(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】シリコン基板上へのダイヤモンド成長方法、及びシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/314 20060101AFI20240208BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240208BHJP
C01B 32/25 20170101ALI20240208BHJP
C30B 29/04 20060101ALI20240208BHJP
C30B 25/18 20060101ALI20240208BHJP
C23C 16/27 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L21/314 A
H01L21/31 B
C01B32/25
C30B29/04 G
C30B25/18
C23C16/27
(21)【出願番号】P 2022020997
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2023-09-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】松原 寿樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克佳
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑宜
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 温
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健汰
(72)【発明者】
【氏名】多賀 稜
(72)【発明者】
【氏名】阿部 達夫
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-030697(JP,A)
【文献】特表2021-525828(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/314
H01L 21/31
C01B 32/25
C30B 29/04
C30B 25/18
C23C 16/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン基板上へのダイヤモンド成長方法であって、前処理として前記シリコン基板表面に、ラマン分光法による520cm
-1のピークのラマンシフトが0.1cm
-1以上になるようにダメージの付与を行うか
、又は、前記シリコン基板表面に、前記ダメージの付与及び
AFMで測定した表面粗さSaが10nm以上になるような凹凸の形成を行い、該前処理を行ったシリコン基板上にダイヤモンドをCVD法により成長することを特徴とするシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法。
【請求項2】
前記CVD法を、ホットフィラメント法とすることを特徴とする請求項1に記載のシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法。
【請求項3】
シリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法であって、請求項1に記載のシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法において前処理として、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記ダメージの付与を行うか
、又は、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記ダメージの付与及び前記凹凸の形
成を行い、該前処理を行った前記領域上にダイヤモンドをCVD法により成長することを特徴とするシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法。
【請求項4】
前記CVD法を、ホットフィラメント法とすることを特徴とする請求項3に記載のシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン基板上へのダイヤモンド成長方法、及びシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンドは高硬度や良好な熱伝導性、高いキャリア移動度、ワイドバンドギャップであることなどの優れた物性値から、各種半導体素子・電子デバイスへの応用が期待されている。この半導体素子・電子デバイス用途としては、人工的に合成されたダイヤモンドが使われている。ダイヤモンド合成には、超高圧を用いて成長させる方法と、気相成長の2つがあり、半導体への応用では、気相成長(CVD成長)が、大直径を得られることから、注目されている(特許文献1~3)。
