(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-19
(54)【発明の名称】浮遊懸濁培養状態監視装置、浮遊懸濁培養状態監視システム、コンピュータプログラム及び浮遊懸濁培養状態監視方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/34 20060101AFI20240208BHJP
C12Q 1/06 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12Q1/06
(21)【出願番号】P 2019143972
(22)【出願日】2019-08-05
【審査請求日】2022-06-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、「再生医療の産業化に向けた評価基盤技術開発事業 再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発」「再生医療の産業化に向けた細胞製造・加工システムの開発 ヒト多能性幹細胞由来の再生医療製品製造システムの開発(網膜色素上皮・肝細胞)」委託研究開発、および平成29年度、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構、再生医療ネットワークプログラム(技術開発個別課題)「再生医療用製品の大量生産に向けたヒトiPS細胞用培養装置開発」委託開発研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591173198
【氏名又は名称】学校法人東京女子医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】前田 賀隆
(72)【発明者】
【氏名】佐波 晶
(72)【発明者】
【氏名】松浦 勝久
(72)【発明者】
【氏名】紀ノ岡 正博
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/013319(WO,A1)
【文献】特開2016-154450(JP,A)
【文献】特開2019-017318(JP,A)
【文献】特開2019-058156(JP,A)
【文献】特開2009-152827(JP,A)
【文献】特開2016-123366(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0087240(US,A1)
【文献】多田 克行 他,マクロ画像を利用した懸濁培養細胞塊の粒径分布解析,農業環境工学関連4学会2001年合同大会 講演要旨,2001年06月,p. 117, C501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12Q
CiNii
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮遊懸濁培養状態の細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部で取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定する特定部と、
前記特定部で特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する表示部と
を備え
、
前記表示部は、
時間情報と細胞塊の粒径とを2次元で表示し、前記時間情報毎の各粒径値に細胞塊数を割り当て、割り当てた細胞塊数に応じて異なる表示態様で培養推移情報を表示する浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項2】
異なる表示態様を選択する操作を受け付ける表示態様選択受付部を備え、
前記表示部は、
前記表示態様選択受付部で受け付けた操作に応じた表示態様で培養推移情報を表示する請求項1に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項3】
前記表示部は、
前記画像取得部で取得した撮像画像を、前記培養推移情報とともに又は前記培養推移情報と切替可能に表示する請求項1又は請求項2に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項4】
前記表示部は、
前記撮像画像の撮像時点を表示する請求項3に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項5】
前記表示部は、
前記撮像画像上の前記特定部で特定した複数の細胞塊それぞれの粒子像の解析結果を表示する請求項3又は請求項4に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項6】
前記培養推移情報に含まれる時間情報を選択する操作を受け付ける時間選択受付部を備え、
前記表示部は、
前記時間選択受付部で受け付けた時間情報での複数の細胞塊の粒径分布を表示する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項7】
前記表示部は、
前記時間選択受付部で複数の時間情報を受け付けた場合、前記複数の時間
情報での前記粒径分布を並べて表示する請求項6に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項8】
前記表示部は、
前記特定部で特定した複数の細胞塊の数の時間的変化を含む培養推移情報を表示する請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項9】
前記表示部は、
複数の細胞塊の粒径分布の標準的な時間的変化を含む培養推移標準情報と対比可能な表示態様で前記培養推移情報を表示する請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項10】
前記培養推移情報と培養推移標準情報との間の類似度を算出する類似度算出部と、
前記類似度算出部で算出した類似度を表示する類似度表示部と
を備える請求項9に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項11】
前記類似度算出部で算出した類似度が所定範囲を超えた場合、通知する通知部を備える請求項10に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項12】
前記画像取得部は、
複数の培養容器それぞれで浮遊懸濁培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得し、
