(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】研磨パッド
(51)【国際特許分類】
B24B 37/26 20120101AFI20240207BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B24B37/26
H01L21/304 622F
(21)【出願番号】P 2021511917
(86)(22)【出願日】2020-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2020013648
(87)【国際公開番号】W WO2020203639
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019071213
(32)【優先日】2019-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(74)【代理人】
【識別番号】100133798
【氏名又は名称】江川 勝
(72)【発明者】
【氏名】加藤 充
(72)【発明者】
【氏名】加藤 晋哉
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-151501(JP,A)
【文献】米国特許第6254456(US,B1)
【文献】特開2018-39078(JP,A)
【文献】特開2005-183785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/26
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨面を有する研磨層を含む研磨パッドであって、
前記研磨面において、螺旋中心から、第1番目の第1溝ピッチx
1(mm)~第n
h番目の第n
h溝ピッチx
h(mm)を有するn
h条の螺旋状に延びる溝(n
hは4以上の整数)を有し、
下記式(1):
【数1】
(式(1)中、x
iは螺旋中心から第n
i番目の溝ピッチ,μは前記第1溝ピッチx
1~第n
h溝ピッチx
hの平均値,σは前記第1溝ピッチx
1~第n
h溝ピッチx
hの標準偏差を表す)
で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、
前記第1溝ピッチx
1~第n
h溝ピッチx
hの最大値と最小値との差が3~12mmであることを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
前記歪度(S)の絶対値が1.3以上である請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記第1溝ピッチx
1~第n
h溝ピッチx
hの、下記式(2):
【数2】
(式(2)中、x
iは螺旋中心から第n
i番目の溝ピッチ,μは前記第1溝ピッチx
1~第n
h溝ピッチx
hの平均値,σは前記第1溝ピッチx
1~第n
h溝ピッチx
hの標準偏差、を表す)
で示される尖度(K)が2以上である請求項1または2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記尖度(K)が3以上である請求項3に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記歪度(S)/前記尖度(K)が0.3以上である請求項3または4に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記n
hが4~36である請求項1~5の何れか1項に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記研磨層が非発泡体である請求項1~6の何れか1項に記載の研磨パッド。
【請求項8】
研磨面を有する研磨層を含む研磨パッドであって、
前記研磨面において、所定の中心から周縁に広がる、同心円状または格子状の溝を有し、前記中心から前記周縁への仮想直線が、第1番目の第1溝ピッチx
1(mm)~第n
L番目の第n
L溝ピッチx
L(mm)を有するn
L+1条の溝(n
Lは4以上の整数)に交差し、
下記式(3):
【数3】
(式(3)中、x
iは前記中心から第n
i番目の溝ピッチ,μは前記第1溝ピッチx
1~第n
L溝ピッチx
Lの平均値,σは前記第1溝ピッチx
1~第n
L溝ピッチx
Lの標準偏差を表す)
で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、
前記第1溝ピッチx
1~第n
L溝ピッチx
Lの最大値と最小値との差が3~12mmであることを特徴とする研磨パッド。
【請求項9】
前記歪度(S)の絶対値が1.3以上である請求項8に記載の研磨パッド。
【請求項10】
前記第1溝ピッチx
1~第n
L溝ピッチx
Lの下記式(4):
【数4】
(式(4)中、x
iは前記中心から第n
i番目の溝ピッチ,μは前記第1溝ピッチx
1~第n
L溝ピッチx
Lの平均値,σは前記第1溝ピッチx
1~第n
L溝ピッチx
Lの標準偏差を表す)
で示される尖度(K)が2以上である請求項8または9に記載の研磨パッド。
【請求項11】
前記尖度(K)が3以上である請求項10に記載の研磨パッド。
【請求項12】
前記歪度(S)/前記尖度(K)が0.3以上である請求項10または11に記載の研磨パッド。
【請求項13】
前記研磨層が非発泡体である請求項10~12の何れかに記載の研磨パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨レート及び研磨均一性に優れた研磨パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体やシリコンウェハなどの基板材料やハードディスク,液晶ディスプレイ,レンズの材料であるガラスを鏡面加工したり、半導体デバイスの製造工程における絶縁膜や金属膜による凹凸を平坦化したりするために、研磨スラリーを用いて被研磨面を研磨パッドで研磨する化学機械研磨法(CMP)が用いられている。CMPにおいては、高精度化や低コスト化が求められている。そのために研磨レート及び研磨均一性の一層の向上が求められている。
【0003】
研磨パッドとしては、不織布にポリウレタン樹脂を含浸させた不織布タイプの研磨層を用いた比較的軟質の研磨パッドや、発泡または非発泡のポリウレタン樹脂シートを研磨層として用いた比較的硬質の研磨パッドが知られている。これらの研磨パッドの研磨面には、研磨対象物の被研磨面に研磨スラリーを均一かつ十分に供給することを目的として、また、被研磨面にスクラッチを発生させる原因になる、研磨屑を排出することを目的として、さらには、研磨面が被研磨面に吸着して被研磨材が破損することを防止することなどを目的として、通常、溝や穴が形成されている。
【0004】
例えば、特許文献1は、研磨面が、非発泡の樹脂から成り、溝構造から成る複数の凹凸部を有し、溝構造が同心円状,螺旋状,格子状,三角格子状,放射状の溝の群から選ばれた一つあるいは二つ以上の組み合せから成る研磨部材を開示する。また、特許文献1は、溝のピッチpは、0.1mm以上5.0mm以下であることが好ましいことを開示する。
【0005】
また、例えば、下記特許文献2は、第1幅及び第1ピッチを持つ第1の複数の実質的に円形同心の溝を有する第1研磨区域と;第1研磨区域を包囲し、第2幅及び第2ピッチとを持つ第2の複数の実質的に円形同心の溝を有する第2研磨区域と;を備え、第2研磨区域は、研磨パッドの最外区域であり、第2幅は第1幅より大きい;研磨パッドを開示する。このような研磨パッドによれば、研磨される基板上の研磨リングを排除することができることを開示する。また、異なるピッチで溝が離間した間隔を保つ区域に仕切られた研磨パッドの表面の溝を開示する。
【0006】
また、例えば、下記特許文献3は、研磨層の外周から内側に延びる一以上の連続した溝と、所与の半径での円周のうち一以上の連続した溝と交差して位置する部分をその所与の半径での全円周によって割った円周有溝率CFが、研磨層半径の関数としてその平均値の25%以内にとどまるCFを含む、研磨パッドを開示する。
【0007】
また、例えば、下記特許文献4は、次のような溝を有する研磨パッドを開示する。(i)研磨面の中心から周辺部へ向かう1本の仮想直線と交差する複数本の第一溝からなる第一溝群を有し、この複数本の第一溝同士は互いに交差することがなく、第一溝のピッチP1および第一溝の幅W1が、(P1-W1)÷W1=1~10の関係を満たす、(ii)研磨面の中心から周辺部へ向かう1本の仮想直線と交差する複数本の第二溝からなる第二溝群、この複数本の第二溝同士は互いに交差することがなく、第二溝のそれぞれは第一溝群の第一溝と交差せず、第二溝のピッチP2および第二溝の幅W2が、(P2-W2)÷W2=4~40の関係を満たす、からなる2つの溝群を有してなる研磨パッド。
