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特許7432297表示装置、および、印刷層付き板の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】表示装置、および、印刷層付き板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 13/04 20060101AFI20240208BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240208BHJP
   B41M 3/00 20060101ALI20240208BHJP
   G09F 7/16 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
G09F13/04 J
B41J2/01 501
B41M3/00 Z
G09F7/16 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018074830
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2018197850
(43)【公開日】2018-12-13
【審査請求日】2021-02-17
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-09
(31)【優先権主張番号】P 2017101359
(32)【優先日】2017-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 あずさ
【合議体】
【審判長】殿川 雅也
【審判官】藤本 義仁
【審判官】門 良成
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-127123(JP,A)
【文献】特開2015-14733(JP,A)
【文献】特開2012-242792(JP,A)
【文献】特開2000-211234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 13/04,7/16
B41J 2/01,2/165-2/20,2/21-2/215
B41M 1/00-3/18,7/00-9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷層付き板と、表示パネルと、前記印刷層付き板と前記表示パネルとを貼合する接着層とを備える表示装置であって、
前記印刷層付き板は、
屈曲部を有する透明板と、
当該透明板の主面における前記屈曲部に対応する位置に少なくとも一部が設けられた、少なくとも1つの下側印刷層と、
前記下側印刷層上の一部に設けられた上側印刷層とを備え、
前記上側印刷層は、平面視で複数設けられ、
前記複数の上側印刷層の平面視での大きさが異なり、
前記上側印刷層の厚さは、0.5μm以上5μm以下である
ことを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記下側印刷層は、前記主面上の第1の領域に設けられた第1の印刷層と、前記第1の領域に隣接する第2の領域を含む領域に設けられた第2の印刷層とを備え、
前記上側印刷層は、前記第1の印刷層上に設けられた前記第2の印刷層の一部で構成されている請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記下側印刷層における前記上側印刷層が設けられている複層部分の厚さに対する、前記上側印刷層が設けられていない単層部分の厚さの割合が0.6以上である請求項1または請求項2に記載の表示装置。
【請求項4】
平面視における前記下側印刷層の外縁には凹凸があり、当該凹凸の最大値と最小値との差が40μm以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記下側印刷層は、前記主面の周縁領域の少なくとも一部に設けられている請求項1から4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記透明板は、ガラスである請求項1から5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記ガラスは、強化ガラスである請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
請求項2に記載の表示装置に用いる印刷層付き板を製造する方法であり、かつ、インクジェット法を用いて透明板の主面上に印刷層を形成する、印刷層付き板の製造方法であって、
前記透明板の主面における第1の領域に第1の印刷層を形成し、
前記第1の印刷層上の一部と前記第1の領域に隣接する第2の領域とに連続する第2の印刷層を形成することを特徴とする印刷層付き板の製造方法。
【請求項9】
前記第2の印刷層を構成する前記第1の印刷層上の部分の厚さが前記第2の領域上の部分の厚さよりも薄くなるように、前記第2の印刷層を形成する請求項8に記載の印刷層付き板の製造方法。
【請求項10】
前記透明板は、屈曲部を有し、
前記第1の印刷層の少なくとも一部を前記主面における前記屈曲部に対応する位置に形成する請求項9に記載の印刷層付き板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷層付き板およびその製造方法、並びに表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、平面を平滑に成形した被印刷板と、被印刷板の一方の主面側にメタリックインクをベタ塗りして形成されるメタル地色層と、メタル地色層の上面にスモークインクなどによりヘアーラインなどのメタル仕上げ模様が印刷形成されたデザイン層とから構成される表現方法(メタル地色層とデザイン層とを合わせて「印刷層」という場合がある)がある(例えば、特許文献1参照)。
この従来の表現方法では、デザイン層を文字、記号、マークなどの模様形状にインクを抜いて白抜きにできるとされている。このため、デザイン性を向上させる目的に用いることができる他、模様部分とその周囲部分とでコントラストがついていることから、板を用いた製品の製造工程における位置決め用のアライメントマークやガイド(以下、アライメントマークとガイドとを合わせて「アライメントマークなど」という場合がある)としても利用できると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-211234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の従来の表現方法では、コントラストをつけてデザインなどの模様形状を認識できるようにするため、メタル地色層とデザイン層に異なるインクを用いる必要があり、印刷工程が複雑となる課題があった。また、印刷層が形成されていない面から、被印刷板を通して印刷層を視認した場合、印刷層の色味の違い(コントラスト)を視認できるため、所望のデザインが得られないことがあった。
本発明の目的は、簡便な工程で、印刷層が形成された面から印刷層を視認した場合にのみ、コントラストが視認できる印刷層を有する印刷層付き板およびその製造方法、並びに表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の印刷層付き板は、屈曲部を有する板と、当該板の主面における前記屈曲部に対応する位置に少なくとも一部が設けられた下側印刷層と、前記下側印刷層上の一部に設けられた上側印刷層とを備えていることを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、下側印刷層と上側印刷層とでインクが同じ場合、あるいは異なる場合のいずれであっても、下側印刷層における上側印刷層が設けられていない単層部分と、下側印刷層における上側印刷層が設けられている複層部分とに厚さの差が生じるため、印刷層付き板に光が照射されときに、印刷層が形成された面から印刷層を視認した場合にのみ、コントラストを視認できる。したがって、下側印刷層と上側印刷層との形成に必ずしも同じインクを用いる必要がないため、簡便な工程で板上にコントラストがついた印刷層を形成できる。
また、屈曲部を有する印刷層付き板を用いた製品の製造工程においては、当該印刷層付き板の筐体などへの位置決めは困難であるが、複層部分をアライメントマークなどとして用いることで、その位置決めが容易になる。
【0007】
本発明の印刷層付き板では、前記下側印刷層は、前記主面上の互いに隣接する領域に設けられた第1の印刷層および第2の印刷層とを備え、前記上側印刷層は、前記第1の印刷層上に設けられた前記第2の印刷層の一部で構成されていることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、第2の印刷層の形成時に上側印刷層も同時に形成でき、より簡便な工程で板上にコントラストがついた印刷層を形成できる。
