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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-06
(45)【発行日】2024-02-15
(54)【発明の名称】PPGを基礎とするTPUの連続生産
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/66 20060101AFI20240207BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240207BHJP
   C08G 18/08 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C08G18/66 067
C08G18/10
C08G18/08 095
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021531258
(86)(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(86)【国際出願番号】 EP2019083115
(87)【国際公開番号】W WO2020109566
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】18209089.4
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】シェファー,フランク
(72)【発明者】
【氏名】フレーゼ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】ペゼルト,エルマー
(72)【発明者】
【氏名】山本 悦弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康之
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大
(72)【発明者】
【氏名】ドラーヴェ,パトリク
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-056269(JP,A)
【文献】特表2020-512430(JP,A)
【文献】特表2009-532538(JP,A)
【文献】特開昭49-109497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G18/00-18/87;71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’が-25℃以下である熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、少なくとも以下の工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを基礎とする少なくとも1種のポリオールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と反応させ、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含
工程(i)による前記反応が連続的に行われ
工程(i)における前記反応の反応温度が160℃未満であることを特徴とする熱可塑性ポリウレタンの製造方法
【請求項2】
工程(i)による反応と工程(ii)による反応との間に、ポリオール組成物(PZ-2)の貯蔵またはコンテナ化が生じないことを特徴とする、請求項1に記載の方法
【請求項3】
続プロセスとして実行されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法
【請求項4】
工程(i)における反応において、前記ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも30%が変換されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
前記ポリプロピレングリコールが、1.5未満の多分散性Pdを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法
【請求項6】
前記ポリプロピレングリコールが、650g/molから4000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリプロピレングリコールが、1200g/molから1750g/molの範囲の数平均分子量Mnを有し、1.5未満の多分散性Pdを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
工程(i)による反応が、スタティックミキサー、反応押出機もしくは撹拌槽、またはそれらの組み合わせで行われることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
工程(ii)による反応において、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールおよびポリカーボネートまたはポリカーボネートジオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールが、ポリオール組成物(PZ-2)に添加されることを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法
【請求項10】
工程(ii)による反応において、ポリオール組成物(PZ-2)にさらなるポリオールが添加されないことを特徴とする、請求項1~のいずれか一項に記載の方法
【請求項11】
前記ポリイソシアネート(P2)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ならびに4,4’-、2,4’-および2,2’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
採用された前記ポリオール組成物(PZ-2)および前記鎖延長剤の成分の官能価の合計と、採用された前記ポリイソシアネート組成物(PI)の官能価の合計とのモル比が、1:0.8~1:1.3の範囲にあることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記熱可塑性ポリウレタンが、DIN53505に従って決定され50Aから80Dの範囲のショア硬度を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法
【請求項14】
前記熱可塑性ポリウレタンが不透明から透明であることを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法によって得られた熱可塑性ポリウレタンの、押出成形物品、射出成形物品およびプレス成形物品、ならびに電気産業、自動車産業、機械工学、3D印刷、医療および消費財のための発泡体、靴底、ケーブルシース、ホース、プロファイル、ドライブベルト、繊維、不織布、フィルム、成形品、プラグ、ハウジング、減衰要素を製造するための使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’が-25℃以下であり、少なくともポリプロピレングリコール(当該ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にある)を含むポリオール組成物(PZ-1)をポリイソシアネート(P1)と反応させてプレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得て、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させることを少なくとも含む方法によって得ることができるまたは得られた熱可塑性ポリウレタンに関する。本発明はさらに、そのような熱可塑性ポリウレタンの製造方法、および本発明による熱可塑性ポリウレタンの、または本発明による製造方法によって得ることができるもしくは得られた熱可塑性ポリウレタンの、射出成形製品、押出製品、フィルム、プロファイルおよび成形物品の製造のための使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)は、その優れた機械的特性、および費用対効果の高い熱可塑性加工への快適性(amenability)から、産業上非常に重要である。入力材料を変えることで、特性の異なるプロファイルを得ることができる。熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマーの合成は、段階的に行う方法(プレポリマー計量法)、または1段階ですべての成分を同時に反応させる方法(ワンショット計量法)のいずれか一方で実行してよい。様々な用途のための熱可塑性ポリウレタンは、原則として先行技術から知られている。
【0003】
