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特許7431423抗血栓性の細胞付着用シート、シート付き医療用器具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】抗血栓性の細胞付着用シート、シート付き医療用器具
(51)【国際特許分類】
   C12M 3/00 20060101AFI20240207BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20240207BHJP
   A61L 27/18 20060101ALI20240207BHJP
   A61L 31/06 20060101ALI20240207BHJP
   A61L 33/06 20060101ALI20240207BHJP
   A61L 31/14 20060101ALI20240207BHJP
   A61L 27/56 20060101ALI20240207BHJP
   A61F 2/07 20130101ALI20240207BHJP
   A61F 2/82 20130101ALI20240207BHJP
【FI】
C12M3/00 A
C12M1/00 A
A61L27/18
A61L31/06
A61L33/06 300
A61L31/14 400
A61L27/56
A61F2/07
A61F2/82
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022538016
(86)(22)【出願日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2021027098
(87)【国際公開番号】W WO2022019297
(87)【国際公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】P 2020125538
(32)【優先日】2020-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504145342
【氏名又は名称】国立大学法人九州大学
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】菅▲崎▼ 敦司
(72)【発明者】
【氏名】山本 陽介
(72)【発明者】
【氏名】滋野井 悠太
(72)【発明者】
【氏名】田中 賢
(72)【発明者】
【氏名】小林 慎吾
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066608(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/136654(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/153270(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/153364(WO,A1)
【文献】Polymer Preprints, Japan,2013年,vol.62, no.2, p.4906-4907
【文献】Colloid Polym Sci,2014年,vol.292, p.3301-3310
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 3/00
C12M 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物を用いて形成された、抗血栓性の細胞付着用シート。
【化1】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、-CHCH(RA1)CH-を表す。p及びrは、1を表す。qは、0又は1を表す。m及びnは、それぞれ独立に、2~6の整数を表す。RA1は、水素原子又はメチル基を表す。
【請求項2】
前記qが1を表す、請求項1に記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
【請求項3】
前記RA1が水素原子を表す、請求項1又は2に記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
【請求項4】
前記R及び前記Rが、いずれも水素原子を表す、請求項1~3のいずれか1項に記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
【請求項5】
前記m及び前記nが、いずれも2を表す、請求項1~4のいずれか1項に記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
【請求項6】
医療用器具と、前記医療用器具の表面上に配置された請求項1~5のいずれか1項に記載の抗血栓性の細胞付着用シートと、を備えた、シート付き医療用器具。