前記表示部は、
前記複数の培養容器毎の培養推移情報を表示する請求項1から請求項11のいずれか一項に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項13】
前記表示部は、
前記複数の培養容器毎の浮遊懸濁培養状態のランキングを表示する請求項12に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置。
【請求項14】
請求項1から請求項
13のいずれか一項に記載の浮遊懸濁培養状態監視装置と、懸濁培養装置の複数の培養容器を撮像する1又は複数の撮像装置とを備える浮遊懸濁培養状態監視システム。
【請求項15】
コンピュータに、
浮遊懸濁培養状態の細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する処理と、
取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定する処理と、
特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する処理と
、
時間情報と細胞塊の粒径とを2次元で表示し、前記時間情報毎の各粒径値に細胞塊数を割り当て、割り当てた細胞塊数に応じて異なる表示態様で培養推移情報を表示する処理と
を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項16】
浮遊懸濁培養状態の培養容器内の細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得し、
取得された撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定し、
特定された複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示
し、
時間情報と細胞塊の粒径とを2次元で表示し、前記時間情報毎の各粒径値に細胞塊数を割り当て、割り当てた細胞塊数に応じて異なる表示態様で培養推移情報を表示する浮遊懸濁培養状態監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮遊懸濁培養状態監視装置、浮遊懸濁培養状態監視システム、コンピュータプログラム及び浮遊懸濁培養状態監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生医療や不妊治療をはじめとする医療技術の進歩に伴って、対象となる細胞や細胞群について、培養中に増殖又は抑制などの状況を非侵襲にかつ簡易に観察するための技術の研究が進んでいる。例えば、iPS細胞を大量培養する有望な手法の一つとして、細胞塊の状態で懸濁培養する手法がある。
【0003】
特許文献1には、非侵襲な特徴量と侵襲的な培養状態値とのペアである基底を事前に複数取得しておき、後日の運用時において、所要のタイミングで非侵襲な特徴量を取得することにより、そのタイミングでの侵襲的な培養状態値を計算によって推定できる方法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法では、事前に複数の規定を準備する必要があり、基底の品質によって侵襲的な培養状態値の推定値は大きく影響される。良質な基底を準備するためには、高性能な測定機器が必要であり、また複数回の実験による平均化などの工夫が必要であり、さらに簡易的な方法によって培養状態を把握することが望まれていた。
【0006】
本発明は、斯かる事情に鑑みてなされたものであり、容易に培養状態を監視することができる浮遊懸濁培養状態監視装置、浮遊懸濁培養状態監視システム、コンピュータプログラム及び浮遊懸濁培養状態監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施の形態に係る培養状態監視装置は、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定する特定部と、前記特定部で特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する表示部とを備える。
【0008】
本発明の実施の形態に係る培養状態監視システムは、前述の培養状態監視装置と、複数の培養容器を撮像する1又は複数の撮像装置とを備える。
【0009】
本発明の実施の形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する処理と、取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定する処理と、特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する処理とを実行させる。
【0010】
本発明の実施の形態に係る培養状態監視方法は、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得し、取得された撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定し、特定された複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、容易に培養状態を監視することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施の形態の培養状態監視システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】一覧表示と個別表示の一例を示す模式図である。
【
図4】マップ形式の培養推移情報の一例を示す模式図である。
【
図7】細胞塊のヒストグラム形式の粒径分布の一例を示す模式図である。
【
図8】細胞塊のグラフ形式の粒径分布の一例を示す模式図である。
【
図9】棒グラフ形式の培養推移情報の一例を示す模式図である。
【
図10】3D形式の培養推移情報の一例を示す模式図である。
【
図11】培養推移情報の他の例を示す模式図である。
【
図12】細胞塊の数の時間的変化の対比表示の一例を示す模式図である。
【
図13】撮像画像の第1表示例を示す模式図である。
【
図14】撮像画像の第2表示例を示す模式図である。
【
図15】撮像画像に粒子像の解析結果が付与された検出画像の第1表示例を示す模式図である。
【
図16】撮像画像に粒子像の解析結果が付与された検出画像の第2表示例を示す模式図である。
【
図17】表示領域に複数の情報を同時に表示する一例を示す模式図である。
【
図18】培養容器毎の培養推移情報の表示の一例を示す模式図である。
【