したがって、WO2014/060300A1は、ポリエーテルカーボネートポリオールを基礎とする熱可塑性ポリウレタンエラストマーの製造方法を開示する。押出成形物品または射出成形物品を製造するためのその使用、および押出成形または射出成形によって製造された物品も同様に開示されている。
【0004】
WO2007/101807A1は、好ましくは、1%~50%の、好ましくは1%~30%の、好ましくは1%~25%の、特に好ましくは3%~23%の、特に4%~20%のNCO含量を有する、イソシアネート含有プレポリマーの連続製造方法であって、製造が押出機で実施されるものを開示する。本発明はさらに、任意に尿素、イソシアヌレート、アロファネートおよび/またはビウレット構造を含んでいてもよい、コンパクトまたは好ましくは発泡した熱可塑性または架橋した柔軟、半硬質または硬質ポリウレタンの製造方法であって、プレポリマーが採用される製造方法に関する。
【0005】
EP1757632A1は、改良された加工特性を有する熱可塑的に加工可能なポリウレタンエラストマー(TPU)を、最初にプレポリマーを製造し、それをさらに反応させることを含む多段反応で製造する製造方法に関する。また、EP1391472A1は、プレポリマーを介して30MPa以上の引張強度(EN ISO 527-3に従って測定)を有する熱可塑性加工可能なポリウレタンエラストマー(TPU)を連続的に製造するための多段プロセスを開示する。
【0006】
EP900812A1は、熱可塑的に加工可能なポリウレタンの連続的な製造方法を開示する。この製造方法では、イソシアネート基末端プレポリマーを200℃未満の温度で鎖延長剤と集中的に混合し、得られた混合物を二軸押出機で準断熱反応条件で反応させて、熱可塑的に加工可能なポリウレタンを得る。
【0007】
DE19625987A1には、熱可塑的に加工可能なポリウレタンの連続的な製造方法が開示されており、この製造方法では、イソシアネートが多段反応で段階的に添加される。
【0008】
ポリプロピレングリコールは低コストであることから、熱可塑性ポリウレタンの製造に適した原料である。従来の連続プロセスでは、変性していないポリプロピレングリコール(PPG)を使用するのは不利である。なぜなら、第二級OH基の反応性が低いために二次反応が起こり、不十分な機械的特性を持つ製品が得られるからである。
【0009】
熱可塑性ポリウレタンの製造における入力材料としてのポリプロピレングリコールの使用は、例えば、WO02/064656A2に開示されている。熱可塑性ポリウレタンは、二級ヒドロキシ基の割合が高いポリオールを用いてワンショットプロセスで製造される。WO93/24549A1およびUS2006/0258831A1も、第二級OH基を有するポリオールを用いて熱可塑性ポリウレタンを製造するワンショットプロセスを開示する。
【0010】
EP1746117A1は、ジイソシアネートを、2個を超えるイソシアネート反応性水素原子を有する少なくとも1種の化合物と反応させ、その後、任意に未変換のモノマージイソシアネートを除去することにより、モノマーイソシアネートの含有量が少ないイソシアネート含有プレポリマーの製造方法を開示する。プレポリマーを用いたワンショットプロセスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】WO2014/060300A1
【文献】WO2007/101807A1
【文献】EP1757632A1
【文献】EP1391472A1
【文献】EP900812A1
【文献】DE19625987A1
【文献】WO02/064656A2
【文献】WO93/24549A1
【文献】US2006/0258831A1
【文献】EP1746117A1
【文献】DE-A 29 01 774 A1
【非特許文献】
【0012】
【文献】“Kunststoffhandbuch, volume 7, Polyurethane”, Carl Hanser Verlag, 3rd edition 1993, chapter 3.1
【文献】J.H. Saunders and K.C. Frisch、"High Polymers"、第16巻、Polyurethane,第1部および第2部、Interscience Publishers、1962年および1964年
【文献】Taschenbuch fuer Kunststoff-Additive、R.Gaechter and H.Mueller(Hanser Verlag Munich 1990年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
従来の製法では、ブロック長を調整すること、したがって得られるポリマーの特性を調整することはしばしば困難である。したがって、本発明の目的は、ポリプロピレングリコールを使用することができ、良好な機械的特性を示す熱可塑性ポリウレタン/その製造方法を提供することであった。また、本発明のさらなる目的は、対応するポリマーをコスト効率よく製造する方法を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、この目的は、DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’が-25℃以下であり、少なくとも以下の工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを基礎とする少なくとも1種のポリオールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と反応させ、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含むプロセスによって得られたまたは得ることができる熱可塑性ポリウレタンによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0015】
さらなる態様では、本発明は、DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’が-25℃以下であり、工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを基礎とする少なくとも1種のポリオールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と反応させ、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含む熱可塑性ポリウレタンの製造方法を提供する。
【0016】
本発明の文脈では、測定はDIN EN ISO 6721に基づいて行われる。DIN規格で指定されたパラメ-タから逸脱して、本発明の文脈において決定されたパラメータは、一定の2K/分の加熱速度プログラムに匹敵する段階的プログラムを用いて測定される。測定は、5Kの段階的プログラムと35秒の段階ごとのホールドタイムで行われる。測定は、幅と厚さの比率が1:6のサンプルで行われる。
【0017】
本発明による方法は、さらなる工程を含んでいてもよい。本方法は、したがって、工程(i)および(ii)の前および/または後にさらなる処理工程を含んでもよく、あるいは工程(i)および(ii)の間に処理を含んでもよい。本発明の文脈では、記載された成分および組成物に加えて、さらなる化合物を採用してもよい。
【0018】
本発明の文脈において、ポリオール組成物(PZ-2)の貯蔵またはコンテナ化(containerizing)が、工程(i)による反応と工程(ii)による反応との間に起こらない場合が好ましい。
【0019】
さらなる実施形態では、本発明は、それゆえ、工程(i)による反応と工程(ii)による反応との間にポリオール組成物(PZ-2)の貯蔵またはコンテナ化が行われない、本明細書に記載の熱可塑性ポリウレタンも提供するものである。
【0020】
製造方法を、例えばインラインワンショットプロセスのように、連続プロセスとして実行することが有利である。さらなる実施形態では、本発明は、したがって、前記製造方法が連続プロセスとして実行される、上記のような熱可塑性ポリウレタンも提供する。
【0021】
驚くべきことに、第二級末端OH基を高い割合で有する費用対効果の高いポリプロピレングリコールを用いて製造可能な本発明による熱可塑性ポリウレタンは、良好な機械的特性を示し、透明な製品が得られることがわかった。
【0022】
その後さらに反応するプレポリマーを製造するために連続的なインラインワンショットプロセスモード(例えば、インラインワンショット)を使用可能であることが分かった。ここで、本発明に従って製造される熱可塑性ポリウレタンの所望の機械的特性を達成するためには、プレポリマーの製造における100%未満、すなわち例えば90%の変換率で十分である。したがって、本発明によれば、TPUインサイチュプロセスにおいて、100%のプレポリマーの不経済な変換を回避することが可能である。
【0023】
本発明の文脈において、機械的特性は、特に明記しない限り、100℃で20時間の熱処理を前もって施した射出成形板で決定される。
【0024】
