(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定方法及びSCOL測定システム
(51)【国際特許分類】
G01B 11/00 20060101AFI20240207BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G01B11/00 G
H01L21/66 J
(21)【出願番号】P 2021528965
(86)(22)【出願日】2019-08-05
(86)【国際出願番号】 US2019045039
(87)【国際公開番号】W WO2020106335
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-08-03
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マナッセン アムノン
(72)【発明者】
【氏名】パスコヴァル ユーリ
(72)【発明者】
【氏名】アミット エラン
【審査官】飯村 悠斗
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-529952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0255738(US,A1)
【文献】特表2013-504063(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0219449(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定方法であって、
信号行列を生成することであって、
少なくとも1つの照射パラメータにおける複数の値で、および前記ターゲット上の複数のスポット位置で、SCOLターゲットを照射することであって、前記照射はスポット直径が1μm未満で、開口数(NA)が1/3より大きいものである、照射すること、
ゼロ次回折および一次回折の干渉信号を測定すること、および
前記照射パラメータおよび前記ターゲット上の前記スポット位置に対する前記測定された干渉信号から、前記信号行列を構築することによって、前記信号行列を生成することと、
前記信号行列を分析することによってターゲットオーバーレイを導出することと
を含
み、
前記SCOLターゲットは、複数層の各層で周期的構造を備え、前記周期的構造のオフセットを用いることなく前記ターゲットオーバーレイを導出することを特徴とするスキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定方法。
【請求項2】
請求項1に記載のSCOL測定方法であって、前記SCOLターゲットは、少なくとも1つの周期的構造を備え、前記複数のスポット位置は、前記少なくとも1つの周期的構造のピッチ内であることを特徴とするSCOL測定方法。
【請求項3】
請求項2に記載のSCOL測定方法であって、前記少なくとも1つの周期的構造の測定方向に沿って前記ターゲットピッチ以内の前記ターゲット上に、前記複数のスポット位置を設定することと、前記測定方向と垂直な方向において前記測定された干渉信号の平均値を求めることとをさらに含むことを特徴とするSCOL測定方法。
【請求項4】
請求項1に記載のSCOL測定方法であって、前記少なくとも1つの照射パラメータは、照射波長を含み、その前記複数の値は、少なくとも3つの照射波長を含むことを特徴とするSCOL測定方法。
【請求項5】
請求項1に記載のSCOL測定方法であって、既知のオーバーレイ値を用いてSCOLターゲットの測定を行うまたはシミュレートすることによって、前記信号行列を校正することをさらに含むことを特徴とするSCOL測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のSCOL測定方法であって、前記スポット位置、照射パラメータ、およびターゲットオーバーレイに関して前記信号行列のモデルを作り出すことをさらに含むことを特徴とするSCOL測定方法。
【請求項7】
コンピュータ可読プログラムを有する非一時的コンピュータ可読記憶媒体を備えたコンピュータプログラム製品であって、請求項1に記載のSCOL測定方法を備える1つまたは複数の実行命令をプロセッサで遂行することを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【請求項8】
請求項7に記載のコンピュータプログラム製品を備えることを特徴とする計測モジュール。
【請求項9】
スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定システムであって、