【請求項7】
前記医療用器具が、ステント、グラフト、及びカテーテルからなる群から選ばれる、請求項6に記載のシート付き医療用器具。
【請求項8】
前記医療用器具の形状が、フィルム、シート、チューブ、バッグ、シャーレ、ディッシュ、ウェル、多孔質、及びバイアル瓶からなる群から選ばれる、請求項6に記載のシート付き医療用器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗血栓性の細胞付着用シート及びシート付き医療用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、血液、組織液、及びリンパ液等の体液から、細胞、生理活性物質、及びタンパク質等の標的物質を選択的に分離して回収する方法、並びに、生体組織液から細菌又はウイルス等を分離して除去する方法等の分離・回収技術が、自己免疫疾患、後天性免疫不全症候群、及び、移植後の急性拒絶反応防止等に利用されている。
さらに、血液の癌である白血病を始め、癌化した生体組織由来の癌細胞を検出し、治療を行う細胞医療にとって、癌化した細胞を高感度で効率的に分離して回収する技術は重要である。近年、癌化した組織から癌細胞を直接採取する生検(バイオプシー)に代えて、血液に代表される生体組織液から腫瘍マーカーや癌化した細胞そのものを検出する血液生検(リキッドバイオプシー)が注目を集めている。従来から行われてきた組織採取による検査は被検者に対して高侵襲な手法であるのに対し、血液生検においては血液採取という低侵襲な手法を用いるため、被検者の体への負担が極めて軽いことが特徴である。その一方で、血液生検による腫瘍マーカーを用いた検査では、癌化した組織に部位特異的な腫瘍マーカーが確立されている場合が少ない。このため、癌化した組織からわずかに血液中に漏れ出して体内を循環している癌細胞(血中循環癌細胞)を高感度、高効率、且つ特異的に捕捉し、検出する技術の開発が望まれている。
【0003】
例えば、特許文献1には、生体内に存在する所定の細胞を選択的に吸着して分離させるための細胞分離方法に用いられる水和性組成物として、「中間水の量が30wt%以下であることを特徴とするがん細胞分取用水和性組成物。」(請求項4)が記載されている。具体的には、下記式(1)で表される高分子を含むがん細胞分取用水和性組成物を開示している。
【0004】
【化1】
【0005】
ところで、例えば、人工血管、カテーテル、及びステント等の人体に長期にわたって導入される医療用器具は、通常、生体を構成する物質と適合し、且つ、汚損しにくい材料で作製されることが望ましく、特に、血栓が生じにくいことが強く求められている。このため、医療用器具の表面には、上述したような材料でコーティングする試みがなされている。血栓の発生を抑制する材料としては、オキシエチレン繰り返し構造〔-(O-C-)-〕をもつ化合物が有効であることが知られている(例えば非特許文献1~3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-105579号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】岡野光夫ら著「生体適合性ポリマー」、共立出版(1988年)
【文献】岩田博夫著「バイオマテリアル」、共立出版(2005年)
【文献】赤池敏弘著「生体機能材料学 -人工臓器・組織工学・再生医療の基礎-」、コロナ社(2005年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特許文献1に開示されたがん細胞分取用水和性組成物の如く、オキシエチレン繰り返し構造をもつ化合物を含むコーティング配合物を用いて膜(シート)を形成し、その膜物性について検討したところ、血小板の付着が生じにくく抗血栓性を有していたものの、細胞付着性(特に癌細胞等の腫瘍細胞付着性)を更に改善する余地があることを知見するに至った。つまり、良好な抗血栓性を有しつつ、細胞付着性(特に癌細胞等の腫瘍細胞付着性)をより一層向上させる課題を見出した。
【0009】
そこで、本発明は、抗血栓性及び細胞付着性(特に癌細胞等の腫瘍細胞付着性)に優れる、抗血栓性の細胞付着用シートを提供することを課題とする。
また、本発明は、上記抗血栓性の細胞付着用シートを使用した、シート付き医療用器具を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0011】
〔1〕 後述する一般式(1)で表される化合物を用いて形成された、抗血栓性の細胞付着用シート。
〔2〕 上記qが1を表す、〔1〕に記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
〔3〕 上記RA1が水素原子を表す、〔1〕又は〔2〕に記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
