(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型感光性ドライフィルム、ポジ型感光性ドライフィルムの製造方法、パターン形成方法、硬化被膜形成方法、層間絶縁膜、表面保護膜、及び電子部品
(51)【国際特許分類】
G03F 7/023 20060101AFI20240207BHJP
C08F 20/26 20060101ALI20240207BHJP
C08F 20/54 20060101ALI20240207BHJP
C08G 69/00 20060101ALI20240207BHJP
C08G 73/08 20060101ALI20240207BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20240207BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240207BHJP
G03F 7/037 20060101ALI20240207BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240207BHJP
G03F 7/32 20060101ALI20240207BHJP
G03F 7/40 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G03F7/023
C08F20/26
C08F20/54
C08G69/00
C08G73/08
C08G73/10
G03F7/004 501
G03F7/004 512
G03F7/037
G03F7/20 521
G03F7/32
G03F7/40
(21)【出願番号】P 2020132426
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 匡史
(72)【発明者】
【氏名】浦野 宏之
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 修
(72)【発明者】
【氏名】竹村 勝也
【審査官】高草木 綾音
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-010066(JP,A)
【文献】特開2008-115263(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031114(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170032(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/084149(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポジ型感光性樹脂組成物であって、
(A)ポリイミド構造
、ポリアミドイミド構造
、及びポリベンゾオキサゾール前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、
(B)下記一般式(2)及び下記一般式(4)で示される構造単位を含む架橋性の高分子化合物と、
(C)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、
を含有するものであることを特徴とするポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
(式中、R
8は、水素原子又はメチル基を示し、X
4はそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R
9は水酸基、エステル基、エーテル基、芳香族炭化水素を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R
10は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、又はR
9と結合して環を形成してもよい。R
11は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R
12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R
9と結合して環を形成してもよい。mは1である。pは0又は1である。0<b2<1.0、0<b4<1.0、0<b2+b4≦1.0である。R
4は、水素原子又はメチル基を示し、X
2はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R
5OH)-である。R
5は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。)
【請求項2】
前記(B)成分が前記一般式(2)及び前記一般式(4)で表される構造単位を含み、且つ前記(A)成分と架橋する基を有した下記一般式(3)で表される構造単位も含む架橋性の高分子化合物であることを特徴とする請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化2】
(式中、R
6は、水素原子又はメチル基を示し、R
7は、オキサゾリン基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、オキセタニル基、エポキシ基を含む基を示し、X
3は-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。pは0又は1である。)
【請求項3】
(D)熱架橋剤を更に含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)成分が、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(D-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(D-2)で示されるグリシジル基を有した窒素原子を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むものであることを特徴とする請求項3に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【化3】
(式中、点線は結合を示し、R
cは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、vは1又は2を表す。)
【請求項5】
前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を1~50質量部含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を0.5~100質量部含有するものであることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項7】
更に、(E)保護アミン化合物、(F)熱酸発生剤、(G)酸化防止剤、(H)シラン化合物のいずれか1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項8】
(1)請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)次いで加熱処理後、フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で前記感光材皮膜を露光する工程、
(3)照射後、アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項9】
膜厚5~200μmである感光性樹脂層が支持フィルム及び保護フィルムで挟まれた構造を有するポジ型感光性ドライフィルムであって、前記感光性樹脂層の形成に用いられる組成物が請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物であることを特徴とするポジ型感光性ドライフィルム。
【請求項10】
(1)請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を支持フィルム上に連続的に塗布し、感光性樹脂層を形成する工程、
(2)前記感光性樹脂層を連続的に乾燥させる工程、
(3)更に、前記感光性樹脂層上に保護フィルムを貼り合わせる工程、
を含むことを特徴とするポジ型感光性ドライフィルムの製造方法。
【請求項11】
(1)請求項9に記載のポジ型感光性ドライフィルムから前記保護フィルムを剥離することにより露出した前記感光性樹脂層を基板に密着させる工程、
(2)前記支持フィルムを介して、もしくは前記支持フィルムを剥離した状態で、フォトマスクを介して前記感光性樹脂層を波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程、
(3)照射後、アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項12】
請求項8又は請求項11に記載のパターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を、温度100~300℃において加熱、後硬化する工程を含むことを特徴とする硬化被膜形成方法。
【請求項13】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物、又は請求項9に記載のポジ型感光性ドライフィルムが硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする層間絶縁膜。
【請求項14】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物、又は請求項9に記載のポジ型感光性ドライフィルムが硬化してなる硬化被膜からなるものであることを特徴とする表面保護膜。
【請求項15】
請求項13に記載の層間絶縁膜又は請求項14に記載の表面保護膜を有するものであることを特徴とする電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型感光性ドライフィルム、該ポジ型感光性ドライフィルムの製造方法、該ポジ型感光性樹脂組成物及びポジ型感光性ドライフィルムを用いたアルカリ水溶液による現像が可能なパターン形成方法、硬化被膜形成方法、層間絶縁膜、表面保護膜、及び電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン、デジタルカメラ、携帯電話等様々な電子機器の小型化や高性能化に伴い、半導体素子においてもさらなる小型化、薄型化及び高密度化への要求が急速に高まっている。これに伴い、半導体素子の層間絶縁膜、表面保護膜にはより優れた電気特性、耐熱性、機械特性等を併せ持つことが求められている。
【0003】
三次元積層といった高密度実装技術において、基板上にパターン形成可能な感光性絶縁材料は、以前からポリイミド膜が保護被膜や絶縁層として活用されており、その絶縁性、機械特性、基板との密着性等が注目され続け、現在においても開発が旺盛である。特に、伝送速度の高速化、デバイスの小型化、薄型化の観点からメリットのあるFan out Wafer Level Package(FO-WLP)構造が着目され、様々なFO-WLP構造が検討されている(非特許文献1)。
【0004】
近年、12インチウェハサイズでの量産がなされているFO-WLPに対し、フィルムを用いた基板への配線形成によって生産性を上げるFan Out Panel Level Package(FO-PLP)での検討が行われている(非特許文献2、非特許文献3)。
【0005】
FO-PLPにおける再配線形成の特徴は、ダイを埋め込んだモールド材表層への配線形成にある。そのため、かかる工程における再配線用の絶縁材料としては、エポキシ樹脂を主成分とするモールド材の耐熱性の観点から、220℃以下の低温硬化が求められている。また、通常FO-PLPでは、片面のみの配線形成が一般的であり、反り抑制も課題の一つである。
【0006】
電気特性および機械特性に優れ、かつ300℃以上の耐熱性を有することから、半導体素子の表面保護膜、層間絶縁膜、回路形成の配線保護絶縁膜としての用途に感光性ポリイミド材料が用いられている。特に、上記課題の改善策として、後硬化温度の低温化を目的にすでにイミド化された溶剤可溶の樹脂を用いた感光性のポリイミドが提案されている(特許文献1)。
【0007】
特許文献1において、アルカリ可溶性の既閉環ポリイミド、キノンジアジド化合物及びメチロール基を有する熱架橋剤を用いたポジ型感光性樹脂組成物が提案されており、解像力に優れる材料ではあるが、低温で硬化した場合の破断伸びの値に改善の余地があった。
【0008】
また、感光性ポリイミドのドライフィルム化においては、溶剤可溶性ポリイミド樹脂に可塑剤として、溶解調整剤を添加したネガ型感光性樹脂組成物(特許文献2)、柔軟鎖を有したジアミン単位を導入したアルカリ可溶性のポリイミドをベース樹脂に、可塑剤として柔軟鎖を有した熱架橋剤を添加したポジ型感光性樹脂組成物(特許文献3)、及びポリイミド樹脂とヒドロキシスチレンベースの架橋性樹脂を混合したものに、可塑剤としてエポキシ樹脂を添加したポジ型感光性樹脂組成物(特許文献4)等が提案されている。
【0009】
特許文献2においては、硬化膜物性や電気特性は優れる材料であるが、パターン形成機構にラジカル重合を採用しており、その光硬化機構上、酸素阻害を受けやすく、微細化の要求に対して改善の余地があった。また、特許文献3、特許文献4においては、硬化温度が250℃、もしくは220℃での硬化膜物性のみの検討であり、低温硬化での硬化膜物性や微細パターンのリソグラフィー性能についての記載がない。
【0010】
また、硬化膜の機械強度改善として、(メタ)アクリル樹脂を添加し、リソグラフィー特性と硬化膜物性の両立が提案されている(特許文献5、特許文献6、特許文献7)。特許文献5において、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂へ架橋性のアクリル樹脂を添加したポジ型感光性樹脂組成物が提案されているが、微細化やパターン形状の検討は不十分であり、感光特性に改善の余地があった。
【0011】
特許文献6、特許文献7において、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びそれらの前駆体から選ばれる1種のポリマーとアクリル樹脂によるポジ型感光性樹脂組成物が提案されており、硬化膜物性や応力は優れる材料であるが、リソグラフィー性能に関する記載がなされていない。
【0012】
このように、今後、チップの高密度化、高集積化に伴い、絶縁保護膜の再配線技術におけるパターンの微細化も益々進むであろうことから、感光性樹脂組成物において、フィルム化可能であり、保護被膜の機械特性、密着性等の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を具現化できる組成物が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】特開2006-313237号公報
【文献】国際公開2016/172092号
【文献】国際公開2016/158150号
【文献】国際公開2017/170032号
【文献】国際公開2013/118680号
【文献】特開2015-129791号公報
【文献】特開2015-200819号公報
【非特許文献】
【0014】
【文献】2015 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers, T46-47
【文献】Proceedings of Electronic System-integration Technology Conference 2010, pp.1-6
【文献】Proceedings of Electronic Components and Technology Conference 2015, pp.1077-1083