本発明によれば、例えば非極性ポリオールの場合、プレポリマーの製造を通じて、鎖延長剤とのより良い相溶性を実現し、分子量の向上を可能にすることができる。また、本発明によれば、残留NCO含量の具体的な調整が可能であり、これにより、得られる熱可塑性ポリウレタンのブロック長およびモルフォロジーに影響を与えることができる。
【0025】
本発明による熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも工程(i)および(ii)を含む方法によって得ることができる/得られたものである。本発明によるプロセスモードは、ポリプロピレングリコールを使用して熱可塑性ポリウレタンを製造し、特に良好な機械的および光学的特性を有する製品が得られるようにプロセスを実行することを可能にする。
【0026】
工程(i)によれば、ポリプロピレングリコールを含むポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と最初に反応させて、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る。採用されるポリオール組成物(PZ-1)は、ポリプロピレングリコールを含み、ここにおいて、ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合は20%~100%の範囲にある。
【0027】
工程(ii)によれば、前記反応で得られたプレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)が、続いて、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)および分子量500g/mol未満の少なくとも1種の鎖延長剤と反応する。
【0028】
本発明の文脈において、採用したポリオールの平均分子量Mnの決定は、特に断らない限り、OH価(OH number)を介して行われる。
【0029】
本発明による熱可塑性ポリウレタンの製造に適したポリプロピレングリコールは、原則として知られている。本発明に適したポリプロピレングリコールとしては、650g/molから4000g/molの範囲の数平均分子量Mn、特に850g/molから3500g/molの範囲の数平均分子量Mn、より好ましくは950g/molから2500g/molの範囲の数平均分子量Mn、特に好ましくは1000g/molから2000g/molの範囲の数平均分子量Mn、さらに好ましくは1200g/molから1750g/molの範囲の数平均分子量Mn、例えば1400g/molの分子量Mnを有するものを含む。
【0030】
特に、より高い分子量、例えば2000超の平均分子量Mnを有するポリプロピレングリコールは、得られる熱可塑性ポリウレタンの機械的特性が好ましくない結果となることが分かった。また、異なるポリプロピレングリコールの混合物を使用した場合も、機械的特性が悪くなる。
【0031】
採用するポリオールは、好ましくは1.5未満、より好ましくは1.2から1.4の範囲の多分散性Pdを有する。
【0032】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ポリプロピレングリコールが650g/mol~4000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、上述のような熱可塑性ポリウレタンも提供するものである。
【0033】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ポリプロピレングリコールが1200g/mol~1750g/molの範囲の数平均分子量Mnを有し、1.5未満の多分散性Pdを有する、上述のような熱可塑性ポリウレタンをも提供するものである。
【0034】
本発明によるプロセスモ-ドでは、ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の大部分を変換することができ、例えば、ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも50%、より好ましくはポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも70%、特にポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも80%、特にポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも90%または少なくとも95%、特に少なくとも99%を変換することができる。
【0035】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、工程(i)による反応において、ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも50%が変換される、上述のような熱可塑性ポリウレタンも提供するものである。
【0036】
本発明によれば、工程(i)による反応は、ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の変換が行われるように実施される。
【0037】
この目的のために、例えば、温度および反応時間だけでなく、混合の質も最適化される。例えば、反応は断熱条件下で30分間行われてもよい。本発明の文脈では、反応時間はより好ましくは20分未満、特に10分未満である。反応は、好ましくは160℃未満、好ましくは150℃未満、特に140℃未満の温度Tで実行される。
【0038】
工程(i)による反応では、ポリオール組成物(PZ-1)をポリイソシアネート(P1)と反応させる。ポリオール組成物(PZ-1)は、ポリプロピレングリコールに加えて、さらなるポリオールを含んでいてもよい。本発明の文脈では、ポリオール組成物(PZ-1)におけるプロピレングリコールの割合は、75%超、より好ましくは90%超、特に95%超である。例えば、ポリオール組成物(PZ-1)中のプロピレングリコールの割合は、それぞれの場合において、全ポリオール組成物(PZ-1)を基準にして、95%から99%の範囲にある。
【0039】
好適なポリイソシアネートは、それ自体が当業者に知られている。本発明によれば、少なくとも1種のポリイソシアネートが採用される。また、本発明によれば、2種以上のポリイソシアネートの混合物を採用することもできる。
本発明の文脈において、好ましいポリイソシアネートはジイソシアネートであり、特に脂肪族または芳香族ジイソシアネートであり、さらに好ましくは芳香族ジイソシアネートである。
【0040】
本発明による製造方法は、そのプロセスモードがプレポリマーの製造および硬質相の合成のために異なるジイソシアネートの使用を可能にするという利点を有する。
【0041】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ポリイソシアネートが芳香族ジイソシアネートである、上記のような方法を提供する。
【0042】
用いられる脂肪族ジイソシアネートは、慣用の脂肪族および/または脂環式ジイソシアネートであり、例えば、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-および/またはオクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルテトラメチレン1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、ブチレン1,4-ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4および/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート、メチレンジシクロヘキシール4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)である。
【0043】
好ましい脂肪族ポリイソシアネートは、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサンおよびメチレンジシクロヘキシール4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)であり;特に好ましくは、メチレンジシクロヘキシール4,4’-、2,4’-および/または2,2’-ジイソシアネート(H12MDI)および1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサンまたはそれらの混合物である。
【0044】
好適な芳香族ジイソシアネートは、特にジフェニルメタン2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート(MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-および/または2,6-ジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、ジフェニルエタン4,4’-ジイソシアネート(EDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジメチルジフェニル3,3’-ジイソシアネート、ジフェニルエタン1,2-ジイソシアネートおよび/またはフェニレンジイソシアネートである。好ましい芳香族ジイソシアネートは、ジフェニルメタン2,2’-、2,4’-および/または4,4’-ジイソシアネート(MDI)とその混合物である。
