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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】注出部材、およびそれを用いた収納容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
B65D33/38 ZAB
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019219172
(22)【出願日】2019-12-03
(65)【公開番号】P2021088382
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(74)【代理人】
【識別番号】100126170
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 義之
(72)【発明者】
【氏名】平田 陽
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 真一郎
【審査官】長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188189(JP,A)
【文献】特開平11-148017(JP,A)
【文献】特開2019-026335(JP,A)
【文献】登録実用新案第3089066(JP,U)
【文献】特開2004-322522(JP,A)
【文献】特開2018-024436(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状物、半固形物、粉状物、粒状物を収納するための合成樹脂製の収納袋の端部に装着される合成樹脂製の注出部材であって、
収納袋に融着させるための融着面を有する融着部と、収納袋内の収納物を注出するための上端際にネジ山を外側に突出するように設けた筒状の注出部と、前記注出部の上端際のネジ山に螺着可能な蓋体とを有しており、
前記融着部が、前記筒状の注出部と一体的に形成された菱形状の基板の上部に、その基板と平面形状を同じくする扁平な四角柱状の厚肉体を、前記筒状の注出部を貫通させた状態となるように積層して融着したものであるとともに、
前記基板および前記注出部が、植物由来材の粒子を添加していない合成樹脂によって形成された植物非含有樹脂製部品であり、
前記厚肉体が、植物由来材の粒子を添加した合成樹脂によって形成された植物含有樹脂製部品であり、かつ、
前記植物含有樹脂製部品である厚肉体が、収納袋に収納された収納物と接触しないように設けられていることを特徴とする注出部材。
【請求項2】
前記蓋体が、円板状の中蓋と、その中蓋を覆う被覆体とによって形成されているとともに、
前記中蓋が、前記植物非含有樹脂製部品であり、
前記被覆体が、前記植物含有樹脂製部品であることを特徴とする請求項1に記載の注出部材。
【請求項3】
液状物、半固形物、粉状物、粒状物を収納するための合成樹脂製の収納袋の端部に装着される合成樹脂製の注出部材であって、
収納袋に融着させるための融着面を有する融着部と、収納袋内の収納物を注出するための上端際にネジ山を外側に突出するように設けた筒状の注出部と、前記注出部の上端際のネジ山に螺着可能な蓋体とを有しており、
前記融着部が、前記筒状の注出部と一体的に形成された菱形状の基板の下部に、その基板と平面形状を同じくする厚肉体を、前記筒状の注出部を貫通させた状態となるように積層して融着したものであるとともに、
前記基板および前記注出部が、植物由来材の粒子を添加していない合成樹脂によって形成された植物非含有樹脂製部品であり、
前記厚肉体が、植物由来材の粒子を添加した合成樹脂によって形成された植物含有樹脂製部品であり、かつ、
前記植物含有樹脂製部品である厚肉体が、表面に露出しないように設けられていることを特徴とする注出部材。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載された注出部材が、合成樹脂製の収納袋の端部に装着されていることを特徴とする収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の液状物、半固形物、粉状物、粒状物を収納するための合成樹脂製で注出部材付きの収納容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種の液状物、半固形物、粉状物、粒状物等を収納するための容器として、容器本体の端部中央に注出部材(所謂、スパウト)を設けた合成樹脂製の収納容器が用いられている。