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、アルカリ水溶液に可溶で、保護被膜の機械特性、密着性等の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を得ることができ、且つ低温で硬化した場合でも機械特性や基板への密着性が良好であるポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型感光性ドライフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明では、
ポジ型感光性樹脂組成物であって、
(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、
(B)下記一般式(1)で表される構造単位を含み、且つ(A)成分と架橋する基を有する架橋性の高分子化合物と、
(C)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、
を含有するポジ型感光性樹脂組成物を提供する。
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、R
2は(n+1)価の炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~15の芳香族炭化水素基、ベンジル基、又はナフタレンメチル基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。nは1~5の整数である。X
1はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R
3OH)-である。R
3は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。pは0又は1である。)
【0017】
このようなポジ型感光性樹脂組成物であれば、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができ、且つ低温で硬化した場合でも機械特性や基板への密着性が良好になる。更に、リソグラフィー特性を維持したまま、ドライフィルムに可撓性を付与することができる。
【0018】
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、前記(B)成分が下記一般式(2)で表される構造単位を含み、且つ前記(A)成分と架橋する基を有した下記一般式(3)で表される構造単位を含む架橋性の高分子化合物であることが好ましい。
【化2】
(式中、R
4は、水素原子又はメチル基を示し、X
2はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R
5OH)-である。R
5は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。pは0または1である。)
【化3】
(式中、R
6は、水素原子又はメチル基を示し、R
7は、オキサゾリン基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、オキセタニル基、エポキシ基を含む基を示し、X
3は-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。pは0又は1である。)
【0019】
このようなポジ型感光性樹脂組成物であれば、露光部のアルカリ溶解性を調整することが出来、より微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることができる。更に、低温で硬化した場合でも機械特性や基板への密着性が良好になる。
【0020】
また、前記(B)成分が、下記一般式(2)及び下記一般式(4)で示される構造単位を含む架橋性の高分子化合物であることが好ましい。
【化4】
(式中、R
8は、水素原子又はメチル基を示し、X
4はそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R
9は水酸基、エステル基、エーテル基、芳香族炭化水素を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R
10は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基
であり、又はR
9と結合して環を形成してもよい。R
11は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R
12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R
9と結合して環を形成してもよい。mは0又は1である。pは0又は1である。0<b2<1.0、0<b4<1.0、0<
b2+b4≦1.0である。R
4は、水素原子又はメチル基を示し、X
2はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R
5OH)-である。R
5は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。)
【0021】
このような架橋性の高分子化合物であれば、(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂に添加した際、露光/未露光部における優れたアルカリ溶解コントラストによって、微細なパターンを得ることが出来る。また、架橋性に優れる架橋性基が存在するため、(A)のアルカリ可溶性樹脂のフェノール性水酸基と架橋反応し、信頼性試験後の基板との密着性劣化がない。
【0022】
また、(D)熱架橋剤を更に含有することが好ましい。
【0023】
更に、前記(D)成分が、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(D-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(D-2)で示されるグリシジル基を有した窒素原子を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むものであることがより好ましい。
【化5】
(式中、点線は結合を示し、R
cは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、vは1又は2を表す。)
【0024】
(D)成分を添加することによって、露光/未露光部のアルカリ溶解性を調整することが出来る。また、後硬化時に(A)成分や(B)成分と架橋することで、硬化膜の架橋密度を高め、優れた機械強度を得ることが出来る。
【0025】
更に、前記(A)成分100質量部に対し、前記(B)成分を1~50質量部含有することが好ましい。
【0026】
この範囲内であれば、優れたリソグラフィー特性及び硬化膜物性を維持したまま、十分な硬化膜の機械特性、特に、伸度と引張強度を得ることが出来る。
【0027】
更に、前記(A)成分100質量部に対し、前記(D)成分を0.5~100質量部含有することが好ましい。
【0028】
この範囲内であれば、当該ポジ型感光性樹脂組成物をドライフィルム化した際、リソグラフィー特性を維持したまま、フィルムに可撓性を付与することが出来る。
【0029】
更に、(E)保護アミン化合物、(F)熱酸発生剤、(G)酸化防止剤、(H)シラン化合物のいずれか1種以上を含有することが好ましい。
【0030】
(E)成分は、高温硬化時に塩基化合物を生成して、架橋反応の触媒となり、硬化反応を促進することが出来る。(F)成分は、架橋、硬化反応をより一層進行させることで、得られたパターンもしくは被膜の機械的強度、耐薬品性、密着性等をより一層向上させることが出来る。(G)成分は、高湿試験や熱衝撃試験などの信頼性試験時での硬化膜の酸化劣化による物性劣化を抑制することが出来、より好適な硬化皮膜を形成することが出来る。(H)成分は、得られたパターンもしくは被膜の基板への密着性をより一層向上させることが出来る。
【0031】
また、本発明は、(1)上記ポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)次いで加熱処理後、フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で感光材皮膜を露光する工程、
(3)照射後、アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0032】
このようなパターン形成方法であれば、上記ポジ型感光性樹脂組成物を用いることにより、アルカリ水溶液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることが出来る。
【0033】
更に、本発明は、膜厚5~200μmである感光性樹脂層が支持フィルム及び保護フィルムで挟まれた構造を有するポジ型感光性ドライフィルムであって、感光性樹脂層の形成に用いられる組成物が上記のポジ型感光性樹脂組成物であるポジ型感光性ドライフィルムを提供する。
【0034】
このようなポジ型感光性ドライフィルムであれば、アルカリ現像液に可溶であり、微細なパターンを形成可能で高解像度を得ることが出来る。
【0035】
また、本発明は、(1)上記のポジ型感光性樹脂組成物を支持フィルム上に連続的に塗布し、感光性樹脂層を形成する工程、
(2)前記感光性樹脂層を連続的に乾燥させる工程、
(3)更に、前記感光性樹脂層上に保護フィルムを貼り合わせる工程、
を含むポジ型感光性ドライフィルムの製造方法を提供する。
【0036】
このようなポジ型感光性ドライフィルムの製造方法であれば、歩留まり良く、安定して上記ドライフィルムを量産製造することが出来る。
【0037】
更に、本発明は、(1)上記のポジ型感光性ドライフィルムから前記保護フィルムを剥離することにより露出した前記感光性樹脂層を基板に密着させる工程、
(2)前記支持フィルムを介して、もしくは前記支持フィルムを剥離した状態で、フォトマスクを介して前記感光性樹脂層を波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程、
(3)照射後、アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程、
を含むパターン形成方法を提供する。
【0038】
このようなパターン形成方法であれば、気泡や貼りしわなく、上記ポジ型感光性ドライフィルムを基板に貼り付けることが出来、更に、フォトリソグラフィーで微細なパターンを形成することが出来る。
【0039】
また、本発明は、上記パターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を、温度100~300℃において加熱、後硬化する工程を含む硬化被膜形成方法を提供する。
【0040】
このような硬化被膜形成方法であれば、低温で硬化した場合でも機械特性が良好な硬化皮膜(パターン)を形成することが出来る。
【0041】
また、本発明は、上記ポジ型感光性樹脂組成物、又は上記ポジ型感光性ドライフィルムが硬化してなる硬化被膜からなるものである層間絶縁膜を提供する。
【0042】
また、本発明は、上記ポジ型感光性樹脂組成物、又は上記ポジ型感光性ドライフィルムが硬化してなる硬化被膜からなるものである表面保護膜を提供する。
【0043】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物、及びポジ型感光性ドライフィルムが硬化してなる硬化被膜は、基板との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びアルカリ性剥離液等に対する薬品耐性に優れ、それを保護用被膜とした半導体素子の信頼性にも優れるため、電気・電子部品、半導体素子等の保護用被膜(層間絶縁膜あるいは表面保護膜)として好適である。
【0044】
また、本発明は、上記層間絶縁膜又は表面保護膜を有するものである電子部品を提供する。
【0045】
このような保護用被膜(層間絶縁膜又は表面保護膜)は、その耐熱性、薬品耐性、絶縁性から、再配線用途を含む半導体素子用絶縁膜、多層プリント基板用絶縁膜等に有効であり、信頼性に優れた電子部品とすることが出来る。
【発明の効果】
【0046】
以上のように、本発明であれば、アルカリ水溶液に可溶で、保護被膜の機械特性、密着性等の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を得ることができ、且つ低温で硬化した場合でも機械特性や基板への密着性が良好であるポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型感光性ドライフィルムを提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【発明を実施するための形態】
【0048】
上述のように、アルカリ水溶液に可溶で、且つフィルム化可能であり、保護被膜の機械特性、密着性等の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を具現化できる感光性樹脂組成物が求められていた。
【0049】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、(B)下記一般式(1)で表される構造単位を含み、且つ(A)成分と架橋する基を有する架橋性の高分子化合物と、(C)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、を含有するポジ型感光性樹脂組成物はドライフィルム化可能で、且つ低温で硬化した場合においても、保護被膜の機械特性、密着性等の優れた特徴を損なうことなく、高解像度を得ることを見出した。
【化6】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、R
2は(n+1)価の炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~15の芳香族炭化水素基、ベンジル基、又はナフタレンメチル基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。nは1~5の整数である。X
1はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R
3OH)-である。R
3は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、前記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。pは0または1である。)
【0050】
さらに、上記ポジ型感光性樹脂組成物、及びポジ型感光性ドライフィルムを用い、パターン形成、加熱によって得られた保護被膜は優れた機械特性を有し、且つ高温高湿試験後の密着力に優れることを見出した。即ち、上記ポジ型感光性樹脂組成物、及びポジ型感光性ドライフィルムを用いて形成したパターンを有して得られた硬化被膜が、電気、電子部品保護被膜、絶縁保護被膜として優れることを見出して、本発明を完成させた。なお、本明細書においては、電気・電子部品をまとめて「電子部品」ともいう。
【0051】
即ち、本発明は、
ポジ型感光性樹脂組成物であって、
(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、
(B)上記一般式(1)で表される構造単位を含み、且つ(A)成分と架橋する基を有する架橋性の高分子化合物と、
(C)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、を含有するものである。
【0052】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0053】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物について説明する。
【0054】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂と、