【0008】
本発明の印刷層付き板では、複数の前記上側印刷層が設けられていることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、複数の複層部分をそれぞれアライメントマークなどとして利用することによって、印刷層付き板の二次元や三次元の位置決めが容易になる。
【0009】
本発明の印刷層付き板では、前記複数の上側印刷層の平面視での大きさが異なることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、大きさが異なる複層部分をそれぞれアライメントマークなどとして利用することによって、例えば筐体上において所定の大きさのアライメントマークなどが同じ位置になるように印刷層付き板を載置でき、この載置作業を正確にかつ容易に行える。
【0010】
本発明の印刷層付き板では、前記上側印刷層の厚さは、0.5μm以上8μm以下であることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、平面視において、単層部分と複層部分とのコントラストが明確に付きやすくなる。
【0011】
本発明の印刷層付き板では、前記下側印刷層における前記上側印刷層が設けられている複層部分の厚さに対する、前記上側印刷層が設けられていない単層部分の厚さの割合が0.6以上であることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、平面視において、単層部分と複層部分とのコントラストが明確に付きやすくなる。
【0012】
本発明の印刷層付き板では、平面視における前記下側印刷層の外縁には凹凸があり、当該凹凸の最大値と最小値との差が40μm以下であることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、印刷層付き板における下側印刷層が設けられていない非印刷領域と単層部分との境界を凹凸がない直線や曲線にでき、良好な美観性を実現できる。なお、「凹凸の最大値と最小値との差」とは、印刷層の外縁を上面から観察し、平面方向に最も突出した部位と最も窪んだ部位との差を意味する。
【0013】
本発明の印刷層付き板では、前記板は、透明板であり、前記下側印刷層は、前記主面の周縁領域の少なくとも一部に設けられていることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、透明板における周縁領域以外の領域が非印刷領域になるため、この非印刷領域に対向する位置に表示パネルなどを配置できる。
また、単層部分および複層部分で表示パネルなどの配線を隠蔽でき良好な美観性を実現できる。
さらには、単層部分および複層部分で表示パネルからの光の漏れを抑制できる。特に、下側印刷層を枠状に設け、この枠内に表示パネルを配置する場合、枠の内縁における角部から表示パネルの光が漏れやすいが、この角部に隣接する領域に上側印刷層を設けて複層部分にすることで、光の漏れをより抑制できる。
【0014】
本発明の印刷層付き板では、前記板は、ガラスであることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、板としてガラスを用いることで、高い強度と良好な質感とを兼ね備えた印刷層付き板を提供できる。
【0015】
本発明の印刷層付き板では、前記ガラスは、強化ガラスであることが好ましい。
本発明のこの態様によれば、ガラスとして強化ガラスを用いることで、強度と耐擦傷性に優れた印刷層付き板を提供できる。
【0016】
本発明の表示装置は、上述の印刷層付き板と、表示パネルと、前記印刷層付き板と前記表示パネルとを貼合する接着層とを備え、前記印刷層付き板を構成する前記板は、透明板である。
本発明によれば、複層部分をアライメントマークなどとして用いることで、カバー部材として使用する印刷層付き板の位置決めの容易化を図れ、表示装置の製造が容易になる。また、印刷層付き板の正しい向きを作業者が瞬時に判断できるようになり、作業員による作業の効率化を向上できる。
【0017】
本発明の印刷層付き板の製造方法は、インクジェット法を用いて板の主面上に印刷層を形成する印刷層付き板の製造方法であって、第1の領域に第1の印刷層を形成し、前記第1の印刷層上の一部と前記第1の領域に隣接する第2の領域とに連続する第2の印刷層を形成することを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、インクを吐出しつつノズルと板とを相対移動させることで第2の印刷層を形成するに際し、吐出開始時または吐出終了時にノズルを第1の印刷層上に位置させるだけの簡便な工程で、単層部分と複層部分とによってコントラストがついた印刷層を形成できる。
また、第2の印刷層を第2の領域から第1の印刷層上にかけて形成するため、第1の領域と第2の領域との境界に確実に印刷層を形成でき、良好な美観性を実現できる。
さらに、第1の印刷層と第2の印刷層とを有する下側印刷層の外縁における凹凸の最大値と最小値との差を、40μm以下にでき、印刷層付き板における非印刷領域と単層部分との境界を凹凸がない直線や曲線にでき、良好な美観性を実現できる。
【0019】
本発明の印刷層付き板の製造方法では、前記第2の印刷層を構成する前記第1の印刷層上の部分の厚さが前記第2の領域上の部分の厚さよりも薄くなるように、前記第2の印刷層を形成することが好ましい。
本発明のこの態様によれば、第2の印刷層を構成する第1の印刷層上の部分の厚さを薄くすることで、第1の印刷層上での濡れ広がりを抑制でき、コントラストの高いアライメントマークなどが得られる。
【0020】
本発明の印刷層付き板の製造方法では、前記板は、屈曲部を有し、前記第1の印刷層の少なくとも一部を前記主面における前記屈曲部に対応する位置に形成することが好ましい。
本発明のこの態様によれば、位置決めが容易な印刷層付き板を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る屈曲部を有する板の説明図であり、(A)は斜視図、(B)は(A)のA-A線に沿った断面図。
図2】(A),(B)は、他の実施形態における屈曲部を有する板の斜視図。
図3】前記一実施形態における印刷層付き板の斜視図。
図4】前記印刷層付き板を平面に展開した平面図。
図5】前記印刷層付き板を上辺側から見た側面図であり、(A)は左隅部分、(B)は右隅部分である。
図6】前記印刷層付き板を下辺側から見た側面図であり、(A)は右隅部分、(B)は左隅部分である。
図7】前記印刷層付き板の製造方法の説明図であり、(A)は左辺印刷層の形成方法、(B)は右辺印刷層の形成方法を示す。
図8】前記印刷層付き板の製造方法の説明図であり、(A)は上辺印刷層の形成方法、(B)は下辺印刷層の形成方法を示す。
図9】本発明の変形例に係る印刷層付き板を示し、(A)は平面図、(B)はB-B線に沿った断面図。
図10】本発明の印刷層付き板を備える表示装置の断面図。
図11】本発明の実施例で用いたインクジェット装置の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下の用語の定義は、本明細書および特許請求の範囲にわたって適用される。
「平坦部」とは、平均曲率半径が10000mm超である部分を意味する。
「屈曲部」とは、平均曲率半径が10000mm以下である部分を意味する。
「曲げ深さ」とは、屈曲部を有する板(以降、屈曲板とも記載)の厚さ方向断面視において、2つの端部を結ぶ線分と、これと平行となる直線のうち、屈曲板の屈曲部に接する接線との距離をいう。図1(A),(B)に示すような屈曲板2において、屈曲された方向における屈曲板2の両端間の距離hを意味する。
「曲げ角度」とは、図1(B)に示すような厚さ方向断面視で、屈曲部の両端と曲率半径中心Oをそれぞれ結んで形成される角度θを示す。本説明では、曲率半径が一定となる屈曲部を例として説明したが、曲率半径が連続的に変化する屈曲部でもよい。この場合、曲率半径中心Oは、曲率半径の最大値と最小値との平均曲率半径における中心としてよい。
「ひねり構造」とは、図2(A),(B)に示すような屈曲板2において、屈曲部2Aの一端側では曲率半径R1の湾曲形状を有し、他端側ではR1より小さい曲率半径R2の湾曲構造を有するというような、同じ屈曲部2Aに異なる曲率半径となる部分を有するような構造をいう。
「光学濃度(OD値)」とは、ある光の入射光量Iに対する、被測定物を透過してきた透過光量Tの比について底を10とした常用対数で表した値の絶対値であり、隠蔽性能を示す。例えば、波長が500nmである可視光で入射光量が1000、透過光量が1とすると、この時のOD値は|Log10(1/1000)|=3となる。これはOD測定装置(ラムダビジョン社製、商品名:LV-RTM)を使用し測定できる。
「平均」とは、特に断りが無い限り、5点のデータに関する相加平均を意味する。