【0003】
CVD成長は、反応管の内部に基板を搭載し、原料ガス及びキャリアガスを常圧ないしは減圧下で流して、熱分解やプラズマによって原料ガスを分解・活性化して、基板上に成長する方法である。
ダイヤモンドの成長では、マイクロ波プラズマや、DCプラズマ、タングステンのようなフィラメントを用いるホットフィラメント法が採用されるが、大直径基板への適用を考えた場合は、原理的に大直径が可能なホットフィラメント法が注目される。
【0004】
ホットフィラメント法は、治工具へのダイヤモンドコーティングなどにも用いられる優れた技術であるが、基板へダイヤモンドを成長させるには、成長の核となる核形成が必要とされている(特許文献4)。ダイヤモンド成長基板としてシリコン基板を用いる際は特に、この核形成が重要である。
【0005】
この成長核としては、ダイヤモンド粒子を含んだ溶液中に基板を入れてそののちに乾燥させたり、ダイヤモンド粒子を含んだ溶液中に基板を入れて超音波を印加したり、メタンのようなガスを導入してDCプラズマ処理をするなどが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-354491号公報
【文献】特開2004-176132号公報
【文献】特開2006-143561号公報
【文献】特開2013―166692号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】Wei Li et. al., “Modeling of the removal mechanism of monocrystalline silicon - based on phase change - dislocation theory and its edge chipping damage during micro - griping”, Precision Eng., 71 (2021) 103-118.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、大直径ダイヤモンド基板は放熱特性などの点から注目されている。大直径に対応した成長方法は熱フィラメントCVD法が存在するが、成長核となる種付けが必要であり、ホモエピ以外では、ダイヤモンド粒子を塗布して超音波処理や、DCプラズマによる前処理を必要としている。特に、ダイヤモンド粒子を塗布して超音波処理では大直径基板への対応は可能であるが、汚染やパーティクルの問題で、半導体プロセスへ適用することは不可能である。一方のDCプラズマ処理では、例えば直径300mmのような大直径化が不可能であった。
また、選択的にダイヤモンドを所定の場所に成長させることが必要になる。なぜなら、ダイヤモンドは高硬度のため加工が難しく、また、酸素が存在した状態で高温になると酸化が進んでしまう問題があり、全面に成膜を行ってから加工することが難しいためである。
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、汚染やパーティクルを抑制しつつ、簡易な製造プロセスでシリコン基板上へのダイヤモンド成長を行う成長方法、及びシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、シリコン基板上へのダイヤモンド成長方法であって、前処理として前記シリコン基板表面に、ラマン分光法による520cm-1のピークのラマンシフトが0.1cm-1以上になるようにダメージの付与を行うか、前記シリコン基板表面に、AFMで測定した表面粗さSaが10nm以上になるように凹凸の形成を行うか、又は、前記シリコン基板表面に、前記ダメージの付与及び前記凹凸の形成の両方を行い、該前処理を行ったシリコン基板上にダイヤモンドをCVD法により成長するシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法を提供する。
【0010】
このようなシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法であれば、汚染やパーティクルを抑制しつつ、簡易な製造プロセスで大直径のダイヤモンドを得ることができる。
【0011】
この時、前記CVD法を、ホットフィラメント法とすることが好ましい。
【0012】
このようなCVD法を用いることで、より効率よく大直径のダイヤモンドを得ることができる。
【0013】