少なくとも1つの照射パラメータにおける複数の値で、および前記ターゲット上の複数のスポット位置で、SCOLターゲットを照射するように構成された照射ユニットであって、前記照射はスポット直径が1μm未満で、開口数(NA)が1/3より大きいものである、照射ユニットと、
ゼロ次回折および一次回折の干渉信号を測定するように構成された測定ユニットと、
前記照射パラメータおよび前記ターゲット上の前記複数のスポット位置に対する前記測定された干渉信号から、信号行列を構築することと、前記信号行列を分析することによってターゲットオーバーレイを導出することとを行うように構成された処理ユニットと
を備え
、前記SCOLターゲットは、複数層の各層で周期的構造を備え、前記周期的構造のオフセットを用いることなく前記ターゲットオーバーレイを導出することを特徴とするスキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定システム。
【請求項10】
請求項9に記載のSCOL測定システムであって、前記少なくとも1つの周期的構造の測定方向に沿って前記ターゲットピッチ以内の前記ターゲット上に、前記複数のスポット位置を設定することと、前記少なくとも1つの周期的構造の要素に沿って前記SCOLターゲットをスキャンすることによって、前記測定方向と垂直な方向において前記測定された干渉信号の平均値を求めることとを行うようにさらに構成されることを特徴とするSCOL測定システム。
【請求項11】
請求項9に記載のSCOL測定システムであって、前記少なくとも1つの照射パラメータは、照射波長を含み、その前記複数の値は、少なくとも3つの照射波長を含むことを特徴とするSCOL測定システム。
【請求項12】
請求項9に記載のSCOL測定システムであって、既知のオーバーレイ値を用いてSCOLターゲットの測定を行うまたはシミュレートすることによって、前記信号行列を校正するようにさらに構成されることを特徴とするSCOL測定システム。
【請求項13】
請求項12に記載のSCOL測定システムであって、前記スポット位置、照射パラメータ、およびターゲットオーバーレイに関して前記信号行列のモデルを作り出すようにさらに構成されることを特徴とするSCOL測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体計測の分野に関し、より詳細には、スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)ターゲット、およびそれらを測定するための計測モジュールおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常のSCOL計測は、対応する層において複数の周期的構造を有する複数のセルを利用し、これは、セルの間の差分信号からのオーバーレイの導出を可能にするように、所定のオフセットだけ互いに対して変位される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2015/0219449号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)計測測定のための効率的で経済的な方法および機構をもたらし、それによって半導体計測の技術分野に改善をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下は本発明の最初の理解をもたらす簡略化された概要である。この概要は、必ずしも主要な要素を特定するものではなく、本発明の範囲を限定するものでもなく、単に以下の説明の序論として役立つものである。
【0006】
本発明の一態様は、スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定方法をもたらし、測定方法は、信号行列を生成することであって、少なくとも1つの照射パラメータにおける複数の値で、およびターゲット上の複数のスポット位置で、SCOLターゲットを照射することであって、照射はスポット直径<1μを生じる、NA(開口数)>1/3でのものである、照射すること、ゼロ次および一次回折の干渉信号を測定すること、および照射パラメータおよびターゲット上のスポット位置に対する測定された信号から、信号行列を構築することによって、信号行列を生成することと、信号行列を分析することによってターゲットオーバーレイを導出することとを含む。
【0007】
本発明のこれらの、さらなる、および/または他の態様および/または利点は、以下の詳しい説明に記載され、場合によっては詳しい説明から推論可能であり、および/または本発明の実施によって学習可能である。
【0008】
本発明の実施形態のより良い理解のため、およびそれらがどのように実施され得るかを示すために、同様な番号は全体を通して対応する要素またはセクションを示す添付の図面が、純粋に例として次に参照される。
【0009】