図19】培養状態監視装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本実施の形態の培養状態監視システムの構成の一例を示すブロック図である。培養状態監視システムは、培養状態監視装置50及び複数(図の例では6個)の撮像装置21、22、23、24、25、26を備える。培養装置10は、例えば、懸濁培養装置とすることができる。培養装置10は、複数(図の例では6個)の培養容器11、12、13、14、15、16、培養条件を設定するコントローラ(不図示)などを備える。撮像装置21は、カメラ211及び照明212を備える。照明212は、培養容器11に撮影用の照明光を照射する。カメラ211は、培養容器11内の細胞塊を撮像することができる。同様に、撮像装置22は、カメラ221及び照明222を備え、撮像装置23は、カメラ231及び照明232を備え、撮像装置24は、カメラ241及び照明242を備え、撮像装置25は、カメラ251及び照明252を備え、撮像装置26は、カメラ261及び照明262を備える。
【0014】
カメラ211は、例えば、高速度カメラとすることができ、1~2分間程度の間に複数枚(例えば、100枚程度)の画像を撮像することができる。撮像装置21は、撮像画像を培養状態監視装置50へ出力することができる。また、カメラ211は、1~2分間程度の間に撮像した撮像画像を1セットとして、数時間(例えば、2時間など)毎に1セットの撮像を繰り返すことにより、培養経過とともに繰り返し画像を撮像することができ、撮像画像を培養状態監視装置50へ出力することができる。他の撮像装置22~26も同様であるので説明は省略する。
【0015】
なお、撮像装置21~26それぞれは、培養容器11~16が配置される位置から一定の距離を有する位置に配置され、向き及び画角が所要値に設定され、常に一定の距離及び視野範囲によって培養容器内の所定領域を撮像できるように構成してある。
【0016】
培養状態監視装置50は、装置全体を制御する制御部51、インタフェース部52、画像処理部53、操作部54、記憶部55、表示画面56、表示部57、類似度算出部58及び通知部59を備える。
【0017】
制御部51は、CPU、ROM及びRAMなどで構成することができる。
【0018】
インタフェース部52は、撮像装置21~26との間のインタフェース機能を有する。インタフェース部52は、画像取得部としての機能を有し、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する。例えば、培養装置10の各培養容器11~16内の細胞を撮像した撮像画像を取得することができる。インタフェース部52は、例えば、1~2分間程度の間に複数枚(例えば、100枚程度)撮像するのを1セットとして、数時間(例えば、2時間など)毎に1セット分の撮像画像を取得できる。
【0019】
インタフェース部52は、培養装置10との間のインタフェース機能を備えることもできる。
【0020】
画像処理部53は、特定部としての機能を有し、インタフェース部52で取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定することができる。細胞塊は、所定の画像解析を実行することにより特定することができ、例えば、細胞塊の粒子像を特定するためのテンプレートマッチングや円検出を行うハフ変換などを用いることができるが、画像解析は、これらに限定されない。
【0021】
表示画面56は、液晶パネル又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等で構成することができる。
【0022】
操作部54は、例えば、ハードウェアキーボード、マウスなどで構成され、表示画面56に表示されたアイコンなどの操作、文字等の入力などを行うことができる。なお、操作部54は、タッチパネルで構成してもよい。
【0023】
記憶部55は、インタフェース部52で取得した撮像画像、培養状態監視装置50で行った処理の結果などを記憶することができる。
【0024】
表示部57は、表示画面56に情報を表示するための処理を行う。
【0025】
表示部57は、画像処理部53で特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示することができる。粒径分布は、細胞塊のある粒子径のものが何個存在するか、あるいは全体の細胞塊数に対してどの程度の存在比であるかを示す。培養推移情報は、細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む表示態様であれば、どのような表示態様でもよい。なお、培養推移情報の具体例は後述する。
【0026】
従来の培養状態の確認には、培養液から少量サンプリング(例えば、一滴)して顕微鏡で観察する手法が行われていた。また、基底の作成においても、侵襲的な培養状態値として、少量のサンプリングを用いて実際の培養状態を把握したものが用いられていた。発明者は、少量のサンプリングを用いる手法に代えて、汚染されない環境下において、培養液全体を所要のスキャン容器に入れて顕微鏡で観察したときの培養状態が、画像処理部53で複数の細胞塊を特定したときの培養状態に十分に似ていることを見出した。なお、スキャン容器に入れた培養液は、数分程度で撮影が完了するので、培養容器に戻して培養を続けることができる。
【0027】
画像処理部53で特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示することにより、非侵襲に取得できる情報を元に、侵襲的な情報(培養状態)を間接的に、かつ容易に監視することができる。
【0028】
以下、表示部57による表示例について説明する。
【0029】
図2は基本画面の一例を示す模式図である。基本画面は、所要の情報を表示する表示領域100、メニューを表示するメニュー領域101を有する。メニュー領域101には、開始アイコン102、終了アイコン103、培養条件アイコン104、一覧表示アイコン105、個別表示アイコン106、原画像表示アイコン107、検出表示アイコン108、培養推移情報表示アイコン109、対比表示アイコン、類似度表示アイコン111及びランキング表示アイコン112などが表示される。なお、アイコンは、文字通りアイコンを含むが、ボタンやその他の図表であってもよい。
【0030】
開始アイコン102は、培養監視の開始を行うための操作を受け付ける。開始アイコン102を操作することにより、インタフェース部52を介して、培養装置10の培養動作を開始することができる。
【0031】
終了アイコン103は、培養監視の終了を行うための操作を受け付ける。終了アイコン103を操作することにより、インタフェース部52を介して、培養装置10の培養動作を終了することができる。
