(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-02-07
(45)【発行日】2024-02-16
(54)【発明の名称】レーザシステム、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02F 1/37 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
G02F1/37
(21)【出願番号】P 2021545083
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019036171
(87)【国際公開番号】W WO2021049021
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】淵向 篤
(72)【発明者】
【氏名】曲 晨
【審査官】山本 貴一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-066654(JP,A)
【文献】特開2001-051311(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0122896(US,A1)
【文献】特表2017-535806(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0177638(US,A1)
【文献】特開2007-094376(JP,A)
【文献】特開2014-032309(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0033291(US,A1)
【文献】国際公開第2018/105082(WO,A1)
【文献】米国特許第06002697(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/35,1/37
H01S 3/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する固体レーザ装置と、
前記レーザ光の光路上に配置された第1の非線形結晶を保持する第1の結晶ホルダと、
前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータと前記第1の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光を入射させる第1の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第1の出射ウインドウと、を含む第1の容器と、
前記第1の容器内に第1のガスを導入する第1のガス導入管と、
前記第1の容器内の前記第1のガスを排出する第1のガス排出管と、
前記レーザ光の光路外に配置された第2の非線形結晶を保持する第2の結晶ホルダと、
前記第2の非線形結晶を加熱する第2のヒータと、
前記第2のヒータと前記第2の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光の光路上に配置された場合に前記レーザ光を入射させる第2の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第2の出射ウインドウと、を含む第2の容器と、
前記第2の容器内に第1のガスを導入する第2のガス導入管と、
前記第2の容器内の前記第1のガスを排出する第2のガス排出管と、
前記第1の容器と前記第2の容器とを保持するステージと、
前記ステージを制御して第1の非線形結晶を前記レーザ光の光路上から離脱させ、前記第2の非線形結晶を前記レーザ光の光路上に挿入させるコントローラと、
を備え
、
前記コントローラは、前記第1の非線形結晶が前記レーザ光の光路上に配置されている際に、前記第2の非線形結晶の脱水処理を実施し、
前記コントローラは、前記脱水処理として、
前記第2の非線形結晶を加熱する加熱処理と、
前記第2の容器内に不活性ガスを導入しつつ、前記第2の容器から前記不活性ガスを排出する不活性ガスフロー処理と、
を実施し、
前記コントローラは、前記脱水処理として、前記不活性ガスフロー処理の前に、前記第2の容器内に大気を導入しつつ、前記第2の容器から前記大気を排出する大気フロー処理を実施するレーザシステム。
【請求項2】
請求項
1に記載のレーザシステムであって、
前記コントローラは、前記脱水処理を実施する前に前記第2の結晶ホルダに前記第2の非線形結晶が保持されているか否かを判断するレーザシステム。
【請求項3】
レーザ光を出力する固体レーザ装置と、
前記レーザ光の光路上に配置された第1の非線形結晶を保持する第1の結晶ホルダと、
前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータと前記第1の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光を入射させる第1の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第1の出射ウインドウと、を含む第1の容器と、
前記第1の容器内に第1のガスを導入する第1のガス導入管と、
前記第1の容器内の前記第1のガスを排出する第1のガス排出管と、
前記レーザ光の光路外に配置された第2の非線形結晶を保持する第2の結晶ホルダと、
前記第2の非線形結晶を加熱する第2のヒータと、
前記第2のヒータと前記第2の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光の光路上に配置された場合に前記レーザ光を入射させる第2の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第2の出射ウインドウと、を含む第2の容器と、
前記第2の容器内に第1のガスを導入する第2のガス導入管と、
前記第2の容器内の前記第1のガスを排出する第2のガス排出管と、
前記第1の容器と前記第2の容器とを保持するステージと、
前記ステージを制御して第1の非線形結晶を前記レーザ光の光路上から離脱させ、前記第2の非線形結晶を前記レーザ光の光路上に挿入させるコントローラと、
前記第1の容器と前記第2の容器とを収容する第3の容器と、
前記第3の容器内に第2のガスを導入する第3のガス導入管と、
前記第3の容器内の前記第2のガスを排出する第3のガス排出管と、
を備えるレーザシステム。
【請求項4】
請求項
3に記載のレーザシステムであって、
前記第1のガスはArガスであり、前記第2のガスはN
2ガスであるレーザシステム。
【請求項5】
請求項3に記載のレーザシステムであって、
前記コントローラは、前記第1の非線形結晶が前記レーザ光の光路上に配置されている際に、前記第2の非線形結晶の脱水処理を実施するレーザシステム。
【請求項6】
請求項1
又は3に記載のレーザシステムであって、
前記第1の容器と前記第2の容器のそれぞれは、直列に配置された複数の非線形結晶を収容するレーザシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のレーザシステムであって、
前記第1の容器と前記第2の容器のそれぞれは、直列に配置された3つの非線形結晶を収容するレーザシステム。
【請求項8】
請求項7に記載のレーザシステムであって、
前記非線形結晶はCLBO(CsLiB
6O
10)結晶であるレーザシステム。
【請求項9】
請求項8に記載のレーザシステムであって、
前記直列に配置された3つのCLBO結晶のうち、1つ目のCLBO結晶と3つ目のCLBO結晶とはタイプ1の位相整合を行い、2つ目のCLBO結晶はタイプ2の位相整合を行うレーザシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のレーザシステムであって、
前記ステージの可動部は、前記直列の方向に直交する方向に移動するレーザシステム。
【請求項11】
請求項
1又は5に記載のレーザシステムであって、
前記コントローラは、前記レーザ光のパラメータに基づいて、前記第2の非線形結晶の脱水処理を開始するタイミングを決定するレーザシステム。
【請求項12】
請求項
11に記載のレーザシステムであって、
前記パラメータは、前記第1の非線形結晶に入射した前記レーザ光の照射時間であるレーザシステム。
【請求項13】
請求項
11に記載のレーザシステムであって、
前記パラメータは、前記第1の非線形結晶に入射した前記レーザ光のパルス数であるレーザシステム。
【請求項14】
請求項
11に記載のレーザシステムであって、
前記パラメータは、前記第1の非線形結晶に入射した前記レーザ光の波長変換後のエネルギであるレーザシステム。
【請求項15】
請求項
11に記載のレーザシステムであって、
前記パラメータは、前記第1の非線形結晶に入射した前記レーザ光の変換効率であるレーザシステム。
【請求項16】
請求項
11に記載のレーザシステムであって、
前記パラメータは、前記第1の非線形結晶に入射した前記レーザ光の入射点移動回数であるレーザシステム。
【請求項17】
請求項
11に記載のレーザシステムであって、
前記パラメータは、前記第1の非線形結晶に入射した前記レーザ光の波長変換前のエネルギであるレーザシステム。
【請求項18】
電子デバイスの製造方法であって、
レーザ光を出力する固体レーザ装置と、
前記レーザ光の光路上に配置された第1の非線形結晶を保持する第1の結晶ホルダと、
前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータと前記第1の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光を入射させる第1の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第1の出射ウインドウと、を含む第1の容器と、