【0045】
好ましい実施形態では、ポリイソシアネート(P1)は、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’-、2,4’-および2,2’-メチレンジシクロヘキシールジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選択される。
【0046】
多官能イソシアネートの好ましい例は、トリイソシアネート、例えば、トリフェニルメタン4,4’,4’’-トリイソシアネート、およびまた前述のジイソシアネートのシアヌレート、およびジイソシアネートと水との部分的な反応によって得られるオリゴマー、例えば、前述のジイソシアネートのビウレット、およびセミブロックジイソシアネートと平均して2個以上、好ましくは3個以上の水酸基を有するポリオールとの特異的な反応によって得られるオリゴマーである。
【0047】
本発明によれば、ポリイソシアネート(P1)は、純粋な形態で使用してもよいし、ポリイソシアネートと少なくとも1種の溶媒を含む組成物の形態で使用してもよい。好適な溶媒は、当業者に知られている。好適な例は、酢酸エチル、メチルエチルケトン、テトラヒドロフランおよび炭化水素などの非反応性溶媒である。
【0048】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ポリイソシアネート(P1)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’-、2,4’-および2,2’-メチレンジシクロヘキシールジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選択される、前記のような熱可塑性ポリウレタンを提供する。
【0049】
工程(i)による反応は、プロピレングリコールの2級末端OH基の変換が行われるように反応条件を調整できることが保証されていれば、それ自体当業者に知られている任意の好適な装置で実施してよい。
【0050】
本発明によれば、工程(i)による反応は、ポリオール組成物(PZ-2)を得るために、例えば、60℃から300℃の範囲の温度で、最大5時間の範囲の時間で実施される。本発明によれば、工程(i)による反応は、好ましくは1分から180分の範囲の時間、より好ましくは1分から30分の範囲の時間、特に好ましくは1分から20分の範囲の時間で行われる。
【0051】
本発明によれば、温度は好ましくは60℃から300℃の範囲であり、好ましくは80℃から200℃の範囲であり、特に好ましくは80℃から150℃の範囲である。
【0052】
例えば、反応押出機のプロセスモードでは、反応温度が例えば60℃~300℃の範囲、好ましくは70℃~250度の範囲、特に80℃~230℃の範囲で、20分未満、好ましくは10分未満、特に5分未満の反応時間で行うことができる。
【0053】
例えば、ベルトプロセスのプロセスモードでは、例えば60℃~300℃の範囲の反応温度、好ましくは70℃~220℃の範囲の反応温度、特に120℃~200℃の範囲の反応温度で、30分未満、好ましくは20分未満、特に10分未満の反応時間で行うことができる。
【0054】
通常、プレポリマーを反応混合物に混合する際の温度は、60℃から300℃の範囲であり、好ましくは70℃から200℃の範囲であり、特に好ましくは80℃から150℃の範囲である。
【0055】
工程(i)による反応は、好ましくは連続的に行われる。
【0056】
本発明によれば、反応は好適な装置で実施することができ、ここにおいて、好適な方法は当業者にそれ自体知られている。工程(i)による反応には、例えばスタティックミキサー、反応押出機または撹拌槽が好適である。さらなる実施形態では、本発明は、したがって、工程(i)による反応が、スタティックミキサー、反応押出機、または撹拌槽(連続撹拌槽反応器、CSTR)、またはそれらの組み合わせで行われる、前記のような熱可塑性ポリウレタンも提供する。
【0057】
例えば、容器内の撹拌機、ミキシングヘッドおよび/または高速チューブラーミキサー、ノズル、またはスタティックミキサーを用いることができる。また、同様に、反応を押出機または多軸押出機(例えば、二軸混練機(ZSK))の一部で実行してもよい。
【0058】
成分の混合は、例えば、混合装置、特に高せん断エネルギーで動作する混合装置で行われる。例としては、ミキシングヘッド、スタティックミキサー、ノズルまたは多軸押出機が挙げられる。
【0059】
押出機のハウジングの温度は、反応成分が完全に変換されるように選択されるのが有利であり、製品にとって可能な限り穏やかな条件下で、任意のさらなる助剤やさらなる成分を組み込むことができる。
【0060】
例として、工程(i)による反応は、スタティックミキサーまたは反応ミキサー/押出機で行われてもよく、工程(ii)による反応は、押出機またはベルトプロセスで行われてもよい。
【0061】
例えば、工程(i)による反応、工程(ii)による反応、または工程(i)および工程(ii)による反応は、押出機で実施されてもよい。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、工程(i)による反応はスタティックミキサーで行われ、工程(ii)による反応はベルトプロセスで行われる。
【0063】
本発明によれば、工程(i)による反応はプレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)をもたらす。本発明によれば、ポリオール組成物(PZ-2)は混合物である。本発明によれば、その混合物は、未変換の反応物、すなわち、例えば未変換のポリイソシアネート(P1)または未変換のポリオール組成物(PZ-1)を含んでいてもよい。本発明によれば、それゆえ、反応生成物は混合物として存在し、個々の分子は例えば分布やブロックの長さなどの点で異なっていてもよい。
【0064】
本発明によれば、ポリオール組成物(PZ-2)を、工程(ii)に従ってさらに反応させる。ポリオール組成物(PZ-2)を直接反応させてもよいし、さらにポリオールを加えてもよい。
【0065】
さらなるポリオールは、当業者には原則として知られており、例えば、“Kunststoffhandbuch, volume 7, Polyurethane”, Carl Hanser Verlag, 3rd edition 1993, chapter 3.1に記載されている。さらなるポリオールとして特に好ましく採用されるのは、ポリエステルオールまたはポリエーテルオールである。特に好ましいのは、ポリエーテルポリオールである。本発明に従って使用されるポリオールの数平均分子量は、好ましくは250g/molから2000g/molの間、好ましくは500g/molから1500g/molの間、特に650g/molから1000g/molの間である。
【0066】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールおよびポリカーボネートまたはポリカーボネートジオールからなる群から選択される少なくとも1つのポリオールが、工程(ii)による反応においてポリオール組成物(PZ-2)に添加される、前記のような熱可塑性ポリウレタンも提供する。
【0067】
さらなる実施形態では、本発明は、工程(ii)による反応において、ポリオール組成物(PZ-2)にさらなるポリオールが添加されない、前記のような熱可塑性ポリウレタンも提供する。
【0068】
本発明によれば、好ましいポリエーテルオールは、ポリエチレングリコールおよびポリテトラヒドロフランである。また、本発明によれば、例えば、分子量の異なる様々なポリテトラヒドロフランの混合物も使用可能である。
【0069】
好適な例としては、200g/molから2000g/molの範囲、より好ましくは250g/molから1500g/molの範囲、より好ましくは500g/molから1000g/molの範囲の分子量Mnを有するポリテトラヒドロフラン(PTHF)を含む。
【0070】
本発明によれば、PTHFだけでなく、他のさらなるポリエーテル、あるいはポリエステルも好適である。
【0071】
本発明の文脈において、ポリオール組成物(PZ-2)はまた、500g/mol未満の分子量Mnを有するプロパン-1,3-ジオールまたはブタン-1,4-ジオールなどの単量体の短鎖グリコールを、さらなる構成要素として含んでいてもよい。
【0072】