(B)下記一般式(1)で表される構造単位を含み、且つ(A)成分と架橋する基を有する架橋性の高分子化合物と、
(C)光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物、を含有する。
【化7】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を示し、R
2は(n+1)価の炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~15の芳香族炭化水素基、ベンジル基、又はナフタレンメチル基であり、上記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。nは1~5の整数である。X
1はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R
3OH)-である。R
3は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、上記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。pは0または1である。)
【0055】
上記ポジ型感光性樹脂組成物は、アルカリ現像可能である。また、上記ポジ型感光性樹脂組成物は、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分以外に、必要に応じて(D)熱架橋剤、(E)保護アミン化合物、(F)熱酸発生剤、(G)酸化防止剤、(H)シラン化合物などを更に含有することができる。以下、これら成分について詳細に説明する。
【0056】
[(A)アルカリ可溶性樹脂]
本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)は、ポリイミド構造、ポリアミド構造、ポリベンゾオキサゾール構造、ポリアミドイミド構造、それらの前駆体構造から選ばれる少なくとも1つ以上の構造が含まれる。上記樹脂(A)は、上記構造が含まれるアルカリ可溶性樹脂であれば特に限定されないが、下記一般式(5)及び/又は(6)で表される構造を含むものであることが好ましい。
【化8】
(式中、X
5は4価の有機基であり、sは0又は1を表し、Zは2価の結合基であり、s=0のとき、式中の2つの芳香環は結合基を介さず直結する。)
【化9】
(式中、X
6は2価の有機基であり、s及びZは上記と同様である。)
【0057】
上記一般式(5)中のX
5は、4価の有機基であるが、4価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂環式脂肪族基又は芳香族基の4価の有機基であり、さらに好ましくは下記式(7)で示される4価の有機基である。また、X
5の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【化10】
(式中、点線は結合を表す。)
【0058】
上記一般式(5)中のsは、0又は1を表し、s=0の場合、上記一般式(5)中の2つの芳香環は2価の結合基Zを介さず直結する。
【0059】
一方、s=1の場合、上記一般式(5)中の2つの芳香環は、2価の結合基Zを介して結合する。Zは、2価の基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂環式脂肪族基又は芳香族基の2価の有機基であり、さらに好ましくは下記式(8)で示される2価の結合基である。また、Zの構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【化11】
(式中、q
1、q
2、及びq
3は、1~6の整数を表し、q
4及びq
5は1~10の整数を表す。点線は結合を表す。)
【0060】
特に、好ましい2価の結合基Zは、下記一般式(9)又は(10)で示される2価の基である。
【化12】
(式中、点線は結合を表す。)
【0061】
上記一般式(5)で示される構造単位としては、上記一般式(5)におけるZが上記式(9)で示される基である場合、下記一般式(5-1)で示される構造単位が好ましく、上記一般式(5)におけるZが上記式(10)で示される基である場合、下記一般式(5-2)で示される構造単位が好ましい。
【化13】
【化14】
(式中、X
5は上記と同様である。)
【0062】
上記一般式(5-1)のように、2価の結合基であるZが上記式(9)で示されるヘキサフルオロプロピレン基であって、フェノール性水酸基のp-位に位置する場合、ヘキサフルオロプロピレン基が電子吸引性の基であることから、上記フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液の現像液に対する溶解性が向上するため、好ましい。
【0063】
同様に、上記一般式(5-2)のように、2価の結合基であるZが上記式(10)で示されるスルホン基であって、フェノール性水酸基のp-位に位置する場合、スルホン基も電子吸引性の基であることから、上記フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液の現像液に対する溶解性が向上するため、好ましい。
【0064】
上記一般式(6)中のX
6は、2価の有機基であり、2価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂肪族鎖長構造もしくは脂環式脂肪族基又は芳香族基の2価の有機基である。さらに好ましくは下記式(11)で示される2価の有機基である。また、X
6の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【化15】
(式中、R
13、R
14は、それぞれ独立に水素原子、フッ素原子、又は炭素数1~6のアルキル基であり、q
6は1~30の整数であり、点線は結合を表す。)
【0065】
上記一般式(6)中のX6が脂肪族鎖長構造である2価の有機基である場合、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の硬化膜の機械的強度、特に伸度が高くなることから好ましい。
【0066】
上記一般式(6)中のs、Zは上記と同様であり、Zはアルカリ水溶液の現像液に対する溶解性の観点から、上記一般式(9)または(10)が好ましい。この場合も、上記式(5-1)、(5-2)の場合と同様に、フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液である現像液に対する溶解性が向上するため、好ましい。
【0067】
また本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)は、上記一般式(5)、(6)で示される構造単位に加え、更に、下記一般式(12)で示される構造単位(以下、構造単位(12)とも言う)を含んでいても良い。
【化16】
(式中、X
6は上記と同様である。X
7は2価の有機基である。)
【0068】
上記一般式(12)中のX
7は、2価の有機基であるが、2価の有機基であれば限定されるものではないが、炭素数6~40の2価の有機基であることが好ましく、置換基を有した芳香族環もしくは脂肪族環を1~4個含有する環状有機基、又は環状構造を持たない脂肪族基もしくはシロキサン基であることがより好ましい。さらに好適なX
7としては、下記式(13)又は(14)で示される構造が挙げられる。また、X
7の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【化17】
(式中、点線はアミノ基との結合を表す。)
【0069】
【化18】
(式中、点線はアミノ基との結合を表し、R
15はそれぞれ独立にメチル基、エチル基、プロピル基、n-ブチル基、又はトリフルオロメチル基を表し、q
7は2~20の正数を表す。)
【0070】
また本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)は、上記一般式(5)、(6)で示される構造単位に加え、更に、下記一般式(15)で示される構造単位(以下、構造単位(15)とも言う)を含有していることが好ましい。
【化19】
(式中、X
8は上記X
5と同一もしくは異なる4価の有機基であり、X
9は下記一般式(16)で示される基である。)
【化20】
(式中、R
16~R
19はそれぞれ独立に炭素数2~10の直鎖状もしくは分枝状のアルキレン基であり、m
1は1~40の整数、m
2、m
3はそれぞれ独立に0~40の整数である。)
【0071】
式(15)中のX
8は、X
5について挙げた4価の有機基、例えば、上記式(7)で示される4価の有機基であることができる。また、X
9(上記一般式(16)で示される基)において、好ましく用いることのできる有機基としては、具体的には下記のものを挙げることができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【化21】
【0072】
アルカリ可溶性樹脂(A)がこのような構造単位(15)を含むことで、柔軟性が生まれ高伸度かつ低反りである硬化膜を得ることができる。
【0073】
更に、本発明のアルカリ可溶性樹脂(A)は、下記一般式(17)もしくは(18)で示される構造単位(以下構造単位(17)、構造単位(18))を含有することが出来る。
【化22】
【化23】
(式中、X
10は上記X
5と同一もしくは異なる4価の有機基であり、X
11はX
7と同一もしくは異なる2価の有機基であり、s、Zは上記と同じである。R
20及びR
21はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、又は下記一般式(19)で示される有機基であり、R
20及びR
21の少なくとも1つが下記一般式(19)で示される有機基である。)
【化24】
(式中、点線は結合を表す。R
22は水素原子又は炭素数1~3の有機基であり、R
23及びR
24はそれぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の有機基であり、oは2~10の整数である。)
【0074】
上記構造単位(17)、(18)中のX10は、4価の有機基であるが、上記のX5と同一もしくは異なってもよく、4価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数4~40の脂環式脂肪族基又は芳香族基の4価の有機基であり、さらに好ましくは上記式(7)で示される4価の有機基である。また、X10の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0075】
一方、上記構造単位(18)中のX11は、2価の有機基であるが、上記のX7と同一もしくは異なってもよく、2価の有機基であれば限定されるものではない。好ましくは、炭素数6~40の2価の有機基であることが好ましく、置換基を有した芳香族環もしくは脂肪族環を1~4個含有する環状有機基、又は環状構造を持たない脂肪族基もしくはシロキサン基であることがより好ましい。さらに好適なX11としては、上記式(13)又は(14)で示される構造が挙げられる。また、X11の構造は1種でも2種以上の組み合わせでもよい。
【0076】
上記構造体(17)、(18)中のR20及びR21は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~6の直鎖状、分枝状、もしくは環状のアルキル基、又は上記一般式(19)で示される有機基であり、R20及びR21の少なくともいずれか1つが上記一般式(19)で示される有機基である。
【0077】
上記一般式(19)中のR22は、水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、ポジ型感光性樹脂組成物の感光特性の観点から、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0078】
上記一般式(19)中のR23及びR24は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~3の1価の有機基であれば限定されないが、ポジ型感光性樹脂組成物の感光特性の観点から水素原子であることが好ましい。
【0079】
上記一般式(19)中のoは、2~10の整数であり、感光特性の観点から好ましくは2~4の整数である。さらに好ましくは、oは2である。
【0080】
[(B)架橋性の高分子化合物]
本発明で用いる架橋性の高分子化合物(B)は、下記一般式(1)で表される構造単位を含み、且つ(A)成分と架橋する基を含有するものであれば特に限定されない。
【化25】
【0081】
ここで、一般式(1)中、R1は、水素原子又はメチル基を示し、R2は(n+1)価の炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~15の芳香族炭化水素基、ベンジル基、又はナフタレンメチル基であり、上記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。また、nは1~5の整数であり、X1はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R3OH)-である。R3は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、上記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよく、pは0又は1である。
【0082】
また、一般式(1)で表される構造を得るためのモノマーについて、好ましく用いることのできる例として、具体的には下記に例示することが出来る。
【化26】
(式中、R
1は上記の通り。)
【0083】
【0084】
【0085】
また、(A)成分であるアルカリ可溶性樹脂と架橋する基としては、特には限定されないが、後述のようなオキサゾリン基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、オキセタニル基、エポキシ基が挙げられる。
【0086】
更に、(B)成分は、アルカリ溶解性を維持したまま、架橋密度を向上させるために、下記一般式(2)及び下記一般式(3)で表される構造単位を含有することがより好ましい。
【化29】
【0087】
ここで、一般式(2)中、R
4は、水素原子又はメチル基を示し、X
2はそれぞれ-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、又は-C(=O)-N(R
5OH)-である。R
5は2価の炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状の脂肪族飽和炭化水素基、炭素数6~12の芳香族炭化水素基であり、上記脂肪族飽和炭化水素基の炭素原子が酸素原子に置き換わってもよい。pは0または1である。
【化30】
【0088】
ここで、一般式(3)中、R6は、水素原子又はメチル基を示し、R7は、オキサゾリン基、イソシアネート基、ブロックイソシアネート基、オキセタニル基、エポキシ基を含む基を示し、X3は-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。pは0又は1である。
【0089】
なお、上記ブロックイソシアネート基とは、イソシアネート基(-N=C=O)が適当な保護基によりブロックされた有機基である。ブロックイソシアネート基は、イソシアネート基とブロック化剤を反応させることにより形成することができる。
【0090】
(A)成分中のヒドロキシ基又はカルボキシル基と反応する時にはブロック化剤が脱離して、ヒドロキシ基又はカルボキシル基とイソシアネート基が反応し架橋構造を形成する。ブロック化剤としては、イソシアネートと反応可能な活性水素含有化合物であり、例えばアルコール、フェノール、多環フェノール、アミド、イミド、イミン、チオール、オキシム、ラクタム、活性水素含有複素環、活性メチレン含有化合物が挙げられる。
【0091】