添付の図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、SCOLターゲットおよびそれぞれの測定システムの高レベル概略図である。
【
図1B】本発明のいくつかの実施形態による、SCOLターゲットおよびそれぞれの測定システムの高レベル概略図である。
【
図2】先行技術による、SCOLターゲットおよびその測定手順の概略図である。
【
図3】本発明のいくつかの実施形態による、方法を例示する高レベルフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の説明において、本発明の様々な態様が述べられる。説明の目的のために、本発明の十分な理解をもたらすように、特定の構成および詳細が記載される。しかし、また当業者には、本発明が、本明細書で示された特定の詳細なしに実施され得ることが明らかになるであろう。さらに、本発明を不明瞭にしないように、周知の特徴は省かれているまたは簡略化されている場合がある。図面に対する特定の参照では、示される詳細は例として、および本発明の例示的考察のためのみであり、本発明の原理および概念的態様の、最も有用であり容易に理解される説明であると考えられるものをもたらすために示されることが強調される。この関連において、本発明の基本的な理解のために必要なより詳しく、本発明の構造的詳細を示すことはせず、図面と共に受け取られる説明により、当業者にはどのように本発明のいくつかの形が実際に具現化され得るかを明らかにする。
【0012】
本発明の少なくとも1つの実施形態が詳しく説明される前に、本発明はその応用において、以下の説明に記載されるまたは図面に例示される構成要素の構造および配置の詳細に限定されないことが理解されるべきである。本発明は、様々な形で実施または遂行され得る他の実施形態に、ならびに開示される実施形態の組み合わせに適用可能である。また、本明細書で使用される専門語および用語は、説明のためであり、限定するものと見なされるべきではないことが理解されるべきである。
【0013】
別段に明記されていない限り、以下の考察から明らかなように、本明細書の考察全体にわたって、「処理する」、「コンピューティングする」、「計算する」、「決定する」、「強化する」、「導出する」などの用語を用いることは、コンピューティングシステムのレジスタおよび/またはメモリ内の、電子的などの物理量として表されるデータを、コンピューティングシステムのメモリ、レジスタまたは他のそのような情報記憶、送信、またはディスプレイデバイス内の、同様に物理量として表される他のデータに操作するおよび/または変換する、コンピュータまたはコンピューティングシステム、または同様な電子コンピューティングデバイスの動作および/またはプロセスを指すことが理解される。いくつかの実施形態において、照射技術は、可視範囲内の電磁放射、紫外線さらにはx線などより短波長の放射、および場合によってはさらには粒子ビームを含み得る。
【0014】
本発明の実施形態は、スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)計測測定のための効率的で経済的な方法および機構をもたらし、それによって半導体計測の技術分野に改善をもたらす。スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定方法、システム、およびターゲットが、ダイ内ターゲットを用いた効率的なSCOL計測を可能にするためにもたらされる。方法は、信号行列を生成することであって、少なくとも1つの照射パラメータにおける複数の値で、およびターゲット上の複数のスポット位置で、SCOLターゲットを照射することであって、照射はスポット直径<1μを生じる、NA(開口数)>1/3でのものである、照射すること、ゼロ次および一次回折の干渉信号を測定すること、および照射パラメータおよびターゲット上のスポット位置に対する測定された信号から、信号行列を構築することによって、信号行列を生成することと、信号行列を分析することによってターゲットオーバーレイを導出することを含む。SCOLターゲットは、より少なく、より小さなターゲットセルが必要になるので、先行技術のターゲットに対して1/10のサイズとなるように縮小されることができ、計測測定の精度および忠実度を改善するように、容易にダイ内に設定され得る。小さなスポット、変化する照射パラメータの使用、および迅速なスポットスキャニング方法は、反対の予め規定されたオフセットを有するセルのペアの代わりに、単一セルを用いることを可能にし、およびスポットサイズ縮小と共にセルサイズの縮小を可能にする。
【0015】