工程(ii)による反応は、ポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)を採用する。本発明に従って採用されるポリイソシアネート(P1)に関連して先に記載したイソシアネートは、原則としてポリイソシアネート(P2)として好適である。本発明の文脈において、異なるポリイソシアネートを採用してもよい。しかし、ポリイソシアネート(P1)および(P2)として同じポリイソシアネートを採用することもまた可能である。好適なポリイソシアネート(P2)には、特に上述のイソシアネートが含まれる。
【0073】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ポリイソシアネート(P2)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、ならびに4,4’-、2,4’-および2,2’-メチレンジシクロヘキシールジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選択される、上述のような熱可塑性ポリウレタンを提供するものである。
【0074】
工程(ii)では、500g/mol未満の分子量の鎖延長剤をさらに用いる。本発明の文脈において、これは質量平均分子量である。本発明の文脈において用いられる鎖延長剤は、例えば、ヒドロキシ基またはアミノ基、特に、2個のヒドロキシ基またはアミノ基を有する化合物であってもよい。しかしながら、本発明によれば、異なる化合物の混合物を鎖延長剤として使用することも可能である。本発明によれば、混合物の平均官能価は2である。
【0075】
本発明によれば、水酸基を有する化合物、特にジオールを鎖延長剤として使用することが好ましい。50g/mol~220g/molの分子量を有する脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式ジオールを採用することが好ましい。アルキレン基中に2~10個の炭素原子を有するアルカンジオール、特にジ-、トリ-、テトラ-、ペンタ-、ヘキサ-、ヘプタ-、オクタ-、ノナ-および/またはデカアルキレングリコールが好ましい。本発明にとって、1,2-エチレングリコール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオールが特に好ましい。また、ヒドロキシキノンビス(2-ヒドロキシエチル)エーテルのような芳香族化合物を採用することも可能である。
【0076】
また、本発明によれば、アミノ基を有する化合物、例えばジアミンも使用可能である。同様に、ジオールとジアミンの混合物も使用可能である。
【0077】
鎖延長剤は、好ましくは、220g/mol未満の分子量Mwを有するジオールである。本発明によれば、透明な熱可塑性ポリウレタンの調製に、220g/mol未満の分子量Mwを有するジオールを1つだけ使用することが可能である。
【0078】
さらなる実施形態では、複数のジオールが鎖延長剤として使用される。したがって、鎖延長剤の混合物を使用することも可能である。
【0079】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、本発明による製造方法のステップ(a)において(i)に従って使用される鎖延長剤が、220g/mol未満の分子量Mwを有するジオールである、上述のような製造方法を提供する。
【0080】
鎖延長剤は、採用したポリオール組成物(PZ-2)と鎖延長剤の成分の官能価の合計と、採用したイソシアネート組成物(PI)の官能価の合計とのモル比が、1:0.8から1:1.3の範囲、より好ましくは1:0.9から1:1.2の範囲、例えば1:0.95から1:1.15の範囲になるような量で採用することが好ましい。
【0081】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、採用されたポリオール組成物(PZ-2)および鎖延長剤の成分の官能価の合計と、採用されたイソシアネート組成物(PI)の官能価の合計とのモル比が、1:0.8から1:1.3の範囲にある、前記のような熱可塑性ポリウレタンも提供する。
【0082】
また、本発明によれば、工程(i)または(ii)による反応を促進/改善するために、添加剤や助剤を用いることも可能である。特に、触媒を用いることができる。
【0083】
好適な触媒は、従来技術で知られている慣用の第三級アミン、例えばトリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシールアミン、N-メチルモルホリン、N,N’-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエトキシ)エタノ-ル、ジアザビシクロ-(2,2,2)-オクタンなどであり、および特に、チタン酸エステル、鉄化合物、スズ化合物、例えばジアセテートスズ、ジオクトエートスズ、ジラウレートスズ、またはジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレートなどの脂肪族カルボン酸のスズジアルキル塩等の有機金属化合物である。好ましい触媒は、有機金属化合物、特にチタン酸エステル、鉄化合物および/またはスズ化合物である。ステップ(a)による反応に適した触媒は、例えば、トリブチルスズオキシド、スズ(II)ジオクトエート、ジブチルスズジラウレートまたはBi(III)カルボキシレートである。
【0084】
触媒の総量は、採用した成分の合計を基準にして、一般的に約0~5質量%、好ましくは0~1質量%である。
【0085】
反応成分と触媒に加えて、助剤や添加剤を、採用した成分の総量に対して最大20質量%まで加えることも可能である。これらは、反応成分の1つ、好ましくはポリオール成分に溶解してもよいし、あるいは反応が完了した後、後続の混合装置、例えば押出機で添加してもよい。
【0086】
例えば、脂肪酸エステル、その金属石鹸、脂肪酸アミド、脂肪酸エステルアミド、シリコーン化合物などの潤滑剤、アンチブロッキング剤、阻害剤、加水分解、光、熱および変色に対する安定剤、難燃剤、染料、顔料、無機および/または有機の充填剤、ならびに補強剤などが挙げられる。補強剤は、特に、先行技術に従って製造される例えば無機繊維のような繊維状の補強剤であり、また、サイズでコーティングされていてもよい。記載されている助剤および添加物質に関するさらなる詳細は、技術文献中に、例えば、J.H. Saunders and K.C. Frisch著、「High Polymers」、 16巻、ポリウレタン、パート1および2、インターサイエンス出版社1962年および1964年の単行書に、およびTaschenbuch fuer Kunststoff-Additive, R. Gaechter and H. Mueller (Hanser Verlag Munich 1990)またはDE-A 29 01 774に記載されている。
【0087】
熱可塑性ポリウレタンを製造するために、任意に触媒、助剤、および/または添加剤の存在下で、合成成分を、好ましくは、NCO基の、低分子量化合物とポリオールのNCO反応性基、特にOH基の合計に対する当量比が0.9:1.0~1.1:1.0、好ましくは0.95:1.0~1.05:1.0となるような量で反応させてもよい。
【0088】
本発明によれば、得られた熱可塑性ポリウレタンの特性は、使用するポリイソシアネート、ポリオール、および鎖延長剤の選択によって影響を受ける可能性がある。本発明による熱可塑性ポリウレタンは、有利には、DIN53505に従って決定された50A~80Dの範囲のショア硬度、より好ましくは60A~98Aの範囲のショア硬度、特に好ましくは65A~90Aの範囲のショア硬度を有しており、いずれの場合もDIN53505に従って決定される。
【0089】
さらなる実施形態では、本発明は、それゆえ、上述のような熱可塑性ポリウレタンをも提供し、ここで、熱可塑性ポリウレタンは、DIN53505に従って決定された50Aから80Dの範囲のショア硬度を有する。
【0090】
本発明による熱可塑性ポリウレタンは、好ましくは不透明から透明である。さらなる実施形態では、本発明は、したがって、上述のような熱可塑性ポリウレタンであって、熱可塑性ポリウレタンが不透明から透明である熱可塑性ポリウレタンも提供する。
【0091】
記載されるように、本発明はさらなる側面において、工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が20%から100%の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と反応させ、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含む熱可塑性ポリウレタンの製造方法も提供する。
【0092】
本発明による製造方法は、例えば、温度調整や成形工程などのさらなる工程を含んでいてもよい。好ましい実施形態に関して、前述の内容を参照する。
【0093】
得られた熱可塑性ポリウレタンの加工は、慣用のプロセスに従って行うことができ、例えば、押出機、射出成形機、ブロー成形機、カレンダー、ニーダー、プレスなどで行うことができる。
【0094】