〔4〕 上記R及び上記Rが、いずれも水素原子を表す、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
〔5〕 上記m及び上記nが、いずれも2を表す、〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の抗血栓性の細胞付着用シート。
〔6〕 医療用器具と、上記医療用器具の表面上に配置された〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の抗血栓性の細胞付着用シートと、を備えた、シート付き医療用器具。
〔7〕 上記医療用器具が、ステント、グラフト、及びカテーテルからなる群から選ばれる、〔6〕に記載のシート付き医療用器具。
〔8〕 上記医療用器具の形状が、フィルム、シート、チューブ、バッグ、シャーレ、ディッシュ、ウェル、多孔質、及びバイアル瓶からなる群から選ばれる、〔6〕に記載のシート付き医療用器具。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、抗血栓性及び細胞付着性(特に癌細胞等の腫瘍細胞付着性)に優れる、抗血栓性の細胞付着用シートを提供できる。
また、本発明によれば、上記抗血栓性の細胞付着用シートを使用した、シート付き医療用器具を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において(メタ)アクリルアミドとは、アクリルアミド及びメタクリルアミドを意味する。また、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル及びメタクリロイルを意味する。
また、本明細書において、固形分とは、溶媒成分を除いた組成物に含まれる成分を意図し、その性状が液状であっても固形分としてみなす。
【0014】
[抗血栓性の細胞付着用シート]
本発明の抗血栓性の細胞付着用シート(以下「シート」と略記する。)は、後述する一般式(1)で表される化合物を用いて形成されるシートである。
上記構成を有する本発明のシートは、血小板が付着しにくく、且つ、細胞付着性に優れる。上記シートは、なかでも、癌細胞等の腫瘍細胞付着性に優れており、なかでも、MCF-7(ヒト由来乳腺良性腫瘍細胞株)に対して優れた付着性を有する。
上記効果を発現する作用機序は明らかではないが、本発明者らは、一般式(1)中において、一般式(1)中に明示される2つの(メタ)アクリルアミド基を連結している鎖の構造に起因していると考えている。
【0015】
本発明のシートを製造する方法の一例として、後述する一般式(1)で表される化合物を含む硬化性組成物を用いた方法が挙げられる。
以下においては、まず、一般式(1)で表される化合物について説明し、次いで硬化性組成物について説明する。
【0016】
〔一般式(1)で表される化合物〕
以下において、一般式(1)で表される化合物について詳述する。
【0017】
【化2】
【0018】
一般式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。
及びRは、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であるのが好ましく、いずれも水素原子であるのがより好ましい。
【0019】
及びRは、それぞれ独立に、-CHCH(RA1)CH-を表す。
A1は、水素原子又はメチル基を表し、水素原子であるのが好ましい。
及びRは、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
【0020】
p及びrは、1を表す。
qは、0又は1を表し、1であるのが好ましい。
m及びnは、それぞれ独立に、2~6の整数を表し、2~4の整数であるのが好ましい。m及びnは、なかでも、いずれも2を表すのがより好ましい。
一般式(1)中、C2m及びC2nで表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
m及びnは、互いに同一でも異なっていてもよいが、同一であるのが好ましい。
なお、一般式(1)中、qが0を表す場合、-C2m-C2n-で表されるアルキレン基中の炭素数の合計が4~12の整数を表せばよい。したがって、一般式(1)は、例えば、mが1であり、nが3である場合、及び、mが3であり、nが1である場合も許容する。-C2m-C2n-で表されるアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよいが、直鎖状であるのが好ましい。
以下に、一般式(1)で表される化合物の具体例を示すが、これらに制限されない。
【0021】
【化3】
【0022】
一般式(1)で表される化合物は、従来公知の方法により合成できる。
【0023】
〔硬化性組成物〕
以下において、硬化性組成物が含む各成分について詳述する。
硬化性組成物は、一般式(1)で表される化合物を含む。一般式(1)で表される化合物については既述のとおりである。
