(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】レーザー加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/16 20060101AFI20240207BHJP
B23K 26/70 20140101ALI20240207BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B23K26/16
B23K26/70
H01L21/78 B
(21)【出願番号】P 2020020767
(22)【出願日】2020-02-10
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 幸容
(72)【発明者】
【氏名】北住 祐一
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-503904(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143457(JP,U)
【文献】特開2018-192478(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126405(US,A1)
【文献】特開2017-100170(JP,A)
【文献】特開2016-16438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物の表面にレーザービームを照射してアブレーション加工によりレーザー加工溝を形成するための集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、
該集光器と該被加工物との間の空間に配設され、該レーザービームが被加工物に照射されることによって加工点付近に発生するデブリを吸引して排出するデブリ排出ユニットと、を備えたレーザー加工装置であって、
該デブリ排出ユニットは、
集塵ユニットと、
該集塵ユニットに接続された吸引源と、を含み、
該集塵ユニットは、
レーザービームの通過を許容する透過部を備え、被加工物に隣接する第一の辺と、離反する第二の辺とを有する傾斜部と、
該第二の辺に連結する天井部と、
該透過部と対応する位置にレーザービームの通過を許容する開口を備え、該第一の辺に連結する底壁と、
該天井部および該傾斜部から該底壁へと垂下する側壁と、
を有
し、
該デブリ排出ユニットは、
該開口の近傍に噴出口を有し、
該噴出口から被加工物の表面に向けて気体を噴出することで、
加工点付近に発生するデブリを該集塵ユニットへと吹き飛ばすアシストガス噴出ユニットを更に含み、
該アシストガス噴出ユニットは、該傾斜部の傾斜と直交する角度±10度以内の角度に設定されることを特徴とするレーザー加工装置。
【請求項2】
該傾斜部の傾斜は、20度以上40度以下であることを特徴とする、請求項1に記載のレーザー加工装置。
【請求項3】
該集塵ユニットは、該吸引源から加工点に向かうにつれて漸次縮径する縮径部を有することを特徴とする、請求項1
または請求項2に記載のレーザー加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザー加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハのような被加工物に対してレーザービームを照射し、被加工物をアブレーションさせて加工溝を形成することにより分割するレーザー加工方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなレーザー加工方法では、被加工物をレーザー加工する際にプラズマやデブリと呼ばれる微細な粉塵が発生する。このようなプラズマやデブリが加工点近傍に存在すると、レーザービームと相互作用を起こしてしまい加工結果に悪影響を及ぼすという問題が存在している。特許文献1では、この問題を解決するために、レーザー加工時に発生するデブリ等を集塵して被加工物上から除去できる集塵ユニットを備えた構成が提案されている。しかしながら、特許文献1で提案されている構成の集塵ユニットでは、プラズマやデブリがレーザービームを取り巻くようにその周囲全体から吸引されるため、吸引される過程でプラズマやデブリがレーザービームを横断してしまい、レーザービームとの相互作用を完全に無くすことは困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工時に発生するデブリやプラズマがレーザービームと相互作用することを抑制できるレーザー加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のレーザー加工装置は、板状の被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