良好な機械的特性と良好な熱的挙動により、本発明による熱可塑性ポリウレタンは、特に押出成形物品、射出成形物品、プレス成形物品の製造に適しており、また、電気産業、自動車産業、機械工学、3D印刷、医療、消費財向けの発泡体、靴底、ケーブルシース、ホース、プロファイル、ドライブベルト、繊維、不織布、フィルム、成形品、プラグ、ハウジング、減衰要素の製造にも適しており、特に、射出成形製品、押出製品、フィルム、プロファイル、および成形物品の製造に適している。
【0095】
さらなる側面では、本発明は、射出成形製品、押出製品、フィルム、プロファイル、および成形物品を製造するための、本発明による熱可塑性ポリウレタンの、または本発明による方法によって得ることができるもしくは得られた熱可塑性ポリウレタンの使用も提供する。
【0096】
さらなる実施形態では、本発明は、上述のような射出成形製品、押出製品、フィルム、プロファイル、および成形物品を製造するための、本発明による熱可塑性ポリウレタンの、または本発明による方法によって得ることができるもしくは得られた熱可塑性ポリウレタンの使用も提供しており、ここで、成形物品はホース、ケーブルシース、シールまたはフィルムである。
【0097】
本発明による熱可塑性ポリウレタンは、ホースのような成形物品の製造に特に好適である。
【0098】
さらなる側面では、本発明は、上述のような熱可塑性ポリウレタンを、または本発明による方法によって得ることができるもしくは得られた熱可塑性ポリウレタンを含むホースも提供する。
【0099】
有利な実施形態では、例えば多層構造のホースを提供し、ここにおいて、本発明によるホースは多層構造を有していてもよく、さもなければ繊維、充填材、または織物で補強されていてもよい。
【0100】
さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ホースが多層構造を有する、上述のようなホースも提供する。さらなる実施形態では、本発明はまた、上述のようなホースを提供し、ここで、ホースは、繊維、充填材または織物によって補強されている。
【0101】
このようなホースを製造するための好適なプロセスはそれ自体知られており、例えば後処理などのさらなる工程を含んでいてもよい。さらなる実施形態では、本発明は、したがって、ホースが後処理に供される上述のようなホースを提供する。
【0102】
本発明のさらなる実施形態が、特許請求の範囲および実施例に見ることができる。上で述べられ、以下で解明された本発明による対象物/製造方法/用途の特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、各場合に指定された組み合わせだけでなく、他の組み合わせでも使用できることが理解されるであろう。したがって、例えば、好ましい特徴と特に好ましい特徴との組み合わせや、さらに特徴のない特徴と特に好ましい特徴などの組み合わせも、この組み合わせが明示的に言及されていなくても、暗黙的に理解される。
【0103】
本発明の例示的な実施形態が以下に記載されているが、決して本発明の限定を意図するものではない。本発明は、特に、以下の従属関係の参照、および、それゆえ、以下に明記された組み合わせから結果として生じる実施形態も包含する。
【0104】
1.DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’が-25℃以下であり、少なくとも以下の工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを基礎とする少なくとも1種のポリオールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と反応させ、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含むプロセスによって得られたまたは得ることができる熱可塑性ポリウレタン。
【0105】
2.工程(i)による反応と工程(ii)による反応との間に、ポリオール組成物(PZ-2)の貯蔵またはコンテナ化が生じない、実施形態1に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0106】
3.プロセスが連続プロセスとして実行される、実施形態1または2のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0107】
4.工程(i)における反応において、ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも30%が変換される、実施形態1から3のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0108】
5.ポリプロピレングリコールが、650g/molから4000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、実施形態1から4のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0109】
6.ポリプロピレングリコールが、1200g/molから1750g/molの範囲の数平均分子量Mnを有し、1.5未満の多分散性Pdを有する、実施形態1から5のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0110】
7.工程(i)による反応が、スタティックミキサー、反応押出機もしくは撹拌槽(連続撹拌槽反応器、CSTR)またはそれらの組み合わせで行われる、実施形態1から6のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0111】
8.工程(ii)による反応において、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールおよびポリカーボネートまたはポリカーボネートジオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールが、ポリオール組成物(PZ-2)に添加される、実施形態1から7のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0112】
9.工程(ii)による反応において、ポリオール組成物(PZ-2)にさらなるポリオールが添加されない、実施形態1から7のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0113】
10.ポリイソシアネート(P2)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)ならびに4,4’-、2,4’-および2,2’-メチレンジシクロヘキシールジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選択される、実施形態1から9のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0114】
11.採用されたポリオール組成物(PZ-2)および鎖延長剤の成分の官能価の合計と、採用されたイソシアネート組成物(PI)の官能価の合計とのモル比が、1:0.8から1:1.3の範囲にある、実施形態1から10のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0115】
12.工程(ii)による反応における指数が965から1100の範囲にある、実施形態1から11のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0116】
13.DIN 53505に従って決定されるショア硬度が50Aから80Dの範囲にある、実施形態1から12のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0117】
14.不透明から透明である、実施形態1から13のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0118】
15.DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’が-25℃以下である熱可塑性ポリウレタンの製造方法であって、少なくとも工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを基礎とする少なくとも1種のポリオールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と反応させ、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含む熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【0119】
16.工程(i)による反応と工程(ii)による反応との間に、ポリオール組成物(PZ-2)の貯蔵またはコンテナ化が生じない、実施形態15に記載の製造方法。
【0120】
17.連続プロセスとして実行される、実施形態15または16のいずれかに記載の製造方法。
【0121】