【0023】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
〔印刷層付き板の構成〕
まず、印刷層付き板の構成について説明する。
図3に示す印刷層付き板1は、透明板としての屈曲板2と、第1の印刷層としての左辺印刷層31と、第1の印刷層としての右辺印刷層32と、第2の印刷層としての上辺印刷層33と、第2の印刷層としての下辺印刷層34とを備えている。
屈曲板2は、平面視で矩形の透明な強化ガラスである。屈曲板2は、矩形の長手方向中央が両端に比べて第2の主面22側に曲面状に凹むように形成され、その全体が屈曲部を構成している。屈曲板2は、第1の主面21と、第2の主面22と、端面23とを備えている。端面23には、面取り部24が設けられている。
なお、以下、矩形を構成する一対の長辺をそれぞれ上辺および下辺、一対の短辺をそれぞれ左辺および右辺という。また、短辺方向を上下方向、長辺方向を左右方向という。
【0024】
印刷層31~34は、印刷層付き板1に遮光性を付与するために設けられている。左辺印刷層31は、第1の主面21の四角枠状の周縁領域のうち、左辺に沿い上下方向に延びる長方形状の第1の領域としての左辺領域251に設けられている。右辺印刷層32は、上記周縁領域のうち右辺に沿い左辺領域251と同じ形状の第1の領域としての右辺領域252に設けられている。上辺印刷層33および下辺印刷層34は、上記周縁領域のうち上辺および下辺にそれぞれに沿い、左右方向に延びる長方形状の第2の領域としての上辺領域253および下辺領域254に設けられている。
【0025】
次に、印刷層31~34の詳細な構成について、図4および図5(A),(B)、図6(A),(B)も用いて説明する。
なお、図4は、印刷層付き板1を平面に展開した平面図である。また、図5(A),(B)は印刷層付き板1を上辺側から見た側面図、図6(A),(B)は印刷層付き板1を下辺側から見た側面図であり、図5(A),(B)、図6(A),(B)では、屈曲板2や各印刷層31~34が平らに表現されているが、実際には、曲がっている。
【0026】
上辺印刷層33は、図4に示すように、上辺単層部分331と、第1の上側印刷層332と、第2の上側印刷層333と、第1の接続部分334と、第2の接続部分335とを備えている。
上辺単層部分331は、図5(A),(B)に二点鎖線で示すように、側面視で長方形状の部分であり、第1の主面21上に直接設けられている。
上側印刷層332,333は、それぞれ図5(A),(B)に二点鎖線で示すように、側面視で長方形状の部分である。第1の上側印刷層332は、左辺印刷層31上における上辺側かつ右辺側の端部に、第2の上側印刷層333は、右辺印刷層32上における上辺側かつ左辺側の端部に、それぞれ設けられている。
接続部分334,335は、それぞれ同図に二点鎖線で示すように、側面視で三角形状の部分である。第1の接続部分334は、上辺単層部分331の上面における左辺側と第1の上側印刷層332の右端とを接続し、第2の接続部分335は、上辺単層部分331の上面における右辺側と第2の上側印刷層333の左端とを接続する。
【0027】
下辺印刷層34は、図4に示すように、下辺単層部分341と、第3の上側印刷層342と、第4の上側印刷層343と、第3の接続部分344と、第4の接続部分345とを備える。
下辺単層部分341は、図6(A),(B)に二点鎖線で示すように、側面視で長方形状の部分であり、第1の主面21上に直接設けられている。
上側印刷層342,343は、それぞれ図6(A),(B)に二点鎖線で示すように、長方形状の部分である。第3の上側印刷層342は、右辺印刷層32上における下辺側かつ左辺側の端部に、第4の上側印刷層343は、左辺印刷層31上における下辺側かつ右辺側の端部に、それぞれ設けられている。
接続部分344,345は、それぞれ同図に二点鎖線で示すように、側面視で三角形状の部分である。第3の接続部分344は、下辺単層部分341の上面における右辺側と第3の上側印刷層342の左端とを接続し、第4の接続部分345は、下辺単層部分341の上面における左辺側と第4の上側印刷層343の右端とを接続する。
【0028】
左辺印刷層31および右辺印刷層32は、その全体が第1の主面21上に直接設けられている。
左辺印刷層31は、図4に示すように、第1の複層部分構成部311と、第4の複層部分構成部312と、左辺単層部分313とから構成される。複層部分構成部311,312は、それぞれその上面に上側印刷層332,343が設けられる部分である。左辺単層部分313は、複層部分構成部311,312以外の部分である。
右辺印刷層32は、第2の複層部分構成部321と、第3の複層部分構成部322と、右辺単層部分323とから構成される。複層部分構成部321,322は、それぞれその上面に上側印刷層333,342が設けられる部分である。右辺単層部分323は、複層部分構成部321,322以外の部分である。
【0029】
それぞれ第1の印刷層としての左辺印刷層31および右辺印刷層32と、第2の印刷層を構成する上辺単層部分331および下辺単層部分341とは、本発明の下側印刷層35を構成する。この下側印刷層35は、第1の主面21における屈曲部に対応する位置に設けられている。
上側印刷層332,333,342,343は、第2の印刷層としての上辺印刷層33または下辺印刷層34の一部で構成され、下側印刷層35上の一部に設けられている。
【0030】
第1の複層部分構成部311と第1の上側印刷層332とは第1の複層部分361を構成し、第2の複層部分構成部321と第2の上側印刷層333とは第2の複層部分362を構成し、第3の複層部分構成部322と第3の上側印刷層342とは第3の複層部分363を構成し、第4の複層部分構成部312と第4の上側印刷層343とは第4の複層部分364を構成している。
【0031】
また、図4に示すように、上辺単層部分331、上側印刷層332,333、接続部分334,335の幅W31,W32,W33,W34,W35は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。下辺単層部分341、上側印刷層342,343、接続部分344,345の幅W41,W42,W43,W44,W45は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。左辺印刷層31の幅W10と、右辺印刷層32の幅W20と、例えば上辺単層部分331の幅W31と、例えば下辺単層部分341の幅W41とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態では、幅W10,幅W20,幅W31~幅W35,幅W41~幅W45が、全て同じ場合を例示する。
【0032】
上側印刷層332,333、接続部分334,335の長さL32,L33,L34,L35は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。上側印刷層342,343、接続部分344,345の長さL42,L43,L44,L45は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態では、長さL32,長さL33がLA、長さL34,長さL35,長さL44,長さL45がLB、長さL42,長さL43がLCとすると、LAがLCよりも大きい(例えば、長さL32が長さL42よりも長い)場合を例示する。このような構成により、平面視での大きさが第1の複層部分361と第2の複層部分362とで同じ、第3の複層部分363と第4の複層部分364とで同じ、複層部分361,362が複層部分363,364よりも大きくなる。
【0033】
図5(A),(B)、図6(A),(B)に示すように、左辺印刷層31、右辺印刷層32、上辺単層部分331、上側印刷層332,333、下辺単層部分341、上側印刷層342,343の厚さT10,T20,T31,T32,T33,T41,T42,T43は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
本実施形態では、厚さT10,T20,T31,T41がTA、厚さT32,T33,T42,T43がTBとすると、TAがTBよりも大きい(例えば、厚さT31が厚さT32よりも厚い)場合を例示する。このように、複層部分361,362,363,364が単層部分313,323,331,341よりも厚くなるため、印刷層付き板1に光が照射されときに、コントラストがつく。
【0034】
左辺印刷層31、右辺印刷層32、上辺単層部分331、下辺単層部分341(下側印刷層35)の厚さT10,T20,T31,T41は、7μm以下が好ましい。上限値以下であると、平面視において、単層部分313,323,331,341と複層部分361,362,363,364とのコントラストが明確に付きやすくなる。下側印刷層35が上限値を超えた場合、印刷層を形成しない領域との段差が大きくなり、後工程での接着剤貼合などで欠陥が形成しやすくなる。厚さT10,T20,T31,T41は、5μm以下がより好ましく、4μm以下がさらに好ましい。