図1Aおよび1Bは、本発明のいくつかの実施形態による、SCOLターゲット110および測定システム100の高レベル概略図である。システム100、例えば、計測システムまたはその中のモジュールは、結果として例えば、1μより小さい、または場合によっては250~1000nmもしくは600~1000nmのいずれかの間の対応する小さな照射スポット136を生じる、大きなNA(開口数)の照射ユニット130を用いて(例えば、瞳孔面において少なくとも一部分は重複し145A、-1、0、および+1の次数で、NA=0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、または他の値など、NA>1/3を有して)、周期的構造120A、120B(例えば、回折格子)を有するSCOLターゲット110を照射するように構成され得る。
図1Aにおいて、上部周期的構造120Aと下部周期的構造120Bとの間に中間層、ならびに照射135、反射信号(R
0はゼロ次を示す)、およびそれぞれ上部および下部±1回折次数に対してT
±1およびB
±1で示される、±1次の回折された信号145の記号を有して、SCOLターゲット110が概略断面図において例示される。
図1Bでは、SCOLターゲット110は概略上面図において例示され、周期的構造120A、120Bの間にオフセット(図示せず)を有し得る。
【0016】
システム100は、ターゲット110上の複数のスポット位置136でSCOLターゲット110を照射するように構成されることができ、これはSCOLターゲット110の周期的構造120A、120Bの測定方向に沿ってステップで進められることができ、および場合によっては、測定された信号の平均値を求めるために周期的構造120A、120Bの要素に沿って(測定方向と垂直に)スキャンされ得る。スポット位置136は、
図1Bに概略的に例示されるように、SCOLターゲット110の周期的構造120A、120Bのピッチ以内となるように選択され得る。スポット位置136は2つ以上のピッチにわたって広がり得るが、分析のために等価でない信号を生じるように、スポット位置の少なくとも2つは、ターゲット周期性に関して等価でないようにするべきであることが留意される。1つ(または2つ)のターゲットピッチ以内でスポット位置136を選択することは、多くのターゲットピッチが大きな先行技術の照射スポットによってカバーされることを必要とする先行技術と比べて、ターゲットサイズの顕著な縮小を可能にする。
【0017】
システム100は、ターゲット110上の複数のスポット位置136からの対応する複数の測定信号145を測定するように構成された、瞳孔面センサを有する測定ユニット140をさらに備える。信号145は、
図1Aおよび1Bで重複145Aによって概略的に例示されるように、各スポット位置136からの照射のゼロ次および一次回折成分の干渉信号を備える。このような干渉は、小さな照射スポット135を用いることによるものであり、測定は信号強度の変化を利用して、バックグラウンドのゼロ次反射から、一次信号変動を分離するまたは評価することができる。SCOLターゲット110は単一セルを備えることができ、それからすべての信号が導出されることができ、対応するオーバーレイが計算され得る。信号145の分析は、その全体を本願に引用して援用する米国特許出願第2017/0268869号によって教示されるように遂行され得る。
【0018】
システム100は、例えば、複数の異なる波長(例えば、3つ以上)を用いて、異なる焦点および/または位置(場合によってはターゲットをスキャンすることが関わる)、異なる偏光などを用いて、少なくとも2つの異なる照射パラメータで(「グレー」SCOLとして示される)照射130を遂行することと、ターゲット110上のスポット位置、および照射パラメータに関して、測定された信号145の分析からターゲットオーバーレイを導出することとを行うように構成され得る。1つ、2つ、3つまたはそれより多い照射パラメータが測定に用いられることができ、いくつかの実施形態において、3つの照射パラメータ値を用いることが、測定およびオーバーレイ導出の複雑さに関して、いくつかの場合に最適であることが見出されたことが留意される。
【0019】
システム100は、照射パラメータおよびターゲット110上のスポット位置に関して測定された信号145から信号行列150を構築することと、信号行列150を分析することによってターゲットオーバーレイを導出することとを行うように構成された処理ユニット155をさらに備える。測定は、ターゲット110上の複数のスポット位置136に対する、異なる照射特性を有する、複数の小さなスポット135を使用し、これは干渉された(混合された)回折次数を生じるので、それから対応する信号145-結果としての信号行列150は、ターゲットオーバーレイを導出するように、スポット位置136および照射特性に関して、信号147を導出し、分析するために用いられ得る。
【0020】
