含みうる。かかる場合には、デュアルチャンバカートリッジの2つのチャンバは、人体もしくは動物体への投薬前および/または投薬中に2つ以上の成分間の混合が可能になるように構成可能である。たとえば、2つのチャンバは、互いに流体連通するように(たとえば、2つのチャンバ間の導管を介して)かつ所望により投薬前にユーザによる2つの成分の混合が可能になるように構成可能である。代替的または追加的に、2つのチャンバは、人体または動物体への成分の投薬時に混合が可能になるように構成可能である。
【0087】
本明細書に記載の薬物送達デバイスに含まれる薬物または薬剤は、多くの異なるタイプの医学的障害の治療および/または予防のために使用可能である。障害の例としては、たとえば、糖尿病または糖尿病に伴う合併症たとえば糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害たとえば深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症が挙げられる。障害のさらなる例は、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチである。APIおよび薬物の例は、ローテリステ2014年(Rote Liste 2014)(たとえば、限定されるものではないがメイングループ12(抗糖尿病薬剤)または86(オンコロジー薬剤))やメルク・インデックス第15版(Merck Index,15th edition)などのハンドブックに記載されているものである。
【0088】
1型もしくは2型糖尿病または1型もしくは2型糖尿病に伴う合併症の治療および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえば、ヒトインスリン、もしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1アナログもしくはGLP-1レセプターアゴニスト、はそのアナログもしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、またはそれらの薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物、またはそれらのいずれかの混合物が挙げられる。本明細書で用いられる場合、「アナログ」および「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドに存在する少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失および/または交換によりおよび/または少なくとも1つのアミノ酸残基の付加により天然に存在するペプチドの構造たとえばヒトインスリンの構造から形式的に誘導可能な分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換アミノ酸残基は、コード可能アミノ酸残基または他の天然に存在する残基または純合成アミノ酸残基のどれかでありうる。インスリンアナログは、「インスリンレセプターリガンド」とも呼ばれる。特に、「誘導体」という用語は、天然に存在するペプチドの構造から形式的に誘導可能な分子構造、たとえば、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば脂肪酸)がアミノ酸の1つまたはそれ以上に結合したヒトインスリンの分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然に存在するペプチドに存在する1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失し、および/または非コード可能アミノ酸を含めて他のアミノ酸によって置き換えられ、または天然に存在するペプチドに非コード可能なものを含めてアミノ酸が付加される。
【0089】
インスリンアナログの例は、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28~B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0090】
インスリン誘導体の例は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン、Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、レベミル(Levemir)(登録商標));B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン、B29-N-オメガ-カルボキシペンタデカノイル-ガンマ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、トレシーバ(Tresiba)(登録商標));B29-N-(N-リトコリル-ガンマ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0091】
GLP-1、GLP-1アナログおよびGLP-1レセプターアゴニストの例は、たとえば、リキシセナチド(リキスミア(Lyxumia)(登録商標))、エキセナチド(エキセンジン-4、バイエッタ(Byetta)(登録商標)、ビデュリオン(Bydureon)(登録商標)、ヒラモンスターの唾液腺により産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(ビクトーザ(Victoza)(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(シンクリア(Syncria)(登録商標))、デュラグルチド(トルリシティ(Trulicity)(登録商標))、rエキセンジン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン、ビアドール-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenである。
【0092】
オリゴヌクレオチドの例は、たとえば、家族性高コレステロール血症の治療のためのコレステロール低下アンチセンス治療剤ミポメルセンナトリウム(キナムロ(Kynamro)(登録商標))である。
【0093】
DPP4阻害剤の例は、ビダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンである。
【0094】
ホルモンの例としては、脳下垂体ホルモンもしくは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンが挙げられる。
【0095】
多糖の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化多糖たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。ヒアルロン酸誘導体の例は、ハイランG-F20(シンビスク(Synvisc)(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムである。
【0096】
本明細書で用いられる「抗体」という用語は、イムノグロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。イムノグロブリン分子の抗原結合部分の例としては、抗原への結合能を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが挙げられる。抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、組換え抗体、キメラ抗体、脱免疫化もしくはヒト化抗体、完全ヒト抗体、非ヒト(たとえばネズミ)抗体、または一本鎖抗体でありうる。いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター機能を有するとともに補体を固定可能である。いくつかの実施形態では、抗体は、Fcレセプターへの結合能が低減されているか、または結合能がない。たとえば、抗体は、Fcレセプターへの結合を支援しない、たとえば、Fcレセプター結合領域の突然変異もしくは欠失を有するアイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは突然変異体でありうる。抗体という用語は、4価二重特異的タンデムイムノグロブリン(TBTI)および/またはクロスオーバー結合領域配向を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗原結合分子も含む。
【0097】
「フラグメント」または「抗体フラグメント」という用語は、完全長抗体ポリペプチドを含まないが依然として抗原に結合可能な完全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を含む抗体ポリペプチド分子由来のポリペプチド(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)を指す。抗体フラグメントは、完全長抗体ポリペプチドの切断部分を含みうるが、この用語は、かかる切断フラグメントに限定されるものではない。本開示に有用な抗体フラグメントとしては、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、線状抗体、単一特異的または多重特異的な抗体フラグメント、たとえば、二重特異的、三重特異的、四重特異的および多重特異的抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)、1価または多価抗体フラグメント、たとえば、2価、3価、4価および多価の抗体、ミニボディ、キレート化組換え抗体、トリボディまたはビボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュール免疫医薬(SMIP)、結合ドメインイムノグロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体が挙げられる。抗原結合抗体フラグメントの追加の例は当技術分野で公知である。
【0098】
「相補性決定領域」または「CDR」という用語は、特異的抗原認識を媒介する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。「フレームワーク領域」という用語は、CDR配列でないかつ抗原結合が可能になるようにCDR配列の適正配置を維持する役割を主に担う、重鎖および軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、典型的には抗原結合に直接関与しないが、当技術分野で公知のように、ある特定の抗体のフレームワーク領域内のある特定の残基は、抗原結合に直接関与しうるか、またはCDR内の1つもしくはそれ以上のアミノ酸と抗原との相互作用能に影響を及ぼしうる。
【0099】
抗体の例は、抗PCSK-9 mAb(たとえば、アリロクマブ)、抗IL-6 mAb(たとえば、サリルマブ)、および抗IL-4 mAb(たとえば、デュピルマブ)である。
【0100】
本明細書に記載のいずれのAPIの薬学的に許容可能な塩も、薬物送達デバイスで薬物または薬剤に使用することが企図される。薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。
【0101】
本明細書に記載のAPI、公式、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の修正(追加および/または除去)は、本開示の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行うことができ、本開示が、そうした修正、およびあらゆるその等価物を包含することを、当業者は理解するであろう。
図1a
図1b
図1c
図1d
図2
図3
図4
図5
図6
図7