硬化性組成物は、一般式(1)で表される化合物以外の成分として、例えば、一般式(1)で表される化合物以外のその他の重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、又は、溶媒を含んでいてもよい。なかでも、一般式(1)で表される化合物、重合開始剤、及び溶媒を含むのが好ましい。
【0024】
<一般式(1)で表される化合物>
硬化性組成物は、上記一般式(1)で表される化合物を含む。
一般式(1)で表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物中、一般式(1)で表される化合物の含有量(複数種存在する場合はその合計)としては、組成物の全固形分に対して、50.0質量%以上であるのが好ましく、75.0質量%以上であるのがより好ましく、85.0質量%以上であるのが更に好ましく、95.0質量%以上であるのが特に好ましい。なお、上限値としては特に制限されないが、例えば、100質量%以下であり、99.9質量%以下であるのが好ましく、99.5質量%以下であるのがより好ましく、98.0質量%以下であるのが更に好ましく、97.5質量%以下であるのが特に好ましい。
【0025】
<重合開始剤>
硬化性組成物は、重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては特に制限されないが、熱重合開始剤又は光重合開始剤が好ましく、光重合開始剤がより好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、アルキンフェノン系光重合開始剤、メトキシケトン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、ヒドロキシケトン系光重合開始剤(例えば、Omnirad 184;1,2-α-ヒドロキシアルキルフェノン)、アミノケトン系光重合開始剤(例えば、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパン-1-オン(Omnirad 907))、オキシム系光重合開始剤、及びオキシフェニル酢酸エステル系光重合開始剤(Omnirad 754)等が挙げられる。
その他の開始剤としては、例えば、アゾ系重合開始剤(例えば、V-50、V-601)、過硫酸塩系重合開始剤、過硫酸物系重合開始剤、及びレドックス系重合開始剤等が挙げられる。
【0026】
また、重合開始剤としては、下記(PI)で表される化合物も好ましい。なお、下記(PI)で表される化合物は光重合開始剤として使用できる。
【0027】
【化4】
【0028】
一般式(PI)中、V、V、V、及びVは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
【0029】
置換基の種類は特に制限されないが、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アルキルチオ基、メルカプト基、アシル基、及びアミノ基等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子が好ましく、塩素原子又は臭素原子がより好ましく、塩素原子が更に好ましい。
アルキル基及びアルコキシ基の炭素数としては特に制限されないが、1~6が好ましく、1~3がより好ましい。また、アルキル基及びアルコキシ基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
アルキルチオ基の炭素数としては特に制限されないが、1~6が好ましく、1~4がより好ましい。また、アルキルチオ基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれであってもよい。
アシル基の炭素数は特に制限されないが、炭素数2~6が好ましく、炭素数2~3がより好ましい。また、アシル基は、直鎖状及び分岐鎖状のいずれであってもよい。アシル基の具体例としては、ホルミル基、アセチル基、エチルアシル基、n-プロピルアシル基、及びイソプロピルアシル基が挙げられる。
アミノ基としては、1級アミノ基(-NH)、2級アミノ基(-NHR)、及び3級アミノ基(-NR)のいずれであってもよい。ここで、Rは、炭化水素基(例えば、炭素数1~6のアルキル基)を表す。3級アミノ基における2つのRは同一であっても異なってもよい。アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、及びジエチルアミノ基等が挙げられる。
【0030】
nは、1~5の整数を表し、1~3の整数が好ましく、1~2の整数がより好ましく、1が更に好ましい。
【0031】
一般式(PI)で表される化合物は、23℃条件下において液体であることが好ましい。
一般式(PI)で表される化合物は、例えば、特開2000-186242号公報の段落0067~0071及び段落0112~0115に記載された方法に準じて合成できる。