システム100は、既知のオーバーレイ値を用いてSCOLターゲットの測定を行うまたはシミュレートすることによって、信号行列150を校正するようにさらに構成され得る。例えば、既知のオーバーレイを用いて、複数の基準ターゲット、場合によっては基準ウェハが、システム100によって測定されることができ、測定は、測定結果を既知のオーバーレイに関係付ける、モデルを生成するために用いられ得る。代替的にまたは相補的に、シミュレーションが、オーバーレイと信号との間の関係を示唆するために、および場合によっては、用いられる照射パラメータ(例えば、波長値、他の照射パラメータ)、ならびにスポットサイズおよびNA、ステッピングおよびスキャニング方法、およびターゲット110の上のスポット135のパラメータなどを最適化するために用いられ得る。システム100は、スポット位置136、照射パラメータ、およびターゲットオーバーレイに関して、信号行列150のモデルを作り出すようにさらに構成され得る。校正は、トレーニングフェーズにおいて、またはオン・ザ・フライで遂行され得る。小さなスポット135を用いたターゲット110のスキャニングは、例えば、1つのターゲットピッチ(または例えば、2つのターゲットピッチ)の長さスケール、例えば、1μ未満にわたってスキャンすることによって遂行され得る。
【0021】
いくつかの実施形態において、ターゲット110は、2つの測定方向に沿って指定されたピッチを有する周期的構造をもつように設計されることができ、システム100は、同じセルを両方向に対して用いて測定を導出するように構成されることができ、対応する信号行列150は各方向に対して、場合によっては同時に導出され、上記で開示されたようにそれぞれのオーバーレイを導出するために分析される。
【0022】
様々な実施形態において、例えば、回折されたフィールドの強さの変化を、オーバーレイに関して、変化する照射パラメータに関係付ける、光路差(optical path differences:OPD)の電磁気的モデル化および/またはシミュレーションに基づいて、オーバーレイと、複数の照射パラメータを用いた測定結果との関係を導出するために、定式化が用いられ得る。対応する分析、シミュレーション、および/またはトレーニングの後に、オーバーレイと測定結果との間の直接の関係が確立され得る。
【0023】
例えば、本発明者らは、2つの測定波長における、差分信号の和と、信号和の差の比は、2つの波長におけるOPDの間の差のみに(または一般的に2つの測定条件に)依存し、OPD自体には依存しないことに注目した。従って、いくつかの実施形態において、この表現は、プロセス変化の間での安定なパラメータとなり得る。例えば、測定信号は、照射パラメータと強度測定および/またはそれらに関連付けられた精度メトリクスの間の関係を維持しながら、モデル化され得る。
【0024】
いくつかの実施形態において、プロセス変化によるランドスケープシフトが、オーバーレイを導出するために、および/またはオーバーレイとターゲット非対称性との間を切り離すために利用されることができ、例えば、その全体を本願に引用して援用する米国特許出願第2016/0313658号および第2018/0023950号によって教示されるように、ランドスケープは、少なくとも1つのパラメータに対する少なくとも1つの計測メトリックの、少なくとも部分的に連続な依存性を備える。例えば、測定は、オーバーレイ(および/またはプロセス変化)を導出するために、ランドスケープの平坦および共振領域において遂行され得る。いくつかの実施形態において、ウェハ上の異なる場所での単一のターゲットにおいて、反対の所定のオフセットが設定されることができ、導出は、これらの意図されたオフセットの相対効果を考慮に入れることができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、トレーニングフェーズは、ウェハにわたる複数の場所にわたる計測測定方法を測定すること、および測定から、少なくとも一部分は、照射パラメータにおける変化と、OPDにおける変化との間の関係のモデル化することを含むことができ、これは次いでオーバーレイを導出するために用いられ得る。例えば、OPDにおける変化のいくつかの範囲に関して、いくつかの波長領域が測定のために用いられ得る。
【0026】
図2は、先行技術による、SCOLターゲット80、およびその測定手順90の概略図である。先行技術のSCOLターゲット80は、通常各測定方向において少なくとも2つのセル80A、80Bを備え、これらは対応する層内に2つ以上の周期的構造を備え、これらは概略的に例示される、反対の所定のオフセット+f
0および-f