【0032】
培養条件アイコン104は、培養装置10の培養条件の設定、培養条件の表示を行うための操作を受け付ける。培養条件アイコン104を操作することにより、インタフェース部52を介して、培養装置10の培養条件の設定や、培養条件を取得して表示することができる。なお、培養条件の設定や表示は、培養容器毎に行うことができる。
【0033】
一覧表示アイコン105は、培養容器11~16それぞれの情報を一覧形式で表示するためのアイコンである。個別表示アイコン106は、培養容器11~16のうちのいずれか一つだけを表示するためのアイコンである。
【0034】
図3は一覧表示と個別表示の一例を示す模式図である。
図3に示すように、一覧表示では、表示領域に、培養容器11~16に対応したID=1からID=6の各領域に各培養容器の情報が一覧形式で表示される。符号115は、補助的な情報が表示される補助領域である。また、個別表示では、表示領域に、培養容器11~16のうちの一つの培養容器の情報が表示される。なお、図の一覧表示において、所望のIDの領域を選択する(例えば、タッチ、クリック、ダブルクリックなど)ことにより、個別表示に切り替えることもできる。
【0035】
培養推移情報表示アイコン109は、培養推移情報を表示するための操作を受け付ける。培養推移情報表示アイコン109を操作することにより、培養推移情報の異なる表示態様を選択するための選択画面を最初に表示させてもよい。異なる表示態様は、後述するように、2D表示又は3D表示を選択できるとともに、2D表示では、マップ形式又は棒グラフ形式などを選択できる。
【0036】
図4はマップ形式の培養推移情報の一例を示す模式図である。マップ形式は、異なる色、濃度や模様で塗り分けられる領域で表示する形式である。
図4の培養推移情報領域120において、横軸は時間軸を示し、縦軸は細胞塊の粒径を示す。すなわち、表示部57は、時間情報と細胞塊の粒径とを2次元で表示するとともに、時間情報毎の各粒径値に細胞塊数を割り当て、割り当てた細胞塊数に応じて異なる表示態様で培養推移情報を表示する。縦軸の粒径値(又は粒径範囲)それぞれに、当該粒径値(又は粒径範囲)の細胞塊の数(又は存在比でもよい)の情報を割り得て、数(又は存在比)の大小に応じて異なる表示態様(例えば、濃度を変える、色を変える)で表示する。
図4では、便宜上、細胞塊の数(又は存在比)を3段階で示し、符号121、122、123の順に細胞塊の数(又は存在比)が小さくなっている。なお、実際には、さらに多くの段階で表示できる。符号121~123で示す領域は、模式的に示すものであり、実際の状態とは異なる場合がある。また、細胞塊の粒径は、画像上のピクセル単位でも表すことができるし、所定の変換によって実寸単位(マイクロメートル)でも表すことができる。本明細書では、両方を含めて粒径で説明する。
【0037】
時間スライダ125を移動させることにより、培養推移情報の所要の時間を特定することができる。時間スライダ125の操作については後述する。
【0038】
図4に示すように、ユーザは、細胞塊の粒径分布の時間的変化を視覚的に容易に把握することができ、細胞塊の培養状態を容易に監視することができる。また、
図4に示すマップ形式の培養推移情報を、
図2の表示領域にデフォルトで表示するようにしてもよい。
【0039】
図2において、対比表示アイコン110は、培養推移情報と培養推移標準情報とを対比可能な表示態様で表示するための操作を受け付ける。培養推移標準情報は、複数の細胞塊の粒径分布の標準的な時間的変化を含み、例えば、培養が順調に行われたときの培養推移情報とすることができる。
【0040】
図5は対比表示の第1例を示す模式図である。
図5には、標準情報領域130に培養推移標準情報は表示され、監視情報領域131に時間情報が培養推移標準情報よりも短い培養推移情報が表示されている。すなわち、監視情報領域131に表示された培養推移情報が、未だ培養の途中であることを示す。なお、
図5では、便宜上、
図4に示すような培養推移情報及び培養推移標準情報を一本の曲線で図示している。
図5のように、表示部57は、複数の細胞塊の粒径分布の標準的な時間的変化を含む培養推移標準情報と対比可能な表示態様(例えば、並べて表示する態様)で培養推移情報を表示する。これにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しているのか否かを容易に判断することができる。
【0041】
図2において、類似度表示アイコン111は、培養推移情報と培養推移標準情報との間の類似度を表示する操作を受け付ける。
【0042】
類似度表示アイコン111で操作を受け付けると、類似度算出部58は、培養推移情報と培養推移標準情報との間の類似度を算出する。培養推移情報は、粒径分布の時間的変化を含む情報であるので、分布の類似度を算出する手法として、例えば、バタチャリヤ距離、又はEMD(Earth Mover’s Distance)などの方法を用いることができる。
【0043】
表示部57は、類似度表示部としての機能を有し、類似度算出部58で算出した類似度を類似度領域132(
図5)に表示する。これにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しているのか否かを数値で客観的に判断することができる。
【0044】
図6は対比表示の第2例を示す模式図である。
図6の例では、培養推移情報134(監視情報)は、培養推移標準情報(標準情報)と重ね合わせて表示されている。すなわち、表示部57は、培養推移標準情報と培養推移情報とを区別可能に重ね合わせた表示態様で表示することができる。これにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しているのか否かを容易に判断することができる。
【0045】
図7は細胞塊のヒストグラム形式の粒径分布の一例を示す模式図である。粒径分布情報135は、横軸は粒径を示し、縦軸は存在比(細胞塊の総数に対する当該粒径の細胞塊の数の比率)を示す。ヒストグラムの各粒径に対応させて存在比を数値(図の××で示す)で表示してもよい。
【0046】
具体的には、
図4に例示した時間スライダ125は、時間選択受付部としての機能を有し、時間スライダ125を左右に移動させることにより、培養推移情報に含まれる時間情報を選択する操作を受け付ける。時間情報は、培養の時間的経過を示すものであり、例えば、培養を開始した後の経過時間とすることができる。なお、経過時間は、時間で表示してもよく、あるいは日で表示してもよい。
【0047】
図7に示す時刻領域136には、時間スライダ125で受け付けた時間情報が表示される。