18.工程(i)による反応において、ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも30%が変換される、実施形態15から17のいずれかに記載の製造方法。
【0122】
19.ポリプロピレングリコールが、650g/molから4000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、実施形態15から18のいずれかに記載の製造方法。
【0123】
20.ポリプロピレングリコールが、1200g/molから1750g/molの範囲の数平均分子量Mnと、1.5未満の多分散性Pdを有する、実施形態15から19のいずれかに記載の製造方法。
【0124】
21.工程(i)による反応が、スタティックミキサー、反応押出機もしくは撹拌槽(連続撹拌槽反応器、CSTR)またはそれらの組み合わせで実施される、実施形態15から20のいずれかに記載の製造方法。
【0125】
22.工程(ii)による反応において、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールおよびポリカーボネートもしくはポリカーボネートジオールからなる群から選択された少なくとも1種のポリオールが、ポリオール組成物(PZ-2)に添加される、実施形態15から21のいずれかに記載の製造方法。
【0126】
23.工程(ii)による反応において、さらなるポリオールがポリオール組成物(PZ-2)に添加されない、実施形態15から21のいずれかに記載の製造方法。
【0127】
24.ポリイソシアネート(P2)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)ならびに4,4’-、2,4’-および2,2’-メチレンジシクロヘキシールジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選択される、実施形態15から23のいずれかに記載の製造方法。
【0128】
25.採用されたポリオール組成物(PZ-2)および鎖延長剤の成分の官能価の合計と、採用されたイソシアネート組成物(PI)の官能価の合計とのモル比が、1:0.8から1:1.3の範囲である、実施形態15から24のいずれかに記載の製造方法。
【0129】
26.工程(ii)による反応における指数が、965から1100の範囲にある、実施形態15から25のいずれかに記載の製造方法。
【0130】
27.熱可塑性ポリウレタンが、DIN 53505に従って決定された50Aから80Dの範囲のショア硬度を有する、実施形態15から26のいずれかに記載の製造方法。
【0131】
28.熱可塑性ポリウレタンが不透明から透明である、実施形態15から27のいずれかに記載の製造方法。
【0132】
29.実施形態1から14のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタンの、または実施形態15から28のいずれかに記載の製造方法によって得ることができるもしくは得られた熱可塑性ポリウレタンの、押出成形物品、射出成形物品およびプレス成形物品、ならびに電気産業、自動車産業、機械工学、3D印刷、医療および消費財のための発泡体、靴底、ケーブルシース、ホース、プロファイル、ドライブベルト、繊維、不織布、フィルム、成形品、プラグ、ハウジング、減衰要素を製造するための、特に、射出成形製品、押出成形製品、フィルム、プロファイルおよび成形物品を製造するための使用方法。
【0133】
30.実施形態1から14のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタンを、または実施形態15から28のいずれかに記載の製造方法によって得ることができる、もしくは得られた熱可塑性ポリウレタンを含む、成形物品。
【0134】
31.少なくとも工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを基礎とする少なくとも1種のポリオールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、ポリイソシアネート(P1)と反応させ、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含む方法によって得られた、または得ることができる熱可塑性ポリウレタン。
【0135】
32.DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’が-25℃以下である、実施形態31に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0136】
33.工程(i)による反応と工程(ii)による反応との間に、ポリオール組成物(PZ-2)の貯蔵またはコンテナ化が生じない、実施形態31または32に記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0137】
34.前記方法が連続プロセスとして実行される、実施形態31から33のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0138】
35.工程(i)による反応において、ポリプロピレングリコールの2級末端OH基の少なくとも30%が変換される、実施形態31から34のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0139】
36.ポリプロピレングリコールが、650g/molから4000g/molの範囲の数平均分子量Mnを有する、実施形態31から35のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0140】
37.ポリプロピレングリコールが1200g/molから1750g/molの範囲の数平均分子量Mnを有し、且つ1.5未満の多分散性Pdを有する、実施形態31から36のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0141】
38.工程(i)による反応が、スタティックミキサー、反応押出機もしくは撹拌槽(連続撹拌槽反応器、CSTR)またはそれらの組み合わせで行われる、実施形態31から37のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0142】
39.工程(ii)による反応において、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオールおよびポリカーボネートもしくはポリカーボネートジオールからなる群から選択される少なくとも1種のポリオールが、ポリオール組成物(PZ-2)に添加される、実施形態31から38のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0143】
40.工程(ii)による反応において、ポリオール組成物(PZ-2)にさらなるポリオールを添加しない、実施形態31から38のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0144】
41.ポリイソシアネート(P2)が、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、1,5-ナフチレンジイソシアネート(NDI)、2,4-および/または2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ジイソシアナトジフェニル(TODI)、p-フェニレンジイソシアネート(PDI)、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、4,4’-、2,4’-、2,2’-メチレンジシクロヘキシールジイソシアネート(H12MDI)からなる群から選択される、実施形態31から40のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0145】
42.採用されたポリオール組成物(PZ-2)および鎖延長剤の成分の官能価の合計と、採用されたイソシアネート組成物(PI)の官能価の合計とのモル比が、1:0.8から1:1.3の範囲にある、実施形態31から41のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0146】
43.工程(ii)による反応における指数が、965から1100の範囲にある、実施形態31から42のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0147】
44.DIN53505に従って決定されるショア硬度が50Aから80Dの範囲にある、実施形態31から43のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0148】
45.不透明から透明である、実施形態31から44のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン。
【0149】
46.少なくとも工程(i)および(ii):