好適なブロックイソシアネート基は、特許6601628号公報の段落[0015]~[0025]に記載されており、その化合物を用いることができる。
【0092】
一方で、一般式(2)で表される構造は、フェノール性水酸基のp-位に電子吸引性の基であるカルボニル基、又はアミド基を有していれば、上記フェノール性水酸基の酸性度は高くなり、アルカリ水溶液の現像液に対する溶解性が向上する。一般式(2)の構造単位を形成するためのモノマーとして好ましく用いることのできる例として、具体的には下記に例示することができる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0093】
【0094】
一般式(2)は、アルカリ溶解性に加えて架橋を促進させるユニットとして有効であり、架橋性基と併用することによって硬化性をより一層向上させることが可能になる。
【0095】
更に、
架橋密度を向上させるために、下記一般式(4)で示されるエポキシ基又はオキセタニル基を有するモノマーを共重合させることが好ましい。
【化32】
【0096】
ここで、一般式(4)中、R8は、水素原子又はメチル基を示し、X4はそれぞれ-C(=O)-O-、又はフェニレン基もしくはナフチレン基である。R9は水酸基、エステル基、エーテル基、芳香族炭化水素を含んでもよい炭素数1~15の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基、R10は水素原子、炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、又はR9と結合して環を形成してもよい。R11は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、R12は水素原子、又は炭素数1~6の直鎖状のアルキル基であり、R9と結合して環を形成してもよい。mは0又は1である。pは0又は1である。式(4)の単位の例としては、下記のものが挙げられる。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
なお、エポキシ基、オキセタニル基を有する繰り返し単位を得るためのモノマーの一部
は、特開2003-55362号公報、特開2005-8847号公報、特開2005-
18012号公報に開示されている。
【0101】
一般式(2)で表される構造単位は、溶剤溶解性とアルカリ溶解性に優れるが、架橋性がないため、架橋性を有する一般式(4)で表される構造単位と共重合する必要がある。架橋性を有する一般式(4)で表されるエポキシ基、オキセタニル基のみからなるポリマーは、架橋性に優れるが、アルカリ溶解性がないために、一般式(2)で表される構造単位と共重合する必要がある。
【0102】
従って、このように繰り返し単位を共重合する場合は、下記式(1a)の繰り返し単
位を有することが好ましい。
【化36】
(式中、R
4、R
8~R
12、X
2、X
4、m及びpは、上記と同じであり、0<b2<1.0、0<b4<1.0、0<b2+b4≦1.0である。)
【0103】
本発明の架橋性の高分子化合物は、例えば上記一般式(1)で表される水酸基を有する繰り返し単位を得るモノマー(以下、b1と表記する)、上記一般式(4)で表される(A)成分のアルカリ可溶性樹脂と架橋する基を有する繰り返し単位を得るモノマー(以下、b4と表記する)による繰り返し単位をベースとするが、基板への密着性、硬化膜の柔軟性を向上させ、機械特性及び耐熱衝撃性をより向上させるために下記一般式(20)に表される繰り返し単位を得るモノマーb5を共重合させてもよい。
【0104】
【化37】
ここで、一般式(20)中、R
25は、水素原子又はメチル基を示し、R
26は、1級、2級又は3級アミノ基を有する1価の有機基
であり、炭素数4~20のアルキル基、炭素数6~10のアリール基、または炭素数6~10の脂環式基を有してもよい。X
12は-C(=O)-O-、又は-C(=O)-NH-が好ましい。b5は0≦b5<1である。
【0105】
上記一般式(20)に表される繰り返し単位を得るモノマーとして、以下の具体例が挙げられる。アミノエチル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N-エチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、アミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N-エチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレート、ピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1-メチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル(メタ)アクリレート、(ピペリジン-4-イル)メチル(メタ)アクリレート、2-(ピペリジン-4-イル)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0106】
更に、上記一般式(20)に表される繰り返し単位を得るモノマーとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが可能であり、具体例として、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル、(メタ)アクリル酸ウンデシルエステル、(メタ)アクリル酸ドデシルエステル、(メタ)アクリル酸トリデシルエステル、(メタ)アクリル酸テトラデシルエステル、(メタ)アクリル酸ペンタデシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシルエステル、(メタ)アクリル酸オクタデシルエステル、(メタ)アクリル酸ノナデシルエステル、(メタ)アクリル酸エイコシルエステル等が挙げられる。
【0107】
更に、硬化膜の機械強度を向上させる目的で、スチレン類、ビニルナフタレン類、ビニルアントラセン類、ビニルカルバゾール類、アセナフチレン類、インデン類などの芳香族基を有するオレフィン類b6や、ノルボルネン類、ノルボルナジエン類などの脂環のオレフィン類b7を共重合してもよい。
【0108】
上記繰り返し単位b1、b4、b5、b6、b7において、繰り返し単位の比率は、0<b1<1.0、0<b1+b4≦1.0、0≦b4<1.0、0≦b5≦0.8、0≦b6≦0.8、0≦b7≦0.8、好ましくは0<b1≦0.5、0.1≦b4≦0.9、b4はより好ましくは0.2≦b4≦0.8、0.1≦b1+b4≦1.0、0≦b5≦0.7、0≦b6≦0.7、0≦b7≦0.7、より好ましくは0<b1≦0.4、0.5≦b4≦0.8、0.2≦b1+b4≦1.0、0≦b5≦0.6、0≦b6≦0.6、0≦b7≦0.6の範囲である。なお、b1+b4+b5+b6+b7=1であり、これら繰り返し単位の合計は全繰り返し単位の合計量の100モル%である。
【0109】
本発明に用いられる架橋性の高分子化合物(B)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算重量平均分子量が1,000~500,000、特に2,000~30,000であることが好ましい。重量平均分子量がこれらの下限より大きければガラス転移温度が十分に高く、ポジ型感光性樹脂組成物の現像後の熱架橋においてパターンが変形せず、上限より小さければ塗布時にピンホール欠陥を引き起こす恐れがない。
【0110】
なお、組成比率や分子量分布や分子量が異なる2つ以上のポリマーをブレンドすること
も可能である。
【0111】
また、このとき架橋性の高分子化合物(B)の添加量はアルカリ可溶性樹脂(A)100質量部に対し、1質量部以上50質量部以下であることが好ましい。添加量が1質量部以上であると上述したようなアルカリ可溶性樹脂(A)との硬化膜において、靭性が高く、50質量部以下であれば、硬化膜の引張強度が低下しないため、架橋性の高分子化合物(B)の添加量は上記の範囲とすることが好ましい。(B)成分の添加量はより好ましくは1質量部以上35質量部以下であり、更に好ましくは、1質量部以上25質量部以下である。この範囲とすることで、リソグラフィーパターニング性能と硬化膜物性のバランスが良好となる。
【0112】
[(C)感光剤]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物における(C)成分は、光により酸を発生しアルカリ水溶液に対する溶解速度が増大する感光剤であって、キノンジアジド構造を有する化合物である。(C)成分としては、1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基を分子中に有する化合物を挙げることができる。
【0113】
1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基を分子中に有する化合物としては、下記一般式(21)又は(22)で示される1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基を分子中に有する化合物が挙げられる。
【0114】
【0115】
上記1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基が導入される化合物として、具体的には、トリヒドロキシベンゾフェノン又はテトラヒドロキシベンゾフェノン、フェノール性水酸基を有する下記一般式(23)で示されるバラスト分子又は後記式(28)で示される繰り返し単位を有する重量平均分子量が2,000~20,000、好ましくは3,000~10,000の範囲であるノボラック樹脂が好適に用いられる。即ち、下記に挙げられるフェノール性水酸基を有する樹脂や化合物のフェノール性水酸基の水素原子を上記1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換したものが(C)成分として好適に用いられる。
【化40】
【0116】
ここで、R101~R106はそれぞれ独立して水素原子、メチル基、下記式(24)で示される基又は下記式(25)で示される基である。wは0~2の整数、zは0~2の整数であり、zが0の場合、wは1又は2である。Aは、zが0でかつwが1の場合、水素原子、メチル基、又は下記式(24)で示される基であり、zが0でかつwが2の場合、一方がメチレン基又は下記式(26)で示される基で、他方が水素原子、メチル基又は下記式(24)で示される基、zが1の場合、メチレン基又は下記式(26)で示される基である。zが2の場合、wが1のとき、Aはメチン基又は下記式(27)で示される基、wが2のときはAの一方がメチレン基又は下記式(26)で示される基で、他方がメチン基又は下記式(27)で示される基である。
【0117】
【化41】
(式中、a
1、a
2、a
3、a
4、a
5、a
6、及びa
7はそれぞれ0~3の整数であるが、a
1+a
2≦5、a
3+a
4≦4、a
6+a
7≦3である。)
【0118】
この場合、上記式(23)の低核体(バラスト分子)は、ベンゼン環の数が2~20個、より好ましくは2~10個、更に好ましくは3~6個であり、且つ、フェノール性水酸基の数とベンゼン環の数の比率が0.5~2.5、より好ましくは0.7~2.0、更に好ましくは0.8~1.5のものであることが好適である。
【0119】
このような低核体(バラスト分子)として具体的には、下記のものが挙げられる。
【0120】
【0121】
【0122】
【0123】
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
上記例示された低核体(バラスト分子)の中で、(C-3)、(C-29)、(C-33)、(C-38)等が好適に用いられ、これらのバラスト分子のフェノール性水酸基の水素原子を1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換した化合物が、本発明のポジ型感光性樹脂組成物の(C)成分に好適に用いられる。
【0128】
【0129】
上記式(28)で示される繰り返し単位を有するノボラック樹脂は、下記式(29)で示されるフェノール類、具体的にはo-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、3,5-キシレノール等の少なくとも1種のフェノール類とアルデヒド類とを通常の方法で縮合させることにより合成することができる。
【0130】
【0131】
この場合、アルデヒド類としては、例えばホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられるが、ホルムアルデヒドが好適である。
【0132】
なお、上記式(29)で示されるフェノール類とアルデヒド類との割合は、モル比で0.2~2、特に0.3~2の割合が好ましい。
【0133】
上記1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基が導入される化合物への1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基の導入方法としては、1,2-ナフトキノンジアジドスルホニルクロライドとフェノール性水酸基との塩基触媒による脱塩酸縮合反応を用いることが好ましい。上記式(23)で示されるバラスト分子、トリヒドロキシベンゾフェノン又はテトラヒドロキシベンゾフェノンの場合には、フェノール性水酸基の水素原子を1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換する割合は10~100モル%、好ましくは50~100モル%であり、上記式(28)で示される繰り返し単位を有するノボラック樹脂の場合、フェノール性水酸基の水素原子を1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基で置換する割合は2~50モル%、好ましくは3~27モル%が好ましい。
【0134】
(C)成分の添加量は、(A)成分100質量部に対して1~60質量部、より好ましくは10~50質量部であることが好ましい。また、(C)成分の1種類又は2種類以上組み合わせて用いることもできる。
【0135】
このような(C)成分を配合することで、露光前においては(C)成分の溶解阻止性によってアルカリ水溶液に対する溶解性が抑制され、系はアルカリ不溶性となり、露光した際には(C)成分の感光剤は光により酸を発生させ、アルカリ水溶液に対する溶解速度が増大して、系はアルカリ可溶性となる。
【0136】
即ち、現像液にアルカリ水溶液を用いた場合、未露光部は現像液に溶解することがなく、露光部は現像液に可溶であることから、ポジ型のパターンを形成することが可能となる。
【0137】
[(D)熱架橋剤]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必須成分である上記(A)、(B)、(C)成分に加え、更に、(D)ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した化合物、多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(D-1)で示される置換基に置換した化合物、及び下記式(D-2)で示されるグリシジル基を有した窒素原子を2つ以上含有した化合物から選ばれる1種又は2種以上の架橋剤を含むことが好ましい。
【化51】
(式中、点線は結合を示し、R
cは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、vは1又は2を表す。)
【0138】
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたアミノ縮合物としては、例えばホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物、又はホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物が挙げられる。
【0139】