前記第1の容器内に第1のガスを導入する第1のガス導入管と、
前記第1の容器内の前記第1のガスを排出する第1のガス排出管と、
前記レーザ光の光路外に配置された第2の非線形結晶を保持する第2の結晶ホルダと、
前記第2の非線形結晶を加熱する第2のヒータと、
前記第2のヒータと前記第2の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光の光路上に配置された場合に前記レーザ光を入射させる第2の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第2の出射ウインドウと、を含む第2の容器と、
前記第2の容器内に第1のガスを導入する第2のガス導入管と、
前記第2の容器内の前記第1のガスを排出する第2のガス排出管と、
前記第1の容器と前記第2の容器とを保持するステージと、
前記ステージを制御して第1の非線形結晶を前記レーザ光の光路上から離脱させ、前記第2の非線形結晶を前記レーザ光の光路上に挿入させるコントローラと、
前記第1の出射ウインドウ又は前記第2の出射ウインドウから出射されたレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、
を含
み、
前記コントローラは、前記第1の非線形結晶が前記レーザ光の光路上に配置されている際に、前記第2の非線形結晶の脱水処理を実施し、
前記コントローラは、前記脱水処理として、
前記第2の非線形結晶を加熱する加熱処理と、
前記第2の容器内に不活性ガスを導入しつつ、前記第2の容器から前記不活性ガスを排出する不活性ガスフロー処理と、
を実施し、
前記コントローラは、前記脱水処理として、前記不活性ガスフロー処理の前に、前記第2の容器内に大気を導入しつつ、前記第2の容器から前記大気を排出する大気フロー処理を実施するレーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、
前記エキシマレーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記エキシマレーザ光を露光することを含む電子デバイスの製造方法。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
レーザ光を出力する固体レーザ装置と、
前記レーザ光の光路上に配置された第1の非線形結晶を保持する第1の結晶ホルダと、
前記第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、
前記第1のヒータと前記第1の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光を入射させる第1の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第1の出射ウインドウと、を含む第1の容器と、
前記第1の容器内に第1のガスを導入する第1のガス導入管と、
前記第1の容器内の前記第1のガスを排出する第1のガス排出管と、
前記レーザ光の光路外に配置された第2の非線形結晶を保持する第2の結晶ホルダと、
前記第2の非線形結晶を加熱する第2のヒータと、
前記第2のヒータと前記第2の結晶ホルダとを収容し、前記レーザ光の光路上に配置された場合に前記レーザ光を入射させる第2の入射ウインドウと、前記レーザ光を出射させる第2の出射ウインドウと、を含む第2の容器と、
前記第2の容器内に第1のガスを導入する第2のガス導入管と、
前記第2の容器内の前記第1のガスを排出する第2のガス排出管と、
前記第1の容器と前記第2の容器とを保持するステージと、
前記ステージを制御して第1の非線形結晶を前記レーザ光の光路上から離脱させ、前記第2の非線形結晶を前記レーザ光の光路上に挿入させるコントローラと、
前記第1の容器と前記第2の容器とを収容する第3の容器と、
前記第3の容器内に第2のガスを導入する第3のガス導入管と、
前記第3の容器内の前記第2のガスを排出する第3のガス排出管と、
前記第1の出射ウインドウ又は前記第2の出射ウインドウから出射されたレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、
を含むレーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、
前記エキシマレーザ光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に前記エキシマレーザ光を露光することを含む電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザシステム、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の微細化、高集積化につれて、半導体露光装置においては解像力の向上が要請されている。半導体露光装置を以下、単に「露光装置」という。このため露光用光源から出力される光の短波長化が進められている。露光用光源には、従来の水銀ランプに代わってガスレーザ装置が用いられている。現在、露光用のガスレーザ装置としては、波長248nmの紫外線を出力するKrFエキシマレーザ装置ならびに、波長193nmの紫外線を出力するArFエキシマレーザ装置が用いられている。
【0003】
現在の露光技術としては、露光装置側の投影レンズとウエハ間の間隙を液体で満たして、当該間隙の屈折率を変えることによって、露光用光源の見かけの波長を短波長化する液浸露光が実用化されている。ArFエキシマレーザ装置を露光用光源として用いて液浸露光が行われた場合は、ウエハには等価における波長134nmの紫外光が照射される。この技術をArF液浸露光という。ArF液浸露光はArF液浸リソグラフィとも呼ばれる。
【0004】
KrF、ArFエキシマレーザ装置の自然発振におけるスペクトル線幅は約350~400pmと広いため、露光装置側の投影レンズによってウエハ上に縮小投影されるレーザ光(紫外線光)の色収差が発生して解像力が低下する。そこで色収差が無視できる程度となるまでガスレーザ装置から出力されるレーザ光のスペクトル線幅を狭帯域化する必要がある。スペクトル線幅はスペクトル幅とも呼ばれる。このためガスレーザ装置のレーザ共振器内には狭帯域化素子を有する狭帯域化部(Line Narrow Module)が設けられ、この狭帯域化部によりスペクトル幅の狭帯域化が実現されている。なお、狭帯域化素子はエタロンやグレーティング等であってもよい。このようにスペクトル幅が狭帯域化されたレーザ装置を狭帯域化レーザ装置という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【概要】
【0006】
本開示の1つの観点に係るレーザシステムは、レーザ光を出力する固体レーザ装置と、レーザ光の光路上に配置された第1の非線形結晶を保持する第1の結晶ホルダと、第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、第1のヒータと第1の結晶ホルダとを収容し、レーザ光を入射させる第1の入射ウインドウと、レーザ光を出射させる第1の出射ウインドウと、を含む第1の容器と、第1の容器内に第1のガスを導入する第1のガス導入管と、第1の容器内の第1のガスを排出する第1のガス排出管と、レーザ光の光路外に配置された第2の非線形結晶を保持する第2の結晶ホルダと、第2の非線形結晶を加熱する第2のヒータと、第2のヒータと第2の結晶ホルダとを収容し、レーザ光の光路上に配置された場合にレーザ光を入射させる第2の入射ウインドウと、レーザ光を出射させる第2の出射ウインドウと、を含む第2の容器と、第2の容器内に第1のガスを導入する第2のガス導入管と、第2の容器内の第1のガスを排出する第2のガス排出管と、第1の容器と第2の容器とを保持するステージと、ステージを制御して第1の非線形結晶をレーザ光の光路上から離脱させ、第2の非線形結晶をレーザ光の光路上に挿入させるコントローラと、を備える。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、レーザ光を出力する固体レーザ装置と、レーザ光の光路上に配置された第1の非線形結晶を保持する第1の結晶ホルダと、第1の非線形結晶を加熱する第1のヒータと、第1のヒータと第1の結晶ホルダとを収容し、レーザ光を入射させる第1の入射ウインドウと、レーザ光を出射させる第1の出射ウインドウと、を含む第1の容器と、第1の容器内に第1のガスを導入する第1のガス導入管と、第1の容器内の第1のガスを排出する第1のガス排出管と、レーザ光の光路外に配置された第2の非線形結晶を保持する第2の結晶ホルダと、第2の非線形結晶を加熱する第2のヒータと、第2のヒータと第2の結晶ホルダとを収容し、レーザ光の光路上に配置された場合にレーザ光を入射させる第2の入射ウインドウと、レーザ光を出射させる第2の出射ウインドウと、を含む第2の容器と、第2の容器内に第1のガスを導入する第2のガス導入管と、第2の容器内の第1のガスを排出する第2のガス排出管と、第1の容器と第2の容器とを保持するステージと、ステージを制御して第1の非線形結晶をレーザ光の光路上から離脱させ、第2の非線形結晶をレーザ光の光路上に挿入させるコントローラと、第1の出射ウインドウ又は第2の出射ウインドウから出射されたレーザ光を増幅するエキシマ増幅器と、を含むレーザシステムによってエキシマレーザ光を生成し、エキシマレーザ光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上にエキシマレーザ光を露光することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、レーザシステムの構成例を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、波長変換システムの一例を示す構成図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る固体レーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した状態から可動部が移動した状態を示す図である。
