(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-05
(45)【発行日】2024-02-14
(54)【発明の名称】波長変換装置、固体レーザシステム、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/37 20060101AFI20240206BHJP
H01S 3/108 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
G02F1/37
H01S3/108
(21)【出願番号】P 2021545084
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036172
(87)【国際公開番号】W WO2021049022
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋平
(72)【発明者】
【氏名】曲 晨
(72)【発明者】
【氏名】淵向 篤
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-120799(JP,A)
【文献】特開2001-051311(JP,A)
【文献】特開2003-156773(JP,A)
【文献】特開2010-033049(JP,A)
【文献】特開2004-219878(JP,A)
【文献】特開2001-066654(JP,A)
【文献】国際公開第2018/105082(WO,A1)
【文献】米国特許第06002697(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35,1/37
H01S 3/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備え、
前記第1のコントローラは、前記電池の蓄電量に応じて電力供給量を変更する波長変換装置。
【請求項2】
請求項
1に記載の波長変換装置であって、
前記第1のコントローラは、前記電池の蓄電量が第1の閾値を下回るとアラート信号を出力させる波長変換装置。
【請求項3】
光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備え、
前記第1のコントローラは、前記電池を交換する際に前記第1の非線形結晶の温度が徐々に低下するように前記第1のヒータへの電力の供給を制御する波長変換装置。
【請求項4】
請求項1
又は3に記載の波長変換装置であって、
前記第1のコントローラは、前記電池と外部電源とのいずれを用いて電力を供給するかを選択する波長変換装置。
【請求項5】
請求項
4に記載の波長変換装置であって、
前記電池は前記外部電源から充電される波長変換装置。
【請求項6】
請求項
4に記載の波長変換装置であって、
前記第1のコントローラは、前記外部電源を用いて前記第1のヒータに電力を供給する波長変換装置。
【請求項7】
請求項
4に記載の波長変換装置であって、
前記第1のコントローラは、前記波長変換装置の外部からの信号に基づいて前記第1の非線形結晶の加熱を開始する波長変換装置。
【請求項8】
請求項
4に記載の波長変換装置であって、
前記第1のコントローラは、前記電池から前記外部電源への切り替え、及び前記外部電源から前記電池への切り替えにおいて、前記第1のヒータへの前記電力の供給を継続する波長変換装置。
【請求項9】
請求項1
又は3に記載の波長変換装置であって、
前記第1の非線形結晶と前記第2のウィンドウとの間に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光が入力される第2の非線形結晶と、
前記第2の非線形結晶を加熱する第2のヒータと、
を備える波長変換装置。
【請求項10】
請求項
9に記載の波長変換装置であって、
前記第2のヒータへの電力の供給を制御する第2のコントローラを備え、
前記第2のコントローラは、前記電池と外部電源とのいずれを用いて電力を供給するかを選択する波長変換装置。
【請求項11】
請求項1
又は3に記載の波長変換装置であって、
前記容器の内部にガスを供給する供給管と、
前記容器の外部に前記ガスを排出するための排出管と、
前記供給管に設けられ、前記ガスが供給される際に自動的に開動作し、前記ガスの供給が中止される際に自動的に閉動作する供給バルブと、
前記排出管に設けられ、前記ガスが排出される際に自動的に開動作し、前記ガスの排出が中止される際に自動的に閉動作する排出バルブと、
を備える波長変換装置。
【請求項12】
請求項
11に記載の波長変換装置であって、
前記ガスは不活性ガスである波長変換装置。
【請求項13】
請求項1
又は3に記載の波長変換装置であって、
前記第1の非線形結晶は、BBO結晶、LBO結晶、及びCLBO結晶のうちのいずれかである波長変換装置。
【請求項14】
光を出力する固体レーザ装置と、
前記光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備え
、
前記第1のコントローラは、前記電池の蓄電量に応じて電力供給量を変更する第1の波長変換装置と、
を備える固体レーザシステム。
【請求項15】
光を出力する固体レーザ装置と、
前記光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備え
、
前記第1のコントローラは、前記電池を交換する際に前記第1の非線形結晶の温度が徐々に低下するように前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1の波長変換装置と、
を備える固体レーザシステム。
【請求項16】
請求項
14又は15に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1の波長変換装置とは異なる第2の波長変換装置と、
前記第1の波長変換装置と前記第2の波長変換装置とを固定する載置台を前記光の光軸に対して平行移動させるステージと、
を備える固体レーザシステム。
【請求項17】
請求項16に記載の固体レーザシステムであって、
前記第1の波長変換装置に設けられたカートリッジ接続部と、
前記載置台に設けられた位置決め接続部と、
を備え、
前記カートリッジ接続部と前記位置決め接続部とが互いに係合することで前記第1の波長変換装置が前記載置台に固定される固体レーザシステム。
【請求項18】
請求項17に記載の固体レーザシステムであって、
前記カートリッジ接続部に設けられた第1の電源端子と、
前記位置決め接続部に設けられた第2の電源端子と、
を備え、
前記カートリッジ接続部と前記位置決め接続部とが互いに係合することで前記第1の電源端子と前記第2の電源端子とが接続される固体レーザシステム。
【請求項19】
請求項17に記載の固体レーザシステムであって、
前記カートリッジ接続部に設けられた第1のガスラインと、
前記位置決め接続部に設けられた第2のガスラインと、
を備え、
前記カートリッジ接続部と前記位置決め接続部とが互いに係合することで前記第1のガスラインと前記第2のガスラインとが接続される固体レーザシステム。
【請求項20】
光を出力する固体レーザ装置と、
前記光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備える第1の波長変換装置と、
前記第1の波長変換装置とは異なる第2の波長変換装置と、
前記第1の波長変換装置と前記第2の波長変換装置とを固定する載置台を前記光の光軸に対して平行移動させるステージと、
前記第1の波長変換装置に設けられたカートリッジ接続部と、
前記載置台に設けられた位置決め接続部と、
を備え、
前記カートリッジ接続部と前記位置決め接続部とが互いに係合することで前記第1の波長変換装置が前記載置台に固定される固体レーザシステム。
【請求項21】
請求項
20に記載の固体レーザシステムであって、
前記カートリッジ接続部に設けられた第1の電源端子と、
前記位置決め接続部に設けられた第2の電源端子と、
を備え、
前記カートリッジ接続部と前記位置決め接続部とが互いに係合することで前記第1の電源端子と前記第2の電源端子とが接続される固体レーザシステム。
【請求項22】
請求項
20に記載の固体レーザシステムであって、
前記カートリッジ接続部に設けられた第1のガスラインと、
前記位置決め接続部に設けられた第2のガスラインと、
を備え、
前記カートリッジ接続部と前記位置決め接続部とが互いに係合することで前記第1のガスラインと前記第2のガスラインとが接続される固体レーザシステム。
【請求項23】
電子デバイスの製造方法であって、
光を出力する固体レーザ装置と、
前記光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備え
、
前記第1のコントローラは、前記電池の蓄電量に応じて電力供給量を変更する波長変換装置と、
を備える固体レーザシステムと、
前記第2のウィンドウから出射されたレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、
を含むレーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、
前記エキシマレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記エキシマレーザ光を露光することを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項24】
電子デバイスの製造方法であって、
光を出力する固体レーザ装置と、
前記光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備え、
前記第1のコントローラは、前記電池を交換する際に前記第1の非線形結晶の温度が徐々に低下するように前記第1のヒータへの電力の供給を制御する波長変換装置と、
を備える固体レーザシステムと、
前記第2のウィンドウから出射されたレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、
を含むレーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、
前記エキシマレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記エキシマレーザ光を露光することを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項25】
電子デバイスの製造方法であって、
光を出力する固体レーザ装置と、
前記光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、
第1の非線形結晶と、
前記第1の非線形結晶を収容する容器と、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、
前記容器に設けられ、前記容器の外部から前記第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、
前記容器に設けられ、前記第1の非線形結晶からの出力光を前記容器の外部に導く第2のウィンドウと、
前記容器の内部に設けられ、前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータに電力を供給する電池と、
前記第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、
を備える
第1の波長変換装置と、
前記第1の波長変換装置とは異なる第2の波長変換装置と、
前記第1の波長変換装置と前記第2の波長変換装置とを固定する載置台を前記光の光軸に対して平行移動させるステージと、
前記第1の波長変換装置に設けられたカートリッジ接続部と、
前記載置台に設けられた位置決め接続部と、
を備え、
前記カートリッジ接続部と前記位置決め接続部とが互いに係合することで前記第1の波長変換装置が前記載置台に固定される固体レーザシステムと、
前記第2のウィンドウから出射されたレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、
を含むレーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、
前記エキシマレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記エキシマレーザ光を露光することを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、波長変換装置、固体レーザシステム、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには等価における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350~400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化部(Line Narrow Module)が設けられ、この狭帯域化部によりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2008/0291528号明細書
【文献】特開2002-199600号公報
【概要】
【0006】
本開示の1つの観点に係る波長変換装置は、光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、第1の非線形結晶と、第1の非線形結晶を収容する容器と、容器の内部に設けられ、第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、容器に設けられ、容器の外部から第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、容器に設けられ、第1の非線形結晶からの出力光を容器の外部に導く第2のウィンドウと、容器の内部に設けられ、第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、第1のヒータに電力を供給する電池と、第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、を備える。
【0007】