たとえば、食品、液体洗剤、医療用薬液等を収納するための収納容器として、特許文献1の如く、内側にシーラント層を設けたプラスチックフィルムからなる収納袋(スタンディングパウチ)の端部である上部の中央に、内容物を注ぎ出すためのプラスチック製の注出部材(スパウト)を熱溶着してなるスパウト付きパウチが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-24436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の如き従来の注出部材(スパウト)付きの収納容器は、高い体積比率を占める注出部材が合成樹脂によって一体的に形成されたものであるため、廃棄後の燃焼時に多くのCOを排出させるので、廃棄時の環境負荷が大きい、という不具合がある。
【0005】
本発明の目的は、上記従来の収納容器が有する問題点を解消し、廃棄後の燃焼時の環境負荷が小さい注出部材、およびそれを用いた収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、液状物、半固形物、粉状物、粒状物を収納するための合成樹脂製の収納袋の端部に装着される合成樹脂製の注出部材であって、収納袋に融着させるための融着面を有する融着部と、収納袋内の収納物を注出するための上端際にネジ山を外側に突出するように設けた筒状の注出部と、前記注出部の上端際のネジ山に螺着可能な蓋体とを有しており、前記融着部が、前記筒状の注出部と一体的に形成された菱形状の基板の上部に、その基板と平面形状を同じくする扁平な四角柱状(すなわち、菱餅状あるいは舟形状)の厚肉体を、前記筒状の注出部を貫通させた状態となるように積層して融着したものであるとともに、前記基板が、植物由来材の粒子を添加していない合成樹脂によって形成された植物非含有樹脂製部品であり、前記厚肉体が、植物由来材の粒子を添加した合成樹脂によって形成された植物含有樹脂製部品であり、かつ、前記植物含有樹脂製部品である厚肉体が、収納袋に収納された収納物と接触しないように設けられていることを特徴とするものである。なお、植物由来材とは、各種の木質材、竹、竹炭、食品残渣からなるセルロース、あるいはそれらの混合物のことである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、液状物、半固形物、粉状物、粒状物を収納するための合成樹脂製の収納袋の端部に装着される合成樹脂製の注出部材であって、収納袋に融着させるための融着面を有する融着部と、収納袋内の収納物を注出するための上端際にネジ山を外側に突出するように設けた筒状の注出部と、前記注出部の上端際のネジ山に螺着可能な蓋体とを有しており、前記融着部が、前記筒状の注出部と一体的に形成された菱形状の基板の下部に、その基板と平面形状を同じくする厚肉体を、前記筒状の注出部を貫通させた状態となるように積層して融着したものであるとともに、前記基板が、植物由来材の粒子を添加していない合成樹脂によって形成された植物非含有樹脂製部品であり、前記厚肉体が、植物由来材の粒子を添加した合成樹脂によって形成された植物含有樹脂製部品であり、かつ、前記植物含有樹脂製部品である厚肉体が、表面に露出しないように設けられていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記蓋体が、円板状の中蓋と、その中蓋を覆う被覆体とによって形成されているとともに、前記中蓋が、前記植物非含有樹脂製部品であり、前記被覆体が、前記植物含有樹脂製部品であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1~3のいずれかに記載された注出部材が、合成樹脂製の収納袋の端部に装着されていることを特徴とする収納容器である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る注出部材は、植物含有樹脂製部品と植物非含有樹脂製部品とを固着してなるものであるので、一部(植物含有樹脂製部品に含まれる植物由来材)がカーボンニュートラルな性質(燃やしても大気中のCOの増減に影響を与えない性質)を有しているため、廃棄後の燃焼時の環境負荷がきわめて小さい。その上、植物性の廃材等を利用して安価に製造することができる。
【0014】