【
図5】
図5は、固体レーザシステムの制御方法の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第2のCLBO結晶のレーザ光の入射面を示す図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る固体レーザシステムの構成を概略的に示す図である。
【
図8】
図8は、
図7に示した状態から可動部が移動した状態を示す図である。
【
図9】
図9は、露光装置の構成例を概略的に示す図である。
【実施形態】
【0009】
-目次-
1.用語の説明
2.レーザシステムの概要
2.1 構成
2.1.1 レーザシステムの構成
2.1.2 波長変換システムの構成
2.2 動作
3.課題
4.実施形態1
4.1 構成
4.2 動作
4.2.1 結晶交換の制御
4.2.2 予備セルの準備開始タイミングの判断
4.3 作用・効果
5.実施形態2
5.1 構成
5.2 動作
5.3 作用・効果
6.電子デバイスの製造方法
7.その他
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0010】
1.用語の説明
本明細書において使用される用語を以下のように定義する。
【0011】
「ハイブリッドレーザ装置」とは、発振段(マスタオシレータ)と増幅段(増幅装置)とを備えた2ステージレーザ装置において、発振段に固体レーザ装置、増幅段にエキシマレーザ装置を備えた装置をいう。「エキシマ増幅器」とは、増幅段に用いられるエキシマレーザ装置をいう。
【0012】
本明細書における「垂直」又は「直交」という用語には、技術的意義において実質的に垂直又は実質的に直交と同等の範囲と見做しうる略垂直又は略直交の概念が含まれてよい。
【0013】
2.レーザシステムの概要
2.1 構成
2.1.1 レーザシステムの構成
図1は、固体レーザシステム1の構成例を概略的に示す図である。固体レーザシステム1は、第1のパルスレーザ光を出力する第1の固体レーザ装置10と、第2のパルスレーザ光を出力する第2の固体レーザ装置12と、波長変換システム14と、同期回路部20と、制御部22と、を含む。
【0014】
ここでは、レーザ光の進行方向を「Z方向」と定義する。Z方向と垂直な一方向が「V方向」と定義され、V方向及びZ方向に垂直な方向が「H方向」と定義される。
【0015】
第1の固体レーザ装置10は、第1の半導体レーザ24と、第1の半導体光増幅器SOA26と、Ybファイバ増幅器システム28と、Yb:YAG(Yttrium Aluminum Garnet)結晶増幅器30と、LBO(LiB3O5)結晶32と、を含む。
【0016】
第1の半導体レーザ24(
図1では半導体レーザ1と表記)は、シングル縦モードであって、CW発振もしくはパルス発振により波長約1030nmのシード光を出射するレーザである。第1の半導体レーザ24は、例えば、分布帰還型(DFB:Distributed Feedback)の半導体レーザであってもよい。
【0017】
第1の半導体光増幅器SOA26(
図1では半導体光増幅器SOA1と表記)は、不図示の電流制御器において半導体にパルス電流を流すことによって、CWもしくはパルスのシード光を所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換する半導体素子である。
【0018】
Ybファイバ増幅器システム28は、Ybがドープされた多段の光ファイバ増幅器28Aと、CW発振により励起光を出射し、その励起光を各光ファイバ増幅器28Aに供給する不図示のCW励起半導体レーザと、を含む。
【0019】
Yb:YAG結晶増幅器30は、YbがドープされたYAG結晶である。また、LBO結晶32は、非線形結晶である。
【0020】
一方、第2の固体レーザ装置12は、第2の半導体レーザ36(
図1では半導体レーザ2と表記)と、第2の半導体光増幅器SOA38(
図1では半導体光増幅器SOA2と表記)と、Erファイバ増幅器システム40と、を含む。
【0021】
第2の半導体レーザ36は、シングル縦モードであって、CW発振もしくはパルス発振により波長約1553nmのシード光を出射するレーザである。第2の半導体レーザ36は、例えば、分布帰還型(DFB)の半導体レーザであってもよい。
【0022】
第2の半導体光増幅器SOA38は、不図示の電流制御器において半導体にパルス電流を流すことによって、CWもしくはパルスのシード光を所定のパルス幅のパルスレーザ光に変換する半導体素子である。
【0023】
Erファイバ増幅器システム40は、Er及びYbが共にドープされた多段の光ファイバ増幅器40Aと、CW発振により励起光を出射し、その励起光を各光ファイバ増幅器40Aに供給する不図示のCW励起半導体レーザと、を含む。
【0024】
波長変換システム14は、筐体である波長変換ボックス42と、第1のウインドウ44と、第2のウインドウ46と、第3のウインドウ48と、を含む。また、波長変換システム14は、波長変換ボックス42の内部に第1のCLBO(CsLiB6O10)結晶50と、第2のCLBO結晶52と、第3のCLBO結晶54と、第1の高反射ミラー56と、第2の高反射ミラー58と、第1のダイクロイックミラー60と、第2のダイクロイックミラー62と、第3のダイクロイックミラー64と、第1のHVθステージ66と、第2のHVθステージ68と、を含む。
【0025】
波長変換ボックス42は、本開示の「第3の容器」の一例である。第1のウインドウ44と第2のウインドウ46とは、波長変換ボックス42の入射側に配置される。また、第3のウインドウ48は、波長変換ボックス42の出射側に配置される。
【0026】
第1のウインドウ44、第1のCLBO結晶50、第1のダイクロイックミラー60、第2のCLBO結晶52、第2のダイクロイックミラー62、第3のCLBO結晶54、第3のダイクロイックミラー64は、この順序でパルスレーザ光の光路上に配置される。
【0027】
第1の高反射ミラー56は、第2の固体レーザ装置12から出力され、第2のウインドウ46から入射する第2のパルスレーザ光を高反射し、第1のダイクロイックミラー60に入射するように配置される。
【0028】
第1のCLBO結晶50(
図1ではCLBO1と表記)は、第1の固体レーザ装置10から出力され、第1のウインドウ44から入射する波長約515nmのパルスレーザ光から、波長約258nmの第1のパルスレーザ光を生成する非線形結晶である。第1のCLBO結晶50は、本開示の「第1の非線形結晶」の一例である。
【0029】
第1のダイクロイックミラー60は、波長約258nmの第1のパルスレーザ光を高透過し、かつ波長約1553nmの第2のパルスレーザ光を高反射する膜がコートされている。第1のダイクロイックミラー60は、第1のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光とが互いの光路軸を一致させた状態で第2のCLBO結晶52に入射するように配置される。
【0030】
第2のCLBO結晶52(
図1ではCLBO2と表記)は、入射した第1のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光とから、波長約221nmの和周波のパルスレーザ光を生成する非線形結晶である。
【0031】
第2のダイクロイックミラー62は、波長約258nmの第1のパルスレーザ光を高反射し、波長約1553nmの第2のパルスレーザ光と第2のCLBO結晶52で生成した波長約221nmのパルスレーザ光とを高透過する膜がコートされている。
【0032】
第3のCLBO結晶54(
図1ではCLBO3と表記)は、入射した波長約1553nmの第2のパルスレーザ光と波長約221nmのパルスレーザ光とから、波長約193nmの和周波のパルスレーザ光を生成する非線形結晶である。
【0033】
第3のダイクロイックミラー64は、波長約1553nmの第2のパルスレーザ光と波長約221nmのパルスレーザ光とを高透過し、波長約193nmのパルスレーザ光を高反射する膜がコートされている。
【0034】
第2の高反射ミラー58は、波長約193nmのパルスレーザ光が第3のウインドウ48を介して波長変換システム14から出力されるように配置される。
【0035】
第2のCLBO結晶52と第3のCLBO結晶54とは、それぞれ第1のHVθステージ66と第2のHVθステージ68とに、第1の結晶ホルダ90を介して配置される。第1のHVθステージ66と第2のHVθステージ68とは、それぞれH軸方向とV軸方向とに移動し、かつH軸を中心として回転する。
【0036】
同期回路部20は、第1の半導体光増幅器SOA26と第2の半導体光増幅器SOA38とをそれぞれ制御可能に信号ラインが接続されている。
【0037】
制御部22は、不図示のCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェース等を備えている。制御部22は、同期回路部20、第1のHVθステージ66、第2のHVθステージ68をそれぞれ制御可能に信号ラインが接続されている。また、制御部22は、固体レーザシステム1の外部に設けられた外部装置制御部98と通信可能に接続される。制御部22は、本開示の「コントローラ」の一例である。
【0038】
2.1.2 波長変換システムの構成
図2は、波長変換システム14の一例を示す構成図である。
図2では、図中右方向をX方向、X方向に直交する図中上方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と定義する。波長変換システム14の波長変換ボックス42は、前述の第1のウインドウ44と、第2のウインドウ46と、第3のウインドウ48との他に、第1パージガス入口配管70と、第1パージガス出口配管72と、を含む。