図7に示す粒径分布は、時間スライダ125で受け付けた時間における粒径分布を示す。すなわち、表示部57は、時間スライダ125で受け付けた時間情報での複数の細胞塊の粒径分布を表示することができる。これにより、ユーザは、培養推移情報に含まれる粒径分布の時間的変化の中で、注目する時間情報での粒子分布をより具体的に確認することができる。
【0048】
図8は細胞塊のグラフ形式の粒径分布の一例を示す模式図である。粒径分布領域137において、横軸は粒径を示し、縦軸は存在比を示す。すなわち、表示部57は、時間スライダ125で受け付けた時間情報での複数の細胞塊の粒径分布を、曲線状のグラフ又は折れ線グラフで表示することができる。これにより、ユーザは、培養推移情報に含まれる粒径分布の時間的変化の中で、注目する時間情報での粒子分布をより具体的に確認することができる。
【0049】
図4の例では、時間スライダ125で一つの時間情報だけを特定したが、これに限定されるものではなく、複数の時間情報を特定することもできる。すなわち、表示部57は、複数の時間情報を受け付けた場合、複数の時間での粒径分布を並べて表示してもよい。複数の時間情報は、文字通り、離散的な複数の時間情報でもよく、あるいは時間範囲を特定すべく始点時間と終点時間でもよい。これにより、ユーザは、培養推移情報に含まれる粒径分布の時間的変化の中で、注目する経過時間範囲内での粒子分布をより具体的に確認することができる。
【0050】
図4では、培養推移情報のマップ形式の表示例について説明した、培養推移情報は、他の表示態様でも表示することができる。
【0051】
図9は棒グラフ形式の培養推移情報の一例を示す模式図である。
図5の培養推移情報領域141において、横軸は日(DAY1~DAY5)を示し、縦軸は細胞塊の粒径を示す。なお、横軸は日に限定されない。表示部57は、時間情報と細胞塊の粒径とを2次元で表示するとともに、時間情報毎の各粒径値に細胞塊数を割り当て、割り当てた細胞塊数に応じて異なる表示態様で培養推移情報を表示する。縦軸の粒径値(又は粒径範囲)それぞれに、当該粒径値(又は粒径範囲)の細胞塊の数(又は存在比でもよい)の情報を割り得て、数(又は存在比)の大小に応じて異なる表示態様(例えば、濃度を変える、色を変える)で表示する。
図9では、
図4と同様の模様を付している。
【0052】
図9に示すように、ユーザは、細胞塊の粒径分布の時間的変化を視覚的に容易に把握することができ、細胞塊の培養状態を容易に監視することができる。また、
図9に示すマップ形式の培養推移情報を、
図2の表示領域にデフォルトで表示するようにしてもよい。
【0053】
図10は3D形式の培養推移情報の一例を示す模式図である。
図10の培養推移情報領域142において、平面上の2軸は、粒径及び期間を示す。平面に垂直な軸は存在比を示す。図示していないが、存在比の大小に応じて異なる表示態様(例えば、濃度を変える、色を変える)で表示することができる。これにより、ユーザは、細胞塊の粒径分布の時間的変化を視覚的に容易に把握することができ、細胞塊の培養状態を容易に監視することができる。また、
図10に示す3D形式の培養推移情報を、
図2の表示領域にデフォルトで表示するようにしてもよい。
【0054】
図11は培養推移情報の他の例を示す模式図である。
図11の培養推移情報領域143において、横軸は時間を示し、縦軸は細胞塊の数(粒子数)を示す。表示部57は、画像処理部53で特定した複数の細胞塊の数の時間的変化を含む培養推移情報を表示することができる。これにより、ユーザは、細胞塊の粒子数の時間的変化を監視することができる。なお、
図11の例では、粒子数のばらつきを示すエラーバーを図示しているが、エラーバーを表示しなくてもよい。
【0055】
図12は細胞塊の数の時間的変化の対比表示の一例を示す模式図である。
図12の例では、共通領域145に、培養推移情報としての粒子数の時間的変化(監視情報)と、培養推移標準情報として標準情報とが重ね合わせて表示されている。すなわち、表示部57は、培養推移標準情報と培養推移情報とを区別可能に重ね合わせた表示態様で表示することができる。これにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しているのか否かを容易に判断することができる。
【0056】
表示部57は、インタフェース部52で取得した撮像画像を、培養推移情報とともに又は培養推移情報と切替可能に表示することができる。
【0057】
図13は撮像画像の第1表示例を示す模式図である。
図2において、原画像表示アイコン107が操作されることにより、
図13に示すように、撮像画像を表示することができる。時間スライダ152を左右に移動させることによって、撮像時点順に並んだ複数の撮像画像のうちの時間スライダ152で指定した時点に最も近い撮像時点の撮像画像151に切り替えて表示することができる。マーカ153は、全体の撮像画像のうち、時間的にどの辺りの撮像画像が表示されているかの時間的位置を表示することができる。これにより、ユーザは、表示されている撮像画像が、培養期間の間のどのタイミングの培養状態であるかを容易に判断することができる。
図13に示すように、培養状態を間接的に把握するだけでなく、実際の培養状態を撮像した細胞塊の画像を確認することができ、ユーザは、培養状態を実際の撮像画像と併せて確認できる。なお、時間スライダ152を右側に移動させると、順番に並んだ撮像画像が画面上、左方向に移動し、直近に近い撮像画像を表示し、また、時間スライダ152を左側に移動させると、順番に並んだ撮像画像が画面上、右方向に移動し、培養開始時点に近い撮像画像を表示させてもよい。
【0058】
表示部57は、撮像画像の撮像時点を表示することができる。例えば、
図13の撮像時点領域154には、表示されている撮像画像の撮像時点を表示することができる。なお、時間スライダ152を左右に移動させることによって、切り替えられた撮像画像の撮像時点も変化して表示される。これにより、ユーザは、培養状態のタイミングと同じタイミングに撮像された実際の撮像画像と併せて確認できる。
【0059】
図14は撮像画像の第2表示例を示す模式図である。
図14では、予め定められた時間間隔(
図14の例では、1日)で撮像された撮像画像を撮像画像表示領域155に並べて表示する。
図14の例では、培養を開始してから、1日経過した時点(DAY1)、2日経過した時点(DAY2)の如く、DAY5まで表示されている。なお、時間間隔は1日に限定されるものではなく、6時間、12時間などでもよい。また、並べて表示する撮像画像の数は5枚に限定されるものではない。
【0060】