【0008】
また、下記特許文献5は、円形の研磨パッドであって、当該円形の研磨パッドが、その表面に、螺旋状の溝パターンの溝を有し、溝パターンの中心点が、当該円形の研磨パッドの中心点からオフセットされている研磨パッドを開示する。
【0009】
また、下記特許文献6は、研磨パッドの研磨領域表面に複数の同心円状の溝が形成されており、該溝が研磨パッドの径方向で隣接する溝との間隔である溝ピッチ(p)が異なり、該溝ピッチが0.1mm以上であり、研磨パッドの径方向で隣接する溝ピッチの変化量が5mm以下であり、同心円状の溝のピッチが、円形研磨パッドの径方向において、中心部と外周部にそれぞれ第1と第2の極小値を有し、かつ半径の1/2部位である中央部に向かって漸近的に増大するように形成された研磨パッドを開示する。
【0010】
また、下記特許文献7は、研磨面に同一方向に延伸する複数の溝が形成された研磨パッドであって、複数の溝の幅及び深さは均一であり、複数の溝の間の研磨面であるランドの、溝の延伸方向に直交する方向の幅であるランド幅について、変動係数=(ランド幅の標準偏差)/(ランド幅の平均値)[数式1]で算出される変動係数が0.05以上0.30以下である研磨パッドを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2000-354952号公報
【文献】特開2001-54856号公報
【文献】特開2004-358653号公報
【文献】特開2008-258574号公報
【文献】特開2008-290197号公報
【文献】特開2010-184348号公報
【文献】特開2018-39078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、高い研磨レートと優れた研磨均一性とを兼ね備える研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一局面は、研磨面を有する研磨層を含む研磨パッドであって、研磨面において、螺旋中心から、第1番目の第1溝ピッチx1(mm)~第nh番目の第nh溝ピッチxh(mm)を有するnh条の螺旋状に延びる溝(nhは4以上の整数)を有し、
【0014】
下記式(1):
【0015】
【0016】
(式(1)中、xiは螺旋中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの標準偏差を表す)で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値との差が3~12mmである研磨パッドである。このような研磨パッドは、研磨面に螺旋状に溝を形成した場合に、高い研磨レートと優れた研磨均一性を示す。
【0017】
また、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの、下記式(2):
【0018】
【0019】
(式(2)中、xiは螺旋中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの標準偏差、を表す)で示される尖度(K)が2以上であることが研磨均一性にとくに優れる点から好ましい。
【0020】
また、本発明の他の一局面は、研磨面を有する研磨層を含む研磨パッドであって、研磨面において、所定の中心から周縁に広がる、同心円状または格子状の溝を有し、中心から周縁への仮想直線が、第1番目の第1溝ピッチx1(mm)~第nL番目の第nL溝ピッチxL(mm)を有するnL+1条の溝(nLは4以上の整数)に交差し、下記式(3):
【0021】
【0022】
(式(3)中、xiは中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの標準偏差を表す)で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が3~12mmである研磨パッドである。このような研磨パッドは、研磨面に同心円状または格子状に延びる溝を形成した場合に、高い研磨レートと優れた研磨均一性を示す。
【0023】
また、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの下記式(4):
【0024】
【0025】
(式(4)中、xiは中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの標準偏差を表す)で示される尖度(K)が2以上であることが研磨均一性にとくに優れる点から好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、高い研磨レートと優れた研磨均一性とを兼ね備える研磨パッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、第1実施形態の、第1溝ピッチx
1~第4溝ピッチx
4を有する4条の螺旋に延びる溝を有する研磨面10を説明するための平面模式図である。
【
図2】
図2は、
図1の研磨面10の螺旋中心Cから径方向に沿った厚さ方向断面を説明するための模式断面図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態の、第1溝ピッチx
1~第9溝ピッチx
9を有する9条の螺旋に延びる溝を有する研磨面20を説明するための平面模式図である。
【
図4】
図4は、
図3の研磨面10の螺旋中心から径方向に沿った厚さ方向断面を説明するための模式断面図である。
【
図5】
図5は、第2実施形態の、同心円状の溝を有する研磨面30を説明するための平面模式図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態の他の例である、格子状の溝を有する研磨面40を説明するための平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る研磨パッドについて、実施形態を例示して詳しく説明する。
【0029】
[第1実施形態]
第1実施形態の研磨パッドは、研磨面を有する研磨層を含む研磨パッドであって、 研磨面において、螺旋中心から、第1番目の第1溝ピッチx1(mm)~第nh番目の第nh溝ピッチxh(mm)を有するnh条の螺旋状に延びる溝(nhは4以上の整数)を有し、下記式(1):
【0030】
【0031】
(式(1)中、xiは螺旋中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの標準偏差を表す)で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値との差が3~12mmである研磨パッドである。
【0032】
第1実施形態の研磨パッドの研磨層の研磨面の形状について、図面を参照して説明する。
図1は、第1実施形態の研磨パッドの一例である、螺旋中心Cからアルキメデスの螺旋状に延びる、第1溝ピッチx
1~第4溝ピッチx
4を有する4条の溝を有する研磨面10を説明するための平面模式図である。
図2は、
図1の研磨面10の螺旋中心Cから径方向に沿った厚さ方向断面を説明するための模式断面図である。また、
図3は、第1実施形態の別の例の螺旋中心Cからアルキメデスの螺旋状に延びる、第1溝ピッチx
1~第9溝ピッチx
9を有する9条の溝を有する研磨面20を説明するための平面模式図である。
図4は、
図3の研磨面20の螺旋中心Cから径方向に沿った厚さ方向断面を説明するための模式断面図である。
【0033】
図1及び
図2を参照すれば、第1実施形態の研磨パッドの研磨面10は、上面視したときに、螺旋に延びる4条の溝を有する。具体的には、研磨面10においては、溝G
h(1),溝G
h(2),溝G
h(3)及び溝G
h(4)の4条の螺旋に延びる溝を有する。そして、各溝は、螺旋中心C側から順に、第1溝ピッチx
1,第2溝ピッチx
2,第3溝ピッチx
3,及び第4溝ピッチx
4のピッチ間隔を保持して配されている。そして、螺旋に延びる溝G
hは、研磨面10において、繰り返し領域である領域R1~R5を形成している。
【0034】
一方、
図3及び
図4を参照すれば、第1実施形態の他の例である研磨パッドの研磨面20は、上面視したときに、螺旋に延びる9本の溝を有する。具体的には、研磨面20においては、溝G
h(1),溝G
h(2),溝G
h(3),溝G
h(4),溝G
h(5),溝G
h(6),溝G
h(7),溝G
h(8)及び溝G
h(9)の9条の螺旋に延びる溝を有する。そして、各溝は、螺旋中心C側から順に、第1溝ピッチx
1,第2溝ピッチx
2,第3溝ピッチx
3,第4溝ピッチx
4,第5溝ピッチx
5,第6溝ピッチx
6,第7溝ピッチx
7,第8溝ピッチx
8及び第9溝ピッチx