【0039】
第1パージガス入口配管70と第1パージガス出口配管72とは、それぞれ波長変換ボックス42の内部と外部とを連通する。第1パージガス入口配管70は、例えばパージガスとしてN2ガスを供給する不図示のボンベに接続される。第1パージガス入口配管70は、本開示の「第3のガス導入管」の一例である。第1パージガス出口配管72は、本開示の「第3のガス排出管」の一例である。また、N2ガスは、本開示の「第2のガス」の一例である。
【0040】
また、波長変換ボックス42は内部に、前述の第1の高反射ミラー56と、第1のダイクロイックミラー60との他に、第1のCLBO結晶セル74と、第2のCLBO結晶セル76と、第3のCLBO結晶セル78と、を含む。なお、
図2では、第2の高反射ミラー58、第2のダイクロイックミラー62、第3のダイクロイックミラー64、第1のHVθステージ66、第2のHVθステージ68の図示は省略している。
【0041】
第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78は、それぞれ前述の第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54を備える。
【0042】
第1のCLBO結晶セル74は、第1の容器80と、第2のパージガス入口配管86と、第2のパージガス出口配管88と、第1の結晶ホルダ90と、第1のヒータ92と、を含む。
【0043】
第2のパージガス入口配管86は、波長変換ボックス42の外部と第1の容器80の内部とを連通する。第2のパージガス入口配管86は、例えば第1のCLBO結晶50に対して不活性なガスであるArガスやHeガスを供給する不図示のボンベに接続される。
図2に示す例では、第2のパージガス入口配管86は、パージガスとしてArガスのボンベに接続される。第2のパージガス入口配管86は、本開示の「第1のガス導入管」の一例である。また、Arガスは、本開示の「第1のガス」の一例である。
【0044】
第2のパージガス出口配管88は、第1の容器80の内部と波長変換ボックス42の内部とを連通する。第2のパージガス出口配管88は、本開示の「第1のガス排出管」の一例である。
【0045】
第1の容器80は、第1の入射ウインドウ82と、第1の出射ウインドウ84とを含む。第1の容器80は、波長変換ボックス42の入射側に第1の入射ウインドウ82が配置され、出射側に第1の出射ウインドウ84が配置される。
【0046】
また、第1の容器80は、第1の結晶ホルダ90と第1のヒータ92とを収容する。第1の結晶ホルダ90は、第1のCLBO結晶50を保持する保持部材である。第1のヒータ92は、第1のCLBO結晶50を加熱する加熱部材である。
【0047】
なお、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の構成は共通であるため、第2のCLBO結晶セル76と第3のCLBO結晶セル78との構成の説明は省略する。
【0048】
さらに、波長変換システム14は、波長変換ボックス42の外部に配置された温度調節器94を含む。温度調節器94は、制御部22(
図1参照)に備えられる。温度調節器94は、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の各第1のヒータ92に接続される。
【0049】
2.2 動作
固体レーザシステム1の動作を説明する。ここでは、温度調節器94は第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の各第1のヒータ92を制御し、第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54を予め150℃に加熱している。また、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の内部には、それぞれの第2のパージガス入口配管86と第2のパージガス出口配管88とにより、予めArガスがパージされている。
【0050】
さらに、波長変換ボックス42の内部には、第1パージガス入口配管70と第1パージガス出口配管72とにより、予めN2ガスがパージされている。
【0051】
制御部22は、不図示のROMに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムを不図示のRAMに展開し、RAMに展開したプログラムを不図示のCPUによって実行する。
【0052】
制御部22は、外部装置制御部98からレーザ発振準備信号と目標発振波長とを受信すると、第1の半導体レーザ24、Ybファイバ増幅器システム28に備えられた不図示のCW励起半導体レーザ、第2の半導体レーザ36、Erファイバ増幅器システム40に備えられた不図示のCW励起半導体レーザを、CWもしくはパルス発振させる。
【0053】
また、制御部22は、外部装置制御部98から発光トリガを受信すると、同期回路部20にトリガ信号Tr1を送信する。
【0054】
制御部22からトリガ信号Tr1を受信した同期回路部20は、第1の半導体光増幅器SOA26と第2の半導体光増幅器SOA38とにそれぞれ制御信号を送信する。
【0055】
第1の固体レーザ装置10は、第1の半導体レーザ24から出力された波長約1030nmのレーザ光を第1の半導体光増幅器SOA26によって所定のパルス幅に変換及び増幅し、パルス状のシード光としてYbファイバ増幅器システム28に入射する。
【0056】
Ybファイバ増幅器システム28とYb:YAG結晶増幅器30とは、パルス状のシード光を増幅する。LBO結晶32は、この増幅されたパルスレーザ光から、波長約515nmのパルスレーザ光を生成する。
【0057】
第1の固体レーザ装置10から出力された波長約515nmのパルスレーザ光は、波長変換システム14の第1のウインドウ44を介して第1のCLBO結晶50に入射する。
【0058】
第1のCLBO結晶50は、入射した波長約515nmのパルスレーザ光から波長約258nmの第1のパルスレーザ光を生成し、第1のダイクロイックミラー60に入射させる。
【0059】
一方、第2の固体レーザ装置12は、第2の半導体レーザ36から出力された波長約1553nmのCWもしくはパルス発振レーザ光を第2の半導体光増幅器SOA38によって所定のパルス幅に変換及び増幅し、Erファイバ増幅器システム40に入射する。Erファイバ増幅器システム40は、パルス状のシード光をさらに増幅する。
【0060】
第2の固体レーザ装置12から出力された波長約1553nmの第2のパルスレーザ光は、波長変換システム14の第2のウインドウ46を介して第1の高反射ミラー56に入射する。第1の高反射ミラー56は、入射した第2のパルスレーザ光を高反射し、第1のダイクロイックミラー60に入射させる。
【0061】
同期回路部20は、トリガ信号Tr1に基づいて、所定のパルス幅の信号を所定のタイミングで第1の半導体光増幅器SOA26と第2の半導体光増幅器SOA38とに送信する。この所定のパルス幅は、波長変換システム14において、波長約193nmのパルスレーザ光が所望のパルス幅となるように調整される。このパルス幅を調節することによって、波長約193nmのパルスレーザ光のパルス幅を調節することができる。また、所定のタイミングは、第1のCLBO結晶50から出力される第1のパルスレーザ光とErファイバ増幅器システム40から出力される第2のパルスレーザ光とが第2のCLBO結晶52に略同時に入射するように調整される。
【0062】
これにより、波長約258nmの第1のパルスレーザ光と波長約1553nmの第2のパルスレーザ光とが略同時に第2のCLBO結晶52に入射し、第2のCLBO結晶52上でビームが重なる。その結果、第2のCLBO結晶52は、約258nmと約1553nmとの和周波である波長約221nmのパルスレーザ光を生成する。
【0063】
第2のダイクロイックミラー62は、波長約258nmのパルスレーザ光を高反射する。また、第2のダイクロイックミラー62は、波長約1553nmのパルスレーザ光と波長約221nmのパルスレーザ光とを高透過し、第3のCLBO結晶54に入射させる。
【0064】
第3のCLBO結晶54は、入射された波長約1553nmのパルスレーザ光と波長約221nmのパルスレーザ光とから、約1553nmと約221nmとの和周波である波長約193nmのパルスレーザ光を生成する。
【0065】
第3のダイクロイックミラー64は、波長約1553nmのパルスレーザ光と波長約221nmのパルスレーザ光とを高透過する。また、第3のダイクロイックミラー64は、波長約193nmのパルスレーザ光を高反射し、第2の高反射ミラー58に入射させる。第2の高反射ミラー58は、入射した波長約193nmのパルスレーザ光を高反射し、第3のウインドウ48を介して波長変換システム14から出力する。
【0066】
ここで、第2のCLBO結晶52と第3のCLBO結晶54とは、波長約258nm、波長約221nm、波長約193nmの紫外線のパルスレーザ光によって損傷する場合がある。
【0067】
そこで、制御部22は、パルスレーザ光の所定のショット数毎に、第2のCLBO結晶52と第3のCLBO結晶54とがV方向又はH方向に所定の距離だけ移動するように、第1のHVθステージ66と第2のHVθステージ68とを制御する。その結果、レーザの入射点を変更することができ、第2のCLBO結晶52と第3のCLBO結晶54との結晶寿命を延長することができる。
【0068】
なお、制御部22は、外部装置制御部98から出力レーザ光の目標波長が変更された場合は、第1の半導体レーザ24又は第2の半導体レーザ36の発振波長を変更し、かつ第2のCLBO結晶52への入射角と第3のCLBO結晶54への入射角とが目標波長に対応した位相整合角となるように、第1のHVθステージ66と第2のHVθステージ68とを制御する。