(i)ポリプロピレングリコールを基礎とする少なくとも1種のポリオールを含むポリオール組成物(PZ-1)であって、前記ポリプロピレングリコールの末端OH基の総数に対する2級末端OH基の割合が90%超の範囲にあるポリオール組成物(PZ-1)を、プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を得る工程、
(ii)プレポリマー(PP-1)を含むポリオール組成物(PZ-2)を、少なくとも1種のポリイソシアネート(P2)を含むポリイソシアネート組成物(PI)及び500g/mol未満の分子量を有する少なくとも1種の鎖延長剤と反応させる工程
を含む熱可塑性ポリウレタンの製造方法。
【0150】
47.前記熱可塑性ポリウレタンが、DIN EN ISO 6721:2016に基づき、DMAを用いてねじり下で1Hzで2K/分で加熱して測定された-25℃以下の軟質相のガラス転移温度、すなわち、最大G’’を有する、実施形態46に記載の製造方法。
【0151】
48.実施形態31から45のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタンの、または実施形態46もしくは47の製造方法によって得ることができるもしくは得られた熱可塑性ポリウレタンの、押出成形物品、射出成形物品およびプレス成形物品、ならびに電気産業、自動車産業、機械工学、3D印刷、医療および消費財のための発泡体、靴底、ケーブルシース、ホース、プロファイル、ドライブベルト、繊維、不織布、フィルム、成形品、プラグ、ハウジング、減衰要素を製造するための、特に、射出成形製品、押出成形製品、フィルム、プロファイルおよび成形物品を製造するための使用方法。
【0152】
49.実施形態31から45のいずれかに記載の熱可塑性ポリウレタン、または、実施形態46もしくは47のいずれかに記載の製造方法によって得ることができるもしくは得られた熱可塑性ポリウレタンを含む、成形物品。
【実施例
【0153】
以下の実施例は、本発明を説明するのに役立つが、本発明の主題を決して限定するものではない。
【0154】
実施例
1. 以下の投入材料を採用した。
ポリオール1:OH価が63で、プロピレングリコールとエチレングリコールに基づく1級OH基と2級OH基の混合物を3対1の割合で有するポリエーテルポリオール(官能価:1.99)
ポリオール2:OH価が104で、プロピレングリコールに基づく2級OH基のみを有するポリエーテルポリオール(官能価:1.99)
ポリオール3:OH価が78で、プロピレングリコールに基づく2級OH基のみを有するポリエーテルポリオール(官能価:1.99)
ポリオール4:OH価が114で、テトラメチレンオキシドに基づく1級OH基のみを有するポリエーテルポリオール(官能価:2)
ポリオール5:OH基数が55で、プロピレングリコールに基づく2級OH基のみを有するポリエーテルポリオール(官能価:1.99)
イソシアネート1:芳香族イソシアネート(4,4’-メチレンジフェニルジイソシアネート)
鎖延長剤(CE)1:ブタン-1,4-ジオール
触媒:イソオクタン酸スズ(II)(アジピン酸ジオクチル中に50%)
【0155】
2.製造実施例
2.1 ワンショットプロセスによる不連続合成の例
反応容器中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ブタン-1,4-ジオール鎖延長剤、イソオクタン酸スズ(II)触媒およびポリエーテルポリオールから、撹拌しながら熱可塑性ポリウレタン(TPU)を合成した。反応温度が110℃に達した後、溶液を120℃に加熱した加熱プレート上に注ぎ出し、80℃で15時間の熱処理を行った後、得られたTPUシートをペレット化した。このペレット材料を2mmの試験片に射出成形し、そこから打ち抜かれたS2テストバー(DIN 53504による)を機械的試験に供した。試験片製造時の溶融物の最高温度は240℃であった。
【0156】
2.2 プレポリマープロセスによる不連続合成の一例
反応容器中の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソオクタン酸スズ(II)触媒およびポリエーテルポリオールから、80℃から120℃の温度で撹拌しながら、ポリエーテルポリオールのOH官能価の90%超が変換されるまでプレポリマーを合成した。続いて、このプレポリマーにブタン-1,4-ジオール鎖延長剤を加えて熱可塑性ポリウレタン(TPU)に変換した。反応温度が110℃に達した後、溶液を120℃に加熱された加熱プレート上に注ぎ出し、得られたTPUシートを80℃で15時間熱処理した後、ペレット化した。このペレット材料を2mmの試験片に射出成形し、そこから打ち抜かれたS2テストバー(DIN 53504による)を機械的試験に供した。試験片製造時の溶融物の最高温度は240℃であった。
【0157】
2.3 プレポリマープロセスによる連続合成の一例
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、イソオクタン酸スズ(II)触媒およびポリエーテルポリオールから、滞留時間約10分の断熱連続反応器でプレポリマーを製造した。反応器に投入する前に、反応物をあらかじめ混合し、100℃から120℃の反応温度に加熱した。断熱連続反応器の終了時に、得られたプレポリマーを60℃から90℃に冷却した。60℃に予熱したブタン-1,4-ジオール鎖延長剤を加え、続いて滞留時間5分から10分の反応ベルト上で反応混合物を110℃から180℃に加熱し、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を得た。これをペレット化し、2mmの試験片に射出成形した。これらの試験片からS2テストバー(DIN 53504による)を打ち抜き、機械的試験に供した。試験片製造時の溶融物の最高温度は240℃であった。
【0158】
3. 製造実施例の構成
【0159】
【表1】
【0160】
4.製造実施例の特性
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
5. ポリオール混合物が異なる製造実施例
用いたポリオールの平均分子量が異なる様々なポリオールまたはブレンドを、実施例4と同様に採用した。
【0164】
得られた熱可塑性ポリウレタンの特性を表3にまとめた。
【0165】
【表4】
【0166】
【表5】
【0167】
特に、より高い分子量、例えば2,000超の平均分子量Mnを有するポリプロピレングリコールは、得られる熱可塑性ポリウレタンの機械的特性が好ましくない結果となることが明らかである。また、異なるポリプロピレングリコールの混合物を使用した場合も、機械的特性が悪くなる。
【0168】
6. 試験方法
先に100℃で20時間の熱処理を施した射出成形したシ-トに対して、機械的な値を測定した。
【0169】
密度:DIN EN ISO 1183-1,A:2016
ショアA硬度:DIN ISO 7619-1:2016
引張試験:DIN 53 504:2016
耐引裂性:DIN ISO 34-1,B:2016
摩耗:DIN ISO 4649/ASTM D1044:2016
圧縮永久歪み:DIN ISO 815:2016
MFR:DIN ISO 1133:2016
DMA:DIN EN ISO 6721:2016
(トーションモード、周波数:1Hz、加熱速度:2K/min)
【0170】
DIN規格で指定されたパラメータとは異なり、本発明の文脈で決定されたパラメータは、一定の2K/minの加熱速度プログラムと同等のステッププログラムを使用して測定される。測定は5Kステップのプログラムで行われ、ステップごとのホールドタイムは35秒である。測定は、幅と厚さの比率が1:6のサンプルで行った。
【0171】
DSC:DIN EN ISO 11357-1:2016(加熱速度20℃/分)
MW:DIN 55672-2:1999-Teil2(Polymer Standards ServiceのPMMAに対して;DMAC中の溶液)
【0172】
引用文献
WO 2014/060300 A1
WO 2007/101807 A1
EP1757632 A1
EP1391472 A1
EP 900812 A1
DE 19625987 A1
WO 02/064656A2
WO 93/24549 A1
US 2006/0258831 A1
EP1746117 A1
“Kunststoffhandbuch, volume 7, Polyurethane”, Carl Hanser Verlag, 3rd edition 1993, chapter 3.1
J.H. Saunders and K.C. Frisch、"High Polymers"、第16巻、Polyurethane,第1部および第2部、Interscience Publishers、1962年および1964年
Taschenbuch fuer Kunststoff-Additive、 R.Gaechter and H.Mueller(Hanser Verlag Munich 1990)
DE-A 29 01 774 A1