9のピッチ間隔を保持して配されている。そして、螺旋に延びる溝G
hは、研磨面20において、繰り返し領域である領域R1~R3を形成している。
【0035】
各溝Ghの幅としては、研磨面において、0.1~5.0mm、さらには、0.2~4.0mmであることが好ましい。
【0036】
このような第1実施形態の研磨パッドの研磨面は、下記式(1):
【0037】
【0038】
(式(1)中、xiは螺旋中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの標準偏差を表す)で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値との差が3~12mmである。
【0039】
ここで、上記式(1)で示された歪度(S)は、溝ピッチの分布の正規分布からの歪みを表す指標となる統計量である。歪度(S)=0のときは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhが正規分布していることを示す。歪度(S)が0から正または負方向に離れれば離れるほど、溝ピッチの分布が正規分布から離れることを示す。
【0040】
第1実施形態の研磨パッドにおいては、研磨層の研磨面に形成された溝の溝ピッチは、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhを有するnh条の螺旋に延びる溝(nhは4以上の整数)を有し、歪度(S)の絶対値が1以上、すなわち、歪度(S)が+1以上、-1以下である。このように、歪度(S)の絶対値が1以上であることにより、高い研磨均一性を実現できる。歪度(S)の絶対値が1未満、すなわち、歪度(S)が-1を超えて、+1未満である場合には、研磨均一性が低くなる。第1実施形態の研磨パッドの研磨面においては、歪度(S)の絶対値が1以上であり、1.3以上、さらには、1.6以上であること、とくには、2~4であることが、より高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0041】
第1実施形態の研磨パッドの研磨面においては、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhを有する螺旋に延びる溝の螺旋の条数nhに一致する溝ピッチ数nhは、4以上であり、4~36、さらには12~24である溝が形成されていることが好ましい。nhが4未満の場合には研磨レートや研磨均一性が低下しやすい。
【0042】
また、第1実施形態の研磨パッドの研磨面においては、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhである各溝ピッチの範囲としては、1~30mm、さらには2~15mm、とくには3~12mm、であることが研磨レートや研磨均一性にとくに優れる点から好ましい。ここで溝ピッチとは、第ni番目の溝において、中心から見て、第ni番目の溝の開始点から第ni+1番目の溝の開始点までの距離であると定義される。大きすぎる溝ピッチを含む場合には、その部分で溝と溝の間のパッド凸部へのスラリーの供給性が不充分になり、研磨レートや研磨均一性が低下する傾向がある。一方、小さすぎる溝ピッチを含む場合には、溝と溝の間のランド幅が狭くなるための研磨レートが低下する傾向がある。
【0043】
一方、上述したように研磨面に形成された溝の溝ピッチが、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhを有するnh条の螺旋に延びる溝(nhは4以上の整数)において、歪度(S)の絶対値が1以上であったとしても、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値の差が大きすぎたり小さすぎたりする場合には、高い研磨均一性を実現できない。第1実施形態の研磨パッドは、研磨面において、歪度(S)の絶対値が1以上であって、且つ、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値の差が3~12mmであることにより、高い研磨均一性を実現できる。
【0044】
すなわち、第1実施形態の研磨パッドは、研磨面の、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値の差が3~12mmであることにより、高い研磨均一性を実現できる。第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値の差が3mm未満の場合には、溝ピッチの変動幅が小さすぎて全ての溝ピッチが同じ値に近づくために、研磨均一性の改善効果が低下する。また、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値の差が12mmを超える場合には、溝ピッチの最大値が12mmより大きくなるために、その部分で溝と溝の間のパッド凸部へのスラリーの供給性が不充分になり、研磨レートや研磨均一性が低下する。第1実施形態の研磨パッドの研磨面は、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値の差が3~12mmであり、3.3~11mm、さらには、3.7~10mmであること、とくには、4~9mmである溝を有することが、より高い研磨レートや研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0045】
また、第1実施形態の研磨パッドの研磨面においては、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの、下記式(2):
【0046】
【0047】
(式(2)中、xiは螺旋中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの標準偏差、を表す)で示される尖度(K)が2以上であることがより高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0048】
ここで、上記式(2)で示された尖度(K)は、溝ピッチの分布の正規分布からの尖り、すなわち、山の尖り度と裾の広がり度を表す統計量である。尖度(K)=0のときは、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhが正規分布していることを示す。尖度(K)が正の値に大きくなればなるほど正規分布より尖った分布、すなわち、溝ピッチの分布が平均付近に集中して分布の裾が重いことを示す。尖度(K)が負の値に小さくなればなるほど正規分布より扁平な分布であること、すなわち、溝ピッチの分布が平均付近から散らばり、分布の裾が軽いことを示す。
【0049】
第1実施形態の研磨パッドにおいては、研磨層の研磨面に形成された溝の溝ピッチは、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhを有するnh条の螺旋に延びる溝(nhは4以上の整数)において、尖度(K)が2以上、さらには、2.5以上であること、とくには、3~10であることが、より高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0050】
また、第1実施形態の研磨パッドにおいては、研磨層の研磨面に形成された溝の溝ピッチは、歪度(S)/尖度(K)が0.3以上であること、さらには0.35以上であること、とくには、0.4~0.8であることがより高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0051】
第1実施形態の研磨パッドにおいては、研磨面に形成された溝の形状は特に限定されない。螺旋の溝が延びる方向に対する垂直方向の鉛直方向の断面形状としては、例えば、方形,台形,三角形,半円形,半長円形等の形状が挙げられる。
【0052】
また、溝の深さとしては、
図2及び
図4のDで示すような、溝の最深部において、0.1~3mm、さらには、0.3~2mmであることが好ましい。また、溝の深さは、研磨層の厚さの30~90%、さらには、40~85%、とくには、50~80%であることが、クッション層を積層した場合において、研磨均一性と平坦化性能を両立させやすい点から好ましい。
【0053】
また、第1実施形態の研磨パッドにおいては、上述した螺旋に延びる溝に加えて、螺旋中心から研磨面の外周に延びる放射溝や穴を形成してもよい。放射溝は、幅が0.2~3mm、深さが0.1~3mm、本数が4~36本、さらには、幅が0.5~2mm、深さが0.3~2mm、本数が8~24本であることが好ましい。また、穴は研磨層の厚みより浅く穴底があるものでも、研磨層全体を貫通した孔でも、クッション層なども含めた研磨パッド全体を貫通した孔でもよい。パッド上面から見た穴の形状は、円形、楕円形、長円形、三角形、四角形などのいずれであってもよい。