【0069】
3.課題
CLBO結晶は潮解性、吸湿性を有するため、第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54は、それぞれ第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の内部をAr等のパージガスでパージし、150℃に加熱して使用している。
【0070】
例えば第1のCLBO結晶50の寿命が到達すると、徐々に降温した後、波長変換ボックス42及び第1のCLBO結晶セル74を開放してから第1のCLBO結晶50を交換していた。
【0071】
さらに、第1のCLBO結晶セル74の内部で第1のCLBO結晶50を加熱して、温度を維持した状態で使用するため、交換後も第1のCLBO結晶50の加熱、昇温、脱水時間に3~4日必要とし、メンテナンス全体の時間が掛かっていた。
【0072】
このように、CLBO結晶を交換し、波長約193nmの深紫外光を発生させる作業に時間がかかっていた。
【0073】
4.実施形態1
4.1 構成
図3は、実施形態1に係る固体レーザシステム1Aの構成を概略的に示す図である。
図3では、
図2と同様に、図中右方向をX方向、X方向に直交する図中上方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向と定義する。ここでは、
図1及び
図2に示した固体レーザシステム1との相違点を説明する。
【0074】
図3に示す固体レーザシステム1Aは、第4のCLBO結晶セル100と、第5のCLBO結晶セル102と、第6のCLBO結晶セル104と、を含む。
【0075】
また固体レーザシステム1Aは、第1のステージ106と、第2のステージ108と、第3のステージ110と、を含む。
【0076】
また固体レーザシステム1Aは、制御部22にステージコントローラ112を含む。
【0077】
第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104は、それぞれ第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124を含む。第4のCLBO結晶120は、第1のCLBO結晶50と同じ波長を発生する結晶である。第4のCLBO結晶120は、本開示の「第2の非線形結晶」の一例である。第5のCLBO結晶122は、第2のCLBO結晶52と同じ波長を発生する結晶である。第6のCLBO結晶124は、第3のCLBO結晶54と同じ波長を発生する結晶である。
【0078】
第4のCLBO結晶セル100は、第2の容器130と、第2の入射ウインドウ132と、第2の出射ウインドウ134と、第3のパージガス入口配管136と、第3のパージガス出口配管138と、第2の結晶ホルダ140と、第2のヒータ142と、を含む。第2の容器130、第2の入射ウインドウ132、第2の出射ウインドウ134、第3のパージガス入口配管136、第3のパージガス出口配管138、第2の結晶ホルダ140、第2のヒータ142の構成は、それぞれ第1の容器80、第1の入射ウインドウ82、第1の出射ウインドウ84、第2のパージガス入口配管86、第2のパージガス出口配管88、第1の結晶ホルダ90、第1のヒータ92の構成と同様である。第3のパージガス入口配管136は、本開示の「第2のガス導入管」の一例である。また、第3のパージガス出口配管138は、本開示の「第2のガス排出管」の一例である。
【0079】
また、第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の構成は共通である。第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の各第2の結晶ホルダ140は、第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124をそれぞれ保持する。
【0080】
第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の各第2のパージガス入口配管86は、波長変換ボックス42の外部でそれぞれバルブ87A、87B、87Cを介して共通配管96に接続される。
【0081】
同様に、第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の各第3のパージガス入口配管136は、波長変換ボックス42の外部でそれぞれバルブ87D、87E、87Fを介して共通配管96に接続される。
【0082】
バルブ87A、87B、87Cは、制御部22によって制御され、それぞれ第2のパージガス入口配管86の連通及び遮断を切り替える。バルブ87A、87B、87Cは、第2のパージガス入口配管86を共通配管96と不図示の配管とのいずれか一方に連通可能に構成してもよい。不図示の配管は、大気を供給する圧縮装置と連通されていてもよい。
【0083】
同様に、バルブ87D、87E、87Fは、制御部22によって制御され、それぞれ第3のパージガス入口配管136の連通及び遮断を切り替える。バルブ87D、87E、87Fは、第3のパージガス入口配管136を共通配管96と不図示の配管とのいずれか一方に連通可能に構成してもよい。不図示の配管は、大気を供給する圧縮装置と連通されていてもよい。
【0084】
第2のパージガス入口配管86及び各第3のパージガス入口配管136は、それぞれ少なくとも一部が可撓性を有する。
【0085】
第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の各第2のヒータ142は、温度調節器94に接続される。
【0086】
第1のステージ106は、Y方向に延びるレール150と、レール150に沿ってY方向に移動可能にレール150に保持される可動部152と、を含む。第1のCLBO結晶セル74と第4のCLBO結晶セル100とは、Y方向に並べられて可動部152に保持される。
【0087】
また、第2のステージ108は、Y方向に延びるレール154と、レール154に沿ってY方向に移動可能にレール154に保持される可動部156と、を含む。第2のCLBO結晶セル76と第5のCLBO結晶セル102とは、Y方向に並べられて可動部156に保持される。
【0088】
同様に、第3のステージ110は、Y方向に延びるレール158と、レール158に沿ってY方向に移動可能にレール158に保持される可動部160と、を含む。第3のCLBO結晶セル78と第6のCLBO結晶セル104とは、Y方向に並べられて可動部160に保持される。
【0089】
第1のステージ106、第2のステージ108、第3のステージ110は、それぞれ不図示のアクチュエータを含む。不図示のアクチュエータは、ステージコントローラ112に接続される。
【0090】
図3に示す例では、第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54がレーザ光の光路上に配置されており、第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124がレーザ光の光路外に配置されている。
【0091】
図4は、
図3に示した状態から可動部152、可動部156、可動部160が移動した状態を示す図である。
図4に示す例では、第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54がレーザ光の光路外に配置されており、第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124がレーザ光の光路上に配置されている。
【0092】
4.2 動作
予め、オペレータは、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の各第1の結晶ホルダ90に、それぞれ第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54を保持させ、各第1の容器80に収納する。同様に、オペレータは、第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の各第2の結晶ホルダ140に、それぞれ第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124を保持させ、各第2の容器130に収納する。
【0093】
また、温度調節器94は、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の各第1のヒータ92を制御し、第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54をそれぞれ既定のステップで150℃に昇温する。同様に、温度調節器94は、第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の各第2のヒータ142を制御し、第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124をそれぞれ既定のステップで150℃に昇温する。
【0094】
また、制御部22は、第1パージガス入口配管70からN2ガスを導入し、第1パージガス出口配管72からN2ガスを排出することで、波長変換ボックス42の内部を既定の時間、流量でN2ガスをパージする。
【0095】
さらに、制御部22は、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78の各第1の容器80の内部を既定の時間、流量でArガスをパージする。同様に、制御部22は、第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の各第2の容器130の内部を既定の時間、流量でArガスをパージする。
【0096】
また、ステージコントローラ112は、