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物の調製は、例えば、まず公知の方法に従ってメラミンモノマーをホルマリンでメチロール化して変性、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性して、下記一般式(30)で示される変性メラミンとする。なお、上記アルコールとしては、低級アルコール、例えば炭素数1~4のアルコールが好ましい。
【0140】
【化52】
(式中、R
27は同一でも異なってもよく、メチロール基、炭素数1~4のアルコキシ基を含むアルコキシメチル基又は水素原子であるが、少なくとも1つはメチロール基又は上記アルコキシメチル基である。)
【0141】
上記R27としては、例えば、メチロール基、メトキシメチル基、エトキシメチル基等のアルコキシメチル基及び水素原子等が挙げられる。
【0142】
上記一般式(30)で示される変性メラミンとして、具体的にはトリメトキシメチルモノメチロールメラミン、ジメトキシメチルモノメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチロールメラミン等が挙げられる。
【0143】
次いで、上記一般式(30)で示される変性メラミン又はこの多量体(例えば二量体、三量体等のオリゴマー体)を、常法に従って、ホルムアルデヒドと所望の分子量になるまで付加縮合重合させて、ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性されたメラミン縮合物が得られる。
【0144】
また、上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物の調製は、例えば公知の方法に従って、所望の分子量の尿素縮合物をホルムアルデヒドでメチロール化して変性し、又はこれをさらにアルコールでアルコキシ化して変性する。
【0145】
上記ホルムアルデヒド又はホルムアルデヒド-アルコールにより変性された尿素縮合物の具体例としては、例えば、メトキシメチル化尿素縮合物、エトキシメチル化尿素縮合物、プロポキシメチル化尿素縮合物等が挙げられる。
【0146】
なお、これら変性メラミン縮合物及び変性尿素縮合物の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
【0147】
次いで、1分子中に平均して2個以上のメチロール基又はアルコキシメチロール基を有するフェノール化合物としては、例えば(2-ヒドロキシ-5-メチル)-1,3-ベンゼンジメタノール、2,2’,6,6’-テトラメトキシメチルビスフェノールA、下記式(D-3)~(D-7)で示される化合物等が挙げられる。
【化53】
【0148】
なお、上記架橋剤は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0149】
一方、多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した化合物としては、ビスフェノールA、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンの水酸基を塩基存在下エピクロロヒドリンと反応することで得られる化合物を挙げることができる。多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した化合物の好適な例としては、下記式(D-8)~(D-14)で示される化合物を挙げることができる。
【化54】
(式中、tは、2≦t≦3である。)
【0150】
また、更に上記式(D-8)~(D-14)以外の化合物として、好ましい例は、エピクロン850-S、エピクロンHP-4032、エピクロンHP-7200、エピクロンHP-820、エピクロンHP-4700、エピクロンEXA-4710、エピクロンHP-4770、エピクロンEXA-859CRP、エピクロンEXA-4880、エピクロンEXA-4850、エピクロンEXA-4816、エピクロンEXA-4822(以上商品名、大日本インキ化学工業(株)社製)、リカレジンBPO-20E、リカレジンBEO-60E(以上、商品名、新日本理化(株)社製)、EP-4003S、EP-4000S、EP-4000L(以上、商品名、(株)アデカ社製)、jER828EL、YX7105(以上、商品名、三菱ケミカル(株)社製)などが挙げられる。
【0151】
これら多価フェノールの水酸基をグリシドキシ基に置換した化合物(多価フェノールの水酸基の水素原子をグリシジル基に置換した化合物)の1種又は2種を、架橋剤として使用することができる。
【0152】
多価フェノールの水酸基の水素原子を下記式(D-1)で示される置換基に置換した化合物としては、上記置換基を2つ以上含有し、下記式(D-15)で示されるものを挙げることができる。
【化55】
(式中、点線は結合を示す。)
【化56】
(式中、1≦u≦3である。)
【0153】
また、更に上記式(D-15)以外の化合物として、好ましい例は、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス{[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシルメチル)オキセタン、1,4-ベンゼンジカルボン酸-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エステル、東亜合成(株)社製のアロンオキセタンシリーズ等を挙げることができる。
【0154】
一方、下記式(D-2)で示されるグリシジル基を有した窒素原子を2つ以上含有した化合物としては、下記式(D-16)で示されるものを挙げることができる。
【化57】
(式中、点線は結合を示し、R
cは炭素数1~6の直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基を示し、vは1又は2を表す。)
【化58】
(式中、Wは炭素数2~12の直鎖状、分枝状、環状のアルキレン基、又は2価の芳香族基を示す。なお、ここでのWは上記式においてのみ適用する。)
【0155】
上記式(D-16)で示される化合物としては、例えば下記式(D-17)~(D-20)で示される化合物を例示することができる。
【化59】
【0156】
また一方、上記式(D-2)で示されるグリシジル基を有した窒素原子を2つ以上含有した化合物としては、下記式(D-21)、(D-22)で示される化合物を好適に用いることができる。
【化60】
【0157】
これら上記式(D-2)で示されるグリシジル基を有した窒素原子を2つ以上含有した化合物は、1種又は2種を架橋剤として使用することができる。
【0158】
エポキシ基は環の歪みが大きく反応性が高いが、オキセタンは塩基性が高く酸と結合し
易い。エポキシ基にオキセタニル基を組み合わせることによってカチオン重合の反応性が
格段に向上することが報告されている。
【0159】
(D)成分は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物のパターン形成後、後硬化において架橋反応を起こし、硬化物の強度をさらに上げる成分である。そのような(D)成分の重量平均分子量は、光硬化性及び耐熱性の観点から、150~10,000が好ましく、特に200~3,000のものが好ましい。
【0160】
(D)成分の配合量は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、(A)成分100質量部に対して0.5~100質量部が好ましく、1~100質量部がより好ましく、特に1~80質量部が好ましい。
【0161】
[(E)保護アミン化合物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、必須成分である上記(A)、(B)、(C)成分に加え、更に、(E)の保護アミン化合物を含むものとすることができる。(E)成分の保護アミン化合物は、熱または酸で脱保護する基が窒素原子に結合した含窒素有機化合物であれば、いずれでもかまわない。特に、下記一般式(31)、又は(32)で表されるカルバメート構造を有するものであれば特に限定されない。
【化61】
ここで、式中、R
28、R
29、R
30及びR
31は、それぞれ独立して水素、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~8のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルコキシル基、置換基を有していてもよい炭素数2~8のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~8のアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、又は置換基を有していてもよい複素環基を示し、R
32及びR
33は、それぞれ独立して水素、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~8のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1~8のアルコキシル基、置換基を有していてもよい炭素数2~8のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~8のアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよい複素環基、互いに結合して形成される置換基を有していてもよい単環、又は互いに結合して形成される置換基を有していてもよい多環を示す。(但し、式中の炭素原子の合計の数が10以下であることが好ましい)また、R
34は、置換基を有していてもよい炭素数1~12のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数3~12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2~12のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2~12のアルキニル基、炭素数1~3のアルキル基を置換基として有していてもよいアリール基、炭素数1~3のアルキル基を置換基として有していてもよいアラルキル基、又は置換基を有していてもよい複素環基を示す。(但し、R
34を構成する炭素原子の合計の数は、12以下とする。)上記基が有していてもよい置換基としては、いかなるものを用いてもよい。
【化62】
【0162】
上記式(31)及び(32)の具体的な一例としては、以下のものを挙げることができる。例えば、N-(イソプロポキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(イソプロポキシカルボニル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N-(イソプロポキシカルボニル)ジイソプロピルアミン、N-(イソプロポキシカルボニル)ピロリジン、N-(イソプロポキシカルボニル)-2,5-ジメチルピロリジン、N-(イソプロポキシカルボニル)-アゼチヂン、N-(1-エチルプロポキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(1-エチルプロポキシカルボニル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N-(1-エチルプロポキシカルボニル)ジイソプロピルアミン、N-(1-エチルプロポキシカルボニル)ピロリジン、N-(1-エチルプロポキシカルボニル)-2,5-ジメチルピロリジン、N-(1-エチルプロポキシカルボニル)-アゼチヂン、N-(1-プロピルブトキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(1-プロピルブトキシカルボニル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N-(1-プロピルブトキシカルボニル)ジイソプロピルアミン、N-(1-プロピルブトキシカルボニル)ピロリジン、N-(1-プロピルブトキシカルボニル)-2,5-ジメチルピロリジン、N-(1-プロピルブトキシカルボニル)-アゼチヂン、N-(シクロペントキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(シクロペントキシカルボニル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N-(シクロペントキシカルボニル)ジイソプロピルアミン、N-(シクロペントキシカルボニル)ピロリジン、N-(シクロペントキシカルボニル)-2,5-ジメチルピロリジン、N-(シクロペントキシカルボニル)-アゼチヂン、N-(シクロヘキシルカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(シクロヘキシルカルボニル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N-(シクロヘキシルカルボニル)ジイソプロピルアミン、N-(シクロヘキシルカルボニル)ピロリジン、N-(シクロヘキシルカルボニル)-2,5-ジメチルピロリジン、N-(シクロヘキシルカルボニル)-アゼチヂン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N-(tert-ブトキシカルボニル)ジイソプロピルアミン、N-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-2,5-ジメチルピロリジン、N-(tert-ブトキシカルボニル)-アゼチヂン、N-(ベンジルオキシカルボニル)-2,6-ジメチルピペリジン、N-(ベンジルオキシカルボニル)-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、N-(ベンジルオキシカルボニル)ジイソプロピルアミン、N-(ベンジルオキシカルボニル)ピロリジン、N-(ベンジルオキシカルボニル)-2,5-ジメチルピロリジン、N-(ベンジルオキシカルボニル)-アゼチヂン、1,4-ビス(N,N’―ジイソプロピルアミノカルボニルオキシ)シクロヘキサン、特許5609815号公報記載のイミダゾール化合物等がある。
【0163】
本実施形態に係る保護アミン化合物は、200℃以下で100%分解するものであることが特に好ましい。これにより、より効率的に塩基化合物を発生させ、ポリイミド前駆体のイミド化を促進、もしくは熱架橋剤と樹脂との架橋反応を促進することができる。保護アミン化合物を加熱することにより得られる塩基及び、その他の分解物の1気圧(0.1GPa)下での沸点は、200℃以下であることが好ましい。200℃以下とすることにより、塗膜中から、分解物を低温プロセスにて揮発させることができるためである。分解物の1気圧下での沸点の下限は、特に限定されないが、保護アミン化合物の合成の簡便性の観点から、-150℃以上のものを用いることが好ましい。
【0164】
アミン化合物を本発明のポジ型感光性樹脂組成物に直接添加した場合、(B)成分の架橋性の高分子化合物、又は(D)成分の熱架橋剤とアミン化合物が室温下で反応し、経時的に組成物の粘度が増粘し、保存安定性が劣化する懸念がある。一方、保護基によって、塩基性が保護されたアミン化合物ならば、未加熱時と同じように、(B)成分、及び(D)成分とは室温下で反応することがないため、感光性樹脂組成物の経時的な保存安定性を高めることができる。また、加熱した際に初めて塩基が発生するので、イミド閉環反応や(A)成分のアルカリ可溶性樹脂との架橋反応の触媒となり、架橋反応を効果的に促進することができる。
【0165】
なお、保護アミン化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0~10質量部、配合する場合0.01~10質量部、特に0.01~5質量部を混合したものが好適である。配合量が10質量部以下であれば組成物のアルカリ溶解性が低下せず、リソパターニング特性が劣化しない。