厚さT10,T20,T31,T41の下限値は特に制限ははいが、0.5μm以上が好ましい。下限値未満であると、下側印刷層35の隠蔽性が悪化することがある。厚さT10,T20,T31,T41は、0.6μm以上がより好ましく、0.7μm以上がさらに好ましい。
【0035】
上側印刷層332,333,342,343の厚さT32,T33,T42,T43は、5μm以下が好ましい。上限値以下であると、平面視において、単層部分313,323,331,341と複層部分361,362,363,364とのコントラストが明確に付きやすくなる。上側印刷層332,333,342,343が上限値を超えた場合、下側印刷層35上で上側印刷層332,333,342,343が濡れ広がってしまい、平面視における上側印刷層332,333,342,343と下側印刷層35との境界が曖昧となり、コントラストが付きにくくなる。厚さT32,T33,T42,T43は、3μm以下がより好ましく、2μm以下がさらに好ましい。
厚さT32,T33,T42,T43の下限値は特に制限ははいが、0.5μm以上が好ましい。下限値未満であると、コントラストが付きにくく、アライメントマークなどとして利用しにくいためである。厚さT32,T33,T42,T43は、0.6μm以上がより好ましく、0.7μm以上がさらに好ましい。
なお、厚さの測定については特に制限はないが、例えば、BRUKER社製DektakXTを使用し、測定領域の算術平均値を厚さとして使用できる。
【0036】
複層部分361,362,363,364の厚さに対する、下側印刷層35の厚さの割合αは0.6以上が好ましい。割合αが下限値以上の場合、下側印刷層35と、複層部分361,362,363,364とで形成される段差が大きくなり過ぎず、後工程において欠陥ができにくい。割合αは0.7以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。
割合αの上限は特に制限はないが、0.95以下が好ましい。これにより平面視において、単層部分313,323,331,341と複層部分361,362,363,364とのコントラストが明確に付きやすくなる。割合αは0.9以下がより好ましい。
【0037】
複層部分361,362,363,364の可視光におけるOD値の平均値と、単層部分313,323,331,341のOD値の平均値は、3以上が好ましい。これにより印刷層により隠蔽性が高まる。下限値は4以上がより好ましい。
複層部分361,362,363,364の可視光におけるOD値の平均値と、単層部分313,323,331,341のOD値の平均値は、特に制限はないが、8以下が好ましい。上限値超の印刷層を設ける場合には、印刷層を厚くする必要がある。これにより後工程における接着層の貼合などで欠点ができやすくなる。上限値は7以下がより好ましく、6以下がさらに好ましい。
【0038】
平面視での印刷層31~34における第1の主面21の面内側の内縁316,326,336,346、つまり印刷層31~34の外縁には凹凸があり、当該凹凸の最大値と最小値との差(以下、単に「凹凸差」という)は、40μm以下が好ましい。これにより印刷層付き板1における下側印刷層が設けられていない非印刷領域と単層部分との境界を凹凸がない直線や曲線にでき、良好な美観性を実現できる。凹凸差は、35μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましく、20μm以下が特に好ましい。
なお、「凹凸差」は、印刷層の外縁を上面から観察し、観察面内で平面方向に最も突出した部位と最も窪んだ部位との差を意味する。
【0039】
図3に示すように、印刷層付き板1における印刷層31~34で囲まれた領域は、液晶パネル等の表示パネルが配置される表示領域4となる。印刷層付き板1が表示装置(図10参照)に用いられる場合、この表示領域4には液晶パネル等の表示パネルが配置される。表示パネルには駆動のための配線や回路等が設けられており、屈曲板2を通して表示パネルを視認した場合、配線等が見えてしまい美観を損なう。そこで、印刷層31~34を屈曲板2の周縁部に設けることにより、外周近傍に配置された配線等を隠蔽でき、美観を高められる。
また、表示パネルが液晶パネルの場合、液晶パネルの背面にバックライトが設けられるが、バックライトからの照明光が表示領域4の外側に漏れると美観を損なう。そこで、印刷層31~34を屈曲板2の周縁部に設けることにより、表示領域4の外周から照明光が漏れるのを防止でき、美観を高められる。
特に、印刷層31~34で構成された枠状の内縁における角部からバックライトからの照明光が漏れやすいが、この角部に隣接する領域に、厚さが厚く遮光性が高い複層部分361~364を設けることで照明光の漏れをより抑制できる。
【0040】
〔印刷層付き板の製造方法〕
次に、印刷層付き板1の製造方法について説明する。
まず、透明なガラスを所定の大きさに切断し、面取りを行った屈曲板2を準備する。このとき、平面視での面取り部24の寸法が、0.05mm以上0.5mm以下となるように面取りを行うことが好ましい。その後、屈曲板2を図3に示すように屈曲部を有するように成形する。屈曲板2の成形方法としては、特に限定されず、自重成形法、真空成形法、プレス成形法が例示できる。
自重成形法は、成形後の屈曲板2の形状に応じた所定の金型上に板ガラスを設置した後、板ガラスを軟化させて、重力により板ガラスを曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。真空成形法は、板ガラスを軟化させた状態で板ガラスの表裏面に差圧を与えて、板ガラスを曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。プレス成形は、成形後の屈曲板2の形状に応じた所定の金型(下型、上型)間に板ガラスを設置し、板ガラスを軟化させた状態で、上下の金型間にプレス荷重を加えて、板ガラスを曲げて金型になじませて、所定の形状に成形する方法である。
【0041】
この後、インクジェット法によって、屈曲板2に印刷層31~34を形成する。インクジェット法とは、ノズルから液状にしたインクの微少液滴をパルス状に吐出して、屈曲板2上にドット状のパターンを形成する方法である。ノズル移動機構の原点を基準として屈曲板2を位置決めし、コンピュータからの指令に基づきノズルがインクの微少液滴を吐出しながら屈曲板2の面上を概略水平方向へ移動する。これにより、点状のインクが連続して形成されて所定のパターンの印刷層が形成される。被印刷面が屈曲部を有する屈曲板2の場合は、パターンの歪などを考慮すると、インクの液滴を吐出するノズルと屈曲板2との距離は略一定であることが好ましい。即ち、ノズルと屈曲板2との距離を概略一定に維持した上で、パターンに応じてノズル又は屈曲板2を回動、移動させる機構を使用することが好ましい。なお、インクをノズルまで供給する供給圧力が安定し、ノズルからのインクの吐出量を一定に保持できることから、ノズルを固定して、そのノズルに対して屈曲板2を回動、移動させる機構がより好ましい。
【0042】
具体的には、屈曲板2を図示しない支持台に載置し、図7(A)に実線で示すように、ノズル9の吐出孔91を屈曲板2の第1の主面21における左下端部に位置させる。この後、吐出孔91からインクを吐出しつつ、同図に二点鎖線で示すように、ノズル9を吐出孔91が第1の主面21における左上端部に位置するまで移動させることで、図7(B)に示すような左辺印刷層31を印刷する。
次に、支持台およびノズル9のうち少なくとも一方を移動させる(ノズル9と屈曲板2とを相対移動させる)ことで、図7(B)に実線で示すように、吐出孔91を第1の主面21における右下端部に位置させ、同図に二点鎖線で示すように、インクを吐出するノズル9を、吐出孔91が第1の主面21における右上端部に位置するまで移動させることで、図8(A)に示すような右辺印刷層32を印刷する。
【0043】
その後、上辺印刷層33と下辺印刷層34とを印刷する。
上辺印刷層33を形成するに際し、図8(A)に実線で示すように、吐出孔91を第1の主面21における左上端部よりも右辺側に位置する第1の複層部分構成部311の左辺側端部の上方に位置させる。この後、インクを吐出しつつ、ノズル9を同図に二点鎖線で示すように、吐出孔91が第1の主面21における右上端部よりも左辺側に位置する第2の複層部分構成部321の右辺側端部の上方に位置するまで移動させることで、図8(B)に示すような上辺印刷層33を印刷する。
下辺印刷層34を形成するに際し、図8(B)に実線で示すように、吐出孔91を第1の複層部分構成部311の左辺側端部よりも右辺側に位置する第4の複層部分構成部312の左辺側端部の上方に位置させる。この後、インクを吐出しつつ、ノズル9を同図に二点鎖線で示すように、吐出孔91が第1の主面21における第2の複層部分構成部321の右辺側端部よりも左辺側に位置する第3の複層部分構成部322の右辺側端部の上方に位置するまで移動させることで、下辺印刷層34を印刷する。