請求項1に係る注出部材は、収納された液体等の物質が植物含有樹脂製部品と接触することがないため、植物含有樹脂製部品が腐敗したり、植物含有樹脂製部品中の植物由来材の成分が収納された物質中に混入したりする事態が生じない。
【0015】
請求項3に係る注出部材は、湿度の高い環境や浴室等の水分を浴びる環境の下でも、外部の水分が植物含有樹脂製部品と接触することがないので、優れた耐水性を発揮することができる上、外部の水分の影響によって植物含有樹脂製部品が腐敗したり、黴びたりする事態が生じない。
【0016】
請求項1に係る注出部材は、シンプルな構成によって収納された物質と植物含有樹脂製部品との接触を確実に回避して、植物含有樹脂製部品の腐敗や、植物含有樹脂製部品中の植物由来材の成分の収納物質中への混入をきわめて高い精度で防止することができる。
【0017】
請求項3に係る注出部材は、シンプルな構成によって外部の水分と植物含有樹脂製部品との接触を確実に回避して、きわめて良好な耐水性を発揮することができる上、外部の水分の影響による植物含有樹脂製部品の腐敗や黴びの発生をきわめて高い精度で防止することができる。
【0018】
請求項2に記載された注出部材によれば、蓋体の被覆体を、注出部材本体の外部に露出した植物含有樹脂製部品と同一の材料(植物含有樹脂)で形成することによって、植物含有樹脂と収納された物質との非接触状態を保ちながら、被覆体と注出部材本体の植物含有樹脂製部品とが一体となった高いレベルの木質感を醸し出させることが可能となる。
【0019】
請求項4に係る収納容器は、注出部材の一部がカーボンニュートラルな性質を有しているため、廃棄後の燃焼時の環境負荷がきわめて小さい上、植物性の廃材等を利用して安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第一実施形態の注出部材を示す説明図(斜視図)である。
図2】第一実施形態の注出部材を示す説明図(鉛直断面図)である(aは蓋体を装着した状態を示したものであり、bは蓋体を取り外した状態を示したものである)。
図3】第一実施形態の収納容器(スタンディングパウチ)を示す説明図である(aは正面図であり、bは平面図である)。
図4】第二実施形態の注出部材を示す説明図(鉛直断面図)である(aは蓋体を装着した状態を示したものであり、bは蓋体を取り外した状態を示したものである)。
図5】第三実施形態の注出部材を示す説明図(鉛直断面図)である。
図6】注出部材の変更例を示す説明図(鉛直断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る注出部材は、植物由来材の粒子を添加した合成樹脂(すなわち、植物含有樹脂)によって形成された植物含有樹脂製部品と、植物由来材の粒子を添加していない合成樹脂(すなわち、植物非含有樹脂)によって形成された植物非含有樹脂製部品とが固着されていることを特徴とするものである。植物含有樹脂あるいは植物非含有樹脂に用いる合成樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリル、ポリオレフィン等を用いることができるが、それら合成樹脂の中でも、ポリオレフィンを用いると、製造が容易なものとなる上、廃棄時の環境負荷が小さくなるので好ましい。そのようなポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等の低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンを、単独で、あるいは、それらの内の2種以上を混合して用いることができる。加えて、植物含有樹脂に用いる合成樹脂として、LLDPEを用いると、合成樹脂と植物由来材の粒子との馴染み(親和性)が良好なものとなり、植物含有樹脂製部品の内部にボイドやクラックがきわめて形成されにくくなるので好ましい。
【0022】
また、植物含有樹脂中に含有させる(充填する)植物由来材の粒子としては、木質材、竹、竹炭、食品残渣からなるセルロース、あるいはそれらの混合物を粒子状に粉砕したものを好適に用いることができる。また、植物由来材として木質材を利用する場合には、スギ、ヒノキ、パイン(松)、スプルース等の針葉樹や、ローズウッド、カリン、チーク、マホガニー、ウォールナット、ナラ(オーク)、ブナ、タモ、キリ、サクラ、ラワン、カバ等の広葉樹、あるいはそれらを混合したものを好適に用いることができる。そのような植物由来材の粒子の中でも、スギを粒子状に粉砕したものを用いると、合成樹脂中での植物由来材の粒子の分散性がきわめて良好なものとなり、均一に分散しやすくなるので好ましい。