図2に示す例と同様に、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78をレーザ光の光路に配置する。制御部22は、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78を用いて紫外光を発生させる。
【0097】
第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78を用いて紫外光を発生させている間も、制御部22は、第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104の各第2のヒータ142の温度、及び各第2の容器130の内部のガス流量を保持し続ける。
【0098】
第1のCLBO結晶50が寿命を迎えた場合、ステージコントローラ112は、第1のステージ106を制御して可動部152を移動させることで、第1のCLBO結晶セル74の第1のCLBO結晶50をレーザ光の光路上から離脱させ、かつ第4のCLBO結晶セル100の第4のCLBO結晶120をレーザ光の光路上に挿入させる。これにより、波長変換システム14は、第1のCLBO結晶50に代えて第4のCLBO結晶120を使用して波長変換を行う。
【0099】
第2のCLBO結晶52が寿命を迎えた場合、ステージコントローラ112は、第2のステージ108を制御して可動部156を移動させることで、第2のCLBO結晶セル76の第2のCLBO結晶52をレーザ光の光路上から離脱させ、かつ第5のCLBO結晶セル102の第5のCLBO結晶122をレーザ光の光路上に挿入させる。これにより、波長変換システム14は、第2のCLBO結晶52に代えて第5のCLBO結晶122を使用して波長変換を行う。
【0100】
第3のCLBO結晶54が寿命を迎えた場合、ステージコントローラ112は、第3のステージ110を制御して可動部160を移動させることで、第3のCLBO結晶セル78の第3のCLBO結晶54をレーザ光の光路上から離脱させ、かつ第6のCLBO結晶セル104の第6のCLBO結晶124をレーザ光の光路上に挿入させる。これにより、波長変換システム14は、第3のCLBO結晶54に代えて第6のCLBO結晶124を使用して波長変換を行う。
【0101】
4.2.1 結晶交換の制御
結晶交換の制御の詳細について説明する。
図5は、結晶交換の際の制御部22による固体レーザシステム1Aの制御方法の一例を示すフローチャートである。ここでは、第2のCLBO結晶52から第5のCLBO結晶122へ交換する例について説明する。
【0102】
ステップS1では、制御部22は、固体レーザシステム1Aから波長約193nmのパルスレーザ光の出力を開始させる。ここでは、ステージコントローラ112は、第1のステージ106、第2のステージ108、第3のステージ110を制御し、第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78をレーザ光の光路上に配置する。これに伴い、第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104は、レーザ光の光路外に配置される。
【0103】
したがって、第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54がレーザ光の光路上に配置され、第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124がレーザ光の光路外に配置される。固体レーザシステム1Aは、レーザ光の光路上に配置された第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54によって波長変換を行い、波長約193nmのパルスレーザ光を出力する。
【0104】
なお、レーザ光の光路上に配置された第1のCLBO結晶セル74、第2のCLBO結晶セル76、第3のCLBO結晶セル78を駆動セルと呼ぶ。また、レーザ光の光路外に配置された第4のCLBO結晶セル100、第5のCLBO結晶セル102、第6のCLBO結晶セル104を予備セルと呼ぶ。固体レーザシステム1Aは、波長変換に使用している駆動セルが寿命になると、予備セルに切り替えて波長変換を行う。
【0105】
ステップS2では、制御部22は、第1のステージ106の可動部152に保持された駆動セルの第1のCLBO結晶50が寿命直前であるか否かを判定する。また、制御部22は、第2のステージ108の可動部156に保持された駆動セルの第2のCLBO結晶52が寿命直前であるか否かを判定する。同様に、制御部22は、第3のステージ110の可動部160に保持された駆動セルの第3のCLBO結晶54が寿命直前であるか否かを判定する。
【0106】
第1のCLBO結晶50、第2のCLBO結晶52、第3のCLBO結晶54が寿命直前でない場合は、制御部22は、ステップS2の処理を繰り返す。ここでは、制御部22は、第2のCLBO結晶52が寿命直前であると判断したものとする。
【0107】
ステップS3では、制御部22は、第2のステージ108の可動部156に保持された予備セルである第5のCLBO結晶セル102の第2の結晶ホルダ140に第5のCLBO結晶122がセット(保持)済みであるか否かを判定する。第2の結晶ホルダ140に第5のCLBO結晶122がセットされていない場合は、制御部22はステップS4の処理を行う。第2の結晶ホルダ140に第5のCLBO結晶122がセット済みの場合は、制御部22はステップS5の処理を行う。
【0108】
ステップS4では、制御部22は、駆動セルの第2のCLBO結晶52が寿命直前であることを不図示の表示部に表示する。これにより、オペレータに予備セルである第5のCLBO結晶122のセットを要求する。その後、制御部22はステップS3の処理を行う。
【0109】
ステップS5では、制御部22は、予備セルである第5のCLBO結晶セル102の温度制御、脱水工程を開始する。温度制御、脱水工程は、本開示の「脱水処理」の一例である。
【0110】
予備セルの温度制御として、温度調節器94は、第5のCLBO結晶122を加熱する加熱処理を行う。即ち、温度調節器94は、第5のCLBO結晶セル102の第2のヒータ142を制御し、第5のCLBO結晶122の温度を1℃/minの割合で150℃まで上昇させる。その後、温度調節器94は、第5のCLBO結晶122が寿命になるまで第5のCLBO結晶122の温度を150℃に維持させる。
【0111】
また、予備セルの脱水工程として、制御部22は、大気フロー処理を実施する。即ち、制御部22は、第5のCLBO結晶セル102の第3のパージガス入口配管136と第3のパージガス出口配管138とによって、第5のCLBO結晶セル102の第2の容器130の内部に大気フローを48時間継続して、十分脱水する。
【0112】
その後、制御部22は、予備セルの脱水工程として、不活性ガスフロー処理を実施する。即ち、制御部22は、第5のCLBO結晶セル102の第2の容器130の内部に、露点温度の低い不活性ガス(例えばAr、Ne)フローを48時間継続し、さらに乾燥させる。ここでは、不活性ガスとしてArガスを使用する。なお、大気による脱水工程を省略し、不活性ガスによる脱水工程のみで乾燥させてもよい。
【0113】
なお、予備セルに第5のCLBO結晶122が予めセットされている場合は、駆動セルの第2のCLBO結晶52の寿命が直前になる以前から温度制御、脱水工程を開始してもよい。
【0114】
ステップS6では、制御部22は、駆動セルの第2のCLBO結晶52が寿命であるか否かを判定する。第2のCLBO結晶52が寿命でない場合は、制御部22はステップS6の処理を繰り返す。第2のCLBO結晶52が寿命である場合は、制御部22はステップS7の処理を行う。
【0115】
ステップS7では、制御部22は、波長変換システム14へのレーザ光の入力を停止する。例えば、制御部22は、第1の固体レーザ装置10と第2の固体レーザ装置12との動作を停止させる。制御部22は、不図示のシャッタを閉じることで波長変換システム14へのレーザ光の入力を停止してもよい。
【0116】
ステップS8では、ステージコントローラ112は、第2のステージ108の不図示のアクチュエータを制御し、駆動セルの第2のCLBO結晶52をレーザ光の光路上から離脱させ、予備セルの第5のCLBO結晶122をレーザ光の光路上に挿入させる。
【0117】
ステップS9では、制御部22は、予備セルの脱水工程が完了したか否かを判定する。ステップS5で開始した48時間の大気フローと48時間の不活性ガスフローとが終了している場合には、制御部22はステップS10の処理を行う。ステップS5で開始した48時間の大気フローと48時間の不活性ガスフローとが終了していない場合は、制御部22はステップS9の処理を繰り返す。
【0118】
ステップS10では、制御部22は、波長変換システム14へのレーザ入力を開始する。即ち、制御部22は、第1の固体レーザ装置10と第2の固体レーザ装置12との動作を開始させる。なお、ここでは制御部22は不図示のシャッタを制御し、固体レーザシステム1Aから出射されるレーザ光を遮断する。
【0119】
ステップS11では、制御部22は、新たな駆動セルである第5のCLBO結晶セル102の第5のCLBO結晶122の位相整合角の調整を行う。
図3では図示を省略しているが、第5のCLBO結晶セル102は、HVθステージを含む。
【0120】
制御部22は、第3のウインドウ48から出射されるレーザ光のエネルギを計測する不図示のエネルギセンサの検出結果に基づいて、第5のCLBO結晶セル102のHVθステージを制御する。制御部22は、波長変換後のエネルギが最大となるように、第5のCLBO結晶122の位相整合角を調整する。
【0121】
最後に、ステップS12では、制御部22は不図示のシャッタを制御し、固体レーザシステム1Aから波長約193nmのパルスレーザ光の出力を開始させる。
【0122】