【0044】
印刷層31~34の厚さは、吐出孔91からのインクの吐出量やノズル9の移動速度を制御することにより調整できる。例えば、厚くする場合には、吐出量を多くしたり、移動速度を遅くすればよく、薄くする場合には、吐出量を少なくしたり、移動速度を速くすればよい。
【0045】
インクの吐出量は、ノズル9の吐出孔91から吐出する液滴量と、吐出する間隔(吐出ピッチ)により制御できる。一つの吐出孔91からの液滴量をL(pL)、吐出ピッチをP(μm)とする場合、L/P(pL/μm)と吐出量に相関関係がある。L/Pは7以下が好ましい。L/Pが上限値以下であると、吐出量が安定し直線状に印刷する場合に滲みが抑えられ直線性が安定する。また、曲線状に印刷する場合にはインク垂れが抑制でき、所望の曲線形状が得られる。L/Pは6以下がより好ましく、4以下がさらに好ましい。
L/Pは0.5以上が好ましい。下限値以上であると、遮光性を求める印刷などに適した厚さや印刷品質が得られ、良好な印刷層が得られる。L/Pは0.6以上がより好ましく、0.8以上がさらに好ましい。
【0046】
ノズル9と屈曲板2との相対移動速度は、250mm/秒以下が好ましい。これはノズル9と屈曲板2との相対移動速度が上限値より速いと、これらの間で生じる気流や振動による影響を受けやすくなる。気流により巻き込んだ異物が印刷層31~34に混入し、欠点になる可能性がある。また振動により所望の直線精度とならない印刷層31~34となってしまう可能性がある。そこで上限値より遅い相対移動速度が好ましい。相対移動速度は230mm/秒以下がより好ましく、200mm/秒以下がさらに好ましい。
ノズル9と屈曲板2との相対移動速度の下限値は特に制限はないが、5mm/秒以上が好ましい。この相対移動速度は、印刷層付き板1の製造時間に影響を与える。相対移動速度が下限値以上であれば、高い品質の印刷層31~34の印刷層付き板1を高い生産効率で作製できる。相対移動速度は10mm/秒以上がより好ましく、20mm/秒以上がさらに好ましい。
【0047】
本実施形態では、上述のように、下側印刷層35を構成する左辺印刷層31全体、右辺印刷層32全体、上辺単層部分331、下辺単層部分341の厚さT10,T20,T31,T41の厚さが同じであることから、これらの印刷条件(インクの吐出量およびノズル9の移動速度)は同じであることが好ましい。
一方、第1,第2,第3,第4の上側印刷層332,333,342,343の厚さT32,T33,T42,T43は、左辺印刷層31などよりも薄いことから、これらの印刷条件は左辺印刷層31などと異なることが好ましく、例えばインクの吐出量を少なくしたり、ノズル9の移動速度を速くすることが好ましい。すなわち、上辺印刷層33および下辺印刷層34の印刷時は、印刷開始時および終了時とそれらの間との印刷条件を変更することが好ましい。
【0048】
なお、ノズル9と屈曲板2との間隔は、0.5mm以上2mm以下に制御されること好ましい。これによれば、ひねり構造に印刷層を形成すると、所望の厚さの範囲に制御でき、均質な印刷層が得られる。また、図3のような表示領域4を備えるような印刷層付き板1を作製する場合、印刷層と表示領域4との境界について高い直線性を保ちながら印刷できる。なお、屈曲板2の全面に印刷し表示領域4のような印刷層を形成しない部分を設けない場合、また厚さの均質性を求めない場合には、ノズル9と屈曲板2との間隔に特に制限はない。
また、印刷層31~34の印刷時のインクは、同じであることが好ましい。
【0049】
その後、乾燥、焼成を行うことで、印刷層31~34が硬化し、印刷層付き板1が得られる。なお、印刷層31~34の乾燥や焼成は、印刷層31~34を形成した都度実施してもよく、印刷層31~34全てを形成してから実施してもよく、特に制限はない。
【0050】
〔印刷層付き板の作用効果〕
下側印刷層35と、上側印刷層332,333,342,343とでインクが同じ場合、あるいは異なる場合のいずれであっても、単層部分313,323,331,341と、複層部分361,362,363,364とに厚さの差が生じ、印刷層付き板1に光が照射されときに、印刷層付き板1の第1の主面21側から印刷層31~34を視認するとコントラストを認識できる。したがって、1つのインクを用いる必要がないため、簡便な工程で板上にコントラストがついた印刷層31~34を形成できる。
【0051】
上側印刷層332,333を上辺印刷層33の一部で構成し、上側印刷層342,343を下辺印刷層34の一部で構成しているため、上辺印刷層33、下辺印刷層34の形成時に上側印刷層332,333,342,343も同時に形成でき、より簡便な工程でコントラストがついた各印刷層31~34を形成できる。
【0052】
印刷層付き板1に4個の上側印刷層332,333,342,343を設けているため、4個の複層部分361,362,363,364のうち少なくとも2つをアライメントマークなどとして利用することによって、印刷層付き板1の二次元や三次元の位置決めが容易になる。
【0053】
複層部分361,362を複層部分363,364よりも大きくしているため、これらをアライメントマークなどとして利用することによって、例えば筐体上において所定の大きさのアライメントマークなどが同じ位置になるように印刷層付き板1を載置でき、この載置作業を正確にかつ容易に行える。また、カバー部材の正しい向きを作業者が瞬時に判断できるようになり、作業員による作業効率化を向上できる。
【0054】
インクジェット法を用いてインクを吐出しつつノズル9と屈曲板2とを相対移動させることで上辺印刷層33や下辺印刷層34を形成するに際し、吐出開始時または吐出終了時にノズル9を左辺印刷層31上や右辺印刷層32上に位置させるだけの簡便な工程で、単層部分313,323,331,341と、複層部分361,362,363,364とによってコントラストがついた印刷層31~34を形成できる。
特に、例えば上辺印刷層33を上辺領域253を介して左辺印刷層31の上から右辺印刷層32の上にかけて形成するため、左辺領域251および右辺領域252と上辺領域253との境界に確実に上辺印刷層33を形成でき、良好な美観性を実現できる。
さらに、内縁316,326,336,346の上面視(平面視)において凹凸差を、40μm以下にでき、良好な美観性を実現できる。
【0055】
上側印刷層332,333,342,343の厚さT32,T33,T42,T43を上辺単層部分331、下辺単層部分341の厚さT31,T41よりも薄くしているため、印刷層付き板1の第1の主面21側から印刷層31~34を観察した場合、コントラストの高いアライメントマークなどを得られるだけでなく、厚さT32,T33,T42,T43による段差を小さくできる。次工程での粘着層貼合などにおいて空隙などを生じさせず、良好な最終製品を得られる。
【0056】
[変形例]
本発明は上記実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の改良ならびに設計の変更等が可能である。本発明の実施の際の具体的な手順、および構造等は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造等としてもよい。
【0057】
例えば、図9(A),(B)に示すような印刷層付き板1Aであってもよい。この印刷層付き板1Aは、屈曲板2の第1の主面21上の周縁領域に四角枠状に設けられた下側印刷層35Aと、この下側印刷層35Aの内縁の角部にそれぞれ設けられた4個の上側印刷層37Aとを備えている。下側印刷層35Aにおける上側印刷層37Aが設けられた部分と、上側印刷層37Aとによって複層部分381Aが構成され、下側印刷層35Aにおける上側印刷層37Aが設けられていない部分によって単層部分382Aが構成されている。
このような印刷層付き板1Aは、四角枠状の下側印刷層35Aを印刷した後、上側印刷層37Aを印刷することで製造できる。下側印刷層35Aおよび上側印刷層37Aの印刷法は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、例えばスクリーン印刷法やインクジェット法を使用できる。
このような印刷層付き板1Aによっても、1つのインクを用いた場合でも、複層部分381Aと単層部分382Aとに厚さの差でコントラストをつけられる。なお、図9(A),(B)では、印刷層付き板1Aが平板状に表現されているが、実際には、上記実施形態の印刷層付き板1と同様に屈曲している。
【0058】
例えば、印刷層付き板1,1Aの屈曲板2としては、用途に応じて、種々の形状、材料からなるものを使用できる。
形状としては、平坦部のみを有する板であってもよいし、平坦部と屈曲部との両方を有する板であってもよいし、表面に凹凸を有する板であってもよい。また、板に限らずフィルム状であってもよい。