【0054】
なお、溝ピッチの歪度や尖度は、研磨パッドの内周部と外周部などで変化しないことが好ましい。また、螺旋状の溝の中心は、研磨パッド中心とは異なっていてもよい。
【0055】
[第2実施形態]
第2実施形態の研磨パッドは、研磨面を有する研磨層を含む研磨パッドであって、研磨面において、所定の中心から周縁に広がる、同心円状または格子状の溝を有し、中心から周縁への仮想直線が、第1番目の第1溝ピッチx1(mm)~第nL番目の第nL溝ピッチxL(mm)を有するnL+1条の溝(nLは4以上の整数)に交差し、下記式(3):
【0056】
【0057】
(式(3)中、xiは中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの標準偏差を表す)で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が3~12mmである研磨パッドである。
【0058】
第2実施形態の研磨パッドの研磨層の研磨面の形状について、図面を参照して説明する。
図5は、第2実施形態の研磨パッドの研磨面の一例である、中心から周縁に向けて、第1溝ピッチ~第8溝ピッチを有する9条の同心円状の溝を有する研磨面30を説明するための平面模式図である。また、
図6は、別の例の、第2実施形態の、中心から周縁に向けて、第1溝ピッチ~第5溝ピッチを有する6条の格子状の溝を有する研磨面40を説明するための平面模式図である。
【0059】
図5を参照すれば、 第2実施形態の研磨パッドの研磨面30は、中心Cから周縁に広がる、9条の同心円状の溝を有する。具体的には、研磨面30においては、溝G
c(1),溝G
c(2),溝G
c(3),溝G
c(4),溝G
c(5),溝G
c(6),溝G
c(7),溝G
c(8)及び溝G
c(9)の9条の同心円からなる複数の溝から形成されており、中心から周縁への仮想直線Lが、各溝に交差する。そして、各溝は、第1溝ピッチx
1,第2溝ピッチx
2,第3溝ピッチx
3,第4溝ピッチx
4,第5溝ピッチx
5,第6溝ピッチx
6,第7溝ピッチx
7,及び第8溝ピッチx
8の間隔を保持して配されている。
【0060】
一方、
図6を参照すれば、第2実施形態の他の例である研磨パッドの研磨面40は、中心Cから周縁に広がる、6条の格子状の溝を有する。具体的には、研磨面40においては、溝G
c(1),溝G
c(2),溝G
c(3),溝G
c(4),溝G
c(5)及び溝G
c(6)の6条の溝を有する、格子の形状が形成されている。そして、中心Cから周縁への仮想直線Lが、各溝に交差する。格子状の溝においては、仮想直線Lは中心Cから、溝と垂直に交差するように仮想線が選択される。そして、各溝は、第1溝ピッチx
1,第2溝ピッチx
2,第3溝ピッチx
3,第4溝ピッチx
4,及び第5溝ピッチx
5 の間隔を保持して配されている。
【0061】
各溝Gcの幅としては、研磨面において、0.1~5.0mm、さらには、0.2~4.0mmであることが好ましい。
【0062】
このような第2実施形態の研磨パッドは、研磨面を有する研磨層を含む研磨パッドであって、研磨面において、所定の中心から周縁に広がる、同心円状または格子状の溝を有し、中心から周縁への仮想直線が、第1番目の第1溝ピッチx1(mm)~第nL番目の第nL溝ピッチxL(mm)を有するnL+1条の溝(nLは4以上の整数)に交差し、下記式(3):
【0063】
【0064】
(式(3)中、xiは中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの標準偏差を表す)で示される歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が3~12mmである。
【0065】
ここで、上記式(3)で示された歪度(S)は、溝ピッチの分布の正規分布からの歪みを表す指標となる統計量である。歪度(S)=0のときは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLが正規分布していることを示す。歪度(S)が0から正または負方向に離れれば離れるほど、溝ピッチの分布が正規分布から離れることを示す。
【0066】
第2実施形態の研磨パッドにおいては、研磨層の研磨面に形成された溝の溝ピッチは、所定の中心から周縁に広がる、同心円状または格子状の複数の溝を有し、中心から周縁への仮想直線に各溝が交差するときに、第1溝ピッチx1(mm)~第nL溝ピッチxL(mm)を有する溝ピッチ数nLの溝において、歪度(S)の絶対値が1以上、すなわち、歪度(S)が+1以上、-1以下である。このように、歪度(S)の絶対値が1以上であることにより、高い研磨均一性を実現できる。歪度(S)の絶対値が1未満、すなわち、歪度(S)が-1を超えて、+1未満である場合には、研磨均一性が低くなる。第2実施形態の研磨パッドの研磨面においては、歪度(S)の絶対値が1以上であり、1.3以上、さらには、1.6以上であること、とくには、2~4であることが、より高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0067】
第2実施形態の研磨パッドの研磨面においては、所定の中心から周縁への仮想直線が交差する溝の溝ピッチ数nLは、4以上であり、4~36、さらには12~24であることが好ましい。nLが4未満の場合には高い研磨レートと優れた研磨均一性とを実現できなくなる。
【0068】
また、第2実施形態の研磨パッドの研磨面においては、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLである各溝ピッチの範囲としては、1~30mm、さらには2~15mmであることが好ましい。大きすぎる溝ピッチを含む場合には、その部分で溝と溝の間のパッド凸部へのスラリーの供給性が不十分となり、研磨レートや研磨均一性が低下する傾向がある。また、小さすぎる溝ピッチを含む場合には、溝と溝の間のランド幅が狭くなり研磨レートが低下する傾向がある。そして、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの平均値(mm)μとしては、2~15mm、さらには、3~12mm、であることが研磨レートと研磨均一性にとくに優れる点から好ましい。
【0069】
一方、上述したように研磨面が所定の中心から周縁に広がる、同心円状または格子状の溝を有し、中心から周縁への仮想直線が、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLを有するnL+1条の溝に交差する場合において、歪度(S)の絶対値が1以上であっても、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値の差が大きすぎたり小さすぎたりする場合には、高い研磨均一性を実現できない。第2実施形態の研磨パッドは、研磨面において、歪度(S)の絶対値が1以上であって、且つ、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が3~12mmであることにより、高い研磨均一性を実現できる。
【0070】
すなわち、第2実施形態の研磨パッドは、研磨面において、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が3~12mmであることにより、高い研磨均一性を実現できる。第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が3mm未満の場合には、溝ピッチの変動幅が小さすぎて全ての溝ピッチが同じ値に近づくため、研磨均一性の改善効果が低下する。また、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が12mmを超える場合には、溝ピッチの最大値が12mmより大きくなるので、その部分で溝と溝の間のパッド凸部へのスラリーの供給性が不十分となり、研磨レートや研磨均一性が低下する。第2実施形態の研磨パッドにおいては、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの最大値と最小値との差が3~12mmであり、3.3~11mm、さらには、3.7~10mmであること、とくには、4~9mmであることが、より高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0071】
また、第2実施形態の研磨パッドにおいては、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの下記式(4):
【0072】
【0073】