物の表面にレーザービームを照射してアブレーション加工によりレーザー加工溝を形成するための集光器を備えたレーザービーム照射ユニットと、該集光器と該被加工物との間の空間に配設され、該レーザービームが被加工物に照射されることによって加工点付近に発生するデブリを吸引して排出するデブリ排出ユニットと、を備えたレーザー加工装置であって、該デブリ排出ユニットは、集塵ユニットと、該集塵ユニットに接続された吸引源と、を含み、該集塵ユニットは、レーザービームの通過を許容する透過部を備え、被加工物に隣接する第一の辺と、離反する第二の辺とを有する傾斜部と、該第二の辺に連結する天井部と、該透過部と対応する位置にレーザービームの通過を許容する開口を備え、該第一の辺に連結する底壁と、該天井部および該傾斜部から該底壁へと垂下する側壁と、を有し、該デブリ排出ユニットは、該開口の近傍に噴出口を有し、該噴出口から被加工物の表面に向けて気体を噴出することで、加工点付近に発生するデブリを該集塵ユニットへと吹き飛ばすアシストガス噴出ユニットを更に含み、該アシストガス噴出ユニットは、該傾斜部の傾斜と直交する角度±10度以内の角度に設定されることを特徴とする。
【0007】
該傾斜部の傾斜は、20度以上40度以下であってもよい。
【0010】
該集塵ユニットは、該吸引源から加工点に向かうにつれて漸次縮径する縮径部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、加工時に発生するデブリやプラズマがレーザービームと相互作用することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1のデブリ排出ユニットを示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のデブリ排出ユニットを示す断面図である。
【
図4】
図4は、
図1のデブリ排出ユニットの作用を示す断面図である。
【
図5】
図5は、変形例1に係るレーザー加工装置の動作を示す上面図である。
【
図6】
図6は、変形例2に係るレーザー加工装置の動作を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0014】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係るレーザー加工装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係るレーザー加工装置1の構成例を示す斜視図である。実施形態1に係るレーザー加工装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と、レーザービーム照射ユニット20と、デブリ排出ユニット30と、を備える。レーザー加工装置1は、チャックテーブル10に保持された板状の被加工物100の表面101に、レーザービーム照射ユニット20によりレーザービーム25(
図3参照)を照射して、アブレーション加工によりレーザー加工溝を形成する装置である。
【0015】
レーザー加工装置1のレーザー加工対象である被加工物100は、例えば、シリコン、サファイア、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハなどのウエーハである。被加工物100は、平坦な表面101の格子状に形成される複数の分割予定ライン102によって区画された領域にデバイス103が形成されている。被加工物100は、表面101の裏側の裏面104に粘着テープ105が貼着され、粘着テープ105の外縁部に環状フレーム106が装着されている。また、本発明では、被加工物100は、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0016】
チャックテーブル10は、保持面11で被加工物100を保持する。チャックテーブル10は、被加工物100を保持する平坦な保持面11が上面に形成されかつ多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から構成された円盤形状の吸着部と、吸着部を上面中央部の窪み部に嵌め込んで固定する枠体とを備えた円盤形状である。保持面11は、水平面であるXY平面に平行に形成されている。チャックテーブル10は、吸着部が、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面11全体で、被加工物100を吸引保持する。
【0017】