【0023】
加えて、上述した植物由来材の粒子の大きさは、特に限定されないが、粒子径の最大径が10~500μmであると、合成樹脂と混ざりやすくなり、植物含有樹脂製部品を成形した際に、斑のない均一な物性を有する植物含有樹脂製部品が得られるので好ましく、粒子径が20~100μmであるとより好ましく、40~60μmであると特に好ましい。なお、粒子の最大径は、数平均径として、顕微鏡の画像解析により得ることができ、粒子100点の直径(粒子が円形でない場合には粒子径の長さが最も長くなる径)の平均値を採用することができる。また、植物由来材の粒子として、表面をアセチル化処理(アセチレンによる処理等)した粒子を用いると、合成樹脂中での分散性が一段と良好なものとなるので好ましい。さらに、植物由来材の粒子として針状のものを用いると、植物含有樹脂製部品の強度が良好なものとなるので特に好ましい。
【0024】
また、本発明において植物由来材の粒子は、合成樹脂に対して、1~70質量%の割合で添加すると好ましい。植物由来材の粒子の添加量が1質量%未満であると、成形された植物含有樹脂製部品、注出部材および収納容器を廃棄する際の環境負荷が大きくなるので好ましくない。反対に、植物由来材の粒子の添加量が70質量%を上回ると、合成樹脂と混ざりにくくなって成形しにくくなる上、合成樹脂本来の特性が発現されにくくなるので好ましくない。植物由来材の粒子の含有量は、10質量%以上60質量%以下が好ましく、20質量%以上50質量%以下であると特に好ましい。
【0025】
さらに、植物含有樹脂中には、植物由来材の粒子とともに、相溶化剤を添加することも可能である。かかる相溶化剤としては、ワックス成分、界面活性剤、酸変性樹脂組成物、脂肪族エステル化合物、多価アルコールエステル、フマル酸、マレイン酸、クエン酸、ステアリン酸、ポリアルキレングリコール等を好適に用いることができる。加えて、それらの相溶化剤の中でも、酸変性樹脂組成物を用いるのがより好ましく、酸変性ポリオレフィン(マレイン酸変性ポリエチレンやマレイン酸変性ポリプロピレン等)を用いるのが特に好ましい。そのように相溶化剤を添加することによって、植物含有樹脂中での植物由来材の粒子の分散性が一段と良好なものとなる。さらに、相溶化剤を添加する際には、相溶化剤の添加量を、0.1~30重量%に調整すると、合成樹脂と植物由来材の粒子との親和性が良好なものとなり、植物含有樹脂製部品の内部にボイドやクラックが形成されにくくなるので好ましい。加えて、植物含有樹脂中には、必要に応じて防カビ剤を添加することも可能である。
【0026】
また、本発明に係る注出部材は、収納袋に融着させるための融着面を有する融着部と、収納袋内の収納物を注出するための筒状の注出部とを有するものであれば、その形状・構造は特に限定されず、種々の形状・構造を有するものとすることができる。加えて、本発明に係る注出部材は、本体(注出口形成体)と蓋体(キャップ)とが別々に成形された2ピースタイプのものでも良いし、本体と蓋体とが薄肉部を介して一体的に成形された1ピースタイプのものでも良い。
【0027】
一方、本発明に係る注出部材を装着して得られる収納容器としては、パウチ(スタンディングパウチ)、左右のサイドや下部に折り込みを設けたガゼット袋や三方袋等を挙げることができる。また、収納容器の注出部材を除いた袋本体(収納袋)の形成材料としては、ポリエステルフィルム、ナイロンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のベースフィルムに、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等の熱接着性フィルムを積層したラミネートフィルム等を好適に用いることができる。また、そのようなラミネートフィルムの中間にポリエステルフィルムやナイロンフィルム等を挟み込んだ3層以上のラミネートフィルムも好適に用いることができる。
【実施例
【0028】
以下、本発明に係る注出部材および収納容器について、実施例によって詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例の態様に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更することが可能である。
【0029】
[第一実施形態]
<注出部材の構造>