また、本発明では、シリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法であって、上記に記載のシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法において前処理として、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記ダメージの付与を行うか、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記凹凸の形成を行うか、又は、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記ダメージの付与及び前記凹凸の形成の両方を行い、該前処理を行った前記領域上にダイヤモンドをCVD法により成長するシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法を提供する。
【0014】
このようなシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法であれば、汚染やパーティクルを抑制しつつ、簡易な製造プロセスで大直径で選択的にダイヤモンド成長させた基板を得ることができる。
【0015】
この時、前記CVD法を、ホットフィラメント法とすることが好ましい。
【0016】
このようなCVD法を用いることで、より効率よく大直径で選択的にダイヤモンド成長させた基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の構成により、シリコン基板表面のパラメータを特定の数値で制御することでダイヤモンド成長核の成長が可能であり、かつ汚染やパーティクルを発生させずに、簡易な製造プロセスによって、シリコン基板上にダイヤモンドの成長が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明のホットフィラメント法によるダイヤモンド成長方法の一例を示す模式図である。
【
図2】シリコン基板のダイヤモンドのラマンピークを示すグラフである。
【
図3】シリコン基板の520cm
-1のピークのラマンシフト量とダイヤモンド成長の関係を示す図である。
【
図4】シリコン基板のAFM粗さとダイヤモンド成長の関係を示す図である。
【
図5】シリコン基板上へのダイヤモンド選択成長フローの一例を示すフロー図である。
【
図6】部分研磨したシリコン基板へCVD成長を行ったあとのラマンスペクトルと光学顕微鏡像を示す図である。
【
図7】部分的にドライエッチングしたシリコン基板へCVD成長を行ったあとのラマンスペクトルと光学顕微鏡像を示す図である。
【
図8】部分的にドライエッチングしたシリコン基板へCVD成長を行ったあとのラマンスペクトルと光学顕微鏡像の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
上述のように、汚染やパーティクルを抑制可能なシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法の開発が求められていた。
【0020】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、シリコン基板表面にダメージの付与を行うか、凹凸の形成を行うか、またはその両方を行うことで汚染やパーティクルを抑制しながらシリコン基板上にダイヤモンドを成長させることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0021】
即ち、本発明は、シリコン基板上へのダイヤモンド成長方法であって、前処理として前記シリコン基板表面に、ラマン分光法による520cm-1のピークのラマンシフトが0.1cm-1以上になるようにダメージの付与を行うか、前記シリコン基板表面に、AFMで測定した表面粗さSaが10nm以上になるように凹凸の形成を行うか、又は、前記シリコン基板表面に、前記ダメージの付与及び前記凹凸の形成の両方を行い、該前処理を行ったシリコン基板上にダイヤモンドをCVD法により成長するシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法である。
この場合、前処理はシリコン基板表面全体に行ってもよいし、一部の領域のみに行ってもよい。
【0022】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0023】
[シリコン基板上へのダイヤモンド成長方法]
本発明のシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法は、前処理として前記シリコン基板表面に、ラマン分光法による520cm-1のピークのラマンシフトが0.1cm-1以上になるようにダメージの付与を行うか、前記シリコン基板表面に、AFMで測定した表面粗さSaが10nm以上になるように凹凸の形成を行うか、又は、前記シリコン基板表面に、前記ダメージの付与及び前記凹凸の形成の両方を行い、該前処理を行ったシリコン基板上にダイヤモンドをCVD法により成長するシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法である。