一般式(PI)で表される化合物の具体例としては、国際公開2017/018146号公報の段落0064~0070に記載される一般式(VII)で表される化合物が挙げられる。
【0032】
硬化性組成物中、重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物が重合開始剤を含む場合、重合開始剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)としては、組成物の全固形分に対して、10.0質量%以下であるのが好ましく、8.0質量%以下であるのがより好ましく、5.0質量%以下であるのが更に好ましく、3.5質量%以下であるのが特に好ましい。なお、その下限としては、0.1質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上であるのがより好ましく、1.0質量%以上であるのが更に好ましい。
【0033】
<溶媒>
硬化性組成物は、溶媒を含んでいてもよい。
溶媒の種類としては特に制限されないが、水又は有機溶媒が挙げられる。
有機溶媒としては、メタノール及びブタノール等のアルコール類、並びにメチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン類が好ましい。有機溶媒としては、なかでも、炭素数3以下のアルコール類又は炭素数4以下のケトン類が好ましく、メタノール又はアセトンがより好ましい。
【0034】
硬化性組成物中、溶媒は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物が溶媒を含む場合、硬化性組成物の固形分の含有量としては、組成物の全質量に対して、5.0質量%以上であるのが好ましく、10.0質量%以上であるのがより好ましく、15.0質量%以上であるのが更に好ましい。また、その上限値としては特に制限されないが、90.0質量%以下であるのが好ましく、70.0質量%以下であるのがより好ましく、50.0質量%以下であるのが更に好ましい。
【0035】
<他の重合性化合物>
硬化性組成物は、上述した一般式(1)で表される化合物以外の他の重合性化合物(以下「他の重合性化合物」ともいう。)を含んでいてもよい。
他の重合性化合物としては特に制限されないが、エチレン性不飽和基を有する化合物であるのが好ましく、(メタ)アクリロイル基又は(メタ)アクリルアミド基を有する化合物であるのがより好ましい。なお、分子中のエチレン性不飽和基の数は特に制限されず、例えば、1~8個が好ましく、1~4個がより好ましく、1又は2個が更に好ましい。
他の重合性化合物としては、なかでも、(メタ)アクリレート系化合物及び(メタ)アクリルアミド系化合物が好ましい。
【0036】
(メタ)アクリレート系化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-1,3-プロピレンジオールジアクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルスルホン酸、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルメチルスルホキシド、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ウレタンジメタクリレート、及びトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0037】
(メタ)アクリルアミド系化合物としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、及びN-2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0038】
他の重合性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物が他の重合性化合物を含む場合、他の重合性化合物の含有量(複数種存在する場合はその合計)としては、組成物の全固形分に対して、80.0質量%以下であるのが好ましく、50.0質量%以下であるのがより好ましく、30.0質量%以下であるのが更に好ましい。なお、その下限としては、0.1質量%以上であるのが好ましい。
【0039】
<重合禁止剤>
硬化性組成物は、重合禁止剤を含んでいてもよい
重合禁止剤としては特に制限されないが、例えば、4OH-TEMPO(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)等が挙げられる。
重合禁止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
硬化性組成物が重合禁止剤を含む場合、重合禁止剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)としては、組成物の全固形分に対して、0.0005~1質量%であるのが好ましい。