チャックテーブル10は、X軸移動ユニット61により水平方向の一方向であるX軸方向に移動自在に設けられている。チャックテーブル10は、Y軸移動ユニット62により水平方向の別の一方向でありX軸方向に直交するY軸方向に移動自在に設けられている。各移動ユニット60(X軸移動ユニット61及びY軸移動ユニット62)は、チャックテーブル10をX軸方向またはY軸方向に移動させることで、レーザービーム照射ユニット20とチャックテーブル10及びチャックテーブル10に保持された被加工物100とを相対的にX軸方向またはY軸方向に移動させる。なお、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、加工送り方向がX軸方向であり、割り出し送り方向がY軸方向である。
【0018】
レーザービーム照射ユニット20は、
図1に示すように、レーザー加工装置1の本体2に固定して設けられている。レーザービーム照射ユニット20は、不図示のレーザー発振ユニットと、集光器22と、を備える。レーザー発振ユニットは、所定の波長のレーザービーム25を発振する。集光器22は、レーザー発振ユニットから発振されたレーザービーム25を集光して、チャックテーブル10に保持された被加工物100に向けて照射する光学素子である。集光器22は、実施形態1では、例えば集光レンズ23(
図3参照)である。
【0019】
レーザービーム照射ユニット20は、レーザー発振ユニットで発振したレーザービーム25を集光器22で集光し、チャックテーブル10に保持された被加工物100の表面101に向けて照射することで、被加工物100の表面101にアブレーション加工によりレーザー加工溝を形成する。
【0020】
レーザー加工装置1は、レーザービーム照射ユニット20によって集光されたレーザービーム25をチャックテーブル10に保持された被加工物100に対して分割予定ライン102に沿って相対的に移動させ、被加工物100の表面101に向けてレーザービーム25を照射することで、分割予定ライン102に沿ってレーザー加工溝を形成する。
【0021】
図2は、
図1のデブリ排出ユニット30を示す斜視図である。
図3は、
図1のデブリ排出ユニット30を示す断面図である。
図4は、
図1のデブリ排出ユニット30の作用を示す断面図である。以下において、
図1、
図2、
図3及び
図4を用いて、実施形態1に係るレーザー加工装置1の構成要素であるデブリ排出ユニット30を説明する。
【0022】
デブリ排出ユニット30は、
図1に示すように、レーザービーム照射ユニット20の下方に、本体2に固定して設けられている。デブリ排出ユニット30は、被加工物100を保持するチャックテーブル10がレーザービーム照射ユニット20の集光器22の下方に配されると、
図3に示すように、レーザービーム照射ユニット20の集光器22と被加工物100との間の空間に配設される。
【0023】
デブリ排出ユニット30は、
図1に示すように、集塵ユニット31と、吸引源32と、ダクト33と、アシストガス噴出ユニット34と、アシストガス供給源35と、を備える。集塵ユニット31は、
図2及び
図3に示すように、概ね長箱型の部材であり、内部に、アブレーション加工の加工点付近に発生するプラズマやデブリと呼ばれる微細な粉塵を集め排出するための空間を形成している。集塵ユニット31は、一方の端部側が、集光器22の下方に配されており、集光器22の下方のレーザービーム25の照射経路に対応する位置に、透過部47と、開口48とが形成されている。集塵ユニット31は、
図3に示すように、一方の端部側には、透過部47の他方の端部側と開口48の他方の端部側との間に、加工点付近に発生するプラズマやデブリを集塵ユニット31の内部に吸引する吸引口31-1が加工点付近に向けて形成されている。集塵ユニット31は、他方の端部側が、本体2に固定されており、吸引口31-2が形成されている。集塵ユニット31の吸引口31-2には、ダクト33が接続されており、ダクト33を介して吸引源32が接続されている。
【0024】
吸引源32は、ダクト33を介して、吸引口31-2から集塵ユニット31の内部を吸引するエアの流れを形成する。ここで、本明細書では、吸引源32が形成する集塵ユニット31の内部におけるエアの流れは、後述するアシストガス噴出ユニット34によりアシストガスが噴出される場合には、噴出されるアシストガスも吸引源32による吸引対象となるため、噴出されるアシストガスの集塵ユニット31の内部における流れも含む。吸引源32は、このエアの流れにより、吸引口31-1から吸引して集塵ユニット31の内部に集められたプラズマやデブリを吸引口31-2からさらに吸引し、排出する。ダクト33は、集塵ユニット31の吸引口31-2と吸引源32とを接続する。
【0025】
集塵ユニット31は、
図2及び
図3に示すように、傾斜部41と、天井部42と、底壁43と、一対の側壁44と、を有する。傾斜部41は、水平方向に対して角度θの傾斜を有する板状部材であり、例えば板金である。傾斜部41の傾斜の角度θは、実施形態1では、20度以上40度以下であり、30度程度であることが好ましい。
【0026】