(式(4)中、xiは中心から第ni番目の溝ピッチ,μは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの平均値,σは第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの標準偏差を表す)で示される尖度(K)が2以上であることがより高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0074】
ここで、上記式(4)で示された尖度(K)は、第1溝ピッチx1~第nL溝ピッチxLの分布の正規分布からの尖り、すなわち、山の尖り度と裾の広がり度を表す統計量である。尖度(K)=0のとき溝ピッチが正規分布していることを示す。尖度(K)が正の値に大きくなればなるほど正規分布より尖った分布、すなわち、溝ピッチの分布が平均付近に集中して分布の裾が重いことを示す。尖度(K)が負の値に小さくなればなるほど正規分布より扁平な分布、すなわち、溝ピッチの分布が平均付近から散らばり、分布の裾が軽いことを示す。
【0075】
第2実施形態の研磨パッドにおいては、尖度(K)が2以上であり、さらには、2.5以上であること、とくには、3~10であることが、より高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0076】
また、第2実施形態の研磨パッドにおいては、研磨層の研磨面に形成される溝の溝ピッチは、歪度(S)/尖度(K)が0.3以上であること、さらには0.35以上であること、とくには、0.4~0.8であることがより高い研磨均一性を実現できる点から好ましい。
【0077】
このような第2実施形態の研磨パッドにおいては、研磨面に形成される溝の形状は特に限定されない。溝が延びる方向に対する垂直方向の鉛直方向の断面形状としては、例えば、方形,台形,三角形,半円形,半長円形等の形状が挙げられる。
【0078】
また、溝の深さとしては、溝の最深部において、0.1~3mm、さらには、0.3~2mmであることが好ましい。また、溝の深さは、研磨層の厚さの30~90%、さらには、40~85%、とくには、50~80%であることが、クッション層を積層した場合において、研磨均一性と平坦化性能を両立させやすい点から好ましい。
【0079】
なお、溝ピッチの歪度や尖度は、研磨パッドの内周部と外周部などで変化しないことが好ましい。また、所定の中心は、研磨パッド中心とは異なっていてもよい。
【0080】
また、第2実施形態の研磨パッドにおいては、上述した同心円状または格子状の溝に加えて、所定の中心から研磨面の外周に延びる放射溝や穴を形成してもよい。放射溝は、幅が0.2~3mm、深さが0.1~3mm、本数が4~36本、さらには、幅が0.5~2mm、深さが0.3~2mm、本数が8~24本であることが好ましい。また、穴は研磨層の厚みより浅く穴底があるものでも、研磨層全体を貫通した孔でも、クッション層なども含めた研磨パッド全体を貫通した孔でもよい。パッド上面から見た穴の形状は、円形、楕円形、長円形、三角形、四角形などのいずれであってもよい。
【0081】
[第3実施形態]
以上、第1実施形態及び第2実施形態により、高い研磨レートと優れた研磨均一性とを兼ね備えるための、研磨パッドの研磨層の、最適化された溝ピッチを有する研磨面について詳しく説明した。本発明に係る研磨パッドは、第1実施形態及び第2実施形態で説明したような溝ピッチを有する溝が形成された研磨面を有する研磨層を含む限り、その他の形態や素材等の要素は特に限定されない。以下、研磨面以外の研磨パッドの要素について説明する。
【0082】
研磨パッドは、上述のような研磨面を有する研磨層を含む限りその層構成は特に限定されない。具体的には、研磨層のみからなる単層構造の研磨パッドであっても、例えば、クッション層や支持体層などの他の層と研磨層とを積層した2層以上の積層体からなる研磨パッドであってもよい。
【0083】
研磨層を形成する材料は、従来、研磨パッドの研磨層の材料として用いられている高分子材料であれば、特に限定されない。研磨層の材料として用いられる高分子材料の具体例としては、例えば、ポリウレタン,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリブタジエン,エチレン-酢酸ビニル共重合体,ブチラール樹脂,ポリスチレン,ポリ塩化ビニル,アクリル樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステル,ポリアミド等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、高分子ジオール、有機ジイソシアネート及び鎖伸長剤を含むポリウレタン原料を反応させて得られるポリウレタンが、平坦化性能に優れ、またウェハ表面にスクラッチが発生しにくいなど研磨性能にとくに優れた研磨層が得られる点から好ましい。
【0084】
ポリウレタン原料として用いられる高分子ジオールの具体例としては、例えば、ポリエチレングリコール,ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール;ポリ(ノナメチレンアジペート)ジオール,ポリ(2-メチル-1,8-オクタメチレンアジペート)ジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンタメチレンアジペート)ジオール等のポリエステルジオール;ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)ジオール,ポリ(3-メチル-1,5-ペンタメチレンカーボネート)ジオール等のポリカーボネートジオールなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いしてもよい。
【0085】
また、ポリウレタン原料として用いられる有機ジイソシアネートの具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネート,4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート,1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式ジイソシアネート;4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート,2,4-トリレンジイソシアネート,2,6-トリレンジイソシアネート,1,5-ナフチレンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中では、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネートが、耐摩耗性に優れる研磨層が得られる点から好ましい。
【0086】
また、ポリウレタン原料として用いられる鎖伸長剤としては、イソシアネート基と反応し得る活性水素原子を分子中に2個以上有する分子量350以下の低分子化合物が挙げられる。その具体例としては、例えば、エチレングリコール,ジエチレングリコール,1,3-プロパンジオール,1,2-ブタンジオール,1,3-ブタンジオール,1,4-ブタンジオール,1,5-ペンタンジオール,ネオペンチルグリコール,1,6-ヘキサンジオール,3-メチル-1,5-ペンタンジオール,1,4-ビス(β-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,9-ノナンジオール,スピログリコール等のジオール類;エチレンジアミン,テトラメチレンジアミン,ヘキサメチレンジアミン,ノナメチレンジアミン,ヒドラジン,キシリレンジアミン,イソホロンジアミン,ピペラジン等のジアミン類などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いしてもよい。これらの中では、1,4-ブタンジオール,1,9-ノナンジオール,及び、1,4-ブタンジオールと1,9-ノナンジオールとの組み合わせがとくに好ましい。
【0087】
ポリウレタン原料中の高分子ジオール,有機ジイソシアネート,及び鎖伸長剤の配合比率は、耐摩耗性等の研磨層に要求される特性を考慮して適宜選択される。具体的には、例えば、高分子ジオール及び鎖伸長剤に含まれる活性水素原子1モルに対して、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.95~1.3モル、さらには、0.96~1.1モル、とくには、0.97~1.05モルとなる配合比率であることが好ましい。高分子ジオール及び鎖伸長剤に含まれる活性水素原子1モルに対する、有機ジイソシアネートに含まれるイソシアネート基が0.95モル未満になる場合には、研磨層の機械的強度や耐摩耗性が低下する傾向があり、1.3モルを超える場合には生産性やポリウレタン原料の保存安定性が低下する傾向がある。