【0166】
[(F)熱酸発生剤]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、さらに、(F)熱によって酸を発生する化合物(熱酸発生剤)を含むものとすることができる。(F)成分の熱によって酸を発生する化合物は、上記のパターン形成後施される温度100~300℃において加熱、後硬化する工程において、熱的に(A)成分と(B)成分、および(D)成分の架橋反応を促す目的で加えることができる。
【0167】
特に(F)成分としては、現像によってパターンが形成されるまでは膜の硬化を促さず、パターン形成を阻害しないものが好ましい。これを実現するために、(F)成分は、感光性樹脂組成物を塗膜した後、溶媒を除去、乾燥する工程の温度では酸を発生せず、パターン形成後の熱処理により初めて酸を発生してポジ型感光性樹脂組成物のパターンや被膜の硬化を促すものが好ましい。具体的には、100℃~300℃、好ましくは150℃~300℃の熱処理によって分解し、酸を発生する化合物であることが好ましい。そのような(F)成分を含有することにより、ポジ型感光性樹脂組成物のパターンや被膜をパターン形成後施される温度100~300℃において加熱、後硬化の工程において、架橋、硬化反応がより進んだパターン、被膜に変化させることができる。(F)成分は、架橋、硬化反応をより一層進行させることで、得られたパターンもしくは被膜の機械的強度、耐薬品性、密着性等をより一層向上させることを可能とする。
【0168】
好適な熱によって酸を発生する化合物としては、特開2007-199653号公報の段落[0061]~[0085]に記載された化合物を用いることができる。
【0169】
熱によって酸を発生する化合物の配合量は、本発明のポジ型感光性樹脂組成物における(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1質量部以上、より好ましくは0.5質量部以上であり、また、好ましくは30質量部以下、より好ましくは5質量部以下である。含有量が0.1質量部以上であることで、架橋反応が促進される。また含有量が30質量部以下であることで、組成物のアルカリ現像性が劣化せず、現像残渣を引き起こさない。
【0170】
[(G)酸化防止剤]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、更に、(G)の酸化防止剤を含むものとすることができる。(G)成分の酸化防止剤を含有することで、(A)成分の脂肪族基やフェノール性水酸基の酸化劣化を抑制する。また、金属材料への防錆作用により、外部からの水分や光酸発生剤、熱酸発生剤などによる金属酸化やそれに伴う密着低下や剥離を抑制することができる。
【0171】
ここで使用可能な酸化防止剤の具体例を列挙すると、ヒンダードフェノール系酸化防止剤や、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤が好ましく挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。また、これらの酸化防止剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0172】
上記酸化防止剤の具体例のうち、更に、ヒンダードフェノール系酸化防止剤を例示すると、ペンタエリトリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)、イルガノックス1010(商品名))、チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)、イルガノックス1035(商品名))、オクタデシル[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート](BASFジャパン(株)、イルガノックス1076(商品名))、オクチル1-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロ肉桂酸(BASFジャパン(株)製、イルガノックス1135(商品名))、4,6-ビス(オクチルチオメチル-o-クレゾール)(BASFジャパン(株)、イルガノックス1520L)、スミライザーGA80(住友化学(株)製、商品名)、アデカスタブ AO-20((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-30((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-40((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-50((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-60((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-80((株)ADEKA製、商品名)、アデカスタブ AO-330((株)ADEKA製、商品名)、特開WO2017/188153A1号公報記載のヒンダードフェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0173】
上記酸化防止剤の具体例のうち、更に、リン系酸化防止剤を例示すると、トリフェニルホスファイト、トリス(メチルフェニル)ホスファイト、トリイソオクチルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(オクチルフェニル)ホスファイト、トリス[デシルポリ(オキシエチレン)ホスファイト、トリス(シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリシクロヘキシルホスファイト、トリ(デシル)チオホスファイト、トリイソデシルチオホスファイト、フェニル-ビス(2-エチルヘキシル)ホスファイト、フェニル-ジイソデシルホスファイト、テトラデシルポリ(オキシエチレン)-ビス(エチルフェニル)ホスファイト、フェニル-ジシクロヘキシルホスファイト、フェニル-ジイソオクチルホスファイト、フェニル-ジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニル-シクロヘキシルホスファイト、ジフェニル-イソオクチルホスファイト、ジフェニル-2-エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル-イソデシルホスファイト、ジフェニル-シクロヘキシルフェニルホスファイト、ジフェニル-(トリデシル)チオホスファイトなどが挙げられる。
【0174】
上記酸化防止剤の具体例のうち、更に、硫黄系酸化防止剤を例示すると、アデカスタブ AO-412S((株)ADEKA製、商品名)、AO-503S((株)ADEKA製、商品名)、スミライザーTP-D(住友化学(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0175】
硫黄系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤としては、過酸化物を分解する効果が期待できる。
【0176】
また、(G)の酸化防止剤の含有量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部が好ましく、0.2~5質量部がより好ましい。含有量が0.1質量部以上であることで、金属材料に対する密着性を向上するとともに剥離が抑制される。また含有量が10質量部以下であれば、組成物のアルカリ現像性や硬化膜の靭性が劣化しない。
【0177】
[(H)シラン化合物]
本発明のポジ型感光性樹脂組成物は、更に、(H)のシラン化合物を含むものとすることができる。(H)成分のシラン化合物を含有することで、金属材料に対する密着性を向上するだけでなく、熱衝撃試験や高温高湿試験といった信頼性試験における硬化膜の剥離を抑制することができる。
【0178】
ここで使用可能なシラン化合物は、アルコキシシリル基を有するものであれば、いずれでもかまわない。また、好適な具体例を以下に示す。γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピル-トリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、トリエトキシシリルプロピルエチルカルバメート、3-(トリエトキシシリル)プロピルコハク酸無水物、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、N―フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、特許6414060記載のアミド基含有のシラン化合物、特開WO2016/140024、及び特許5987984記載のチオウレア基含有のシラン化合物、特許2017―044964記載のチオ―ル基含有のシラン化合物などが挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。更に、これらのシラン化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて使用することができる。
【0179】
また、(H)のシラン化合物の含有量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましく、3~6質量部が更に好ましい。0.1質量部以上であると、基板とのより充分の密着性を付与することができ、20質量部以下になると室温保存時においての粘度上昇等の問題をより抑制できる。また、含有量が10質量部未満であることで、組成物のアルカリ現像性が劣化せず、現像残渣を引き起こさない。
【0180】
[その他の成分]
また、本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分、(F)成分、(G)成分及び(H)成分以外の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、例えば、(I)溶解阻止剤、(J)界面活性剤及び(K)溶剤等を挙げることができる。下記に例示する化合物等を好適に用いることができる。ただし、これらに限るものではない。
【0181】
(I)溶解阻止剤としては、重量平均分子量が100~1,000、好ましくは150~800で、かつ分子内にフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物の上記フェノール性水酸基の水素原子を酸不安定基により全体として平均0~100モル%の割合で置換した化合物又は分子内にカルボキシ基を有する化合物の上記カルボキシ基の水素原子を酸不安定基により全体として平均50~100モル%の割合で置換した化合物が挙げられる。
【0182】
なお、フェノール性水酸基の水素原子の酸不安定基による置換率は、平均でフェノール性水酸基全体の0モル%以上、好ましくは30モル%以上であり、その上限は100モル%、より好ましくは80モル%である。カルボキシ基の水素原子の酸不安定基による置換率は、平均でカルボキシ基全体の50モル%以上、好ましくは70モル%以上であり、その上限は100モル%である。
【0183】
この場合、かかるフェノール性水酸基を2つ以上有する化合物又はカルボキシ基を有する化合物として下記式(I1)~(I14)で示されるものが好ましい。
【0184】
【0185】
但し、上記式中R201、R202はそれぞれ水素原子、又は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を示す。R203は水素原子、又は炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基又はアルケニル基を示す。R204は-(CH2)i-(i=2~10)、炭素数6~10のアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は硫黄原子を示す。R205は炭素数1~10のアルキレン基、炭素数6~10のアリーレン基、カルボニル基、スルホニル基、酸素原子又は硫黄原子を示す。R206は水素原子、炭素数1~8の直鎖状又は分岐状のアルキル基、アルケニル基又はそれぞれ水酸基で置換されたフェニル基又はナフチル基を示す。R208は水素原子又は水酸基を示す。jは0~5の整数である。u、hは0又は1である。s、t、s’、t’、s’’、t’’はそれぞれs+t=8、s’+t’=5、s’’+t’’=4を満足し、かつ各フェニル骨格中に少なくとも1つの水酸基を有するような数である。αは式(I8)、(I9)の化合物の分子量を100~1,000とする数である。
【0186】
溶解阻止剤の配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0~50質量部、好ましくは5~50質量部、より好ましくは5~20質量部であり、単独又は2種以上を混合して使用できる。配合量が十分であれば解像性が向上し、50質量部以下であればパターンの膜減りが生じず、高い解像度が得られる。
【0187】
(J)界面活性剤としては、非イオン性のものが好ましく、例えばフッ素系界面活性剤、具体的にはパーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、含フッ素オルガノシロキサン系化合物、非フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。
【0188】
これらの界面活性剤としては、市販されているものを用いることができ、例えば、フロラード FC-4430(住友スリーエム(株)製、商品名)、PF-6320(OMNOVA社製、商品名)、PF-636(OMNOVA社製、商品名)、サーフロン S-141及びS-145(以上、旭硝子(株)製、商品名)、ユニダイン DS-401、DS-4031及びDS-451(以上、ダイキン工業(株)製、商品名)、メガファック F-8151(DIC(株)製、商品名)、X-70-093(信越化学工業(株)製、商品名)等が挙げられる。これらの中でも好ましくは、フロラード FC-4430(住友スリーエム(株)製、商品名)、PF-6320(OMNOVA社製、商品名)、PF-636(OMNOVA社製、商品名)、X-70-093(信越化学工業(株)製、商品名)である。
【0189】
界面活性剤の配合量は、(A)成分のアルカリ可溶性樹脂100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部がより好ましい。
【0190】
(K)溶剤としては、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を溶解するものであれば、限定されない。溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコール-モノ-tert-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン等のエステル類等が挙げられ、これらの1種以上を用いることができる。特に、乳酸エチル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン又はそれらの混合溶剤が好ましい。
【0191】
(K)成分の配合量は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分の配合量の合計100質量部に対して50~2,000質量部が好ましく、特に100~1,000質量部が好ましい。
【0192】
[ポジ型感光性ドライフィルム]
本発明のポジ型感光性ドライフィルムは、支持フィルム及び保護フィルムと、上記支持フィルムと保護フィルムの間に上記ポジ型感光性樹脂組成物から得られる感光性樹脂皮膜(感光性樹脂層)とを備えるものである。
【0193】
上記感光性ドライフィルム(支持フィルム、保護フィルム及び感光性樹脂皮膜)は固体であり、感光性樹脂皮膜が溶剤を含まないため、その揮発による気泡が上記感光性樹脂皮膜の内部及び凹凸のある基板との間に残留するおそれがない。