傾斜部41は、X軸方向に沿って延びる第一の辺45及び第二の辺46と、第一の辺45及び第二の辺46の一端同士及び他端同士を接続する一対の斜辺とにより形成された長方形状に形成されている。
【0027】
第一の辺45は、被加工物100に近接する。ここで、本明細書では、第一の辺45が被加工物100に近接するとは、第一の辺45が第二の辺46よりも被加工物100の表面101に接近していることをいう。第二の辺46は、離反する。ここで、本明細書では、第二の辺46が離反するとは、第二の辺46が第一の辺45よりも被加工物100の表面101から離れていることをいう。実施形態1では、第一の辺45とチャックテーブル10の保持面11との鉛直方向の離間距離は、5mm程度に設定される。
【0028】
傾斜部41は、中央に、レーザービーム25の通過を許容する透過部47が形成されている。透過部47は、実施形態1では、直径が25mm以上30mm以下の略円形の開口である。なお、透過部47は、本発明ではこのような円形の開口に限定されず、レーザービーム25の通過を許容すればどのような形態であってもよく、他には、透光性の板でエアの流れを遮断した窓であっても良い。
【0029】
天井部42は、傾斜部41の第二の辺46に連結して、第二の辺46から吸引口31-2まで水平方向に延びて配設された板状部材であり、例えば板金である。底壁43は、傾斜部41の第一の辺45に連結して、第一の辺45から吸引口31-2まで水平方向に延びて配設された板状部材であり、例えば板金である。天井部42と底壁43とは、互いに平行であり、被加工物100の表面101と平行に配設される。天井部42と底壁43とは、集塵ユニット31の内部空間の天井面及び底面をそれぞれ規定する。
【0030】
底壁43とチャックテーブル10の保持面11との鉛直方向の離間距離は、第一の辺45とチャックテーブル10の保持面11との鉛直方向の離間距離と同じであり、実施形態1では、5mm程度に設定される。
【0031】
底壁43は、集光器22の下方のレーザービーム25の照射経路に対応する位置に、レーザービーム25の通過を許容する開口48が形成されている。傾斜部41に形成されている透過部47と、底壁43に形成されている開口48とは、互いに概ね上下方向に対向しており、共にレーザービーム25の通過を許容する。開口48は、実施形態1では、20mm以上30mm以下の略正方形状または略長方形状である。なお、開口48は、本発明ではこのような略正方形状や略長方形状に限定されず、レーザービーム25の通過を許容し、なおかつ、レーザービーム25が照射される被加工物100上の領域である加工点付近に発生するプラズマやデブリの通過を許容すればどのような形状であっても良い。
【0032】
一対の側壁44は、傾斜部41及び天井部42から底壁43へと垂下して鉛直方向に沿って配設された板状部材であり、例えば板金である。一対の側壁44は、集塵ユニット31の内部空間の水平方向の幅を規定する。
【0033】
集塵ユニット31は、集塵ユニット31を細くすることで、吸引源32によって形成されるエアの流れを速めることができる。ここで、本明細書では、集塵ユニット31を細くするとは、集塵ユニット31の内部空間において吸引源32によって形成されるエアの流れに直交する断面積(以下、集塵ユニット断面積と称する)を小さくすることをいう。一方、集塵ユニット31は、集塵ユニット31を太くすることで、集塵ユニット31の内部空間にプラズマやデブリが溜まりにくく、集塵ユニット31の内部空間のプラズマやデブリの詰まりを抑制することができる。ここで、本明細書では、集塵ユニット31を太くするとは、集塵ユニット断面積を大きくすることをいう。このため、集塵ユニット31は、吸引源32によって形成されるエアの流れと、集塵ユニット31の内部空間のプラズマやデブリの溜まり具合とに基づいて、適宜、細くしたり太くしたりされる。
【0034】
集塵ユニット31は、吸引源32から加工点に向かうにつれて漸次縮径する縮径部49を有する。ここで、集塵ユニット31における吸引源32側とは、吸引源32が接続される吸引口31-2が形成された他方の端部側のことである。また、加工点側とは、レーザービーム25の照射経路に対応する透過部47及び開口48が形成され、吸引口31-1が形成された一方の端部側のことである。そして、吸引源32から加工点に向かうにつれて漸次縮径するとは、集塵ユニット断面積が、他方の端部側から一方の端部側に向かうに従って徐々に減少していることをいう。縮径部49では、他方の端部側から一方の端部側に向かうに従って、天井部42及び底壁43の幅と、一対の側壁44の互いの離間幅とが、いずれも、徐々に幅が細くなることで、集塵ユニット断面積が徐々に減少している。なお、縮径部49は、この形態に限定されず、他方の端部側から一方の端部側に向かうに従って、天井部42と底壁43との離間距離を徐々に小さくすることで、集塵ユニット断面積を徐々に減少させてもよい。集塵ユニット31は、このように縮径部49を設けることで、エアの流れを速めることと、集塵ユニット31の内部空間のプラズマやデブリの詰まりを抑制することとの両方を、バランスよく好適に実現することができる。