【0040】
<その他の成分>
硬化性組成物は、上述した各成分以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、例えば、多官能アミン、多官能チオール、界面活性剤、可塑剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、酸化防止剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、無機又は有機の充填剤、及び金属粉等が挙げられる。
【0041】
〔硬化性組成物の調製方法〕
硬化性組成物の調製方法は特に制限されず、公知の方法を採用できる。例えば、上記各成分を混合した後、公知の手段により撹拌することによって硬化性組成物を調製できる。
【0042】
〔シートの製造方法〕
本発明のシートを製造する方法は特に制限されないが、例えば、上述した硬化性組成物を基材上に塗布し、その後、得られた塗膜に対して、加熱又は光照射(光としては、例えば、紫外線、可視光線、電子線、γ線、及びX線等)を施す方法が挙げられる。つまり、上記塗膜を硬化して形成される硬化膜を、抗血栓性の細胞付着用シートとすることができる。
【0043】
基材の材質としては特に制限されず、例えば、ガラス材料、金属材料、セラミック材料、及びプラスチック材料等が挙げられる。
上記ガラス材料の種類としては、ソーダ石灰ガラス、ホウケイ酸ガラス、及び石英ガラスが挙げられる。
上記プラスチック材料の種類としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、アセチルセルロースブチレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリメチルペンテン、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリイミド、フッ素樹脂、ナイロン、アクリル樹脂、ポリアミド、シクロオレフィン、ナイロン、及びポリエーテルサルファン等が挙げられる。
また、金属材料の種類としては、金、ステンレス鋼、コバルトクロム合金、アマルガム合金、銀パラジウム合金、金銀パラジウム合金、チタン、ニッケルチタン合金、及び白金等が挙げられる。
また、セラミック材料の種類としては、ハイドロキシアパタイト等が挙げられる。
【0044】
基材の形状は特に制限されず、板状であっても、立体形状であってもよい。なお、基材としては、後述する医療用器具であってもよい。
基材の表面は、表面改質剤又はプラズマ処理等により改質されていてもよい。
【0045】
硬化性組成物を塗布する方法は特に制限されないが、例えば、浸漬、ロールコート、キスロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、ディップロールコート、バーコート、スピンコート、ナイフコート、エアーナイフコート、カーテンコート、及びリップコート、並びに、ダイコーター等による押出しコート法等の方法が挙げられる。
【0046】
加熱する方法は特に制限されず、例えば、送風乾燥機、オーブン、赤外線乾燥機、及び加熱ドラム等を用いる方法が挙げられる。
加熱の温度は特に制限されないが、30~150℃が好ましく、40~120℃がより好ましい。
加熱の時間は特に制限されないが、通常、1分~6時間である。塗布装置中で乾燥する場合には1~20分であり、また、塗布後の加熱(例えば、巻き取り形態での加熱)の際の加熱温度は、室温~50℃が好ましい。
【0047】
光照射する方法としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、Deep-UV(ultraviolet)光、LED(light emitting diode)ランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、及びカーボンアーク灯等による方法が挙げられる。光照射のエネルギーは特に制限されないが、0.1~10J/cmが好ましい。
【0048】
<シート>
上記硬化性組成物を硬化することにより形成されるシート(膜)は、抗血栓性の細胞付着用シートとして使用できる。
シートの厚さとしては特に制限されないが、例えば、0.01~300μmが好ましく、0.05~300μmがより好ましく、0.1~100μmが更に好ましい。
なお、シートは、上述した一般式(1)で表される化合物に由来する繰り返し単位を含む高分子化合物を含む。
【0049】
上記硬化性組成物を硬化することにより形成されるシートは、基材を剥がした状態で使用されてもよいし、基材と一体として使用されてもよい。なお、上記基材は、後述する医療用器具であってもよい。
【0050】
<細胞付着性>
本発明のシートは、血小板が付着しにくく、且つ、細胞が付着しやすい。つまり、抗血栓性の細胞付着用シートとしての用途に適する。
本発明のシートは、正常細胞及び腫瘍細胞に対する細胞付着性に優れており、なかでも、腫瘍細胞に対する細胞付着性により優れる。