【0194】
上記感光性樹脂皮膜の膜厚は、凹凸のある基板上での平坦性、段差被覆性及び基板積層間隔の観点から、5~200μmが好ましく、5~100μmがより好ましく、10~100μmが更に好ましい。
【0195】
また、上記感光性樹脂皮膜の粘度と流動性とは密接に関係しており、上記感光性樹脂皮膜は、適切な粘度範囲において適切な流動性を発揮でき、狭い隙間の奥まで入っていったり、樹脂が軟化することにより基板との接着性を強くしたりすることができる。したがって、上記感光性樹脂皮膜の粘度は、その流動性の観点から、80~120℃において、好ましくは10~5,000Pa・s、より好ましくは30~2,000Pa・s、更に好ましくは50~300Pa・sである。なお、本発明において粘度は、回転粘度計による測定値である。
【0196】
本発明の感光性ドライフィルムは、保護フィルムを剥離して凹凸のある基板に密着させる際に、感光性樹脂皮膜が上記凹凸に追随して被覆され、高い平坦性を達成できる。特に、上記感光性樹脂皮膜は、低い粘弾性が特徴であるため、より高い平坦性を達成できる。更に、上記感光性樹脂皮膜を真空環境下で上記基板に密着させると、それらの隙間の発生をより効果的に防止できる。
【0197】
[ポジ型感光性ドライフィルムの製造方法]
また、本発明は、
(1)上記ポジ型感光性樹脂組成物を支持フィルム上に連続的に塗布し、感光性樹脂層を形成する工程、
(2)上記感光性樹脂層を連続的に乾燥させる工程、
(3)更に、上記感光性樹脂層上に保護フィルムを貼り合わせる工程、
を含むポジ型感光性ドライフィルムの製造方法を提供する。
【0198】
本発明の感光性ドライフィルムは、上記感光性樹脂組成物を支持フィルム上に塗布し、乾燥させて感光性樹脂皮膜を形成することによって製造することができる。上記感光性ドライフィルムの製造装置としては、一般的に粘着剤製品を製造するためのフィルムコーターが使用できる。上記フィルムコーターとしては、例えば、コンマコーター、コンマリバースコーター、マルチコーター、ダイコーター、リップコーター、リップリバースコーター、ダイレクトグラビアコーター、オフセットグラビアコーター、3本ボトムリバースコーター、4本ボトムリバースコーター等が挙げられる。
【0199】
支持フィルムを上記フィルムコーターの巻出軸から巻き出し、上記フィルムコーターのコーターヘッドを通過させるとき、上記支持フィルム上に上記感光性樹脂組成物を所定の厚みで塗布した後、所定の温度及び時間で熱風循環オーブンを通過させ、上記支持フィルム上で乾燥させて感光性樹脂皮膜とする。次に、感光性樹脂皮膜を上記フィルムコーターの別の巻出軸から巻き出された保護フィルムとともに、所定の圧力でラミネートロールを通過させて上記支持フィルム上の上記感光性樹脂皮膜と保護フィルムとを貼り合わせた後、上記フィルムコーターの巻取軸に巻き取ることによって、保護フィルム付き感光性ドライフィルムを製造することができる。この場合、上記温度としては25~150℃が好ましく、上記時間としては1~100分間が好ましく、上記圧力としては0.01~5MPaが好ましい。
【0200】
上記支持フィルムは、単一のフィルムからなる単層フィルムであっても、複数のフィルムを積層した多層フィルムであってもよい。上記フィルムの材質としてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルムが挙げられる。これらのうち、適度な可とう性、機械的強度及び耐熱性を有する点から、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。これらのフィルムは、コロナ処理や剥離剤塗布等の各種処理が行われたものでもよい。これらは市販品を使用することができ、例えばセラピールWZ(RX)、セラピールBX8(R)(以上、東レフィルム加工(株)製)、E7302、E7304(以上、東洋紡(株)製)、ピューレックスG31、ピューレックスG71T1(以上、帝人デュポンフィルム(株)製)、PET38×1-A3、PET38×1-V8、PET38×1-X08(以上、ニッパ(株)製)等が挙げられる。
【0201】
上記保護フィルムとしては、前述した支持フィルムと同様のものを用いることができるが、適度な可とう性を有する点から、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンが好ましい。これらは市販品を使用することができ、ポリエチレンテレフタレートとしてはすでに例示したもの、ポリエチレンとしては、例えばGF-8(タマポリ(株)製)、PEフィルム0タイプ(ニッパ(株)製)等が挙げられる。
【0202】
上記支持フィルム及び保護フィルムの厚みは、感光性ドライフィルム製造の安定性、及び巻き芯に対する巻き癖、所謂カール防止の観点から、いずれも好ましくは10~100μm、より好ましくは10~50μmである。
【0203】
(パターン形成方法)
本発明は、以下の工程を含むパターン形成方法を提供する。
(1)上記ポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し、感光材皮膜を形成する工程、
(2)次いで加熱処理後、フォトマスクを介して波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で感光材皮膜を露光する工程、
(3)照射後、基板にアルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程。
【0204】
以下、本発明のポジ型感光性樹脂組成物を用いたパターン形成方法に関して、説明を行う。
【0205】
本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、パターンを形成するには、公知のリソグラフィー技術を採用して行うことができ、例えばシリコンウエハーあるいはSiO2基板、SiN基板、もしくは銅配線等のパターンが形成されている基板に、感光性樹脂組成物をスピンコーティングの手法(スピンコート法)で塗布し、80~130℃、50~600秒間程度の条件でプリベークし、厚さ1~50μm、好ましくは1~30μm、さらに好ましくは1~20μmの感光材皮膜を形成する。
【0206】
スピンコート法では、感光性樹脂組成物をシリコン基板上へ5mL程度ディスペンスした後に基板を回転することによって、基板上へ感光性樹脂組成物を塗布することができる。このとき、回転速度を調整することで容易に基板上の感光材皮膜の膜厚を調整することが可能である。
【0207】
次いで、目的のパターンを形成するためのマスクを上記の感光材皮膜上にかざし、i線、g線等の波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線を露光量1~5,000mJ/cm2程度、好ましくは100~2,000mJ/cm2程度となるように照射する。
【0208】
照射後、現像を施す。上記の本発明のポジ型感光性樹脂組成物において、アルカリ水溶液によるアルカリ現像が可能である。
【0209】
一方、アルカリ現像に用いることのできる好適なアルカリ水溶液は、2.38%のテトラメチルヒドロキシアンモニウム(TMAH)水溶液である。現像は、スプレイ法、パドル法等通常の方法、現像液に浸漬すること等により行うことができる。その後、必要に応じて、洗浄、リンス、乾燥等を行い、所望のパターンを有するレジスト皮膜を得ることができる。
【0210】
(ポジ型感光性ドライフィルムを用いるパターン形成方法)
本発明は、以下の工程を含むことを特徴とするパターン形成方法を提供する。
(1)本発明のポジ型感光性ドライフィルムから保護フィルムを剥離することにより露出した感光性樹脂層を基板に密着させる工程、
(2)次いで、上記支持フィルムを介して、もしくは上記支持フィルムを剥離した状態で、フォトマスクを介して感光性樹脂層を波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線で露光する工程、及び
(3)照射後、アルカリ水溶液の現像液を用いて現像する工程。
【0211】
以下、本発明のポジ型感光性ドライフィルムを用いたパターン形成方法に関して、説明を行う。
【0212】
工程(1)において、感光性ドライフィルムを用いて基板上に感光性樹脂皮膜を形成する。具体的には、感光性ドライフィルムの感光性樹脂皮膜を基板に貼り付けることで基板上に感光性樹脂皮膜を形成する。上記基板としては、前述のポジ型感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法において説明したものと同様のものが挙げられる。
【0213】
上記感光性ドライフィルムが保護フィルムを有している場合には、感光性ドライフィルムから保護フィルムを剥がした後、感光性ドライフィルムの感光性樹脂皮膜を基板に貼り付ける。貼り付けは、例えばフィルム貼り付け装置を用いて行うことができる。フィルム貼り付け装置としては、真空ラミネーターが好ましい。例えば、上記感光性ドライフィルムの保護フィルムを剥離し、露出した上記感光性樹脂皮膜を所定真空度の真空チャンバー内において、所定の圧力の貼り付けロールを用いて、所定の温度のテーブル上で上記基板に密着させる。なお、上記温度としては60~120℃が好ましく、上記圧力としては0~5.0MPaが好ましく、上記真空度としては50~500Paが好ましい。
【0214】
必要な厚さの感光性樹脂皮膜を得るために、必要に応じてフィルムを複数回貼り付けてもよい。貼り付け回数は例えば1~10回程度で、10~1,000μm、特に100~500μm程度の膜厚の感光性樹脂皮膜を得ることができる。
【0215】
上記感光性樹脂皮膜と基板との密着性を向上させるため、必要に応じてプリベークを行ってもよい。プリベークは、例えば、40~140℃で1分間~1時間程度行うことができる。
【0216】
次いで、目的のパターンを形成するためのマスクを上記の感光性樹脂皮膜上にかざし、i線、g線等の波長190~500nmの高エネルギー線もしくは電子線を露光量1~5,000mJ/cm2程度、好ましくは100~2,000mJ/cm2程度となるように照射する。なお、感光性ドライフィルムの支持フィルムは、プロセスに応じてプリベーク前又はPEB前に剥がすか、他の方法で除去する。
【0217】
照射後、感光性樹脂皮膜は、上記感光性樹脂組成物を用いるパターン形成方法の場合と同様に、現像液を用いて現像してパターンを形成する。
【0218】
(硬化被膜形成方法)
また、上記パターン形成方法により得られたパターン形成された被膜を例えばオーブンやホットプレートを用いて、温度100~300℃、好ましくは150~300℃、さらに好ましくは180~250℃において加熱、後硬化することで硬化被膜を形成することができる。後硬化温度が100~300℃であれば、感光性樹脂組成物の皮膜の架橋密度を上げ、残存する揮発成分を除去でき、基板に対する密着力、耐熱性や強度、さらに電気特性の観点から好ましい。そして、後硬化時間は10分間~10時間とすることができる。
【0219】
上記の形成されたパターンは、配線、回路及び基板等を覆う保護用被膜を目的として使用されるが、これら形成されたパターン及び保護用被膜は、優れた絶縁性を有しながら、被覆する配線、回路のCuのような金属層、基板上に存在する金属電極上、もしくは被覆する配線や回路に存在するSiNのような絶縁基板上で優れた密着力を示し、かつ保護用被膜として相応しい機械的強度を具備したまま、さらに微細なパターン形成を可能にするための解像性能を大幅に改善できるものである。
【0220】
(硬化被膜)
このようにして得られた硬化被膜は、基板との密着性、耐熱性、電気特性、機械的強度及びアルカリ性剥離液等に対する薬品耐性に優れ、それを保護用被膜とした半導体素子の信頼性にも優れ、特に温度サイクル試験の際のクラック発生を防止でき、電気・電子部品、半導体素子等の保護用被膜(層間絶縁膜あるいは表面保護膜)として好適に用いられる。
【0221】
即ち、本発明では、上述のポジ型感光性樹脂組成物が硬化してなる硬化被膜からなる層間絶縁膜あるいは表面保護膜を提供する。
【0222】
上記保護用被膜は、その耐熱性、薬品耐性、絶縁性から、再配線用途を含む半導体素子用絶縁膜、多層プリント基板用絶縁膜、ソルダーマスク、カバーレイフィルム用途等に有効である。
【0223】
さらに、本発明では、上記の層間絶縁膜又は上記の表面保護膜を有する電子部品を提供する。このような電子部品は、耐熱性、薬品耐性、絶縁性を有する保護用被膜(層間絶縁膜又は表面保護膜)を有することから、信頼性に優れたものとなる。
【実施例】
【0224】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。なお、重量平均分子量(Mw)はGPCによるポリスチレン換算重量平均分子量を示す。
【0225】
I.アルカリ可溶性樹脂(A)の合成
下記合成例において、使用した化合物の化学構造式及び名称を以下に示す。
【化64】
【0226】
[合成例1]ポリイミド樹脂(A1)の合成
撹拌機、温度計を具備した1Lのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)30g(81.9mmol)、4-アミノフェノール(PAP)0.9g(8.6mmol)、N-メチル-2-ピロリドン125gを加え、室温で撹拌し溶解した。次に室温下、3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(s-ODPA)26.7g(86.2mmol)、をN-メチル-2-ピロリドン270gに溶解した溶液を滴下し、滴下終了後室温下3時間撹拌した。その後、この反応液にキシレン40gを加え、170℃で生成する水を系外へ除きながら3時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、この反応液を超純水2Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリイミド樹脂(A1)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量35,000であった。
【0227】
[合成例2]ポリイミド樹脂(A2)の合成
合成例1において2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)30g(81.9mmol)を2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)プロパン(BAP)21.2g(81.9mmol)に代え、それ以外は同様の処方でポリイミド樹脂(A2)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量34,000であった。
【0228】
[合成例3]ポリアミドイミド樹脂(A3)の合成
撹拌機、温度計を具備した500mlのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)28.5g(77.8mmol)、4-アミノフェノール(PAP)0.9g(8.2mmol)、N-メチル-2-ピロリドン118gを加え、室温で撹拌し溶解した。次に室温下、3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(s-ODPA)19.0g(61.4mmol)、をN-メチル-2-ピロリドン192gに溶解した溶液を滴下し、滴下終了後室温下3時間撹拌した。その後、この反応液にキシレン40gを加え、170℃で生成する水を系外へ除きながら3時間加熱還流を行った。室温まで冷却後、ピリジン3.2g(41.0mmol)を加え、セバシン酸ジクロライド(DC-1)4.9g(20.5mmol)を5℃以下に保つように滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、この反応液を超純水2Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリアミドイミド樹脂(A3)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量35,000であった。