本開示の1つの観点に係る固体レーザシステムは、光を出力する固体レーザ装置と、光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、第1の非線形結晶と、第1の非線形結晶を収容する容器と、容器の内部に設けられ、第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、容器に設けられ、容器の外部から第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、容器に設けられ、第1の非線形結晶からの出力光を容器の外部に導く第2のウィンドウと、容器の内部に設けられ、第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、第1のヒータに電力を供給する電池と、第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、を備える第1の波長変換装置と、を備える。
【0008】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、光を出力する固体レーザ装置と、光を非線形結晶に通して波長変換する波長変換装置であって、第1の非線形結晶と、第1の非線形結晶を収容する容器と、容器の内部に設けられ、第1の非線形結晶を固定する結晶保持部材と、容器に設けられ、容器の外部から第1の非線形結晶に光を導く第1のウィンドウと、容器に設けられ、第1の非線形結晶からの出力光を容器の外部に導く第2のウィンドウと、容器の内部に設けられ、第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、第1のヒータに電力を供給する電池と、第1のヒータへの電力の供給を制御する第1のコントローラと、を備える波長変換装置と、を備える固体レーザシステムと、第2のウィンドウから出射されたレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、を含むレーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、エキシマレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にエキシマレーザ光を露光する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、固体レーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、第1のCLBO結晶セルの内部構造を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る第1の駆動セルと第1の予備セルとの構成を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、第1の駆動セルと第1の予備セルとの交換処理を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2のCLBO結晶のレーザ光の入射面を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る第2の駆動セルと第2の予備セルとの構成を概略的に示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態3に係る第4のCLBO結晶セルの構成を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態4に係る第3の駆動セルと第3の予備セルとの構成を概略的に示す図である。
【
図9】
図9は、第3の駆動セルと第3の予備セルとの交換処理を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、パージガスの切り替え動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態5に係る第2の駆動セルと第2の予備セルとの温度制御処理を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、第2の予備セルの温度制御モード切り替え処理の詳細を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、実施形態6に係る第5のCLBO結晶セルの構成を概略的に示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態6に係る輸送用大容量バッテリ台車の構成を概略的に示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態7に係る固体レーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態8に係る固体レーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態9に係る固体レーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【実施形態】
【0010】
-目次-
1.用語の説明
2.固体レーザシステムの概要
2.1 構成
2.1.1 固体レーザシステムの構成
2.1.2 CLBO結晶セルの内部構成
2.2 動作
2.3 CLBO結晶セルの交換
3.課題
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 動作
4.2.1 駆動セルと予備セルとの交換処理
4.2.2 駆動セルの結晶交換準備時期の判断
4.3 作用・効果
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.実施形態3
6.1 構成
6.2 動作
6.3 作用・効果
6.4 変形例
7.実施形態4
7.1 構成
7.2 動作
7.2.1 自動パージ動作とパージガスの切り替え動作
7.3 作用・効果
8.実施形態5
8.1 構成
8.2 動作
8.2.1 温度制御モード切り替え
8.3 作用・効果
9.実施形態6
9.1 構成
9.2 動作
9.3 作用・効果
10.実施形態7
10.1 構成
10.2 動作
10.3 作用・効果
11.実施形態8
11.1 構成
11.2 動作
11.3 作用・効果
12.実施形態9
12.1 構成
12.2 動作
12.3 作用・効果
13.電子デバイスの製造方法
14.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.用語の説明
本明細書において使用される用語を以下のように定義する。
【0012】
「ハイブリッドレーザ装置」とは、発振段(マスタオシレータ)と増幅段(増幅装置)とを備えた2ステージレーザ装置において、発振段に固体レーザ装置、増幅段にエキシマレーザ装置を備えた装置をいう。「エキシマ増幅器」とは、増幅段に用いられるエキシマレーザ装置をいう。
【0013】
本明細書における「平行」という用語には、技術的意義において実質的に平行と同等の範囲と見做しうる略平行の概念が含まれてよい。また、本明細書における「垂直」又は「直交」という用語には、技術的意義において実質的に垂直又は実質的に直交と同等の範囲と見做しうる略垂直又は略直交の概念が含まれてよい。
【0014】
2.固体レーザシステムの概要
2.1 構成
2.1.1 固体レーザシステムの構成
図1は、固体レーザシステム1の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、固体レーザシステム1は、第1の固体レーザ装置10と、第2の固体レーザ装置12と、第3の集光レンズ14と、第4の集光レンズ16と、第1の高反射ミラー18と、第1のダイクロイックミラー20と、波長変換部22と、を備える。
【0015】
第1の固体レーザ装置10は、波長1030nmのパルスレーザ光を出力するレーザ装置24と、第1の集光レンズ26と、LBO(LiB3O5)結晶28と、第2の集光レンズ30と、第1のCLBO(CsLiB6O10)結晶32と、を含む。
【0016】
LBO結晶28は、非線形結晶である。第1のCLBO結晶32は、タイプ1の位相整合条件をもつ波長変換結晶である。第1のCLBO結晶32は、第1のCLBO結晶セル34に配置される。
【0017】
第2の固体レーザ装置12は、波長1553nmのパルスレーザ光を出力するレーザ装置である。
【0018】
第1の高反射ミラー18と第1のダイクロイックミラー20とは、第2の固体レーザ装置12から出力される波長1553nmのパルスレーザ光が波長変換部22に入力されるように配置される。第3の集光レンズ14は、第1の固体レーザ装置10の第1のCLBO結晶32と、第1のダイクロイックミラー20との間の光路上に配置される。第4の集光レンズ16は、第1の高反射ミラー18と第1のダイクロイックミラー20との間の光路上に配置される。
【0019】
第1のダイクロイックミラー20は、第1の固体レーザ装置10から出力される波長257.5nmのパルスレーザ光を高透過し、第2の固体レーザ装置12から出力される波長1553nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされる。第1のダイクロイックミラー20は、第1の固体レーザ装置10と第2の固体レーザ装置12とからそれぞれ出力されるパルスレーザ光の光軸が一致し、波長変換部22に入射するように配置される。
【0020】
波長変換部22は、波長変換素子として、第2のCLBO結晶36と、第3のCLBO結晶40とを含む。また、波長変換部22は、第5の集光レンズ44と、第6の集光レンズ46と、第1のコリメータレンズ48と、第2のコリメータレンズ50と、第2のダイクロイックミラー52と、第3のダイクロイックミラー54と、1/2波長板56と、第2の高反射ミラー58と、第3の高反射ミラー60と、を含む。
【0021】
第2のCLBO結晶36と第3のCLBO結晶40とは、それぞれタイプ1の位相整合条件をもつ波長変換結晶である。第2のCLBO結晶36は、第2のCLBO結晶セル38に配置される。また、第3のCLBO結晶40は、第3のCLBO結晶セル42に配置される。
【0022】
第2のCLBO結晶36から出力された波長1553nmのパルスレーザ光の光路上に、第2のダイクロイックミラー52、第2のコリメータレンズ50、第2の高反射ミラー58、1/2波長板56、第5の集光レンズ44、第3のダイクロイックミラー54がこの順番に配置される。また、第2のCLBO結晶36から出力された波長220.9nmのパルスレーザ光の光路上に、第2のダイクロイックミラー52、第1のコリメータレンズ48、第3の高反射ミラー60、第6の集光レンズ46、第3のダイクロイックミラー54が、この順番で配置される。
【0023】
第2のダイクロイックミラー52は、波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とを高透過し、波長220.9nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされる。
【0024】
第3のダイクロイックミラー54は、波長220.9nmのパルスレーザ光を高透過し、波長1553nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされる。
【0025】
1/2波長板56は、透過するパルスレーザ光の偏光方向を90°回転させる。
【0026】
第1の高反射ミラー18、第2の高反射ミラー58、第3の高反射ミラー60は、それぞれ反射すべき各波長に対応した高反射膜がコートされる。
【0027】
2.1.2 CLBO結晶セルの内部構成
図2は、第1のCLBO結晶セル34の内部構造を示す図である。
図2に示すように、第1のCLBO結晶セル34は、前述の第1のCLBO結晶32の他、第1の容器70と、第1の入射ウィンドウ72と、第1の出射ウィンドウ74と、結晶ホルダ76と、第1のヒータ78と、Arガス供給管80と、Arガス排出管82と、を含む。
【0028】
第1の容器70の内部の光軸上に第1の入射ウィンドウ72、第1のCLBO結晶32、第1の出射ウィンドウ74が配置される。第1の入射ウィンドウ72は、本開示の「第1のウィンドウ」の一例である。第1の出射ウィンドウ74は、本開示の「第2のウィンドウ」の一例である。
【0029】
結晶ホルダ76は、第1のCLBO結晶32を固定する結晶保持部材である。第1のヒータ78は、結晶ホルダ76に敷設して配置される。第1のヒータ78は、固体レーザシステム1の電源であるレーザ用電源84と接続される。
【0030】
Arガス供給管80は、Arガス供給装置86と第1の容器70の内部とを接続する。Arガス排出管82は、Arガス排出装置88と第1の容器70の内部とを接続する。
【0031】
なお、第1のCLBO結晶セル34、第2のCLBO結晶セル38、第3のCLBO結晶セル42の内部構成は共通であるため、第2のCLBO結晶セル38と第3のCLBO結晶セル42との内部構成の説明は省略する。Arガス供給装置86とArガス排出装置88とは、共通に使用してもよい。
【0032】
2.2 動作
固体レーザシステム1の動作について説明する。なお、
図1において、光路中に付した中心に点を有する丸印は紙面に対して垂直な偏光方向を示し、両矢印は紙面に対して平行な偏光方向を示している。
【0033】
予め、第1のCLBO結晶セル34、第2のCLBO結晶セル38、第3のCLBO結晶セル42の各第1の容器70の内部には、Arガス供給管80によりArガスが供給され、かつArガス排出管82によりArガスが排出される。また、予め第1のCLBO結晶セル34、第2のCLBO結晶セル38、第3のCLBO結晶セル42の各第1のヒータ78には電力が供給され、各第1のヒータ78により第1のCLBO結晶32、第2のCLBO結晶36、第3のCLBO結晶40の温度が120℃に維持される。
【0034】
レーザ装置24から出力された波長1030nmのパルスレーザ光は、LBO結晶28において波長515nmのパルスレーザ光に変換される。LBO結晶28からは、波長515nmのパルスレーザ光が出力され、波長515nmのパルスレーザ光は第1のCLBO結晶32に入射する。
【0035】