図1,2は、第一実施形態の注出部材を示したものであり、注出部材1は、収納袋の上端に固着された状態で注出口を形成するための注出口形成体(注出部材本体)2と、その注出口形成体2の上端に固着される蓋体3とによって構成されている。注出口形成体2は、植物由来材を含有していない直鎖状低密度ポリエチレン(すなわち、植物非含有樹脂)によって形成された植物非含有樹脂製部品である支持体4と、下記の植物含有樹脂Aによって形成された植物含有樹脂製部品である厚肉体5とを有している。
[植物含有樹脂Aの組成]
・直鎖状低密度ポリエチレン 77重量部
・木質材(スギを乾燥させたもの)を粉砕してなる粒子 20質量部
・マレイン酸変性ポリプロピレン(相溶加剤) 2.5重量部
【0030】
また、注出口形成体2は、先に支持体4を射出成形によって形成した後に、その支持体4がセットされた金型内に、植物含有樹脂を射出して厚肉体5を形成する、所謂インサート成形法によって形成されたものである。したがって、注出口形成体2においては、支持体4と厚肉体5とが融着し合った状態になっている。
【0031】
支持体4は、所定の大きさ(左右幅×前後の奥行き=40mm×18mm)で所定の厚さ(約1.0mm)を有する菱形状の基板4aの中央に、所定の径(内径=10mm、外径=12mm)および所定の高さ(約30mm)を有する円筒状の注出筒(注出部)4bが一体的に設けられている。そして、注出筒4bの上端際の外周には、蓋体3を螺着するためのネジ山4cが外側に突出するように設けられており、そのネジ山4cの下側には、蓋体3の下端縁と接合する一定幅のリング状のフランジ4dが形成されている。
【0032】
一方、厚肉体5は、平面形状が支持体4の基板4aと同一であり、一定の厚み(高さ=9.0mm)を有する扁平な四角柱状(菱餅の如き形状)に形成されている。そして、中央に形成された貫通孔5aに、支持体4の注出筒4bを貫通させた状態になっている。
【0033】
また、蓋体3は、植物由来材を含有していない直鎖状低密度ポリエチレンによって形成されている。そして、所定の径(内径=13mm、外径=14mm)および所定の高さ(約15mm)を有する円筒状の筒状部3aの上部に、円形の天板3bが一体的に設けられている。また、筒状部3aの内周面には、注出口形成体2の支持体4のネジ山4cと螺合させるネジ山3cが内側に突出するように設けられており、筒状部3aの外周面には、蓋体3を回転し易くするための多数の鉛直な滑り止め溝が設けられている。
【0034】
<収納容器の構造>
図3は、上記した注出部材1が装着された収納容器の一例であるパウチ(スタンディングパウチ)を示したものであり、パウチ7の袋本体Pは、合成樹脂製のベースフィルム(たとえば、二軸延伸ナイロンフィルム)の上に合成樹脂製の熱接着性フィルム(たとえば、直鎖状低密度ポリエチレンフィルム)を積層してなる2枚の胴材8,8を、それぞれの熱接着性フィルムが内側になるように重ね合わせて周囲(左右の側部および下部)をヒートシールすることによって(ヒートシール部H)、縦長な矩形の袋状に形成されている。また、袋本体Pの下部には、表裏の胴材8,8と同じ積層フィルムを熱接着性フィルムが外向きになるように二つ折りしてなる折り込み材9が挟み込まれている。そして、注出部材1は、袋本体Pの端部である中央上部において、表裏の胴材8,8の間に注出口形成体2を挟み込んで、接合する支持体4の基板4aおよび厚肉体5の外周面と胴材8,8の内面とをヒートシールすることによって、袋本体Pに固着されている(すなわち、注出部材1においては、支持体4の基板4aおよび厚肉体5の外周面が融着面として機能し、支持体4および厚肉体5が融着部として機能する)。また、袋本体Pの表裏の胴材8,8の上部は、(注出部材1の熱融着部分を含めて)一定幅の帯状にヒートシールされている。
【0035】
<第一実施形態の注出部材および収納容器の作用・効果>
上記した注出部材1は、一部(注出口形成体2の厚肉体5)がカーボンニュートラルな性質(燃やしても大気中のCOの増減に影響を与えない性質)を有する植物含有樹脂Aによって形成されているため、環境負荷がきわめて小さい上、安価かつ容易に製造することができる。また、単一の(植物由来材を含まない)直鎖状低密度ポリエチレンで形成した注出部材と比較しても遜色ない強度を発現させることができる。
【0036】