【0024】
この時、前記CVD法を、ホットフィラメント法とすることが好ましい。
【0025】
図1は実施形態の一例を示したものであり、ホットフィラメント法によるダイヤモンド成長方法を模式的に示したものである。反応ガス4として、メタンと水素を反応容器1内に導入し、シリコン基板(被成膜基板)2上方に設置したタングステンフィラメント3に通電して反応ガス4を通電加熱して分解しシリコン基板2上にダイヤモンドを成長させる。このときのシリコン基板への核形成について説明する。通常のシリコン基板をラマン分光法で測定すると、520cm
-1のピークが得られる。このシリコン基板にダメージが入ると、このピークがシフトする。キズを付けたときのラマンピークの変化については、例えば非特許文献1には、キズの深さ(程度)とラマンの比較が報告されており、キズの程度が大きくなる(ひどくなる)と、520cm
-1のピークがシフトすることが示されている。
【0026】
シリコン基板表面にダメージを入れる方法としては、例えばシリコン基板表面を砥石で研削する方法などが挙げられる。また、シリコン基板表面に粗さを入れる方法としては、例えばシリコン基板表面を砥石で研削する方法などが挙げられる。ダイヤモンド粒子を分散させた純水中に基板を入れて超音波を印加することでダメージを入れたり、表面に粗さを入れたりする方法がある。また、このような機械的なダメージや粗さを入れる方法以外に、例えばDCプラズマ(基板に高電圧を印加してArやメタンのようなガスをプラズマでイオン化)を用いてイオン粒子によりダメージを入れる方法もある。
【0027】
このように、表面のダメージをラマンシフトで評価することが可能であり、このラマンシフトの量を変化させたサンプルを作製し、その後にホットフィラメント法でダイヤモンド成長を行ったところ、
図3のようにラマンシフト量が0.1cm
-1以上、好ましくは0.5cm
-1以上になる、すなわちダメージが大きくなっ
たところでダイヤモンドの成長が確認できた。
ここで、ダイヤモンドの成長は、ラマン測定を行い、1330cm
-1のピークと光学顕微鏡像から確認した。例えば
図2に示すように1330cm
-1付近にダイヤモンドのラマンピーク5が確認できれば、ダイヤモンドが成長したことがわかる。なお、1600cm
-1付近には炭化物(グラファイト)のラマンピーク6が確認できる。
【0028】
ホットフィラメント法によるダイヤモンド成長方法を模式的に示したもの(
図1)において、反応ガス4として、メタンと水素を反応容器1内に導入し、シリコン基板2上に設置したタングステンフィラメント3に通電して反応ガス4を通電加熱して分解しシリコン基板2上にダイヤモンドを成長させた。このときのシリコン基板2への核形成として、シリコン基板2のAFMで測定した表面粗さSaを変化させたサンプルを作製した。その後にホットフィラメント法でダイヤモンド成長を行ったところ、
図4のように表面粗さSaが10nm以上、及び50nm以上でダイヤモンドの成長が確認できた。ここで、ダイヤモンドの成長は、ラマン測定を行い、1330cm
-1のピークと光学顕微鏡像から確認した。
【0029】
AFM測定は例えばPark Systems社製XE-WAFERで行うことができる。
【0030】
ホットフィラメント法によるダイヤモンド成長方法を模式的に示したもの(
図1)において、反応ガス4として、メタンと水素を反応容器1内に導入し、シリコン基板2上方に設置したタングステンフィラメント3に通電して反応ガス4を通電加熱して分解しシリコン基板2上にダイヤモンドを成長させた。このときのシリコン基板2への核形成(前処理)として、シリコン基板2のラマンシフトの量と、AFMで測定した表面粗さSaを変化させたサンプルを作製した。その後にホットフィラメント法でダイヤモンド成長を行ったところ、シリコン基板2の表面にラマン測定で520cm
-1のピークを測定したときの、ラマンシフト量が0.1cm
-1以上、好ましくは0.5cm
-1以上になる、すなわちダメージが大きくなったところかつ、AFMで測定したシリコン基板2の表面の粗さSaが10nm以上、及び50nm以上でダイヤモンドの成長が確認できた。ここで、ダイヤモンドの成長は、ラマン測定を行い、1330cm
-1のピークと光学顕微鏡像から確認した。
【0031】
[シリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法]
また、本発明では、シリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法であって、上記に記載のシリコン基板上へのダイヤモンド成長方法において前処理として、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記ダメージの付与を行うか、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記凹凸の形成を行うか、又は、前記シリコン基板表面の一部の領域のみに前記ダメージの付与及び前記凹凸の形成の両方を行い、該前処理を行った前記領域上にダイヤモンドをCVD法により成長するシリコン基板上への選択的ダイヤモンド成長方法を提供する。