第1のCLBO結晶32は、波長515nmのパルスレーザ光が位相整合条件を満たすように、入射角が調整される。その結果、第1のCLBO結晶32において、波長515nmのパルスレーザ光の第2高調波である波長257.5nmのパルスレーザ光が生成される。
【0036】
第1の固体レーザ装置10から出力される波長257.5nmのパルスレーザ光と、第2の固体レーザ装置12から出力される波長1553nmのパルスレーザ光とは、第1のダイクロイックミラー20によって、略同時に、かつ略同光軸で第2のCLBO結晶36に入射する。
【0037】
第2のCLBO結晶36に入射する波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とは、偏光方向が互いに平行である。また、第2のCLBO結晶36はタイプ1であり、偏光方向が互いに平行であるパルスレーザ光に対して位相整合条件をもつ。したがって、第2のCLBO結晶36は、波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とが位相整合条件を満たすように入射角が調整されることにより、波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光との和周波である波長220.9nmのパルスレーザ光を生成する。その結果、第2のCLBO結晶36からは、波長220.9nmのパルスレーザ光、波長257.5nmのパルスレーザ光、波長1553nmのパルスレーザ光が出力される。
【0038】
第2のダイクロイックミラー52は、波長220.9nmのパルスレーザ光を反射し、波長1553nmのパルスレーザ光と波長257.5nmのパルスレーザ光とを透過する。
【0039】
波長1553nmのパルスレーザ光は、1/2波長板56を透過することで偏光方向が90°回転する。この結果、波長220.9nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光の偏光方向とは、互いに平行になる。
【0040】
第3のダイクロイックミラー54は、波長1553nmのパルスレーザ光を反射し、波長220.9nmのパルスレーザ光と波長257.5nmのパルスレーザ光とを透過する。さらに、波長220.9nmのパルスレーザ光の光軸が、偏光方向の回転された波長1553nmのパルスレーザ光の光軸と略一致させられ、第3のCLBO結晶40に入射する。
【0041】
第3のCLBO結晶40に入射する波長220.9nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とは、偏光方向が互いに平行である。また、第3のCLBO結晶40はタイプ1であり、偏光方向が互いに平行であるパルスレーザ光に対して位相整合条件をもつ。したがって、第3のCLBO結晶40は、波長220.9nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とが位相整合条件を満たすように入射角が調整されることにより、波長220.9nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光との和周波である波長193.4nmのパルスレーザ光を生成する。
【0042】
2.3 CLBO結晶セルの交換
CLBO結晶セルの交換について説明する。ここでは、一例として第1のCLBO結晶セル34の交換について説明する。
【0043】
最初に、固体レーザシステム1は動作を停止し、交換時期に到達した第1のCLBO結晶セル34の、第1の容器70のArガスの供給、排出と第1のヒータ78への電力供給とを停止させる。
【0044】
続いて、ユーザは、交換時期に到達した第1のCLBO結晶セル34を、新しい第1のCLBO結晶セル34に交換する。その直後、固体レーザシステム1は、新しい第1のCLBO結晶セル34の第1の容器70のArガスの供給、排出と第1のヒータ78への電力供給を再開させる。第1のヒータ78は、第1のCLBO結晶32を120℃まで加熱する。固体レーザシステム1は、新しい第1のCLBO結晶セル34内へのArガスの流通を維持したまま、かつ、第1のCLBO結晶32の温度を120℃に維持したまま1~2日間放置する。これにより、新しい第1のCLBO結晶セル34の第1のCLBO結晶32が脱水される。
【0045】
第1のCLBO結晶32の脱水が完了すると、新しい第1のCLBO結晶セル34の第1の容器70のArガスの供給、排出と第1のヒータ78への電力供給を維持したまま、固体レーザシステム1は動作を再開する。
【0046】
3.課題
CLBO結晶は吸湿性があるため、CLBO結晶は前述のようにCLBO結晶セルの容器の内部で120℃程度に加熱され、温度を維持した状態で使用される。また、CLBO結晶の寿命が到達した場合には、CLBO結晶セルを開放して内部のCLBO結晶を交換していたが、交換後のCLBO結晶の加熱、昇温、脱水時間には1~2日必要となり、メンテナンスに時間がかかっていた。
【0047】
4.実施形態1
4.1 構成
図3は、実施形態1に係るCLBO結晶セルであって、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとの構成を概略的に示す図である。第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとは、それぞれ本開示の「波長変換装置」の一例である。
図2に示した第1のCLBO結晶セル34との相違点を説明する。
【0048】
第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとは、それぞれ同じ構成を有するCLBO結晶セルである。第1の駆動セル100Aは、固体レーザシステム1において波長変換動作中のCLBO結晶セルである。第1の駆動セル100Aは、
図1に示した第1のCLBO結晶セル34、第2のCLBO結晶セル38、第3のCLBO結晶セル42のいずれであってもよい。また、第1の予備セル100Bは、交換待機中のCLBO結晶セルである。
【0049】
第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとは、それぞれ第4のCLBO結晶102を備える。第1の駆動セル100Aの第4のCLBO結晶102と第1の予備セル100Bの第4のCLBO結晶102とは、同じ位相整合条件をもつ非線形結晶である。ここでは、CLBO結晶を例に説明しているが、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとは、同じ位相整合条件をもつBBO(β-BaB2O4)結晶やLBO結晶を備えてもよい。
【0050】
また、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとは、それぞれバッテリ104と、温度制御部106とを備える。バッテリ104は、本開示の「電池」の一例である。バッテリ104は、第1のヒータ78と温度制御部106とに電力を供給する一次電池、二次電池、又はキャパシタである。二次電池は、例えばリチウムイオン二次電池、鉛蓄電池であってもよい。バッテリ104が二次電池又はキャパシタである場合は、バッテリ104はレーザ用電源84又は外部電源108に接続されて充電される。
【0051】
温度制御部106は、第1のヒータ78への電力の供給を制御するコントローラである。温度制御部106は、第1のヒータ78への電力供給について、レーザ用電源84や外部電源108から供給するか、又はバッテリ104から供給するかを選択して切り替える。バッテリ104と温度制御部106とは、それぞれ第1の容器70と一体に構成される。レーザ用電源84、外部電源108は、それぞれ本開示の「外部電源」の一例である。外部電源108は、大容量バッテリであってもよい。
【0052】
4.2 動作
第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとの動作について説明する。
【0053】
第1の駆動セル100Aは、固体レーザシステム1に搭載された状態で、レーザ用電源84から電力供給されて第4のCLBO結晶102の温度が制御される。第1の駆動セル100Aの第1の入射ウィンドウ72は、第1の容器70の外部から第4のCLBO結晶102にパルスレーザ光を導く。第4のCLBO結晶102は、入射したパルスレーザ光の波長を変換する。第1の出射ウィンドウ74は、第4のCLBO結晶102からの出力光である波長変換後のパルスレーザ光を第1の容器70の外部に導く。
【0054】
また、第1の予備セル100Bは、固体レーザシステム1に搭載されていない状態で、バッテリ104から電力供給されて第4のCLBO結晶102の温度が制御される。固体レーザシステム1に搭載されていない状態では、第1の予備セル100Bは外部電源108から電力供給されてもよい。
【0055】
第1の駆動セル100Aが交換時期に到達した場合、ユーザは固体レーザシステム1から第1の駆動セル100Aを取り外し、代わりに第1の予備セル100Bを固体レーザシステム1に取り付ける。
【0056】
4.2.1 駆動セルと予備セルとの交換処理
図4は、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとの交換処理を示すフローチャートである。ここでは、固体レーザシステム1に搭載されている第1の駆動セル100Aから第1の予備セル100Bへ交換するものとする。また、以下の説明における「ユーザ」は、必ずしも単一の人物を指すものではなく、適宜異なる人物であってもよい。
【0057】
ステップS1では、固体レーザシステム1が始動する。
【0058】
ステップS2では、固体レーザシステム1は、第1の駆動セル100Aの第4のCLBO結晶102が寿命に到達したか否かを判定する。寿命の判定は、例えば第1の駆動セル100Aの駆動期間と予め定義した寿命駆動期間とを比較して行う。第4のCLBO結晶102が寿命に到達していない場合は、固体レーザシステム1はステップS3の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102が寿命に到達した場合は、固体レーザシステム1はステップS6の処理を行う。
【0059】
ステップS3では、固体レーザシステム1は、第1の駆動セル100Aの第4のCLBO結晶102の交換準備時期であるか否かを判定する。交換準備時期の判定は、例えば第1の駆動セル100Aの駆動期間と予め定義した駆動期間の閾値とを比較して行う。第4のCLBO結晶102の交換準備時期でない場合は、固体レーザシステム1はステップS2の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102の交換準備時期である場合は、固体レーザシステム1はステップS4の処理を行う。
【0060】
ステップS4では、固体レーザシステム1は、第1の予備セル100Bの第4のCLBO結晶102を加熱し、脱水を開始させる。第1の予備セル100Bの第4のCLBO結晶102の加熱は、第1の予備セル100Bの第1のヒータ78により行う。第1のヒータ78の温度は、温度制御部106により管理される。温度制御部106は、固体レーザシステム1からの信号に基づいて第4のCLBO結晶102の加熱を開始する。第4のCLBO結晶102が所定の温度に達すると脱水が開始する。固体レーザシステム1からの信号は、本開示の「外部からの信号」の一例である。第1の予備セル100Bは、バッテリ104から電力供給される。
【0061】
ステップS5では、固体レーザシステム1は、第1の予備セル100Bの第4のCLBO結晶102の脱水が完了したか否かを判定する。脱水完了の判定は、例えば第1の予備セル100Bの加熱開始からの経過時間と予め定義しておいた脱水に要する時間の閾値とを比較して行う。第4のCLBO結晶102の脱水が完了していない場合は、固体レーザシステム1はステップS2の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102の脱水が完了した場合は、固体レーザシステム1はステップS6の処理を行う。
【0062】
ステップS6では、固体レーザシステム1は動作を停止する。続いて、ステップS7では、ユーザは固体レーザシステム1から第1の駆動セル100Aを取り外し、固体レーザシステム1に第1の予備セル100Bを取り付けることで、第1の駆動セル100Aから第1の予備セル100Bへ交換する。
【0063】
ステップS8では、ステップS7の第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとの交換に伴って、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとの電源がそれぞれ切り替わる。即ち、第1の駆動セル100Aの電力供給は、レーザ用電源84から第1の駆動セル100Aのバッテリ104に切り替わる。一方、第1の予備セル100Bの電力供給は、第1の予備セル100Bのバッテリ104からレーザ用電源84に切り替わる。
【0064】
以上により、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとの交換が終了する。
【0065】
4.2.2 駆動セルの結晶交換準備時期の判断
ステップS3の第1の駆動セル100Aの第4のCLBO結晶102の交換準備時期であるか否かの判定の詳細について説明する。固体レーザシステム1は、以下の(1)~(6)のうち少なくとも1つに基づいて判定する。
【0066】
(1)レーザ照射時間に基づいて検出
第1の駆動セル100Aの使用開始から第4のCLBO結晶102にレーザ光を照射する総レーザ照射時間を計測し、規定時間に到達したタイミングを検出する。例えば、CLBO結晶の総レーザ照射時間の限界は4000時間であり、規定時間は4000時間の80%である3200時間である。
【0067】
(2)パルス数に基づいて検出
第1の駆動セル100Aの使用開始から第4のCLBO結晶102にレーザ光を照射するパルス数をカウントし、規定回数に到達したタイミングを検出する。例えば、CLBO結晶の総パルス数の限界は20ビリオン(20×109)であり、規定回数は20ビリオンの80%である16ビリオンである。
【0068】
(3)波長変換後のレーザ出力に基づいて検出
波長変換部22よりも下流側に不図示の第1のエネルギセンサを備え、波長変換光のパルスエネルギが閾値以下になったタイミングを検出する。閾値は、例えば80nWである。