また、パウチ7は、化粧品等の物質を収納するための収納部が、植物非含有樹脂によって形成された注出口形成体2の支持体4の注出筒4bの内壁、基板4aの下面、蓋体3の内面、および袋本体Pの胴材8,8の内面によって閉塞されている。したがって、パウチ7によれば、収納された液体が植物含有樹脂によって形成された注出口形成体2の厚肉体5と接触することがないため、収納された液体との接触により厚肉体5に含まれた植物由来材が腐敗したり、厚肉体5に含まれた植物由来材の成分が収納された物質中に混入したりする等の事態が生じない。
【0037】
[第二実施形態]
<注出部材の構造>
図4は、第二実施形態の注出部材11を示したものであり、第二実施形態の注出部材11は、注出口形成体12の厚肉体15の形状・材質および蓋体13の形状・材質が、第一実施形態の注出部材1と異なっている(なお、第二実施形態の注出部材11のその他の構成は、第一実施形態の注出部材1と同様である)。すなわち、第二実施形態の注出部材11の厚肉体15は、下記の植物含有樹脂Bによって形成されている。
[植物含有樹脂Bの組成]
・直鎖状低密度ポリエチレン 57重量部
・木質材(スギを乾燥させたもの)を粉砕してなる粒子 40質量部
・マレイン酸変性ポリプロピレン(相溶加剤) 2.5重量部
【0038】
また、注出部材11の厚肉体15の上面の中央部分(貫入孔15aの周囲)には、外径を支持体14のフランジ11と同じくする円柱状の被覆筒部15bが上方に突出するように設けられており、上端がフランジ14dに接合した状態になっている。
【0039】
一方、蓋体13も、上記した植物含有樹脂Bによって形成されている。蓋体13の本体(筒状部13a)の形状は、第一実施形態の注出部材1の蓋体3の形状と同一であるが、蓋体13の本体の内側の上部には、注出口形成体12の注出筒14bの上端縁に当接させるための中蓋6が接着されている。中蓋6は、植物由来材を含有していない直鎖状低密度ポリエチレンによって一定的に形成されており、円形のベース板6aの下面に、所定の径(外径=9.8mm、内径=8.8mm)で所定の高さ(約2.0mm)を有する扁平な円筒状の液漏れ防止壁6bが下向きに突出するように設けられている。そして、蓋体13が、注出口形成体12に装着された状態においては、その液漏れ防止壁6bの外周面が注出口形成体12の注出筒14bの内周面と当接した状態になっている。
【0040】
<実施形態2の注出部材および収納容器の作用・効果>
上記した注出部材11も、第一実施形態の注出部材1と同様に、一部(注出口形成体12の厚肉体15および蓋体13の本体(筒状部13a))がカーボンニュートラルな性質を有する植物含有樹脂によって形成されているため、環境負荷がきわめて小さい上、安価かつ容易に製造することができる。また、単一の(植物由来材を含まない)直鎖状低密度ポリエチレンで形成した注出部材と比較しても遜色ない強度を発現させることができる。その上、注出部材11は、外部に露出した蓋体13の本体(筒状部13a)と注出口形成体12の厚肉体15とが植物由来材を含有した同一の材料によって形成されているため、両部材が一体となってより高いレベルの木質感を醸し出すことができる。
【0041】
また、第二実施形態の注出部材11が第一実施形態の注出部材1と同様な方法で装着されたパウチ(図示せず)は、化粧品等の物質を収納するための収納部が、植物非含有樹脂によって形成された注出口形成体12の支持体14の注出筒14bの内壁、基板14aの下面、蓋体13の中蓋6の内面、および、袋本体Pの胴材8,8の内面によって閉塞されている。したがって、注出部材11が装着されたパウチによれば、第一実施形態の注出部材1が装着されたパウチ7と同様に、収納された物質との接触により厚肉体15に含まれた植物由来材が腐敗したり、厚肉体15に含まれた植物由来材の成分が収納された物質中に混入したりする等の事態が生じない。
【0042】
[第三実施形態]
<注出部材の構造>
図5は、第三実施形態の注出部材を示したものであり、第三実施形態の注出部材21は、注出口形成体22の形状が、第一実施形態の注出部材1と異なっている(なお、第三実施形態の注出部材21のその他の構成は、第一実施形態の注出部材1と同様である)。すなわち、第三実施形態の注出部材21の支持体24は、所定の大きさ(左右幅×前後の奥行き=40mm×18mm)で所定の厚さ(約1.0mm)を有する菱形状の基板24aが、注出筒24bの中間位置(下端から9.0mm上方)に設けられている、そして、その基板24aの下側において、第一実施形態の注出部材1の厚肉体5と同一形状を有する厚肉体25が、支持体24の注出筒24bを貫通孔25aに貫通させた状態で固着(熱融着)されている。