材料としては、透明であればよく、一般的なガラス、例えば、無機ガラス、ポリカーボネートやアクリル等の有機ガラスを使用でき、その他の合成樹脂等も使用できる。また、合せガラスといった、ガラスと樹脂の複合体も使用できる。
屈曲板2として、無機ガラスを用いる場合、その厚さtは0.5mm以上5mm以下が好ましい。この下限値以上の厚さを備えたガラスであれば、高い強度と良好な質感を兼ね備えた印刷層付き板1を得られる利点がある。また、無機ガラスを用いる場合、その厚さtは、0.7mm以上3mm以下がより好ましく、1mm以上3mm以下がさらに好ましい。
【0059】
屈曲部を有する屈曲板2の場合、その屈曲部の曲率半径が10000mm以下であり、5000mm以下が好ましく、1000mm以下がより好ましく、200mm以下がさらに好ましい。これまで均一印刷ができなかった曲率半径が小さい屈曲板2であっても、上記実施形態におけるインクジェット法による印刷方法を使用することで均一印刷でき、均一な印刷層付き板1を得られる。屈曲部の曲率半径は1mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましい。屈曲部の曲率半径が下限値以上であればインクが緩衝しにくく、より均一な印刷層が得られる。
【0060】
屈曲部を有する屈曲板2の場合、その屈曲部の曲げ深さが1000mm以下であり、800mm以下が好ましく、500mm以下がより好ましく、200mm以下がさらに好ましい。上限値以下の曲げ深さを有する屈曲板2であれば、これまで均一印刷ができなかった曲げの深い屈曲部を有する屈曲板2であっても、上記実施形態におけるインクジェット法による印刷方法を使用することで均一印刷でき、均一な印刷層付き板1を得られる。屈曲部の曲げ深さは特に制限はないが、3mm以上が好ましく、5mm以上がより好ましく、10mm以上がさらに好ましく、20mm以上が特に好ましい。曲げ深さは小さいが、従来のスクリーン印刷法などで均一印刷できなかった下限値以上の曲げ深さを有する屈曲板2に、本発明にかかる印刷方法を使用すると均一な印刷層付き板が得られる。
【0061】
使用する屈曲板2としては、その曲げ角度の上限は360°未満であれば特に制限はないが、270°以下が好ましく、180°以下がより好ましく、135°以下がさらに好ましく、120°以下が特に好ましく、90°以下がとりわけ好ましい。このような大きな曲げ角度の屈曲板2は従来均一な印刷を実施できなかったが、上記実施形態におけるインクジェット法による印刷方法では、インクを吐出するノズルを近づけられるため均一な印刷層を形成でき、均一な印刷層付き板1が得られる。曲げ角度の下限は、30°以上が好ましく、45°以上がより好ましい。
【0062】
屈曲板2として、有機ガラスや合成樹脂等を用いる場合、同種・異種問わず重ねられた基材で構成されていてもよく、基材間に各種接着層が挿入されていてもよい。
屈曲板2として無機ガラスを用いる場合、化学強化処理、物理強化処理のいずれを行ってもよいが、化学強化処理を行うことが好ましい。上述のような比較的、薄い無機ガラスを強化処理する場合、化学強化処理が適切である。
【0063】
屈曲板2の第1の主面21および第2の主面22のうち少なくとも一方の面には、防眩処理(AG処理)、反射防止処理(AR処理)、耐指紋処理(AFP処理)等が施されることが好ましい。印刷層31~34,35Aが設けられる第1の主面21および面取り部24には、印刷層31~34,35Aとの密着性を向上させるため、プライマー処理やエッチング処理等が施されていてもよい。
【0064】
印刷層31~34,35A,37Aを形成するインクは、無機系でも有機系であってもよい。無機系のインクとしては、例えば、SiO、ZnO、B、Bi、LiO、NaOおよびKOから選択される1種以上、CuO、Al、ZrO、SnOおよびCeOから選択される1種以上、FeおよびTiOからなる組成物であってもよい。
【0065】
有機系のインクとしては、樹脂を溶剤に溶解した種々の印刷材料を使用できる。例えば、樹脂としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、オレフィン、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体、アクリルニトリル-ブタジエン共重合体、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリウレタンポリオール等の樹脂からなる群から、少なくとも1種を選択して使用してよい。溶媒としては、水、アルコール類、エステル類、ケトン類、芳香族炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤を用いてもよい。例えば、アルコール類としては、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール等を使用でき、エステル類としては酢酸エチル、ケトン類としてはメチルエチルケトンを使用できる。芳香族炭化水素系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソTM100、ソルベッソTM150等を使用でき、脂肪族炭化水素系溶剤としてはヘキサン等を使用できる。なお、これらは例として挙げたものであり、その他、種々の印刷材料を使用できる。前記有機系の印刷材料は、透明板に塗布した後、溶媒を蒸発させて樹脂の各印刷層31~34,35A,37Aを形成できる。加熱により硬化できる熱硬化性インクでもよく、UV硬化性インクでもよく、特に制限はない。
【0066】
印刷層31~34,35A,37Aは、パッド印刷やフィルム転写印刷で形成してもよい。
パッド印刷は、パッド移動機構の原点を基準として屈曲板2を位置決め固定し、印刷版面上に形成された所定のパターンを、弾性体であるパッドを用いて屈曲板2へ転写する方法であり、パッドが印刷版に接触して、予め印刷版上に形成された所定のパターンをパッド面に転写する。そして、パッドが屈曲板2の被印刷面に接触して、パッド表面のパターンを屈曲板2へ転写し、屈曲板2に印刷層を形成する。パッドの材質としては弾性率の比較的低い材質、例えば、シリコンゴムなどを使用することで、転写時の面の形状への追従性を高められ、比較的急な屈曲板にも使用できる。
フィルム転写印刷は、フィルム上に所定のパターンを有する被転写層(印刷層)が形成されており、該フィルムを屈曲板2の被印刷面に接触させ、フィルムに形成された被転写層を屈曲板2へ転写し、フィルムを除去することで、屈曲板2に印刷層を形成する。フィルム材としては、屈曲板2の被印刷面の形状に追従できる柔軟性を持っていることが好ましい。フィルムを屈曲板2の被印刷面に接触させる際には、必要に応じてフィルムの位置決めを行う。被転写層を屈曲板2へ転写する際には、ゴムロールによる加圧や、加熱といった手段が補助的に行われる。
【0067】
印刷層31~34,35A,37Aに用いられるインクには、着色剤が含まれてもよい。着色剤としては、例えば、印刷層31~34,35A,37Aを黒色とする場合、カーボンブラック等の黒色の着色剤を使用できる。その他、所望の色に応じて適切な色の着色剤を使用できる。
印刷層31~34,35A,37Aのうち少なくとも1つの印刷は、所望の回数だけ積層してもよく、印刷に用いるインクは、各層異なるものを使用してもよい。
印刷層31~34,35A,37Aで異なるインクを用いてもよい。
印刷層31~34,35A,37Aを所望の回数だけ積層する場合、各層で異なるインクを用いてもよい。例えば、利用者が印刷層付き板1を第2の主面22側から見たときに、印刷層31~34,35A,37Aを白く見せたい場合には、1層目を白色で印刷し、2層目以降を黒色で印刷すればよい。これにより使用者が第2の主面22側から各印刷層31~34,35A,37Aを見た際、印刷層31~34,35A,37Aの背面の視認性に関わる、いわゆる「透け感」を抑制した白色の印刷層31~34,35A,37Aを形成できる。
【0068】
印刷層は、上記実施形態のような単層部分と複層部分とを有するように、第1の主面21の連続する二辺に沿うL字状や三辺に沿うU字状にしてもよい。印刷層は、第1の主面21が四角形以外の多角形や円形あるいは異形の場合、単層部分と複層部分とを有するように、これらの形状に対応する枠状、多角形の複数に沿う直線状に設けられてもよい。第1の主面が円形の場合には、複数の円弧状の印刷層の端部同士を重ねることで、単層部分と複層部分とを有するようにしてもよい。
印刷層31~34,35A,37Aの乾燥や焼成は、各印刷層31~34,35A,37Aそれぞれの形成後に行ってもよく、各工程を実施するタイミングや温度条件等は、使用するインクの特性に応じて適宜選択できる。
【0069】
印刷層付き板1を製造する際に、複数のノズルを用いて、左辺印刷層31と右辺印刷層32とを同時に印刷してもよいし、上辺印刷層33と下辺印刷層34とを同時に印刷してもよい。