【0069】
(4)波長変換時の変換効率に基づいて検出
波長変換部22よりも下流側に不図示の第1のエネルギセンサと、上流側に不図示の第2のエネルギセンサとを備える。第1のエネルギセンサの出力をEout、第2のエネルギセンサの出力をEinとすると、波長変換時の変換効率Eout/Einが閾値以下になったタイミングを検出する。例えば、第3のCLBO結晶40の出力をEout、第2のCLBO結晶36の入力をEinとすると、閾値は1%である。
【0070】
(5)入射点移動回数に基づいて検出
CLBO結晶は、レーザ光が入射する入射面のうちレーザ光の入射点が部分的に汚染する。そのため、汚染がある程度進んだ場合に2軸ステージにより結晶を移動させて入射点を移動させる。
【0071】
図5は、第2のCLBO結晶36のレーザ光の入射面を示す図である。
図5では、レーザ光の進行方向をZ方向、Z方向と垂直な一方向をV方向、V方向及びZ方向に垂直な方向をH方向としている。最初に、第2のCLBO結晶36は、レーザ光が点P
1に入射されて使用される。その後、点P
1の汚染が進むと、不図示のHVθステージにより第2のCLBO結晶36がH方向に移動されて、レーザ光が点P
2に入射されて使用される。入射点の汚染が進むたびに第2のCLBO結晶36をH方向又はV方向に移動させて、入射点を点P
3、P
4、…、P
N-1、P
Nと切り替える。
【0072】
この入射点移動回数が規定回数に到達したタイミングを検出する。総入射点数がNとすると、移動回数は全部で(N-1)回となり、規定回数は例えば(N-2)である。
【0073】
ここでは第2のCLBO結晶36の入射点の移動について説明したが、第1のCLBO結晶32、第3のCLBO結晶40についても同様である。
【0074】
(6)波長変換前のレーザ出力に基づいて検出
波長変換部22よりも下流側に不図示の第1のエネルギセンサと、上流側に不図示の第2のエネルギセンサとを備える。波長変換後のエネルギが一定となるように、波長変換前のエネルギを制御する場合、CLBO結晶が劣化してくると波長変換前のエネルギが増加する。したがって、波長変換前のエネルギが閾値以上となったタイミングを検出する。閾値は、例えば、波長変換部22に入力される波長257.5nmのパルスレーザ光のエネルギにおいて8Wである。
【0075】
4.3 作用・効果
実施形態1に係る第1の駆動セル100Aの第4のCLBO結晶102と第1の予備セル100Bの第4のCLBO結晶102とは、それぞれ第1のヒータ78により加熱される。この第1のヒータ78は温度制御部106により出力が管理される。第1のヒータ78はバッテリ104に接続されており、バッテリ104は固体レーザシステム1の既設電源であるレーザ用電源84や外部電源108に対して接続と切断とを行うことができる。
【0076】
したがって、第1の予備セル100Bは、レーザ用電源84や外部電源108に接続されない状態であっても、バッテリ104により第4のCLBO結晶102を予め脱水状態に維持しておくことができる。これにより、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとを交換するメンテナンスの時間を短縮することができる。
【0077】
また、第1の駆動セル100Aが固体レーザシステム1から切り離されても、第1の駆動セル100Aはバッテリ104により無停電状態を作り出せるので、第1の駆動セル100Aの第4のCLBO結晶102の温度を維持することができる。
【0078】
さらに、非常停電時であっても、第1の駆動セル100Aと第1の予備セル100Bとは、それぞれバッテリ104により第4のCLBO結晶102の温度の維持や保全を行うことができる。
【0079】
5.実施形態2
5.1 構成
図6は、実施形態2に係るCLBO結晶セルであって、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの構成を概略的に示す図である。第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、それぞれ本開示の「波長変換装置」の一例であり、無停電システム・電源管理システムを構成する。
図3に示した第1の駆動セル100A、第1の予備セル100Bとの相違点を説明する。
【0080】
第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、それぞれ第1の容器70の内部に第1の温度センサ112を含む。
【0081】
また、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、それぞれ温度制御部106に温調システム114と、出力制御システム116と、電源切替システム118と、を含む。さらに、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、それぞれアラートシステム120を含む。
【0082】
電源切替システム118は、電源監視の機能を備えており、レーザ用電源84や外部電源108からの電力の供給が中断した場合や、レーザ用電源84や外部電源108からの電力の供給が再開した場合に、無停電で電源を切り替える。即ち、電源切替システム118は、第1のヒータ78と温度制御部106とへの電力供給について、レーザ用電源84や外部電源108から供給するか、又はバッテリ104から供給するかを切り替える。また、電源切替システム118は、この切り替えにおいて、第1のヒータ78と温度制御部106とへの電力の供給を中断させずに継続する。電源切替システム118は、レーザ用電源84や外部電源108からバッテリ104を介して第1のヒータ78と温度制御部106とへ電力を供給してもよい。
【0083】
さらに、固体レーザシステム1は、第2の予備セル100Dの電源切替システム118の不図示の残量センサの検出結果に基づいて、バッテリ104が蓄電している電気エネルギ量を監視する。以後、バッテリ104に蓄電されている電気エネルギ量を「バッテリ残量」と記載することがある。バッテリ残量は、本開示の「電池の蓄電量」の一例である。
【0084】
温調システム114はバッテリ104、レーザ用電源84、外部電源108の異常を検知する。温調システム114は、異常を検知した場合にアラートシステム120を起動させ、異常状態を発報する。異常状態には、第1のヒータ78への電力の供給が中断する場合、バッテリ104の最大充電容量が閾値以下である場合、バッテリ残量の減少速度が閾値以下である場合、CLBO結晶の温度が閾値以下又は閾値以上である場合等がある。
【0085】
温調システム114は、第1の温度センサ112の測定結果に基づいて出力制御システム116の出力を制御するための出力信号を生成し、出力制御システム116に出力する。また、温調システム114は、レーザ用電源84又は外部電源108の電力供給状態の監視結果に基づいて出力信号を生成する。例えば、バッテリ残量によって温度制御モードを切り替える出力信号を生成する。
【0086】
出力制御システム116は、温調システム114からの出力信号に基づいて第1のヒータ78にオン/オフスイッチ、又は電流・位相による出力制御を行い、第1のヒータ78への電力供給量を変更する。
【0087】
第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、それぞれレーザ用電源84又は外部電源108に接続されている。第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、レーザ用電源84又は外部電源108に不測の事態が発生しても、それぞれのバッテリ104により第4のCLBO結晶102の加熱が維持される。
【0088】
温度制御部106、電源切替システム118、アラートシステム120は、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの交換に伴いそれぞれ第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとに一体に交換されてもよいし、それぞれ第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは別体であってもよい。
【0089】
5.2 動作
第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの動作について説明する。
【0090】
第2の駆動セル100Cは、固体レーザシステム1に搭載された状態で、レーザ用電源84から電力供給されて第4のCLBO結晶102の温度が制御される。
【0091】
即ち、第2の駆動セル100Cの温調システム114は、第1の温度センサ112によって第4のCLBO結晶102の温度を測定する。温調システム114は、測定された温度に基づいて出力制御システム116に出力信号を出力する。出力制御システム116は、温調システム114からの出力信号に基づいて第1のヒータ78への電力供給量を変更することで、第1のヒータ78の温度を制御する。これにより、第2の駆動セル100Cの第4のCLBO結晶102の温度が制御される。
【0092】
また、第2の予備セル100Dは、固体レーザシステム1に搭載されていない状態で、バッテリ104から電力供給されて第4のCLBO結晶102の温度が制御される。第2の予備セル100Dは、固体レーザシステム1に搭載されていない状態で、外部電源108から電力供給されてもよい。第4のCLBO結晶102の温度の制御の処理は、第2の駆動セル100Cと同様である。
【0093】
第2の駆動セル100Cが交換時期に到達した場合、ユーザは固体レーザシステム1から第2の駆動セル100Cを取り外し、代わりに第2の予備セル100Dを取り付ける。固体レーザシステム1から第2の駆動セル100Cが取り外されると、第2の駆動セル100Cの電源はレーザ用電源84から第2の駆動セル100Cのバッテリ104に無停電で切り替わる。また、第2の予備セル100Dが固体レーザシステム1に取り付けられると、第2の予備セル100Dの電源は第2の予備セル100Dのバッテリ104からレーザ用電源84に無停電で切り替わる。
【0094】
温調システム114は、レーザ用電源84又は外部電源108の電力供給状態の監視結果に基づいて出力信号を生成する。温調システム114は、バッテリ104、レーザ用電源84、外部電源108に異常が発生した場合には、アラートシステム120を起動させ、異常状態を発報する。
【0095】
5.3 作用・効果
実施形態2に係る第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、無停電駆動が可能となる。即ち、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとは、固体レーザシステム1から切り離しても、バッテリ104により無停電状態を作り出すことができ、それぞれ第4のCLBO結晶102の温度を維持することができる。
【0096】
また、非常停電等の不測の事態が発生してレーザ用電源84又は外部電源108から電源の供給ができない場合であっても、バッテリ104により無停電駆動が可能となり、第4のCLBO結晶102の温度の維持や保全を行うことができる。
【0097】
6.実施形態3
6.1 構成
1つのCLBO結晶セルに複数のCLBO結晶を備える構成について説明する。
図7は、実施形態3に係る第4のCLBO結晶セル100Eの構成を概略的に示す図である。第4のCLBO結晶セル100Eは、3つのCLBO結晶を備える。
【0098】
図7に示すように、第4のCLBO結晶セル100Eは、第2の容器130を備える。第4のCLBO結晶セル100Eは、第2の容器130の内部に第5のCLBO結晶132Aと、第6のCLBO結晶132Bと、第7のCLBO結晶132Cと、を含む。第5のCLBO結晶132Aは、本開示の「第1の非線形結晶」の一例である。第6のCLBO結晶132Bは、本開示の「第2の非線形結晶」の一例である。第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cは、例えばそれぞれ実施形態1の第1のCLBO結晶32、第2のCLBO結晶36、第3のCLBO結晶40に相当する。
【0099】
第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cは、それぞれ不図示の結晶ホルダに固定され、不図示の入射ウィンドウから入射するレーザ光の光路上に順に配置される。第4のCLBO結晶セル100Eは、第2の容器130の内部に不図示の集光レンズと、コリメータレンズと、ダイクロイックミラーと、高反射ミラーと、等を備えてもよい。
【0100】
また、第4のCLBO結晶セル100Eは、第2の容器130の内部に第2のヒータ78Aと、第3のヒータ78Bと、第4のヒータ78Cと、第2の温度センサ112Aと、第3の温度センサ112Bと、第4の温度センサ112Cと、を備える。
【0101】
第2のヒータ78Aは、第5のCLBO結晶132Aを加熱する位置に配置される。第3のヒータ78Bは、第6のCLBO結晶132Bを加熱する位置に配置される。第4のヒータ78Cは、第7のCLBO結晶132Cを加熱する位置に配置される。
【0102】
第2の温度センサ112Aは、第5のCLBO結晶132Aの温度を測定する位置に配置される。第3の温度センサ112Bは、第6のCLBO結晶132Bの温度を測定する位置に配置される。第4の温度センサ112Cは、第7のCLBO結晶132Cの温度を測定する位置に配置される。
【0103】
さらに、第4のCLBO結晶セル100Eは、温度制御部106に第1の温調システム114Aと、第2の温調システム114Bと、第3の温調システム114Cと、第1の出力制御システム116Aと、第2の出力制御システム116Bと、第3の出力制御システム116Cと、を備える。
【0104】
第1の温調システム114Aは、第2の温度センサ112Aに接続される。同様に、第2の温調システム114Bは、第3の温度センサ112Bに接続され、第3の温調システム114Cは、第4の温度センサ112Cに接続される。
【0105】
第1の出力制御システム116Aは、第2のヒータ78Aに接続される。第2の出力制御システム116Bは、第3のヒータ78Bに接続される。同様に、第3の出力制御システム116Cは、第4のヒータ78Cに接続される。