【0043】
<第三実施形態の注出部材および収納容器の作用・効果>
上記した注出部材21も、第一実施形態の注出部材1等と同様に、一部(注出口形成体22の厚肉体25)がカーボンニュートラルな性質を有する植物含有樹脂によって形成されているため、環境負荷がきわめて小さい上、安価かつ容易に製造することができる。また、単一の(植物由来材を含まない)直鎖状低密度ポリエチレンで形成した注出部材と比較しても遜色ない強度を発現させることができる。
【0044】
また、第三実施形態の注出部材21が第一実施形態の注出部材1と同様な方法で装着されたパウチ(図示せず)は、袋本体Pの上部中央において、注出口形成体22の基板24aの外周が表裏の胴材8,8に熱融着した状態になっており、植物含有樹脂によって形成された厚肉体25が外部から遮断された状態になっている。したがって、注出部材21が装着されたパウチによれば、湿度の高い環境や浴室等の水分を浴びる環境の下でも、外部の水分が植物含有樹脂によって形成された厚肉体25と接触することがないので、優れた耐水性を発揮することができる上、厚肉体25に含まれた植物由来材が腐敗したり、黴びたりする等の事態が生じない。
【0045】
<収納容器の変更例>
本発明に係る注出部材は、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、注出口形成体(支持体、厚肉体)、蓋体の材質、形状、構造、大きさ等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。また、本発明に係る収納容器も、上記した実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、材質、形状、構造、大きさ等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0046】
たとえば、本発明に係る注出部材を、第三実施形態の如く、植物含有樹脂によって形成された部分を外部と遮断したものとする場合には、植物非含有樹脂によって形成された支持体は、注出筒を基板の下側まで延長させたものに限定されず、図6の如く、基板34aの下側まで延長した注出筒34bを厚肉体35によって代替したもの(すなわち、厚肉体35の貫通孔35aが、収納容器内に収納された液体を外部へ排出するための排出路の一部として機能するもの)に変更することも可能である。そのような構成を採用した場合でも、第三実施形態のパウチと同様に、外部の水分が植物含有樹脂によって形成された厚肉体と接触することがないため、優れた耐水性を発揮することができる上、厚肉体に含まれた植物由来材が腐敗したり、黴びたりする等の事態が生じない。
【0047】
また、本発明に係る注出部材は、上記した各実施形態の如く、融着部が単純な舟形状あるいは菱餅状であるものに限定されず、注出口形成体の支持体および/または厚肉体の左右に、薄板状の融着補助片を左右方向に突出するように設けたものや、厚肉体の外周面(側面)に体積を低減させるための凹部を形成したもの等でも良い。さらに、本発明に係る抽出部材は、取り付ける収納袋をスタンディングパウチとする際には、中央上部や斜め上部に、1つまたは複数個を取り付けることができる。加えて、本発明に係る抽出部材は、スタンディングパウチのみならず自立して立たないパウチの端部に取り付けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る注出部材は、上記の如く優れた効果を奏するものであるので、食品、薬品や化粧品をはじめとする各種の物質の収納容器において内容物の注出口を形成するための部材として好適に用いることができる。また、本発明に係る収納容器は、液状物、半固形物、粉状物、粒状物等の各種の物質を収納するための容器として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,11,21,31・・注出部材
2,12,22,32・・注出口形成体
3,13,23,33・・蓋体
4,14,24,34・・支持体(植物含有樹脂製部品)
4a,14a,24a,34a・・基板
4b,14b,24b,34b・・注出筒(注出部)
5,15,25,35・・支持体(植物含有樹脂製部品)
5a,15a,25a,35a・・厚肉体
6・・中蓋
7・・パウチ(収納部材)
8,8・・胴材
P・・袋本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6