【0229】
[合成例4]ポリアミド樹脂(A4)の合成
撹拌機、温度計を具備した500mlのフラスコ内に2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)28.5g(77.8mmol)、4-アミノフェノール(PAP)0.9g(8.2mmol)、N-メチル-2-ピロリドン118gを加え、室温で撹拌し溶解した。次にピリジン13.0g(163.8mmol)を加え、セバシン酸ジクロライド(DC-1)19.6g(81.9mmol)を5℃以下に保つように滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、この反応液を超純水2Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリアミド樹脂(A4)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量38,000であった。
【0230】
[合成例5]テトラカルボン酸ジエステル化合物(X-1)の合成
撹拌機、温度計を具備した3Lのフラスコ内に3,3’,4,4’-オキシジフタル酸二無水物(s-ODPA)100g(322mmol)、トリエチルアミン65.2g(644mmol)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン39.3g(322mmol)、γ-ブチロラクトン400gを加え、室温で撹拌しているところにヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)83.8g(644mmol)を滴下後、室温下で24時間撹拌した。その後、氷冷下10%塩酸水溶液370gを滴下し反応を停止させた。反応液に、4-メチル-2-ペンタノン800gを加え有機層を分取した後、水600gで6回洗浄した。得られた有機層の溶媒を留去し、テトラカルボン酸ジエステル化合物(X-1)を180g得た。
【0231】
[合成例6]ポリイミド前駆体(A5)の合成
撹拌機、温度計を具備した1Lのフラスコ内に(X-1)57.1g(100mmol)、N-メチル-2-ピロリドン228gを加え、室温で撹拌し溶解した。次に氷冷下、塩化チオニル24.4g(205mmol)を反応溶液温度が10℃以下を保つように滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間撹拌した。続いて2,2―ビス(3―アミノ―4―ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン(6FAP)34.8g(95mmol)、4-アミノフェノール(PAP)1.1g(10mmol)、ピリジン32.4g(410mmol)をN-メチル-2-ピロリドン144gで溶解した溶液を氷冷下で反応溶液温度が10℃以下を保つように滴下した。滴下終了後、室温まで戻し、この反応液を水3Lの撹拌下に滴下し、析出物をろ別し、適宜水洗後、40℃で48時間減圧乾燥することにより、ポリイミド前駆体(A5)を得た。この重合体の分子量をGPCにより測定すると、ポリスチレン換算で重量平均分子量36,000であった。
【0232】
II.架橋性の高分子化合物(B)の合成
[合成例]
架橋性の高分子化合物(高分子添加剤)として、各々のモノマーを組み合わせてテトラヒドロフラン溶媒下で共重合反応を行い、ヘキサンに晶出、乾燥し、以下に示す組成の高分子化合物(ポリマーB1~B19、比較ポリマーC1、C2)を得た。得られた高分子化合物の組成は1H-NMR、分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0233】
[合成例7]ポリマーB1
分子量(Mw)=11,600
【化65】
【0234】
[合成例8]ポリマーB2
分子量(Mw)=11,800
【化66】
【0235】
[合成例9]ポリマーB3
分子量(Mw)=11,000
【化67】
【0236】
[合成例10]ポリマーB4
分子量(Mw)=10,800
【化68】
【0237】
[合成例11]ポリマーB5
分子量(Mw)=11,300
【化69】
【0238】
[合成例12]ポリマーB6
分子量(Mw)=9,800
【化70】
【0239】
[合成例13]ポリマーB7
分子量(Mw)=9,500
【化71】
【0240】
[合成例14]ポリマーB8
分子量(Mw)=10,200
【化72】
【0241】
[合成例15]ポリマーB9
分子量(Mw)=12,300
【化73】
【0242】
[合成例16]ポリマーB10
分子量(Mw)=11,800
【化74】
【0243】
[合成例17]ポリマーB11
分子量(Mw)=9,000
【化75】
【0244】
[合成例18]ポリマーB12
分子量(Mw)=9,300
【化76】
【0245】
[合成例19]ポリマーB13
分子量(Mw)=9,500
【化77】
【0246】
[合成例20]ポリマーB14
分子量(Mw)=10,400
【化78】
【0247】
[合成例21]ポリマーB15
分子量(Mw)=12,300
【化79】
【0248】
[合成例22]ポリマーB16
分子量(Mw)=12,300
【化80】
【0249】
[合成例23]ポリマーB17
分子量(Mw)=11,300
【化81】
【0250】
[合成例24]ポリマーB18
分子量(Mw)=11,700
【化82】
【0251】
[合成例25]ポリマーB19
分子量(Mw)=11,300
【化83】
【0252】
[合成例26]比較ポリマーC1
分子量(Mw)=11,900
【化84】
【0253】
[合成例27]比較ポリマーC2
分子量(Mw)=10,600
【化85】
【0254】
III-1.ポジ型感光性樹脂組成物の調製
上記合成例1~合成例6で、合成したアルカリ可溶性樹脂(A1)~(A5)に、合成例7~合成例27で合成した架橋性の高分子化合物(B1)~(B19)、(C1)、(C2)を添加したものをベース樹脂として、表1に記載した組成と配合量の樹脂組成物を調製した。その後、撹拌、混合、溶解した後、テフロン(登録商標)製1.0μmフィルターで精密濾過を行ってポジ型感光性樹脂組成物を得た。表中溶剤のPGMEAはプロピレングルコールモノメチルエーテルアセテート、GBLはγ―ブチロラクトンを示す。
【表1】
【0255】
III-2.ポジ型感光性ドライフィルムの作製
フィルムコーターとしてコンマコーター、支持フィルムとしてポリエチレンテレフタレートフィルムAL-5(リンテック(株)社製、商品名、厚さ38μm)を用いて、表1に記載した感光性樹脂組成物28~31、及び比較感光性樹脂組成物4をそれぞれ上記支持フィルム上に塗布した。次いで、55℃に設定された熱風循環オーブン(長さ6m)を4分間で通過させることにより乾燥し、支持フィルム上に感光性樹脂皮膜を形成し、感光性ドライフィルムを得た。上記感光性樹脂皮膜の上から、保護フィルムとしてのポリエチレンフィルム(厚さ10μm)をラミネートロールで圧力1MPaにて貼り合わせ、保護フィルム付き感光性ドライフィルムを作製した。各感光性樹脂皮膜の膜厚は、後硬化後の仕上がり膜厚が10μmとなるように、14μmとした(感光性樹脂皮膜の膜厚は光干渉式厚膜測定機により測定した)。
【0256】
なお、表1中、キノンジアジド化合物である感光剤(PAC-1)、架橋剤(CL-1)(CL-2)(CL-3)、保護アミン化合物(E-1)、熱酸発生剤(F-1)、(F-2)、酸化防止剤(G-1)、シラン化合物(H-1)、溶解阻止剤(I-1)、界面活性剤(J-1)の詳細は以下の通りである。
【0257】
感光剤(PAC-1)
【化86】
(式中、Qは下記式(23)で示される1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基又は水素原子を示し、Qの90%が下記式(23)で示される1,2-ナフトキノンジアジドスルホニル基に置換されている。)
【化87】
【0258】
架橋剤(CL-1)
エポキシ樹脂:ADEKA(株)社製 EP4000L
【0259】
架橋剤(CL-2)
エポキシ樹脂:三菱ケミカル(株)社製 jER828EL
【0260】
【0261】
【0262】
【0263】
【0264】
酸化防止剤(G-1)
ヒンダートフェノール系酸化防止剤:住友化学(株)社製 スミライザー GA-80
【0265】
シラン化合物(H-1)
アミノシランカップリング剤:信越化学工業(株)社製 KBM-573
【0266】
【0267】
界面活性剤(J-1)
フッ素系界面活性剤:OMNOVA社製 PF-6320
【0268】
IV.パターン形成
上記の感光性樹脂組成物1~27、比較感光性樹脂組成物1~3、更に、上記感光性樹脂組成物28~31、比較感光性樹脂組成物4からなる感光性ドライフィルムを用いて、ヘキサメチルシラザン処理したシリコン基板上に感光性樹脂被膜を形成した。
【0269】
感光性樹脂組成物1~27、比較感光性樹脂組成物1~3の樹脂溶液はシリコン基板上へ5mLディスペンスした後に基板を回転することによって、即ち、スピンコート法によって、パターン形成後に施す後硬化の加熱後に膜厚が2μmとなるように塗布した。即ち、後硬化工程後、膜厚が減少することを予め検討し、後硬化後の仕上がり膜厚が2μmとなるように塗布時の回転数を調整した。尚、プリベーク条件は、ホットプレート上100℃、2分間とした。
【0270】
一方、感光樹脂組成物28~31、比較感光性樹脂組成物4からなる感光性ドライフィルムは、保護フィルムを剥離し、タカトリ社製の真空ラミネーターTEAM-100RFを用いて、真空チャンバー内の真空度を80Paに設定し、支持フィルム上の感光性樹脂皮膜をシリコン基板に密着させた。尚、ステージ温度条件は110℃とした。また、常圧に戻した後、支持フィルムを剥離し、基板との密着性を高めるため、ホットプレートにより90℃で1分間予備加熱を行った。
【0271】
塗膜形成後、ビーコ社製i線ステッパーAP300Eを用いてi線露光を行った。パターン形成においては、ポジ型パターン用のマスクを使用した。上記マスクは、縦横1:1配列の2μmのコンタクトホールパターン(以下、ビアパターンと表記する)が形成できるパターンを有し、10μm~2μmまでは1μm刻みでビアパターンが形成できるものである。
【0272】
その後、2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液を現像液とし、1分間のパドル現像を露光部分の塗布膜が溶解するまで実施した後、超純水によるリンスを行った。
【0273】
次いで、オーブンを用いて180℃で2時間、窒素パージしながらパターン付き基板の後硬化を行った。
【0274】
次に、得られたビアパターンの形状が観察できるように、各基板を切り出し、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてビアパターン形状を観察した。形成した10μm、8μm、6μm、4μm、2μmのビアパターン断面を観察し、底部までホールが貫通している最小のビアパターンを限界解像性とした。更に得られた断面写真から、パターンの垂直性を評価した。これらの結果と合わせ、最小口径のビアパターンが形成できた感度、現像回数を表2に示す。
【0275】
なお、ビアパターンの形状は下記のような基準で評価し、表2中に評価結果を示した。最小口径のビアパターンの垂直性を評価し、垂直なパターンは◎、ややテーパー形状は○、テーパー形状は△、開口不良は×とした。
【0276】
V.破断伸度及び引張強度
上記パターン形成と同じ手順で、上記の感光性樹脂組成物1~27、比較感光性樹脂組成物1~3、更に、上記感光樹脂組成物28~31、比較感光性樹脂組成物4からなる感光性ドライフィルムを用いて、アルミ基板上に感光性樹脂被膜を形成した。樹脂溶液はスピンコート法によって硬化後の仕上がり膜厚10μmになるように塗布した。また、感光性ドライフィルムは、アルミ基板上へ硬化後の仕上がり膜厚10μmとなるように貼り合わせた。なお、スピンコート法のプリベークは100℃、4分間とし、ドライフィルム貼り付けは、パターン形成と同条件で行った。
【0277】
その後、オーブンを用いて、180℃で2時間、窒素パージしながら、硬化を行い、感光性樹脂硬化膜を得た。次に、硬化膜付きウェハを、幅10mm、長さ60mmの短冊状に割断し、20質量%の塩酸に浸漬することで硬化膜を基板から剥離した。得られた硬化膜を島津製作所社製オートグラフAGX-1KNを用いて破断伸度及び引張強度の測定を行った。測定は1サンプルにつき10回行いその平均値を表2中に示した。
【0278】
【0279】
VI.密着力
上記パターン形成と同じ手順で、上記の感光性樹脂組成物1~27、更に、上記感光樹脂組成物28~31からなる感光性ドライフィルムを用いて、SiN基板上に感光性樹脂被膜を形成した。樹脂溶液はスピンコート法によって硬化後の仕上がり膜厚5μmになるように塗布した。また、感光性ドライフィルムは、SiN基板上へ硬化後の仕上がり膜厚10μmとなるように貼り合わせた。塗膜形成した後、1cm角の正方形パターンをi線露光し、基板上、全面に格子状になるようパターンを得た。なお露光量は、上記ビアパターン評価で求めた露光量とした。なお、スピンコート法のプリベークは100℃、4分間とし、ドライフィルム貼り付けは、パターン形成と同条件で行った。また、現像は、1分間のパドル現像を露光部の塗布膜が溶解するまでとし、規定回数行った。
【0280】
その後、180℃で2時間、窒素パージを行い、パターン付き基板の後硬化を行った。次に、硬化した基板を1cm角のパターンに沿って、個片化し硬化膜付きのチップを得た。得られたチップにエポキシ樹脂付きのアルミピンを立て、150℃、1時間で加熱し、アルミピンをチップに接着させ、測定サンプルを作製した。冷却後、Quad Group社製のROMULUSを用い、
図1に示すような方法(以後、Stud-pull法と表記する)によって、密着力を測定した。測定条件として、測定スピードは20N/secで行った。
図1は密着力測定方法を示す説明図である。なお、
図1の1はSiN基板(基板)、2は硬化皮膜、3は接着剤付きアルミピン、4は支持台、5はつかみであり、6は引張方向を示す。得られた数値は10点測定の平均値であり、数値が高いほど硬化皮膜の
SiN基板に対する密着性が高い。また剥離界面が硬化被膜/接着剤のものの方が、基板/硬化被膜のものよりも密着力が高い。得られた数値、剥離界面を比較することにより密着性を評価した。
【0281】
更らに、高温高湿試験として、得られたチップを、飽和2気圧下、120℃、100%RHのプレッシャークッカー中、168時間放置した。その後、Stud-pull法によって、試験後の密着力を評価し、試験前の結果と合わせ、基板に対する密着力として表3に示した。
【0282】
【0283】
表2に示すように、本発明のポジ型感光性樹脂組成物、及びポジ型感光性ドライフィルムは、比較感光性樹脂組成物1~2の架橋性基のみで構成された高分子化合物を添加したポジ型感光性樹脂組成物、及び比較感光性樹脂組成物3~4の熱架橋剤を添加したポジ型感光性樹脂組成物、及び感光性ドライフィルムよりも、矩形性良くビアパターンを解像することが分かった。
【0284】
また表2、及び表3に示すように、本発明のポジ型感光性組成物、及び感光ドライフィルムは200℃以下の低温で硬化した場合であっても、良好な機械特性、及び高温高湿耐性を有する硬化膜を得ることが分かった。
【0285】
以上の結果、実施例1~31の組成物は、微細なパターンを解像する優れた解像力を示し、感光性材料として十分な特性を示すとともに、その硬化膜は、基板密着性や良好な高温高湿耐性を有し、回路や電子部品の保護膜として有用であるという結果が得られた。
【0286】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するもの、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0287】
1…SiN基板(基板)、 2…硬化皮膜、 3…接着剤付きアルミピン、 4…支持台、 5…つかみ、 6…引張方向