【0106】
第1の温調システム114A、第2の温調システム114B、第3の温調システム114C、第1の出力制御システム116A、第2の出力制御システム116B、第3の出力制御システム116Cは、電源切替システム118に接続される。電源切替システム118は、単一のバッテリ104を含む。電源切替システム118は、本開示の「第1のコントローラ」、「第2のコントローラ」の一例である。
【0107】
このように、第4のCLBO結晶セル100Eの第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cには、それぞれ第2のヒータ78A、第3のヒータ78B、第4のヒータ78Cと、第1の温調システム114A、第2の温調システム114B、第3の温調システム114Cとが独立系統として接続される。また、バッテリ104、レーザ用電源84、外部電源108を含む電源切替システム118とアラートシステム120とは、共有される。このアラートシステム120は、各CLBO結晶を個別に識別して監視するもので、異常状態を発報する際には、どのCLBO結晶がどのような異常状態にあるかを発報する機能を備えている。
【0108】
複数の第4のCLBO結晶セル100Eを使用するシステムにおいては、各第4のCLBO結晶セル100Eごとにバッテリ104までをセルシステムの1塊として、各セルシステムは実施形態2と同様にレーザ用電源84又は外部電源108に接続される。
【0109】
6.2 動作
第4のCLBO結晶セル100Eの動作について説明する。
【0110】
第4のCLBO結晶セル100Eの不図示の入射ウィンドウから入射したパルスレーザ光は、第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cに順に入射することで波長が変換され、波長変換後のパルスレーザ光が不図示の出射ウィンドウから出射する。
【0111】
第4のCLBO結晶セル100Eは、固体レーザシステム1に搭載された状態で、レーザ用電源84から電力供給されて第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cの温度が制御される。
【0112】
即ち、第4のCLBO結晶セル100Eは、第2の温度センサ112A、第1の温調システム114A、第1の出力制御システム116Aによって第2のヒータ78Aを制御し、第5のCLBO結晶132Aの温度を制御する。同様に、第4のCLBO結晶セル100Eは、第3の温度センサ112B、第2の温調システム114B、第2の出力制御システム116Bによって第3のヒータ78Bを制御し、第6のCLBO結晶132Bの温度を制御する。また、第4のCLBO結晶セル100Eは、第4の温度センサ112C、第3の温調システム114C、第3の出力制御システム116Cによって第4のヒータ78Cを制御し、第7のCLBO結晶132Cの温度を制御する。
【0113】
駆動セルとしての第4のCLBO結晶セル100Eが固体レーザシステム1から取り外される場合には、実施形態2と同様に、第4のCLBO結晶セル100Eの電源はレーザ用電源84から第4のCLBO結晶セル100Eのバッテリ104に無停電で切り替わる。
【0114】
一方、予備セルとしての第4のCLBO結晶セル100Eが固体レーザシステム1に取り付けられる場合には、第4のCLBO結晶セル100Eの電源は第4のCLBO結晶セル100Eのバッテリ104からレーザ用電源84に無停電で切り替わる。
【0115】
6.3 作用・効果
実施形態3に係る第4のCLBO結晶セル100Eによれば、第4のCLBO結晶セル100Eに含まれる複数のCLBO結晶である第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cの温度制御をそれぞれ個別に行うことができる。
【0116】
また、第4のCLBO結晶セル100Eを固体レーザシステム1から切り離しても、バッテリ104により無停電状態を作り出せるので、第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cの温度をそれぞれ維持することができる。
【0117】
6.4 変形例
直列に配置された第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cは、第5のCLBO結晶132Aと第7のCLBO結晶132Cとをタイプ1の位相整合条件を持つ波長変換結晶、第6のCLBO結晶132Bをタイプ2の位相整合条件を持つ波長変換結晶としてもよい。
【0118】
この場合、不図示の入射ウィンドウから波長515nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とを略同時に、略同光軸で入射させる。第5のCLBO結晶132Aは、波長515nmのパルスレーザ光が位相整合条件を満たすように入射角が調整される。その結果、第5のCLBO結晶132Aにより、波長515nmのパルスレーザ光の第2高調波である波長257.5nmのパルスレーザ光が生成される。したがって、第5のCLBO結晶132Aからは、波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とが出力される。
【0119】
波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とは、略同時に、略同光軸で第6のCLBO結晶132Bに入射する。
【0120】
第6のCLBO結晶132Bは、波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とが位相整合条件を満たすように入射角が調整される。その結果、第6のCLBO結晶132Bにより、波長257.5nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光との和周波である波長221nmのパルスレーザ光が生成される。したがって、第6のCLBO結晶132Bからは、波長221nmのパルスレーザ光、波長257.5nmのパルスレーザ光、波長1553nmのパルスレーザ光が出力される。
【0121】
波長221nmのパルスレーザ光、波長257.5nmのパルスレーザ光、波長1553nmのパルスレーザ光は、第7のCLBO結晶132Cに入射する。
【0122】
第7のCLBO結晶132Cは、波長221nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光とが位相整合条件を満たすように、入射角が調整される。その結果、第7のCLBO結晶132Cにより、波長221nmのパルスレーザ光と波長1553nmのパルスレーザ光との和周波である波長193nmのパルスレーザ光が生成される。この波長193nmのパルスレーザ光は、不図示の出射ウィンドウから出力される。
【0123】
また、第5のCLBO結晶132A、第6のCLBO結晶132B、第7のCLBO結晶132Cは、第5のCLBO結晶132Aと第6のCLBO結晶132Bとをタイプ1の位相整合条件を持つ波長変換結晶、第7のCLBO結晶132Cをタイプ2の位相整合条件を持つ波長変換結晶としてもよい。
【0124】
7.実施形態4
7.1 構成
図8は、実施形態4に係るCLBO結晶セルであって、第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの構成を概略的に示す図である。
図6に示した第2の駆動セル100C、第2の予備セル100Dとの相違点を説明する。
【0125】
第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとは、それぞれ同じ構成を有するCLBO結晶セルである。第3の駆動セル100Fは、固体レーザシステム1において波長変換動作中のCLBO結晶セルである。第3の駆動セル100Fは、
図1に示した第1のCLBO結晶セル34、第2のCLBO結晶セル38、第3のCLBO結晶セル42のいずれであってもよい。また、第3の予備セル100Gは、交換待機中のCLBO結晶セルである。
【0126】
第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとは、それぞれ各第1の容器70の内部にArガスを供給するためのArガス供給管80と、Arガス排出管82と、を含む。Arガスは、本開示の「不活性ガス」の一例である。Arガス供給管80は、供給バルブ80Aが設けられる。Arガス排出管82は、排出バルブ82Aが設けられる。供給バルブ80Aは、Arガスが供給される際に自動的に開動作し、Arガスの供給が中止される際に自動的に閉動作するノーマルクローズ型のバルブである。また、排出バルブ82Aは、Arガスが排出される際に自動的に開動作し、Arガスの排出が中止される際に自動的に閉動作するノーマルクローズ型のバルブである。
【0127】
第3の駆動セル100Fの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは、第3の駆動セル100Fが固体レーザシステム1に取り付けられると開動作して開状態を維持し、第3の駆動セル100Fが固体レーザシステム1から取り外されると閉動作して閉状態を維持してもよい。同様に、第3の予備セル100Gの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは、第3の予備セル100Gが固体レーザシステム1に取り付けられると開動作して開状態を維持し、第3の予備セル100Gが固体レーザシステム1から取り外されると閉動作して閉状態を維持してもよい。
【0128】
第3の駆動セル100FのArガス供給管80にはArガス供給装置86が接続され、Arガス排出管82にはArガス排出装置88が接続される。一方、第3の予備セル100Gの脱水が完了し、交換大気中の状態にある場合はArガス供給管80とArガス供給装置86とを切り離しておいてもよい。同様に、Arガス排出管82とArガス排出装置88とを切り離しておいてもよい。
【0129】
7.2 動作
第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの動作について説明する。
【0130】
図9は、第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの交換処理を示すフローチャートである。ここでは、固体レーザシステム1に搭載されている第3の駆動セル100Fから第3の予備セル100Gへ交換するものとする。
【0131】
ステップS11では、固体レーザシステム1が始動する。
【0132】
ステップS12では、固体レーザシステム1は、第3の予備セル100Gの第4のCLBO結晶102を加熱し、脱水を開始する。第3の予備セル100Gの第4のCLBO結晶102の加熱は、第3の予備セル100Gの第1のヒータ78により行う。第1のヒータ78の温度は、温度制御部106により管理される。第3の予備セル100Gには、バッテリ104から電力供給される。第3の予備セル100Gには、脱水が進行するように加熱と共にArガス供給管80、Arガス排出管82によりArガスが流通される。なお、Arガスに代えてN2ガスを流通させてもよい。
【0133】
ステップS13では、固体レーザシステム1は、第3の駆動セル100Fの第4のCLBO結晶102が寿命に到達したか否かを判定する。寿命の判定は、実施形態1と同様に行う。第4のCLBO結晶102が寿命に到達していない場合は、固体レーザシステム1はステップS14の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102が寿命に到達した場合は、固体レーザシステム1はステップS16の処理を行う。ステップS16については後述する。
【0134】
ステップS14では、固体レーザシステム1は、第3の駆動セル100Fの第4のCLBO結晶102の交換準備時期であるか否かを判定する。交換準備時期の判定は、実施形態1と同様に行う。第4のCLBO結晶102の交換準備時期でない場合は、固体レーザシステム1はステップS13の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102の交換準備時期である場合は、固体レーザシステム1はステップS15の処理を行う。
【0135】
ステップS15では、固体レーザシステム1は、第3の予備セル100Gの第4のCLBO結晶102の脱水が完了したか否かを判定する。脱水完了の判定は、実施形態1と同様に行う。第4のCLBO結晶102の脱水が完了していない場合は、固体レーザシステム1はステップS13の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102の脱水が完了した場合は、第3の予備セル100Gは、任意のタイミングで交換が実行できるように、Arガス供給装置86から切り離す。
図8の第3の予備セル100Gは、切り離した直後の構成を示している。第3の予備セル100Gの内部は、供給バルブ80Aと排出バルブ82Aのノーマルクローズ機能により外部と完全に隔離され、第3の予備セル100GはArガスによるパージが完了した状態となる。なお、Arガスに替えてN
2ガスを流通させていた場合はN
2ガスによるパージが完了した状態となる。脱水が完了すると固体レーザシステム1はステップS16の処理を行う。
【0136】
ステップS16では、固体レーザシステム1は動作を停止する。続いて、ステップS17では、ユーザは固体レーザシステム1から第3の駆動セル100Fを取り外し、固体レーザシステム1に第3の予備セル100Gを取り付けることで、第3の駆動セル100Fから第3の予備セル100Gへ交換する。
【0137】
ステップS18では、ステップS17の第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの交換に伴って、第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとのそれぞれの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとにより自動的に不活性ガスのパージ動作が行われる。即ち、第3の駆動セル100Fが固体レーザシステム1から取り外されることで、第3の駆動セル100Fの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは閉状態となる。一方、第3の予備セル100Gが固体レーザシステム1に取り付けられることで、第3の予備セル100Gの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは開状態となる。なお、第3の予備セル100GのパージガスとしてN2ガスを用いた場合は、交換後、波長変換動作をさせる前に、流通させるガスをArガスに切替える動作が必要である。