0だけ互いに対して変位される。セル80A、80Bは、セル80A、80Bからの測定された回折信号から、周期的構造の間の(意図されない)オーバーレイを抽出するために用いられる。測定90は、それぞれのセンサ60の瞳孔面における反射された照射(ゼロ次)との、回折次数65(例えば、+1次、-1次)の重複を防止する、照射および測定条件をもたらすことによって遂行される。必要な先行技術の照射条件(照射ユニット70の)は、小さな開口数(NA)を含み、これは、セル80A、80B上に大きな照射スポット75を作り出し、センサ60上の必要な回折次数の分離をもたらす。例えば、散乱された次数の分離を確実にするように、結果として1μ以上の照射スポット75を生じるように、小さな照射NAが構成され得る(例えば、NA=0.1、0.2、0.3または約1/3より小さな他の値であり、瞳孔面内で重複しない次数-1,0、および+1)。次いでオーバーレイは、セル62の間の差分信号から計算される。大きな照射スポット75は、先行技術のセル80A、80Bが大きくなることを必要とし、方向当たりに2つのセルの最小必要条件(反対の所定のオフセット±f
0をもたらすため)は、先行技術のSCOLターゲット80のサイズをさらに増大させ、通常例えば、8μ×8μ(セルサイズ)以上に達することが留意される。
【0027】
有利なことに、発明者らは、先行技術とは対称的に、SCOLに対する単一セル手法は、反対の所定のオフセットを有する先行技術のセルペアを用いる代わりに、複数の波長など、小さな照射スポットと複数の照射パラメータ値を用いて達成可能であることを見出した。例えば、照射パラメータの変更は、測定された信号強度(および/または関係する精度メトリクス)における変動に関係されることが見出され、これは次いで、それぞれの測定されるターゲットに関するデータを導出するために用いられた。有利なことに、開示される手法は、各測定方向に対して2つのセルの代わりに単一のセルを用いることにより、および小さな照射スポットの使用によりセルをより小さくすることができるので、計測ターゲットのために必要な占有面積を著しく低減し、場合によってはダイ内計測を可能にする。占有面積の著しい低減を達成することは、代償として、複数の測定パラメータおよび場合によってはターゲットスキャニング(これは長くかかり、照射変更を必要とし得る)を用いた測定を必要とし、および場合によっては代償として、測定データからのオーバーレイの導出は、先行技術と比べるとより直接的ではなくなるので、校正がより経験的になることが留意される。校正された測定からのオーバーレイの導出は、トレーニングフェーズにおいて、例えば、シミュレーションを用いて、校正ウェハを用いておよび/またはシミュレーションを用いて、分析的に遂行され得る。しかし、後の初期校正およびトレーニング、オーバーレイの導出は、少なくとも先行技術と同じ速さになることが期待されることが強調される。
【0028】
初期モデル化により、いくつかの実施形態において、SCOLターゲット110は、それらの各測定方向に対して1つのセル115への低減(または場合によっては両方向に同じセルを用いて)、および任意選択で、より小さなスポット135を用いることによるセルサイズの縮小により、先行技術のSCOLターゲット80より著しく小さくなり得る。例えば、単一セルターゲット110は、4以下のピッチバー(周期的構造要素)幅、場合によっては1または2ピッチバー幅とすることができる。結果として、SCOLターゲット110は、先行技術のSCOLターゲット80と比べて1/10まで小さくすることができる(例えば、それぞれ大きさが2μ×2μ以下に対して8μ×8μ以上)。SCOLターゲット110の複数の層における周期的構造120A、120Bは、整列されることができ、なぜなら先行技術の予め規定されたオフセットは本発明では不必要になり得るからである(それらは先行技術では、差分信号62をもたらすために用いられ、これは本発明では信号行列150によって置き換えられ得る)。様々な実施形態において、先行技術で用いられる所定のオフセットではなく、周期的構造120A、120Bの異なる応答からオーバーレイを抽出するために、複数の照射特性が用いられ得ることが留意される。
【0029】
有利なことに、開示される小さなSCOLターゲット110は、ダイ内ターゲットまたはマークとして容易に設計され、ウェハ上の半導体デバイスに関して、より高い計測精度および忠実度をもたらす。
【0030】
様々な実施形態において、開示されるシステム100、ターゲット110、および方法200は、照射NAを増加させて、ゼロ次および一次の混合を含んだ信号をもたらすことができ、これは瞳孔エリアの上で重複する次数における、結果としての変調を検出するようにスポットスキャニングによって利用される(スポットがスキャンされるのに従って、および/または照射特性が変化されるのに従って)。複数の波長を用いた測定は、追加のセルを必要とせずに、オーバーレイを導出するための情報を含む。システム100は、高速のスポットスキャニングおよび高速の波長切り換えを実施することができ、その結果、開示される測定のために必要なデータは、指定された必要条件に対して、NAM(移動-取得-測定)の最小の犠牲で、または犠牲なしに収集され、それによって顧客によって要求されるダイ内の小さなターゲットを可能にする。