【0051】
正常細胞としては、上皮組織、結合組織、筋組織、及び神経組織等において正常な機能を維持している組織に由来する細胞が挙げられる。
また、腫瘍細胞としては、良性腫瘍細胞及び悪性腫瘍細胞が挙げられる。悪性腫瘍細胞としては、乳癌、線維肉腫、子宮頸癌、前立腺癌、食道癌、胃癌、結腸癌、膵臓癌、直腸癌、胆嚢癌、肝臓癌、口腔咽頭癌、肺癌、及び皮膚癌等の癌化した組織に由来する細胞等が挙げられる。
【0052】
[シート付き医療用器具]
本発明はシート付き医療用器具にも関する。
以下において、シート付き医療用器具について詳述する。
シート付き医療用器具は、医療用器具と、上記医療用器具の表面上に配置された抗血栓性の細胞付着用シート(本発明のシート)と、を備える。
【0053】
なお、本発明のシートとしては、既述のとおりである。本発明のシートは、医療用器具のコーティング材として機能し得る。
【0054】
医療用器具としては特に制限されず、抗血栓用途及び細胞付着用途等の各用途に使用される医療用器具であるのが好ましい。
【0055】
細胞付着用途に使用される医療用器具の形状としては特に制限されず、例えば、フィルム、シート、チューブ、バッグ、シャーレ、ディッシュ、ウェル、多孔質、及びバイアル瓶等の形状が挙げられる。なお、多孔質とは、複数の空孔を有する材料を意図し、例えば、ポリイミド多孔質膜等が挙げられる。
【0056】
抗血栓用途に使用される医療用器具としては特に制限されず、例えば、ステント、グラフト、カテーテル、人工心臓、人工肺、人工心弁、拡張器、血管閉塞器、塞栓フィルター、塞栓除去デバイス、人工血管、シース、血管内在性モニタリングデバイス、ペースメーカー電極、ガイドワイヤー、カーディアックリード、心肺バイパスサーキット、カニューレ、プラグ、ドラッグデリバリーデバイス、バルーン、組織パッチデバイス、及び血液ポンプ等が挙げられる。なかでも、ステント、グラフト、及びカテーテルからなる群から選ばれる医療用器具が好ましい。
【0057】
シート付き医療用器具の製造方法としては、例えば、上述した硬化性組成物を使用して医療用基材の表面上に硬化膜(抗血栓性の細胞付着用シート)を形成する方法が挙げられる。なお、硬化性組成物を使用した硬化膜の形成方法については、既述のとおりである。
医療用基材の表面上に配置される抗血栓性の細胞付着用シートの厚さとしては特に制限されず、例えば、0.01~300μmが好ましく、0.1~100μmがより好ましい。
【実施例
【0058】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0059】
[細胞付着用シートの製造及び評価]
〔各種成分〕
以下において、まず、実施例及び比較例の各細胞付着用シートの製造に使用する成分を示す。
【0060】
<多官能(メタ)アクリルアミド化合物>
多官能(メタ)アクリルアミド化合物としては、以下に示す化合物1Aを使用した。
【0061】
【化5】
【0062】
<多官能アクリレート化合物>
比較用化合物として、多官能アクリレート化合物(以下に示す化合物CR)を使用した。なお、化合物CRは、東京化成工業(株)社製の市販品を使用した。
【0063】
【化6】
【0064】
<重合開始剤>
重合開始剤としては、以下に示す光重合開始剤PI-1を合成して使用した。
なお、光重合開始剤PI-1は、国際公開第2017/018146号の[0105]~[0110]に記載の方法に準じて合成した。
【0065】
【化7】
【0066】
<重合禁止剤>
重合禁止剤としては、4OH-TEMPO(4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル)を使用した。
【0067】
<溶媒>
溶媒としては、メタノールを使用した。
【0068】
〔実施例1の細胞付着用シートの作製及び評価〕
以下に示す方法により、実施例1の細胞付着用シートを製造した。
【0069】
<硬化性組成物1の調整>
各成分を以下に示す配合量で混合して、硬化性組成物1を調製した。
・多官能(メタ)アクリルアミド化合物(化合物1A) 19.4質量部
・重合開始剤(光重合開始剤PI-1) 0.6質量部
・重合禁止剤(4OH-TEMPO) 全固形分に対して30質量ppm
・溶媒(メタノール) 90.0質量部
【0070】
<細胞付着用シートの作製>
調製した硬化性組成物1を、バーコーターを用いて、乾燥後に厚さ3μmとなるようにクリアランスを調整して、PET(ポリエチレンテレフタラート)フィルム(コスモシャインA4300,東洋紡社製;両面易接着処理)上に塗布し、乾燥させた。
その後、紫外線露光機(ECS-401G、アイグラフィック社製;光源は高圧水銀ランプ)を用いて、2J/cmの露光量となるように露光し、PETフィルム上に硬化膜(細胞付着用シート)を作製した。
【0071】
〔評価〕
実施例1の細胞付着用シートについて、以下の評価を実施した。
【0072】
<血小板付着性>