【0088】
ポリウレタンとしては、とくには、熱可塑性ポリウレタンが生産性に優れる点から好ましい。なお、熱可塑性とは、押出成形,射出成形,カレンダー成形、3Dプリンタ等の加熱工程により溶融して成形可能な特性を意味する。
【0089】
熱可塑性ポリウレタンは、高分子ジオール、有機ジイソシアネート及び鎖伸長剤を原料として使用し、プレポリマー法やワンショット法や、多軸スクリュー型押出機を使用して、実質的に溶媒の不存在下に上記の高分子ジオール、有機ジイソシアネートおよび鎖伸長剤を、所定の比率で溶融混練する連続溶融重合等により製造される。これらの中では、連続溶融重合が生産性に優れる点から好ましい。
【0090】
研磨層の製造方法は、特に限定されないが、例えば、高分子材料、または高分子材料に研磨パッドの分野で用いられている添加剤等を必要に応じて配合された高分子組成物を含むシートを製造し、シートを所定の均一な厚さに研磨する方法が挙げられる。
【0091】
研磨層を製造するためのシートは、例えば、上述した高分子材料、または高分子材料に研磨パッドの分野で用いられている添加剤等を必要に応じて配合された高分子組成物を押出機により押出して製造することができる、具体的には、例えば、T-ダイを装着した押出機を使用して、高分子材料、または高分子組成物を溶融押出する方法を用いることができる。押出機としては、単軸押出機、二軸押出機等を用いることができる。また、研磨層を製造するためのシートは、高分子または高分子組成物からなるブロックを予め製造し、それをスライスして製造してもよい。
【0092】
得られたシートは、必要に応じて、裁断、打ち抜き、切削等により所望の寸法、形状に加工したり、研削等により所望の厚さに加工したりして研磨層とすることができる。
【0093】
研磨層の厚さは特に限定されないが、研磨性能と作業性の観点から、0.6~4mm、さらには0.7~3mm、とくには0.8~2mmの範囲であることが好ましい。
【0094】
研磨層のD硬度は、平坦化性能の向上とウェハ表面でのスクラッチ発生の抑制の観点から、45~90であることが好ましく、50~88であることがより好ましく、55~85であることがさらに好ましい。
【0095】
研磨層は、非発泡構造(即ち、非多孔性)であることが好ましい。非発泡構造であることにより、研磨層の硬度が高く、より優れた平坦化性能を示し、さらに、表面や溝の側面及び底面に露出した気孔が存在しないことにより、研磨スラリー中の砥粒が気孔中で凝集・凝着してウェハ表面にスクラッチを発生させにくくなる。また、発泡構造の場合に比べて研磨層の摩耗速度が小さく長時間使用可能である点からも好ましい。
【0096】
研磨層の研磨面の溝の形成方法は、特に限定されない。具体的には、例えば、平坦なシートの表面を切削加工することにより溝を形成する方法;平坦なシートに、加熱された金型や金属線を接触させたり、レーザー光等の光線を照射したりして、その部分を溶解または分解・揮散させて溝を形成する方法;溝を形成するための凸部を有する金型を使用し、これに高分子材料や高分子組成物の溶融物を流し込んだ後に固化させるか、または、未硬化の高分子材料を流し込んだ後に硬化させて、予め溝が形成されたシートを製造する方法;等が挙げられる。
【0097】
研磨パッドは、研磨層のみからなる単層構造であっても、研磨層の裏面(研磨面の反対面)にクッション層を積層した積層構造であってもよい。これらの中では、クッション層を積層した積層構造であることが、ウェハ面内での研磨均一性が向上する点から好ましい。
【0098】
研磨層とクッション層との積層は、公知の粘着剤あるいは接着剤を用いて行うことができる。クッション層のC硬度は20~70であることが好ましい。また、クッション層の素材も特に限定されないが、例えば、不織布に樹脂を含浸させた素材や、非発泡構造または発泡構造のエラストマー等、が挙げられる。具体的には、不織布にポリウレタンを含浸させた複合体;天然ゴム,ニトリルゴム,ポリブタジエンゴム,シリコーンゴム等のゴム;ポリエステル系熱可塑性エラストマー,ポリアミド系熱可塑性エラストマー,フッ素系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー;発泡プラスチック;ポリウレタン等が挙げられる。これらの中では、好ましい柔軟性が得られやすい点から、発泡構造を有するポリウレタンがとくに好ましい。
【0099】
研磨パッドは、公知の研磨スラリー及び研磨装置を用いて、化学的機械的研磨に用いられる。研磨前や研磨中には、ダイヤモンドドレッサー等のドレッサーを使用して研磨パッドをコンディショニングし、研磨パッドの表面を整えることが好ましい。研磨の対象となる被研磨対象物は特に限定されない。具体的には、例えば、シリコンや炭化ケイ素,窒化ガリウム,ガリウムヒ素,酸化亜鉛,サファイヤ,ゲルマニウム,ダイヤモンドなどの半導体基板;半導体基板上に形成された、シリコン酸化膜,シリコン窒化膜,low-k膜などの絶縁膜や、銅,アルミニウム,タングステンなどの配線材料;ガラス、水晶、光学基板、ハードディスク等;が挙げられる。とくには、研磨パッドは、半導体基板上に形成された絶縁膜や配線材料を研磨する用途に好ましく用いられる。
【実施例】
【0100】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。なお、本発明の範囲はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0101】
[製造例1]
数平均分子量600のポリエチレングリコール[略号:PEG]、1,4-ブタンジオール[略号:BD]、3-メチル-1,5-ペンタンジオール[略号:MPD]、及び、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート[略号:MDI]を、PEG:BD:MPD:MDIの質量比が15.3:14.2:8.0:62.5となるような割合で用いて、定量ポンプにより、同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタンを製造した。
【0102】
そして、得られた熱可塑性ポリウレタンの溶融物を、ストランド状に水中に連続的に押出した後、ペレタイザーで細断してペレットを得た。このペレットを70℃で20時間除湿乾燥した後、単軸押出成形機に供給し、T-ダイから押出して、厚さ2.0mmのポリウレタンシートを成形した。そして、厚さ2.0mmのポリウレタンシートの表面を研削して厚さ1.5mmの均一なシートにし、直径81cmの円形状に切り抜いた。JISK 7311に準じて、測定温度25℃の条件で測定された、ポリウレタンシートのD硬度は81であった。
【0103】
[製造例2]
数平均分子量850のポリテトラメチレングリコール[略号:PTMG]、PEG、BD、および、MDIを、PTMG:PEG:BD:MDIの質量比が24.6:11.6:13.8:50.0となるような割合で用いて、定量ポンプにより、同軸で回転する2軸押出機に連続的に供給して、連続溶融重合を行って熱可塑性ポリウレタンを製造した。
【0104】
そして、得られた熱可塑性ポリウレタンの溶融物を、ストランド状に水中に連続的に押出した後、ペレタイザーで細断してペレットを得た。このペレットを70℃で20時間除湿乾燥した後、単軸押出成形機に仕込み、T-ダイから押出して、厚さ2.0mmのポリウレタンシートを成形した。そして、厚さ2.0mmのポリウレタンシートの表面を研削して厚さ1.5mmの均一なシートにし、直径81cmの円形状に切り抜いた。JISK 7311に準じて、測定温度25℃の条件で測定された、ポリウレタンシートのD硬度は67であった。
【0105】
[実施例1]
製造例1で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度81のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、螺旋中心から、表1に示すように、溝ピッチが8.5mm、8.5mm、8.5mm、14.5mmである4条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ 1.0mmであり、溝の上底が2.5mm、溝の下底が0.5mmの台形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が2.0であり、尖度(K)が4.0であり、(S)/(K)が0.50であり、第1溝ピッチ~第4溝ピッチの最大値と最小値との差は6.0mmである。
【0106】
そして、研磨層の研磨面に対する反対面に、厚さ1.5mmの発泡ポリウレタンシート(C硬度40)から形成されたクッション層を粘着テープにより貼り合わせることにより、積層構造の研磨パッドを作製した。