【0138】
さらに、ステップS19では、ステップS17の第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの交換に伴って、第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの電源がそれぞれ切り替わる。即ち、第3の駆動セル100Fの電力供給は、レーザ用電源84から第3の駆動セル100Fのバッテリ104に切り替わる。一方、第3の予備セル100Gの電力供給は、第3の予備セル100Gのバッテリ104からレーザ用電源84に切り替わる。
【0139】
以上により、第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの交換が終了する。
【0140】
7.2.1 自動パージ動作とパージガスの切り替え動作
図10は、
図9に示したフローチャートのステップS18に相当するパージガスの切り替え動作の詳細を示すフローチャートである。
【0141】
まず、第3の駆動セル100Fのパージガスの切り替え動作について説明する。ステップS21において、第3の駆動セル100Fが固体レーザシステム1に接続されているか否かが判定される。第3の駆動セル100Fが固体レーザシステム1に接続されている場合は、ステップS22において第3の駆動セル100Fの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは開状態となる。これにより、ステップS23において、第3の駆動セル100Fの第1の容器70にはArガス供給装置86からArガスが供給され、Arガス排出装置88へArガスが排出される。所定時間後、第3の駆動セル100Fの内部のガスは、新しいArガスに切り替わる。なお、第3の駆動セル100FのパージガスとしてN2ガスが用いられていた場合は、第4のCLBO結晶102に窒化物が発生することを防止するために、Arガスに完全に入れ替わるまで第4のCLBO結晶102にレーザ光は照射しない。
【0142】
一方、第3の駆動セル100Fが固体レーザシステム1に接続されていない場合は、ステップS24において第3の駆動セル100Fの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは閉状態となる。これにより、ステップS25において、第3の駆動セル100Fの第1の容器70は、供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとが閉状態となる直前まで供給されていたArガスが充満した状態となる。
【0143】
次に、第3の予備セル100Gのパージガスの切り替え動作について説明する。ステップS21において、第3の予備セル100Gが固体レーザシステム1に接続されているか否かが判定される。第3の予備セル100Gが固体レーザシステム1に接続されている場合は、ステップS22において第3の予備セル100Gの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは開状態となる。これにより、ステップS23において、第3の予備セル100Gの第1の容器70にはArガス供給装置86からArガスが供給され、Arガス排出装置88へArガスが排出される。所定時間後、第3の予備セル100Gの内部のガスは、新しいArガスに切り替わる。なお、第3の予備セル100GのパージガスとしてN2ガスが用いられていた場合は、第4のCLBO結晶102に窒化物が発生することを防止するために、Arガスに完全に入れ替わるまで第4のCLBO結晶102にレーザ光は照射しない。
【0144】
一方、第3の予備セル100Gが固体レーザシステム1に接続されていない場合は、ステップS24において第3の予備セル100Gの供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとは閉状態となる。これにより、ステップS25において、第3の予備セル100Gの第1の容器70は、供給バルブ80Aと排出バルブ82Aとが閉状態となる直前まで供給されていたArガスが充満した状態となる。以上によりパージガスの切り替え処理が終了する。
【0145】
7.3 作用・効果
実施形態4に係る第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gによれば、それぞれ第1の容器70の内部にArガスを常に充填させておくことができるため、第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの交換時間を短縮させることができる。
【0146】
また、第3の駆動セル100Fと第3の予備セル100Gとの第4のCLBO結晶102が大気に暴露されることがないため、第4のCLBO結晶102の保全性を向上させることができる。
【0147】
8.実施形態5
8.1 構成
実施形態5の構成は、実施形態2の構成において第2の駆動セル100Cとレーザ用電源84とが接続され、第2の予備セル100Dと外部電源108とが接続されている場合の例である。
【0148】
8.2 動作
実施形態5に係る第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの動作について説明する。
【0149】
図11は、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの温度制御処理を示すフローチャートである。ここでは、固体レーザシステム1に搭載されている第2の駆動セル100Cから第2の予備セル100Dへ交換するものとする。第2の予備セル100Dは外部電源108に接続された状態で第2の駆動セル100Cから離れた場所に載置されており、交換に際しては、第2の予備セル100Dは第2の駆動セル100Cに向かって移動させるものとする。第2の駆動セル100Cは、
図1に示した第1のCLBO結晶セル34、第2のCLBO結晶セル38、第3のCLBO結晶セル42のいずれであってもよい。
【0150】
ステップS31では、固体レーザシステム1が始動する。
【0151】
ステップS32では、固体レーザシステム1は、第2の駆動セル100Cの第4のCLBO結晶102の交換準備時期であるか否かを判定する。交換準備時期の判定は、実施形態1と同様に行う。第4のCLBO結晶102の交換準備時期でない場合は、固体レーザシステム1はステップS32の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102の交換準備時期である場合は、固体レーザシステム1はステップS33の処理を行う。
【0152】
ステップS33では、固体レーザシステム1は、第2の駆動セル100Cの第4のCLBO結晶102の交換準備時期であり、かつ第2の予備セル100Dの配置が完了したか否かを判定する。第2の駆動セル100Cの第4のCLBO結晶102の交換準備時期であり、かつ第2の予備セル100Dの配置が完了した場合は、固体レーザシステム1は、ステップS39の処理を行う。第2の駆動セル100Cの第4のCLBO結晶102の交換準備時期でない、又は第2の予備セル100Dの配置が完了していない場合は、固体レーザシステム1は、ステップS33の処理を行う。なお、第2の予備セル100Dは、ステップS31~S32の実行と並行に行われるステップS34~S38の工程を経て配置される。
【0153】
ステップS34では、第2の予備セル100Dの温度制御部106は、第1のヒータ78に電力を供給し、第2の予備セル100Dの脱水を開始する。即ち、温度制御部106は、第2の予備セル100Dの第1のヒータ78により第4のCLBO結晶102を脱水に適した120℃に加熱する。以後、脱水に適した温度でCLBO結晶を加熱する温度制御のことを「通常モード運転」と記載することがある。
【0154】
続いて、ステップS35では、第2の予備セル100Dの温度制御部106は、第4のCLBO結晶102の脱水が完了したか否かを判定する。脱水完了の判定は、実施形態1と同様に行う。脱水が完了していない場合は、温度制御部106は、ステップS35の処理を行う。
【0155】
続いて、ステップS36では、第2の予備セル100Dの温度制御部106は、第2の予備セル100Dのバッテリ104が外部電源108から電力の供給を受けているか否かを判定することにより、外部電源108から第2の予備セル100Dへの電力供給を中断するか否かを判定する。第2の予備セル100Dと外部電源108との電気的な接続を意図的に切り離したり、第2の予備セル100Dと外部電源108との接触に不良が発生したり、外部電源108が故障したりした場合などは、電力の供給を受けていない場合に相当する。この場合、温度制御部106はステップS37の処理を行う。電力の供給を受けている間は、温度制御部106はステップS36の処理を行う。
【0156】
続いて、ステップS37では、第2の予備セル100Dの温度制御部106は、第1のヒータ78への給電方法と第4のCLBO結晶102の設定温度を変更する。まず、温度制御部106の電源切替システム118は、バッテリ104と出力制御システム116とを電気的に接続することでバッテリ駆動に切替える。これにより、バッテリ104に蓄電されている電気エネルギは出力制御システム116を介して第1のヒータ78へ電力として供給される。次に温度制御部106は、第4のCLBO結晶102の目標温度の設定をやり直す。
【0157】
バッテリ104に蓄電されている電気エネルギ量は外部電源と比較して少ない。このため、通常モード運転の状態で第1のヒータ78の加熱を継続させてしまうと、バッテリ104に蓄電されている電気エネルギ量に基づいた加熱期間を超えて温度制御を行うことはできない。したがって、ステップS37では、バッテリ駆動に切替えた後に、加熱期間の延長を実現させるために、バッテリ104に蓄電されている電気エネルギの残量の割合に基づいて第2の予備セル100Dの運転モードをさらに切替える。即ち、バッテリ駆動をより電気エネルギ消費の少ない温度制御に切替える。以後、加熱期間の延長を実現させるために目標温度を下げて第4のCLBO結晶102の温度制御を行うことを「省エネルギモード運転」と記載することがある。
【0158】
以上のように、第2の予備セル100Dに省エネルギモード運転に切替わる機能を与えることで、第2の予備セル100Dは外部電源108から切り離された直後から、加熱期間の延長要否の判定を開始し、第4のCLBO結晶102の温度の制御方法を自律的に変更する。ステップS37の処理の詳細については後述する。
【0159】
ステップS38では、ユーザは、固体レーザシステム1からの要請に基づいていつでも輸送を開始することができる状態にあった第2の予備セル100Dの輸送を開始する。第2の予備セル100Dは輸送中も自身で第4のCLBO結晶102を温度制御しつつ、加熱期間の延長要否の判定を行っている。これにより、温度制御を実行したまま第2の予備セル100Dの配置が完了する。その後、固体レーザシステム1はステップS33の処理を行う。
【0160】
ステップS33に続くステップS39では、固体レーザシステム1は、第2の予備セル100Dの第1の温度センサ112の測定結果に基づいて、第2の予備セル100Dの第4のCLBO結晶102が運転温度に到達したか否かを判定する。省エネルギモード運転により第4のCLBO結晶102が運転温度に到達していない場合は、固体レーザシステム1は、ステップS39の処理を行う。第2の予備セル100Dが運転温度に到達した場合は、固体レーザシステム1は、ステップS40の処理を行う。
【0161】
ステップS40では、固体レーザシステム1は、第2の駆動セル100Cの第4のCLBO結晶102が寿命に到達したか否かを判定する。寿命の判定は、実施形態1と同様に行う。第4のCLBO結晶102が寿命に到達していない場合は、固体レーザシステム1はステップS40の処理を行う。一方、第4のCLBO結晶102が寿命に到達した場合は、固体レーザシステム1はステップS41の処理を行う。
【0162】
ステップS41では、固体レーザシステム1は動作を停止する。続いて、ステップS42では、ユーザは固体レーザシステム1から第2の駆動セル100Cを取り外し、固体レーザシステム1に第2の予備セル100Dを取り付けることで、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとを交換する。
【0163】
ステップS43では、ステップS42の第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの交換に伴って、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの電源がそれぞれ切り替わる。即ち、第2の駆動セル100Cの電力供給は、レーザ用電源84から第2の駆動セル100Cのバッテリ104に切り替わる。一方、第2の予備セル100Dの電力供給は、第2の予備セル100Dのバッテリ104からレーザ用電源84に切り替わる。
【0164】
以上により、第2の駆動セル100Cと第2の予備セル100Dとの交換が終了する。
【0165】
8.2.1 温度制御モード切り替え
図12は、
図11に示したフローチャートのステップS37の第2の予備セル100Dのバッテリ駆動切替/運転モード切替処理の詳細を示すフローチャートである。
【0166】
最初のステップS51では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、外部電源108から第2の予備セル100Dの第1のヒータ78への電力の供給を中断すると共に、バッテリ104から第1のヒータ78への電力の供給を開始する。電源切替システム118は、これらの動作を同時に実行してもよく、その場合、第1のヒータ78への電力の供給元を、外部電源108からバッテリ104に瞬間的かつ無停電に切替える。
【0167】