【0035】
アシストガス噴出ユニット34は、
図2及び
図3に示すように、概ね長筒状の部材であり、軸筒方向の一方側の端部にアシストガス供給源35が接続され、軸筒方向の他方側の端部に、アシストガス供給源35から供給された気体(アシストガス)を軸筒方向に沿って噴出する噴出口51が形成されている。アシストガス噴出ユニット34は、実施形態1では、内径が1mm以上2mm以下のノズルである。
【0036】
アシストガス噴出ユニット34の軸筒方向は、アシストガス噴出ユニット34の噴出口51の方向であり、アシストガス噴出ユニット34によるアシストガスの噴出方向である。アシストガス噴出ユニット34の噴出口51は、開口48の近傍に設けられており、実施形態1では、開口48における集塵ユニット31の一方の端部側の領域、すなわち、開口48における第一の辺45側の端部の領域に設けられている。アシストガス噴出ユニット34は、アシストガス供給源35からのアシストガスを噴出口51からチャックテーブル10上の被加工物100の表面101に向けて噴出することで、加工点付近に発生するプラズマやデブリを集塵ユニット31の吸引口31-1内に向けて吹き飛ばす。Z軸方向の上方から見た平面視において、集塵ユニット31の吸引口31-1と、アシストガス噴出ユニット34の噴出口51とは、互いの間に透過部47及び開口48を位置付ける配置である。
【0037】
アシストガス噴出ユニット34は、傾斜部41の上面側から、傾斜部41における透過部47よりも第一の辺45側の領域を貫通して配設されている。アシストガス噴出ユニット34は、実施形態1では、傾斜部41の傾斜と直交する角度±10度以内の角度に設定される。ここで、本明細書では、アシストガス噴出ユニット34が傾斜部41の傾斜と直交する角度±10度以内の角度に設定されるとは、アシストガス噴出ユニット34の軸筒方向と、傾斜部41の傾斜面との間の
図3に示す角度Φが、90度±10度、すなわち80度以上100度以下に設定されることをいう。なお、前述の傾斜部41の傾斜の角度θの水平方向に対する傾斜方向と、アシストガス噴出ユニット34の軸筒方向の傾斜の角度Φの傾斜部41の傾斜面に対する傾斜方向とは、実施形態1では、同じ方向であり、
図3に示すように、角度θと角度Φとが同一平面内で描かれる。
【0038】
以上のような構成を有する実施形態1に係るレーザー加工装置1の動作について、以下に説明する。レーザー加工装置1は、レーザービーム照射ユニット20によりチャックテーブル10上の被加工物100の表面101に向けてレーザービーム25を照射することでレーザー加工溝を形成する。レーザー加工装置1は、レーザービーム25を照射しながら、さらに、デブリ排出ユニット30のアシストガス噴出ユニット34によりアシストガスを噴出口51から被加工物100の表面101に向けて噴出するとともに、デブリ排出ユニット30の吸引源32により集塵ユニット31の内部を吸引口31-1から吸引口31-2への方向に吸引するエアの流れを形成する。
【0039】
図4は、レーザー加工装置1において、アシストガス噴出ユニット34によりアシストガスを噴出口51から被加工物100の表面101に向けて噴出するとともに、吸引源32により集塵ユニット31の内部を吸引口31-1から吸引口31-2への方向に吸引したときの、エアの流れを、複数の矢印と濃淡により模式的に示したものである。
図4において、矢印の方向は、その矢印のある領域におけるエアの流れの方向を表しており、矢印の大きさは、その矢印のある領域におけるエアの流れの大きさ(速さ)を表しており、濃い領域は、エアの流れが大きい領域を表しており、薄い領域は、エアの流れが小さい領域を表している。レーザー加工装置1は、このようなアシストガス噴出ユニット34によるアシストガスの噴出と吸引源32による吸引とを行うと、
図4に示すように、アシストガス噴出ユニット34の噴出口51から噴出されたアシストガスが、被加工物100の表面101に衝突し、透過部47及び開口48の内部を含むレーザービーム25による加工点付近の空間のプラズマやデブリを含む空気を集塵ユニット31の一方の端部側から巻き込んで、被加工物100の表面101より少し高い位置にある集塵ユニット31の内部に集塵ユニット31の他方の端部側に向けて吸引されるというエアの流れが形成される。
【0040】