複層部分361~364のうち、少なくとも1つのみを設けてもよい。
複層部分361~364の平面視での大きさは、同じであってもよい。
上側印刷層332,333,342,343の上面は、全体が第1の主面21と平行であってもよいし、少なくとも一部が第1の主面21に対して傾斜していてもよい。
上側印刷層332,333,342,343の上面の形状は、四角形以外の多角形や円形あるいは異形であってもよい。
【0070】
本発明の印刷層付き板1,1Aの用途としては、特に限定されない。具体例としては、車両用透明部品(ヘッドライトカバー、サイドミラー、フロント透明基板、サイド透明基板、リア透明基板、インスツルメントパネル表面等。)、メータ、建築窓、ショーウインドウ、建築用内装部材、建築用外装部材、ディスプレイ(ノート型パソコン、モニタ、LCD、PDP、ELD、CRT、PDA等)、LCDカラーフィルタ、タッチパネル用基板、ピックアップレンズ、光学レンズ、眼鏡レンズ、カメラ部品、ビデオ部品、CCD用カバー基板、光ファイバ端面、プロジェクタ部品、複写機部品、太陽電池用透明基板(カバーガラス等。)、携帯電話窓、バックライトユニット部品(導光板、冷陰極管等。)、バックライトユニット部品液晶輝度向上フィルム(プリズム、半透過フィルム等。)、液晶輝度向上フィルム、有機EL発光素子部品、無機EL発光素子部品、蛍光体発光素子部品、光学フィルタ、光学部品の端面、照明ランプ、照明器具のカバー、増幅レーザ光源、反射防止フィルム、偏光フィルム、農業用フィルム等が挙げられる。
本発明の印刷層付き板1,1Aの印刷層31~34,35A,37Aは、この印刷層付き板1,1Aが用いられる物品の模様を構成し、当該物品の意匠性を向上させるものでもよい。
【0071】
本発明の印刷層付き板1の用途として、特に、輸送機用内装部材に適している。屈曲板2のうち、光を透過させたくない部位に本発明の印刷層の複層部分を形成することで、表示領域4に液晶パネルなどの表示装置やセンサーを配置した際、表示装置やセンサーに使用するバックライトの光が印刷層から漏えいしにくくなる。これにより例えば、運転者が表示装置やセンサーを操作する際に、瞬時の判断がしやすくなる。自動車などの輸送機内では、明暗が常に変化するため、本発明の印刷層付き板1は特に適している。輸送機用内装部材として、ダッシュボード(インストルメントパネル、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、センターコンソール)や非開口部内装部材(ドア、座席、床、天井、ハンドル)に、本発明の印刷層付き板1を使用することが適している。
【0072】
ここで、印刷層付き板1を備える表示装置の一例について説明する。
図10に示す表示装置10は、フレーム5を備える。フレーム5は、底部51と、底部51に対して交差する側壁部52と、底部51に対向する開口部53とを備える。底部51と側壁部52とで囲まれた空間には、液晶モジュール6が配置されている。液晶モジュール6は、底部51側に配置されたバックライト61と、バックライト61上に配置された液晶パネル(表示パネル)62とを備えている。
また、フレーム5の上端には、第1の主面21が液晶モジュール6側を向くようにカバー部材として機能する印刷層付き板1が設けられる。印刷層付き板1は、開口部53および側壁部52の上端面に設けられた接着層7を介して、印刷層31~34の一部がフレーム5に、印刷層31~34の残部および第1の主面21の表示領域4が、液晶モジュール6にそれぞれ貼合されている。
【0073】
なお、接着層7は、屈曲板2と同じく透明で、屈曲板2との屈折率差が小さいことが好ましい。
接着層7としては、例えば、液状の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる透明樹脂からなる層が挙げられる。硬化性樹脂組成物としては、例えば、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性樹脂組成物等が挙げられ、その中でも、硬化性化合物および光重合開始剤を含む光硬化性樹脂組成物が好ましい。硬化性樹脂組成物を、例えば、ダイコータ、ロールコータ等の方法を用いて塗布し、硬化性樹脂組成物膜を形成する。
接着層7は、OCAフィルム(OCAテープ)であってもよい。この場合、印刷層付き板1の第1の主面21側にOCAフィルムを貼合すればよい。
接着層7の厚さは、5μm以上400μm以下が好ましく、50μm以上200μm以下がより好ましい。接着層7の貯蔵せん断弾性率は、5kPa以上5MPa以下が好ましく、1MPa以上5MPa以下がより好ましい。
【0074】
表示装置10を製造するにあたり、組立順序は特に限定されない。例えば、予め印刷層付き板1に接着層7を配置した構造体を準備しておき、フレーム5に配置し、その後、液晶モジュール6を貼合してもよい。
表示装置10は、タッチセンサ等を備えていてもよい。タッチセンサを組み込む場合は、印刷層付き板1の第1の主面21側に接着層を介してタッチセンサを配置し、それに接着層7を介して液晶モジュール6を配置する。
【0075】
このような表示装置10を製造するに際し、印刷層付き板1の筐体としてのフレーム5への位置決めは困難であるが、第1~第4の複層部分361~364をアライメントマークなどとして用いることで、その位置決めが容易になる。
なお、表示パネルとしては、有機EL(エレクトロルミネッセンス)パネル、プラズマディスプレイパネルであってもよい。
【実施例
【0076】
次に、本発明の実施例について説明する。本発明は以下の実施例に限定されるものではない。例1は本発明の実施例、例2は比較例である。
【0077】
板として、厚さが2mm、平面視の大きさが540mm×450mmの、主面が四角形の板状ガラス(化学強化前のドラゴントレイル(登録商標)、旭硝子社製)を用い、以下の手順で印刷層付きガラス板を得た。
【0078】
<例1>
ガラス板に(1)成形処理、(2)端面の研削処理、(3)化学強化処理およびアルカリ処理、(4)印刷層の形成、の順に処理を行った。具体的な処理は以下の通りである。
【0079】
(1)成形処理
板状ガラスの第1の主面21に以下の手順で、成形処理により凹部を形成した。
まず、板状ガラスの両面について酸化セリウム研磨液を使用し、それぞれ3μmずつ研磨した。その後、洗浄した後に乾燥した。この板状ガラスを成形型上に載置し、750℃程度まで昇温し、板状ガラスを軟化させ、成形型に沿わせた。成形型の屈曲部を転写させるようにすることで、図2(B)に示すように、板状ガラスの屈曲部2Aの一端の曲率半径R1が70mm、他端の曲率半径R2が25mmとし、屈曲部2Aの曲げ深さを50mmとなるようにした。この屈曲部2Aを付与した板状ガラスについて、徐々に室温まで冷却し、屈曲部を有する板状ガラス(以降、本実施例では単に「屈曲ガラス2」という)を得た。なお、屈曲ガラス2は平坦部2Bを有する。第2の主面側において、平坦部2Bの大きさは、a1=130mm、a2=250mm、a3=120mm、a4=350mmである。
【0080】
(2)端面の研削処理
屈曲ガラス2の全周にわたってガラスの端面から0.2mmの寸法でC面取りを行った。面取りは600番の砥石(東京ダイア社製)を用い、砥石の回転数が6500rpm、砥石の移動速度が5000mm/分で処理した。これにより端面の算術表面粗さRaが450nmとなった。
【0081】
(3)化学強化処理およびアルカリ処理
次に、450℃に加熱して硝酸カリウム塩を溶融させた溶融塩に、屈曲ガラス2を2時間浸漬して化学強化処理を行った。その後、ガラス板を溶融塩より引き上げ、1時間で室温まで徐冷した。以上の処理で、表面圧縮応力(CS)が730MPa、応力層の深さ(このガラス板をアルカリ溶液(商品名:サンウォッシュTL-75、ライオン社製)に4時間浸漬してアルカリ処理を施した。
【0082】
(4)インクジェット法による印刷層の形成
印刷層は、インクジェット装置を使用して形成した。インクジェット装置の構成を図11に示す。インクジェットノズル100(Xaar社製、型番#1001)は架台に固定しておき、インクジェットノズル100の吐出口を下向きとし、鉛直方向(図11中下方向(-Z方向)にインクが塗布されるようにした。屈曲ガラス2は、第2の主面22を6軸多関節ロボット101(三菱電機社製、型番RV-7FL)に把持させ、第1の主面21を印刷面とした。インクジェットノズル100の吐出口と第1の主面21との距離Kを0.8mm~2mmとなるように、また、第1の主面21の法線方向と、インクジェットノズル100の吐出方向(今回は鉛直方向)が略同一直線上(ほぼ同一平面上)となるように、6軸多関節ロボット101を制御することで、屈曲ガラス2の位置や角度を調整した。インクとして熱硬化性黒色インクを使用した。
【0083】