ステップS52では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、バッテリ104から第1のヒータ78への電力の供給を中断し、かつ外部電源108から第1のヒータ78への電力の供給を開始するか否かを判定する。ステップS51を実行した後、第2の予備セル100Dは、固体レーザシステム1に搭載されるまでの期間、バッテリ104のみから電力の供給を受ける状態にある。この期間中に第2の予備セル100Dを外部電源108に再び接続すると、電源切替システム118は、バッテリ104から第1のヒータ78への電力の供給を中断し、外部電源108から第1のヒータ78への電力の供給を開始する。電源切替システム118は、これらの動作を同時に実行してもよく、その場合、第1のヒータ78への電力の供給元をバッテリ104から外部電源108に瞬間的かつ無停電に切替えてもよい。電力の供給元が外部電源108に切替わった場合は、ステップS61の処理を行う。ステップS61の処理については後述する。一方、第2の予備セル100Dを電力の供給元をバッテリ104のみの状態で放置し続ける場合は、ステップS53の処理を行う。
【0168】
ステップS53では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、バッテリ104に蓄電されているバッテリ残量を監視する。第4のCLBO結晶102の温度は、脱水が完了した後も通常モード運転に基づいて制御されることが望ましい。しかしながら、通常モード運転ではバッテリ残量の減少が早いため、第2の予備セル100Dをレーザ用電源84に接続する前にバッテリ残量が枯渇し、第4のCLBO結晶102の温度制御が中断する事態が発生する。これを防止するために、バッテリ残量に基づいて温度制御の方法を変更し、温度制御が中断する事態の発生を回避する。ステップS53では、温度制御の方法を変更する基準として、バッテリ残量が最大蓄電容量の60%を設定し、これを下回っているか否かを判定する。バッテリ残量が、最大蓄電容量の60%を下回っている場合は、電源切替システム118はステップS54の処理を行う。一方、下回っていない場合は、電源切替システム118はステップS53の処理を繰り返しながらバッテリ残量の監視を継続する。
【0169】
続いて、ステップS54では、第2の予備セル100Dは省エネルギモード運転に移行される。具体的には、温調システム114は、第4のCLBO結晶102の温度が通常モード運転時の80%の温度になるように、温度制御の設定温度を変更する。そして、出力制御システム116は、新しい設定温度の情報に基づいて、バッテリ104が第1のヒータ78に供給する電力を抑制する。温調システム114は、第1の温度センサ112の測定結果に基づいて、第4のCLBO結晶102を新しい設定温度に降温し、以後、温調システム114は新しい設定温度を維持するよう出力制御システム116を制御する。
【0170】
ステップS55では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、ステップS52と同様の処理を行う。即ち、省エネルギ運転モードに移行した後であっても、第2の予備セル100Dを外部電源108に再び接続した場合は、電源切替システム118は第1のヒータ78への電力の供給元をバッテリ104に自律的に変更し、ステップS61の処理を行う。一方、電力の供給元をバッテリ104のみの状態で放置し続ける場合は、電源切替システム118はステップS56の処理を行う。
【0171】
ステップS56では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、ステップS53と同様の処理を行う。即ち、省エネルギ運転モードに移行した後であっても、第4のCLBO結晶102の温度制御が中断する事態が発生する可能性がより高まった場合は、温度制御の方法を再び変更して温度制御が中断する事態の発生を回避する。変更する基準として、バッテリ残量が最大残量の20%を設定し、電源切替システム118は、バッテリ残量が最大残量の20%を下回っているか否かを判定する。バッテリ残量が最大残量の20%を下回っている場合は、電源切替システム118はステップS56の処理を行う。一方、下回っていない場合は、電源切替システム118はステップS56の処理を繰り返しながらバッテリ残量の監視を継続する。
【0172】
ステップS57からステップS59までの処理は、第2の予備セル100Dの第4のCLBO結晶102の加熱を停止する処理を示している。第2の予備セル100Dをバッテリ残量が枯渇するまで運転しようとすると、第1のヒータ78への電力の供給が突然に中断する事態が発生する。この場合、第4のCLBO結晶102の温度は、バッテリ残量が枯渇した直後から急激に低下していく。この急激な温度変化は、第4のCLBO結晶102にダメージを与える。これを防止するため、第2の予備セル100Dに第4のCLBO結晶102の温度が急激に低下しないような制御機能を与える。以後、第4のCLBO結晶102の温度を段階的に降温しながら加熱を停止する温度制御のことを、「ソフトランディングモード運転」と記載することがある。ステップS57からステップS59までの処理はソフトランディングモード運転による温度制御を示している。
【0173】
ステップS57は、ソフトランディングモード運転の最初の処理である。ステップS57では、第2の予備セル100Dの温調システム114は、第4のCLBO結晶102の温度が毎分1℃の変化量で通常モード運転時の50%の温度になるように、温度制御の設定を変更する。そして、出力制御システム116は、変更した設定情報と第1の温度センサ112の測定結果とに基づいて、バッテリ104が第1のヒータ78に供給する電力を制御しながら第4のCLBO結晶102に温度変化を与え続ける。第4のCLBO結晶102が通常モード運転時の50%の温度にまで降温した後、温調システム114はステップS58の処理を行う。
【0174】
ステップS58はソフトランディングモード運転の次の処理である。ステップS58では、第2の予備セル100Dの温調システム114は、第4のCLBO結晶102の温度が毎分1.5℃の変化量で通常モード運転時の20%の温度になるように、温度制御の設定を変更する。そして、出力制御システム116は、変更した設定情報と第1の温度センサ112の測定結果とに基づいて、バッテリ104が第1のヒータ78に供給する電力を制御しながら第4のCLBO結晶102に温度変化を与え続ける。第4のCLBO結晶102が通常モード運転時の20%の温度にまで降温した後、温調システム114はステップS59の処理を行う。
【0175】
ステップS59は、ソフトランディングモード運転の最後の処理である。ステップS59では、第2の予備セル100Dの温調システム114は、第4のCLBO結晶102の温度が毎分2℃の変化量で室温になるように、温度制御の設定を変更する。そして、出力制御システム116は、変更した設定情報と第1の温度センサ112の測定結果とに基づいて、バッテリ104が第1のヒータ78に供給する電力を制御しながら第4のCLBO結晶102に温度変化を与え続ける。第4のCLBO結晶102が室温にまで降温した後、温調システム114は、温度制御部106による第4のCLBO結晶102の温度制御を停止する。その後、温調システム114は、ステップS60の処理を行う。
【0176】
ソフトランディングモード運転における第2の予備セル100Dの第4のCLBO結晶102にダメージが発生する可能性をより低減させるために、ステップS57からステップS59までにおける毎分の変化量をそれぞれ0.5℃小さく設定することも有用である。さらに、ソフトランディングモード運転の期間を短縮したい場合は、処理が進行するにつれて、毎分の温度の変化量を大きくなるように設定することも有用である。例えば、ステップS57、S58、S59の処理における毎分の温度の変化量をそれぞれΔt57、Δt58、Δt59とした場合の大きさの関係を、Δt57<Δt58<Δt59となるように設定することで、第4のCLBO結晶102にダメージが発生する可能性を低減させた状態で、ソフトランディングモード運転の期間をも短縮させることができる。
【0177】
続くステップS60では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、ステップS52と同様の処理を行う。固体レーザシステム1は、電源切替システム118を制御し、外部電源108によってバッテリ104を充電する。即ち、ソフトランディングモード運転に移行した後であっても、第2の予備セル100Dを外部電源108に再び接続した場合は、電源切替システム118は、第1のヒータ78への電力の供給元をバッテリ104に自律的に変更し、ステップS61の処理を行う。一方、電力の供給元をバッテリ104のみの状態で放置し続ける場合は、電源切替システム118はステップS60の処理を継続する。これにより、第2の予備セル100Dは停止した状態が維持される。
【0178】
ステップS61では、固体レーザシステム1は、第2の予備セル100Dが通常モード運転に設定されている場合は通常モード運転を維持し、省エネルギモード運転又はソフトランディングモード運転に設定されている場合は、通常モード運転に切替える。
【0179】
ステップS62では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、バッテリ104にも外部電源108の電力を供給し、バッテリ残量の監視を開始する。
【0180】
最後に、ステップS63では、第2の予備セル100Dの電源切替システム118は、バッテリ104のバッテリ残量を監視する基準として、バッテリ残量が最大蓄電容量の60%を設定し、これを上回っているか否かを判定する。バッテリ残量が最大蓄電容量の60%を上回っている場合は、電源切替システム118は、
図11のステップS38の処理を行う。一方、バッテリ残量が最大蓄電容量の60%を上回っていない場合は、電源切替システム118は、ステップS62とステップS63との処理を継続しながら、バッテリ充電とバッテリ残量の監視を継続する。
【0181】
8.3 作用・効果
実施形態5の温度制御処理によれば、第2の予備セル100Dが自律的に外部電源108とバッテリ104とのいずれかを選択して、第1のヒータ78への電力の供給元を瞬間的かつ無停電に切替える機能を備える。これにより、外部電源108からの電力の供給が中断している期間も第2の予備セル100Dは温度制御を継続することができる。また、第2の予備セル100Dは、バッテリ104を選択した場合に自律的に運転モードを選択して第1のヒータ78への電力の供給を抑制する機能を備える。これにより、外部電源108からの電力の供給が中断している期間が長期化した場合であっても、第2の予備セル100Dは温度制御を継続することができる。さらにこの場合、バッテリ残量が著しく低下すると第2の予備セル100Dは温度制御を停止する運転モードを選択するため、第4のCLBO結晶102にダメージを与えることがない。
【0182】
9.実施形態6
9.1 構成
図13は、実施形態6に係る第5のCLBO結晶セル100Hの構成を概略的に示す図である。第5のCLBO結晶セル100Hの構成は、
図8に示した第3の駆動セル100F、第3の予備セル100Gの構成と同様であり、大容量バッテリ134に接続される点が異なる。大容量バッテリ134は、本開示の「外部電源」の一例である。大容量バッテリ134は、バッテリ104を介して第1のヒータ78と温度制御部106とに電力を供給する。
【0183】
図14は、実施形態6に係る輸送用大容量バッテリ台車140の構成を概略的に示す図である。
図14に示すように、輸送用大容量バッテリ台車140は、荷台142と、取っ手144と、車輪146と、充電ケーブル148と、を含む。
【0184】
荷台142は、箱状に構成され、内部に大容量バッテリ134が配置される。荷台142の上面にはCLBO結晶セルが載置可能であり、
図14に示す例では荷台142にはバッテリ104と温度制御部106とを含む第4のCLBO結晶セル100Eが載置されている。荷台142には、
図13に示した第5のCLBO結晶セル100Hが載置されてもよいし、複数のCLBO結晶セルが載置されてもよい。
【0185】
取っ手144は、荷台142に設けられる。取っ手144は、ユーザが輸送用大容量バッテリ台車140を移動させる際に把持するための部材である。車輪146は、荷台142の下面の前後左右に設けられる。車輪146は、回転することで利用者による輸送用大容量バッテリ台車140の移動を容易にする。
【0186】
充電ケーブル148は、荷台142に載置された第4のCLBO結晶セル100Eのバッテリ104と輸送用大容量バッテリ台車140に設けられた大容量バッテリ134とを電気的に接続する。
【0187】
輸送用大容量バッテリ台車140には、荷台142に載置された第4のCLBO結晶セル100Eの第2の容器130の内部にArガスをパージするための、Arガス供給装置86とArガス排出装置88(
図2参照)とを設けてもよい。
【0188】
9.2 動作
輸送用大容量バッテリ台車140に搭載された第4のCLBO結晶セル100Eには、大容量バッテリ134から電力が供給される。
9.3 作用・効果
固体レーザシステム1の内部のスペースによって、CLBO結晶セルのバッテリは大きさが制限され、その結果バッテリの容量も制限される。このため、CLBO結晶セルの輸送時間次第では、バッテリの容量が不足する場合がある。実施形態6に係る輸送用大容量バッテリ台車140によれば、輸送と共に外部電源によってCLBO結晶セルに給電を行うことを可能とする。大容量バッテリ134は、第1のヒータ78、温度制御部106への電力の供給とバッテリ104の充電を行うことができる。これにより、移動時のシステム継続時間を拡大することが可能となる。
【0189】
10.実施形態7
10.1 構成
図15は、実施形態7に係る固体レーザシステム1Aの構成を概略的に示す図である。
図15では、図中右方向をX方向、X方向に直交する図中上方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と定義する。
【0190】
図15に示すように、固体レーザシステム1Aは、第1の固体レーザ装置10と、第2の固体レーザ装置12と、の他に、第4の高反射ミラー150と、第4のダイクロイックミラー152と、ステージ154と、を含む。
【0191】