表示部57は、撮像画像上の特定された複数の細胞塊それぞれの粒子像の解析結果を表示することができる。粒子像の主たる解析結果は、粒径である。粒径は、例えば、細胞塊の画像に識別可能に重畳させた円形の大きさによって粒径の大小を表示することができる。また、粒子像の解析結果にピント強度を含めてもよい。粒径又はピント強度は、細胞塊の付近に数値で表すことができる。なお、細胞塊の付近に数値を表示しなくてもよい。
【0061】
図15は撮像画像に粒子像の解析結果が付与された検出画像161の第1表示例を示す模式図である。
図2において、検出表示アイコン108が操作されることにより、
図15に示すように、粒子像の解析結果が付与された撮像画像を表示することができる。粒子像の解析結果が付与された撮像画像を検出画像とも称する。
図15の例は、
図13に示す撮像画像に粒子像の解析結果が付与されたものである。
図15では、細胞塊の画像に識別可能に重畳させた円形の大きさによって粒径が表示され、細胞塊の近傍にピント強度が表示されている。なお、細胞塊の近傍に粒径を数値で表示してもよく、細胞塊の近傍に数値を表示しなくてもよい。これにより、ユーザは、撮像画像上で特定された細胞塊の補助的な情報(粒子像の解析結果)を確認できる。
【0062】
図16は撮像画像に粒子像の解析結果が付与された検出画像の第2表示例を示す模式図である。
図16の例は、
図14に示す撮像画像に粒子像の解析結果が付与された撮像画像が撮像画像表示領域162に表示されている。
図16では、細胞塊の画像に識別可能に重畳させた円形の大きさによって粒径が表示され、細胞塊の近傍にピント強度が表示されている。なお、細胞塊の近傍に粒径を数値で表示してもよく、細胞塊の近傍に数値を表示しなくてもよい。これにより、ユーザは、撮像画像上で特定された細胞塊の補助的な情報(粒子像の解析結果)を確認できる。
【0063】
表示領域100には、一つの情報(例えば、培養推移情報など)を表示してもよいが、以下に説明するように、複数の情報を同時に表示してもよい。
【0064】
図17は表示領域100に複数の情報を同時に表示する一例を示す模式図である。
図17の例では、培養推移情報134、原画像(撮像画像)151、撮像画像に粒子像の解析結果が付与された検出画像161、ヒストグラム形式の粒径分布情報135などが表示されている。なお、表示領域100に、どのような情報を同時に(並べて)表示するかは、ユーザが予め設定してもよく、情報を確認しながら、追加、変更、削除できるようにしてもよい。これにより、ユーザは、培養状態を総合的又は統合的に把握することができる。
【0065】
表示部57は、複数の培養容器11~16毎の培養推移情報を表示することができる。
【0066】
図18は培養容器毎の培養推移情報170の表示の一例を示す模式図である。
図18では、培養容器11~16に対応させてID=1からID=6の各領域で培養推移情報が表示されている。なお、
図18では、便宜上、
図4で例示したような培養推移情報を曲線で図示している。これにより、ユーザは、複数の培養容器で培養された細胞塊の培養状態を培養容器毎に監視することができる。
【0067】
図2において、ランキング表示アイコン112が操作されると、表示部57は、複数の培養容器11~16毎の培養状態のランキング171を表示する。培養状態のランキングは、例えば、培養推移標準情報との間の類似度に基づいて決定できる。すなわち、培養推移情報が培養推移標準情報に最も類似する培養容器を最も上位のランキングとすることができる。
図18の例では、ランキングを「A」ランク(良好な推移)、「B」ランク(要注意の推移)、「C」ランク(悪性の推移)の3つのランクに分けているが、ランキングは
図18の例に限定されない。例えば、ランキングとして、順位を用いてもよい。これにより、ユーザは、培養容器毎の培養条件などを見直すための情報を得ることができる。
【0068】
通知部59は、類似度算出部58で算出した類似度が所定範囲を超えた場合、通知することができる。
図18の例では、ID=2の培養推移情報と培養推移標準情報との間の類似度が所定範囲(例えば、上限値でもよく、下限値でもよい)を超え、「C」ランクとなったためID=2の領域の枠部分172が目立つ態様(例えば、赤色に代わる、点滅する等)で表示される。なお、通知は目立つ態様での表示でもよく、音声などを出力してもよい。これにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しなくなったとき(例えば、悪性の推移のとき)に、直ちに認識することができる。
【0069】
図19は培養状態監視装置50の処理手順の一例を示すフローチャートである。以下では便宜上、処理の主体を制御部51として説明する。制御部51は、撮像画像を取得し(S11)、細胞塊を特定する(S12)。制御部51は、各細胞塊の粒径を特定し(S13)、時刻(撮像時点)毎の粒径分布を算出する(S14)。
【0070】
制御部51は、表示モードの選択を受け付ける(S15)。受け付けた表示モードが個別表示モードである場合(S15で個別表示モード)、制御部51は、個別表示モードに設定し(S16)、後述のステップS18の処理を行う。
【0071】
受け付けた表示モードが一覧表示モードである場合(S15で一覧表示モード)、制御部51は、一覧表示モードに設定し(S17)、デフォルトとして設定された培養推移情報を表示する(S18)。
【0072】
制御部51は、所定の操作の有無を判定する(S19)。所定の操作は、例えば、メニュー領域101に表示された各アイコンの操作を含む。所定の操作があった場合(S19でYES)、制御部51は、操作に応じた培養推移情報などを表示し(S20)、後述のステップS21の処理を行う。
【0073】
所定の操作がない場合(S19でNO)、制御部51は、処理を終了するか否かを判定する(S21)。処理を終了しない場合(S21でNO)、制御部51は、ステップS11以降の処理を続ける。処理を終了する場合(S21でYES)、制御部51は、処理を終了する。
【0074】
培養状態監視装置50は、CPU(プロセッサ)、ROM、RAM(メモリ)などを備えたコンピュータを用いて実現することもできる。すなわち、
図19に示すような、各処理の手順を定めたコンピュータプログラムをコンピュータに備えられたRAM(メモリ)にロードし、コンピュータプログラムをCPU(プロセッサ)で実行することにより、コンピュータ上で培養状態監視装置50を実現することができる。コンピュータプログラムは記録媒体に記録され流通されてもよい。
【0075】