まず、印刷層を形成する前に、屈曲ガラス2の第1の主面21について、コロナ処理を1~30秒間実施し、第1の主面21の水に対する接触角が5°以下となるようにした。その後、印刷を開始し、図2(B)に示す第1の主面21における左辺領域251Aに左辺印刷層31を形成した。この際、インクジェットノズルに対して屈曲ガラス2を、10mm/秒の速度で移動させ、左辺印刷層31の平均厚さT10=3.5μmとした。同様に、右辺領域252Aに右辺印刷層32を形成し、右辺印刷層32の平均厚さT20=3.5μmとした。
【0084】
続いて、図2(B)に示す上辺領域253Aに上辺印刷層33を形成した。上辺印刷層33は右辺印刷層32の上から印刷を開始し、左辺印刷層31の上まで印刷を実施した。この際、印刷層形成方向に曲率半径R2を含む屈曲部2Aを有するため、インクジェットノズル100の吐出口に対して屈曲ガラス2を回転させながら移動した。上辺印刷層33のうち、右辺印刷層32上に形成された印刷層の平均厚さT33=1.5μm、左辺印刷層31上に形成された印刷層の平均厚さT32=1.5μm、第1の主面21上に形成された印刷層の平均厚さT31=3.5μmとした。この際、インクジェットノズル100に対して屈曲ガラス2を、平坦部2B,2Cにおいては10mm/秒の速度で移動させ、屈曲部2Aは屈曲面に沿って5mm/秒で移動させた。
【0085】
最後に図2(B)に示す下辺領域254Aに下辺印刷層34を形成した。下辺印刷層34は右辺印刷層32の上から印刷を開始し、左辺印刷層31の上まで印刷を実施した。この際、印刷層形成方向に曲率半径R1を含む屈曲部2Aを有するため、インクジェットノズル100の吐出口に対して屈曲ガラス2を回転させながら移動した。下辺印刷層34のうち、右辺印刷層32上に形成された印刷層の平均厚さT42=1.5μm、左辺印刷層31上に形成された印刷層の平均厚さT43=1.5μm、第1の主面21上に形成された印刷層の平均厚さT41=3.5μmとした。この際、インクジェットノズル100に対して屈曲ガラス2を、平坦部2B,2Cにおいては5mm/秒の速度で移動させ、屈曲部2Aは屈曲面に沿って5mm/秒で移動させた。
4辺に印刷層を形成した屈曲ガラス2について、220℃、20分間乾燥及び焼成を実施し、冷却後、単層部分と複層部分とを備える印刷層付きガラス板Aを得た。
複層部分の厚さに対する、第1の主面21上に形成された印刷層(単層部分)の厚さT10,T20,T31,T41の割合αは、3.5μm/(1.5μm+3.5μm)より0.7となった。
【0086】
<例2>
ガラス板に(1)ガラスの準備、(2)端面の研削処理、(3)化学強化処理およびアルカリ処理、(4)印刷層の形成、の順に処理を行った。(2)および(3)以外は例1とは異なり、(4)印刷層の形成の工程において、インクジェット印刷法ではなく、スクリーン印刷法により印刷層を形成した。これにより、スクリーン印刷法では上述の屈曲ガラス2の屈曲部2Aを印刷できないため、(1)において成形処理はせず、平板状ガラスを使用した。具体的な処理は以下の通りである。
【0087】
(1)ガラスの準備
板状ガラスの両面について酸化セリウム研磨液を使用し、それぞれ3μmずつ研磨した。その後、洗浄した後に乾燥し、ガラス板を得た。
【0088】
(4)スクリーン印刷法による印刷層の形成
ガラス板の第1の主面21の外周部に、2cm幅の黒枠状に下側印刷層35Aを形成した。まず、#320のメッシュのスクリーン版をスクリーン印刷機にセットした。使用したスクリーン版はメッシュ部に比べ、乳剤部のインクに対する濡れ性が異なるように作製した。インクとして黒色インク(商品名:HF GV3RX01 710 ブラック、株式会社セイコーアドバンス社製)を用意した。次に、スクリーン印刷機を用いて、平均厚さが5μmとなるように黒色インクを塗布して下側印刷層35Aを形成した。その後、120℃で10分間保持して下側印刷層35を乾燥させた。
続いて、下側印刷層35A上に、下側印刷層35Aの内周側に、図9のように上側印刷層37Aを形成した。具体的には、まず、#320のメッシュのスクリーン版をスクリーン印刷機にセットした。使用したスクリーン版はメッシュ部に比べ、乳剤部のインクに対する濡れ性が異なるように作製した。インクとして黒色インク(商品名:HF GV3RX01 710 ブラック、株式会社セイコーアドバンス社製)を用意した。次に、スクリーン印刷機を用いて、上側印刷層37A縁の平均厚さが5μmとなるように、黒色インクを塗布して上側印刷層37Aを形成した。その後、120℃で30分間保持して焼成した。以上の手順により単層部分と複層部分とを印刷層付きガラス板Bを得た。
複層部分の厚さに対する、第1の主面21上に形成された下側印刷層35A(単層部分)の厚さの割合αは、5μm/(5μm+5μm)より0.5となった。
【0089】
[評価]
例1および例2で得られた印刷層付きガラス板について以下の評価を実施した。
【0090】
(光学顕微鏡観察)
印刷層の外縁(印刷層と印刷層を形成していない第1の主面21との境界)について、設計値に対してどの程度ずれているかを確認するため、光学顕微鏡により凹凸差を見積もった。光学顕微鏡は半導体/FPD光学顕微鏡(オリンパス社製、型番:MX61LT-N1277MU2)を用い、反射モードで観察を行った。観察倍率は50倍とした。結果を表1に示す。なお、凹凸差は、観察視野内の印刷層端面における最も突出した箇所と最も窪んだ箇所との距離とし、3箇所測定した結果の平均とした。
【0091】
【表1】
【0092】
(コントラスト確認)
印刷層付きガラス板A,Bそれぞれの印刷層について、第1の主面側から複層部分と単層部分とのコントラストを確認した。また、第2の主面側から複層部分と単層部分との色味の違いなどないか確認した。
【0093】
(貼合性試験)
印刷層付きガラス板A,Bについて、第1の主面上に印刷層と、印刷層を形成していない領域とを覆うように接着剤を塗布した。続いて、表示パネル代替としての厚さ10mmのガラス板(以降、表示パネルと記載)を、印刷層付きガラス板A,Bそれぞれに、接着層を介して貼合した。
【0094】
(貼合後視認性試験)
前記貼合性試験において作製したサンプルについて、この表示パネル代替としてのガラス板の背面から、平板状照明を当て、印刷層付きガラス板A,Bの第2の主面から目視にて、それぞれの印刷層を観察した。
【0095】
印刷層付きガラス板Aの印刷層は、第1の主面から観察すると、複層部分と単層部分とのコントラストが確認でき、第2の主面から観察しても色味の違いは確認されなかった。一方で、印刷層付きガラス板Bの印刷層は、第1の主面から観察すると、複層部分と単層部分とのコントラストが確認できたが、第2の主面から観察した場合に色味の違いが確認された。
【0096】
印刷層付きガラス板Aについては、接着剤を塗布しても、単層部分と複層部分との段差が小さく、接着剤に段差ができにくく、表示パネルとの隙間もなく、がたつきもなく貼合できた。一方で、印刷層付きガラス板Bについては、単層部分と複層部分との段差が大きく、接着剤についても大きな段差ができやすかった。これに表示パネルを貼合すると隙間が形成するなどの欠陥が見られた。接着剤に段差ができないように調整した場合、接着剤の厚さの不均一によるがたつきが確認された。
【0097】
表示パネルの背面に平板状照明を配置して、印刷層付きガラス板Aについて第2の主面から観察したところ、印刷層自体の欠陥により透過する光は確認されなかった。また印刷層の外縁については、前記の光学顕微鏡観察結果と整合して、良好な直線性が確認された。一方で、印刷層付きガラス板Bについては、部分的に印刷層自体の結果により光が透過してしまい遮光性が劣っていた。また、印刷層の外縁についても、印刷層付きガラス板Aほどの直線性は確認できなかった。
【0098】
以上の結果から、実施例の印刷層付きガラス板は、比較例の印刷層付きガラス板に比べ、第1の主面側から印刷層を観た際にのみコントラストが認識でき、第2の主面側からガラスを通して印刷層を視認した場合に、色味の違いを視認できなかった。以上のことから機能性を有し、美観に優れた印刷層付きガラス板が得られた。
【符号の説明】
【0099】
1,1A…印刷層付き板(カバー部材)、2…板、4…表示領域、5…フレーム(筐体)、7…接着層、10…表示装置、21…第1の主面、31…左辺印刷層(第1の印刷層)、32…右辺印刷層(第1の印刷層)、33…上辺印刷層(第2の印刷層)、34…下辺印刷層(第2の印刷層)、35,35A…下側印刷層、37A…上側印刷層、62…液晶パネル(表示パネル)、316…内縁、326…内縁、336…内縁、346…内縁、251…左辺領域(第1の領域)、252…右辺領域(第1の領域)、253…上辺領域(第2の領域)、254…下辺領域(第2の領域)、313…左辺単層部分、323…右辺単層部分、331…上辺単層部分、341…下辺単層部分、332,333,342,343…第1,第2,第3,第4の上側印刷層、361,362,363,364…第1,第2,第3,第4の複層部分、381A…複層部分、382A…単層部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11