以上のような構成を有する実施形態1に係るレーザー加工装置1は、集光器22と被加工物100との間の空間に配設され、レーザービーム25が被加工物100に照射されることによって加工点付近に発生するプラズマやデブリを吸引して排出するデブリ排出ユニット30を備える。そして、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、デブリ排出ユニット30が、集塵ユニット31と、集塵ユニット31に接続された吸引源32と、を含み、集塵ユニット31が、傾斜部41と、天井部42と、底壁43と、一対の側壁44と、を有する。このため、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、集塵ユニット31の傾斜部41の傾斜により、加工点で生成するプラズマやデブリが上方向へ飛散するのを抑制し、水平方向(集塵ユニット31の他方の端部側の方向)へと流れるように制御することができる。これにより、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、加工点で生成するプラズマやデブリがレーザービーム25を横断することを抑制して、加工時に発生するデブリやプラズマがレーザービーム25と相互作用することを抑制できるという作用効果を奏する。
【0041】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、傾斜部41の傾斜の角度θが20度以上40度以下である。このため、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、傾斜部41の傾斜が20度以上と十分に大きいので、天井部42と底壁43との鉛直方向の間隔を十分に広く取ることができるため、集塵ユニット31の内部空間にデブリやプラズマを好適に集めて吸引することができるという作用効果を奏する。また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、傾斜部41の傾斜が40度以下と十分に抑えられているので、レーザービーム25の光軸上にデブリやプラズマが舞ってしまう可能性を十分に抑制することができるという作用効果を奏する。
【0042】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、デブリ排出ユニット30がアシストガス噴出ユニット34をさらに含む。このため、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、アシストガスにより、加工点で生成するプラズマやデブリがレーザービーム25を集塵ユニット31の他方の端部側の方向へ吹き飛ばすことができるので、加工時に発生するデブリやプラズマがレーザービーム25と相互作用することをより確実に抑制できるという作用効果を奏する。
【0043】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、アシストガス噴出ユニット34が、該傾斜部41の傾斜と直交する角度±10度以内の角度に設定されている。このため、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、アシストガス噴出ユニット34により被加工物100の表面101に対して傾斜した方向からアシストガスを噴出することができるので、被加工物100の表面101上のアシストガスの水平方向の流速を高速にすることができる。これにより、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、吸引源32によって形成する集塵ユニット31の内部の他方の端部側の方向へのエアの流れの流速をより上げることができるとともに、デブリ排出ユニット30により加工点で生成するプラズマやデブリをより強く水平方向(集塵ユニット31の他方の端部側の方向)に吸引することができる。よって、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、加工時に発生するデブリやプラズマがレーザービーム25と相互作用することをさらに確実に抑制できるという作用効果を奏する。
【0044】
また、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、集塵ユニット31が、吸引源32から加工点に向かうにつれて漸次縮径する縮径部49を有する。このため、実施形態1に係るレーザー加工装置1は、縮径部49により、集塵ユニット31の内部空間のエアの流れを速めることと、集塵ユニット31の内部空間のプラズマやデブリの詰まりを抑制することとの両方を、バランスよく好適に実現することができるという作用効果を奏する。
【0045】
〔変形例1〕
本発明の実施形態1の変形例1に係るレーザー加工装置1を説明する。
図5は、変形例1に係るレーザー加工装置1の動作を示す上面図である。
図5は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
変形例1に係るレーザー加工装置1は、