作製した実施例1の細胞付着用シートと、対照試料としてのPETフィルム(DIAFOIL T100E125、三菱樹脂株式会社製)とを用いて、血小板の粘着実験を行った。クエン酸ナトリウムで抗凝固したヒト全血から多血小板血漿と少血小板血漿を遠心分離によって回収し、多血小板血漿を少血小板血漿で希釈することにより4×10cells/mLの血小板懸濁液を調整した。続いて、試料表面と血小板懸濁液とを37℃で60分間接触させた後、リン酸緩衝溶液で2回リンスし、粘着した血小板を1%グルタルアルデヒド溶液で固定化した。固定化した試料はリン酸緩衝溶液にて10分間、リン酸緩衝溶液:水=1:1にて8分間、水にて8分間、さらに水でもう一度8分間浸漬させて洗浄し、室温で風乾した。その後、試料表面1×10μmに付着した血小板を電子顕微鏡で観察し、血小板粘着数を計測した。
PETフィルム(対照試料)に付着した血小板の総数を100%とした場合の、実施例1の細胞付着用シートに付着した血小板の相対数を算出し、血小板付着性を以下の基準に従って評価した。上記相対数が小さいほど血小板付着性が良好であり、抗血栓性に優れる。実用性の点で「B」以上の評価であるのが好ましい。結果を表1に示す。
A・・・5%以下
B・・・5%超20%以下
C・・・20%超
【0073】
<腫瘍細胞付着性>
(1)MCF-7(ヒト由来乳腺良性腫瘍細胞株)に対する評価
作製した実施例1の細胞付着用シートと、対照試料としてのPETフィルム(DIAFOIL T100E125、三菱樹脂株式会社製)とを評価用基板として用いて、腫瘍細胞の接着試験を行った。上記基板の表面をリン酸緩衝生理食塩水により洗浄した後、ウシ胎児血清を10%添加して調製したDMEM/F12培地(ダルベッコ改変イーグル培地とハムF-12培地の1:1混合培地)に37℃で60分間浸漬させて馴化した。その後、上記の培地に懸濁したMCF-7(ヒト由来乳腺良性腫瘍細胞株)を各試料に対して1cmあたり1×10個の密度となるように播種し、37℃、60分間接触させた。続いて、基板をリン酸緩衝溶液で2回リンスし、基板に接着した細胞を4%パラホルムアルデヒド溶液で固定した。細胞の核をDAPI(4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール)、アクチン骨格をファロイジン抗体でそれぞれ染色して、蛍光顕微鏡を用いて付着細胞数の計測を行った。
PETフィルム(対照試料)に付着した腫瘍細胞の総数を100%とした場合の、実施例1の細胞付着用シートに付着した腫瘍細胞の相対数を算出し、腫瘍細胞付着性を以下の基準に従って評価した。実用性の点で「B」以上の評価であるのが好ましい。結果を表1に示す。
A・・・150%超
B・・・100%超150%以下
C・・・100%
D・・・100%未満
【0074】
(2)MDA-MB-231(ヒト由来浸潤性悪性乳癌細胞株)に対する評価
懸濁したMCF-7(ヒト由来乳腺良性腫瘍細胞株)を懸濁したMDA-MB-231(ヒト由来浸潤性悪性乳癌細胞株)に変更した以外は、上述した(1)MCF-7(ヒト由来乳腺良性腫瘍細胞株)に対する評価方法と同様の方法により、腫瘍細胞付着性を評価した。
【0075】
〔比較例1の細胞付着用シートの作製及び評価〕
<硬化性組成物2の調整>
各成分を以下に示す配合量で混合して、硬化性組成物2を調製した。
・多官能アクリレート化合物(化合物CR) 19.4質量部
・重合開始剤(光重合開始剤PI-1) 0.6質量部
・重合禁止剤(4OH-TEMPO) 全固形分に対して30質量ppm
・溶媒(メタノール) 90.0質量部
【0076】
<比較例1の細胞付着用シートの作製>
硬化性組成物1を硬化性組成物2に変更した以外は、実施例1の細胞付着用シートと同様の方法により、比較例1の細胞付着用シートを作製した。
【0077】
<評価>
得られた比較例1の細胞付着用シートに対して、実施例1の細胞付着用シートと同様の血小板付着性の評価を実施した。結果を表1に示す。
なお、比較例1の細胞付着用シートについては、血小板付着性の評価が悪かったため、腫瘍細胞付着性の評価を実施しなかった。
【0078】
〔比較例2の細胞付着用シートの評価〕
比較例2の細胞付着用シートとして、PETフィルム(DIAFOIL T100E125、三菱樹脂株式会社製)を使用した。
比較例2の細胞付着用シートに対して、実施例1の細胞付着用シートと同様の評価を実施した。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】
【0080】
実施例1の細胞付着用シートは、血小板の付着が少なく、且つ、腫瘍細胞の付着が多かった。すなわち、抗血栓性に優れ、且つ、腫瘍細胞付着性に優れていることが明らかとなった。また、実施例1の腫瘍細胞付着性の評価結果から、実施例1の細胞付着用シートは、特にMCF-7(ヒト由来乳腺良性腫瘍細胞株)に対して、良好な腫瘍細胞付着性を示すことが確認された。
【0081】
一方、比較例の細胞付着用シートは、所望の要求を満たしていなかった。