4.2.2 予備セルの準備開始タイミングの判断
制御部22は、レーザ光のパラメータに基づいて、予備セルの準備を開始するタイミングを決定する。ここでは、制御部22は、以下の(1)~(5)のうち少なくとも1つに基づいて駆動セルの寿命直前のタイミングを検出して、予備セルの準備(セット、温度制御、脱水工程)を開始する。
【0123】
(1)レーザ照射時間に基づいて検出
駆動セルの使用開始からCLBO結晶にレーザ光を照射する総レーザ照射時間を計測し、規定時間に到達したタイミングを検出する。例えば、CLBO結晶の総レーザ照射時間の限界は4000時間であり、規定時間は4000時間の80%である3200時間である。
【0124】
(2)パルス数に基づいて検出
駆動セルの使用開始からCLBO結晶にレーザ光を照射するパルス数をカウントし、規定回数に到達したタイミングを検出する。例えば、CLBO結晶の総パルス数の限界は20ビリオン(20×109)であり、規定回数は20ビリオンの80%である16ビリオンである。
【0125】
(3)波長変換後のレーザ出力に基づいて検出
波長変換ボックス42よりも下流側に不図示の第1のエネルギセンサを備え、波長変換光のパルスエネルギーが閾値以下になったタイミングを検出する。閾値は、例えば80nWである。
【0126】
(4)波長変換時の変換効率に基づいて検出
波長変換ボックス42よりも下流側に不図示の第1のエネルギセンサと、上流側に不図示の第2のエネルギセンサとを備える。第1のエネルギセンサの出力をEout、第2のエネルギセンサの出力をEinとすると、波長変換時の変換効率Eout/Einが閾値以下になったタイミングを検出する。例えば、第3のCLBO結晶54の出力をEout、第1のCLBO結晶50の入力をEinとすると、閾値は1%である。
【0127】
(5)入射点移動回数に基づいて検出
CLBO結晶は、レーザが入射する入射面のうちレーザ光の入射点が部分的に汚染する。そのため、汚染がある程度進んだ場合に2軸ステージにより結晶を移動させて入射点を移動させる。
【0128】
図6は、第2のCLBO結晶52のレーザ光の入射面を示す図である。
図6では、
図1と同様にレーザ光の進行方向をZ方向、Z方向と垂直な一方向をV方向、V方向及びZ方向に垂直な方向をH方向としている。最初に、第2のCLBO結晶52は、レーザ光が点P
1に入射されて使用される。その後、点P
1の汚染が進むと、第1のHVθステージ66により第2のCLBO結晶52がH方向に移動されて、レーザ光が点P
2に入射されて使用される。入射点の汚染が進むたびに第2のCLBO結晶52をH方向又はV方向に移動させて、入射点を点P
3、P
4、…、P
N-1、P
Nと切り替える。
【0129】
この入射点移動回数が規定回数に到達したタイミングを検出する。総入射点数がNとすると、移動回数は全部で(N-1)回となり、規定回数は例えば(N-2)である。
【0130】
ここでは第2のCLBO結晶52の入射点の移動について説明したが、第1のCLBO結晶50、第3のCLBO結晶54、第4のCLBO結晶120、第5のCLBO結晶122、第6のCLBO結晶124についても同様である。
【0131】
例えば、可動部152と第1のCLBO結晶セル74との間、又は可動部152とレール150との間に、不図示の2軸(ZY平面)ステージを更に備えることで、第1のCLBO結晶50の入射点を移動させることができる。この場合に、不図示の2軸ステージによる総入射点数をNとすると、規定回数を例えば(N-2)とすればよい。
【0132】
(6)波長変換前のレーザ出力に基づいて検出
波長変換ボックス42よりも下流側に不図示の第1のエネルギセンサと、上流側に不図示の第2のエネルギセンサとを備える。波長変換後のエネルギが一定となるように、波長変換前のエネルギを制御する場合、CLBO結晶が劣化してくると波長変換前のエネルギが増加する。したがって、波長変換前のエネルギが閾値以上となったタイミングを検出する。閾値は、例えば、波長変換ボックス42に入力される波長約515nmのパルスレーザ光のエネルギにおいて8Wである。
【0133】
4.3 作用・効果
以上のように、固体レーザシステム1Aによれば、ステージの可動部を移動させるだけでセルごと結晶の交換が完了するため、交換時間を短縮することができる。
【0134】
また、ステージの可動部を移動させる際にはすでに脱水等の結晶の準備を開始しているため、さらに交換時間を短縮できる。
【0135】
さらに、ステージにより新たに光路上に挿入される結晶が光路上から離脱された結晶とほぼ同じ位置に配置することができるため、位相整合角の調整時間を短縮することができる。
【0136】
5.実施形態2
5.1 構成
図7は、実施形態2に係る固体レーザシステム1Bの構成を概略的に示す図である。
図3に示した固体レーザシステム1Aとの相違点を説明する。
【0137】
図7に示す固体レーザシステム1Bは、第7のCLBO結晶セル200と、第8のCLBO結晶セル202と、第4のステージ204と、第3の高反射ミラー240と、第4のダイクロイックミラー242と、を含む。
【0138】
第4のステージ204は、Y方向に延びるレール206と、レール206に沿ってY方向に移動可能にレール206に保持される可動部208と、を含む。第7のCLBO結晶セル200と第8のCLBO結晶セル202とは、Y方向に並べられて可動部208に保持される。
【0139】
第4のステージ204は、不図示のアクチュエータを含む。不図示のアクチュエータは、ステージコントローラ112に接続される。
【0140】
第7のCLBO結晶セル200は、第4の容器210と、第3の入射ウインドウ212と、第3の出射ウインドウ214と、を含む。第4の容器210は、本開示の「第1の容器」の一例である。第3の入射ウインドウ212は、本開示の「第1の入射ウインドウ」の一例である。また、第3の出射ウインドウ214は、本開示の「第1の出射ウインドウ」の一例である。
【0141】
第4の容器210は、複数のCLBO結晶を収容する。ここでは、第4の容器210は、直列に配置された3つのCLBO結晶である第7のCLBO結晶216と、第8のCLBO結晶218と、第9のCLBO結晶220と、を含む。第7のCLBO結晶216は、本開示の「第1の非線形結晶」の一例である。
【0142】
直列に配置された第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220のうち、1つ目の第7のCLBO結晶216と3つ目の第9のCLBO結晶220とは、タイプ1の位相整合条件を持つ波長変換結晶である。一方、2つ目の第8のCLBO結晶218は、タイプ2の位相整合条件を持つ波長変換結晶である。
【0143】
第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220は、それぞれ第1の結晶ホルダ90に保持される。第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220は、それぞれ第1のヒータ92が備えられる。第3の入射ウインドウ212、第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220、第3の出射ウインドウ214は、X方向に並べられて直列に配置される。
【0144】
第8のCLBO結晶セル202は、第5の容器222と、第4の入射ウインドウ224と、第4の出射ウインドウ226と、を含む。第5の容器222は、本開示の「第2の容器」の一例である。第4の入射ウインドウ224は、本開示の「第2の入射ウインドウ」の一例である。また、第4の出射ウインドウ226は、本開示の「第2の出射ウインドウ」の一例である。
【0145】
第5の容器222は、複数のCLBO結晶を収容する。ここでは、第5の容器222は、直列に配置された3つのCLBO結晶である第10のCLBO結晶228と、第11のCLBO結晶230と、第12のCLBO結晶232と、を含む。第10のCLBO結晶228は、本開示の「第2の非線形結晶」の一例である。
【0146】
第10のCLBO結晶228は、第7のCLBO結晶216と同じ波長を発生する結晶である。第11のCLBO結晶230は、第8のCLBO結晶218と同じ波長を発生する結晶である。第12のCLBO結晶232は、第9のCLBO結晶220と同じ波長を発生する結晶である。
【0147】
第10のCLBO結晶228と第12のCLBO結晶232とは、タイプ1の位相整合条件を持つ波長変換結晶である。一方、第11のCLBO結晶230は、タイプ2の位相整合条件を持つ波長変換結晶である。
【0148】
なお、第7のCLBO結晶216と第8のCLBO結晶218とをタイプ1の位相整合条件を持つ波長変換結晶とし、第9のCLBO結晶220をタイプ2の位相整合条件を持つ波長変換結晶としてもよい。この場合は、第10のCLBO結晶228と第11のCLBO結晶230とをタイプ1の位相整合条件を持つ波長変換結晶とし、第12のCLBO結晶232をタイプ2の位相整合条件を持つ波長変換結晶とする。
【0149】
第10のCLBO結晶228、第11のCLBO結晶230、第12のCLBO結晶232は、それぞれ第2の結晶ホルダ140に保持される。第2の結晶ホルダ140は、本開示の「第2の結晶ホルダ」の一例である。第10のCLBO結晶228、第11のCLBO結晶230、第12のCLBO結晶232は、それぞれ第2のヒータ142が備えられる。第4の入射ウインドウ224、第10のCLBO結晶228、第11のCLBO結晶230、第12のCLBO結晶232、第4の出射ウインドウ226は、X方向に並べられて直列に配置される。
【0150】
第3の高反射ミラー240は、第2の固体レーザ装置12から出力され、第2のウインドウ46から入射する第2のパルスレーザ光を高反射し、第4のダイクロイックミラー242に入射するように配置される。
【0151】