【0032】
この時、前記CVD法を、ホットフィラメント法とすることが好ましい。
【0033】
上記の通り、表面のダメージはラマンシフトで評価することが可能である。シリコン基板上に部分的にラマンシフトの量を変化させたサンプルを作製し(
図5)、その後にホットフィラメント法でダイヤモンド成長方法を行ったところ、ラマンシフト量が0.1cm
-1以上になる、すなわちダメージが大きくなったとところでダイヤモンドの部分的な選択成長が確認できた。
図5では、初めにシリコン基板2上に、部分研磨装置のパッド部分7を当て、研磨して荒らした箇所8と研磨していない箇所9を作製する。その後研磨して荒らした箇所8上にCVD成長したダイヤモンド10を作製する。
【0034】
ここで、ダイヤモンドの成長は、ラマン測定を行い、1330cm-1のピークと光学顕微鏡像から確認した。
【0035】
部分的に表面にダメージを入れる方法としては、例えば部分研磨(研削)装置で所定の箇所のみを研磨(研削)することでも可能であるし、また別の方法としてフォトリソグラフィーを行った後に、ウエットないしはドライエッチングを行う方法などで行うことができる。
【0036】
ホットフィラメント法によるダイヤモンド成長方法を模式的に示したもの(
図1)において、反応ガス4として、メタンと水素を反応容器1内に導入し、シリコン基板2上に設置したタングステンフィラメント3に通電して反応ガス4を通電加熱して分解しシリコン基板2上にダイヤモンドを成長させた。このときのシリコン基板2への核形成(前処理)として、シリコン基板2のAFMで測定した表面粗さSaを部分的に変化させたサンプルを作製した。その後にホットフィラメント法でダイヤモンド成長方法を行ったところ、表面粗さSaが10nm以上でダイヤモンドの部分的な選択成長が確認できた(
図5)。ここで、ダイヤモンドの成長は、ラマン測定を行い、1330cm
-1のピークと光学顕微鏡像から確認した。
【0037】
部分的に表面に粗さを入れる方法としては、例えば部分研磨(研削)装置で所定の箇所のみを研磨(研削)することでも可能であるし、また別の方法としてフォトリソグラフィーを行った後に、ウエットないしはドライエッチングを行う方法などが選択できる。
【0038】
ホットフィラメント法によるダイヤモンド成長方法を模式的に示したもの(
図1)において、反応ガス4として、メタンと水素を反応容器1内に導入し、シリコン基板2上に設置したタングステンフィラメント3に通電して反応ガス4を通電加熱して分解しシリコン基板2上にダイヤモンドを成長させた。このときのシリコン基板2への核形成として、シリコン基板2のラマンシフトの量と、AFMで測定した表面粗さSaを変化させたサンプルを作製した。その後にホットフィラメント法でダイヤモンド成長を行ったところ、表面にラマン測定で520cm
-1のピークを測定したときの、ラマンシフト量が0.1cm
-1以上、好ましくは0.5cm
-1以上になる、すなわちダメージが大きくなったところかつ、AFMで測定したシリコン基板2の表面の粗さSaが10nm以上、及び50nm以上でダイヤモンドの部分的な選択成長が確認できた(
図5)。ここで、ダイヤモンドの成長は、ラマン測定を行い、1330cm
-1のピークと光学顕微鏡像から確認した。
【0039】
部分的に表面にダメージ及び粗さを入れる方法としては、例えば部分研磨(研削)装置で所定の箇所のみを研磨(研削)することでも可能であるし、また別の方法としてフォトリソグラフィーを行った後に、ウエットないしはドライエッチングを行う方法などが選択できる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
直径300mm、方位(111)、ボロンドープの高抵抗単結晶シリコン基板を準備し、このままのもの(CMP上がり)と、#12000砥石で研削、#3000砥石で研削の表面状態の異なる3種類の基板を準備した。それぞれの基板表面のラマン測定を行い、520cm
-1からのシリコンのピークシフトを評価したところ、CMP上がりは0cm
-1、#12000研削は0.1cm
-1、#3000研削は0.5cm
-1のシフト量であった。
これらの基板をそれぞれ、ホットフィラメントCVD装置に入れ、フィラメント温度:2200℃、H
2流量:10SLM、CH
4濃度:3%、基板温度:850℃、5Torr(667Pa)の条件で4時間の成長を行った。そのあと、ラマン測定を行いダイヤモンドの成長を評価した。その結果、シリコン基板のラマンシフト量とダイヤモンド成長に関係がみられ、シリコン基板のラマンシフト量が0cm
-1ではダイヤモンド成長がみられないが、0.1cm
-1以上ではダイヤモンドの成長がみられた(