図5に示すように、加工送り方向であるX軸方向へ移動させるX軸移動ユニット61の移動方向と、平面視における集塵ユニット31の吸引口31-1とアシストガス噴出ユニット34の噴出口51とが対向する方向とが直交している。ここで、X軸移動ユニット61の移動方向は、レーザービーム照射ユニット20と被加工物100との相対的な移動方向である。平面視における集塵ユニット31の吸引口31-1とアシストガス噴出ユニット34の噴出口51とが対向する方向は、アシストガス噴出ユニット34のアシストガスの噴出及び吸引源32のエアの吸引により集塵ユニット31の内部空間に形成するエアの流れの方向301を決定する。このため、変形例1に係るレーザー加工装置1は、レーザービーム照射ユニット20と被加工物100との相対的な移動方向と、エアの流れの方向301とが直交する。
【0047】
変形例1に係るレーザー加工装置1は、X軸移動ユニット61の移動方向と直交する方向301に沿ってエアの流れを形成し、レーザービーム照射ユニット20を分割予定ライン102に沿って相対的に往復移動させて、レーザービーム25を照射することで、複数のレーザー加工痕200(レーザー加工痕200-1,200-2,200-3,200-4)を形成して、分割予定ライン102に沿ってレーザー加工溝を形成する。
【0048】
以上のような構成を有する変形例1に係るレーザー加工装置1は、レーザービーム照射ユニット20の往路においても、レーザービーム照射ユニット20の復路においても、X軸移動ユニット61の移動方向とエアの流れの方向301との間の角度が直交して同じ角度となる。このため、変形例1に係るレーザー加工装置1は、レーザービーム照射ユニット20の往復移動の往路と復路とで均等に、レーザービーム照射ユニット20の相対的な移動の影響を受けることなく、デブリ排出ユニット30により加工点で生成するプラズマやデブリをエアの流れの方向301に従って吸引することができるので、レーザービーム照射ユニット20の往路と復路とで均等なレーザー加工の結果を得ることができるという作用効果を奏する。
【0049】
〔変形例2〕
本発明の実施形態1の変形例2に係るレーザー加工装置1を説明する。
図6は、変形例2に係るレーザー加工装置1の動作を示す上面図である。
図6は、実施形態1及び変形例1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0050】
変形例2に係るレーザー加工装置1は、
図6に示すように、加工送り方向であるX軸方向へ移動させるX軸移動ユニット61の移動方向と、平面視における集塵ユニット31の吸引口31-1とアシストガス噴出ユニット34の噴出口51とが対向する方向とが平行であり、X軸移動ユニット61の移動方向の下流側(前方側)にアシストガス噴出ユニット34の噴出口51が位置し、X軸移動ユニット61の移動方向の上流側(後方側)に集塵ユニット31の吸引口31-1が位置している。このため、変形例2に係るレーザー加工装置1は、レーザービーム照射ユニット20の移動方向の下流側からアシストガス噴出ユニット34によりアシストガスを噴出し、レーザービーム照射ユニット20の移動方向の上流側から吸引源32により吸引することで、レーザービーム照射ユニット20の移動方向の下流側から上流側に向かって集塵ユニット31の内部空間のエアの流れの方向302を形成する。
【0051】
変形例2に係るレーザー加工装置1は、X軸移動ユニット61の移動方向の下流側から上流側に向かってエアの流れを形成し、レーザービーム照射ユニット20を分割予定ライン102に沿って相対的に特定の一方向にのみ移動させて、レーザービーム25を照射することで、複数のレーザー加工痕200を形成して、分割予定ライン102に沿ってレーザー加工溝を形成する。
【0052】
以上のような構成を有する変形例2に係るレーザー加工装置1は、レーザービーム照射ユニット20を相対的に特定の一方向にしか移動させないので、加工点で生成するプラズマやデブリをレーザービーム照射ユニット20の移動方向の下流側から上流側に向かうエアの流れの方向302に従って吸引することで、より効率よくプラズマやデブリを吸引除去することができるため、加工点で生成したプラズマやデブリがレーザービーム25と相互作用することをより低減できるという作用効果を奏する。
【0053】
なお、本発明は上記実施形態、変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0054】
1 レーザー加工装置
10 チャックテーブル
20 レーザービーム照射ユニット
22 集光器
25 レーザービーム
30 デブリ排出ユニット
31 集塵ユニット
32 吸引源
34 アシストガス噴出ユニット
41 傾斜部
42 天井部
43 底壁
44 側壁
45 第一の辺
46 第二の辺
47 透過部
48 開口
49 縮径部
51 噴出口
100 被加工物
101 表面
102 分割予定ライン