【0031】
図3は、本発明のいくつかの実施形態による、方法200を例示する高レベルフローチャートである。方法段階は、上述のSCOLターゲット110および/または測定システム100に関して遂行されることができ、任意選択で方法200を実施するように構成され得る。方法200は、例えば、計測モジュール内の、少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって少なくとも部分的に実施され得る。いくつかの実施形態は、コンピュータ可読プログラムが具現化されたコンピュータ可読記憶媒体を備えたコンピュータプログラム製品を備え、方法200の関連した段階を遂行するように構成される。いくつかの実施形態は、方法200の実施形態から導き出される計測測定を備える。方法200は、以下の段階をそれらの順序に関係なく含み得る。
【0032】
スキャトロメトリオーバーレイ(SCOL)測定方法200は、信号行列を生成することであって(段階240)、SCOLターゲットを照射することであって、照射は小さなスポット直径<1μを生じる、大きなNA(開口数)>1/3でのものであり(段階210)、ターゲット上の複数のスポット位置でのものであり(段階220)、および少なくとも1つの照射パラメータにおける複数の値(段階230)、例えば、3つ以上の波長でのものである、照射すること、およびゼロ次および一次回折の干渉信号を測定すること(段階215)によって、信号行列を生成することを含む。次いで信号行列は、照射パラメータおよびターゲット上のスポット位置に対する測定された信号から構築される(段階240)。方法200は、例えば、ターゲット上のスポット位置および照射パラメータに関する測定された信号の分析から、信号行列を分析することによってターゲットオーバーレイを導出することをさらに含む(段階250)。
【0033】
SCOLターゲットは、少なくとも1つの周期的構造を備えることができ、複数のスポット位置は、少なくとも1つの周期的構造の1ピッチ(または2ピッチ)以内とすることができ、その結果ターゲットの周期性に関して等価でないスポット位置が用いられる。ターゲット上のスポット位置は、少なくとも1つの周期的構造の測定方向に沿ってターゲットピッチ以内に設定することができ、スポット位置をターゲットピッチ以内で変化させ(段階222)、測定された信号は、例えば、ターゲット要素に沿ってスポットをスキャンすることによって、測定方向と垂直な方向において平均値が求められ得る(段階224)。
【0034】
いくつかの実施形態において、SCOL測定方法200は、既知のオーバーレイ値を用いてSCOLターゲットの測定を行うまたはシミュレートすることによって、信号行列を校正することをさらに含み得る(段階260)。
【0035】
いくつかの実施形態において、SCOL測定方法200は、ウェハにわたる複数の場所にわたる対応する計測測定方法を測定するトレーニングフェーズを遂行することをさらに含み得る(段階270)。
【0036】
いくつかの実施形態において、SCOL測定方法200は、スポット位置、照射パラメータ、およびターゲットオーバーレイに関して信号行列のモデルを作り出すことをさらに含み得る(段階280)。
【0037】
いくつかの実施形態において、SCOLターゲット設計方法として方法200は、単一セルターゲットとして、および/または2μ×2μもしくはそれ未満として、および場合によっては対応するウェハ上にダイ内に配置された、SCOLターゲットを設計することを含み得る。いくつかの実施形態において、方法200は、ターゲットの周期的構造が、整列されるように、および/または最大でも4、3、もしくは2ピッチバー(周期的構造要素)幅、場合によってはさらには1ピッチ幅となるように構成することをさらに含み得る。いくつかの実施形態は、SCOLターゲット110、および/またはSCOLターゲット設計方法によって設計されたSCOLターゲットの、ターゲット設計ファイルを備える。
【0038】
本発明の態様は、上記では、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、およびコンピュータプログラム製品のフローチャート図および/または部分図を参照して述べられている。フローチャート図および/または部分図の各部分、およびフローチャート図および/または部分図の複数の部分の組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施され得ることが理解されるであろう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、またはマシンを生み出す他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサにもたらされることができ、その結果コンピュータのプロセッサまたは他のプログラマブルデータ処理装置を通じて実行する命令が、フローチャートおよび/または部分図またはそれらの複数の部分において指定された機能/動作を実施するための手段を作り出す。