実施形態7では、第1の固体レーザ装置10は波長515nmのパルスレーザ光を出力する。第4の高反射ミラー150は、第2の固体レーザ装置12から出力される波長1553nmのパルスレーザ光が第4のダイクロイックミラー152に入力されるように配置される。第4のダイクロイックミラー152は、第1の固体レーザ装置10から出力される波長515nmのパルスレーザ光を高透過し、波長1553nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされる。
【0192】
ステージ154は、Y方向に延びるレール156と、レール156に沿ってY方向に移動可能にレール156に保持される載置台158と、を含む。載置台158には、それぞれCLBO結晶セルである第4の駆動セル100Iと第4の予備セル100JとがY方向に沿って配置される。第4の駆動セル100Iは、本開示の「第1の波長変換装置」の一例である。第4の予備セル100Jは、本開示の「第2の波長変換装置」の一例である。第4の駆動セル100Iと第4の予備セル100Jとは、例えばそれぞれ第4のCLBO結晶セル100Eであってもよい。
【0193】
図15では、第4の駆動セル100Iがレーザ光の光路上に配置されており、第4の予備セル100Jがレーザ光の光路外に配置されている。また、
図16は、
図15に示した状態から載置台158を移動させた状態を示す図である。
図16に示す例では、第4の駆動セル100Iがレーザ光の光路外に配置されており、第4の予備セル100Jがレーザ光の光路上に配置されている。このように、ステージ154は、第4の駆動セル100Iと第4の予備セル100Jとをレーザ光の光軸に対して平行移動させていずれか一方をレーザ光の光路上に配置する。
【0194】
10.2 動作
固体レーザシステム1Aの動作について説明する。
【0195】
第4の高反射ミラー150は、第2の固体レーザ装置12から出力された波長1553nmのパルスレーザ光を高反射し、第4のダイクロイックミラー152に入射させる。
【0196】
第4のダイクロイックミラー152は、第1の固体レーザ装置10から出力された波長515nmのパルスレーザ光を高透過し、かつ第4の高反射ミラー150から入射された波長1553nmのパルスレーザ光を高反射し、それぞれのパルスレーザ光の光軸を一致させた状態で第4の駆動セル100Iに入射させる。
【0197】
第4の駆動セル100Iの不図示の入射ウィンドウから入射したパルスレーザ光は、第4の駆動セル100Iの内部のCLBO結晶に入射することで波長が変換され、波長変換後のパルスレーザ光が不図示の出射ウィンドウから出射する。
【0198】
第4の駆動セル100Iから第4の予備セル100Jに交換する際に、ステージ154によって
図15に示す状態から
図16に示す状態となるように第4の駆動セル100Iと第4の予備セル100Jとを移動させる。これにより、第4の駆動セル100Iがレーザ光の光路上から退避され、第4の予備セル100Jがレーザ光の光路上に配置される。
【0199】
レーザ光の光路上に配置された第4の予備セル100Jは、光路上に配置されていた第4の駆動セル100Iと同様にレーザ光の波長を変換する。
【0200】
10.3 作用・効果
実施形態7に係る固体レーザシステム1Aによれば、第4の駆動セル100Iと第4の予備セル100Jとの交換時に、第4の予備セル100Jの光軸合わせが不要であるため、メンテナンス時間を短縮することができる。
【0201】
11.実施形態8
11.1 構成
図17は、実施形態8に係る固体レーザシステム1Bの構成を概略的に示す図である。
図15に示した固体レーザシステム1Aとの相違点を説明する。
【0202】
図17に示すように、固体レーザシステム1Bは、波長変換ボックス160と、ステージコントローラ176と、温度調節器178と、を備える。波長変換ボックス160は、第1のウィンドウ162と、第2のウィンドウ164と、第3のウィンドウ166と、パージガス入口配管168と、パージガス出口配管170と、を含む。
【0203】
第1のウィンドウ162は、第1の固体レーザ装置10から出力されるパルスレーザ光が入射する位置に配置される。第2のウィンドウ164は、第2の固体レーザ装置12から出力されるパルスレーザ光が入射する位置に配置される。また、第3のウィンドウ166は、第1のウィンドウ162と対向する位置に配置される。
【0204】
波長変換ボックス160は、N2ガスをパージ可能に密閉される。パージガス入口配管168は、不図示のN2ガス供給装置と波長変換ボックス160の内部とを連通する。パージガス出口配管170は、波長変換ボックス160の内部と不図示のN2ガス排気装置とを連通する。
【0205】
第4の高反射ミラー150、第4のダイクロイックミラー152、ステージ154は、波長変換ボックス160の内部に配置される。第4の高反射ミラー150と第4のダイクロイックミラー152とは、波長1553nmのパルスレーザ光と波長515nmのパルスレーザ光とを第5の駆動セル100Kよりも上流側で光路を一致させるように配置される。
【0206】
ステージ154の載置台158には、第5の駆動セル100Kと第5の予備セル100LとがY方向に沿って配置される。
【0207】
第5の駆動セル100Kは、直列に配置された複数のCLBO結晶を含む。ここでは、第5の駆動セル100Kは、第2の容器130の内部に第8のCLBO結晶132Dと、第9のCLBO結晶132Eと、第10のCLBO結晶132Fと、を含む。また、第2の容器130は、第2の入射ウィンドウ172と、第2の出射ウィンドウ174と、を含む。第2の入射ウィンドウ172、第8のCLBO結晶132D、第9のCLBO結晶132E、第10のCLBO結晶132F、第2の出射ウィンドウ174は、直列に配置される。
【0208】
また、第5の駆動セル100Kは、第2の容器130の内部に第5のヒータ78Dと、第6のヒータ78Eと、第7のヒータ78Fと、を備える。
【0209】
第5のヒータ78Dは、第8のCLBO結晶132Dを加熱する位置に配置される。第6のヒータ78Eは、第9のCLBO結晶132Eを加熱する位置に配置される。第7のヒータ78Fは、第10のCLBO結晶132Fを加熱する位置に配置される。また、第5の駆動セル100Kは、第8のCLBO結晶132D、第9のCLBO結晶132E、第10のCLBO結晶132Fの温度をそれぞれ測定する不図示の温度センサを含む。
【0210】
第5のヒータ78D、第6のヒータ78E、第7のヒータ78F、不図示の温度センサには、温度調節器178が接続される。温度調節器178に代えて、温度制御部106(
図7参照)を備えてもよい。
【0211】
また、第5の駆動セル100Kは、不図示のバッテリを備える。第5の予備セル100Lの構成は、第5の駆動セル100Kの構成と同様である。
【0212】
ステージコントローラ176は、ステージ154を制御する。ここでは、ステージ154は不図示のアクチュエータを含み、ステージコントローラ176は不図示のアクチュエータを制御することで、載置台158の移動を制御する。
【0213】
11.2 動作
固体レーザシステム1Bの動作について説明する。
【0214】
第5の駆動セル100Kの第8のCLBO結晶132D、第9のCLBO結晶132E、第10のCLBO結晶132Fと、第5の予備セル100Lの第8のCLBO結晶132D、第9のCLBO結晶132E、第10のCLBO結晶132Fとの温度をそれぞれ既定のステップで120℃に昇温し、既定の時間、ガス流量で保持する。
【0215】
この状態で、第5の駆動セル100Kによって波長変換を行う。即ち、固体レーザシステム1Bは、ステージコントローラ176によりステージ154を制御して、
図17に示すように第5の駆動セル100Kをレーザ光の光路上に配置する。そして、第4のダイクロイックミラー152から第5の駆動セル100Kの第2の入射ウィンドウ172にパルスレーザ光を入射させる。その結果、第8のCLBO結晶132D、第9のCLBO結晶132E、第10のCLBO結晶132Fによって波長変換されたパルスレーザ光が第2の出射ウィンドウ174から出射し、波長変換ボックス160の第3のウィンドウ166から出力される。
【0216】
この間も第5の予備セル100Lの準備をしておく。即ち、第5の予備セル100Lを既定の温度、ガス流量で保持し続ける。
【0217】
図18は、
図17に示した状態から載置台158を移動させた状態を示す図である。第5の駆動セル100Kの第8のCLBO結晶132D、第9のCLBO結晶132E、第10のCLBO結晶132Fのいずれかが寿命を迎えた場合には、第5の予備セル100Lによって波長変換を行う。即ち、固体レーザシステム1Bは、ステージコントローラ176によりステージ154を制御して、
図18に示すように第5の予備セル100Lをレーザ光の光路上に配置する。そして、第4のダイクロイックミラー152から第5の駆動セル100Kの第2の入射ウィンドウ172にパルスレーザ光を入射させる。その結果、第8のCLBO結晶132D、第9のCLBO結晶132E、第10のCLBO結晶132Fによって波長変換されたパルスレーザ光が第2の出射ウィンドウ174から出射し、波長変換ボックス160の第3のウィンドウ166から出力される。
【0218】
11.3 作用・効果
実施形態8に係る固体レーザシステム1Bによれば、実施形態1と同様の効果を得ることができる。また、第8のCLBO結晶132Dの手前で光路を結合しているため、波長変換用(駆動セル)のCLBO結晶とバックアップ用(予備セル)のCLBO結晶とをそれぞれ3つ直列に配置することができるので、装置を小型化することができる。
【0219】
また、1つのCLBO結晶セルにCLBO結晶を複数配置するため、ステージや配管の数を少なくすることができ、装置を小型化することができる。さらに、波長変換に使用した後のCLBO結晶セルを交換する際に、1つのCLBO結晶セルを交換することで複数のCLBO結晶を交換できるため、メンテナンスにかかる時間を少なくすることができる。
【0220】
12.実施形態9
12.1 構成
図19は、実施形態9に係る固体レーザシステム1Cの構成を概略的に示す図である。固体レーザシステム1Cは、第6のCLBO結晶セル100Mを含む。第6のCLBO結晶セル100Mは、駆動セルであってもよいし、予備セルであってもよい。
【0221】
第6のCLBO結晶セル100Mは、カートリッジ接続部180が設けられる。カートリッジ接続部180は、第1の電源端子182、184と、第1のガスライン186と、を含む。第1の電源端子182、184は、例えばそれぞれバッテリ104の正極と負極とに接続されてもよい。第1のガスライン186は、例えばArガス供給管80であってもよい。
【0222】
また、固体レーザシステム1Cは、ステージ154の載置台158に、固体レーザシステム1Cから供給・接続される電気・ガスの配線・接続機構である位置決め接続部190が設けられる。位置決め接続部190は、第2の電源端子192、194と、第2のガスライン196と、を含む。第2の電源端子192、194は、例えばそれぞれ外部電源108の正極と負極とに接続されてもよい。第2のガスライン196は、例えばArガス供給装置86(
図2参照)と連通していてもよい。
【0223】
カートリッジ接続部180と位置決め接続部190とは、互いに係合することで第6のCLBO結晶セル100Mを載置台158に位置決め・固定する機能を備える。
【0224】
12.2 動作
固体レーザシステム1Cの動作について説明する。
【0225】
ユーザは、カートリッジ接続部180と位置決め接続部190とによって載置台158に第6のCLBO結晶セル100Mを固定する。第6のCLBO結晶セル100Mが載置台158に固定されると、第1の電源端子182、184と第2の電源端子192、194とが接続される。これにより、第6のCLBO結晶セル100Mに電力が供給可能になる。また、第6のCLBO結晶セル100Mが載置台158に固定されると、第1のガスライン186と第2のガスライン196とが接続される。これにより、第6のCLBO結晶セル100MにArガスが供給可能になる。このように、駆動セルや予備セルを固定する際に、固定と同時に駆動セルと予備セルとに電気・ガスラインが接続される。
【0226】
12.3 作用・効果
実施形態9に係る固体レーザシステム1Cによれば、載置台158と駆動セル、載置台158と予備セルの固定・位置決め作業が簡易化され、また固定と共に電気・ガスが接続されるため、メンテナンス時間を短縮することができる。
【0227】
13.電子デバイスの製造方法
図20は、露光装置202の構成を概略的に示す図である。電子デバイスの製造方法は、固体レーザシステム1、エキシマ増幅器200、露光装置202によって実現される。
【0228】
エキシマ増幅器200は、例えばレーザ光を増幅するArFエキシマレーザ装置である。固体レーザシステム1とエキシマ増幅器200とで、ハイブリッドレーザ装置を構成する。エキシマ増幅器200は、固体レーザシステム1から出射されたパルスレーザ光を増幅する。エキシマ増幅器200によって増幅されたパルスレーザ光は、露光装置202に入力され、露光光として用いられる。
【0229】
露光装置202は、照明光学系204と投影光学系206とを含む。照明光学系204は、エキシマ増幅器200から入射したエキシマレーザ光によって、レチクルステージRTのレチクルパターンを照明する。投影光学系206は、レチクルを透過したレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピースに結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置202は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したレーザ光をワークピース上に露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。半導体デバイスは本開示における「電子デバイス」の一例である。固体レーザシステム1は、各実施形態で説明した固体レーザシステム1A、1B、1C等であってもよい。
【0230】
14.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0231】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。