上述のように、本実施の形態によれば、培養状態(例えば、浮遊懸濁培養:3次元培養)を容易に監視することができる。また、培養液に触れずに培養容器の外部から撮影するので、培養状態を非侵襲で監視することができる。また、基底を事前に準備する必要が無く、良質の基底を生成するためのコストや手間が不要であり、安価に培養状態を監視することができる。さらに、培養容器に対して所要の位置に撮像装置を配置するだけなので、高頻度、連続的、継続的に培養状態を監視することができる。
【0076】
上述の実施の形態では、培養装置が複数の培養容器を備える構成であったが、これに限定されない。例えば、培養容器を一つだけ備える構成でもよい。また、上述の実施の形態では、培養容器毎に撮像装置を複数設ける構成であったが、これに限定されない。例えば、撮像装置を移動させる移動機構を備え、1台の撮像装置を移動させながら、各培養容器を順番に撮影する構成でもよい。
【0077】
本実施の形態に係る培養状態監視装置は、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部で取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定する特定部と、前記特定部で特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する表示部とを備える。
【0078】
本実施の形態に係る培養状態監視システムは、前述の培養状態監視装置と、複数の培養容器を撮像する1又は複数の撮像装置とを備える。
【0079】
本実施の形態に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する処理と、取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定する処理と、特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する処理とを実行させる。
【0080】
本実施の形態に係る培養状態監視方法は、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得し、取得された撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定し、特定された複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する。
【0081】
画像取得部は、培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する。例えば、懸濁培養装置の培養容器内の細胞を撮像した撮像画像を取得することができる。また、例えば、1~2分間程度の間に複数枚(例えば、100枚程度)撮像するのを1セットとして、数時間(例えば、2時間など)毎に1セットの撮像を繰り返すことにより、培養経過とともに繰り返し撮像した撮像画像を取得できる。
【0082】
特定部は、取得した撮像画像それぞれに基づいて複数の細胞塊を特定する。細胞塊は、所定の画像解析を実行することにより特定することができ、例えば、細胞塊の粒子像を特定するためのテンプレートマッチングや円検出を行うハフ変換などを用いることができるが、画像解析は、これらに限定されない。
【0083】
表示部は、特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示する。粒径分布は、細胞塊のある粒子径のものが何個存在するか、あるいは全体の細胞塊数に対してどの程度の存在比であるかを示す。培養推移情報は、細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む表示態様であれば、どのような表示態様でもよい。
【0084】
従来の培養状態の確認には、培養液から少量サンプリング(例えば、一滴)して顕微鏡で観察する手法が行われていた。また、基底の作成においても、侵襲的な培養状態値として、少量のサンプリングを用いて実際の培養状態を把握したものが用いられていた。発明者は、少量のサンプリングを用いる手法に代えて、汚染されない環境下において、培養液全体を所要のスキャン容器に入れて顕微鏡で観察したときの培養状態が、特定部で複数の細胞塊を特定したときの培養状態に十分に似ていることを見出した。
【0085】
特定部で特定した複数の細胞塊の粒径分布の時間的変化を含む培養推移情報を表示することにより、非侵襲に取得できる情報を元に、侵襲的な情報(培養状態)を間接的に、かつ容易に監視することができる。
【0086】
本実施の形態に係る培養状態監視装置は、異なる表示態様を選択する操作を受け付ける表示態様選択受付部を備え、前記表示部は、前記表示態様選択受付部で受け付けた操作に応じた表示態様で培養推移情報を表示する。
【0087】
表示態様選択受付部は、異なる表示態様を選択する操作を受け付ける。表示部は、受け付けた操作に応じた表示態様で培養推移情報を表示する。異なる表示態様は、2D表示又は3D表示でもよく、2D表示の場合は、棒グラフ状でもよく、異なる色、濃度や模様で塗り分けられる領域で表示してもよい。これにより、ユーザに様々な表示態様を提供することができる。
【0088】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記表示部は、前記画像取得部で取得した撮像画像を、前記培養推移情報とともに又は前記培養推移情報と切替可能に表示する。
【0089】
表示部は、取得した撮像画像を、培養推移情報とともに又は培養推移情報と切替可能に表示する。これにより、培養状態を間接的に把握するだけでなく、実際の培養状態を撮像した細胞塊の画像を確認することができ、ユーザは、培養状態を実際の撮像画像と併せて確認できる。
【0090】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記表示部は、前記撮像画像の撮像時点を表示する。
【0091】
表示部は、撮像画像の撮像時点を表示する。これにより、ユーザは、培養状態のタイミングと同じタイミングに撮像された実際の撮像画像と併せて確認できる。
【0092】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記表示部は、前記撮像画像上の前記特定部で特定した複数の細胞塊それぞれの粒子像の解析結果を表示する。
【0093】
表示部は、撮像画像上の特定された複数の細胞塊それぞれの粒子像の解析結果を表示する。粒子像の主たる解析結果は、粒径である。粒径は、例えば、細胞塊の画像に識別可能に重畳させた円形の大きさによって粒径の大小を表示することができる。また、粒子像の解析結果にピント強度を含めてもよい。粒径又はピント強度は、細胞塊の付近に数値で表すことができる。なお、細胞塊の付近に数値を表示しなくてもよい。これにより、ユーザは、撮像画像上で特定された細胞塊の補助的な情報(粒子像の解析結果)を確認できる。