【0039】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、または他のデバイスに特定のやり方で機能するように指示することができる、コンピュータ可読媒体に記憶され得ることができ、その結果コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フローチャートおよび/または部分図またはそれらの複数の部分において指定された機能/動作を実施する命令を含んだ製品を生み出す。
【0040】
コンピュータプログラム命令はまた、コンピュータによって実施されるプロセスを生み出すためにコンピュータ、他のプログラマブル装置、または他のデバイス上で行われることになる一連の動作ステップを引き起こすように、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、または他のデバイスにロードされることができ、その結果コンピュータまたは他のプログラマブル装置上で実行する命令が、フローチャートおよび/または部分図またはそれらの複数の部分において指定された機能/動作を実施するためのプロセスをもたらす。
【0041】
前述のフローチャートおよび図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、およびコンピュータプログラム製品の可能な実装形態のアーキテクチャ、機能、および動作を例示する。この関連において、フローチャートまたは部分図内の各部分は、指定された論理機能を実施するための1つ以上の実行可能命令を備えるモジュール、セグメント、またはコードの部分を表し得る。また、いくつかの代替実装形態において、ある部分に示された機能は、図に示されたものとは異なる順序で生じ得ることが留意されるべきである。例えば、連続して示される2つの部分は、実際は、実質的に並行して実行されることができ、または複数の部分は、関わる機能に応じて、時には逆の順序で実行され得る。また、部分図および/またはフローチャート図、ならびに部分図および/またはフローチャート図の複数の部分の組み合わせは、指定された機能もしくは動作を行う専用ハードウェアベースのシステム、または専用ハードウェアとコンピュータ命令との組み合わせによって実施され得ることが留意されるであろう。
【0042】
上記の説明において、実施形態は本発明の例または実装形態である。「一実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「いくつかの実施形態(certain embodiments)」、または「いくつかの実施形態(some embodiments)」が様々に現れることは、必ずしもすべてが同じ実施形態を指さない。本発明の様々な特徴は、単一の実施形態との関連で述べられ得るが、特徴はまた別々にまたは任意の適切な組み合わせでもたらされ得る。逆に言えば、本発明は本明細書で、明瞭にするために別々の実施形態との関連で述べられ得るが、本発明はまた単一の実施形態において実施され得る。本発明のいくつかの実施形態は、上記で開示される異なる実施形態からの特徴を含むことができ、いくつかの実施形態は、上記で開示される他の実施形態からの要素を組み込むことができる。特定の実施形態との関連での本発明の要素の開示は、それらの使用を特定の実施形態のみに限定するものと受け取られるべきではない。さらに、本発明は様々な形で遂行されまたは実施されることでき、本発明は上記の説明で概説されたもの以外のいくつかの実施形態において実施され得ることが理解されるべきである。
【0043】
本発明は、それらの図または対応する記述に限定されない。例えば、フローは、それぞれ例示されたボックスまたは状態を通して、または例示されおよび記述されたものと正確に同じ順序で、移動する必要はない。本明細書で用いられる技術的および科学的用語の意味は、別段の定義がない限り、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものとする。本発明は、限られた数の実施形態に関して述べられたが、これらは本発明の範囲に対する限定として解釈されるべきではなく、むしろ好ましい実施形態のいくつかのうちの例証として解釈されるべきである。他の可能な変更形態、変形、および応用例も本発明の範囲内である。従って、本発明の範囲はこれまで述べられてきたものによって限定されるべきではなく、添付の「特許請求の範囲」およびそれらの法的な等価物による。