【0107】
そして、得られた研磨パッドの研磨特性を次の評価方法により評価した。
【0108】
〈研磨レート、研磨均一性〉
得られた研磨パッドをストラスバー社製の研磨装置「nHance6EG」に装着した。そして、旭ダイヤモンド工業(株)製のダイヤモンドドレッサー(ダイヤ番手#100)を用い、超純水を200mL/分の速度で流しながらドレッサー回転数91rpm、研磨パッド回転数66rpm、ドレッサー荷重40Nにて、60分間研磨パッド表面をコンディショニングした。そして、日立化成(株)製の研磨スラリー「HS-8005」を10倍に希釈して調整した研磨スラリーを準備した。そして、プラテン回転数100rpm、ヘッド回転数107rpm、研磨圧力300hPaの条件において、200mL/分の速度で研磨スラリーを研磨パッドの研磨面に供給しながら膜厚2000nmの酸化ケイ素膜を表面に有する直径12インチのシリコンウェハを60秒間研磨した。そして、60秒間の研磨後、研磨面のコンディショニングを30秒間行った。そして、別のシリコンウェハを再度研磨し、さらに、30秒間コンディショニングを行った。このようにして10枚のシリコンウェハを研磨した。
【0109】
そして、10枚目に研磨したウェハについて、研磨前及び研磨後の酸化ケイ素膜の膜厚をウェハ面内で各81点測定し、各点での研磨レートを求めた。81点の研磨レートの平均値を研磨レート(R)とした。研磨均一性は、〔不均一性(%)=(σ’/R)×100〕(ただし、σ’は81点の研磨レートの標準偏差)の式によって求めた不均一性により評価した。不均一性の値が小さいほど、ウェハ面内で酸化ケイ素膜が均一に研磨されており研磨均一性が優れていることを示す。
【0110】
研磨レートは943nm/min、不均一性は6.7%であった。結果を表1に示す。
【0111】
【0112】
[実施例2]
製造例1で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度81のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、螺旋中心から、表1に示すように、溝ピッチが、8.5mm、9.4mm、8.5mm、13.6mmである4条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ 1.0mmであり、溝の上底が2.5mm、溝の下底が0.5mmの台形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が1.8であり、尖度(K)が3.3であり、(S)/(K)が0.55であり、第1溝ピッチ~第4溝ピッチの最大値と最小値との差は5.1mmである。
【0113】
実施例1と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、酸化ケイ素膜の研磨特性を評価した。研磨レートは911nm/min、不均一性は6.9%であった。結果を表1に示す。
【0114】
[実施例3]
製造例1で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度81のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、螺旋中心から、表1に示すように、溝ピッチが、9.4mm、7.6mm、9.4mm、13.6mmである4条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ 1.0mmであり、溝の上底が2.5mm、溝の下底が0.5mmの台形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が1.3であり、尖度(K)が2.5である、(S)/(K)が0.53であり、第1溝ピッチ~第4溝ピッチの最大値と最小値との差は6.0mmである。
【0115】
実施例1と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、酸化ケイ素膜の研磨特性を評価した。研磨レートは822nm/min、不均一性は7.7%であった。結果を表1に示す。
【0116】
[比較例1]
製造例1で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度81のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、螺旋中心から、表1に示すように、溝ピッチが、9.7mm、9.7mm、9.7mm、10.9mmである4条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ 1.0mmであり、溝の上底が2.5mm、溝の下底が0.5mmの台形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が2.0であり、尖度(K)が4.0であり、(S)/(K)が0.50であり、第1溝ピッチ~第4溝ピッチの最大値と最小値との差は1.2mmである。
【0117】
実施例1と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、酸化ケイ素膜の研磨特性を評価した。研磨レートは868nm/min、不均一性は12.6%であった。結果を表1に示す。
【0118】
[比較例2]
製造例1で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度81のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、螺旋中心から、表1に示すように、溝ピッチが、8.3mm、10.7mm、8.3mm、12.7mmである4条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ 1.0mmであり、溝の上底が2.5mm、溝の下底が0.5mmの台形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が0.71であり、尖度(K)が-2.1であり、(S)/(K)が-0.34であり、第1溝ピッチ~第4溝ピッチの最大値と最小値との差は4.4mmである。
【0119】
実施例1と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、酸化ケイ素膜の研磨特性を評価した。研磨レートは931nm/min、不均一性は16.1%であった。結果を表1に示す。
【0120】
[比較例3]
製造例1で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度81のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、螺旋中心から、表1に示すように、溝ピッチが、6.0mm、6.0mm、6.0mm、22.0mmである4条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ 1.0mmであり、溝の上底が2.5mm、溝の下底が0.5mmの台形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が2.0であり、尖度(K)が4.0であり、(S)/(K)が0.50であり、第1溝ピッチ~第4溝ピッチの最大値と最小値との差は16.0mmである。
【0121】
実施例1と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、酸化ケイ素膜の研磨特性を評価した。研磨レートは729nm/min、不均一性は21.2%であった。結果を表1に示す。
【0122】
[実施例4]
製造例2で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度67のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、螺旋中心から、溝ピッチが、4.0mm、4.0mm、4.0mm、4.0mm、4.0mm、4.0mm、4.0mm、4.0mm、8.0mmである9条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ1.0mm、幅1.0mmの正方形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が3.0であり、尖度(K)が9.0であり、(S)/(K)が0.33であり、第1溝ピッチ~第4溝ピッチの最大値と最小値との差は4.0mmである。
【0123】
そして、研磨層の、螺旋状に溝が形成された研磨面に対する反対面に、0.8mmの発泡ポリウレタンシート(C硬度55)から形成されたクッション層を粘着テープにより貼り合わせることにより、積層構造の研磨パッドを作製した。