図3)。
【0042】
(実施例2)
直径300mm、方位(111)、ボロンドープの高抵抗単結晶シリコン基板を準備し、このままのもの(CMP上がり)と、#12000砥石で研削、#3000砥石で研削の表面状態の異なる3種類の基板を準備した。それぞれの基板表面のAFMによる粗さ測定を行ったところ、CMP上がりは1nm、#12000研削は10nm、#3000研削は50nmの粗さSaであった。ただし、Sa=50nm(#3000)はAFMの信頼性が低いために、白色干渉顕微鏡で100μmの視野でも確認した。
これらの基板をそれぞれ、ホットフィラメントCVD装置に入れ、フィラメント温度:2200℃、H
2流量:10SLM、CH
4濃度:3%、基板温度:850℃、5Torr(667Pa)の条件で4時間の成長を行った。そのあと、ラマン測定を行いダイヤモンドの成長を評価した。その結果、シリコン基板の表面粗さSaとダイヤモンド成長に関係がみられ、シリコン基板の表面粗さSaが1nmではダイヤモンド成長がみられないが、10nm以上ではダイヤモンドの成長がみられた(
図4)。
【0043】
(実施例3)
直径300mm、方位(111)、ボロンドープの高抵抗単結晶シリコン基板を準備し、部分研磨装置を用いて、#12000の小型砥石で表面を研削して、基板表面のラマン測定を行い、520cm
-1からのシリコンのピークシフト量が0.1cm
-1のシフトであるサンプルを準備した。
この基板を、ホットフィラメントCVD装置に入れ、フィラメント温度:2200℃、H
2流量:10SLM、CH
4濃度:3%、基板温度:850℃、5Torr(667Pa)の条件で4時間の成長を行った。そのあと、ラマン測定を行いダイヤモンドの成長を評価した。その結果、シリコン基板上で部分的に研削した箇所のみダイヤモンド成長がみられた(
図6)。
【0044】
(実施例4)
直径300mm、方位(111)、ボロンドープの高抵抗単結晶シリコン基板を準備し、部分研磨装置を用いて、#12000の小型砥石で表面を研削して基板表面のAFMによる粗さ測定を行ったところ10nmの粗さSaであった。
この基板を、ホットフィラメントCVD装置に入れ、フィラメント温度:2200℃、H
2流量:10SLM、CH
4濃度:3%、基板温度:850℃、5Torr(667Pa)の条件で4時間の成長を行った。そのあと、ラマン測定を行いダイヤモンドの成長を評価した。その結果、シリコン基板上で部分的に研削した箇所のみダイヤモンド成長がみられた(
図6)。
【0045】
(実施例5)
直径300mm、方位(111)、ボロンドープの高抵抗単結晶シリコン基板を準備し、フォトリソグラフィーを行い、所定の場所のみ窓開けを行った後に、プラズマエッチング装置にて、CF
4をエッチングガスとして流量を100sscm、100Torr(13332Pa)の条件で5分間エッチングを行った。その後、レジストを酸素プラズマで除去して、ラマンとAFMによって粗さとダメージを測定した。その結果、AFMによる粗さSaは15nm、ラマンスペクトルでは520cm
-1のピークシフト量が1cm
-1であった。
この基板を、ホットフィラメントCVD装置に入れ、フィラメント温度:2200℃、H
2流量:10SLM、CH
4濃度:3%、基板温度:850℃、5Torr(667Pa)の条件で4時間の成長を行った。そのあと、ラマン測定を行いダイヤモンドの成長を評価した。その結果、シリコン基板上で部分的に研削した箇所のみダイヤモンド成長がみられた(
図7)。
【0046】
(実施例6)
直径300mm、方位(111)、ボロンドープの高抵抗単結晶シリコン基板を準備し、基板を酸化して100nmのシリコン酸化膜を形成後にフォトリソグラフィーを行い、所定の場所のみ酸化膜に窓開けを行った。この後に、10%のKOH水溶液にて5分間エッチングを行った。その後、酸化膜をバッファードHFで除去して、ラマンとAFMによって粗さとダメージを測定した。その結果、AFMによる粗さSaは50nm、ラマンスペクトルでは520cm
-1のピークシフト量が1.2cm
-1であった。
この基板を、ホットフィラメントCVD装置に入れ、フィラメント温度:2200℃、H
2流量:10SLM、CH
4濃度:3%、基板温度:850℃、5Torr(667Pa)の条件で4時間の成長を行った。そのあと、ラマン測定を行いダイヤモンドの成長を評価した。その結果、シリコン基板上で部分的に研削した箇所のみダイヤモンド成長がみられた(
図8)。
【0047】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0048】
1…反応容器、 2…シリコン基板(被成膜基板)、
3…タングステンフィラメント、 4…反応ガス(メタンと水素)、
5…ダイヤモンドのラマンピーク、 6…炭化物(グラファイト)のラマンピーク、
7…部分研磨装置のパッド部分、 8…研磨して荒らした箇所、
9…研磨していない箇所、 10…CVD成長したダイヤモンド。