【0094】
本実施の形態に係る培養状態監視装置は、前記培養推移情報に含まれる時間情報を選択する操作を受け付ける時間選択受付部を備え、前記表示部は、前記時間選択受付部で受け付けた時間情報での複数の細胞塊の粒径分布を表示する。
【0095】
時間選択受付部は、培養推移情報に含まれる時間情報を選択する操作を受け付ける。時間情報は、培養の時間的経過を示すものであり、例えば、培養を開始した後の経過時間とすることができる。なお、経過時間は、時間で表示してもよく、あるいは日で表示してもよい。
【0096】
表示部は、受け付けた時間情報での複数の細胞塊の粒径分布を表示する。粒子分布は、ヒストグラム形式でもよく、折れ線グラフ又は曲線状のグラフでもよい。これにより、ユーザは、培養推移情報に含まれる粒径分布の時間的変化の中で、注目する時間情報での粒子分布をより具体的に確認することができる。
【0097】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記表示部は、前記時間選択受付部で複数の時間情報を受け付けた場合、前記複数の時間での前記粒径分布を並べて表示する。
【0098】
表示部は、複数の時間情報を受け付けた場合、複数の時間での粒径分布を並べて表示する。複数の時間情報は、文字通り、離散的な複数の時間情報でもよく、あるいは時間範囲を特定すべく始点時間と終点時間でもよい。これにより、ユーザは、培養推移情報に含まれる粒径分布の時間的変化の中で、注目する経過時間範囲内での粒子分布をより具体的に確認することができる。
【0099】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記表示部は、前記特定部で特定した複数の細胞塊の数の時間的変化を含む培養推移情報を表示する。
【0100】
表示部は、特定した複数の細胞塊の数の時間的変化を含む培養推移情報を表示する。これにより、ユーザは、細胞塊の粒子数の時間的変化を監視することができる。
【0101】
本実施の形態に係る培養状態監視装置は、前記表示部は、複数の細胞塊の粒径分布の標準的な時間的変化を含む培養推移標準情報と対比可能な表示態様で前記培養推移情報を表示する。
【0102】
表示部は、複数の細胞塊の粒径分布の標準的な時間的変化を含む培養推移標準情報と対比可能な表示態様で培養推移情報を表示する。培養推移標準情報は、例えば、培養が順調に行われたときの培養推移情報とすることができる。対比可能な表示態様とは、例えば、並べて表示する態様、区別可能に重ね合わせて表示する態様などを含む。培養推移標準情報と対比可能な表示態様で培養推移情報を表示することにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しているのか否かを容易に判断することができる。
【0103】
本実施の形態に係る培養状態監視装置は、前記培養推移情報と培養推移標準情報との間の類似度を算出する類似度算出部と、前記類似度算出部で算出した類似度を表示する類似度表示部とを備える。
【0104】
類似度算出部は、培養推移情報と培養推移標準情報との間の類似度を算出する。培養推移情報は、粒径分布の時間的変化を含む情報であるので、分布の類似度を算出する手法として、例えば、バタチャリヤ距離、又はEMD(Earth Mover’s Distance)などの方法を用いることができる。
【0105】
類似度表示部は、類似度算出部で算出した類似度を表示する。これにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しているのか否かを数値で客観的に判断することができる。
【0106】
本実施の形態に係る培養状態監視装置は、前記類似度算出部で算出した類似度が所定範囲を超えた場合、通知する通知部を備える。
【0107】
通知部は、類似度算出部で算出した類似度が所定範囲を超えた場合、通知する。これにより、ユーザは、培養状態が適正に推移しなくなったときに、直ちに認識することができる。
【0108】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記画像取得部は、複数の培養容器それぞれで培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得し、前記表示部は、前記複数の培養容器毎の培養推移情報を表示する。
【0109】
画像取得部は、複数の培養容器それぞれで培養された細胞を培養経過とともに繰り返し撮像した複数の撮像画像を取得する。表示部は、複数の培養容器毎の培養推移情報を表示する。これにより、ユーザは、複数の培養容器で培養された細胞塊の培養状態を培養容器毎に監視することができる。
【0110】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記表示部は、前記複数の培養容器毎の培養状態のランキングを表示する。
【0111】
表示部は、複数の培養容器毎の培養状態のランキングを表示する。培養状態のランキングは、例えば、培養推移標準情報との間の類似度に基づいて決定できる。すなわち、培養推移情報が培養推移標準情報に最も類似する培養容器を最も上位のランキングとすることができる。これにより、ユーザは、培養容器毎の培養条件などを見直すための情報を得ることができる。
【0112】
本実施の形態に係る培養状態監視装置において、前記表示部は、時間情報と細胞塊の粒径とを2次元で表示し、前記時間情報毎の各粒径値に細胞塊数を割り当て、割り当てた細胞塊数に応じて異なる表示態様で培養推移情報を表示する。
【0113】
表示部は、時間情報と細胞塊の粒径とを2次元で表示し、時間情報毎の各粒径値に細胞塊数を割り当て、割り当てた細胞塊数に応じて異なる表示態様で培養推移情報を表示する。例えば、2次元表示の横軸を時間軸とし、縦軸を粒径とする。縦軸の粒径値(又は粒径範囲)それぞれに、当該粒径値(又は粒径範囲)の細胞塊の数(又は存在比でもよい)の情報を割り得て、数(又は存在比)の大小に応じて異なる表示態様(例えば、濃度を変える、色を変える)で表示する。これにより、ユーザは、細胞塊の粒径分布の時間的変化を視覚的に容易に把握することができ、細胞塊の培養状態を容易に監視することができる。
【符号の説明】
【0114】
10 培養装置
11、12、13、14、15、16 培養容器
21、22、23、24、25、26 撮像装置
211、221、231、241、251、261 カメラ
212、222、232、242、252、262 照明
50 培養状態監視装置
51 制御部
52 インタフェース部
53 画像処理部
54 操作部
55 記憶部
56 表示画面
57 表示部
58 類似度算出部
59 通知部