第4のダイクロイックミラー242は、第1の固体レーザ装置10から出力され、第1のウインドウ44から入射する波長約515nmのパルスレーザ光を高透過し、かつ波長約1553nmの第2のパルスレーザ光を高反射する膜がコートされている。第4のダイクロイックミラー242は、波長約515nmのパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光とが互いの光路軸を一致させた状態で第7のCLBO結晶セル200又は第8のCLBO結晶セル202に入射するように配置される。
【0152】
第1のウインドウ44と第4のダイクロイックミラー242との間の光路上に、パルスレーザ光を平行化する不図示のコリメータレンズが配置されてもよい。また、第3の高反射ミラー240と第4のダイクロイックミラー242との間の光路上に、パルスレーザ光のビーム径を調整する不図示のBEX(Beam Expander)レンズ又は不図示の集光レンズが配置されてもよい。BEXレンズは、不図示の凹レンズと凸レンズとのペアで構成されてもよい。
【0153】
図7に示す例では、第7のCLBO結晶セル200がレーザ光の光路上に配置され、第8のCLBO結晶セル202がレーザ光の光路外に配置されている。また、
図8は、
図7に示した状態から可動部208が移動した状態を示す図である。
図8に示す例では、第7のCLBO結晶セル200がレーザ光の光路外に配置され、第8のCLBO結晶セル202がレーザ光の光路上に配置されている。
【0154】
5.2 動作
予め、オペレータは、第7のCLBO結晶セル200の各第1の結晶ホルダ90に、それぞれ第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220を保持させ、第4の容器210に収納する。同様に、オペレータは、第8のCLBO結晶セル202の各第2の結晶ホルダ140に、第10のCLBO結晶228、第11のCLBO結晶230、第12のCLBO結晶232を保持させ、第5の容器222に収納する。
【0155】
また、温度調節器94は、第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220の各第1のヒータ92を制御し、既定のステップで150℃に昇温する。同様に、温度調節器94は、第10のCLBO結晶228、第11のCLBO結晶230、第12のCLBO結晶232の各第2のヒータ142を制御し、既定のステップで150℃に昇温する。
【0156】
続いて、制御部22は、波長変換ボックス42の内部を既定の時間、流量でN2ガスをパージする。また、制御部22は、第7のCLBO結晶セル200の第4の容器210、第8のCLBO結晶セル202の第5の容器222の内部を既定の時間、流量でArガスをパージする。
【0157】
ステージコントローラ112は、
図7に示すように、第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220をレーザ光の光路上に配置する。
【0158】
制御部22は、この状態で紫外光を発生させる。即ち、制御部22は、第1の固体レーザ装置10により第1のウインドウ44から波長約515nmのパルスレーザ光を入射させ、第2の固体レーザ装置12により第2のウインドウ46から波長約1553nmの第2のパルスレーザ光を入射させる。これにより、第4のダイクロイックミラー242から第7のCLBO結晶216に、波長約515nmのパルスレーザ光と波長約1553nmの第2のパルスレーザ光とが略同時に、略同光路軸で入射する。
【0159】
第7のCLBO結晶216は、波長約515nmのパルスレーザ光が位相整合条件を満たすように入射角が調整される。その結果、第7のCLBO結晶216により、波長約515nmのパルスレーザ光の第2高調波である波長約258nmのパルスレーザ光が生成される。したがって、第7のCLBO結晶216からは、波長約258nmのパルスレーザ光と波長約1553nmのパルスレーザ光とが出力される。
【0160】
波長約258nmのパルスレーザ光と波長約1553nmのパルスレーザ光とは、略同時に、略同光路軸で第8のCLBO結晶218に入射する。
【0161】
第8のCLBO結晶218は、波長約258nmのパルスレーザ光と波長約1553nmのパルスレーザ光とが位相整合条件を満たすように入射角が調整される。その結果、第8のCLBO結晶218により、波長約258nmのパルスレーザ光と波長約1553nmのパルスレーザ光との和周波である波長約221nmのパルスレーザ光が生成される。したがって、第8のCLBO結晶218からは、波長約221nmのパルスレーザ光、波長約258nmのパルスレーザ光、波長約1553nmのパルスレーザ光が出力される。
【0162】
波長約221nmのパルスレーザ光、波長約258nmのパルスレーザ光、波長約1553nmのパルスレーザ光は、第9のCLBO結晶220に入射する。
【0163】
第9のCLBO結晶220は、波長約221nmのパルスレーザ光と波長約1553nmのパルスレーザ光とが位相整合条件を満たすように入射角が調整される。その結果、第9のCLBO結晶220により、波長約221nmのパルスレーザ光と波長約1553nmのパルスレーザ光との和周波である波長約193nmのパルスレーザ光が生成される。この波長約193nmのパルスレーザ光は、第3の出射ウインドウ214、第3のウインドウ48を介して波長変換システム14から出力される。
【0164】
このように、第7のCLBO結晶セル200の第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220によって紫外光を発生させている間も、制御部22は、第8のCLBO結晶セル202の各第2のヒータ142の温度、及び第5の容器222の内部のガス流量を保持し続ける。
【0165】
第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220のいずれかが寿命を迎えた場合、ステージコントローラ112は、第4のステージ204を制御して可動部208を移動させることで、第7のCLBO結晶セル200の第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220をレーザ光の光路上から離脱させる。さらに、ステージコントローラ112は、第8のCLBO結晶セル202の第10のCLBO結晶228、第11のCLBO結晶230、第12のCLBO結晶232をレーザ光の光路上に挿入させる。これにより、波長変換システム14は、第7のCLBO結晶216、第8のCLBO結晶218、第9のCLBO結晶220に代えて第10のCLBO結晶228、第11のCLBO結晶230、第12のCLBO結晶232を使用して波長変換を行う。
【0166】
5.3 作用・効果
以上のように、固体レーザシステム1Bによれば、実施形態1と同様の作用・効果を奏する。
【0167】
また、CLBO結晶の入力の手前で光路を結合しているため、波長変換用のCLBO結晶セルとバックアップ用のCLBO結晶セルとは、それぞれCLBO結晶を複数(ここでは3つ)直列に配置することができ、波長変換システム14を小型化することができる。
【0168】
また、1つのCLBO結晶セルにCLBO結晶を複数配置するため、ステージや配管の数を少なくすることができ、装置を小型化することができる。
【0169】
さらに、1つのCLBO結晶セルを交換することで複数のCLBO結晶を交換することができるため、メンテナンスに掛かる時間を少なくすることができる。
【0170】
6.電子デバイスの製造方法
図9は、露光装置302の構成例を概略的に示す図である。電子デバイスの製造方法は、固体レーザシステム1、エキシマ増幅器300、露光装置302によって実現される。
【0171】
エキシマ増幅器300は、例えばレーザ光を増幅するArFエキシマレーザ装置である。固体レーザシステム1とエキシマ増幅器300とで、ハイブリッドレーザ装置を構成する。エキシマ増幅器300は、固体レーザシステム1から出射されたパルスレーザ光を増幅する。エキシマ増幅器300によって増幅されたパルスレーザ光は、露光装置302に入力され、露光光として用いられる。
【0172】
露光装置302は、照明光学系304と投影光学系306とを含む。照明光学系304は、エキシマ増幅器300から入射したエキシマレーザ光によって、レチクルステージRTのレチクルパターンを照明する。投影光学系306は、レチクルを透過したレーザ光を、縮小投影してワークピーステーブルWT上に配置された不図示のワークピースに結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置302は、レチクルステージRTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、レチクルパターンを反映したレーザ光をワークピース上に露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで半導体デバイスを製造することができる。半導体デバイスは本開示における「電子デバイス」の一例である。固体レーザシステム1は、各実施形態で説明した固体レーザシステム1A、1Bであってもよい。
【0173】
7.その他
上記の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。したがって、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0174】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。例えば、「含む」又は「含まれる」という用語は、「含まれるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。また、不定冠詞「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。