【0124】
そして、得られた研磨パッドの研磨特性を次の評価方法により評価した。
【0125】
〈研磨レート、研磨均一性〉
得られた研磨パッドをストラスバー社製の研磨装置「nHance6EG」に装着した。そして、旭ダイヤモンド工業(株)製のダイヤモンドドレッサー(ダイヤ番手#100)を用い、超純水を200mL/分の速度で流しながらドレッサー回転数91rpm、研磨パッド回転数66rpm、ドレッサー荷重40Nにて、60分間研磨面をコンディショニングした。次に、(株)フジミインコーポレーテッド製の研磨スラリー「PL-7101」1000mLに対し、31%濃度の過酸化水素水を30mLの割合で混合して調整した研磨スラリーを準備した。そして、プラテン回転数90rpm、ヘッド回転数91rpm、研磨圧力230hPaの条件において、200mL/分の速度で研磨スラリーを研磨パッドの研磨面に供給しながら膜厚2000nmの銅膜を表面に有する直径12インチのシリコンウェハを60秒間研磨した。そして、60秒間の研磨後、研磨面のコンディショニングを30秒間行った。そして、別のシリコンウェハを再度研磨し、さらに、30秒間コンディショニングを行った。このようにして10枚のシリコンウェハを研磨した。
【0126】
そして、10枚目に研磨したウェハについて、研磨前および研磨後の銅膜の膜厚をウェハ面内で各81点測定し、各点での研磨レートを求めた。81点の研磨レートの平均値を研磨レート(R)とした。研磨均一性は、〔不均一性(%)=(σ’/R)×100〕(ただし、σ’は81点の研磨レートの標準偏差)の式によって求めた不均一性により評価した。不均一性の値が小さいほど、ウェハ面内で銅膜が均一に研磨されており研磨均一性が優れていることを示す。
【0127】
研磨レートは307nm/min、不均一性は13.5%であった。結果を表2に示す。
【0128】
【0129】
[実施例5]
製造例2で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度67のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、表2に示すように、螺旋中心から、溝ピッチが、3.0mm、3.0mm、3.0mm、3.0mm、4.0mm、3.0mm、3.0mm、3.0mm、3.0mm、12.0mmである10条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ1.0mm、幅0.7mmの長方形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が3.1であり、尖度(K)が9.7であり、(S)/(K)が0.32であり、第1溝ピッチ~第10溝ピッチの最大値と最小値との差は9.0mmである。
【0130】
実施例4と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、銅膜の研磨特性を評価した。研磨レートは306nm/min、不均一性は11.1%であった。結果を表2に示す。
【0131】
[実施例6]
製造例2で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度67のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、表2に示すように、螺旋中心から、溝ピッチが、4.5mm、4.5mm、4.5mm、3.5mm、4.5mm、4.5mm、4.5mm、9.5mmである8条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ1.0mm、幅1.0mmの正方形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が2.6であり、尖度(K)が7.2であり、(S)/(K)が0.36であり、第1溝ピッチ~第8溝ピッチの最大値と最小値との差は6.0mmである。
【0132】
実施例4と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、銅膜の研磨特性を評価した。研磨レートは292nm/min、不均一性は14.0%であった。結果を表2に示す。
【0133】
[比較例4]
製造例2で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度67のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、表2に示すように、螺旋中心から、溝ピッチが、5.0mm、5.0mm、2.0mm、5.0mm、5.0mm、2.0mm、5.0mm、5.0mm、2.0mmである9条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ1.0mm、幅1.0mmの正方形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が-0.86であり、尖度(K)が-1.7であり、(S)/(K)が0.50であり、第1溝ピッチ~第8溝ピッチの最大値と最小値との差は3.0mmである。
【0134】
実施例4と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、銅膜の研磨特性を評価した。研磨レートは227nm/min、不均一性は14.3%であった。結果を表2に示す。
【0135】
[比較例5]
製造例2で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度67のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、表2に示すように、螺旋中心から、溝ピッチが、5.0mm、5.0mm、5.0mm、5.0mm、5.0mm、5.0mm、5.0mm、5.0mm、5.0mm、5.5mmである10条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ1.0mm、幅0.7mmの長方形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が3.2であり、尖度(K)が10.0であり、(S)/(K)が0.32であり、第1溝ピッチ~第10溝ピッチの最大値と最小値との差は0.5mmである。
【0136】
実施例4と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、銅膜の研磨特性を評価した。研磨レートは264nm/min、不均一性は15.4%であった。結果を表2に示す。
【0137】
[比較例6]
製造例2で得られた、厚さ1.5mm、直径81cmのD硬度67のポリウレタンシートの一面を切削加工することにより、表2に示すように、螺旋中心から、溝ピッチが、3.0mm、7.0mm、3.0mm、7.0mm、3.0mm、7.0mm、3.0mm、7.0mmである8条のアルキメデス螺旋状に延びる溝が周縁まで繰り返された溝を形成した。このようにして、研磨面を有する研磨層を作成した。なお、溝の形状は、深さ1.0mm、幅1.0mmの正方形の断面形状である。このような研磨面の溝は、溝ピッチの歪度(S)が0.0であり、尖度(K)が-2.8であり、(S)/(K)が0であり、第1溝ピッチ~第8溝ピッチの最大値と最小値との差は4.0mmである。
【0138】
実施例4と同様にして、研磨層にクッション層を貼り合わせて積層構造の研磨パッドを作製し、銅膜の研磨特性を評価した。研磨レートは242nm/min、不均一性は22.5%であった。結果を表2に示す。
【0139】
以上の結果から、次のことがわかる。研磨面に形成される溝ピッチが、歪度(S)の絶対値が1以上であり、且つ、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値との差が3~12mmであった実施例1~6の研磨パッドは、歪度(S)の絶対値が1未満、または、第1溝ピッチx1~第nh溝ピッチxhの最大値と最小値との差が3~12mmの範囲外である比較例1~6の研磨パッドに比べて、高い研磨レートと優れた研磨均一性とを兼ね備えることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明に係る研磨パッドは、半導体基板やガラス等の研磨用途に有用である。特に半導体やハードディスク、液晶ディスプレイなどの基板材料、あるいはレンズやミラーなどの光学部品などを化学機械研磨するときに好適である。
【符号の説明】
【0141】
10,20,30,40 研磨面
C 中心
R1~R5 繰り返し領域
【0142】
Gh(1)~Gh(9),Gc(1)~Gc(9) 溝
【0143】
X1~X9 ピッチ